結論
アルメディオは、炉の断熱材と窯道具を中国の蘇州の工場で作る小さな材料会社だ。筆者の結論は割高である。手元の現金は時価総額の7割に当たるが、本業がその現金に見合う稼ぎを生んでこなかったからだ。
2024年3月期は、中国の太陽光パネルの増産で拡散炉用のヒーターモジュールが飛ぶように売れ、営業利益率は3割に迫った。ところが中国の設備は過剰になり、2026年3月期は売上が半分以下に縮んで赤字に戻った。山の利益は一度きりの追い風だった。
会社はセラミックラックや半導体用の粒子、カーボンナノファイバーで次の柱を探している。どれも芽はあるが、稼ぎに育つ確証はまだない。10年で見ると、現金の厚さが下値を支える一方、事業の稼ぎは資本コストに届かない姿がいちばんありそうだ。
筆者がいちばん気にしているのは、山の年の利益を会社の実力と取り違えることだ。太陽光の増産は外から来た波で、会社が自分で作った需要ではない。波が引いた今の姿が、この会社の素顔に近い。現金を除いた事業の値打ちは、筆者の見立てではかなり小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金を多く持つ会社がそれだけで安いとはいえない。大事なのは、その現金を経営がどう使い、事業が何を稼ぐかだ。アルメディオの本業は、中国の設備投資の波に乗った時だけ稼ぎ、波が引くと赤字に戻る。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、ならせばほぼゼロだ。2024年3月期の大きな利益は、太陽光の増産という外からの追い風がくれたもので、堀、つまり他社がまねできない強みの証拠ではない。
現金は下値の支えになる。ただ、その現金は10年のあいだ利息しか生まず、株主に戻る道筋も細い。カーボンナノファイバーが量産で採用されれば話は変わるが、それは願いであって見込みではない。払う値段に見合う安全域は、現金の厚さだけでは足りない。
筆者は、黒字が2〜3年続き、現金を株主に戻す方針が示されるまで、この会社を持ち続けたい事業とは見ない。現金が溶けずに残るかどうかを、まず見たい。
何で稼ぐ会社か
売上のほとんどは断熱材事業だ。蘇州の子会社2社が、炉の熱を逃がさない断熱材やブランケット、電子部品を焼く時に載せる窯道具を作る。日本の本社はその製品を輸入し、鉄鋼会社や炉のメーカーに炉材として売る。
ここ数年の稼ぎ頭は、太陽光パネルの製造に使う拡散炉のヒーターモジュールだった。中国の太陽光の増産期には注文が殺到したが、増産が止まると注文も値段も一緒に落ちた。今の柱は、積層セラミックコンデンサーを焼く時のセラミックラックや、半導体用のアルミナ粒子などの新製品に移りつつある。
もう一つのナノマテリアル事業は、カーボンナノファイバー、つまり髪の毛の数千分の一の細さの炭素の繊維を作る。電気を通しやすくする添加材として、半導体と電池の会社が評価している。売上はまだ年1億円ほどで、赤字が続く。
かつて主力だった光ディスクの検査用ディスクの事業は、2024年6月に終えた。会社は今、断熱材とナノ素材に、セラミックの複合材を加えた材料メーカーへの衣替えを進めている。
稼ぎの形を一言で言えば、他社の工場が炉を増やす時に、その炉の部材を売る商売だ。設備の波に合わせて売上が何倍にも振れる。2024年3月期の116億円から、2026年3月期の24億円への落ち込みがそれを物語る。
優良さと弱いところ
技術の種はあるが、値決め力は弱い。これが筆者の見立てだ。断熱材や窯道具は中国に作り手が多く、注文が減ると値下げで取り合いになる。2026年3月期は、注文の減少と値下げ、原料高が同時に来て、断熱材事業は赤字に落ちた。
記録も厳しい。単体では10期続けて営業損失を出し、短信には継続企業の前提に関わる事象があると書かれた。注記が付くほどの不確実性はないと会社は判断しているが、本業の弱さを自ら認めた形だ。
救いは財務だ。自己資本比率は9割を超え、借金はほとんどない。現金は36億円ほどあり、赤字が数年続いても倒れない。ただ、その現金は利息しか生まず、株主への還元も記念配当だけだった。厚い財務は会社を守るが、株主の価値を増やしてはいない。
新製品の評価が良いことは前向きな材料だ。ただ、それが値段を守る力に変わった証拠は、まだ数字に出ていない。値決め力の弱さを補うのは、固定費を下げる努力だけだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の前提は、中国の太陽光と電子部品の設備投資の波だ。拡散炉のヒーターモジュールは太陽光の工場が新しい炉を入れる時に売れる。中国の太陽光パネルの生産能力は需要を大きく上回り、各社は増設を止めて値下げで生き残りを図っている。設備の注文が元の山に戻るには、過剰な能力が整理されるまで数年はかかるとみる。
電子部品の窯道具は、積層セラミックコンデンサーの生産とともに動く。電気自動車やデータセンターで使う量は増えるので、数量は太陽光よりも安定して伸びる。ただ、この分野でも中国の地場のメーカーが安く作り、値段の主導権は買い手にある。
