結論
キングジムは、ファイルとラベルライター「テプラ」の会社だ。筆者の結論は「割高」である。財務は堅いが、稼ぐ力が弱い。10年で見込める利益は、今の時価総額に見合う水準に届かない。
稼ぎ頭はテプラだ。本体を売り、専用のテープを買い続けてもらう商売である。一方、主力だった厚型ファイルは、ペーパーレスで縮んでいる。2024年6月期には営業赤字に落ちた。直近は営業利益11億円まで戻したが、売上高に対する率は3%を切る。
会社は海外、ネット販売、新しいサービスで売上を積み上げる計画だ。ただし売上520億円という中期目標は、今の水準から3割以上遠い。筆者は、この計画が達成される確率は低いと見る。
純現金は薄く、持ち合い株を含めても時価総額の3割に満たない。配当は利益の4割を目安にしているが、利益が小さいので額は増えにくい。
強気の筋書きでも、事業の収益性は資本コストを下回る。確率をかけて均し、資本コストで割り引いた価値は、今の時価総額を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、キングジムは「安全だが、儲からない」会社だ。事業は10年後も存在するが、堀はテプラの専用テープに限られる。ほかは、競争の中で薄い利益を取り合っている。
株主のものになる利益は、見た目より小さい。社内システムの刷新に3年で12億円の投資を計画しており、在庫も110億円と重い。利益が少ない会社が在庫を抱えるのは、資本の効率を下げる。
資本の使い方は、保守的だが成果に乏しい。ためた現金を成長に使えず、買収も成果が出ていない。ROEを資本コストの水準へ引き上げると会社は言うが、中期計画の売上520億円は遠い。
安全域は、財務の堅さにある。純現金と投資有価証券を足せば、悲観でも大きく崩れない。しかしその分を除いた事業は、資本コストを上回れていない。
結論として、価値は今の時価総額を大きく下回る。払う値段は、将来の利益ではなく、ためた資産への期待で支えられている。
何で稼ぐ会社か
キングジムの稼ぎは、二つの事業に分かれる。大きいのは文具事務用品事業で、売上の6割強を占める。ファイル、ノート、事務用品のほか、テプラ、電子メモのポメラ、防災用品を扱う。
中でも要はテプラだ。1988年に発売された日本語ラベルライターで、本体より専用テープで稼ぐ。売上は非開示だが、筆者は文具事務用品の4割程度、100億円前後と推定する。法人の現場に定着した、ほぼ唯一の本物の堀である。
もう一つはライフスタイル用品事業で、売上の4割弱を占める。ぼん家具、ラドンナ(家電雑貨のToffy)、アスカ商会、ライフオンプロダクツ、ウインセスといったグループ会社の寄せ集めだ。利益は薄く、ぼん家具の苦戦が足を引っ張ってきた。
売上の約96%は国内である。会社は海外を10%へ引き上げる計画で、中国の上海とベトナムを重点にする。米国向けのポメラも始めた。
稼ぎ方の本質は、紙の文具の縮小を、消耗品で稼ぐテプラと、買収で増やすグループ会社で埋めることだ。ただし後者は、利益の質がまだ低い。
連結の従業員は約1,700人。商品の多くは海外の工場で作るため、為替と原材料の値段が採算に直接響く。
優良さと弱いところ
堀は、テプラの専用テープにある。本体を買えば、同じ会社のテープを使い続けるしかない。法人は配線やラベルの表示を長く使い、切り替える手間が大きい。ブラザーの「ピータッチ」という強い競合はいるが、日本の法人現場ではテプラが標準語に近い。ただし文具全体の堀は深くなく、筆者は「強い堀」とは見ない。
資本の効率は低い。過去10年の自己資本利益率(ROE)の中央値は4%台で、資本コストの半分ほどだ。2023年6月期から2025年6月期は、営業利益率が1%前後で推移した。今期にようやく3%に戻った。
財務の保守性は強みだ。自己資本比率は7割で、借入は小さい。しかし利益が薄いため、この安定は稼ぐ力につながっていない。
弱みは、新しい物をたくさん作るのに、一つひとつが小さいことだ。ポメラも、ネット印刷のテプラボも、5年で15億円の売上を目指す程度の規模である。本体の厚型ファイルの減りを埋めるには足りない。
オーナー支配でも親子上場でもない。大株主は東京中小企業投資育成が約7.5%、三井住友銀行が約4.6%で、株主の顔ぶれは穏やかだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の文具・事務用品の市場は、約3,900億円で縮小が続く。2024年度は前年比で1%弱の減少だった。デジタル化、少子化、オフィスの働き方の変化が重なり、紙のファイルやノートの需要は戻らない。
首位のコクヨでも市場シェアは7%台、パイロットが5%台、キングジムは3〜4%台とみる。上位を寡占するというより、小さな会社が多い市場である。ナカバヤシ、リヒトラブなど同業との値下げ競争も続く。
テプラのラベルライター市場は、ブラザーとの二強に近い。法人は工場、倉庫、病院、官公庁で長く使うが、家庭や事務所の個人用途はスマホやシール印刷に置き換わる。印刷通販の市場は約1,900億円で伸びており、会社はここにテプラボで入る。
ライフスタイルの対象は、家具、小型家電、雑貨だ。市場は大きいが、通販と海外メーカーの値付けで競争が激しい。ぼん家具は、配送料の上昇で採算が悪化した。
