結論
ノダは、床材や室内ドアなどの木質建材と、住宅の構造に使う合板を作る会社だ。筆者の結論は、資産は厚いが稼ぐ力が細く、中立でも今の時価総額を 2 割余り下回る、というものだ。
一番の理由は、2 本の柱がどちらも新築住宅に縛られていることだ。新設住宅着工は長く減る方向にあり、建材は数量で押される。合板は相場で利益が大きく振れ、輸入の南洋材合板は円安の仕入れ高を値段に移せていない。2 期続けて最終赤字で、今期も赤字の見通しだ。
救いは財務だ。手元の現金が借入を上回り、上場株を 100 億円余り持つ。だが株の配当はすでに利益に入っており、売る方針も数字では示されていない。値段の下支えにはなるが、価値を押し上げる材料とまでは言えない。
10 年の中立では、営業利益は 15 億円前後に戻るが、ROE は 3% 弱にとどまる。資本コストに届かない会社に、高い倍率は払えない。
上場株と現金が値段の下を支えるので、悲観でも価値は大きく崩れない。ただ、上へ押し上げる力も見当たらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノダは「安いが、良い事業ではない」会社だ。持っている現金と上場株を合わせると、時価総額に近い。だから値段の下は堅く見える。
だが、資産の厚さは事業の強さではない。床材も合板も、値段は相場と取引先に決められる。新築という細る市場に縛られ、10 年先も稼ぐ力が資本コストを超える姿は描きにくい。株主のものになる利益は、配当を払うと手元にほとんど残らない。
オーナーとして持ち続けたい事業かと問われれば、筆者は首を振る。資産の安さだけで買うなら、経営がそれを株主に返す道筋が要る。政策保有株の売却額と、還元の率を数字で示す日が来れば、見方は変わる。それまでは、安全域は帳簿の上にあるだけで、事業の中にはない。
筆者が見たいのは 2 つだ。建材の利益率が値上げで 5% 台に戻るか。上場株を売った代金が自己株の取得に回るか。どちらも、まだ数字で確かめられない。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つだ。売上の約 6 割を占める木質建材は、床材、室内ドア、収納、階段などの内装材を作る。主力は内装建材のシリーズ「カナエル」で、静岡の清水工場と子会社のアドンが作る。ほかに、壁の下地に使う MDF、つまり木の繊維を固めた板を富士川工場で作り、耐震性の高い構造用面材「HBW」として売る。
売り先は地域の工務店とハウスメーカー、建材の問屋だ。新築の戸建てが中心だが、木造アパートの遮音工法「シャーオン」や、上から貼るだけのリフォーム用床材で、新築以外へ広げている。子会社のナフィックスとアリモト工業を使い、施工まで請け負う販売も始めた。
残る約 4 割が合板だ。富士川工場で国産のヒノキや杉から構造用合板を作り、宮城の石巻合板工業(出資 80%)とマレーシアの持分法会社サンヤンが、南洋材の合板を作る。国産材の合板は相場で値段が決まり、輸入の合板は円の値段で利益が決まる。
2025 年 11 月期の利益は、建材が 8 億円、合板が 9 億円だった。本社の費用が年 17 億円ほどかかり、連結の営業利益はほぼゼロに沈んだ。
優良さと弱いところ
堀は弱いと見る。床材やドアは、工務店やハウスメーカーの仕様に合わせて作る品で、ほかの建材メーカーと替えが利く。値上げは原料高を追いかける形で、先に値段を決める力はない。
合板はさらに市況の品だ。2022 年 11 月期は、輸入材が品薄になったウッドショックで営業利益率が 12% まで跳ねた。翌年から相場が下がると、利益は一気にしぼんだ。好不調の差は、会社の努力より相場で決まる。
資本効率も低い。自己資本は 340 億円あるが、直近の 2 期は減損を出して赤字だった。工場の機械の価値を 2 年続けて切り下げたのは、投資が稼ぎに結びつかなかった証しだ。
経営は、ROE を 2030 年に 5%、2035 年に 8% へ戻す目標を掲げた。資本コストを上回るのは 2035 年以降という、控えめな計画だ。筆者はこの率直さを評価するが、目標そのものが資本コストに届かないことも見落とせない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅の内装材と合板は、どちらも新築の戸数で需要が決まる。新設住宅着工は 2025 年度に 74 万戸と、10 年前の 8 割ほどに減った。2025 年 4 月の法改正で確認の審査が遅れ、一時はさらに落ち込んだ。人口と世帯が減る以上、10 年先も戸数は細ると見るのが自然だ。
明るい所もある。木造のアパートは増えており、ノダの遮音床や構造用面材が入り込める。中古住宅の流通とリフォームも底堅い。ただ、リフォームは 1 件あたりの使用量が小さく、新築の減りを丸ごと埋めるほどではない。
