結論
ビーアンドピーは、店頭のポスターや垂れ幕、展示会の大きな看板を、大判のインクジェットで刷って届ける会社だ。大阪と東京、横浜の都心に工場を持ち、朝の注文を夕方に渡す速さで客をつかむ。筆者の結論は適正で、わずかに割安寄りである。今期も3四半期で売上が7%、営業利益が3%増え、計画どおりに進んでいる。
印刷の会社としては珍しく、よく稼ぐ。営業利益率は15%前後、ROE、つまり自己資本でどれだけ稼いだかは13%ある。紙の商業印刷の多くが資本コストに届かない中で、ここは届いている。理由は、プリンターを100台以上そろえ、夜も工場を動かし、急ぎの仕事を断らないことだ。定価が無く、速さと確実さに値段が付く。
借金は無く、現金は33億円ある。時価総額の半分を超える額だ。役員の一族の資産管理会社が過半の株を持ち、配当は利益の4割まで上げてきた。
筆者が値段を慎重に見るのは、需要の先行きだ。紙やフィルムの販促物は、デジタルの看板やネットの広告に少しずつ置き換わる。会社は買収で企画や什器の量産に手を広げ、その流れを受け止めようとしている。それが実れば、今の値段には上乗せが残る。
逆に、デジタル化の速さが客の数を増やす速さを上回れば、今の高い利益率は続かない。分かれ目は、本体の売上が買収に頼らずに伸び続けるかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ビーアンドピーは「地味だが筋の良い小さな事業」だ。大判の販促物を刷るという仕事は、誰にでもできそうに見える。だが、100台以上の機械を都心に並べ、夜も止めずに動かし、急ぎの注文を確実にこなす会社は少ない。客はその速さと安心に、定価の無い値段を払う。
数字もそれを裏づける。営業利益率は15%前後、ROEは13%で、借金は無い。印刷の業界で、資本コストを上回って稼げる会社は多くない。
オーナーとして持ち続けたいかと問えば、条件付きで是と答える。条件は2つある。1つは、販促物がデジタルに置き換わる速さが、客の数を増やす速さを上回らないこと。もう1つは、積み上がる現金が、値段の高い買収に使われないことだ。
安全域は、事業より現金の側にある。時価総額の半分を超える現金があり、事業の部分は利益の8倍ほどで買える計算になる。過半を持つ一族が現金をどう使うかで、少数株主の取り分は変わる。筆者は、事業の質に対して今の値段は高くないと見る。ただ、需要の先細りを考えれば、大きな安全域とも言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大半は、大判のインクジェットの出力だ。広告代理店や制作会社、印刷会社から注文を受け、ポスター、店頭の幕、展示会の看板、床や壁に貼るシート、店の内装の印刷物を刷る。刷ったあとは、切る、貼る、梱包する、届けるまでを自社でこなす。
強みは設備と速さだ。水性、溶剤、ラテックス、UVの各種のプリンターを100台以上持ち、幅5mまで刷れる機械もある。2交代で夜も動かし、都心の工場なので当日に出荷できる。競合の多くは人手不足で夜の稼働をやめた。急ぎの案件ほど、この会社に集まる。
営業は大阪、東京、横浜、名古屋、京都、福岡に置く。2〜3人のチームで100社ほどを受け持ち、担当が休んでも注文が止まらない。客の数を増やし、同じ客から何度も注文をもらう。それが売上の伸びの元だ。
周辺にも手を広げている。デジタルの看板の販売とARの販促、イベントのノベルティの制作、ネットの販売サイト「インクイット」がある。2024年には大阪の広告代理・企画制作会社のイデイを、2026年には埼玉の什器と販促ツールの量産会社の新和を買った。企画から試作、量産、組み立てまでをグループで受ける形を作っている。
注文は1件十数万円の小口が多く、特定の客に頼らない。客の層は広告代理店と制作会社、印刷会社が中心で、イデイの買収でメーカーなどの広告主にも直接つながった。従業員は本体で200人弱で、その半分以上が工場で働く。
優良さと弱いところ
優良さは、印刷の会社としては高い。営業利益率は15%前後で、過去9年の最低でも8%台だった。ROEは13%で、資本コストを上回る。設備を厚く持ち、夜も動かし、急ぎの仕事を確実にこなすことで、値段の比べ合いから一歩離れている。
堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と速さの組み合わせだ。100台以上のプリンターを複数の都市に持つ競合は無いという。小さな出力の会社は、人手が足りず夜の稼働を続けられない。客の側も、締め切りの前夜に頼める先を簡単には変えない。
