結論
アイフィスジャパンは、投資信託の目論見書や運用報告書をつくり、アナリスト予想のデータを証券会社に売る会社だ。筆者の結論は「ほぼ適正」で、時価総額の約 7 割を占める現金をどこまで株主に返すかで、評価が上下する。
稼ぎの柱は 3 つある。投信の開示書類、金融データと報道、生命保険などの印刷と物流だ。どれも顧客の法令対応や日々の業務に組み込まれ、急には切り替えられない。
ただし、売上の 3 割強は翻訳と SES、つまり人の時間で売る仕事だ。翻訳はすでに顧客の AI 内製化で減っている。目論見書の制作も、文章をつくる仕事である以上、AI の値下げ圧力から逃れられない。
現金と預金は 50 億円あり、借金はない。創業家が約 4 割を持ち、配当性向は 5 割前後だが、自社株買いは乏しい。事業の稼ぎだけなら今の値段に見合うが、現金が眠る分だけ割り引いて見るべきだ。
10 年後の姿として、筆者は開示とデータの事業が物価並みに育ち、翻訳と SES が縮む形をいちばんありそうだと見る。利益は今より少し増える程度で、大きな成長は描きにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アイフィスは「良い位置にいるが、現金を寝かせる会社」だ。
良い点は、法令が生む仕事を毎年確実に取れることだ。顧客の手続きに組み込まれ、借金もない。10 年後もこの事業は残る。
気になる点は二つある。一つは、作業の中身が AI に近いこと。目論見書の制作単価は、物価並みに上がるとは言い切れない。もう一つは、資本の使い方だ。時価総額の 7 割にあたる現金が、利息しか生まずに積み上がっている。オーナーとしてこの株を持つなら、その現金が戻る保証がほしい。
筆者は、事業そのものは払う値段に見合うと見るが、安全域は薄い。現金が配当以外に戻らないなら、帳簿どおりの価値は付かない。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主のものになる利益は、純利益にほぼ等しい。設備がほとんど要らない事業だからだ。この点は魅力で、現金の使い道さえ変われば評価は一段上がる。
何で稼ぐ会社か
売上は約 70 億円で、5 つの事業に分かれる。いちばん大きいのはドキュメントソリューションで、売上の 27% を占める。生命保険会社の契約書類の印刷と発送、確定拠出年金の仕組みの開発、証券や IR の印刷を請け負う。東京の舎人に物流の拠点を持つ。
次が投資情報で 22%。アナリストの業績予想を集めた IFIS コンセンサスと、債券や株式の発行を速報するキャピタル・アイ・ニュースを、証券会社や運用会社に売る。調査レポートを作るシステムの開発も請け負う。
ファンドディスクロージャーは 19% で、運用会社の目論見書や運用報告書を作る。投信は本数が多く、書類は法律で決まった時期に必ず出るため、仕事は毎年繰り返す。新 NISA の特需の反動で 2025 年は 6% 減ったが、2026 年は持ち直している。
残りは人の時間で売る仕事だ。2024 年に買ったテンナイン・コミュニケーションを中心とするランゲージ事業が 20%、技術者を派遣する IT ソリューションが 12% を占める。利益の大半は、開示とデータの 3 つの事業が稼いでいるとみられる。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客の法令対応の中に入り込んでいることだ。投信の目論見書は、運用会社が毎年必ず出す書類で、制作会社を変えると確認の手間が大きい。生命保険の書類の発送も、顧客の個人情報を扱うため、一度決めた業者は簡単に変わらない。
IFIS コンセンサスは、アナリスト予想を長年集めてきたデータで、証券会社の業務の画面に組み込まれている。これは他社がすぐにはまねできない。
弱いのは、文章をつくる作業そのものが AI に近いことだ。翻訳はすでに減り始めた。目論見書も、下書きは AI が作れる。堀、つまり他社がまねできない強みは、作業の腕ではなく顧客の手続きに入り込んだ位置にある。
資本効率は高くない。ROE は 9% 台で、会社の目安の 15% に届かない。理由は明白で、自己資本の 8 割以上が現金として眠っているからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
開示書類の業界は、法律が毎年つくる仕事で成り立つ。上場会社の有価証券報告書では宝印刷とプロネクサスの 2 社が強く、投信の書類ではアイフィスが専業に近い位置にいる。需要は法令と投信の本数で決まり、景気の影響は小さい。
投信の本数は、新 NISA で個人の資金が流れ込み、増える方向にある。一方で、運用会社は手数料の引き下げに追われ、書類の制作費も削りたい。単価を物価並みに上げ続けるのは楽ではない。
最大の変化は生成 AI だ。翻訳はすでに顧客の内製に置き換わり始めた。開示書類の下書きも AI が作れるようになり、人手で組む制作の価値は下がる。残るのは、法令の確認と、顧客のシステムとつながった流れを握る会社だ。
紙の印刷と発送は、電子交付の広がりで細る。生命保険の書類も、10 年で紙は確実に減る。金融データは、証券会社のリサーチ部門の縮小と、AI による要約の広がりという二つの逆風を受けるが、独自に集めた予想のデータは残りやすい。
