結論
広済堂ホールディングスは、印刷会社の顔をした火葬場会社だ。連結の営業利益 67 億円のうち、東京博善が営む火葬と式場で 48 億円を稼ぐ。本業の印刷は 7 億円、人材は赤字である。
筆者の結論は「やや割高、はっきり言えば 3 割ほど高い」だ。火葬場は地域独占に近く、事業の質は高い。それでも利益は年 47 億円前後で伸びにくい。値段を物価並みに上げられるかが、行政の目の前で試されているからだ。
東京博善は 23 区の火葬の約 7 割を担う。死亡者数は 2040 年ごろまで増えるので、件数には追い風がある。一方で火葬料は都議会で何度も問題になり、都は国に料金への指導権限を求めている。区民葬からも 2026 年 3 月末で離れた。
株主の面でも不透明感が残る。筆頭の関係会社である R&L ホールディングスは 21.8% を持ち、流通株式比率は 33.6% とプライムの基準に届かない。2026 年 5 月には子会社売却の報道が出たが、会社は決定した事実はないと答えた。売却が実現すれば価値が顕在化する可能性はあるが、その値段は読めない。
中立の筋書きでは、10 年たっても名目の利益はほぼ今の水準にとどまる。値上げが物価に追いつかず、印刷が縮むからだ。強気の筋書きでも、10 年後の価値は今の時価総額を 6 割上回る程度で、資本コストに見合う程度の上振れにとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の本質は「都内の火葬を握る資産」を持っているかどうかに尽きる。事業の質は高い。需要は景気に左右されず、競合は新規参入できず、資本はそれほど要らない。
問題は、持ち主として手にできる利益の大きさと、その持続性だ。火葬料金は行政が口を挟む領域で、値上げの余地は物価より小さいと見る。物価で上がらない名目の利益は、実質では年 3% ずつ目減りする。
経営の資本配分には注文がつく。現金が厚くなっても、株主へ戻す姿勢は弱い。築いた現金が事業に生きるなら歓迎だが、式場の増設のほかに使い道を示せていない。
値段の安全域を考えると、今の時価総額は強気の筋書きでもリターンが資本コストに届かない水準にある。筆者なら、強い堀を認めつつも、行政リスクと株主還元の不足を差し引いて、今の値段では買わない。買い手が現れて支配権の値段が付くなら話は別だが、その確率は計算に入れにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は葬祭だ。2026 年 3 月期の売上 362 億円のうち葬祭が 159 億円、営業利益の大半を占める。
葬祭は「公益」と「収益」の 2 つに分かれる。公益は火葬場の運営で、売上 54 億円・利益 12 億円。収益は火葬場に併設した式場の貸し出しと葬儀の施行で、売上 105 億円・利益 36 億円。収益の利益率は 3 割を超える。火葬のお客が式場も使う流れができているからだ。
東京博善は都内に 6 つの総合斎場を持つ。23 区には火葬場が 9 つあり、うち 7 つが民営で、その 6 つが東京博善だ。公営の火葬場は立川や八王子のように都民に安い、あるいは無料のところもある。民営の料金が高くなるのは、こうした構造の裏返しでもある。
もう 1 つの柱が情報事業だ。商業印刷・出版物・封入封緘などのデータ処理で、売上は 150 億円、利益は 7 億円と薄い。かつての主力だが、いまは利益の 1 割に満たない。人材は派遣・紹介で売上 50 億円、利益は赤字が続く。資産コンサルティングは不動産の売買が中心で、利益の振れが大きい(前々期に 14 億円の利益、前期は小幅赤字)。
従業員は連結で約 1,000 人。葬祭に 370 人、情報に 430 人がいる。人手のかかる事業で、人件費の物価上昇がじわりと効く。
優良さと弱いところ
優良さは「火葬」に集中している。火葬場は新しく作れない。住民の反対が強く、土地もない。都内に民営の火葬場が 8 つしか残っていない事実がそれを示す。この希少性が堀、つまり他社がまねできない強みだ。
ただし、その堀の中身は「値段を決める自由」と表裏一体だ。堀が深いほど、行政は料金に口を出したくなる。小池知事は 2025 年 9 月の都議会で、料金を含む火葬場の経営に行政が指導できるよう国に法改正を求めると述べた。筆者が最も気にするのはここだ。
経営の資本配分は合格点とは言いにくい。自己資本比率は 68.5% と厚いが、配当は利益の 4% に満たない。設備投資は 34 億円と大きく、式場の増設に使っている。式場の利益率が高いので、投資自体は理にかなう。だが、株主に戻す姿勢が乏しいまま現金をためると、ROE は 9.6% から下がっていく。
情報事業は構造的に縮む領域だが、利益率は 2 年で 2.6% から 4.4% に改善した。人材は 3 期続けて赤字で、資本を食う側にいる。ここを整理できるかが経営の見せ場になる。
株主構成も質の一部だ。R&L ホールディングスは 2019 年ごろから経営権を握った羅怡文氏の系統とされ、約 22% を持つ。流通株式が少なく、市場の目は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
