結論
リーガルコーポレーションは、紳士靴の「リーガル」を作り、直営店と百貨店・靴店で売る老舗だ。売上は228億円で、6割強を119の直営店が占める。1990年に米国の本家から商標を買い取り、日本のブランドとして育ててきた。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段は高い、というものだ。2026年3月期は営業赤字で、過去12年で利益率が5%を超えたのは4回しかない。服装のカジュアル化で、革の紳士靴の市場は細り続けている。
会社は手を打っている。新潟の工場を止め、希望退職を募り、本社の土地建物も売る。総還元性向50%以上を掲げ、自社株買いも続ける。ただ、その原資の多くは持ち合い株や不動産の売却で、本業の稼ぎではない。
目立つ資産は、筆頭株主ニッピの株だ。帳簿で40億円を超え、時価総額の7割に当たる。筆者はこの株を、売却の実績があることから余った資産として数えた。それでも、本業が立ち直らなければ価値は今の値段に届かない。資産を売って配当を払う形が、いつまで続くかが10年の分かれ目だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「ブランドは残るが、事業はオーナーとして持ちたい形ではない」と見る。
リーガルの名前には価値がある。ただ、その価値が利益に表れたのは10年以上前のことだ。今は、ブランドを守るための店と工場の固定費が、稼ぎを食っている。
経営の資本の使い方は、ここ数年で変わった。工場を止め、人を減らし、持ち合い株と本社を売って還元に回す。株主から見れば正しい方向だ。ただ、資産を売って配当を払う形は長くは続かない。いずれ本業の稼ぎで配当を払える形に戻らなければならない。
安全域は資産にある。ニッピ株と不動産は、本業が不振でも株主の価値の床になる。それでも、稼ぐ力で測った価値と資産を足して、今の値段に届かない。
筆者が経営に望むのは、店の数をさらに絞り、修理と直営の強みに集中することだ。売上は減っても、利益の質は上がる。その姿が見えるまでは、資産の厚さだけを理由に買う会社ではない。
何で稼ぐ会社か
事業は靴の小売と卸売の2つだ。2026年3月期の売上は、小売が144億円、卸売が84億円だった。どちらも赤字で、全社の営業損失は3.9億円だった。
小売は、リーガルの直営店とリーガルシューズの店、アウトレットなど119店だ。直営なので売値をそのまま受け取れるが、店の家賃と人件費は固定費として毎年かかる。客が1割減れば、利益はすぐ赤字に傾く。
卸売は、百貨店や量販店、靴の専門店に売る。紳士靴のほか、婦人靴や子ども向けの学生靴も扱う。百貨店の売り場が縮むなか、卸の売上は前期から6%減った。
作るのは主に岩手と新潟の自社工場だった。グッドイヤー・ウェルト製法という、底を縫い付けて何度も張り替えられる作り方が看板だ。ただ、新潟の工場は2026年2月に操業を止め、生産能力は3割近く減る。外部の工場や海外での生産に頼る割合が上がる。
決算期は2月末に変わり、2027年2月期は11か月の変則決算になる。
利益の形は、店と工場の固定費で決まる。売上総利益率は5割前後と高いが、家賃と人件費がその大半を食う。売上が1割増えれば利益は大きく戻り、1割減れば赤字が膨らむ。ここ数年は、その減る側に振れ続けてきた。
優良さと弱いところ
事業の質は、ブランドは良いが、稼ぐ仕組みが弱い。
強みはリーガルの名前だ。60年以上、日本のビジネスマンの革靴として知られ、修理して長く履く靴という評判がある。底を張り替える修理の仕組みは、客を店に呼び戻す。訪日客が日本製の革靴を買う動きも追い風になる。
弱みは、その名前が値段の力に変わっていないことだ。営業利益率は2014年3月期の8.5%を最後に下がり続け、コロナ後は1〜2%に沈んだ。服装のカジュアル化でスニーカーに客を取られ、革靴の売り場は縮む。
固定費の重さも弱みだ。119店の家賃と、自社工場の人件費は売上が落ちても減らない。会社は工場を止め、人を減らして固定費を削っているが、それが利益率をどこまで戻すかはまだ見えない。
資本効率は低い。ROE(自己資本利益率)は過去10年の中央値が3%台だ。資産を売って還元する動きは正しいが、本業の稼ぎが戻らない限り、ROEは資本コストに届かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
革の紳士靴の市場は、数量で見ると構造的に縮んでいる。スーツを着る人が減り、在宅勤務やビジネスカジュアルが広がった。通勤の靴はスニーカーや、軽い合成素材の靴に置き換わっている。