合板は国産材と輸入材で事情が違う。国産の針葉樹合板は、メーカー各社が生産を絞って値段を支える。原木の値段は高止まりで、相場が少し弱ると利益が消える。輸入の南洋材合板は、ドルの仕入れ値を円で売る商売だ。円安が続く間は、値上げが需要の弱さに阻まれ、薄い利益が続く。
競合は、建材では大建工業、永大産業、パナソニックの住宅設備などだ。合板では、国内最大手のセイホクグループ(非上場)や日新などが生産を抑えている。どの会社も同じ新築の細りに直面しており、ノダだけが抜け出す決め手は見当たらない。
資本政策と M&A
配当は「安定配当」を掲げ、赤字の年も配当を減らさず、年 4〜5 億円を払ってきた。2026 年には自己株を約 7 億円取得した。株主に戻す意思はあるが、決まった還元の率は示していない。
政策保有株は約 107 億円で、時価総額を上回る。会社は「縮減」を掲げ、2026 年に 8 億円余りの売却益を出した。ただ、売る額の目標は数字で示していない。
大株主には創業家の野田家と、取引先の三井物産、静岡銀行が並ぶ。創業家の影響が強く、物言う株主が入っていない。買収の対象としては、資産の厚さから狙われうるが、創業家の同意が要る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段の下は資産で固い。現金は借入を上回り、上場株は時価総額を超える。会社は政策保有株の縮減を掲げ、2026 年に売却益を出した。売った分を自己株の取得に回せば、1 株の価値はすぐ上がる。
事業にも手は打たれている。カナエルの値上げと MDF の価格改定は 2026 年に通った。木造アパートの遮音床や、構造用面材の HBW は、法改正で需要が増える分野だ。合板は国産材の値段が上向き、3Q だけで経常利益が 6 億円を超えた。
本社の費用を絞り、建材の利益率を 5% 台に戻せば、営業利益は 20 億円を超える。ウッドショックのような相場の跳ねが 10 年に 1 度でも来れば、利益は一気に厚くなる。
資本の使い方も変わり始めた。会社は初めて資本コストを意識した方針を出し、ROE の目標を数字で示した。自己株の取得はその第一歩だ。上場株を順に売れば、時価総額に近い額の資産が株主に戻る道が開ける。木造アパートの遮音床のような、規制が生む需要に強い品を持つのも見逃せない。
慎重な見方
資産が厚くても、使い方を決めるのは創業家だ。政策保有株の売却は 1 回あっただけで、目標の額はない。少数株主がこの資産を手にできる道筋は見えない。
事業は 2 本とも新築に縛られる。着工は 10 年前の 8 割に減り、この先も細る。建材の値上げは原料高を追うだけで、数量の減りを止められない。輸入合板は円安で薄利が続き、国産合板は相場しだいだ。
減損は 2 期続いた。今期も期末に減損の可能性を織り込み、通期は赤字の見通しだ。工場への投資が稼ぎに結びつかない会社が、2035 年に ROE 8% へ届くとは考えにくい。
資本コストの見方も甘い。会社は自らの株主資本コストを 3〜5% と見積もるが、新築に縛られた市況の事業にしては低すぎる。この物差しで投資を決める限り、稼がない工場に資金が向かい、減損が繰り返されるおそれがある。
合板も明るくない。国産材は原木が高止まりし、メーカーが生産を絞って相場を支えるしかない。輸入材は円安の下で薄利が続く。2 本の柱のどちらにも、自分で値段を決める力がない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。新築に縛られた 2 本の事業と、2 期続いた減損は実績だ。資産の厚さは確かだが、経営がそれを株主に返す数字を示していない。確率は中立を厚くし、やや悲観を楽観側より重くした。上場株と現金が値段の下を支えるので、悲観でも価値はゼロ近くまでは落ちない。強気の側が勝つには、上場株の売却額と還元の率という、まだ無い数字が要る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 920 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 300 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 606 円89 億円、今との差 −9.5%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,798 円263 億円 | 478 円70 億円 | +239.7% | +13.0% | 182 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,324 円194 億円 | 376 円55 億円 | +153.7% | +9.8% | 340 円50 億円 |
| 中立 | 40% | 915 円134 億円 | 300 円44 億円 | +81.4% | +6.1% | 486 円71 億円 |
