結論
イオン北海道は、北海道で総合スーパー、食品スーパー、ディスカウント店を183店運営するイオンの地域子会社だ。道内の食品売上ではコープさっぽろに次ぐ2位で、親会社のイオンが約65%を持つ。
筆者の結論は割高である。稼ぐ力が、今の値段に見合っていない。売上は中計どおり伸びても、営業利益率は2%台にとどまる。建築費、光熱費、人件費が物価以上に重く、2025年度の営業利益は前の中計の目標157億円に対して83億円だった。
成長の柱はザ・ビッグなどのディスカウント店だ。道内は人口が減るので、店ごとの客数は細る。それでも出店と値上げで、売上は10年で3割ほど伸ばせる。ただ、その利益は安売りの競争に削られやすい。トライアルの出店、コープさっぽろの宅配、アークス系のラルズが相手だ。
10年後の中立の純利益は65億円ほどで、自己資本利益率は7%に届かない。資本コストを下回る稼ぎに、高い倍率は付けられない。配当と自社株買いで戻る分を足しても、中立の価値は今の時価総額を大きく下回る。
上振れがあるとすれば親会社の再編だ。イオンはディライト、ツルハ、サンデーと子会社の取り込みを進めている。完全子会社化なら買収の上乗せが付くかもしれないが、時期も価格も買い手が決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、持ち続けたくなる事業ではない。
良い事業の条件は、他社がまねできない強みがあり、投じた資本が資本コストを上回って稼ぐことだ。この会社は前者が弱く、後者も満たしていない。自己資本利益率は直近で5%、必要な7%台に届かない。稼いだ利益は、建築費の高い新店と改装に吸い込まれる。
経営者が資本をどう配るかも見る。新しい中計は5年で800億円超を投じるが、前の計画は利益目標の半分しか達成できなかった。実績で示せていない点は重い。
安全域の見方はこうだ。10年先の中立の利益は今の2倍弱になるが、それでも資本コストを下回る稼ぎにとどまる。そこに高い倍率は付けられない。持っている土地と建物には値打ちがあるものの、売って現金にしても、借入と預り保証金を返したあとに残る額は小さい。
だから、今の値段に安全域は見えない。見方が変わる鍵は利益率だ。営業利益率が3%に乗れば景色が変わるが、それは楽観の筋書きでしか起きない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は食品だ。2026年2月期の売上3,800億円のうち、食品は約8割を占める。残りは衣料、住居関連、テナントからの収入である。
業態は4つある。総合スーパーのイオンとイオンスーパーセンターが約45店、食品スーパーのマックスバリュとフードセンターが約65店、ディスカウント店のザ・ビッグが26店、都市型の小型店が約45店だ。道内の都市から地方まで、店は広く散らばっている。
総合スーパーは食品に衣料と日用品を重ねて売る。1店は大きく、利益率は低い。食品スーパーは日々の買い物を受け止め、収益は安定している。ザ・ビッグは品ぞろえを絞って安く売る業態で、道内では売上の伸びが最も速い。会社はここを中計の成長の柱に据え、札幌圏、道北、帯広、釧路に集中して出店する。
2020年にマックスバリュ北海道を吸収合併し、2024年には西友の札幌9店を引き継いだ。買収で店を増やしてきた会社だが、合併の前は営業利益率が4%台だったのに、合併のあとは2〜3%台に下がった。規模が増えても、利益率は戻っていない。
商品面ではイオンのプライベートブランド、トップバリュを使えるのが強みだ。仕入れと物流のしくみもイオングループと共有している。道内では石狩のプロセスセンターで生鮮を加工する。
収益の柱は食品の粗利だが、近年は人件費と光熱費の上昇が利益を押し下げている。売上は2025年度に過去最高を更新したが、営業利益は83億円と、売上の伸びほどには増えていない。新しい中計は2030年度に売上4,400億円、営業利益110億円以上を掲げる。
優良さと弱いところ
優良さは二つの点で測る。堀、つまり他社がまねできない強みの深さと、投じた資本の稼ぎだ。この会社はどちらも十分ではない。
強みは仕入れとブランドにある。トップバリュとイオングループの共同仕入れで、単独の地方スーパーより調達で有利に立つ。店は183と多く、道内2位の規模で、物流や販促にも規模の効果が効く。
弱みは堀が浅いことだ。食品スーパーの客は安さと近さで動き、店を替える費用がほとんどない。ザ・ビッグは安さで勝つ業態だが、安さは競合が追いつきやすい。トライアルは低価格の仕組みで道内に出店を進め、売上は推定で850億円ほどになった。コープさっぽろは宅配という別の柱を持つ。
資本効率は低い。自己資本利益率は直近で5%、この10年の中央値は8%台で、資本コストを安定して上回れていない。利益率が薄いうえ、売上の伸びのわりに設備投資が重い。
経営は、前の中計で営業利益157億円を掲げながら83億円にとどまった。会社は建築費、光熱費、人件費の上昇を理由に挙げる。計画の甘さは割り引いて見るべきだ。親会社の支配は強く、少数株主のために資本を戻す動きは目立たない。
光る点も一つある。ザ・ビッグの店は売上の伸びが速く、新店の立ち上がりが良いという。ここで利益率が上がれば、会社全体の姿が変わる。ただ、まだ実績として確かめられる段階にない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北海道の食品小売は、地元の3陣営が分け合う寡占の市場だ。
コープさっぽろは2025年度の食品売上が約1,900億円で首位で、宅配のトドックが売上の3分の1を占める。イオン北海道は約1,750億円で2位、伸び率は最も高い。アークス傘下のラルズは約1,600億円で3位だ。ここにトライアルが約850億円(推定)で食い込んでいる。
需要は減っていく。北海道の人口は毎年0.8%前後減り、食品の量は10年で1割ほど細ると筆者は見る。値上げが売上を支える一方で、買い上げ点数は減る。売上は増えても客数は減る構図が続く。