ただし、堀は深くはない。設備は買えば手に入り、大手の印刷会社が本気で出力に寄れば、値段の勝負になる。需要そのものも、紙と幕の販促物から、デジタルの看板やネットの広告に少しずつ移っている。
資本の使い方は堅実だ。借金は無く、配当性向を4割まで上げ、買収は2億円規模の小さなものに限っている。一方で、現金は時価総額の半分を超えるほど積み上がり、自社株買いは無い。過半を持つ役員一族の資産管理会社が、現金の使い道を決める。
総じて、小さいが質の高い事業に、使い道の決まらない現金が付いた形である。
過去9年に赤字の年は無く、最も悪いコロナの年でも営業利益率は8%台を保った。景気の谷でも稼げる形は、この規模の会社としては珍しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の印刷の市場は、30年で大きく縮んだ。チラシやカタログ、雑誌の印刷は、ネットの広告と電子の媒体に置き換わった。紙の商業印刷を主とするKYORITSUやサンメッセは、資本コストに届かない利益にとどまる。
ビーアンドピーのいる大判の出力は、その中では様子が違う。店頭や展示会、イベント、店の内装は、人が実際に見て触る場所の広告だ。ネットでは代わりにくい。コロナの時期には展示会とイベントが止まり、2020/10期の利益は半分になったが、その後は回復して最高益を更新した。
構造の変化は2つある。1つはデジタルの看板だ。駅や店の画面は、刷った幕を少しずつ置き換える。会社自身がデジタルの看板を売り、両方を提案できる形を作っているのは、この流れへの備えである。もう1つは人手だ。出力と加工の職人は集めにくく、小さな工場は夜の稼働をやめている。人が足りない業界では、設備を厚くし、人を育てられる会社に仕事が集まる。
素材のフィルムやインク、電気代は物価並みに上がる。定価の無い仕事なので、値上げは案件ごとに通しやすい。
筆者は、大判の販促物の市場は10年で量にして横ばいからやや縮むと見る。その中で、この会社は客の数を増やし、シェアを取って量を伸ばす。買収で企画と什器の量産を足せば、1つの客から受ける仕事の幅も広がる。
大判の出力の同業は、地方の小さな会社が多く、数で数えれば数百社ある。設備を更新できず、人を集められない会社から順に退いていく。数量の伸びの多くは、市場の拡大ではなく、こうした同業からのシェアの移動である。
資本政策と M&A
配当は2025/10期に年80、今期は87の予定で、毎年増やしている。中計では配当性向4割を掲げ、ほぼ届いた。自社株買いは無い。株主優待は1年以上の株主にQUOカードを贈る。個人の株主は少なく、費用は年に数百万円とみて、還元の数字には入れていない。
借金は無く、現金は33億円ある。売上の1年分の7割を超える額だ。事業に要る運転の資金と、2026年8月の新和の取得の2億円を除いても、25億円ほどが余る。
上場で集めた資金を、買収に使う方針だ。イデイと新和はどちらも2億円規模で、値段は手堅い。企画から量産までをグループで受ける形は筋が通っている。
大株主は、役員と親族の資産管理会社の英知興産で、54%を持つ。親会社に近い存在で、TOBで株を手放す相手が出る見込みは小さい。少数株主にとっては、配当の性向を上げるか、自社株買いを始めるかで、余った現金の価値が変わる。筆者はこの現金の戻り方を7割5分と見る。配当を毎年増やしてきた実績は評価できるが、現金の山を減らすほどではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
印刷の会社で営業利益率15%、ROE13%、借金ゼロという組み合わせは珍しい。紙の商業印刷の会社が資本コストに届かない中で、ここは届いている。理由ははっきりしている。100台以上のプリンターを都心の工場に並べ、夜も動かし、朝の注文を夕方に渡す。競合の多くは人手不足で夜の稼働をやめた。急ぎの仕事ほど、この会社に集まる。
人手の不足は、この会社には追い風だ。職人が集まらない小さな出力の会社は、仕事を断るか、廃業する。設備と人を育てる仕組みを持つ会社が、そのシェアを取る。客の数は中計の目標の3割増をほぼ達成した。
買収も筋が良い。イデイで企画とデザイン、新和で什器の量産と組み立てを足した。1つの客から、企画、試作、量産までまとめて受けられる。どちらも2億円規模で、高値づかみはしていない。
今の時価総額は60億円で、そのうち現金が33億円ある。事業の部分は、利益の8倍ほどで買える。資本コストを上回って稼ぐ事業に、この倍率は低すぎる。配当は毎年増え、性向は4割に届いた。現金の一部が株主に戻るだけでも、値段は上に動く。
筆頭株主の一族にとっても、配当は大きな収入だ。配当性向を上げる動機は、少数株主と同じ向きにある。
