結論
光陽社は、東京の湯島に本社を置く従業員 170 人ほどの商業印刷会社だ。写真製版で創業し、いまは企画・デザインから製版、印刷、納品までを一括で請ける。売上は 48 億円で、営業利益は 1 億円ほどしかない。
筆者の結論は、事業の値打ちは低いが、手元の現金を含めると割高とまでは言えない、というものだ。本業の利益率は 2% 前後で、紙の印刷物が縮むなかで 10 年先の稼ぎが今より増える理由は乏しい。
それでも純現金が 6 億円あり、時価総額の 7 割近くに当たる。自己株式は発行済みの 4 割を超え、配当性向 30% の方針と自社株買いも続く。現金が株主に戻るなら、この厚みは本物の安全域になる。
筆者がいちばん気にしているのは、経営がこの現金を株主に戻し続けるか、それとも薄利の事業の維持に使い続けるかだ。後者なら、純現金の見かけほどには価値が積み上がらない。
本業だけを見れば、買って持ちたい会社ではない。現金を除いた事業の値打ちは、時価総額の 3 割ほどにすぎない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業の値打ちは低く、現金の値打ちで持ちこたえている会社」だ。10 年後も印刷の需要は残るが、いまより強くなっているとは考えにくい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いたあとに株主に残る現金は、会計の利益とほぼ同じだ。設備投資が軽く、減価償却と大きな差がないためだ。ただ稼ぎそのものが小さく、年 1 億円に届かない。
経営は誠実だ。赤字を避け、現金を持ちすぎず、配当と自社株買いを続けている。自己株式の比率が高く、株主への資本の返し方は悪くない。
安全域は事業ではなく現金にある。純現金が時価総額の 7 割近くあり、事業が稼げなくなっても最悪の場合の下値を支える。筆者は、事業に高い値は付けない。その代わり、現金を株主に戻す姿勢が続く限り、この会社を割高とも言い切らない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 8 割以上は印刷だ。販促のチラシやカタログ、パンフレット、ポスターなど、企業が宣伝に使う紙の印刷物を刷る。顧客は特定の会社に偏らず、売上の 1 割を超える得意先はない。
出発点は写真製版だ。印刷の版を作る工程から始まった会社で、いまも製版の技術を強みにする。デザインやデータ制作の製品制作が売上の 16% ほど、印刷が 84% ほどを占める。ディスプレイや POP、ノベルティといった販促品の制作も請ける。
拠点は東京・大阪・名古屋にある。生産の中心は埼玉県飯能市のプリンティングセンターで、土地は簿価 1.7 億円と小さい。企画から発送までを一括で請けることで、小さな会社でも顧客の手間を減らす。
設備投資は年 0.4 億円ほどで、輪転機を何台も抱える大手と違って重くない。その代わり規模の力はなく、価格を決める力も弱い。
中期経営計画は 2027 年 3 月期に営業利益 1.5 億円を目指す。2026 年 3 月期は営業利益 1.0 億円で、計画の初年度を上回った。
製品制作と印刷の間で、顧客の入稿から納品までの手間を請け負うのが、この会社の使い方だ。
優良さと弱いところ
優良さは「並」より下と筆者は見る。製版から印刷まで一貫で請けるのは便利だが、同じことができる印刷会社は数多い。入札や相見積もりで価格が決まりやすく、値上げを通す力は弱い。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるものは、長年の得意先との関係と、企画から納品までの小回りだ。ただ得意先は分散しており、一つの大口を握っているわけではない。切り替えの費用は低く、堀は浅い。
資本の効率は低い。営業利益率は過去 12 年の最良でも 5% で、2021 年 3 月期には赤字になった。ROE は 4% 前後で、資本コストの半分ほどだ。
財務は堅い。自己資本比率は 6 割を超え、純現金がある。借金で背伸びする会社ではなく、倒産の心配は小さい。
経営は、収益が薄いなかでも赤字を避け、配当と自社株買いを続けている。小さな会社としては誠実だが、事業を伸ばす新しい手は見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紙の印刷物の市場は、30 年にわたって縮んできた。広告の予算はネットに移り、チラシやカタログ、パンフレットの部数は減り続ける。国内の印刷市場は 1990 年代の 9 兆円近くから 6 兆円台まで落ちた。
印刷会社の数も減っている。小さな会社が廃業し、残った会社に注文が集まる面はある。ただ用紙・インキ・電力が値上がりし、人手の確保も難しくなっているので、設備の小さな会社ほど苦しい。
光陽社のような製版・商業印刷の会社に追い風は少ない。製版は印刷の前の工程で、デザインや入稿のデータ化が進むほど単価は下がる。AI による制作の自動化も、デザインやレイアウト作業の値下がり圧力になる。
一方で、商品の販促や店頭の POP、パッケージなど、紙の需要が残る分野はある。小ロットで短い納期を求める顧客には、小さな会社の小回りが効く。
10 年で見ると、中立では印刷の数量は 2 割ほど減り、価格は用紙や人件費の上昇を一部しか通せず物価を下回ると筆者は見る。数量の減りと値上げの遅れで、利益率は低いまま推移する。
資本政策と M&A
還元は、配当性向 30% 程度を目安とする安定配当と、自社株買いの組み合わせだ。2026 年 3 月期の配当は 総額 2.6 億円ほど(配当性向 30% の目安)だった。同じ期の自社株買いは 0.3 億円で、2025 年 12 月の取締役会決議に基づき毎月続けている。