国内の炉材は鉄鋼や窯業の炉の修理に合わせて出る。高炉の休止で量は細るが、修理の需要は残る。建材の不燃材料は会社が新たに大臣の認定を取った分野で、入り口に立ったところだ。
カーボンナノファイバーは、電池や半導体の材料として世界の化学会社が競う。量産で採用されれば伸びしろは大きいが、大手の材料会社と真正面から争う市場でもある。
この業界で生き残るのは、波の谷でも赤字にならない固定費の低さを持つ会社だ。蘇州の工場の集約はその方向にある。ただ、集約の効果は初年度には限られたと会社自身が述べている。
資本政策と M&A
還元の方針は弱い。2026年3月期の配当は記念配当だけで、2027年3月期は無配の予想だ。2026年3月期は自己株買いも行わなかった。
手元には時価総額の7割に当たる現金がある。会社は中期経営計画で自己資本の稼ぎ8%と、帳簿の値段の1倍以上の株価を掲げるが、それを支える稼ぎの道筋はまだ見えない。現金の多くは中国の子会社にあるとみられ、日本へ戻して株主に配るにも手間と税がかかる。
時価総額が50億円規模で現金が厚いので、買い手にとっては安い買い物に見えうる。ただ、事業の稼ぎが弱く、買収の噂は聞かない。
2026年3月期の配当総額は1億円に満たず、手元の現金の3%ほどだった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の時価総額の7割は現金で、事業はほとんどただで手に入る。その事業も、2024年3月期には営業利益率3割を出した。中国の太陽光の設備は今は過剰だが、古い設備の置き換えと新しい製法への切り替えは必ず来る。その時、ヒーターモジュールの注文は戻る。
新製品も育っている。積層セラミックコンデンサーを焼くセラミックラックは販売が好調で、半導体用のアルミナ粒子も評価が良い。中国子会社2社の集約で損益分岐点は下がり、注文が少し戻るだけで黒字になる体質に変わりつつある。
カーボンナノファイバーは、半導体の用途で量産相当品の評価が良く、量産試作に進む。電池でも複数の会社が試験を続けている。どれか一つでも量産で採用されれば、今の会社の規模からすれば大きな利益になる。現金が厚いので、その日まで待てる。
国内でも、鉄鋼会社の炉材の定期の調達先に入る道と、建材の不燃材料という新しい売り先が開けた。山の利益に戻らなくても、黒字が続くだけで今の値段は安い。待つ間の下値は現金が守る。
慎重な見方
2024年3月期の山は、中国の太陽光の増産という一度きりの追い風だった。今は中国の設備が過剰で、注文も値段も崩れた。山の利益を会社の実力と見てはいけない。単体では10期続けて営業損失を出し、短信は継続企業の前提に関わる事象まで書いている。
断熱材も窯道具も中国に作り手が多く、値段は買い手が決める。新製品も、売れると分かれば地場のメーカーがすぐにまねをする。カーボンナノファイバーは世界の化学会社が競う分野で、年1億円の売上の会社が量産の主役になれる保証はない。
現金も見かけほど株主のものではない。多くは中国の子会社にあるとみられ、還元は記念配当だけだ。赤字が続けば現金は少しずつ減る。事業がただで手に入るのではなく、現金を食う事業が付いてくると見るべきだ。
厚い財務は倒れないことを保証するが、株主が報われることは保証しない。黒字が続く証拠が出るまで、現金の価値を割り引いて見るべきだ。記念配当の一度きりの還元を、方針の転換と取り違えてはいけない。会社が掲げる自己資本の稼ぎ8%も、過去10年で届いたのは山の1年だけだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。山の利益は外の追い風で、本業の稼ぎは長く資本コストを大きく下回ってきた。中心は赤字が止まっても稼ぎが薄いままの筋書きで、新製品とカーボンナノファイバーが育つ上振れには3割を残した。現金が厚く倒れにくいので、悲観は深くしすぎず、赤字が続く筋書きに厚めの重みを置いた。還元の弱さも、現金を割り引く理由になった。黒字の定着が見えれば、中立から上へ重みを移す余地はある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 172 円34 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 15 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 88 円18 億円、今との差 −64.8%、 期待の年率 −2.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 560 円112 億円 | 60 円12 億円 | +148.8% | +9.5% | 62 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 242 円48 億円 | 20 円4 億円 | +5.0% | +0.5% | 52 円10 億円 |
| 中立 | 35% | 139 円28 億円 | 10 円2 億円 | −40.3% | −5.0% | 52 円10 億円 |
| やや悲観 | 22% | 70 円14 億円 | 5 円1 億円 | −69.9% | −11.3% | 16 円3 億円 |
