結論
イーディーピーは、人工ダイヤモンドを成長させるための種結晶と、次世代半導体向けの単結晶基板・ウエハを製造する大阪の材料メーカーだ。筆者の結論は明確に「割高」である。独自の結晶製造技術には価値があるが、種結晶は顧客の内製化と価格下落にさらされ、将来の主役である大口径ウエハは、まだ量産採用と利益率が実証されていない。
売上高は2023年3月期の27.1億円を頂点に急減し、2026年3月期には5.2億円に落ち込んだ。営業赤字は13.6億円で、設備減損を含む最終赤字は24.1億円に達した。2027年3月期第1四半期には種結晶の出荷再開で売上が回復したものの、依然として赤字である。半導体材料としての採用期待を、現在すでに確立した収益と混同してはいけない。
成長の焦点は、イオン注入と切り離し技術を使った大面積・高品質なダイヤモンドウエハに移った。ただし2インチ化では接合部の応力という壁があり、競合のオーブレーとエレメントシックスは別方式で大口径単結晶の開発を進めている。本田技術研究所との研究契約も2026年10月末の締結予定であり、量産購買契約とは異なる。
9月までの新株予約権行使と10月の新株発行を反映すると、現在の株式時価総額は約170億円である。10年後の収益を五つの筋書きで評価した現在価値は約48億円となり、その差は約72%に達する。非常に大きな上振れ余地は残るが、長く持つ株主が現時点で安心して支払える値段とは見ない。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主が問うべきことは、ダイヤモンドが優れた材料かどうかではない。会社がその優秀さを、競争相手に奪われにくい現金収入へ変えられるかどうかだ。製造のノウハウは確かに難しく、成功すれば高い利益を生む可能性がある。しかし、顧客が自家製造へ移れ、競合も大型結晶を作れるなら、結晶を作れるという事実だけでは値上げを通す権利にはならない。
株主のものになる利益は、会計上の利益から維持・更新投資を引いた後の現金で考える。2023年の好調期は設備を積み増す根拠になったが、その後に巨額の減損を出した。これは増分の投下資本利益率が安定して資本コストを上回ることを示す証拠ではない。2026年の増資も生存と研究開発には合理的だったが、既存株主にとっては持分希薄化という代価があった。
大口径ウエハには投資価値の核心がある。いったん顧客の量産工程に認定されれば、低欠陥で同一品質を長く納入する能力が乗り換え費用となり、持続的な利益が見えてくる。ただし本田技術研究所との契約協議は研究段階であり、自動車メーカーの量産売上の約束ではない。2インチでの技術上の遅延と、すでに2インチ以上に進んだ競合の存在は、成功確率を冷静に見る理由となる。
筆者なら、次の十年にこの事業が存続する可能性は認めるが、10年先の利益額には厚い安全域を求める。中立での収益改善は評価しても、株式時価総額約170億円を正当化するほどではない。新しい研究成果が次々に出ても、採用数量、面積当たり実現単価、設備更新後の現金収支が確認できるまでは、高い成長価値を先払いすべきではない。
何で稼ぐ会社か
同社の収益源は、化学気相成長法で作るダイヤモンド単結晶である。会社の法定報告は単一セグメントだが、買い手と価格の決まり方は異なるため、種結晶、半導体向け基板・ウエハ、宝石・原石、機能部材の四つに分けて見る。2026年3月期の製品別売上は、種結晶が1.17億円、基板・ウエハが3.49億円で、残りの原石・宝石と工業用部材は合わせて約0.5億円だった。
種結晶は、人工宝石メーカーが大きなダイヤを育てるときの出発点となる板である。顧客が追加発注する限り利益率は高くなりうるが、完成した結晶を切断して新しい種を作れるため、納入後も購入が続くとは限らない。顧客は主にインドなど海外の人工ダイヤ供給網に属し、2023年頃の販売急増と、その後の落ち込みが売上全体を振り回した。2026年3月期は輸出の制約が種結晶の販売を押し下げ、2027年3月期第1四半期には再出荷で一時的に売上が回復した。
基板・ウエハは、高電圧の制御装置、半導体の放熱、量子・高周波デバイスの研究開発に使われる。ダイヤモンドは熱を逃がす力が強く、半導体としても優れた物性を持つ。しかし、材料特性が優秀でも、研磨精度や欠陥、電極加工、安定した納期がそろわなければ量産ラインには入れない。会社は1インチウエハを製品化したが、2インチのモザイクウエハには接合応力という未解決の工程上の課題が残る。
宝石・原石は、製造した人工ダイヤを素材として流通させる事業で、研磨後の宝飾市場に近い。光学部品、ヒートシンク、工具素材は、熱伝導や硬さを生かす小規模な用途である。いずれも特定顧客の試作品や用途別仕様に左右されやすく、数量の公表はないため、将来の販売数量は受注金額と外部の用途別市況から推計した。
AIエージェント代替の対象となる人月、席課金、情報サービスは売っていない。問題はAIに作業を奪われることではなく、顧客が種結晶を内製できることと、ダイヤモンド以外の半導体材料でも目的を達せることである。
優良さと弱いところ
最大の強みは、産業技術総合研究所に由来する特許と、イオン注入を利用した結晶の分離・再利用、結晶成長、研磨のノウハウである。材料そのものを作れることと、均質な大口径材料を量産できることは別であり、後者が確立すれば顧客の認定に時間がかかるだけに乗り換え障壁が生まれる。ただし、現在のウエハ事業ではその壁が十分に築かれたとまでは言えない。