火葬は景気に左右されない需要だ。死亡者数が増え続ける局面にあり、都の人口推計では 2040 年ごろまで年間の死亡者は増えるとされる。件数だけを見れば、10 年で 1 割程度の追い風がある。
ただ、足元の件数は前の期から大きく減った。会社は都内の死亡者の減少と、23 区の外・他県からの流入の減少を理由に挙げる。流入が減るのは、近県に火葬場が増えたこと、そして料金が高いことが響いていると筆者は見る。件数は人口だけで決まらない。
値段の面では、民営火葬は公営よりも高い。東京博善は 2021 年から段階的に値上げし、大人 1 人 9 万円まで上げたのち、2026 年に 8 万 7 千円へ一部下げた。公営の瑞江葬儀所の都民料金は 6 万円を切る。この差が政治の標的になっている。
区民葬からも 2026 年 3 月末で離れた。23 区は代わりの助成を 4 月から始めている。都が火葬場の買収を探っているとの報道もある。買収は費用が重く、都は二の足を踏んできたが、2026 年 5 月には東京博善の売却報道が出た。
葬儀の側では、家族葬・直葬が増え、1 件あたりの単価は下がる方向にある。式場の利益率が 3 割を超える今のうまみが、この先も続くとは限らない。
印刷は国内市場が 1991 年の 8.9 兆円から 6.3 兆円まで縮んだ。この会社の印刷は、市場の中の小さな存在で、縮む市場の中で利益率を保つ役割にとどまる。
資本政策と M&A
資本政策は読みにくい。配当は中間・期末の年 2 回で、年間の総額は 2 億円弱だ。利益の 4% 程度しか戻さず、自社株買いの実績もない。
2026 年 3 月期は自己資本比率が 60.8% から 68.5% に上がった。純現金に転じ、借入に頼る必要は薄れている。新しい中期経営計画と 5 年超の長期ビジョンを策定中で、これまでのローリング方式は「現状の延長線上にとどまった」と会社自身が認めた。
流通株式比率が 33.6% でプライムの維持基準に届かないため、株式の分布を改善する施策が必要になる。自社株買いや大株主による売出し、そして子会社の売却など、いずれも株主価値に影響しうる。
M&A は 2 つの方向がある。買う側では、都内に残る民営火葬場や近県の火葬場が候補になりうる。売られる側では、東京博善そのものが対象になる。2026 年 5 月に出た売却報道に会社は「検討はしているが決定した事実はない」と答えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
火葬は景気に関係なく需要が積み上がる事業だ。都の推計では死亡者数は 2040 年ごろまで増え、件数は 10 年で 1 割以上伸びる。新しい火葬場は作れないので、東京博善の 7 割シェアは崩れない。式場を増設して利益率 3 割超の収益事業を厚くすれば、利益の伸びは件数を上回る。
料金は行政の批判を受けて 9 万円から 8 万 7 千円に下げたが、これは世論の圧力を先に抜いて、制度的な規制を遠ざける動きでもある。区民葬から離れたことで、低単価の取り扱いも減る。法改正による料金指導も、具体的な上限が決まるのは遠い先だ。
情報事業は縮んでも利益率が 4.4% まで上がった。人材の赤字が止まれば、全社の利益に素直に乗る。さらに、新中計で株主還元を増やせば、現金の厚みが評価に変わる。流通株式比率の問題で売出しや自社株買いが動けば、需給も改善する。東京博善の売却があれば、その値段は火葬場の希少性を映して大きくなる。
慎重な見方
火葬の堀は、そのまま政治の標的でもある。火葬料金は都議会で何度も紛糾し、知事は国に法改正を求めた。区民葬から離れたことへの反発も強い。民営の火葬場が 23 区の 7 割を占める構造に、行政が手を入れないと考える方が不自然だ。料金に上限を課されれば、固定費が重い火葬場の利益は急に薄くなる。
件数は増えるとは限らない。足元は前の期から大きく減った。他県の火葬場の整備や、料金への不満から、23 区の外に流れる動きも出ている。葬儀は家族葬・直葬が主流になり、式場の単価は下がる。式場の利益率が 3 割を超えている今の姿は、峠に近い。
印刷は縮み、人材は赤字で、全社の足を引く。調整額は 3 期で 2 億円から 14 億円へ膨らんでおり、中身を確かめられない利益が全社の営業利益の 2 割を占める。株主還元は小さく、配当は利益の 4% ほどだ。現金がたまっても戻らないなら、本質価値の割引は大きい。
強気の見方でも、都が買収する場合の値段は簿価を下回りうる。公営化の道は、株主にとって最良の出口とは限らない。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だと判断した。事業の質が高いことは疑わないが、10 年の間に行政が料金に手を入れる確率が高く、強気の筋書きでも資本コストを超える上振れは限られる。確率は中立に 36% を置き、やや悲観と悲観を合わせて 32%、楽観とやや楽観を合わせて 32% とした。ほぼ五分五分だが、上の筋書きも利益が頭打ちで、下の筋書きは利益が半分以下に落ちるため、価値の加重平均は今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 548 円811 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 185 円274 億円)。 今の値に割り戻すと 411 円607 億円、今との差 −20.5%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,031 円1,525 億円 | 218 円322 億円 | +141.6% | +9.2% | 125 円185 億円 |