慎重な見方
販促物の需要は、長い目で見て細る。駅や店の看板は画面に替わり、展示会の広告もネットに移る。刷った幕とポスターは、紙のチラシと同じ道をゆっくり歩む。10年の量の伸びを当てにするのは危うい。
堀も浅い。プリンターは買えば手に入り、大手の印刷会社が本気で大判の出力に寄れば、値段の勝負になる。定価が無いことは、裏を返せば、値段が案件ごとに比べられるということだ。今の利益率15%は、この10年の最高に近い水準で、平均ではない。
成長の中身も見る必要がある。2025/10期の売上の3割近い伸びは、イデイの買収が大半だ。自力の伸びは1桁にとどまる。買収した会社は外注が多く、利益率は本体より低い。買収を重ねるほど、全社の利益率は下がる。
現金も株主のものとは限らない。役員一族の資産管理会社が54%を持ち、自社株買いは一度も無い。33億円の現金は、上場で集めた資金の残りで、使い道は買収とされる。小さな会社が現金を買収に使い続ければ、いつか高い買い物をする。少数株主に、それを止める力は無い。
今の利益率の高さは、コロナ明けの展示会とイベントの戻りに助けられた面もある。それが平らになれば、伸びは鈍る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。速さと設備の厚みで稼ぐ事業の質は数字で確かめられ、借金の無い財務と増え続ける配当がそれを支える。一方で、販促物の需要の先細りと、過半を握る一族の現金の使い方は本物の懸念だ。中立に4割弱、やや楽観と楽観に合わせて3割強、やや悲観と悲観に合わせて3割を置いた。自社株買いか配当性向の引き上げが出れば、楽観側に寄せる。本体の売上が買収を除いて伸びなくなれば、慎重側に寄せる。差が小さくプラスに出るのは、事業の稼ぐ力と10年で溜まる現金の分である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 6,735 円157 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 957 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 3,934 円92 億円、今との差 +53.0%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 11,526 円269 億円 | 1,322 円31 億円 | +399.5% | +17.5% | 1,285 円30 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,425 円220 億円 | 1,150 円27 億円 | +311.2% | +15.2% | 2,326 円54 億円 |
| 中立 | 38% | 7,823 円182 億円 | 1,021 円24 億円 | +243.9% | +13.1% | 3,361 円78 億円 |
| やや悲観 | 19% | 2,202 円51 億円 | 704 円16 億円 | +13.0% | +1.2% | 552 円13 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,073 円25 億円 | 455 円11 億円 | −40.6% | −5.1% | 168 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,735 円157 億円 | 957 円22 億円 | +199.1% | +11.6% | 7,692 円179 億円 |
今の株価時価総額 2,572 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% シェアと買収で倍の規模に、利益率は18% 利益 11 億円 · PER 23.3 倍 · 株価時価総額 11,526 円269 億円
人手の足りない小さな出力の会社が次々に退き、急ぎの仕事がこの会社に集まる筋書きだ。本体の受注の件数は10年で4割増え、単価は物価並みに上がる。夜の稼働と自動化の投資で、1人あたりの仕事は増え、利益率は18%に上がる。イデイと新和に続く小さな買収で、企画、試作、量産、組み立てを1つの客から丸ごと受ける形が整う。子会社の売上は今の3倍を超え、利益率も本体に近づく。デジタルの看板の販売も、刷った幕の置き換わりを自社の中で受け止める。配当は利益の4割を出し続け、現金は買収と配当でほどよく使われる。ROEは資本コストを大きく上回り、事業の質が値段に表れる。過半を持つ一族も、配当の増加で同じ向きの利益を得る。