海外は、中国とASEANの文具市場が伸びる。ただし地場の安い品との競争があり、日本ブランドの強みは限られる。国内の縮みを海外で埋める道は、細く長い。
資本政策と M&A
資本政策は、守りの色が濃い。配当性向は40%を目安にした安定配当で、2026年6月期は利益の4割弱を配当した。自社株買いは中期計画の資料では確認できなかった。
政策保有株、つまり持ち合い株は売却する方針だ。投資有価証券は約41億円で、時価総額の2割弱にあたる。直近2年とも売却益を出したが、売却額の目標は開示されていない。配当収入は純利益に入っているので、価値には足さない。
M&Aの枠は3年で35億円。海外販路の強化、事業拡大、新ジャンルの3軸で探す。具体案件は公表されていない。ライフスタイルの買収は、これまで利益をほとんど生んでいない。2025年6月期には、ラチュナ事業ののれんを減損している。
株主優待はある。6月に300株以上でオンラインストアのクーポン、12月は50%割引クーポンだ。年間の費用は非開示で、筆者は1億円前後と推定する。10年の還元に、続く見込みを掛けて足した(中立1.0、やや悲観0.75、悲観0.5)。
財務は軽く、買収に使える現金は小さい。TOBで買われる側になる可能性は、時価総額の小ささから否定できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
テプラは、法人の現場で外せない道具だ。工場の配線、物流の棚、病院の薬品、防災の備蓄品。表示の需要は減らず、専用テープは毎年買われる。この稼ぎは景気に左右されにくい。
新しいサービスで、ここを広げられる。ネット印刷のテプラボは、デザインに困る小さな店を狙う。3,000種のテンプレートとAIで、誰でも5分で注文できる。印刷通販は約1,900億円の市場で、伸びている。
海外も動き出した。米国でポメラの現地向けを始め、中国とベトナムで開発と販売を強める。国内の縮小を、海外で埋める。
利益率は戻る途中だ。2024年6月期の赤字から、2026年6月期は営業利益11億円まで回復した。物流の新システムが動けば、固定費も軽くなる。
財務は堅い。自己資本比率は7割で、持ち合い株の売却が進めば、還元や投資に回せる資金が増える。営業利益率が6%台に乗れば、価値は今の時価総額に近づく。
株主の顔ぶれも安定している。投資育成会社が筆頭株主で、急な方針転換や乱暴な買収を受けにくい。経営は長い目で事業を磨ける。
慎重な見方
ファイルとノートの縮小は止まらない。学校も職場もデジタルに移る。厚型ファイルの減りを、新商品やECで埋めることは難しい。
テプラの強みも、いつまでも続くとは限らない。スマホと小型プリンターの普及で、家庭と事務所の用途は減る。ブラザーなど競合の価格攻勢もある。専用テープの売上が減り始めれば、全体の利益の柱が崩れる。
新規事業は小さすぎる。ポメラは趣味の道具、テプラボは5年で15億円、サービス事業の見込みも15億円。これでは文具の穴を埋められない。
ライフスタイルは足を引っ張る。ぼん家具は配送費で苦戦し、買収したラチュナはのれんを減損した。M&Aの実績が悪い会社が、さらに35億円の枠を使う。
資本の効率は、10年以上資本コストを下回っている。ためた現金は戻されず、買収に消えるリスクがある。この水準の利益に、高い倍率はつかない。
配当も心もとない。性向は4割でも、利益が薄ければ額は小さい。株主優待は、現金でなく自社通販のクーポンで、実際の価値は額面より低い。
どちらに重みを置いたか
テプラの堅さでは、強気の見方が正しい。ただしその稼ぎは、全体の営業利益率を3%台から先へ引き上げるには小さい。新規事業の規模と、買収の実績を考えると、慎重な見方の指摘が重い。
中立は、テプラが堅く、文具が細り、ライフスタイルが小さな黒字を保つ姿に置いた。確率は中立に4割弱、強気側に3割弱、慎重な側に3割強とした。2024年6月期に赤字を出した事実があるため、やや悲観を厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 583 円164 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 199 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 383 円108 億円、今との差 −50.6%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,116 円314 億円 | 305 円86 億円 | +83.4% | +6.3% | 100 円28 億円 |
| やや楽観 | 20% | 860 円242 億円 | 256 円72 億円 | +44.0% | +3.7% | 223 円63 億円 |
| 中立 | 38% | 664 円187 億円 | 223 円63 億円 | +14.4% | +1.4% | 337 円95 億円 |
| やや悲観 | 24% | 261 円74 億円 | 140 円40 億円 | −48.2% | −6.4% | 96 円27 億円 |
| 悲観 | 11% | 160 円45 億円 | 71 円20 億円 | −70.2% | −11.4% | 25 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 583 円164 億円 | 199 円56 億円 | +0.8% | +0.1% | 781 円220 億円 |