人の時間で売る翻訳と技術者の派遣は、業界全体が AI エージェントへの置き換えにさらされる。人手不足で単価は上がっても、仕事の量そのものが減っていく。
資本政策と M&A
配当は安定的な増配を方針とし、2025 年は記念配当を含めて性向 6 割、2026 年は 5 割前後の見込みだ。株主優待として QUO カードも配る。ただし自社株買いは乏しく、現金は 10 年で 2 倍以上に積み上がった。
創業家の資産管理会社と創業者が合わせて約 4 割を持ち、経営の決定権は事実上創業家にある。TOB で買われる見込みは低い。M&A は翻訳会社の買収のように小さく、AI で縮む事業を買った点は資本の使い方として疑問が残る。
2026 年には子会社の吸収合併や翻訳子会社の統合を進め、組織を簡素にしている。筆者は、現金の一部を自社株買いに回すことが、いちばん確かな株主への還元だと考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額の大半は現金で、事業はほぼ只で手に入る。投信の開示は法律が毎年つくる仕事で、新 NISA で投信の本数は増える。目論見書の制作会社を変えるのは、運用会社にとって手間と危うさが大きい。
AI は脅威というより道具だ。下書きを AI で作れば、人手が減って利益率が上がる。顧客との関係と法令確認の流れを握っているのはアイフィスで、AI の会社ではない。
IFIS コンセンサスは、長年集めた独自のデータだ。証券会社の画面に組み込まれ、乗り換えは簡単ではない。キャピタル・アイの報道も、債券の発行の速報では代わりが少ない。
配当は増え続け、2026 年も普通配当で増配だ。営業利益率は 12% と悪くなく、借金はない。現金が少しずつでも戻れば、価値は今の値段を上回る。
設備投資もほとんど要らない。稼いだ利益の大半は株主のものになり、配当として出せる。生命保険の書類や確定拠出年金の仕組みも、顧客の手続きの奥に入り込んでいて、値段だけで乗り換えられる仕事ではない。法令がある限り、仕事は消えない。
慎重な見方
翻訳はすでに AI に削られている。顧客が内製に切り替え、2026 年の中間期に減収減益になった。同じことが目論見書の制作に起きない理由はない。文章を組む作業は、AI が最も得意とする仕事だ。
買った翻訳会社は売上の 2 割を占めるが、利益はほとんど生まない。AI で縮む事業に資金を投じたのは、経営の目利きを疑わせる。
現金は確かに多いが、創業家が約 4 割を持ち、自社株買いはほとんどない。株主に返さない現金は、少数株主にとって帳簿ほどの価値はない。ROE は 9% 台で、会社が掲げる 15% にはほど遠い。
紙の印刷も細る。生命保険の書類の電子化は止まらない。成長の源が見当たらず、事業の価値は今の値段の中の現金以外の部分に見合う程度だ。
IFIS のデータも安泰ではない。証券会社はリサーチ部門を減らし、AI が決算や予想を要約する時代に、予想を集めただけのデータの値打ちは下がる。規模が小さく、AI への投資で大手と競う体力もない。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも理がある。法令が生む仕事が残るのは確かだが、翻訳の減少は AI の影響がすでに数字に出た事実で、軽く見られない。
確率は中立を 4 割とし、AI の置き換えを見込むやや悲観と悲観を合わせて 35% と厚めにした。楽観側は 25% にとどめた。
現金が戻るかどうかは筋書きでなく戻り方の係数で見た。どの筋書きでも、事業の価値は今の値段の現金以外の部分と大きくは離れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,527 円147 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 304 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 953 円92 億円、今との差 +39.7%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,605 円251 億円 | 394 円38 億円 | +339.8% | +16.0% | 210 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,200 円212 億円 | 363 円35 億円 | +275.9% | +14.2% | 461 円44 億円 |
| 中立 | 40% | 1,869 円180 億円 | 322 円31 億円 | +221.3% | +12.4% | 876 円84 億円 |
| やや悲観 | 23% | 712 円69 億円 | 259 円25 億円 | +42.4% | +3.6% | 223 円22 億円 |
| 悲観 | 12% | 311 円30 億円 | 187 円18 億円 | −27.0% | −3.1% | 60 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,527 円147 億円 | 304 円29 億円 | +168.5% | +10.4% | 1,831 円176 億円 |