種結晶の堀は既に削られている。有価証券報告書は、顧客が購入した種から自前の種結晶を作る事例を明記している。種の再利用や競合製品の普及に対して、安定的に価格を引き上げられた証拠は乏しい。2023年3月期の営業利益率47%は、恒久的な競争優位というより、短期間の供給逼迫と価格・数量の好条件も含んだ数字と受け取るべきだ。
研究開発の方向には合理性がある。単に結晶を大きくするだけでなく、ボロンを加えた導電性基板、低欠陥化、表面研磨、モザイク接合を組み合わせる必要があるからだ。一方、2インチウエハの開発は会社の過去の目標から遅れており、研究成果が資本利益率の改善につながる時期は読みにくい。
2026年3月期の最終赤字と設備減損は、過去の増産投資が想定どおりの現金を生まなかった事実を示す。2023年から2026年にかけて自己資本は大幅に縮み、調達した外部資本に再び頼る構造になった。2026年秋には新株予約権の行使が完了して当面の手元資金は改善したが、既存株主の持分は薄まった。長期の持続的な高ROICは、まだ証拠より期待が先行している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
人工ダイヤモンドの産業は一つではない。宝石向けの種結晶と、半導体・熱対策向けの単結晶ウエハでは、顧客も市場の成熟度も違う。米国の婚約指輪では人工石の採用が広がっているが、供給量が増えた結果、人工石の卸価格は長期的に下落してきた。宝石の販売数量が増えることと、種結晶の単価や外販数量が伸びることは同義ではない。インドの宝石生産者による種の自家生産も、この乖離を大きくする。
半導体向けウエハ市場は、今の売上規模こそ小さいが、用途が確立すれば大きくなる余地がある。民間の市場推計には、単結晶ダイヤウエハを2025年に約0.9億ドルとみる狭義の調査も、ダイヤモンド半導体基板全体を数億ドルとみる広義の調査もあり、定義は一致しない。狭義の規模を150円換算した約140億円と同社の基板売上3.49億円を比べれば、粗い金額比率は約2.5%だが、製品範囲が異なるので正式な世界シェアとは呼べない。種結晶や工業用小物については、客観的な同一範囲の世界市場額も競合別シェアも開示されていない。
競争相手は小さくない。オーブレーとエレメントシックスは2026年に大型単結晶の共同開発を公表し、2インチ級の商業化と3インチ級の成果を示した。ダイヤモンドファウンドリーなども放熱材料の高品質化を進める。パワー半導体ではSiCやGaNの量産投資が先行しており、ダイヤモンドの優れた物性だけで既存の材料を追い出せるわけではない。用途開発が進んでも、価格の下がったSiCやGaNを選ぶ顧客は残る。
10年後に世界のダイヤモンドウエハ需要が増えるとしても、当社の取り分は製造歩留まりと品質認定の勝負で決まる。中立では狭義市場が現在の数倍に育つ一方、当社が売る基板・ウエハは約32億円、世界の同種材料市場の数%程度にとどまる姿を想定する。楽観なら大型化に成功してシェアを伸ばし、悲観なら用途そのものが研究止まりとなる。いずれも数量の伸びと、量産化に伴う面積当たり価格の下落を分ける必要がある。
資本政策と M&A
2026年5月27日公表の中期経営計画は、2027年3月期の売上高11億円、営業損失2.83億円から、2028年3月期に売上高15.3億円、営業損失0.05億円、2029年3月期に売上高20.8億円、営業利益1.95億円、純利益1.32億円を目指す。ROEや自己資本比率は重視する指標として挙げられているが、具体的な目標数値の記載はない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしで、今後の株主還元を前提に価値を高く見積もる理由にはならない。
資本配分は慎重に見る必要がある。2022年上場以来、成長投資を優先して配当はなく、2023年の好業績の後には販売急減と設備減損が起きた。2026年には第三者割当と第18回新株予約権により資金を調達し、9月までに同予約権がすべて行使された。さらに7月と10月の株式報酬も加わり、発行済株数は3月末から大きく増えている。買収による外延的な拡大より、インド・ベルギーの販売機能と、2インチ以上の開発設備を整える方針が中心である。
集めた現金は設備と研究のための資本であり、直ちに株主の余剰財産と見るのは適切でない。高騰した建設・装置価格により更新投資の現金負担は重くなるが、既存設備の減価償却は過去の取得価額で続く。この差を踏まえ、楽観で事業が軌道に乗った時にだけ小規模な還元が始まる筋書きとした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人工ダイヤの半導体利用は、技術の原理に無理があるわけではない。高い熱伝導性、高耐圧、放射線耐性といった性質は、電力制御や量子計測という成長市場の難題を解く手段になりうる。特に発熱が設計の制約となる装置では、従来の材料にない価値を提供できるため、性能で差が付けば高い価格を保つ可能性がある。
同社は産総研との研究に基づくイオン注入分離技術を使って、貴重な種結晶を繰り返し活用できる。1インチウエハの実売に至り、2インチ用の大面積モザイク結晶も作っている。品質の均一化と切断・研磨の歩留まりが改善すれば、売れる面積は数年で桁違いに増えるだろう。オーブレーやエレメントシックスとの競争は激しくなるものの、用途ごとに要求される導電性や欠陥密度は異なるため、必ずしも一社総取りの市場ではない。