- インクジェット出力・加工:数量 42,000(年間の受注件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 13 億円。推定 4.2 万件(1.4 倍)× 0.0017 億円(1.34 倍)、利益率 18%
- 企画・制作・什器(子会社):数量 500(取引先の数(社・推定))× 価格 0.04(1 社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。推定 500 社(2.5 倍)× 0.040 億円(1.34 倍)、利益率 7%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 23.28 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足で小さな出力の会社が退き、シェアを取りながら買収で企画と量産を足す筋書き。2018/10期に営業利益率23%の実績があり、18%は届く範囲として1割を置いた。
やや楽観 22% 客の数が増え、利益率17%を保つ 利益 9 億円 · PER 23.0 倍 · 株価時価総額 9,425 円220 億円
チーム営業で客の数が増え続け、本体の件数は10年で2割5分増える筋書きだ。単価は物価の9割ほど上がり、定価の無い仕事で値上げは案件ごとに通る。夜の稼働と設備の更新で、利益率は17%と今より少し上がる。イデイは本体に制作の一部を移して黒字になり、新和は首都圏の什器の量産を担う。子会社の売上は今の2倍になるが、外注が残るので利益率は6%にとどまる。デジタルの看板は小さな柱として育つ。配当は利益の4割で毎年増え、余った現金は小さな買収に少しずつ使われる。ROEは資本コストを上回り続け、事業の値段は利益の13倍ほどになる。現金は年に数億円ずつ積み上がり、その使い道が次の論点になる。
- インクジェット出力・加工:数量 37,500(年間の受注件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 11 億円。推定 3.75 万件(1.25 倍)× 0.0017 億円(1.30 倍)、利益率 17%
- 企画・制作・什器(子会社):数量 400(取引先の数(社・推定))× 価格 0.04(1 社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。推定 400 社(2 倍)× 0.040 億円、利益率 6%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 23 倍、時価総額 207 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の客数の目標をほぼ達成した勢いが続き、買収の会社が黒字化する筋書き。過去5年の営業利益率は12〜16%で、17%は少し上なので2割強。
中立 38% 需要は横ばい、シェアで量を1割5分伸ばす 利益 7 億円 · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 7,823 円182 億円
大判の販促物の市場は、デジタルの看板に少しずつ置き換わり、量にして10年で横ばいからやや縮む。その中で、この会社は人手の足りない同業から急ぎの仕事を取り、本体の件数を1割5分伸ばす。単価は物価の8割ほど上がる。素材と人件費の上昇は値上げでほぼ取り返し、利益率は16%前後を保つ。子会社は売上が倍になるが、外注が多く利益率は5%だ。償却は年1億円弱から設備の更新で少し増えるが、利益に比べて小さい。配当は利益の4割で増え、現金は小さな買収に使われつつ少しずつ積み上がる。ROEは資本コストを上回るが、需要の先細りが倍率を抑える。それでも、紙の商業印刷の会社とは稼ぐ力の桁が違う。
- インクジェット出力・加工:数量 34,500(年間の受注件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 9 億円。推定 3.45 万件(1.15 倍)× 0.0016 億円(1.25 倍)、利益率 16%