| やや楽観 | 22% | 773 円1,143 億円 | 206 円304 億円 | +89.2% | +6.6% | 215 円318 億円 |
| 中立 | 36% | 544 円805 億円 | 193 円286 億円 | +42.6% | +3.6% | 265 円393 億円 |
| やや悲観 | 20% | 276 円409 億円 | 161 円238 億円 | −15.4% | −1.7% | 87 円129 億円 |
| 悲観 | 12% | 200 円296 億円 | 137 円202 億円 | −34.9% | −4.2% | 40 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 548 円811 億円 | 185 円274 億円 | +41.9% | +3.6% | 733 円1,085 億円 |
今の株価時価総額 517 円765 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 都内の火葬を厚くし、式場を増設して稼ぎを伸ばす 利益 81 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 1,031 円1,525 億円
東京博善は 23 区の火葬の 7 割を保ち、民営火葬場の買い増しや近県への展開で件数を伸ばす。式場の増設も進み、収益事業の利益率は 3 割台を保つ。
料金は物価並みに上がることを世論が許す。区民葬の離脱も大きな問題にならず、法改正による指導は形式的なものにとどまる。
情報は縮小を 1 割に抑え、人材の赤字は解消に向かう。新しい中期経営計画で還元も厚くなり、ROE は 10% 近くまで上がる。資本コストを超える稼ぎを長く続ける会社として、市場に評価される筋書きだ。
東京博善の株式に買い手が付くなら、その値段も火葬場の希少性を映して高くなる。
- 火葬(葬祭公益):数量 8.5(火葬件数(万件)・推定)× 価格 11(1 件あたり火葬収入(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 23 億円。件数 1.3 倍・料金は物価並み
- 式場・葬儀(葬祭収益):数量 2.0(式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定)× 価格 100(1 件あたり収入(万円))→ 売上 197 億円・営業利益 69 億円。式場増設で件数 1.4 倍
- 情報:数量 135(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1))→ 売上 181 億円・営業利益 11 億円。印刷市場の縮小を 1 割に抑える
- 人材・資産コンサルティング:数量 48.0(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1))→ 売上 64 億円・営業利益 2 億円。人材の赤字を解消
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.22 倍、時価総額 1,483 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:火葬場の希少性と式場増設が料金への介入を受けずに進む筋書き。起きれば強いが、行政が動いている現状から確率は低めに置いた。
やや楽観 22% 件数が伸び、料金は物価並みで進む 利益 63 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 773 円1,143 億円
死亡者数の増加が件数を押し上げ、火葬は 10 年で 1 割強伸びる。料金は物価並みに上げられるが、世論の反発は完全には消えない。
式場は増設の効果が出て、件数が 1 割増える。単価は家族葬の増加で物価にやや届かず、利益率は 3 割台前半で止まる。
印刷は縮むが利益率は改善を保ち、人材はほぼ収支がとれる。還元は少しずつ増える。全体として、利益は名目で 3 割ほど伸びる姿だ。
行政の目は残るが、料金を抑える法改正は具体的な上限を決めないまま、時間だけが過ぎる。会社は株主還元を少しずつ厚くし、流通株式比率の問題も自社株買いなどで穏やかに片付ける。
- 火葬(葬祭公益):数量 7.3(火葬件数(万件)・推定)× 価格 11(1 件あたり火葬収入(万円))→ 売上 82 億円・営業利益 18 億円。件数 1.12 倍・料金は物価並み