本田技術研究所をはじめとする開発顧客の研究が実用段階に進めば、基板の反復購入が始まる。2029年の会社計画はまだ小さいが、その後の増産速度は計画期間より速くなる余地がある。設備は初期投資が重くても、歩留まりを確保できれば追加販売の利益率は高くなり、過去の2023年に近い会社全体の利益率を再現する可能性もある。
大口径品の量産に成功して半導体企業の認定を取れれば、研究設備への先行投資は長い期間の供給優位へ変わる。2026年秋の増資で得た資金は、その検証を途中で断念しないための時間を買った。種結晶も新しい輸出経路が定着すれば販売先を広げられるため、上振れの道は確かに残っている。
慎重な見方
同社の最大の問題は、技術を持つことと価格を決められることを取り違えやすい点にある。種結晶は顧客が納入品をもとに自家生産できる。会社自身の有価証券報告書にもその事例が記されている。かつての好調な売上と高い利益率は、恒久的な参入障壁よりも、人工宝石供給が不足した時期の需給を映していた可能性が高い。
代わりに成長の柱としたウエハも、既存企業を追い越す保証はない。オーブレーとエレメントシックスが2インチ級の商業生産を進めるなか、イーディーピーはモザイク接合部の応力に苦戦している。高品質な大口径材料ができても、SiCやGaNのコスト低下と量産実績を上回る性能上の差がなければ、採用は研究室内にとどまる。
財務と資本配分の履歴も楽観を許さない。2023年3月期には高い利益を稼いだが、わずか三年で売上は大幅に減り、2026年には設備減損を含む巨額赤字を計上した。損失を埋めて研究を続けるために、既存株主は新株の発行という代価を払っている。研究開発が数年延びれば、再び株式調達が必要になるおそれがある。
しかも、産総研特許群の独占的な実施権の期限は2026年10月末に近づいている。更新できなくても非独占での使用は継続可能とされるが、他社を排除する力は弱まりうる。特定顧客の研究契約への期待だけで企業価値を支えるのは危うい。市場が育つのを待つ十年が、収益を生まない設備の維持費だけを払い続ける十年に変わる可能性もある。
どちらに重みを置いたか
成長の芽がある点では強気の見方を退けない。だが、2026年時点で確認できるのは小規模なウエハ販売、製品開発の遅れ、種結晶の内製化と赤字、そして追加資金調達までである。技術の質が長い期間の価格決定力になるとの証拠はまだ足りない。確率は楽観とやや楽観の合計30%に対し、やや悲観と悲観を36%とやや下に寄せた。弱さの主因はAIではなく、競合の大口径化と顧客の量産採用時期を会社が制御できないことだ。中立で収益が回復しても、現在の株式時価総額との間には大きな開きが残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 603 円114 億円(+ 還元の換算額還元の合計 13 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 252 円48 億円、今との差 −69.1%、 期待の年率 −2.8%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 2,719 円515 億円 | 79 円15 億円 | +243.7% | +13.4% | 308 円58 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,090 円207 億円 | 21 円4 億円 | +36.5% | +3.2% | 211 円40 億円 |
| 中立 | 34% | 239 円45 億円 | 0 円0 億円 | −70.7% | −11.5% | 81 円15 億円 |
| やや悲観 | 24% | 59 円11 億円 | 0 円0 億円 | −92.8% | −23.1% | 14 円3 億円 |
| 悲観 | 12% | 16 円3 億円 | 0 円0 億円 | −98.1% | −32.6% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 603 円114 億円 | 13 円2 億円 | −24.3% | −2.8% | 616 円117 億円 |
今の株価時価総額 814 円154 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 大型ウエハの量産認定で飛躍 利益 44 億円 · PER 11.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,719 円515 億円
2インチ品の結晶欠陥と接合応力の問題を克服し、4インチを含む複数サイズの基板がパワー制御や放熱、量子用途の量産工程に採用される。ダイヤモンド材料の世界需要が拡大するだけでなく、イーディーピーは小さな研究試料の供給者から反復取引のある量産サプライヤーへ変わる。
オーブレーとエレメントシックスの大口径品は市場で共存するが、導電性、低欠陥、研磨技術の組合せで顧客を確保し、ウエハ販売は約117億円まで増える。大口径化と歩留まり改善により面積換算の販売枚数は増え、単価は下がっても粗利益額が伸びる。種結晶はインドなどの外部販売先を増やし、顧客内製化による喪失分を補って売上を約19億円に回復させる。