- 企画・制作・什器(子会社):数量 300(取引先の数(社・推定))× 価格 0.04(1 社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。推定 300 社(1.5 倍)× 0.040 億円、利益率 5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 22.71 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:販促物の市場は量で横ばいからやや縮むが、人手不足で退く同業のシェアを取る筋書き。客数の伸びと利益率の実績をならした中立で、もっとも起こりやすいとみた。
やや悲観 19% デジタル化が進み、利益率は11% 利益 3 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,202 円51 億円
駅や店の看板の画面への置き換えが速まり、刷った幕とポスターの注文が細る筋書きだ。本体の件数は10年で1割減り、大手の印刷会社も出力に寄って値段の比べ合いが強まる。単価は物価に大きく遅れ、利益率は11%に下がる。子会社は伸びず、収支とんとんにとどまる。それでも借金は無く、赤字にはならない。配当は利益の4割を保つが、額は伸びない。現金は谷の年の設備の更新と小さな買収で少し減る。事業はまだ資本コスト近くで稼ぐが、市場の縮みが見えるので、値段は利益の8倍台まで下がる。人件費の上昇を値上げで取り返せない年が増え、夜の稼働の強みも薄れる。買収した会社の、のれんの減損も出る。
- インクジェット出力・加工:数量 27,000(年間の受注件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。推定 2.7 万件(0.9 倍)× 0.0015 億円(1.15 倍)、利益率 11%
- 企画・制作・什器(子会社):数量 200(取引先の数(社・推定))× 価格 0.03(1 社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。推定 200 社(横ばい)× 0.035 億円、収支とんとん
倍率:事業の ROE は約 7%で k を下回るので PER の上限は 1÷k=12.1 倍。市場の縮みが見える筋書きなので上限の 7 割の 8.5 倍。余った現金は今の 0.75 倍(約 19 億)を戻り方 0.75 で足す。
確率:店頭と展示会の販促物のデジタル化が速まり、件数が減る筋書き。2020/10期に利益率8%台まで落ちた実績から2割弱を置いた。
悲観 11% 販促物が画面に替わり、利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,073 円25 億円
店頭も展示会も駅も、広告の多くが画面とネットに移る筋書きだ。刷る販促物の件数は10年で4割減り、残った仕事は大手と値段で奪い合う。単価は今のまま上がらず、夜の稼働の人件費と設備の固定費が重くのしかかる。営業利益はほぼ消え、子会社は赤字になる。会社は工場を絞り、人を減らす。配当は細る。借金が無いので会社は残るが、事業の価値はほとんど無い。値段は手元の現金と売掛金から負債を引いた残りに近づく。過半を持つ一族が現金を握り、少数株主に清算を決める力は無いので、その現金も全額は数えられない。紙の商業印刷が30年でたどった道を、10年で駆け足でたどる姿だ。値段は帳簿の7割弱で止まる。
- インクジェット出力・加工:数量 18,000(年間の受注件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。推定 1.8 万件(0.6 倍)× 0.0013 億円(据え置き)、利益率 2%
- 企画・制作・什器(子会社):数量 120(取引先の数(社・推定))× 価格 0.03(1 社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。推定 120 社(0.6 倍)× 0.030 億円、利益率 −5%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR で置く。価値は床の資産(約 25 億、floor_assets_why)。今の自己資本 38 億に対し 0.66 倍。
確率:刷る販促物の需要が大きく減り、値段の勝負に巻き込まれる構造的な負け。紙の商業印刷が30年でたどった道で、10年で起こりうる速さとして1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インクジェット出力・加工
大判インクジェットでポスター・幕・看板・内装の印刷物を刷り、加工・梱包・配送まで行う本体の主力。
