結論
プリントネットは鹿児島が本拠のネット印刷の会社だ。チラシや名刺、冊子をネットで受け、自社の工場で刷って全国に届ける。筆者の結論は「やや割高」で、一番の理由は、値段を画面で比べられる商売のため利益率が薄く、事業の稼ぎが資本コストに届かないことにある。
2026/08 期は大口の顧客の注文が減り、営業利益は 13% 減った。次の期は広告や基幹システムへの投資で、営業利益がほぼ半分になる見込みだ。会社は 2030/08 期に営業利益率 8.6% を掲げ、35 億円で九州に第二工場を建てて能力を倍にする。だが、過去に利益率がこの水準に届いたのは上場前後の数年だけだ。
オーナーの資産管理会社が 4 割を持ち、配当性向は 2 割に届かない。ためた利益は工場に回り、株主に戻る分は小さい。10 年後の中立の姿でも、今の時価総額を下回る。印刷を集める流れに乗れる立地と工場は持っているが、それを株主の取り分に変える仕組みが弱い。筆者は、今の値段は中期計画の達成をかなり前提にしていると見る。
バリュー投資の観点から
オーナーとして長く持ちたい事業かと問われれば、筆者は首をかしげる。印刷の仕事は 10 年後も残るが、この会社がその中で値段を決められる立場にあるとは言いにくい。
バリュー投資の観点でいちばん気になるのは、稼いだお金の行き先だ。純利益の 8 割以上は会社に残り、新しい工場に回る。その工場が資本コストを超えて稼ぐかどうかは、受注の量しだいで、値段で勝てる保証は無い。
安全域も乏しい。今の時価総額は自己資本の 7 割強だが、自己資本の多くは印刷機と工場で、売っても帳簿の値にはならない。中期計画の達成を前提にしなければ、今の値段は高い。
筆者が見たいのは、第二工場が動いた後の利益率だ。量が増えて利益率も上がるなら、この会社は集約の勝ち組になる。量だけ増えて利益率が下がるなら、規模を追って資本を薄めただけになる。その答えが出るまで数年はかかる。
何で稼ぐ会社か
事業は 1 つ、ネットの印刷通販だ。自社のサイトで注文を受け、データを工場で刷り、加工して発送する。印刷会社やデザイン会社など、印刷の知識がある客が受注の 7 割を占める。つまり、刷る仕事を外に出したい同業の下請けとしての顔が大きい。
サイトは 3 つある。一般向けの「プリントネット」、印刷会社向けの「プリントプロ」、Tシャツなどの「プリントネットウェア」だ。工場は鹿児島の姶良と山梨の上野原にあり、九州と首都圏の両方に早く届けられる。
稼ぎ方は、たくさんの小口の注文を 1 枚の大きな紙にまとめて刷る「面付け」にある。多くの注文を同じ印刷機に乗せるほど、1 件あたりの費用は下がる。だから受注の量と工場の稼働がそのまま利益率を決める。
2030/08 期までの中期計画では、35 億円で九州第二工場を建て、2 ラインを足して能力を約 2 倍にする。外注している加工を内製に切り替え、中小の印刷会社の「製造の相手」として取引を広げる狙いだ。工場が増えれば、受注を集める広告と、注文をさばく基幹システムにもお金が要る。2027/08 期の大きな減益は、その先行の費用が重なるためだ。
優良さと弱いところ
優良さは並より下だと筆者は見る。ネットの印刷は、客が画面で値段と納期を比べて選ぶ。ブランドで選ばれる余地は小さく、値決めの力は弱い。
強みは地方に工場を持つ低い費用と、印刷会社からの受注の厚さだ。同業の印刷会社は、自前の印刷機を減らす代わりに、信頼できる工場に刷る仕事を任せたい。そこに入り込めれば、取引は簡単には切れない。
弱みは利益の振れだ。営業利益率は 10% から −1% まで動き、2026/08 期は 1 社の大口が減っただけで 13% の減益になった。過去 10 年の ROE は高い年もあるが、上場前の小さな自己資本で膨らんだ数字で、今の資本では 10% 前後が上限に近い。
経営は堅実で、無理な買収はしていない。ただ、利益の 8 割以上を会社に残して工場を増やす配分は、資本の稼ぎが資本コストに届かない会社としては物足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の印刷は 30 年にわたって縮んでいる。チラシや冊子はネットの広告に置き換わり、市場は毎年数 % ずつ細る。この流れは 10 年後も変わらない。
その中で、刷る仕事は大きな工場を持つネットの通販に集まっている。中小の印刷会社は印刷機の更新をあきらめ、仕事を受けて外に出す形に変わってきた。ネットの印刷の売上が伸びるのは、印刷全体の縮みを、この集約が上回るからだ。
競合は、印刷の仕組みを持たずに提携の工場を束ねるラクスル、自社工場で全国最大級のプリントパック、グラフィックなどだ。どこも値段と納期で競い、紙・インキ・電気の値上がりを価格に移すのに時間がかかる。
10 年の見通しとして、筆者は受注の量を 1 割増、値段を物価並みと見る。量を伸ばすのは集約の流れで、値段を上げる力は乏しい。
悲観の深さも考えておく。印刷は 30 年で需要が大きく減った業界で、集約の受け皿が増えすぎれば工場の余りが値下げを呼ぶ。同業が一斉に能力を足している今は、その入り口に近いのかもしれない。中立でも、利益率が上がる余地は小さいと筆者は見ている。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、累進配当を掲げる。ただし配当性向は 15% 前後と低い。株主優待はデジタルギフトで、長く持つ株主ほど厚くなる。
資金の行き先は工場だ。九州第二工場に 35 億円を投じる計画で、時価総額とほぼ同じ額になる。借入で賄えば純負債は 30 億円前後に膨らむ。