量産ラインの認定に伴う乗り換え負担が初めて明確な堀となり、本田技術研究所との研究も実装へ進む。2026年の増資資金は設備と量産開発に使い切るが、その後の研究費と設備更新を稼いだ現金で賄い、一部の還元が始まる。追加の株式発行に頼らないことが既存株主にとって最も大きな成果となる。
- 宝石成長用種結晶:数量 65,000(販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定))× 価格 29,000(1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 9 億円。宝石製造の外販売数と種の自製率を加減し、価格は需給とインフレを分けて判断
- 半導体向け単結晶基板・ウエハ:数量 90,000(1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算))× 価格 130,000(1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 117 億円・営業利益 82 億円。1インチ面積換算。大口径・品質認定の数量増と歩留まり改善による価格低下を分離
- 人工宝石・原石:数量 50,000(原石・宝石の販売個数(個、試算))× 価格 25,000(原石・宝石1個の平均売上(円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。人工石の卸売価格低下を織り込む。流通小売価格と混同しない
- 光学・放熱・工具用部材:数量 8,000(用途別部品の契約換算数量(件、試算))× 価格 160,000(1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。光学・放熱・工具の用途別受注を件数換算。SiCなど代替材料との競争を反映
倍率:ROE22.68%、k9.5%、堀weakで超過ROE残存1/3からRONIC13.89%。g_long2.5%とすると正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.715倍。競争と価格低下は既に数量・単価・gに反映し、上限を任意に割り引かない。現金は研究投資に必要なため別建て加算なし。
確率:大口径化と顧客認定の双方が成功し、競合の大型製品と差別化できる筋書きは存在する。ただし2インチの未達から4インチ量産と反復受注まで連続して実現する必要があるので、確率は11%にとどめる。
やや楽観 19% ウエハ採用が進み高収益化 利益 19 億円 · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,090 円207 億円
大口径ウエハは研究室の試作品から実用材料へ進むが、競争相手との規格争いは長引く。オーブレーとエレメントシックスが得意とする用途を避け、ダイヤモンドの純度や導電性で差別化できる分野に集中する。世界の市場規模は大きくなり、同社も反復受注を増やすが、数量の拡大を引き出すには面積当たりの販売単価を下げなければならない。
基板・ウエハの売上は約62億円へ増える。種結晶は宝飾品の数量回復と輸出再開の恩恵を受けるが、インドでの自家製種の普及が重荷となり、ピーク時の価格支配力を回復することはない。宝石そのものと工業用部材は副次的な利益源にとどまる。
研究開発と設備更新には引き続き費用がかかるが、顧客認定を終えた製品の売上が増え、固定費を十分に吸収できる。2026年に調達した株主資本が初めて正の利回りを生み始め、会社全体の純利益は18.5億円に届く。株主還元は限定的であり、大半は技術改良と運転資金に再投資される。
- 宝石成長用種結晶:数量 48,000(販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定))× 価格 24,000(1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。宝石製造の外販売数と種の自製率を加減し、価格は需給とインフレを分けて判断
- 半導体向け単結晶基板・ウエハ:数量 44,000(1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算))× 価格 140,000(1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 62 億円・営業利益 43 億円。1インチ面積換算。大口径・品質認定の数量増と歩留まり改善による価格低下を分離
- 人工宝石・原石:数量 30,000(原石・宝石の販売個数(個、試算))× 価格 20,000(原石・宝石1個の平均売上(円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。人工石の卸売価格低下を織り込む。流通小売価格と混同しない
- 光学・放熱・工具用部材:数量 4,400(用途別部品の契約換算数量(件、試算))× 価格 150,000(1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。光学・放熱・工具の用途別受注を件数換算。SiCなど代替材料との競争を反映