国内の靴の市場は、多くを海外生産の安い靴が占める。量販のABCマートやチヨダが低価格帯を押さえ、高価格帯では海外の高級ブランドと、日本の手作りの小さな工房が競う。リーガルはその間の、品質と値段の釣り合いで勝負してきた。
百貨店の靴売り場は縮み、卸の行き先は細る。一方で、直営店と自社のネット通販で売る割合は上がっている。値引きを抑えて売れれば、利益率は卸より高い。
値段は物価並みに上がると筆者は見る。革や人件費が上がり、同業も値上げを続けているからだ。ただ、値上げで客がスニーカーに流れる恐れもある。
10年の中立では、小売の販売足数は2割、卸は3割強減ると見る。訪日客と修理の需要がその減り方を少し和らげる。
人手の面では、靴を縫う職人の高齢化が進む。国内で手作りの革靴を作れる工場は減り、残る工場の値打ちは上がる。ただ、それは作り手の側の話で、買い手の数が減る流れは変わらない。リーガルにとっては、工場を持つことが強みにも重荷にもなる。
資本政策と M&A
還元の方針は総還元性向50%以上で、2026年3月期も期末配当を据え置いた。配当の総額は年2億円強で、ここ数年の純利益を上回る。2026年5月からは自社株買いも続けている。
原資は資産の売却だ。2026年3月期に持ち合い株を売って12億円の売却益を出し、本社と大阪支店の設備も売る契約を決めた。筆頭株主のニッピとは株を持ち合っており、その株は帳簿で40億円を超える。
株主優待は自社の店で使える買物券で、会社の負担は年1億円に届かないとみる。
大株主はニッピ(13%)、平和、中央建物、靴の小売のダブルエーなどだ。親会社はいない。靴の同業による買収や、ニッピとの関係の見直しが、10年の分かれ目になりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リーガルは、日本で最も知られた紳士靴のブランドの1つだ。60年以上、ビジネスマンの足元を支え、修理して長く履く靴という評判を築いた。この評判は、安い海外の靴にはまねできない。
会社はやっと本気で動いた。新潟の工場を止め、希望退職を募り、本社も売る。固定費が下がれば、売上が少し減っても利益は戻る。コロナ前の普通の年には、営業利益率は3〜5%あった。
追い風もある。訪日客は日本製の革靴を好み、直営店の客になる。長く使える物を選ぶ若い客も増えている。
資産も厚い。ニッピ株は帳簿で40億円を超え、本社の土地建物も売れる。自己資本137億円に対して、時価総額は6割に届かない。総還元性向50%以上の方針で、資産は株主に戻りつつある。
ブランドは、一度失うと二度と作れない資産だ。リーガルの名前を欲しがる靴の同業や投資ファンドは必ずいる。今の値段は、その名前の価値をほとんど数えていない。本業が少し戻るだけで、値段の見え方は大きく変わる。
慎重な見方
ブランドが有名でも、稼げなければ意味がない。リーガルの営業利益率は2014年3月期の8.5%を最後に下がり続け、2026年3月期は赤字だった。名前の力は、もう値段の力になっていない。
市場は戻らない。スーツを着る人は減り、通勤の靴はスニーカーに替わった。値上げを続けるほど、客は手ごろな靴に流れる。百貨店の靴売り場も縮み、卸の行き先は細る。
還元も本物ではない。配当の総額は純利益を上回り、持ち合い株と本社の売却で払っている。売る物が尽きれば、還元は細る。
工場を止めたことも、ブランドには諸刃の剣だ。自社で作る量が減れば、品質と評判を保つのは難しくなる。固定費の削減は1度きりの効果で、市場の縮みは毎年続く。
借金も軽くない。純有利子負債は60億円を超え、金利が上がれば利払いが利益を削る。ニッピ株の値打ちは、ニッピの株価しだいで上下する。資産があるから安全だという見方は、資産の値段が動かないことを前提にしている。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みと経営の動きについては、強気の言い分に理がある。ただ、10年の価値を決めるのは本業の稼ぐ力で、それは市場の縮みに押されて資本コストに届かない。確率は中立を中心に置き、赤字の実績と市場の縮みを見て慎重な側をやや厚くした。資産の売却で還元が続く間は株主の取り分は保たれるが、それは本業の価値ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,961 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 689 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,326 円38 億円、今との差 −35.9%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,922 円142 億円 | 1,217 円35 億円 | +196.8% | +11.5% | 430 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,000 円86 億円 | 973 円28 億円 | +92.1% | +6.7% | 795 円23 億円 |