筆頭株主は創業者の資産管理会社とみられる PN コーポレーションで、4 割を持つ。オーナーの意向で資本の使い方が決まり、余ったお金が株主に戻る道は細い。経営陣による買い取りなどの話は出ていない。オーナーの持株が厚い小さな上場会社は、市場の値段が安ければ買い取りに動く例もあるが、筆者はそれを価値には数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
刷る仕事の集約はこれからが本番だ。中小の印刷会社は後継ぎも人手も足りず、印刷機の更新をあきらめている。仕事は手放さず、刷るのだけを外に任せたい。印刷会社からの受注が 7 割を占めるプリントネットは、その受け皿の筆頭になれる。
第二工場で能力が倍になれば、面付けの効率が上がり 1 件あたりの費用は下がる。外注の加工を内製に戻せば、そのまま利益率が上がる。中計の 8.6% は、上場した頃に実際に出していた水準で、夢物語ではない。
地方に工場を持つことも強みだ。人件費も土地も安く、九州と首都圏の 2 拠点で全国に早く届けられる。
オーナーが 4 割を持つ会社は、目先の数字より長く続く工場づくりを選べる。配当は累進で、減らさないと約束している。
2027/08 期の減益は、広告と基幹システムへの先行の投資によるものだ。将来の受注のためにお金を使っているのであって、稼ぐ力が落ちたわけではない。工場が埋まり始めれば、利益は一気に戻る。
慎重な見方
値段を画面で比べられる商売で、利益率は守れない。ラクスルは自前の工場を持たずに提携先を束ね、プリントパックは自社工場で量を取る。プリントネットはどちらの規模にも届かない。
2026/08 期は 1 社の大口が減っただけで営業利益が 13% 落ちた。次の期はさらに半分になる見込みだ。受注の厚みは思ったより薄い。
その最中に、時価総額と同じ 35 億円の工場を借入で建てる。印刷全体は毎年縮むので、工場を埋める量は他社から奪うしかない。奪うには値段を下げるしかなく、利益率はさらに薄くなる。
株主から見れば、オーナーが 4 割を握り、配当性向は 2 割に届かない。ためた利益は工場に消え、資本コストを超えて稼ぐ証拠は無い。
先行の投資という説明も、毎年のように使われると割り引いて聞くしかない。上場後の 8 年で、中期計画の利益率に届いた年は 1 度も無い。2019 年と 2020 年には営業赤字も出している。量を追って工場を足すたびに、利益が後からついてくるとは限らないことを、この会社の過去がすでに示している。
どちらに重みを置いたか
利益の振れと値決めの弱さを突く慎重な側の言い分が、直近の減益という事実に支えられている。集約の流れは本物だが、それを利益率に変えられるかはまだ見えない。確率は中立を中心に悲観側を厚めにし、中計どおりの楽観は薄く置いた。第二工場という量の裏付けがあるので、やや楽観には 2 割を置いている。悲観は工場の重さが表に出る筋書きとして 1 割強だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,068 円52 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 180 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 592 円29 億円、今との差 −11.8%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,576 円126 億円 | 318 円16 億円 | +331.3% | +15.7% | 232 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,625 円79 億円 | 236 円12 億円 | +177.4% | +10.7% | 372 円18 億円 |
| 中立 | 38% | 1,132 円55 億円 | 174 円9 億円 | +94.7% | +6.9% | 497 円24 億円 |
| やや悲観 | 22% | 358 円17 億円 | 144 円7 億円 | −25.2% | −2.9% | 110 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 227 円11 億円 | 82 円4 億円 | −53.9% | −7.5% | 37 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,068 円52 億円 | 180 円9 億円 | +86.0% | +6.4% | 1,248 円61 億円 |
今の株価時価総額 671 円33 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 第二工場が埋まり、中計を超える 利益 10 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,576 円126 億円
九州の第二工場が早く埋まる。中小の印刷会社が自前の印刷機を手放し、刷る仕事をまるごとプリントネットに任せる流れが本格化するからだ。受注は今の 1.4 倍に増える。
外注していた加工を内製に切り替え、紙やインキの調達でも規模が効く。営業利益率は中計の 8.6% に届き、10 年後もその水準を保つ。