今の株価時価総額 775 円218 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% テプラが現場と小規模事業者に広がり、ライフスタイルも立ち直る 利益 28 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,116 円314 億円
テプラが事務所の外へ広がる。工場、倉庫、病院、防災の備蓄ラベルで需要が積み上がり、専用テープの売上が本体の減りを上回る。ネット印刷のテプラボなどのサービスも、小さな店の定番になる。ポメラは米国で固定ファンをつかみ、海外売上は全体の1割に届く。ファイルは細るが、防災用品と高単価の文具が穴を埋める。ライフスタイルではラドンナのToffyが伸び、ぼん家具は配送費の上昇を値付けで吸収して黒字を保つ。営業利益率は6%台後半に乗り、過去12年の山に並ぶ。新しい物流システムの効果が出て、固定費の重さが外れた姿だ。国内の人口減は続くが、その分を値上げと用途の広がりが上回る。それでも事業の資本効率は資本コストに届かず、倍率は上限の9割にとどまる。
- テプラ(ラベルライターと専用テープ):数量 525(対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定))× 価格 26.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍))→ 売上 141 億円・営業利益 20 億円。市場 今の 1.05 倍、シェアは今のまま、値段 1.34 倍、利益率 14.5%
- 文具・デジタル文具・防災・海外・EC:数量 3,768(国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質))× 価格 5.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 194 億円・営業利益 6 億円。市場 今の 0.97 倍、シェアは今のまま、値段 1.34 倍、利益率 3.0%
- ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか):数量 9,200(対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定))× 価格 2.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 219 億円・営業利益 11 億円。市場 今の 1.15 倍、シェアは今のまま、値段 1.34 倍、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:テプラの用途拡大、新サービスの定着、ぼん家具の再建が同時に要る。過去12年で営業利益率が6%台に乗ったのは1度だけなので、7%にとどめる。
やや楽観 20% テプラの法人需要が堅く、海外とECが育つ 利益 21 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 860 円242 億円
テプラの大型販促が効き、法人向けの専用テープが安定して売れる。本体は伸びなくても、使い続ける人が消耗品を買う構造が利益を支える。文具は国内で縮むが、EC、防災、海外の上積みで下げ幅を小さくする。ポメラの米国向けは小さいながら黒字に乗る。ライフスタイルではグループ会社の新商品が当たり、ぼん家具の赤字は消える。人件費や物流費の上昇は値上げでおおむね転嫁できる。営業利益率は5%台前半まで上がるが、会社の計画ほどは伸びない。新しい事業は、売上の小さな足しにとどまる。財務は引き続き堅く、配当は利益の4割を保つ。
- テプラ(ラベルライターと専用テープ):数量 500(対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定))× 価格 26.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍))→ 売上 132 億円・営業利益 17 億円。市場 今の 1.00 倍、シェアは今のまま、値段 1.32 倍、利益率 13.0%
- 文具・デジタル文具・防災・海外・EC:数量 3,691(国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質))× 価格 5.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 187 億円・営業利益 3 億円。市場 今の 0.95 倍、シェアは今のまま、値段 1.32 倍、利益率 1.5%
- ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか):数量 8,640(対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定))× 価格 2.3%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 202 億円・営業利益 8 億円。市場 今の 1.08 倍、シェアは今のまま、値段 1.32 倍、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 242 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画(2027年6月期に売上520億円)には遠いが、テプラの販促と海外の積み上げで営業利益率が5%台に乗る姿は十分ありうる。2割に置く。
中立 38% テプラは堅いが、文具が細り、収益は薄いまま 利益 16 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 664 円187 億円
テプラは法人の現場で使われ続け、専用テープの売上が本体の減りを埋める。ただし家庭や事務所での利用は、スマホの普及で少しずつ減る。ファイルや事務用品は年1〜2%ずつ縮み、価格競争で値上げは物価に届かない。物流の新システムと商品の絞り込みで赤字は消えるが、利益はほぼゼロ止まりだ。ライフスタイルは小さな黒字を保つ。営業利益率は4%台前半で、会社の計画(5%台)には届かない。売上は名目で2割ほど増えるが、ほぼ物価の分だ。配当は利益の4割で、政策保有株の売却代金は配当の余力になる。堅実だが、資本を増やしても稼ぎが増えない会社であり続ける。
- テプラ(ラベルライターと専用テープ):数量 475(対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定))× 価格 26.0%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍))→ 売上 124 億円・営業利益 15 億円。市場 今の 0.95 倍、シェアは今のまま、値段 1.30 倍、利益率 12.0%
- 文具・デジタル文具・防災・海外・EC:数量 3,574(国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質))× 価格 5.0%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 178 億円・営業利益 0 億円。市場 今の 0.92 倍、シェアは今のまま、値段 1.30 倍、利益率 0.0%
- ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか):数量 8,160(対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定))× 価格 2.3%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 188 億円・営業利益 6 億円。市場 今の 1.02 倍、シェアは今のまま、値段 1.30 倍、利益率 3.3%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 185 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業績が3%台の営業利益率に戻りつつあるが、過去12年の中央値は3〜4%台。国内の縮小と新規事業の小ささが拮抗するので、中立に4割近く置く。
やや悲観 24% 文具の縮小が加速し、ライフスタイルも伸びない 利益 8 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 261 円74 億円
学校と職場のデジタル化が想定より早く進む。ファイル、ノート、事務用品は年3%ずつ縮み、値上げも通らない。テプラ本体はスマホとの競争で売れず、専用テープの売上も減り始める。ブラザーなど競合との値引きも増える。ぼん家具は配送費の上昇と競争で赤字が続き、ライフスタイル全体の利益はほとんど消える。固定費を絞っても、営業利益率は2%台にとどまる。配当は性向4割を守るが、利益が小さいので額は増えない。財務は堅く、赤字に落ちることはない。ただ、資本を遊ばせたまま、稼ぎが縮む会社になる。政策保有株は売って現金に変わるが、使い道が見つからなければ、利息が増えるだけで稼ぎは増えない。成長への投資は、小さな新規事業に分散したままになる。
- テプラ(ラベルライターと専用テープ):数量 425(対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定))× 価格 25.0%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍))→ 売上 106 億円・営業利益 11 億円。市場 今の 0.85 倍、シェアは今のまま、値段 1.25 倍、利益率 10.0%
- 文具・デジタル文具・防災・海外・EC:数量 3,186(国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.7%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 149 億円・営業利益 −5 億円。市場 今の 0.82 倍、シェアは今のまま、値段 1.22 倍、利益率 -3.0%
- ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか):数量 7,600(対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定))× 価格 2.2%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 169 億円・営業利益 3 億円。市場 今の 0.95 倍、シェアは今のまま、値段 1.25 倍、利益率 2.0%
倍率:事業の ROE 2.6% が k 8.75% を大きく下回り、ためた利益は額面未満。上限 12.1 倍の約 6 割の 7.0 倍に置く(稼ぐ力に見合う倍率)。
確率:ファイルの需要減が加速し、テプラ本体が減り続ける姿。2024年6月期に赤字を出した実績があり、起こりうる。慎重な見方の指摘が重いので、やや厚く置く。
悲観 11% 文具が構造的に負け、減損と縮小に追い込まれる 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 160 円45 億円
ファイルと事務用品の市場が3〜4割縮み、価格競争に巻き込まれる。ライフスタイルのぼん家具は価格競争に敗れ、減損で事業を畳む。ポメラやテプラボなど新規事業は大きな売上にならず、投資が回収できない。テプラは専用テープも減り、法人の現場でもラベル印刷サービスに取られる。営業利益はマイナス圏に沈み、減損で自己資本も細る。配当は大きく減らさざるを得ない。ただし借金は小さく、純現金と投資有価証券があるため、すぐに資金繰りが詰まることはない。少数株主に残るのは、手元の現金と売れる資産の範囲に絞られる。政策保有株の売却代金も、買収の失敗や配当で薄れる。会社は縮小均衡に入り、ブランドを残して生き延びる道を探すことになる。
- テプラ(ラベルライターと専用テープ):数量 325(対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定))× 価格 22.0%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。市場 今の 0.65 倍、シェアは今のまま、値段 1.10 倍、利益率 6.0%
- 文具・デジタル文具・防災・海外・EC:数量 2,331(国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.2%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 98 億円・営業利益 −6 億円。市場 今の 0.60 倍、シェアは今のまま、値段 1.10 倍、利益率 -6.0%
- ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか):数量 6,400(対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定))× 価格 2.0%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数)→ 売上 131 億円・営業利益 −1 億円。市場 今の 0.80 倍、シェアは今のまま、値段 1.15 倍、利益率 -1.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、価値は純現金と売れる資産で決まる。今の自己資本 261 億円に PBR 0.172 倍を掛けた 45 億円は、下の床の内訳(現金から借入を引いた分と、投資有価証券の税引き後)に合わせたもの。ためた利益や在庫の帳簿には掛けない。
確率:2024年6月期の赤字(営業利益率マイナス0.6%)がさらに深く長く続く姿。純現金が薄く、強い堀もないため、1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テプラ(ラベルライターと専用テープ)
名前シールや配線表示などを作るラベルライター「テプラ」の本体と専用テープ。使い続ける人が消耗品を買う構造。
| 数量対象市場(法人・業務用ラベル表示、億円・今の値段の実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数(物価並みで10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 500 | 20.0% | 100 | 12 |
| 10 年後 中立 | 475 | 26.0% | 124 | 15 |
取り方:テプラの売上は非開示。文具事務用品の売上249億円のうち約100億円とみた(推定)。利益も非開示で、事業全体の利益6.6億円から、ファイル・文具の赤字を差し引いて12億円とした(推定)。対象市場を約500億円(実質、推定)とし、シェア約20%(推定)。ブラザーのピータッチが主な競合。
文具・デジタル文具・防災・海外・EC
ファイルなどの文具、ポメラ、防災用品、マスキングテープ、ネット販売、海外の売上。紙の文具は国内で縮む。
| 数量国内文具・事務用品市場(億円・今の値段の実質) | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 3,885 | 3.8% | 149 | −5 |