自己株式は発行済みの 4 割を超える。2021 年に株式会社 KK による公開買付けがあり、その後に会社の持株が積み上がった経緯がある。いまの株数は自己株式を除く 248 万株ほどだ。
投資有価証券は小さく、上場株は 2 銘柄で 0.25 億円ほどにとどまる。政策保有の持ち合いで利益をかさ上げする形ではない。
借入は返済を続けており、純現金が積み上がる。M&A の実績は目立たない。上場は東証スタンダードと名証メインで、小さな会社ゆえに買収される可能性はある。現金が厚いことが、買う側から見た魅力にもなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
筆者が強気に見るなら、論点は現金と集約の 2 つだ。純現金は 6 億円あり、時価総額の 7 割近い。事業が今の稼ぎを保つだけでも、現金と事業の合計は今の値段を上回る。
印刷の業界では中小の廃業が続く。製版から納品まで一括で請け、東京・大阪・名古屋に拠点を持つ光陽社には、廃業した会社の注文が流れ込む。中期経営計画は 2027 年 3 月期に営業利益 1.5 億円を掲げ、初年度は計画を上回った。
経営は現金を貯め込まない。配当性向 30% を目安に配当を出し、自社株買いを毎月続ける。自己株式は発行済みの 4 割を超え、残る株主の取り分は年々増える。
設備投資は年 0.4 億円と軽く、更新の負担で現金が細る心配は小さい。借金もほぼなく、金利が上がっても利払いは増えない。現金には 2% の利息が付き、利益を押し上げる。
株主が分散した小さな会社でも、現金が厚ければ買い手が現れる余地がある。事業の稼ぎに高い値を付けなくても、現金と事業の合計で見れば値打ちは今より高い。
慎重な見方
慎重な見方では、事業そのものに稼ぐ力がない。営業利益率は 2% 前後で、過去 12 年の最良でも 5% だった。10 年の間に赤字の年もあり、資本コストを稼げる会社には見えない。
紙の印刷物は縮み続ける。広告の予算はネットに移り、デザインや製版は AI で作業が置き換わりやすい。数量が 3 割以上減れば、固定費の重さで営業利益はすぐに赤字へ落ちる。
用紙・インキ・電力・人件費は物価で上がる。受注の価格は相見積もりで決まり、値上げを通すのが遅れる。従業員 170 人の人件費が物価で上がれば、利益はそこで消える。
現金は本物だが、株主の自由にはならない。経営が事業の維持に使い、効率の悪い設備投資や新規事業に流れる心配もある。自己株式が多く株主が分散していない分、外から資本政策に圧力をかけにくい。事業に値打ちがなければ、現金も時間とともに減っていく。
さらに、従業員の平均年収は物価とともに上がっており、会社が価格を転嫁できなければ、営業利益は 1 億円を割り込む年も多くなる。
どちらに重みを置いたか
事業の向きと稼ぐ力では慎重な見方が強い。ただ純現金が時価総額の 7 割近くあり、赤字に落ちても長く持ちこたえられる。中立に 38%、悲観側に合計 35%、楽観側に 27% を置いた。計画を上回った実績と現金への信頼でやや楽観を 20% 残し、縮む市場と小さな規模を重く見て悲観を 12% にした。 経営が現金を溜めるだけで戻さない恐れは小さくないので、現金の戻り方は 0.75 とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 507 円13 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 172 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 332 円8 億円、今との差 −6.4%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,078 円27 億円 | 310 円8 億円 | +291.0% | +14.6% | 97 円2 億円 |
| やや楽観 | 20% | 780 円19 億円 | 254 円6 億円 | +191.1% | +11.3% | 207 円5 億円 |
| 中立 | 38% | 567 円14 億円 | 202 円5 億円 | +116.4% | +8.0% | 292 円7 億円 |
| やや悲観 | 23% | 191 円5 億円 | 81 円2 億円 | −23.6% | −2.6% | 62 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 133 円3 億円 | 40 円1 億円 | −51.2% | −6.9% | 21 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 507 円13 億円 | 172 円4 億円 | +91.3% | +6.7% | 679 円17 億円 |
今の株価時価総額 355 円9 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 集約で受注が寄り、製版から納品までの一括が定着する 利益 2 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,078 円27 億円
中小の印刷会社の廃業が進み、光陽社に小ロットで短い納期の注文が寄る筋書きだ。紙の印刷物は縮むが、会社の数量は 10 年で 1 割弱の減にとどまり、価格も物価に近い水準で上がる。
企画から納品まで一括で請ける形が根づき、得意先の囲い込みが進む。営業利益率は 3.8% まで上がる。過去 12 年の最良 5.0% は下回る。