| 中立 | 38% | 1,856 円53 億円 | 765 円22 億円 | +26.7% | +2.4% | 996 円29 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,043 円30 億円 | 417 円12 億円 | −29.4% | −3.4% | 321 円9 億円 |
| 悲観 | 13% | 626 円18 億円 | 209 円6 億円 | −59.7% | −8.7% | 108 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,961 円56 億円 | 689 円20 億円 | +28.1% | +2.5% | 2,650 円76 億円 |
今の株価時価総額 2,068 円59 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% ブランドが息を吹き返し、利益率が5%を超える 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,922 円142 億円
筆者が描く上振れは、リーガルの名前がもう一度値段の力に変わる姿だ。日本製の革靴を買う訪日客が増え、直営店の客数はほぼ保たれる。修理と張り替えの需要も、長く履く靴を選ぶ若い客を呼ぶ。
値上げは物価を上回って通り、1足の値段は1.4倍を超える。工場の停止と希望退職で固定費は下がり、小売の利益率は5.5%と2014年以来の水準に戻る。卸も絞り込んだ取引先で利益を出す。
利益が戻るので、配当は本業の稼ぎで払えるようになる。総還元性向50%を守り、10年で35億円を返す。ニッピ株は持ち続けるが、本業の回復で株主の取り分ははっきり増える。
- 靴小売(直営店・ネット通販):数量 55.0(販売足数(万足、推定))× 価格 3.60(1足あたりの売上(万円、推定))→ 売上 198 億円・営業利益 11 億円。訪日客・修理で客数を保つ
- 靴卸売:数量 50.0(出荷足数(万足、推定))× 価格 1.82(1足あたりの卸値(万円、推定))→ 売上 91 億円・営業利益 4 億円。取引先を絞って黒字
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の前の計画の目標(営業利益率5%)は届かなかった。訪日客と修理の需要、固定費の削減がすべて効く必要があり、1割に届かない確率とした。
やや楽観 20% 固定費の削減が効き、利益率が3%台に戻る 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,000 円86 億円
工場の停止と人員の削減で、固定費は年数億円下がる。小売の足数は1割強減るが、値上げと直営の比率の上昇で、売上はほぼ保たれる。
小売の利益率は3.5%、卸は3%に戻る。コロナ前の普通の年の水準だ。家賃と人件費は物価並みに上がるが、値上げがそれを吸収する。
純利益は5億円台になり、配当は本業の稼ぎでおおむね払える。本社の売却代金と合わせて、10年で28億円を返す。ROEは4%で資本コストには届かないが、資産を食いつぶす形からは抜け出す。ブランドの価値が利益に表れ始め、修理と直営の強みが固定費の重さを上回る。
- 靴小売(直営店・ネット通販):数量 50.0(販売足数(万足、推定))× 価格 3.45(1足あたりの売上(万円、推定))→ 売上 173 億円・営業利益 6 億円。足数1割強減・値上げは物価超え
- 靴卸売:数量 46.0(出荷足数(万足、推定))× 価格 1.78(1足あたりの卸値(万円、推定))→ 売上 82 億円・営業利益 2 億円。コロナ前の水準
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の停止と希望退職は実行済みで、固定費が下がる効果は確かだ。売上の減り方が緩やかなら3%台の利益率は届くので2割。