| 悲観 | 13% | 30 円6 億円 | 0 円0 億円 | −88.0% | −19.1% | 4 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 172 円34 億円 | 15 円3 億円 | −25.0% | −2.8% | 187 円37 億円 |
今の株価時価総額 249 円50 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 中国の設備投資が戻り、CNF が半導体で採用される 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 560 円112 億円
中国の太陽光と電子部品の工場が再び増設に向かい、拡散炉のヒーターモジュールとセラミックラックの注文が戻る。値下げ競争は和らぎ、単価は物価に近い伸びを取り戻す。
導電用の CNF は半導体の部材で量産に採用され、電池向けにも広がる。ナノマテリアルは赤字を抜け、売上は今の十数倍に育つ。国内では鉄鋼向けの炉材と建材の不燃材料が新しい柱になる。
営業利益率は1割を超え、会社が掲げる自己資本の稼ぎ8%に近づく。それでも資本コストには届かず、厚い現金の重さが残る。中期経営計画の目標に近い姿で、ここまで来れば株主に現金を戻す余裕も生まれる。
- 断熱材:数量 4,000(断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定))× 価格 1.95(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 12 億円。数量 2.6 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 15%
- ナノマテリアル:数量 60.0(カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定))× 価格 24(1 トンあたりの平均単価(百万円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。数量 12 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 20%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.87 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の太陽光と電子部品の設備投資は波が大きく、2024年3月期のような山が再び来る可能性は残る。CNF の量産試作も始まる。ただ、二つが同時にそろう確率は高くない。
やや楽観 20% 新製品が育ち、黒字が定着する 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 242 円48 億円
太陽光向けの注文は山の半分ほどにとどまるが、セラミックラックや半導体用のアルミナ粒子、プラズマ溶射のニッケルメッシュが育つ。中国子会社2社の集約で固定費が下がり、歩留まりも戻る。
国内では鉄鋼会社の炉材の定期の調達先に入り、建材の不燃材料も少しずつ売れる。CNF は一部の用途で採用されるが、規模はまだ小さい。
営業利益率は数%に乗り、赤字の年は減る。ただ自己資本の稼ぎは3%ほどで、厚い現金を抱えたままの会社であることは変わらない。配当は細く再開されるが、現金の大半は手元に残る。黒字の会社に戻ったことで、厚い現金をどう使うかが株主との対話の主題になる。
- 断熱材:数量 3,000(断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定))× 価格 1.88(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 7 億円。数量 2.0 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 12%
- ナノマテリアル:数量 30.0(カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定))× 価格 24(1 トンあたりの平均単価(百万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 6 倍 × 単価 1.20 倍(量産で単価が下がり物価に届かない)、利益率 10%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:セラミックラックや半導体用アルミナ粒子は販売が伸びており、中国子会社の集約で損益分岐点も下がる。黒字の定着は十分ありうるので、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 35% 現金の厚い小さな材料会社のまま 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 139 円28 億円