- 式場・葬儀(葬祭収益):数量 1.5(式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定)× 価格 99(1 件あたり収入(万円))→ 売上 152 億円・営業利益 52 億円。件数 1.1 倍
- 情報:数量 127(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.32(値段の指数(今を 1))→ 売上 168 億円・営業利益 9 億円。縮小 15%
- 人材・資産コンサルティング:数量 48.0(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。人材は小幅黒字
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.22 倍、時価総額 1,088 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡者数の増加が件数を押し上げ、料金も物価並みに上げられる筋書き。ただし行政が動いているため、確率は中立の次に置いた。
中立 36% 件数は増えるが、料金は物価に追いつかず利益は横ばい 利益 48 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 544 円805 億円
火葬の件数は死亡者数の増加で 1 割弱伸びるが、近県への流出で伸びは鈍る。料金は世論と行政の目を気にして物価より遅れ、10 年で 2 割台の上昇にとどまる。
式場は件数が横ばいで、単価は家族葬の増加で物価に届かない。利益率は 3 割強に落ち着く。
印刷は市場の縮小に合わせて 2 割強減るが、利益率は改善が定着する。人材は収支とんとんで、調整額は今の半分ほどに縮む。
結果として、名目の利益は今とほぼ同じで、実質では目減りする。現金は配当と設備投資に回り、ROE は資本コストをわずかに上回る程度だ。
- 火葬(葬祭公益):数量 7.0(火葬件数(万件)・推定)× 価格 10(1 件あたり火葬収入(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 13 億円。件数 1.08 倍・料金は物価より遅れる
- 式場・葬儀(葬祭収益):数量 1.4(式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定)× 価格 96(1 件あたり収入(万円))→ 売上 134 億円・営業利益 42 億円。件数横ばい・単価は物価より遅れる
- 情報:数量 117(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1))→ 売上 152 億円・営業利益 7 億円。縮小 22%、利益率は改善が定着
- 人材・資産コンサルティング:数量 48.0(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。人材は収支とんとん
倍率:事業の ROE 7.0% は k 7.0% と同じで、強い堀の RONIC も k に近い。g は k−3.5% の 3.5% で、正当化 PER は 1÷k=15.58 倍。中立はその上限に置いた。名目の利益が横ばいで行政リスクが残る点は、筋書きと確率で見ており、倍率ではさらに引かない。
確率:死亡者数の増加と料金の抑制が相殺する中立の姿を最もありうるとみた。強気と慎重のうち、行政の動きがある慎重な側の言い分がやや強い。
やや悲観 20% 行政の指導で料金が抑えられ、火葬の利益が薄くなる 利益 32 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 276 円409 億円
都議会と国の動きを受け、火葬料金は協定外でも抑えられ、10 年でほとんど上がらない。火葬は固定費が重く、利益率は 1 割まで下がる。
件数も近県への流出で伸びず、わずかに減る。式場は家族葬・直葬で件数が減り、単価も物価に届かない。利益率は 2 割台後半に下がる。
印刷は 3 割近く縮み、人材は赤字が残る。調整額も縮み、全社の利益は今の 3 分の 2 になる。ROE は資本コストを大きく下回る。
会社は設備投資を絞って現金を守るが、新しい式場の増設は止まり、成長の手段を失う。株主還元は配当にとどまり、市場の評価は低いまま続く。
- 火葬(葬祭公益):数量 6.3(火葬件数(万件)・推定)× 価格 8.77(1 件あたり火葬収入(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 6 億円。件数 0.97 倍・料金は行政の指導で抑制
- 式場・葬儀(葬祭収益):数量 1.3(式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定)× 価格 91(1 件あたり収入(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 33 億円。家族葬・直葬で件数 0.95 倍