今の株価時価総額 682 円66 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 投信の開示とデータが伸び、AI を道具にする 利益 10 億円 · PER 22.8 倍 · 株価時価総額 2,605 円251 億円
投資信託の数が新 NISA の追い風で増え続け、目論見書や運用報告書の制作の仕事が 1.15 倍に増える。生成 AI は顧客の仕事を奪う側でなく、アイフィスが制作の手間を減らす道具として使う。
アナリスト予想を集めた IFIS コンセンサスと、債券や株式の発行を伝えるキャピタル・アイの報道は、証券会社の業務に組み込まれて値上げが通る。営業利益率は 2 割に近づき、全社の利益は 10 年で 1.7 倍になる。
翻訳と通訳は縮むが、会議の通訳など人が要る仕事に絞り込み、赤字は出さない。創業家は配当を厚くし、現金の山を少しずつ株主に返す。
- 投資情報:数量 1,725(契約件数(件、推定))× 価格 0.01(1 件あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 6 億円。数量 1725.0 × 価格 0.014、営業利益率 25.0%
- ファンドディスクロージャー:数量 3,105(受け持つ投信の本数(本、推定))× 価格 0.01(1 本あたりの年の制作売上(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。数量 3105.0 × 価格 0.0064、営業利益率 24.0%
- ドキュメントソリューション:数量 570(取引先の数(社、推定))× 価格 0.04(1 社あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。数量 570.0 × 価格 0.0418、営業利益率 13.0%
- IT ソリューション:数量 59.5(稼働する技術者(人、推定))× 価格 0.16(1 人あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量 59.5 × 価格 0.1568、営業利益率 10.0%
- ランゲージソリューション:数量 11,280(案件数(件、推定))× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量 11280.0 × 価格 0.0013、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 22.78 倍、時価総額 238 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新 NISA で投信の本数が増え、IFIS のデータとキャピタル・アイの報道が値上げを通す筋書き。AI を自社の作業の効率化に使えた証拠はまだ金額で出ていないため、7% にとどめた。
やや楽観 18% 開示とデータが着実に育つ 利益 8 億円 · PER 22.2 倍 · 株価時価総額 2,200 円212 億円
投信の本数は 1.1 倍に増え、ファンドディスクロージャーは安定して稼ぐ。AI による制作の効率化は値下げに一部を回すが、残りは利益になる。
IFIS のデータと報道は契約が少しずつ増え、物価並みより少し上の値上げを通す。生命保険の印刷と物流、確定拠出年金の仕組みの仕事も、顧客の手続きに組み込まれて残る。
翻訳と SES は AI に置き換わって 3 割縮むが、全社に占める割合が小さくなり、利益への響きは限られる。営業利益率は 15% 近くまで上がり、配当性向 5 割の還元は続く。
会社が掲げる ROE 15% には届かないが、現金を除いた事業の稼ぐ力は 14% 台まで上がる。
- 投資情報:数量 1,650(契約件数(件、推定))× 価格 0.01(1 件あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。数量 1650.0 × 価格 0.0137、営業利益率 23.0%
- ファンドディスクロージャー:数量 2,970(受け持つ投信の本数(本、推定))× 価格 0.01(1 本あたりの年の制作売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。数量 2970.0 × 価格 0.0063、営業利益率 22.0%
- ドキュメントソリューション:数量 552(取引先の数(社、推定))× 価格 0.04(1 社あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。数量 552.0 × 価格 0.0418、営業利益率 12.0%
- IT ソリューション:数量 54.6(稼働する技術者(人、推定))× 価格 0.16(1 人あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量 54.6 × 価格 0.1568、営業利益率 9.0%