費用は上がる。最低賃金は毎年上がり、人件費は年3〜5%増える。光熱費、建築費、物流費も同じだ。セルフレジやAIによる発注といった省人化で吸収できるかが、勝ち負けを分ける。
再編は進む。アークスは統合を重ね、イオングループはツルハなどの取り込みを進めて、北海道での存在感を強めている。
10年では、安さを維持できる店と、独自の商品を持つ店が勝つ。中間に埋もれる総合スーパーの衣料部門は、ECと専門店に押されて縮む。
もう一つ見ておきたいのは出店の費用だ。建築費の高騰で新店の採算は悪化しており、同じ店を建てても10年前より投資額が重い。出店競争が続く市場で、先に店を持った側が有利になる反面、遅れて出る側は割高な投資を強いられる。イオン北海道は店数が多いぶん、既存店の改装で稼ぐ力を保てるかが問われる。
資本政策と M&A
配当は安定を重視し、配当性向は直近で約6割と高い。純利益が減る年も配当を維持するので、自己資本の積み増しは遅い。自社株買いの実績は確認できていない。
投資の中心は新店と改装だ。新しい中計では5年で824億円を使う。内訳は店舗701億円、インフラ123億円。年間の純利益の4倍ほどにあたり、純有利子負債は今393億円ある。借入で出店を進める形になる。
買収は、2020年のマックスバリュ北海道の吸収合併と、2024年の西友の札幌9店の引き継ぎがある。どちらも売上は積み上げたが、利益率は上がっていない。
注意すべきは親会社だ。イオンは約65%を持つ筆頭株主で、ディライトの完全子会社化、ツルハの連結化、サンデーの完全子会社化と、グループ内の整理を続けている。イオン北海道が次の対象になる可能性は排除できない。ただし価格は買い手の都合で決まり、少数株主に有利になるとは限らない。
株主優待は年約1.7億円(会社の費用ベース。買物割引券2,500円×単元株主約9.6万人(額面2.4億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+17億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ザ・ビッグを軸に、道内2位の会社が利益率を戻す。
ザ・ビッグは26店で、道内の安売り競争で最も売上が伸びる業態だ。千歳に初出店し、札幌圏、道北、帯広、釧路で店を密にすれば、物流と販促の効率が上がる。中計は5年で営業利益を110億円以上へ引き上げる。
西友から引き継いだ札幌9店と、イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターは好調で、売上は過去最高を更新した。仕入れでは、トップバリュとイオングループの共同購買の効果が続く。
費用にも手が打てる。セルフレジ、レジゴー、AI発注といった省人化が進めば、人件費の上昇を一部吸収できる。合併の前には営業利益率が4%台だった時期があり、構造を整えれば3%は届く水準だ。
加えて、イオンの再編が追い風になりうる。完全子会社化となれば、少数株主は買収の上乗せを受け取る。
人件費の上昇は、競合にとっても同じ重荷だ。体力のある親会社を持つイオン北海道は、投資を続けながら価格で競う余力が、地場の小さな競合より大きい。
慎重な見方
安売りの競争が、利益を食い続ける。
足元の中間決算は、営業利益が38%減った。売上は過去最高なのに、安さを保つために粗利率が下がった。販管費も2%増えた。この形が10年続きかねない。
競合は強い。トライアルは低価格で道内に出店を重ね、コープさっぽろは宅配で売上の3分の1を固定客から稼ぐ。ザ・ビッグ同士の出店競争は、新店の採算を下げる。
総合スーパーの衣料は、中間決算で約4%減った。ECと専門店に流れる構図は戻らない。建築費の高騰で出店計画は下方修正が続き、前の中計は営業利益で目標の半分しか達成できなかった。
そのうえ稼ぎは資本コストを下回る。自己資本利益率は5%で、中計の目標の6%でも届かない。
親会社のTOBに期待する見方もあるが、価格を決めるのは買い手だ。
イオングループの資本は、道内の事業に優先して回るとは限らない。親会社の都合で投資の順番が変われば、出店計画の遅れがさらに利益を押し下げる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢だ。ザ・ビッグの伸びと省人化は本物だが、道内は人口が減り、安さを競う相手が増える。利益率の改善は、中計が描く2.5%前後にとどまると読んだ。確率は中立に最も重みを置き、やや悲観にも厚めに残した。上振れの鍵はイオンの再編だが、時期も価格も買い手が決めるので、楽観の確率を大きく上げる材料にはしなかった。結論は、10年の中立が還元を足しても今の値段に届かない、というものだ。 総合スーパーの縮小と競合の安売りを織り込めば、慎重な見方のほうが現実に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 547 円761 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 196 円273 億円)。 今の値に割り戻すと 396 円551 億円、今との差 −51.5%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 7.7%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,007 円1,401 億円 | 271 円377 億円 | +56.6% | +4.6% | 102 円142 億円 |
| やや楽観 | 22% | 787 円1,096 億円 | 242 円337 億円 | +26.2% | +2.4% | 226 円315 億円 |
| 中立 | 36% | 607 円844 億円 | 213 円297 億円 | +0.5% | +0.1% | 295 円411 億円 |