倍率:ROE15.42%、k9.5%、堀weakで超過ROE残存1/3からRONIC11.47%。g_long2.5%とすると正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.173倍。競争と価格低下は既に数量・単価・gに反映し、上限を任意に割り引かない。現金は研究投資に必要なため別建て加算なし。
確率:競合と市場を分け合いながら2インチ級材料の受注を増やす可能性は高成長の筋書きより現実的である。ただし量産工程の認定時期は不明であり、19%とする。
中立 34% ウエハが育つが資本効率は並以下 利益 4 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 239 円45 億円
人工ダイヤモンドは電力用デバイスの一部や熱対策で使われるようになり、世界市場は現在の数倍に広がる。ただしSiCやGaNの費用対効果が改善し、ダイヤモンドの採用は性能が特に重要な用途へ限られる。オーブレーとエレメントシックスも量産品を供給するため、イーディーピーは顧客の認定を得ても価格を自由に上げられない。
基板・ウエハの販売は面積換算で現在の約18倍まで広がるが、量産歩留まりの向上と競合の値下げにより、面積当たり単価は現在の約半分になる。それでも売上は約32億円に達し、種結晶の約7億円を上回る中核事業として定着する。種結晶は輸出網の回復とともに買い手を増やすが、自製率の上昇で以前のような独占的利益は出ない。
研究費、電力費、人件費、更新設備の減価償却が利益を抑え、会社全体の営業利益は6億円にとどまる。2026年の大型増資で厚くなった自己資本を用いるとROEは約6.5%であり、株主が求める利回りには届かない。事業は生き残り、新しい製品も育つが、所有者にとっての経済的な成功とはまだ言い難い。
- 宝石成長用種結晶:数量 36,000(販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定))× 価格 19,000(1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。宝石製造の外販売数と種の自製率を加減し、価格は需給とインフレを分けて判断
- 半導体向け単結晶基板・ウエハ:数量 18,000(1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算))× 価格 180,000(1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 23 億円。1インチ面積換算。大口径・品質認定の数量増と歩留まり改善による価格低下を分離
- 人工宝石・原石:数量 18,000(原石・宝石の販売個数(個、試算))× 価格 17,000(原石・宝石1個の平均売上(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。人工石の卸売価格低下を織り込む。流通小売価格と混同しない
- 光学・放熱・工具用部材:数量 2,500(用途別部品の契約換算数量(件、試算))× 価格 150,000(1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。光学・放熱・工具の用途別受注を件数換算。SiCなど代替材料との競争を反映
倍率:純利益4.3億円÷自己資本66億円=ROE6.52%はk9.5%以下。再投資の正の超過利益を見込めないので、SCHEMA§1-1の上限PER=1÷k=10.526倍を用いる。今の市場PERではなく長期の稼ぐ力の上限であり、余剰現金は別建てでない。
確率:2029年の会社計画を通過点とし、大口径化は一部成功するが市場では競争的な価格が定着する。利益は黒字に戻るものの資本コストを超えるROEまでは回復しない中心像として34%とする。
やや悲観 24% 量産採用が遅れ収益を回復できない 利益 −2 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 59 円11 億円
ダイヤモンド材料の技術研究は続くが、製造工程への採用は想定より遅い。電力デバイスの主流はSiCとGaNが占め、大口径ウエハの製造ではオーブレーなどの競合が先に歩留まりと品質認定を積み上げる。イーディーピーは研究機関や専門用途の小口発注を維持するものの、量産工場からの定期発注を得られない。
種結晶の顧客には供給を続けるが、海外宝石メーカーの自家製造が進み、外販枚数と実現単価の双方が縮む。ウエハの売上も9億円弱にとどまり、宝石や光学・工具部材で固定費を補うことはできない。研究部門の一部を縮小し、採算に見合わない製造設備を止めるが、残る専門人員の費用は消えない。
10年後も売上は12億円程度で営業赤字が続き、経営は保有設備の売却や再編の選択を迫られる。追加増資を避けるため研究投資を削れば、それがさらなるシェア低下につながる。積み上げた現金は赤字と更新費に消費され、2026年に調達した資本の多くは回収されない。
- 宝石成長用種結晶:数量 14,000(販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定))× 価格 14,000(1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。宝石製造の外販売数と種の自製率を加減し、価格は需給とインフレを分けて判断