- 情報:数量 108(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1))→ 売上 135 億円・営業利益 5 億円。縮小 28%
- 人材・資産コンサルティング:数量 45.4(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1))→ 売上 59 億円・営業利益 0 億円。人材の赤字が続く
倍率:事業の ROE 4.9% は k 7.0% 以下なので PER の上限は 1÷k=14.3 倍。利益が谷に向かう筋書きで稼ぎの質が低いため、上限の 75% の 10.7 倍。
確率:法改正や都の指導で料金の上昇が物価を大きく下回る筋書き。都が動いている現状から、起きる確率は低くないとみた。
悲観 12% 料金を公営並みに抑えられ、火葬の稼ぎがほぼ消える 利益 15 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 200 円296 億円
国の法改正で火葬料金に事実上の上限がかかり、公営並みの水準に近づく。火葬は件数も 1 割以上減り、利益はほぼなくなる。
式場は家族葬・直葬への移行と近県の斎場との競争で、件数と単価がともに落ちる。利益率は 2 割を切る。
印刷は市場とともに 3 分の 1 縮み、人材・コンサルは赤字が残る。調整額の利益も消える。
東京都が火葬場を買い取る場合も、価格は帳簿を下回る。もはや優良な会社ではなく、有形固定資産の価値で評価される姿だ。
株主には、料金の自由と希少性という 2 つの堀を同時に失う筋書きで、10 年後の価値は今の時価総額の半分に届かない。
- 火葬(葬祭公益):数量 5.5(火葬件数(万件)・推定)× 価格 6.68(1 件あたり火葬収入(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。件数 0.85 倍・料金は公営並みへ
- 式場・葬儀(葬祭収益):数量 1.2(式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定)× 価格 86(1 件あたり収入(万円))→ 売上 103 億円・営業利益 19 億円。件数 0.85 倍・単価は物価を大きく下回る
- 情報:数量 97.3(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1))→ 売上 117 億円・営業利益 2 億円。縮小 35%・利益率 2%
- 人材・資産コンサルティング:数量 42.7(当社の扱い量(億円・今の値段の実質))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1))→ 売上 56 億円・営業利益 −1 億円。人材・コンサルの赤字が残る
倍率:構造的に負けた筋書き。事業の純利益 約 15 億円は k 7.0% で割ると 210 億円ほどで、帳簿の自己資本より低い。有形固定資産 372 億円と純現金を税引きの売れる資産として見て、今の自己資本 493 億円の 0.6 倍とした。
確率:国の法改正で料金に上限がかかり、近県の火葬場や公営火葬場にも客を取られる構造的な負け。複数の要因が重なる必要があるため確率は低めだが、現に行政が動いており 1 割を超える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
火葬(葬祭公益)
東京博善が運営する都内 6 つの総合斎場の火葬。
| 数量火葬件数(万件)・推定 | 価格1 件あたり火葬収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.5 | 8.35 | 54 | 12 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 10 | 73 | 13 |
取り方:売上 54.3 億円を、料金 8〜9 万円と区民葬などの割引を考えた実効 8.35 万円で割ると約 6.5 万件。23 区の死亡者の約 7 割という開示と矛盾しない規模で、件数は推定。
式場・葬儀(葬祭収益)
火葬場に併設する式場の貸し出し、葬儀の施行、飲食など。
| 数量式場の利用・葬儀施行件数(万件)・推定 | 価格1 件あたり収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 75 | 105 | 36 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 96 | 134 | 42 |
取り方:売上 104.9 億円を、式場・葬儀・飲食の 1 件あたり約 75 万円と推定して割った約 1.4 万件。件数は推定。
情報
商業印刷、出版物、封入封緘などのデータ処理・BPO。
| 数量当社の扱い量(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今を 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 1.00 | 150 | 7 |