- ランゲージソリューション:数量 9,870(案件数(件、推定))× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 9870.0 × 価格 0.0013、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 22.18 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:投信の開示とドキュメントの仕事は顧客の法令対応に組み込まれ、急には減らない。翻訳と SES の縮みを他の事業が埋める形で、会社の予想の延長に近い。
中立 40% 開示とデータで稼ぎ、翻訳は縮む 利益 7 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 1,869 円180 億円
10 年後のアイフィスは、投信の開示と金融データで稼ぐ会社のまま残る。投信の本数は 1.05 倍、目論見書の制作の単価は AI の効率化を一部顧客に返すため 1.21 倍にとどまる。
IFIS のデータと報道は物価並みの値上げを通す。生命保険の印刷と物流は紙が細る分 1 割縮むが、確定拠出年金の仕組みで補う。
翻訳は顧客が AI で内製する流れが続き、4 割縮む。SES も人月で売る仕事なので 3 割縮む。全社の営業利益は 10 年で約 1.1 倍、利益率は 11% 台にとどまる。現金はほとんど使われずに積み上がり、配当性向 5 割の還元だけが続く。
- 投資情報:数量 1,575(契約件数(件、推定))× 価格 0.01(1 件あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 5 億円。数量 1575.0 × 価格 0.0134、営業利益率 22.0%
- ファンドディスクロージャー:数量 2,835(受け持つ投信の本数(本、推定))× 価格 0.01(1 本あたりの年の制作売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。数量 2835.0 × 価格 0.006、営業利益率 20.0%
- ドキュメントソリューション:数量 540(取引先の数(社、推定))× 価格 0.04(1 社あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。数量 540.0 × 価格 0.0418、営業利益率 11.0%
- IT ソリューション:数量 49.0(稼働する技術者(人、推定))× 価格 0.16(1 人あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。数量 49.0 × 価格 0.1568、営業利益率 8.0%
- ランゲージソリューション:数量 8,460(案件数(件、推定))× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 8460.0 × 価格 0.0013、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 21.77 倍、時価総額 168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法定の開示とデータの仕事が残り、人月の仕事が縮むという両方の見方の真ん中。会社の 2026 年の予想(営業利益 8.8 億円)の延長から大きく外さない。
やや悲観 23% AI が開示の制作を安くする 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 712 円69 億円
生成 AI が目論見書や運用報告書の下書きを作るようになり、運用会社は制作を内製するか、安い業者に移す。ファンドディスクロージャーの仕事は 1 割減り、単価は物価に届かず 1.10 倍にとどまる。
翻訳は半分以下になり、利益はほぼ消える。SES も 4 割縮む。生命保険の印刷は紙の削減で 2 割減る。
IFIS のデータは残るが、伸びは止まる。全社の営業利益は今より 3 割少ない。経営は現金を手元に置いたまま、新しい買収で埋めようとするが、成果は出ない。
配当は利益に合わせて細り、現金の一部は買収と赤字の穴埋めに消える。株主に残るのは、データの事業と目減りした現金だ。
- 投資情報:数量 1,455(契約件数(件、推定))× 価格 0.01(1 件あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。数量 1455.0 × 価格 0.0125、営業利益率 19.0%
- ファンドディスクロージャー:数量 2,484(受け持つ投信の本数(本、推定))× 価格 0.01(1 本あたりの年の制作売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。数量 2484.0 × 価格 0.0055、営業利益率 15.0%
- ドキュメントソリューション:数量 480(取引先の数(社、推定))× 価格 0.04(1 社あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量 480.0 × 価格 0.0406、営業利益率 8.0%