| やや悲観 | 23% | 275 円383 億円 | 153 円213 億円 | −47.5% | −6.2% | 98 円137 億円 |
| 悲観 | 11% | 107 円149 億円 | 85 円118 億円 | −76.5% | −13.5% | 21 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 547 円761 億円 | 196 円273 億円 | −8.9% | −0.9% | 744 円1,035 億円 |
今の株価時価総額 816 円1,135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.7% を下回るほど割高。
楽観 8% ザ・ビッグが道内の安売り競争で勝つ 利益 100 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,007 円1,401 億円
ザ・ビッグが道内の安売り競争で勝ち、10年で48店まで増える。札幌圏、道北、道東で店を密にした効果で物流と販促の効率が上がり、ディスカウント部門の営業利益率は5%に届く。食品スーパーは商品開発と省人化で3%台を保ち、総合スーパーは不採算店を畳んで強い食と専門に絞り、2%台に戻る。営業利益は170億円台、純利益は100億円に迫る。人口が減る道内で、売上を3割以上伸ばしながら費用も抑えた、うまくいった10年だ。
配当性向は5割台を保ち、配当と自社株買いで10年に約360億円を株主へ戻す。それでも自己資本は1,000億円を超え、自己資本利益率は10%近くまで上がる。イオンが再編に動けば完全子会社化で買収の上乗せが付く可能性もあるが、この数字には入れていない。
- 総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター):数量 42.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 60(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 2,508 億円・営業利益 63 億円。営業利益率2.5%
- 食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店):数量 104(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 14(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,507 億円・営業利益 60 億円。営業利益率4.0%
- ディスカウント(ザ・ビッグ):数量 46.6(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 28(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,316 億円・営業利益 66 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.01 倍、時価総額 1,401 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ザ・ビッグの出店の成功、省人化の定着、粗利を削らずに客数を守ることが同時にそろう必要がある。起これば強いが、道内にはトライアルとコープさっぽろがいて、重なる確度は高くない。
やや楽観 22% ザ・ビッグの出店が計画どおり進み利益率が緩やかに改善 利益 82 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 787 円1,096 億円
ザ・ビッグの出店が計画どおり進み、43店に達する。西友から引き継いだ札幌の店の改装も効き、総合スーパーの衣料の落ち込みは止まる。営業利益率は2.8%まで上がり、中計の110億円は後半に届く。食品スーパーでは新しい小型の形が当たり、省人化投資で人件費の伸びを物価より低く抑える。純利益は80億円を超える。
ただし完全な成功ではない。道内の人口減は止まらず、店ごとの客数は1割ほど減る。値上げが通る限り売上は伸びるが、利益率の改善は緩やかだ。配当性向は6割弱のままで、自己資本は1,000億円に近づく。親会社の体制は変わらず、資本政策にも大きな動きはない。堅実に成果を積み上げ、中計の目標を遅れて達成する、手堅い10年である。
- 総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター):数量 41.5(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 60(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 2,478 億円・営業利益 52 億円。営業利益率2.1%
- 食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店):数量 100(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 14(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,449 億円・営業利益 52 億円。営業利益率3.6%