| やや悲観 | 22% | 492 円72 億円 | 239 円35 億円 | +9.1% | +0.9% | 161 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 373 円55 億円 | 137 円20 億円 | −24.0% | −2.7% | 51 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 920 円135 億円 | 300 円44 億円 | +82.1% | +6.2% | 1,220 円179 億円 |
今の株価時価総額 670 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:新築以外への移行が進み、合板の相場も強い 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,798 円263 億円
建材は、カナエルの値上げが定着し、木造アパートの遮音床とリフォーム用の床材が伸びる。新築の戸建ては減るが、新しい分野で数量の減りを 5% にとどめる。施工付きの販売が広がり、利益率は 6% まで戻る。
合板は、国産メーカーが生産を絞り続け、原木の値上がりを値段に移せる。南洋材は現地の伐採規制で品薄になり、輸入合板の値段も上がる。利益率は 7% を保つ。
営業利益は 30 億円台に戻り、ROE は 5% に届く。会社の 2030 年の目標を超えるが、資本コストにはまだ届かない。政策保有株の売却を自己株の取得に回し、還元は厚くなる。
- 木質建材(床材・ドア・収納・MDF):数量 95.0(住戸換算の出荷(千戸))× 価格 56(1 戸あたりの売上(万円))→ 売上 529 億円・営業利益 32 億円。数量 0.95 倍、値上げの定着で単価 1.40 倍
- 合板(国産針葉樹・輸入南洋材):数量 33.7(販売量(万立方メートル))× 価格 10(1 立方メートルあたりの値段(万円))→ 売上 342 億円・営業利益 24 億円。数量 0.95 倍、相場高で単価 1.45 倍
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 263 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建材の値上げが定着し、木造アパートとリフォームで数量を保ち、合板の相場が高い所で落ち着く筋書き。3 つがそろう必要があり、過去 12 年で営業利益率 5% を超えたのはウッドショックの 1 期とその前後だけなので 1 割に満たない。
やや楽観 20% やや楽観:値上げが通り、建材の利益率が 5% 台に戻る 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,324 円194 億円
建材は、値上げと省施工の品で単価を上げ、数量の減りを 8% にとどめる。木造アパートとリフォームが新築の減りを一部埋める。利益率は 5.5% まで戻る。
合板は、国産材の値段が原木高に合わせて上がり、輸入材は円安の中でも少しずつ値上げが通る。数量は新築の減りで 1 割細るが、利益率は 6% を保つ。
営業利益は 23 億円前後。安定配当を続け、自己株の取得もときどき行う。ROE は 4% 弱で、会社の 2030 年目標の 5% には届かない。それでも、2 期続いた減損の後としては、十分な立て直しだ。
- 木質建材(床材・ドア・収納・MDF):数量 92.0(住戸換算の出荷(千戸))× 価格 55(1 戸あたりの売上(万円))→ 売上 502 億円・営業利益 28 億円。数量 0.92 倍、単価 1.37 倍
- 合板(国産針葉樹・輸入南洋材):数量 31.9(販売量(万立方メートル))× 価格 9.67(1 立方メートルあたりの値段(万円))→ 売上 309 億円・営業利益 19 億円。数量 0.90 倍、単価 1.38 倍
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年に建材と MDF の値上げが通り、3Q だけで経常利益 6 億円を出した実績の延長。合板は平年並みの相場で、本社の費用は物価並みに増える。足元の改善が続けば届く姿で 2 割に置いた。
中立 40% 中立:新築の細りを値上げで埋め、営業利益 15 億円前後 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 915 円134 億円
建材の数量は、新築の戸建ての減りで 12% 細る。木造アパートとリフォームが一部を埋めるが、全部は戻らない。値段は物価並みに上がり、利益率は 5% まで戻る。会社が進める工程の見直しと配送の効率化が、ここで効く。
合板は、数量が 15% 細り、値段は物価並み。国産材は相場の山と谷を繰り返し、輸入材は円安で薄利のままだ。10 年をならした利益率は 5% にとどまる。