- 半導体向け単結晶基板・ウエハ:数量 4,500(1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算))× 価格 190,000(1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。1インチ面積換算。大口径・品質認定の数量増と歩留まり改善による価格低下を分離
- 人工宝石・原石:数量 5,000(原石・宝石の販売個数(個、試算))× 価格 10,000(原石・宝石1個の平均売上(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人工石の卸売価格低下を織り込む。流通小売価格と混同しない
- 光学・放熱・工具用部材:数量 1,000(用途別部品の契約換算数量(件、試算))× 価格 120,000(1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。光学・放熱・工具の用途別受注を件数換算。SiCなど代替材料との競争を反映
倍率:悲観側の床の倍率は2036年の自己資本22億円には掛けず、2026年3月期の自己資本17.1億円を基準にする。17.1億円×PBR0.65=11.115億円。PBR0.65は過去の市場評価からではなく、量産認定の遅れ、設備の売却困難性、赤字継続による資本回収能力を考慮した評価である。10年後の自己資本22億円は損益・資本移動の結果を示すもので、床の倍率を掛ける基礎にはしない。2036年時点の純現金と売却可能資産の税後評価10億円も下回らない。純利益は赤字のためPERは用いない。
確率:基板の研究段階が長引き、輸出再開後の種結晶にも顧客自製の圧力が続く筋書き。過去3年の損失と競合の先行を根拠に24%とし、下振れの確率を軽くしない。
悲観 12% 技術競争で敗れ大幅縮小 利益 −6 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16 円3 億円
2インチの量産品質を確立できず、4インチへの研究投資も採算上の限界に達する。世界のダイヤモンドウエハ市場自体は成長しても、オーブレー、エレメントシックスなどに主要顧客の認定と大量発注が集中する。イーディーピーは少数の特殊基板だけを供給する企業になり、研究開発の規模を大きく縮める。
宝石用種結晶はインドを中心とする顧客が独自に増殖し、外部購入の必要が一段と薄れる。価格も物価上昇に逆行して下がる。宝石・工業部材の販売はごく小規模にとどまり、広い商品群を維持するほどの収益は得られない。ダイヤモンドが優秀な材料であることと、同社の株主に利益が残ることは無関係だと明らかになる。
経営は工場と研究人員を縮小し、設備を減損・売却して資金を確保する。会社は小さな専門事業として残っても、毎年の赤字と設備処分で2026年の増資資金を大半失う。大型企業からの買収提案があったとしても、高い成長プレミアムではなく残る特許ノウハウと使用可能な資産だけを評価される厳しい十年となる。
- 宝石成長用種結晶:数量 5,000(販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定))× 価格 9,000(1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。宝石製造の外販売数と種の自製率を加減し、価格は需給とインフレを分けて判断
- 半導体向け単結晶基板・ウエハ:数量 1,000(1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算))× 価格 180,000(1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。1インチ面積換算。大口径・品質認定の数量増と歩留まり改善による価格低下を分離
- 人工宝石・原石:数量 1,500(原石・宝石の販売個数(個、試算))× 価格 7,000(原石・宝石1個の平均売上(円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人工石の卸売価格低下を織り込む。流通小売価格と混同しない
- 光学・放熱・工具用部材:数量 350(用途別部品の契約換算数量(件、試算))× 価格 100,000(1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。光学・放熱・工具の用途別受注を件数換算。SiCなど代替材料との競争を反映
倍率:10年の業況悪化と資産減損後の自己資本6億円×PBR0.50=3億円。PBRは過去の谷の市場評価でなく、設備の売却困難性と赤字継続による資本回収率を反映し、税後で現金化できる資産の床と照合する。純利益-5.5億円が赤字なのでPERは使用しない。
確率:大口径品の歩留まりと顧客認定に失敗し、種結晶の供給先も内製へ移る複合悪化。存続・再資金調達を巡る危険はあるが事業すべてが消えるとは限らず12%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宝石成長用種結晶
人工宝石の化学気相成長に使う種結晶。海外の宝石製造会社に販売し、顧客による自家製種との競争を受ける。