ネットの印刷はラクスルとプリントパックが大きいが、印刷会社向けの卸に強い同社は棲み分けができる。売上は 170 億円を超え、地方の工場から全国に届ける形が完成する。それでも資本の稼ぎは資本コストをわずかに上回る程度で、高い倍率までは付かない。
- ネット印刷通販:数量 85.0(受注件数(万件・年、推定))× 価格 2.09(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 177 億円・営業利益 15 億円。85 万件 × 1 件 2.09 万円(今の 1.38 倍)、利益率 8.6%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.83 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計(2030/08 期に営業利益率 8.6%)を達成し、その先も印刷会社からの製造の受託で量を伸ばす筋書き。過去に中計どおり伸びた実績が無いので薄く置く。
やや楽観 20% 第二工場で量は伸びるが、利益率は中計に届かない 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,625 円79 億円
第二工場が動き、受注は今の 1.25 倍に増える。印刷会社からの製造の受託と、グッズやTシャツなど新しい品目が伸びを支える。
利益率は 7% 前後にとどまる。ネットの印刷は値段が画面で比べられ、ラクスルやプリントパックと価格で競り合うからだ。それでも工場の稼働が上がる分、今より利益は厚くなる。
借入で建てた工場の利払いは増えるが、増えた利益が上回る。配当は累進の方針どおり少しずつ増える。ただし資本の稼ぎは資本コストの 9 割ほどにとどまり、工場を足すほど価値が増える形にはまだならない。オーナーの判断で配当性向が上がれば、株主の取り分はもう少し厚くなる。
- ネット印刷通販:数量 75.0(受注件数(万件・年、推定))× 価格 2.03(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 152 億円・営業利益 11 億円。75 万件 × 1 件 2.03 万円、利益率 7%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の増設は計画どおり進み量は増えるが、ネット印刷の値段の争いで利益率は中計を下回る姿。量が増える根拠(能力 2 倍の工場)があるので厚めに置く。
中立 38% 量は少し増え、利益率は過去並み 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,132 円55 億円
国内の印刷は毎年数 % ずつ縮むが、刷る仕事がネットの通販に移る流れの方が強く、受注は 10 年で 1 割増える。第二工場は数年かけて半分ほど埋まる。
営業利益率は 5.5% と過去の平均並みだ。ネットで値段を比べられる商売で、紙やインキの値上がりを価格に移すのは物価並みがやっとになる。
工場の借入で純負債は 30 億円前後まで膨らみ、利払いが利益を削る。オーナーが 4 割を持ち、配当性向は 2 割弱と低いままで、ためた利益は工場と借入の返済に回る。規模は増えても、株主の取り分はほとんど増えない姿だ。会社が続くことと、株主が報われることは別の話になる。
- ネット印刷通販:数量 66.0(受注件数(万件・年、推定))× 価格 2.03(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 134 億円・営業利益 7 億円。66 万件 × 1 件 2.03 万円、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 51 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の営業利益率の中央値(6% 前後)と、印刷全体の縮みをネットのシェアの伸びが少し上回る姿。いちばん起こりやすい。
やや悲観 22% 大口が離れ、第二工場が重くなる 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 358 円17 億円
大口の得意先からの注文が戻らず、受注は今より 1 割減る。第二工場は半分も埋まらず、償却と人件費が重く残る。
紙・インキ・電気の値上がりに値段が追いつかず、営業利益率は 3% に下がる。広告や基幹システムへの投資も削れない。
借入の利払いが利益の 3 分の 1 を食い、純利益は 2 億円を切る。累進配当は守るが、株主に戻る額は小さい。会社は残るが、工場に入れたお金がほとんど報われない姿だ。
印刷会社からの受託も、相手の廃業とともに少しずつ細る。集約の受け皿が同業にも増えたため、仕事を取り合う形になる。工場を足した分だけ、量が減った時の痛みは大きい。
- ネット印刷通販:数量 58.0(受注件数(万件・年、推定))× 価格 1.94(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。58 万件 × 1 件 1.94 万円(今の 1.28 倍)、利益率 3%
倍率:事業の ROE 2.5% が k を大きく下回るので、価値は稼ぐ力(純利益÷k)で測る。正当化 PER の上限 1÷k=11.1 倍の 8 割の 9.0 倍に置き、中立より下げた。