本社の費用は物価で 23 億円に増え、営業利益は 15 億円前後になる。純利益は 9 億円台で、安定配当を払うと手元に残る現金はわずかだ。ROE は 3% 弱で、資本コストの 3 分の 1 にとどまる。
- 木質建材(床材・ドア・収納・MDF):数量 88.0(住戸換算の出荷(千戸))× 価格 53(1 戸あたりの売上(万円))→ 売上 469 億円・営業利益 24 億円。数量 0.88 倍、単価 1.34 倍
- 合板(国産針葉樹・輸入南洋材):数量 30.2(販売量(万立方メートル))× 価格 9.39(1 立方メートルあたりの値段(万円))→ 売上 284 億円・営業利益 14 億円。数量 0.85 倍、単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築着工は細るが、値上げは物価並みに通るという、業界の向きに沿った姿。会社の 2026 年 11 月期の計画(建材の利益 13 億円)を少し上回る所で落ち着く。どちらにも強い証拠が無く、一番厚くした。
やや悲観 22% やや悲観:数量の減りが速く、利益はほぼ残らない 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 492 円72 億円
新築の戸建ては予測より速く減り、建材の数量は 18% 細る。値上げは原料高を追いかけるだけで、物価ほどは通らない。利益率は 3.5% にとどまる。
合板は、国産材の相場が弱い年が続き、輸入材は円安の仕入れ高を移せない。数量は 2 割強細り、利益率は 3.5%。
本社の費用を絞っても、営業利益は 4 億円前後しか残らない。安定配当は手元の現金を取り崩して続ける。稼ぐ力では値段がつかず、価値は手元の現金と上場株で決まる。株は配当のために持ち続けるので、少数株主の手には半分ほどしか届かない。
会社が掲げた 2030 年の ROE 5% は遠のき、目標は先送りになる。
- 木質建材(床材・ドア・収納・MDF):数量 82.0(住戸換算の出荷(千戸))× 価格 51(1 戸あたりの売上(万円))→ 売上 418 億円・営業利益 15 億円。数量 0.82 倍、単価 1.28 倍
- 合板(国産針葉樹・輸入南洋材):数量 27.7(販売量(万立方メートル))× 価格 8.97(1 立方メートルあたりの値段(万円))→ 売上 249 億円・営業利益 9 億円。数量 0.78 倍、単価 1.28 倍
倍率:PBR 0.211 倍を今の自己資本 341 億円に掛けた。稼ぐ力(純利益 2.6 億円÷k)は 30 億円に満たないので、売れる資産の床 72 億円で測る。
確率:2 期続けて最終赤字、今期も赤字見通しという実績に近い姿。新築の減りが速く、円安で輸入合板の薄利が続く。慎重な見方の根拠が実績にあるので、楽観側より重くした。
悲観 10% 悲観:赤字が続き、工場の整理と減損を重ねる 利益 −21 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 373 円55 億円
新築の戸建ては 3 割減り、建材は値上げが通らず利益が消える。工務店の廃業が進み、地域の問屋を通す売り方が細る。合板は国産材の相場が崩れ、輸入材は撤退に近い縮小を迫られる。
赤字が続き、工場の整理と減損を何度も出す。上場株を売って赤字と退職の費用を埋め、配当は減らす。10 年の終わりに残るのは、縮んだ建材の事業と、売り残した上場株、遊休の土地だ。
経営が資産を株主に返す前に、赤字が資産を食う。少数株主の手に届くのは、資産の一部だけになる。
合板の工場を手放す決断が遅れるほど、残る資産は小さくなる。
- 木質建材(床材・ドア・収納・MDF):数量 70.0(住戸換算の出荷(千戸))× 価格 48(1 戸あたりの売上(万円))→ 売上 334 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍、単価 1.20 倍
- 合板(国産針葉樹・輸入南洋材):数量 23.1(販売量(万立方メートル))× 価格 8.06(1 立方メートルあたりの値段(万円))→ 売上 186 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.65 倍、単価 1.15 倍
倍率:PBR 0.16 倍を今の自己資本 341 億円に掛けた。稼ぐ力は赤字で、価値は売れる資産の床 55 億円で測る。積み上げた自己資本には掛けていない。
確率:建材は数量の減りに値上げが追いつかず赤字、合板も赤字が続き、工場の整理に追い込まれる筋書き。2 期続いた減損が実績にあるが、純現金と上場株があり資金繰りには困らないので 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