| 数量年間の受注件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 30,000 | 0.00 | 39 | 7 |
| 10 年後 中立 | 34,500 | 0.00 | 56 | 9 |
取り方:件数の開示は無い。2025/10 期の連結売上 45 億円からイデイ(約 6 億)を除いた本体の約 39 億円を、1 件あたり約 13 万円(0.0013 億円)と見て年 3 万件と推定。利益は全社の営業利益 7.0 億からイデイの小さな利益を除いた推定。
企画・制作・什器(子会社)
イデイの広告の企画・デザイン・制作と、2026 年に加わった新和の什器・販促ツールの量産と組立。
| 数量取引先の数(社・推定) | 価格1 社あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 200 | 0.03 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.04 | 12 | 1 |
取り方:イデイの売上約 6 億円を、取引先約 200 社 × 1 社 0.03 億円と推定。外注が多く利益率は低い(2024/09 期は営業赤字、黒字化に取り組み中)。新和の売上は開示が無く、10 年の筋書きの取引先の増加に含めた。
リスクと懸念
販促物のデジタル化
駅や店の看板は画面に替わり、展示会の広告もネットに移る。刷った幕やポスターの需要は、紙のチラシと同じくゆっくり細る。客の数を増やす速さがそれに負ければ、量は減り始める。
大手の参入と値段の比べ合い
大判のプリンターは買えば手に入る。大手の印刷会社が出力に本腰を入れれば、定価の無い仕事は案件ごとに値段で比べられる。利益率15%は、この10年の高い方の水準だ。
買収の質
上場の資金を買収に使う方針だ。これまでの2社は2億円規模で手堅いが、外注型で利益率は低い。大きな買収を高値でつかめば、厚い現金の価値が損なわれる。
支配株主と現金の使い道
役員一族の資産管理会社が54%を持つ。自社株買いは無く、現金の使い道は会社が決める。少数株主は、配当の性向に頼るしかない。
人手と夜の稼働
強みの夜の稼働と当日の出荷は、職人とオペレーターの確保が前提だ。人件費は物価以上に上がりうる。人が集まらなければ、強みがそのまま弱みに変わる。
景気とイベント
展示会やイベント、店の改装は景気で削られやすい。コロナの時期には利益が半分になった。大きな不況が来れば、短い間に利益が大きく落ちる。
今後の分かれ目
- 自社株買いを始めるか、配当性向を5割以上に上げたら
- 余った現金が株主に戻る道が開く。戻り方の割引を小さくし、楽観側に寄せる。
- 本体の売上が買収を除いて年5%以上伸び続けたら
- シェアを取る力が数字で見える。中立の量を上に見直す。
- 営業利益率が2年続けて12%を下回ったら
- 値段の比べ合いか買収による薄まりが進んだ印。やや悲観の確率を上げる。
- 10億円を超える大きな買収を発表したら
- 値段と買う会社の利益率を見る。高値なら現金の価値を割り引く。
- デジタルの看板の売上が大きく伸びたら
- 置き換わりの波を自ら取りにいけている印。悲観の確率を下げる。
- 大株主の資産管理会社が持株を手放す動きが出たら
- TOBや再編の道が開く。帳簿と現金を目安に楽観側に寄せる。
見ておくもの
- 本体の売上の伸び(買収を除く)
- 営業利益率
- 客の数とリピートの頻度
- 買収の件数と値段
- 配当性向と自社株買い
- デジタルの看板の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価から置いていない。中立は10年後の事業のROE(余った現金を除く)が約14%でk 7.5%を上回り、RONIC=k+1/2×(ROE−k)≒11%、g 4%で正当化PER約15倍、需要の先細りと浅い堀で8割の12倍とした。余った現金25億は戻り方0.75で別に足し、PERに混ぜていない。KYORITSUやサンメッセより倍率が高いのは、ROEが資本コストを上回る事業の違いで説明できる。今のPER約12倍(現金込み)は根拠にしていない。2027/11期からの新しいリースの会計で工場の賃借が負債に載るが、10年後は今と同じ家賃を費用にする形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→23.28 倍・やや楽観 PER 13.2→23 倍・中立 PER 12→22.71 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。