確率:2026/08 期に大口の顧客の減少で減益になり、次の期も大幅な減益を見込む。工場を広げた直後に量が減る姿は十分にありうるので厚めに置く。
悲観 12% ネットの印刷で負け、工場が余る 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 227 円11 億円
ラクスルやプリントパックが値下げで量を取りにくる。印刷会社からの受託も、各社の廃業とともに減っていく。受注は今より 2 割減る。値下げに付き合えば利益が消え、付き合わなければ量が消える。
第二工場はほとんど動かず減損になり、自己資本は 40 億円まで減る。営業赤字が続き、借入の返済のために配当は削られる。
残る価値は、工場の土地と印刷機を売って借入を返した残りだけだ。ネットで値段を比べられる商売が、規模で負けた時の姿である。オーナーが会社を手放す決断をしても、買い手は工場の値段しか払わない。地方の工場は、印刷の仕事が無くなれば使い道が限られるからだ。
- ネット印刷通販:数量 48.0(受注件数(万件・年、推定))× 価格 1.85(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 89 億円・営業利益 −2 億円。48 万件 × 1 件 1.85 万円、利益率 −2%
倍率:赤字なので PBR で測る。床は今の自己資本 44.3 億円に掛け、工場の売却価値の税後から借入を引いた残り(約 11 億円)を上限とした。
確率:印刷の需要そのものが縮む業界で、値段を決める力の無い会社が大きな工場を足した。競争で負けた時の落ち方は大きいので、悲観をやや厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ネット印刷通販
チラシ・名刺・冊子・のぼり・Tシャツなどをネットで受注し、鹿児島と山梨の自社工場で刷って届ける。
| 数量受注件数(万件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 60.0 | 1.51 | 91 | 5 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 2.03 | 134 | 7 |
取り方:件数の開示は無いので、2026/08 期の売上 90.76 億円を 1 件 1.5 万円前後(チラシ・名刺の小口と印刷会社からの大口の平均)と見て年 60 万件と推定(推定)。営業利益 4.87 億円は 2026/08 期短信。
リスクと懸念
大口の得意先の離反
2026/08 期は大口の顧客向けの売上が減り、営業利益が 13% 落ちた。少数の大口が利益を左右する形で、同じことは繰り返しうる。印刷会社の廃業や内製化でも受注は消える。
第二工場の稼働
35 億円の第二工場は時価総額とほぼ同じ規模だ。量が集まらなければ償却と人件費が重く残り、利益率は上がるどころか下がる。印刷全体が縮む中で、工場を埋める量は他社から取るしかない。
値段の争い
ネットの印刷は値段と納期を画面で比べられる。ラクスルやプリントパックが値下げに動けば追随せざるをえない。紙・インキ・電気の値上がりを価格に移すのにも時間がかかる。
オーナー支配と還元の薄さ
創業者の資産管理会社が 4 割を持ち、配当性向は 15% 前後と低い。資本の使い方はオーナーの判断で決まり、余ったお金が株主に戻る道は細い。
印刷の需要の縮み
チラシ・冊子・名刺はネットの広告やデジタルの名刺に置き換わり続ける。集約の流れがいつか一巡すれば、ネットの印刷の量も全体とともに縮み始める。
今後の分かれ目
- 2027/08 期の減益が一時で、2028/08 期に営業利益率が 6% 台に戻ったら
- 中立よりやや楽観寄りに確率を移す。広告と基幹システムへの投資が受注に結びついたかを見る。
- 第二工場の稼働が 2 年で半分を超えたら
- やや楽観の筋書きに近づく。印刷会社からの受託が量を支えている証しになる。
- 大口の得意先向けの売上がさらに減ったら
- やや悲観の筋書きの確率を上げる。工場の増設の時期を見直すかも見る。
- ラクスルなど大手が値下げに動いたら
- 利益率の前提を下げる。値段で追随しない場合は量が減る。
- オーナーによる買い取りや同業との統合の話が出たら
- 買い取りの値段は今の時価総額を上回りやすいが、本質の稼ぐ力は変わらない。
見ておくもの
- 営業利益率と大口の得意先向けの売上
- 九州第二工場の着工・稼働の時期と稼働率
- 印刷会社向け(プリントプロ)の受注の伸び
- 配当性向と還元の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR から置かず、事業の ROE(中立 5.8%)が k 8.5% を下回るので正当化 PER の上限 1÷k=11.1 倍から、利益の質に応じて 8.5〜9.5 割で置いた。起点は facts の 2025/08 期でなく 2026/08 期の短信の自己資本・純利益。中計の利益率は楽観にだけ置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.1→12.83 倍・やや楽観 PER 10.3→11.76 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.5%。同じ領域の済んだ会社は無い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。