| 数量販売種結晶の枚数(枚、5~15ミリ級の各種サイズを平均した仮定) | 価格1枚当たり実現売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 23,439 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 36,000 | 19,000 | 7 | 3 |
取り方:2026年3月期有報の製品種類別売上117,197千円を正とする。販売枚数・契約単価は非開示。中国系販売業者の公開表示(https://www.made-in-china.com/products-search/hot-china-products/CVD_Diamond_Seed.html、実際の取引価格ではない)で小型が数十~百ドル台、大型が数百ドル台に分かれることと、会社開示の5~15mm製品構成を参考に、売上1.17197億円を仮の5,000枚×平均23,439.4円で示す。会社の実際の販売数量や単価と主張しない。営業利益0.35億円は本社・研究開発費控除前の仮定の製品貢献額で、全社営業損益との残差は共通固定費である。
半導体向け単結晶基板・ウエハ
研究開発用から量産化を目指す単結晶基板。熱対策、パワー、量子用途へ向け、大口径と導電性・低欠陥が技術課題となる。
| 数量1インチ面積換算の販売基板・ウエハ枚数(枚、試算) | 価格1インチ面積換算1枚当たり実現売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 349,489 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 18,000 | 180,000 | 32 | 23 |
取り方:2026年3月期有報の基板・ウエハ売上349,489千円を正とする。直径1インチ製品は2025年4月に製品化されたが、小片基板を含む実販売面積・枚数・平均契約単価は非開示。各種サイズを1インチの面積に換算した仮の1,000枚×平均349,489円として分解する。メーカーが大型化後に面積当たり価格の引き下げを要求されるとの有報記載と、オーブレー・エレメントシックスの2~3インチ成果を将来価格へ反映。狭義の世界市場は民間推計(https://www.intelmarketresearch.com/single-crystal-diamond-wafer-market-31057)で2025年約0.92億米ドルだが、定義差があり公的統計ではない。製品貢献利益1.1億円は開示数値ではない。
人工宝石・原石
自社成長品を宝飾素材として販売する。人工宝石の供給過剰により単価下落圧力を受ける。
| 数量原石・宝石の販売個数(個、試算) | 価格原石・宝石1個の平均売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 32,060 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 18,000 | 17,000 | 3 | 1 |
取り方:有報の宝石22,075千円と原石367千円の合計22,442千円を正とする。カラット数や個数は開示がないので、製品ミックスを仮の700個×32,060円で表す。宝石店の小売価格ではなく、製造会社の原石・卸売に近い実現単価を想定し、将来の値下がりは人工石の卸売供給過剰を根拠にする。製品別営業損益は未開示のため仮の貢献額。
光学・放熱・工具用部材
光学部品、熱拡散用ヒートシンク、特殊工具用の単結晶素材。用途別仕様が異なる少量受注品である。
| 数量用途別部品の契約換算数量(件、試算) | 価格1件当たり平均売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 137,105 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 150,000 | 4 | 2 |
取り方:有報の光学部品・ヒートシンク17,333千円と工具素材10,088千円の合計27,421千円。市場では研磨工具の超高圧合成材、放熱部材の他方式などが競合し、統一された部品単価や世界シェアはない。仮の200契約換算件数×137,105円で分解したもので、実際の請求書件数ではない。10年の価格は製品の標準化と他材料との競争を反映する。
リスクと懸念
種結晶の自家製造と価格の下落
人工宝石メーカーは一度購入した種を利用して結晶を育て、その結晶から新しい種を切り出せる。有報は実際に自家製造へ移った取引先の存在を示す。人工宝石の最終需要が増えても、外部に売れる種の枚数と平均単価が伸びないことがある。輸出手続きの回復だけで構造的な競争力が戻ったと判断するのは危険である。
ウエハ大口径化の遅れと競争
2インチのモザイクウエハでは接合部に想定外の応力が生じ、当初の開発期限に間に合わなかった。オーブレーとエレメントシックスは同時期に2インチ級の事業化と3インチ級の試作を進めており、先行する競合の顧客認定が固まれば後発の採用は難しくなる。面積だけでなく欠陥と研磨精度を同時に満たす必要がある。
資本調達と既存株主の持分希薄化
2026年には第三者割当と300万株相当の第18回新株予約権の全行使により、発行済株数が大きく増えた。研究設備が先行して利益を生まなければ追加の増資や株式報酬が必要になりうる。設備投資の総額だけでなく、既存株主1株が将来の利益と現金の何割を所有できるのかを追う必要がある。
産総研特許の独占実施権が切り替わる可能性