中立 38% 市場の縮みを値上げで埋め、利益率は2%にとどまる 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,856 円53 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、縮む市場の中で何とか黒字を保つ姿だ。小売の足数は2割減り、卸は百貨店の売り場が縮んで3割強減る。1足の値段は物価並みに上がる。
工場の停止で固定費は下がるが、家賃と人件費は物価並みに上がる。小売も卸も利益率は2%にとどまる。営業利益は4.5億円で、ブランドの割に稼ぎは薄い。
借入の借り換えで利払いが増え、純利益は3億円弱だ。本社の売却代金を足して、10年で22億円を返す。配当は本業の稼ぎを上回るので、いずれ減配を迫られる。ROEは2%台にとどまる。ブランドは残るが、利益の柱にはならない。
- 靴小売(直営店・ネット通販):数量 46.0(販売足数(万足、推定))× 価格 3.35(1足あたりの売上(万円、推定))→ 売上 154 億円・営業利益 3 億円。足数2割減・単価は物価並み
- 靴卸売:数量 42.0(出荷足数(万足、推定))× 価格 1.74(1足あたりの卸値(万円、推定))→ 売上 73 億円・営業利益 1 億円。足数3割強減・単価は物価並み
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コロナ後の利益率は1〜2%で、革靴の市場の縮みは続く。固定費の削減と市場の縮みが打ち消し合う最も自然な筋書きとして4割弱。
やや悲観 22% 値上げで客がスニーカーに流れ、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,043 円30 億円
値上げを続けるほど、客は手ごろなスニーカーや合成素材の靴に流れる。小売の足数は3割減り、卸は百貨店の売り場の縮小で半分近くまで減る。
店の家賃は固定の約束なので、売上が落ちても減らない。小売の利益率は0.5%、卸は1%に沈む。借入の利払いも増え、純利益はほぼゼロになる。
配当は大きく減らし、還元は10年で12億円にとどまる。価値は稼ぐ力ではなく、ニッピ株や不動産などの売れる資産で決まる。店を減らしながら、資産を少しずつ売って縮んでいく姿だ。ブランドの評判は保たれても、それを買う客の数が足りない。
- 靴小売(直営店・ネット通販):数量 40.0(販売足数(万足、推定))× 価格 3.20(1足あたりの売上(万円、推定))→ 売上 128 億円・営業利益 1 億円。足数3割減・家賃が残る
- 靴卸売:数量 34.0(出荷足数(万足、推定))× 価格 1.65(1足あたりの卸値(万円、推定))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。売り場の縮小
倍率:純利益はほぼゼロで、稼ぐ力では測れない。価値は床の資産で測り、今の自己資本137億円に0.219倍をかけた30億円とする。EV÷営業利益は大きく出るが、価値は資産で測るので倍率の根拠にしない。
確率:値上げが続くほど客がカジュアルな靴に流れる恐れは大きい。工場を止めても売上の落ち方が速ければ利益は残らないので2割強。
悲観 13% 赤字が続き、資産を売って食いつなぐ 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 626 円18 億円
革の紳士靴は、冠婚葬祭と一部の職場でしか履かれなくなる。小売の足数は4割強、卸は6割減る。値引きで在庫を回すので、単価は物価ほど上がらない。
家賃と人件費が残り、小売と卸はともに赤字になる。全社で年5億円前後の赤字が続き、店を閉じる費用もかさむ。ニッピ株と残る不動産を売って、赤字と借入の返済を賄う。
会社は清算されず、少数株主は資産の使い道を決められない。配当はほぼ止まる。床は、赤字の穴埋めを差し引いて残る売れる資産の半分とみる。靴の同業に安く売られる道もある。その時、ブランドの名前は残っても、株主に戻る額は小さい。
- 靴小売(直営店・ネット通販):数量 32.0(販売足数(万足、推定))× 価格 3.00(1足あたりの売上(万円、推定))→ 売上 96 億円・営業利益 −4 億円。足数4割強減・家賃が残る
- 靴卸売:数量 25.0(出荷足数(万足、推定))× 価格 1.55(1足あたりの卸値(万円、推定))→ 売上 39 億円・営業利益 −1 億円。卸は6割減
倍率:赤字が続き、稼ぐ力では測れない。価値は床の資産で測り、今の自己資本137億円に0.131倍をかけた18億円とする。