- IT ソリューション:数量 42.0(稼働する技術者(人、推定))× 価格 0.15(1 人あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 42.0 × 価格 0.1521、営業利益率 5.0%
- ランゲージソリューション:数量 6,345(案件数(件、推定))× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 6345.0 × 価格 0.0011、営業利益率 1.0%
倍率:事業の ROE 7.1% が k 7.5% を下回るため、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍。AI に押されて縮む途中の利益なので、その 76% の 9.0 倍とし、余った現金は 3/4 に減らして戻り方 0.75 を掛けた。
確率:ランゲージ事業はすでに AI の内製化で減収減益になっている。同じ流れが目論見書の制作に及ぶのは自然な延長なので、やや悲観を厚めに置いた。
悲観 12% 開示の制作が AI に置き換わる 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 311 円30 億円
目論見書や運用報告書は、運用会社の AI が自動で作る時代になる。ファンドディスクロージャーの仕事は 4 分の 1 減り、単価は 10 年上がらない。制作会社は価格で争い、利益はわずかになる。
翻訳は 7 割減って赤字が残り、SES も半分になる。紙の印刷と物流は 3 割以上縮む。IFIS のデータも、証券会社のリサーチ部門の縮小で契約が減る。
全社の営業利益は 2 億円を下回り、稼ぐ力の価値は小さい。残る価値は手元の現金だが、創業家が配当以上には返さず、一部は失敗した買収に消える。
会社は清算されないので、少数株主は現金を自分では取り出せない。値段は現金の帳簿を下回る。
- 投資情報:数量 1,320(契約件数(件、推定))× 価格 0.01(1 件あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。数量 1320.0 × 価格 0.0115、営業利益率 15.0%
- ファンドディスクロージャー:数量 2,025(受け持つ投信の本数(本、推定))× 価格 0.00(1 本あたりの年の制作売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量 2025.0 × 価格 0.005、営業利益率 8.0%
- ドキュメントソリューション:数量 390(取引先の数(社、推定))× 価格 0.04(1 社あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量 390.0 × 価格 0.039、営業利益率 4.0%
- IT ソリューション:数量 35.0(稼働する技術者(人、推定))× 価格 0.15(1 人あたりの年の売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 35.0 × 価格 0.1463、営業利益率 2.0%
- ランゲージソリューション:数量 4,230(案件数(件、推定))× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 4230.0 × 価格 0.0011、営業利益率 -5.0%
倍率:赤字に近い稼ぐ力では価値が付かないため、余った現金 40 億円に戻り方 0.75 を掛けた 30 億円を床とし、今の自己資本 59.5 億円に掛けて PBR 0.50 倍とした。
確率:AI で開示と翻訳の作業が置き換わる構造的な負け筋。法定の書類そのものは残るため、10 年で全面的に崩れるとまでは見ず、12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投資情報
IFIS コンセンサス(アナリスト予想のデータ)とキャピタル・アイの発行市場ニュース、調査レポートのシステム開発。
| 数量契約件数(件、推定) | 価格1 件あたりの年の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.01 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,575 | 0.01 | 21 | 5 |
取り方:件数は開示が無く、売上 15.0 億円を 1 件あたり年 100 万円で割った推定。利益率はセグメント利益が開示されないため 22% と推定(データ販売は粗利が高い)。AI 代替は独自データの型(数量 0.85〜1.0 倍、価格 1.15〜1.34 倍)。
ファンドディスクロージャー
運用会社の投信の目論見書・運用報告書の制作。
| 数量受け持つ投信の本数(本、推定) | 価格1 本あたりの年の制作売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,700 | 0.00 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,835 | 0.01 | 17 | 3 |