中国の太陽光の設備は過剰が続き、拡散炉のヒーターモジュールの注文は山の2割ほどで落ち着く。セラミックラックなどの新製品と国内の炉材で、数量は今より5割ほど増える。中国勢との値下げ競争で、単価は物価に届かない。
中国子会社の集約で赤字は止まるが、営業利益率は2%前後にとどまる。CNF は評価が続き、売上は少し増えても利益にはならない。
会社は現金を厚く抱えたまま、細く続く。純利益の半分近くは預金の利息で、本業の稼ぎは自己資本の1%にも届かない。還元は記念配当のような一時のものにとどまり、現金を使った大きな手も打たれない。株主から見れば、現金を預けた口座に小さな工場が付いている姿だ。
- 断熱材:数量 2,300(断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定))× 価格 1.88(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 5 億円。数量 1.5 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 11%
- ナノマテリアル:数量 15.0(カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定))× 価格 24(1 トンあたりの平均単価(百万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 3 倍 × 単価 1.20 倍(量産で単価が下がり物価に届かない)、利益なし
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の太陽光の設備は過剰で、ヒーターモジュールの山はしばらく戻らない。新製品と国内の炉材で赤字は止まるが、稼ぎは薄いままという道筋がいちばんありそうだ。
やや悲観 22% 値下げ競争で赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 70 円14 億円
中国の太陽光と電子部品の設備投資は低迷が続き、中国の地場の炉材メーカーとの値下げ競争で単価は物価に届かない。ヒーターモジュールの注文は戻らず、新製品も競合に追いつかれる。
CNF は評価の段階を抜けられず、ナノマテリアルは赤字が続く。営業損失が毎年数億円出て、現金が少しずつ減る。
会社は残るが、価値は事業の稼ぎでは測れず、残った現金のうち株主に戻りうる分でしか測れない。中国の工場は売ろうとしても値が付きにくく、整理の判断も遅れる。配当は止まり、株主は待つだけの10年になる。新しい事業の芽も、赤字を止める費用の削減で細っていく。
- 断熱材:数量 1,600(断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定))× 価格 1.70(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量 1.06 倍 × 単価 1.13 倍、利益率 3%
- ナノマテリアル:数量 5.0(カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定))× 価格 20(1 トンあたりの平均単価(百万円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 −1 億円。数量横ばい・単価横ばい、赤字
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 79 億円に床の PBR を掛けた。中身は floor_assets_why の純現金の残りに戻り方を掛けた額。
確率:10期続けて単体で営業損失を出してきた会社で、中国の価格競争は激しい。赤字の継続は十分ありうるので、厚めの重みを置いた。
悲観 13% 本業が縮み、現金を食いつぶす 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 30 円6 億円
中国の太陽光の設備は再編で大きく減り、拡散炉そのものも新しい製法に置き換わる。ヒーターモジュールの注文は消え、中国子会社は縮小や売却を迫られる。
CNF は大手の化学会社に先を越され、量産の採用を取れない。毎年の営業損失が続き、工場の整理の費用もかさむ。
10年後に残るのは、目減りした現金と国内の小さな炉材の商いだけだ。少数株主が受け取れる価値は、残った現金のさらに一部になる。会社は存続しても、株主にとっては現金が溶けていくのを見守る10年になる。上場を続ける費用さえ重く感じられる規模まで縮む。
- 断熱材:数量 1,100(断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定))× 価格 1.60(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.73 倍 × 単価 1.07 倍、赤字