確率:コロナの2021年3月期に44億円の赤字を出した実績がある。市場の縮みが速まれば赤字が続く筋は十分ありうるので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
靴小売(直営店・ネット通販)
リーガルの直営店など119店とネット通販での小売。
| 数量販売足数(万足、推定) | 価格1足あたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 57.7 | 2.50 | 144 | −3 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 3.35 | 154 | 3 |
取り方:2026年3月期の靴小売の売上144.12億円、営業損失3.40億円(有報)。足数は開示がなく、1足2.5万円前後で割り戻した推定。
靴卸売
百貨店・量販店・靴専門店への紳士靴・婦人靴・学生靴の卸売。
| 数量出荷足数(万足、推定) | 価格1足あたりの卸値(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 64.7 | 1.30 | 84 | −1 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 1.74 | 73 | 1 |
取り方:2026年3月期の靴卸売の売上84.16億円、営業損失0.54億円(有報)。足数は開示がなく、1足1.3万円前後で割り戻した推定。その他の事業(売上1.46億円、利益0.08億円)は小さいので調整に含める。
リスクと懸念
革の紳士靴の市場の縮小
スーツを着る人が減り、通勤の靴はスニーカーや合成素材の軽い靴に置き換わった。この流れは戻らない。値上げで売上を保とうとするほど、客がカジュアルな靴に流れる恐れが高まる。
店の家賃という固定の約束
直営119店の家賃は、売上が落ちても減らない。新リース会計基準が始まれば、この約束は負債として貸借対照表に載り、自己資本比率は今より低く見える。悲観の筋書きでは、家賃が利益を食う。
資産の売却に頼る還元
配当の総額はここ数年の純利益を上回り、持ち合い株と本社の売却で賄っている。売る資産が尽きれば、還元は本業の稼ぎの範囲に縮む。本業が立ち直らなければ減配は避けにくい。
工場の停止と品質
新潟の工場を止め、生産能力は3割近く減る。外部の工場への委託が増えれば、グッドイヤー・ウェルト製法の品質と、ブランドの評判を保てるかが問われる。職人の確保も年々難しくなる。
ニッピとの持ち合い
筆頭株主のニッピと株を持ち合い、その株は帳簿で40億円を超える。ニッピの株価が下がれば余った資産も減る。関係の見直しで株を売れば還元の原資になるが、筆頭株主の議決権が動く。
今後の分かれ目
- 2期続けて営業利益率が3%を超える
- 固定費の削減が効いている。中立の利益率を引き上げ、確率を上振れに寄せる。
- ニッピ株の売却と、その代金での自社株買いが決まる
- 余った資産が株主に戻る。戻り方を1.0に見直す。
- 配当を本業の稼ぎの範囲に減らす
- 資産の売却に頼る還元が終わる。還元の中立を下げ、本業の回復の度合いを見直す。
- 靴の同業や投資ファンドから買収の提案が出る
- 提案の値段と、稼ぐ力と資産で測った本質価値を比べる。今の値段は本質価値を上回るので、上乗せの大きさが焦点になる。
- 直営店の既存店の売上が2年続けて減る
- 値上げで客が流れている。足数の中立を下げ、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 小売の既存店売上と営業利益率
- 工場の停止と希望退職による固定費の減り方
- 本社・大阪支店の売却代金と使い道
- ニッピ株の保有額と売却の有無
- 配当の総額と純利益の差
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.5%を下回るため、式の上限1÷k=11.1倍を基準に、中立は8割の8.9倍とした。今のPBR0.4倍台は割安の根拠にしていない。ニッピ株は売却の実績があるため余った資産として戻り方0.75で数え、配当は利息の控除で外して二重を避けた。新リース会計基準で店の家賃が負債に載っても、10年後の数字は今と同じく家賃を費用に入れた形でそろえた。決算期は2月末に変わるので10年後は2036年2月期とした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 9.4→11.76 倍・中立 PER 8.9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。