| 10 年後 中立 | 3,574 | 5.0% | 178 | 0 |
取り方:文具事務用品の売上249億円からテプラの約100億円を引いた149億円。国内市場は3,885億円(矢野経済研究所、2024年度)で毎年1%弱縮んでおり、シェアは約3.8%。海外・EC・防災の売上も同じ市場に対するシェアの形で置いた。利益は事業全体の6.6億円からテプラの推定12億円を引いたマイナス5.4億円(推定)。
ライフスタイル用品(ぼん家具・ラドンナ・アスカ商会ほか)
家具の通販(ぼん家具)、家電雑貨ブランドのToffy(ラドンナ)、アスカ商会、ライフオンプロダクツ、ウインセスなどグループ各社の商品。
| 数量対象の家具・家電・雑貨市場(億円・今の値段の実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 8,000 | 1.8% | 142 | 5 |
| 10 年後 中立 | 8,160 | 2.3% | 188 | 6 |
取り方:セグメント売上142億円、セグメント利益4.5億円(2026/06 期の決算の集計値。第3四半期の説明資料から)。対象市場を約8,000億円(推定)とし、シェアは約1.8%。ぼん家具の売上と利益は分かれていない。
リスクと懸念
厚型ファイルなど紙文具の構造的な縮小
ペーパーレスと少子化で、ファイルやノートの国内需要は毎年縮む。値上げは通りにくく、売上の穴を埋めるには新製品が要る。2024年6月期に営業赤字へ落ちた主因でもある。
テプラの本体と用途の置き換え
テプラは法人の現場に定着しているが、家庭や事務所ではスマホやシール印刷に置き換わりつつある。ブラザーとの競争も続く。専用テープが減り始めれば、利益の柱が崩れる。
ライフスタイル事業の採算とM&Aの規律
ぼん家具は配送費の上昇と競争で採算が悪い。ラチュナ事業ののれんは2025年6月期に減損した。3年で35億円のM&A枠をまた使えば、同じ失敗が繰り返される恐れがある。
中期計画の未達
2027年6月期に売上520億円、経常利益28億円、ROE8%を掲げるが、2026年6月期の売上は391億円で乖離が大きい。計画を前提にした見方は危うく、未達なら資本効率の改善は先延ばしになる。
原材料と為替
樹脂、紙、鋼板の価格と円安は、海外で作る商品の原価に響く。2025年6月期にも、ライフスタイルで円安と原材料高が利益率を下げた。値上げで転嫁できなければ、利益が薄い分だけ赤字に近づく。
利益の質(有価証券の売却益)
2026年6月期の純利益10億円には、投資有価証券の売却益が含まれるとみられる。売却は一度きりなので、本業の利益はこれより小さい。持ち合い株の配当収入も、売却すれば減る。
AIエージェントによる代替は限られる
キングジムは、人月や席で売る事業ではなく、モノとテープを売る会社だ。AIエージェントに代替される部分は小さい。テプラボなどAIを使う新サービスは、まだ売上が小さく、成長は見込んでいない。
今後の分かれ目
- テプラの専用テープの売上が、本体の減りを上回って伸び続けたら
- 強気の筋書きの確率を上げる。収益の柱が太くなり、営業利益率が5%台に近づく。
- ぼん家具の赤字が続き、減損が出たら
- ライフスタイルの利益前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却額が目標として開示され、自社株買いや増配に回されたら
- 資本効率の改善が確かになる。余った資産の価値を別に足す余地が出る。
- テプラボやポメラの海外が、売上数十億円の規模に育ったら
- 新規事業が文具の穴を埋め始めたと判断し、中立の売上を上げる。
- 営業利益率が2期続けて4%を超えたら
- 中立の利益率前提を上げる。ROEが資本コストへ近づく。
- 第三者から買収や資本提携の提案が出たら
- 時価総額が小さく、資産が厚いため、価格次第で株主価値が上がる。ただし確度は低い。
見ておくもの
- テプラの専用テープと本体の売上の動き
- 文具事務用品の営業利益率(今期は2%台)
- ぼん家具を含むライフスタイルの利益
- 政策保有株の売却額と使い道
- 海外売上比率(4%から10%への目標)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト8.75%から、利益ベースの上限(ROEがk以下なので1÷k=12.1倍)を求め、その6〜9割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。悲観は純現金と投資有価証券の税引き後から出した。家賃を営業費用に入れた今の形でそろえて置いた。新リース会計基準(2027年6月期以後に開始する年度から強制)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、価値は変わらないので今の形のままにした。テプラの売上と利益、ライフスタイルの市場規模は開示がなく推定で、精度は低い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.43 倍・やや楽観 PER 10.3→11.43 倍・中立 PER 9.7→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。