- ディスカウント(ザ・ビッグ):数量 42.2(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 28(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,192 億円・営業利益 56 億円。営業利益率4.7%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.36 倍、時価総額 1,096 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計どおりの出店と改装が進み、前の計画の未達を繰り返さない筋書き。会社の目標(5年で営業利益110億円以上)を10年かけて超える程度で、確度は中程度。
中立 36% 中立:道内2位の座は守るが利益率は2%台にとどまる 利益 65 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 607 円844 億円
ザ・ビッグは42店まで増え、売上は10年で3割強伸びる。ただし道内の人口は減り、店ごとの客数は1割弱細る。伸びの大半は物価の分だ。営業利益率は2.5%で、中計の目標と同じ水準に落ち着く。総合スーパーは1.8%と低く、食品スーパーとディスカウントが利益を支える。人件費と光熱費の上昇は、省人化と値上げでおおむね吸収できる。
借入の利払いは借り換えで増え、利益を10億円ほど削る。純利益は65億円で、配当性向は6割弱を保つ。出店を借入で賄うので自己資本の積み上がりは遅く、10年後は940億円ほどにとどまる。イオンが筆頭株主の体制は変わらない。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.7億円×10年)を足している。
- 総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター):数量 41.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 60(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 2,448 億円・営業利益 44 億円。営業利益率1.8%
- 食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店):数量 98.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 14(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,420 億円・営業利益 47 億円。営業利益率3.3%
- ディスカウント(ザ・ビッグ):数量 40.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 28(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,130 億円・営業利益 49 億円。営業利益率4.3%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.70% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.99 倍、時価総額 844 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価と出店で中計に近い伸びになるが、利益率は前の中計の未達が示すとおり戻りにくい。人件費、光熱費、競合の安売りが同時に効く現実的な中心の筋書き。
やや悲観 23% 安売りの競争が激しくなり値引きで客を守る 利益 35 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 275 円383 億円
安売りの競争が激しくなり、値段を下げて客を守る局面が続く。トライアルの出店とコープさっぽろの宅配に押され、同じ価格水準を保てなくなる。ザ・ビッグは38店まで増えるが、新店ほど売上が立たず、利益率は3%台前半に下がる。総合スーパーは衣料の縮小と建築費の高騰で赤字の店が増え、閉店と減損が毎年のように出る。
営業利益率は1.7%で、利益は80億円を割る。借入の利払いが増え、純利益は35億円にとどまる。配当は維持するが、投資に回す余力は細る。親会社のイオンはグループの再編を優先し、少数株主のための資本政策は動かない。
- 総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター):数量 38.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 57(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 2,168 億円・営業利益 22 億円。営業利益率1.0%
- 食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店):数量 92.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 14(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,273 億円・営業利益 33 億円。営業利益率2.6%
- ディスカウント(ザ・ビッグ):数量 38.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 27(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,025 億円・営業利益 35 億円。営業利益率3.4%
倍率:ROE 4.3%(純利益 35 億円 ÷ 自己資本 813 億円)は資本コスト 7.7% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.7 倍。稼ぎが資本コストに届かず、値引きで利益が不安定になり、減損も毎年のように出る。構造的に弱い利益なので、上限の 6.9 割の 9.5 倍に置いた。借金が重いので EV でも見ると、時価総額 332 億円 + 純有利子負債 393 億円(今の値)で EV ÷ 営業利益 9.3 倍(営業利益の利回り 10.7%)で、20 倍の目安の内。