配当と自社株買いは利益の半分ほどを株主に戻す。純現金は事業の規模に見合う運転資金を除いて残り、現金の利息も利益を支える。
それでも ROE は 8% 近くで、資本コストにはまだ届かない。薄利の印刷で資本コストを超えるのは、この筋書きでも難しい。
- 印刷関連(製版・商業印刷・製品制作):数量 3,703(印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定))× 価格 166(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。数量 8% 減。価格は物価に近い 1.38 倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 11.74 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 3.8% は過去 12 年の最良 5.0% 以下で、会社の計画 2.9% を上回る。数量を 1 割弱の減にとどめ、値上げも通す必要があり 7%。
やや楽観 20% 計画どおりに営業利益 1.5 億円を保つ 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 780 円19 億円
紙の印刷物の数量は 10 年で 15% 減る。それでも会社は営業の努力で一括受注を伸ばし、数量の減りを 15% にとどめる。価格は物価をやや下回る。
営業利益率は 3.0% と会社の計画の水準を保つ。人件費と用紙の値上がりを、価格の改定でほぼ吸収する形だ。
配当と自社株買いは利益の半分ほどで続く。ROE は 6% 前後だ。
計画の 2027 年 3 月期以降も、会社は慎重に利益を積む。ただ大きく伸びる事業ではなく、資本コストには届かない。
10 年のうちに設備の更新は 1 回ほどで、投資額は償却を少し上回る。借入はほぼなく、金利の上昇で利払いが増える心配は小さい。
- 印刷関連(製版・商業印刷・製品制作):数量 3,421(印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。数量 15% 減。価格は 1.34 倍
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 11.09 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/03 期は計画を上回り、2027/03 期も営業利益 1.1 億円を予想する。計画の水準を 10 年保つ上振れとして 20%。
中立 38% 印刷は 2 割減、利益率は 2% 台で変わらない 利益 1 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 567 円14 億円
紙の印刷物の数量が 10 年で 2 割ほど減る筋書きだ。小さな会社が廃業して注文は寄るが、市場の縮みを打ち消すほどではない。
価格は用紙・インキ・人件費の上昇の一部を通すだけで、物価をやや下回る。営業利益率は 2.2% と、いまの水準を保つ。
本社や製版・デザインの人件費も物価で増える。設備の償却は軽く、取得した時の値段のままで、新しい設備の分だけ増える。
配当と自社株買いは利益の半分強で、ROE は 4% 台にとどまる。純現金は運転資金を除いて残り、現金の利息が利益の一部を占める。
10 年の売上は今とほぼ同じ 49 億円で、物価の分だけ名目が支えられ、数量の減りを打ち消す形だ。
- 印刷関連(製版・商業印刷・製品制作):数量 3,140(印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定))× 価格 156(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。数量 22% 減。価格は 1.30 倍で物価をやや下回る
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 10.9 倍、時価総額 12 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率は直近 5 年で 0.6〜2.1% にとどまる。会社の計画 2.9% は達成途上で、2.2% を中心に最も起こりやすい形として 38%。
やや悲観 23% 紙の印刷が 3 割減り、人件費で利益が消える 利益 0 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 191 円5 億円
デザインや製版の作業が AI と入稿のデータ化で値下がりし、紙の印刷物も 10 年で 3 割ほど減る筋書きだ。価格は物価を大きく下回る。
人件費は物価で上がるが、従業員は急には減らせない。営業利益率は 0.8% に落ちる。
配当は利益に沿って減り、自社株買いは止まる。純現金は事業の赤字を埋めるために少しずつ使われる。
会社は残る。ただ稼ぎは細り、現金の値打ちが時価総額の大半を占める。
資本政策は守りに入り、純現金の取り崩しを避けるための配当の抑制が続く。
小さな得意先の廃業も続き、受注の入れ替えに営業の費用がかかる。利益を守る手立ては、人員の自然減と設備の延命に限られる。
- 印刷関連(製版・商業印刷・製品制作):数量 2,737(印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定))× 価格 146(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。数量 32% 減。価格は 1.22 倍で物価を下回る