取り方:本数は開示が無く、売上 13.4 億円を 1 本あたり年 50 万円で割った推定。利益率は 22% と推定。価格は AI による制作の効率化を顧客に一部返すため、中立で物価を下回る 1.21 倍。
ドキュメントソリューション
生命保険・証券・IR の印刷と発送、確定拠出年金の仕組みの開発。
| 数量取引先の数(社、推定) | 価格1 社あたりの年の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.03 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 540 | 0.04 | 23 | 3 |
取り方:取引先数は開示が無く、売上 18.7 億円を 1 社あたり 312 万円で割った推定。利益率は印刷と物流を含むため 12% と推定。紙の削減で数量は中立 0.9 倍。
IT ソリューション
技術者の派遣(SES)と受託開発、運用保守。
| 数量稼働する技術者(人、推定) | 価格1 人あたりの年の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 70.0 | 0.12 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 49.0 | 0.16 | 8 | 1 |
取り方:人数は開示が無く、売上 8.2 億円を 1 人あたり年 1,170 万円で割った推定。人月で売る型なので AI エージェント代替で中立 0.70 倍(表の 0.55〜0.75 倍)。利益率は 9% と推定。
ランゲージソリューション
テンナイン・コミュニケーションなどの翻訳と通訳。
| 数量案件数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 14,100 | 0.00 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8,460 | 0.00 | 11 | 0 |
取り方:案件数は開示が無く、売上 14.1 億円を 1 件 10 万円で割った推定。翻訳は顧客の AI 内製化で既に減収(2026 年中間期)。人月の型で中立 0.60 倍、価格は通訳が残る分 1.25 倍。利益率は 6% と推定。
リスクと懸念
AI エージェント代替(翻訳・SES)
翻訳は顧客が AI で内製し、2026 年の中間期にすでに減収減益になった。人の時間で売る翻訳と SES は売上の 3 割強を占め、10 年で大きく縮む前提で見るべきだ。
AI による開示書類の制作の値下げ
目論見書や運用報告書の下書きは AI が作れる。運用会社が制作を内製すれば、ファンドディスクロージャーの単価と数量が同時に下がる。利益の柱の一つなので響きは大きい。
現金が戻らない
現金と預金は 50 億円で時価総額の約 7 割にあたる。創業家が約 4 割を持ち、自社株買いは乏しい。配当以外に戻らなければ、少数株主にとって帳簿どおりの価値は付かない。
買収の失敗
翻訳会社の買収は、AI で縮む事業への投資だった。今後も現金で小さな買収を重ね、利益を生まない事業を抱え込むおそれがある。
紙の削減
生命保険や証券の書類の電子交付が進めば、印刷と発送の仕事は細る。確定拠出年金の仕組みで補えるかが分かれ目だ。
今後の分かれ目
- ファンドディスクロージャーの売上が 2 年続けて減る
- AI による制作の置き換えが始まったとみて、やや悲観の筋書きに近づく。
- 自社株買いや特別配当で現金を大きく返す
- 現金の戻り方を 1.0 に近づけて見直し、評価は上がる。
- IFIS コンセンサスの値上げが通る
- データの堀が確かめられ、やや楽観に寄る。
- ランゲージ事業が赤字になる
- 減損や撤退を通じて、買収の失敗が数字に表れる。
- 新たな買収を現金で行う
- 買う先が AI に強い事業か、人月の事業かで評価が分かれる。
見ておくもの
- ファンドディスクロージャーの売上と受け持つ投信の本数
- ランゲージ事業の損益
- IFIS コンセンサスの契約件数と値上げ
- 自社株買いと配当性向
- 生命保険書類の電子化の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 7.5%(基本 7.5% + quality 1.0%)と各筋書きの事業の ROE から正当化 PER を出し、中立はその 8 割の 11.0 倍とした。余った現金 40 億円は戻り方 0.75 で足した。今の PER や PBR は見ていない。悲観は現金の床で置いた。セグメントの利益率は開示が無く推定なので、全社の営業利益率(過去 12 年の山は 15.4%)を超えない範囲に収めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→22.78 倍・やや楽観 PER 11.5→22.18 倍・中立 PER 11→21.77 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0%。同じ領域の TAKARA(−0.2%)より、人月の仕事の割合と規模の小ささで高く、プロネクサス(+1.5%)よりデータの事業がある分低い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。