- ナノマテリアル:数量 3.0(カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定))× 価格 20(1 トンあたりの平均単価(百万円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 0.6 倍、赤字
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 79 億円に床の PBR を掛けた。中身は floor_assets_why の残る現金に戻り方を掛けた額。
確率:主力の断熱材は中国の太陽光の設備投資にほぼ頼っており、需要が消える筋書きも否定できない。現金が厚く倒産は遠いので、悲観は1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
断熱材
蘇州の子会社2社が作る炉の断熱材・ヒーターモジュール・窯道具と、日本での炉材の販売。
| 数量断熱材・窯道具・ヒーターモジュールの出荷量(トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,515 | 1.50 | 23 | −4 |
| 10 年後 中立 | 2,300 | 1.88 | 43 | 5 |
取り方:数量は非開示。セグメント売上 22.72 億円を、断熱材とヒーターモジュール・窯道具をならした平均単価 1 トン 150 万円(百万円で 1.5)で割り、年約 1,500 トンと推定した。利益は短信のセグメント損失。
ナノマテリアル
カーボンナノファイバーの製造販売と、資源・材料の販売。
| 数量カーボンナノファイバー・材料の出荷量(トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの平均単価(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 20 | 1 | −1 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 24 | 4 | 0 |
取り方:数量は非開示。セグメント売上 1.0 億円を、評価用のナノファイバーと資源の販売をならした 1 トン 2,000 万円で割り、年 5 トンと推定した。利益は短信のセグメント損失。
リスクと懸念
中国の太陽光の設備過剰
主力のヒーターモジュールは中国の太陽光の工場が炉を増やす時に売れる。中国の生産能力は需要を大きく上回り、増設はしばらく止まる。注文の戻りが遅れれば、赤字が長引く。
値下げ競争
断熱材も窯道具も中国に作り手が多い。注文が減ると値下げで取り合いになり、2026年3月期は原料高と重なって断熱材事業が赤字に落ちた。値段を自分で決める力は弱い。
新製品の採用が遅れる
カーボンナノファイバーは2026年3月期に本格採用を見込んだ案件のうち2件が、顧客の計画変更で翌期にずれた。量産の採用は顧客次第で、時期も規模も読みにくい。
現金が株主に戻らない
現金は時価総額の7割あるが、還元は記念配当だけで、2027年3月期は無配の予想だ。多くは中国の子会社にあるとみられ、赤字が続けば少しずつ減る。
本業の赤字の長さ
単体で10期続けて営業損失を出し、短信に継続企業の前提に関わる事象を記した。注記は付いていないが、黒字の定着を示せなければ、現金を食いながら細る道に入る。
今後の分かれ目
- 中国の太陽光の工場が増設に戻り、ヒーターモジュールの注文が回復したら
- やや楽観の確率を上げる。ただし山の利益を10年の起点にはしない。
- カーボンナノファイバーが半導体の部材で量産に採用されたら
- ナノマテリアルが柱に育つ道が開けたとみて、楽観に重みを移す。
- 2028年3月期に会社の見込みどおり黒字に戻ったら
- 赤字の継続の筋書きを軽くし、中立とやや楽観に寄せる。
- 中国子会社の現金を日本へ戻し、自己株買いや配当に回したら
- 現金の戻り方を見直し、価値を引き上げる。
- 赤字が続き現金が年に数億円ずつ減ったら
- やや悲観と悲観に寄せる。
見ておくもの
- 中国の太陽光パネルの設備投資と拡散炉の注文
- セラミックラックなど新製品の売上
- カーボンナノファイバーの量産採用の有無
- 現金の残高と還元の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8.25%と10年後の事業の稼ぎだけで決めた。どの筋書きでも事業の ROE は k に届かないので、PER は 1÷k を上限に ROE÷k に合わせて引き、余った現金25億円は戻り方0.75で別に足した。悲観側は赤字なので、残る現金に戻り方を掛けた床で測った。今の PBR が0.6倍台であることは計算のあとに見ただけで、根拠にしていない。2024年3月期の山の利益も起点にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.3→12.87 倍・やや楽観 PER 6.3→12.12 倍・中立 PER 6.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。