確率:トライアルの出店とコープさっぽろの宅配に押され、粗利を削って売上を守る筋書き。直近の中間決算(営業利益38%減)がすでにその形で、確度は高い。
悲観 11% 価格競争に負け、店の土地と建物が価値の中心になる 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 107 円149 億円
価格競争に負ける。3陣営にトライアルが加わった安売りは、粗利率を恒常的に押し下げる。ザ・ビッグの新店は採算に乗らず出店は止まる。総合スーパーの衣料と住居関連は縮み、閉店と減損が続く。営業利益率は0.6%で、純利益は数億円にとどまり、配当は半分以下に減る。
それでも店の土地と建物には値打ちが残る。売れる資産を税引き後で積み上げ、借入と預り保証金を返すと、残る額は今の自己資本の2割ほどだ。事業としては続くが、株主の取り分は大きく削られる。親会社が子会社として抱え続けるか、売却や再編に動くかは、買い手の都合で決まる。
- 総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター):数量 32.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 51(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 1,640 億円・営業利益 −8 億円。営業利益率-0.5%
- 食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店):数量 80.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 12(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 995 億円・営業利益 18 億円。営業利益率1.8%
- ディスカウント(ザ・ビッグ):数量 32.0(店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数)× 価格 24(1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数))→ 売上 776 億円・営業利益 16 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE は 0.7% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 3 億円 ÷ k 7.7%)は 41 億円と小さい。床は売れる資産の税後から純有利子負債と預り保証金を引いた約 150 億円(floor_assets_oku)とし、今の自己資本 743 億円に対する PBR 0.20 倍で測った。谷の一年の利益で測る数字ではなく、資産の床で置いた。借金が重いので EV でも見ると、時価総額 149 億円 + 純有利子負債 393 億円(今の値)で EV ÷ 営業利益は 27 倍になるが、営業利益 20 億円は谷の一年の数字で、倍率の根拠にはしていない。価格は競争で 10 年 1.15 倍にとどまる(物価 1.34 倍に届かない)と置いた。
確率:トライアル、コープさっぽろ、アークス系が同時に安売りを仕掛け、ザ・ビッグも不採算になる複合の筋書き。生活必需の食品なので事業は消えないが、個社の負けは10年で定着しやすいため無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合スーパー(イオン・イオンスーパーセンター)
衣料・住居関連を含む大型店。食品を軸に、強い食と専門を掲げて既存店の改革を進める。
| 数量店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数 | 価格1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 46.0 | 45 | 2,050 | 30 |
| 10 年後 中立 | 41.0 | 60 | 2,448 | 44 |
取り方:会社は単一セグメントなので業態別の利益は開示がない。2026/02 期の売上 3,800 億円から、食品スーパーとディスカウントの合計 1,748 億円(2025 年度、業界紙)を引いて総合スーパーを約 2,050 億円とし、約 46 店で割って 1 店あたり売上を出した(推定)。利益は同業の利益率の差から約 1.5% と置いた推定。10 年の価格は物価の 1.34 倍が基本で、数量は店の数に店ごとの客数(人口減で 10 年に 1 割弱減)を掛けた店舗相当数。
食品スーパー(マックスバリュ・フードセンター・小型店)
日々の食品の買い物を受け止める地域密着の店。新しい SM の形をディスカウントに近づけて広げる。
| 数量店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数 | 価格1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 111 | 11 | 1,200 | 38 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 14 | 1,420 | 47 |