木質建材(床材・ドア・収納・MDF)
内装建材シリーズ「カナエル」、防音床、構造用面材 HBW、施工付き販売。工務店・ハウスメーカー・建材問屋に売る。
| 数量住戸換算の出荷(千戸) | 価格1 戸あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 100 | 40 | 398 | 8 |
| 10 年後 中立 | 88.0 | 53 | 469 | 24 |
取り方:売上 398.0 億円・セグメント利益 8.1 億円は決算説明資料。戸数の開示は無く、1 戸あたりの内装材を約 40 万円と置いて売上から住戸換算 10 万戸と推定した(新設着工 74 万戸の約 1 割強に相当)。
合板(国産針葉樹・輸入南洋材)
富士川工場の国産材の構造用合板と、石巻合板工業(80%)・サンヤン(持分法)の南洋材合板。
| 数量販売量(万立方メートル) | 価格1 立方メートルあたりの値段(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 35.5 | 7.01 | 249 | 9 |
| 10 年後 中立 | 30.2 | 9.39 | 284 | 14 |
取り方:売上 248.8 億円・セグメント利益 9.0 億円は決算説明資料。販売量の開示は無く、構造用合板の相場(1 立方メートル 7 万円前後)で割って 35.5 万立方メートルと推定した。
リスクと懸念
新設住宅着工の減少
建材も合板も新築の戸数に需要が縛られる。着工は 2025 年度に 74 万戸と 10 年前の 8 割に減り、人口と世帯の減りでこの先も細る。リフォームは 1 件あたりの使用量が小さく、減りを埋めきれない。
合板の相場
国産の針葉樹合板は相場で値段が決まる。2022 年のウッドショックで利益が跳ね、2024〜2025 年の下げで消えた。原木は高止まりで、相場が少し弱るだけで赤字になる。
円安と輸入合板
南洋材の合板はドルで仕入れ、円で売る。円安の仕入れ高を、需要の弱さで値段に移せていない。為替が 150 円のままなら、輸入合板の薄利は長く続く。
減損の繰り返し
2024 年と 2025 年の 11 月期に減損を出し、今期も期末の減損の可能性を予想に織り込んだ。工場への投資が稼ぎに結びつかない状態が続けば、自己資本はさらに目減りする。
資産を株主に返すかどうか
政策保有株 107 億円は時価総額を上回るが、売る額の目標は無い。創業家の影響が強く、売却の代金が自己株の取得に回る保証もない。資産の厚さが少数株主の価値にならないおそれがある。
原料・資材の高騰
接着剤、塗料、梱包材は石油からできており、中東の情勢で値段と調達が揺れる。値上げは数か月遅れて乗るので、急な高騰の年は利益が削られる。
今後の分かれ目
- 政策保有株の売却額の目標と、その代金を自己株の取得に回す方針が数字で示される
- 売る分を余った資産として価値に足し、戻り方を 1.0 に上げて見直す。
- 建材のセグメント利益率が 2 期続けて 4% を超える
- 値上げの定着とみて、中立の建材の利益率を 5% から 6% に上げる。
- 期末に大きな減損を出し、2027 年 11 月期も最終赤字の予想が出る
- やや悲観と悲観の確率を合わせて 4 割前後に上げる。
- 新設住宅着工が 2028 年度に 65 万戸を割る
- 中立の数量を建材 0.82 倍、合板 0.78 倍に下げる。
- 創業家と組んだ非公開化や、同業との再編の話が出る
- 事業の価値でなく、資産の厚さで値段が決まる局面とみて、条件を見て見直す。
見ておくもの
- 木質建材のセグメント利益率(2025 年 11 月期 2.0%)
- 国産針葉樹合板の相場と原木の値段
- 新設住宅着工戸数(持家・分譲戸建・木造貸家)
- 政策保有株の売却額と自己株の取得
- 期末の減損の有無と規模
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が k(9.25%)に届かない前提で上限 1÷k=10.8 倍の 8〜9 割に置き、悲観側は稼ぐ力が細るので売れる資産の床を今の自己資本に掛けて測った。時価総額が自己資本の 3 割に満たないことは倍率の根拠に使っていない。政策保有株は配当が利益に残るので価値に足さず、床だけに数えた。新リース会計基準は 2028 年 11 月期から形を変えるが、店舗を持たない会社で影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.76 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.75% = 9.25%。同じ領域の永大産業(9.0%)より循環を重く、借金を軽く見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.50%。