産総研の特許15件に関する独占的な通常実施権は、2026年10月31日が公表された許諾期間の満了日である。更新で合意できない場合にも非独占の利用は継続できると会社は説明しているが、同じ基本技術を他社に許諾される可能性が残る。権利そのものの喪失と、競合を排除する力の低下は区別して評価すべきである。
SiC・GaNに対する量産経済性の不足
ダイヤモンドは熱伝導と耐電圧の物性で優れても、量産工程の歩留まりや面積当たり価格が高ければSiCやGaNに置き換われない。顧客の試作購入と、設備の認定が済んだ後に毎月安定して注文が出ることは別である。研究用途が増えても、会社が投じた装置の減価償却と更新費用を回収できないおそれがある。
固定費と更新設備の現金流出
2026年3月期の売上は小さく、研究開発と製造設備を維持する固定費が利益を大きく上回った。設備の帳簿価額は既に減損していても、将来の新しい装置には上昇した製造・建設コストがかかる。古い設備の償却費が減り会計上は利益が出ても、更新投資によって現金が流出する点に注意が必要だ。
大口顧客の契約時期と輸出規制
2026年3月期は本田技術研究所向け売上が全体の約27%を占めたが、新たなダイヤモンドデバイス研究契約の締結予定は8月から10月末へ延期された。販売網はインド等の輸出条件にも影響され、海外向け種結晶の出荷が止まれば工場の稼働率が急落する。共同研究の予算と量産購買契約を混同しないことが重要である。
今後の分かれ目
- 2インチの低欠陥ウエハの量産出荷と顧客認定が確認され、4インチ開発の歩留まりまで開示されたら
- 中立のウエハ販売数量と営業貢献利益率を上方修正できる。競合より早い顧客認定の継続が確認できれば、堀の評価とやや楽観の確率も再検討する。
- 2029年3月期の会社計画である売上20.8億円・営業利益1.95億円を現金収支の改善を伴って達成したら
- 固定費吸収と増分の資本効率が確認できる。設備投資を差し引いた現金創出額が続くかを確かめた上で、中立の利益と将来還元を引き上げる。
- 種結晶の販売数量が回復しても実現単価が下がり続け、顧客の自製率が上がったら
- 種結晶の長期数量と利益率を下げ、ウエハ以外の収益で研究費を支える力が弱まるとして、やや悲観と悲観を厚くする。
- オーブレーやエレメントシックスの大型ウエハが主要顧客の量産ラインに先に採用されたら
- 大型化が成功しても当社の得られるシェアは小さいと判断し、ウエハの10年販売数量と利益率を下方修正する。
- 産総研・AIST Solutionsとの独占ライセンスの更新が不成立となり非独占へ移ったら
- 特許を使えなくなるとは解釈しない一方、排他的な技術優位の持続期間を短く評価する。模倣参入による単価圧力を強める。
- 今後2年で本田技術研究所などとの契約が研究試料から継続的な量産購買へ変わったら
- 実需と試作が区別できるようになるため、楽観の確率を引き上げる。ただし顧客別売上と歩留まりの開示を伴わなければ価格決定力の評価は据え置く。
- 営業赤字が続き、追加の新株予約権や株式発行で資金をつなぐ方針が出たら
- 新たな現金流入は会社全体の資本には入れるが、既存株主の取り分を希薄化係数で別途引き下げる。株式発行を成長そのものと取り違えない。
見ておくもの
- 2026年10月末を期限とする産総研・AIST Solutionsとの独占実施許諾の更新・変更条件
- 本田技術研究所との共同研究契約の正式締結、研究から量産購買への移行
- 2インチウエハの低欠陥・研磨品質・製造歩留まりと4インチ開発の節目
- 四半期の種結晶と基板・ウエハの売上高、平均実現単価、顧客の種結晶内製率
- 第18回予約権全行使後の四半期自己資本、追加調達の有無、設備投資・営業CFの差
- 2029年3月期の中期計画に対する実績利益と還元方針
- オーブレー・エレメントシックスの量産出荷、SiC・GaN代替との費用差
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の市場株価は、価値のシナリオを決め終えた後の比較にのみ使う。添付の株数16,474,684は7月時点の途中の数値であり、2026年3月末15,474,600株、6月の第三者割当472,500株、第18回予約権300万株全行使、7月の株式報酬8,000株、10月の同3,100株により発行済18,958,200株と計算した。直近短信の自己株416株を除く18,957,784株で比較時価総額は170.24億円となる。数量は公開された製品別金額を起点に、未開示の個数と単価を明示的に仮定して分けた。倍率はROEと資本コスト9.5%、長期名目成長2.5%、弱い堀の正当化式で独立に決めた。営業利益に繰り入れる共通研究・設備費はインフレ後の新設備償却と旧設備償却を区別する。2028年3月期の新リース基準の表示変更は価値の上積みに使わない。やや悲観のPBR0.65は10年後の自己資本22億円ではなく、直近実績の自己資本17.1億円に適用し、時価総額11.115億円とした。悲観側の床は10年の赤字と資産減損後に残る売却可能額から見積もり、今の純資産をそのまま床にしていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。通常の株式資本コスト7.5%に、利益変動と価格競争の質的補正1.0%、3期連続赤字による追加1.0%を足す。株価βや時価総額規模の上乗せは行わない。