取り方:食品スーパーとディスカウントの合計 1,748 億円のうち、ザ・ビッグ 26 店の分を除いた約 1,200 億円を、店数 111(SM 66・小型 45)で割った(推定)。利益は約 3.2% と置いた推定。小型店は大型店より店あたり売上が小さいので、単純平均になる点は割り引いて読む。価格は 10 年で物価の 1.34 倍が基本。
ディスカウント(ザ・ビッグ)
品ぞろえを絞って安く売る業態。新しい中計の成長の柱で、札幌圏・道北・帯広・釧路で出店を重ねる。
| 数量店舗数 × 店ごとの客数の指数(今を 1)= 店舗相当数 | 価格1 店舗相当あたりの年間売上(億円。物価と客単価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 26.0 | 21 | 548 | 23 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 28 | 1,130 | 49 |
取り方:26 店、売上は食品スーパーとの合計 1,748 億円から約 550 億円と推定(1 店あたり約 21 億円)。利益は約 4.2% と置いた推定(低価格で販管費が軽く、SM より利益率が高いのが業界の形)。価格は 10 年で物価の 1.34 倍が基本。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
安売り競争による粗利の低下
中間決算で営業利益は38%減った。売上は過去最高でも、価格競争力を保つために粗利率が下がった。トライアルの出店とコープさっぽろの宅配が続けば、この傾向は一時的なものでなく構造になる。ザ・ビッグ同士の出店競争も新店の採算を削る。
利益率の戻りの遅れ
前の中計は営業利益157億円の目標に対して83億円で終わった。建築費、光熱費、人件費の上昇が出店計画と利益を同時に押し下げた。新しい中計の110億円も、同じ要因で遅れる可能性がある。
道内の人口減と客数の減少
北海道の人口は毎年減り、食品の量は縮む。値上げで売上は保てても、買い上げ点数は減る。店ごとの客数が10年で1割ほど細ると、固定費の重い大型店ほど利益を失う。
総合スーパーの衣料・住居関連の縮小
中間決算で衣料は約4%減った。ECと専門店への流出が続き、不採算店の減損と閉店が毎年のように出る。今期の純利益予想が減益なのも、一部店舗の減損が理由だ。
店舗の家賃と借入という固定の約束
店は借りているものが多く、家賃は売上が落ちても減らない(年額は有価証券報告書で確認できていない)。純有利子負債は393億円あり、5年で824億円の投資を進めるので借入は増えやすい。新リース会計基準の適用(2028年2月期から)で、数字の上では負債が増えて見える。
親会社の都合
イオンは約65%を持つ筆頭株主で、グループ再編の方針を決める。少数株主のための還元や、独自の資本政策は期待しにくい。完全子会社化が起きても、価格は買い手の事情で決まり、少数株主に有利とは限らない。
今後の分かれ目
- ザ・ビッグの新店が、既存の安売り店と共食いせずに計画どおり利益を出したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ディスカウント部門の利益率が5%に近づくかが目安になる。
- 半期の営業利益の減益が、次の決算でも続いたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。粗利の低下が一時的でなく構造だという見方を強める。
- トライアルが札幌圏で出店を加速したら
- ザ・ビッグと食品スーパーの客数への影響を見直し、やや悲観に重みを移す。
- イオンがイオン北海道の完全子会社化を発表したら
- 買収の上乗せの分だけ少数株主の取り分が増える。ただし価格は買い手が決めるので、事業の価値の見方は変えない。
- 中計の営業利益110億円を前倒しで達成する見通しが出たら
- 利益率の改善が構造的だと判断し、中立の利益を上方に修正する。
- 最低賃金の引き上げや光熱費の上昇が、省人化の効果を上回る年が続いたら
- 営業利益率の前提を下げ、中立の利益を下方に修正する。
見ておくもの
- 半期ごとの営業利益と粗利率(中計の110億円への進み具合)
- ザ・ビッグの新店の売上と、既存店への影響
- トライアルとコープさっぽろの出店・宅配の動き
- イオンのグループ再編(完全子会社化の発表)
- 有価証券報告書のリース債務と新リース会計基準の影響
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに店舗相当数(店数 × 店ごとの客数)× 1店舗相当あたり売上(物価の指数)で積み上げ、価格は物価並み(10年1.34倍)を基本にした。倍率は今の株価や同業の倍率ではなく、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限と、ROEが資本コストを下回る点から置いた。中立のROEは約7%でkの7.3%を下回るので、上限は1÷kになる。悲観は、その筋書きの稼ぐ力と、土地と建物を売った場合の税後の価値から借入と預り保証金を引いた床で置いた。今の株価は最後に比べただけで、倍率を寄せてはいない。会計は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準で数字の形が変わる点は別に書いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.01 倍・やや楽観 PER 12→13.36 倍・中立 PER 11.7→12.99 倍)。
資本コスト 7.7% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。同じ領域のアークス(7.2%)、フジ(7.3%)に近い。親会社の再編(完全子会社化の可能性)、新店の実行、安売り競争といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.30% → 7.70%。