| 10 年後 中立 | 117 | 1.30 | 152 | 7 |
取り方:国内印刷市場 6.3 兆円(業種ノート)に対して当社売上 150 億円はシェア約 0.24%。市場の縮小を数量、物価と競争を価格の指数で表す。
人材・資産コンサルティング
人材の派遣・紹介と、不動産の売買・コンサルティング。
| 数量当社の扱い量(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今を 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.4 | 1.00 | 53 | −1 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 1.34 | 64 | 1 |
取り方:人材 50.5 億円と資産コンサルティング 2.9 億円の合計。利益は前期、人材が 0.7 億円の赤字、コンサルが 0.6 億円の赤字。
リスクと懸念
行政による火葬料金への介入
都は国に料金への指導権限を求める方針を示した。法改正が実現すれば、料金は公営並みへ引き下げられうる。火葬は固定費が重く、料金が 1 割下がると利益は 3 割近く減る。筋書きの利益率と確率で扱う最大のリスクだ。
火葬件数の減少と流出
足元の件数は前の期から大きく減った。会社は都内の死亡者の減少と、23 区外・他県からの流入の減少を挙げる。近県の火葬場の整備や料金への不満で、流れが戻らない可能性がある。
都による買収・公営化の値段
都が火葬場を買う場合、買収額は都の財政の制約を受ける。報道では水面下の接触にとどまる。株主にとって、希少性に見合う値段が付く保証はない。
式場の単価と利益率の低下
家族葬・直葬の増加で葬儀の単価は下がっている。式場の営業利益率は 3 割を超えるが、競争や人件費の上昇で下がりうる。式場は利益の 3 分の 2 を占める。
中身の見えにくい調整額
セグメントの合計と連結営業利益の差(調整額)は、3 期で 2 億円から 14 億円へ増えた。全社の営業利益の 2 割を占める。内訳は確かめられず、中立では半分が残ると見て利益を厳しめに置いている。
株主構成と還元の乏しさ
関係会社の R&L ホールディングスが約 22% を持つ。流通株式比率は 33.6% でプライムの維持基準に届かない。配当は利益の 4% ほどで、現金がたまっても戻らないおそれがある。
印刷・人材の縮小と赤字
情報は市場の縮小が続き、人材は 3 期連続の赤字だ。全社の利益に占める割合は小さいが、資本と経営の手間を食う。整理が遅れれば、全社の資本効率を下げる。
今後の分かれ目
- 国が火葬料金への行政指導を可能にする法改正を決めたら
- やや悲観・悲観側へ確率を寄せる。料金は公営並みに近づき、火葬の利益率は大きく下がる。
- 東京博善の売却が具体化し、買い手と値段が公表されたら
- その値段が筋書きの上限を示す。値段が今の時価総額を大きく上回るなら、楽観側の確率を引き上げる。
- 新しい中期経営計画で総還元性向が 5 割を超える水準になったら
- 現金の厚みが株主に戻る形になり、ROE が資本コストを上回りやすくなる。中立の倍率の位置を上げてよい。
- 火葬件数が前の期から回復に転じたら
- 件数が戻らないという懸念が薄れる。火葬の数量を中立の水準から上方修正する。
- 式場の営業利益率が 3 割を割り込んだら
- 式場の優位が崩れ始めたと見て、中立の利益を下方修正する。
- 調整額の内訳が開示され、一時的な要因だと分かったら
- 全社の営業利益を調整額の分だけ切り下げる。
見ておくもの
- 火葬件数と火葬 1 件あたり収入(決算説明資料)
- 式場の営業利益率(葬祭収益セグメント)
- 都議会・国の火葬料金への対応(法改正の有無)
- 東京博善の売却・公営化に関する開示
- 新しい中期経営計画の還元方針と流通株式比率の改善策
- 調整額の内訳
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 778 億円や PER 16 倍を先に見ず、火葬・式場・情報・人材の 4 つを数量と価格に分けて 10 年後の利益を積み、その利益の質から倍率を決めた。資本コストは基本 7.5% に品質 −0.5% で 7.0% とした。強い堀の会社として倍率の上限は ROE と k から出し、やや楽観・中立は上限の 9〜10 割に置いた(行政リスクは筋書きと確率で見る)。結果は割高だが、これは今の値段に合わせたものではない。強気の筋書きでも今の値段を大きく上回らないのは、火葬の価格が物価並みに上がり続けても利益が資本コストに見合う程度にしか伸びないためだ。新リース会計の影響は小さく、リース債務はほぼない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.7→18.22 倍・やや楽観 PER 15→17.22 倍・中立 PER 14.3→15.58 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に品質の −0.5% を足して 7.0%。