倍率:ROE 2% 弱で稼ぐ力は資本コストの 5 分の 1 ほど。利益が細る筋書きなので上限 11.4 倍の 6 割ほどの 7.0 倍。
確率:2021/03 期は営業利益率 −4.0% の赤字だった。製版の単価下落と人件費の上昇が重なれば十分ありうるので 23%。
悲観 12% 印刷が 4 割強減り、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 133 円3 億円
紙の印刷物が 10 年で 4 割強減り、価格競争が激しくなる筋書きだ。製版とデザインの作業は大きく縮み、会社の売上は 3 割台に落ちる。
固定費の人件費が重く、営業利益は赤字になる。従業員を減らして対応するが、希望退職の費用がかさむ。
配当は大きく減る。純現金は赤字で減り、経営の判断で事業の維持に使われる。少数株主には、現金の使い方を決める力がない。
値打ちは事業の稼ぎでなく、残った現金と売れる資産で決まる。土地は事業に使うので、すべては売れない。
取引先の廃業や統合が重なれば、小さな会社の得意先は急に減りうる。
- 印刷関連(製版・商業印刷・製品制作):数量 2,214(印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定))× 価格 132(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。数量 45% 減。価格は 1.10 倍で物価を大きく下回る
倍率:本業は赤字で稼ぐ力は無い。床は売れる資産と純現金で見て、今の自己資本 18.2 億円に 0.18 倍を掛けた約 3.3 億円。やや悲観と中立の PBR より低い。
確率:2009 年ごろは赤字が続き純利益 −6 億円だった。紙の減少と人件費の上昇が重なれば起こりうるので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
印刷関連(製版・商業印刷・製品制作)
チラシ・カタログ・パンフレット・ポスターの企画から製版、印刷、納品まで。POP・ノベルティの制作も含む。
| 数量印刷に使う用紙の量に換算した取扱量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,025 | 120 | 48 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,140 | 156 | 49 | 1 |
取り方:数量は開示が無いので推定。企画・製版・印刷・納品を含めた 1 トンあたりの売上を 120 万円(用紙量に換算した値)とみて、売上 48.3 億円から 4,025 トン相当と割り戻した。単一セグメントで、営業利益は 2026/03 期の実績 1.02 億円。
リスクと懸念
紙の印刷物の縮小
広告の予算はネットに移り、チラシやカタログの部数は減り続ける。数量が 10 年で 3 割を超えて減れば、固定費の重さで営業利益は赤字に落ちる。
人件費・用紙・電力の上昇
従業員は 170 人ほどで、人件費が物価で上がる。用紙・インキ・電力の値上がりも受注の価格にすぐには通らず、薄い営業利益率が簡単に消える。
AI による製版・デザインの置き換え
デザインや製版の作業は、AI が人の手を置き換えやすい。製品制作は売上の 16% ほどだが、単価が下がれば印刷の受注の入り口も失いかねない。
現金の使い方が少数株主に決められない
純現金は時価総額の 7 割近い。経営が事業の維持や新規事業に使い続ければ、現金の値打ちは時間とともに減る。自己株式が多く、外からの圧力は弱い。
小さな会社の事業の集中
単一セグメントで、得意先は分散するが事業は一つだ。主力の工場が災害や設備の故障で止まれば、代わりの生産拠点がない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3% 以上で 2 期続く
- 計画の水準を保てるとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 営業利益が 2 期続けて赤字になる
- 固定費の重さが表に出たとみて、悲観側の確率を上げる。
- 純現金を使った大型の買収や設備投資が出る
- 戻り方を見直し、現金の値打ちを下げる。
- 自社株買いや増配を拡大する
- 戻り方を上げ、現金の値打ちを高く見る。
- 他社が公開買付けを提案する
- 現金の厚さが評価される可能性があり、事業の稼ぎでなく現金を基準に見直す。
見ておくもの
- 営業利益率と受注の数量
- 純現金と自己株式の推移
- 配当性向と自社株買いの実績
- 製品制作の売上と単価
- 人件費と従業員数
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が全筋書きで k 8.75% を下回るので、上限 1÷k の 11.4 倍を基準に、利益の質で 7.0〜9.5 倍に置いた。今と過去の PER・PBR は見ていない。人件費と本社費は物価で増やし、設備の償却は取得した時の値段のままで置いた。現金は全額を足さず、戻り方 0.75 を掛けた。新リース会計基準で数字の形が変わるが、いまと同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.74 倍・やや楽観 PER 8.8→11.09 倍・中立 PER 8→10.9 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。同じ領域の KYORITSU 9.0%・光村印刷 8.5% の間。借金が無い分、KYORITSU より低い。