結論
ダブルエーは、婦人靴ブランド「ORiental TRaffic」や「卑弥呼」を直営店とネット通販で売る会社だ。2025年には婦人服の31 Sons de modeも買い取った。筆者の結論は「割高」だ。十年後の価値は今の時価総額の4割ほどにとどまり、今の値段は回復を大きく先取りしている。
足元は苦しい。2026年1月期の営業利益は前の期から3分の1ほど減り、2027年1月期の上期はほぼゼロだった。広告費、人件費、物流費が先に増え、売上は5%減った。会社は通期で15億円の営業利益を見込むが、上期が0.04億円で、下期に前期の下期の約4倍を稼ぐ計算になる。筆者はこの達成を難しいと見ている。
事業の弱みは、固定費の重さだ。家賃だけで年に24億円ほど払う。売上が落ちても家賃は落ちない。純現金は26億円あるが、これは運転資金に近く、見かけほど強くない。
一方、強みもある。ネット通販が売上の3割近くまで育ち、自社企画で粗利は高い。財務は借金がなく、自己資本比率は8割を超える。
十年で見ても、店舗の数量は伸びにくく、費用は物価で上がる。中計で掲げた営業利益40億円は、実績の10.7億円とは開きが大きい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の第一の弱点は、利益の質だ。営業利益率が2%台から9%台まで動くのは、事業が予測しにくいことを示す。家賃という固定の約束があり、需要が落ちると利益が一気に消える。
第二に、堀の広さだ。企画力とECは強みだが、婦人靴に独占的な力はない。流行と景気に左右され、値上げの力も限られる。堀は十年スパンで見て「弱め」だ。
第三に、資本の使い方だ。借金がなく、配当も続く。経営者は財務の守りを重んじている。ただ、中計の目標が大きく外れた実績は、計画を立てる力が弱いことも示す。
払う値段に安全域があるかどうかは、結論のとおりだ。今の値段は、回復をかなり織り込んでいる。十年で純利益が今の倍になる中立の筋書きでも、値段に届かない。
オーナーとして持ち続けたいかと言えば、利益が安定しない店舗事業に、この値段は払いにくいと筆者は考える。借金がない点は評価するが、それだけでは足りない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は婦人靴だ。売上の約9割を占め、「ORiental TRaffic」「ダブルエー」「NICAL」「卑弥呼」などのブランドを、自社で企画してパートナー工場に作らせる。工場は中国と香港が中心で、自社の生産設備は持たない。売り先は直営の実店舗と、自社ECだ。実店舗は国内に182店、海外に34店(香港20、マカオ2、台湾12はライセンス)。ネット通販の比率は2026年1月期で28.8%、金額で67億円だった。
第二の柱は婦人服で、売上は30億円ほど、まだ赤字だ。ミッシュマッシュなどのブランドに加え、2025年4月にヒロタから31 Sons de modeの事業を譲り受け、店舗が16店増えた。会社はこの事業の黒字化を2027年1月期の目標に掲げる。
商業施設に入る出店が中心で、賃借料は連結で年に24億円ほどだ。敷金・保証金は8億円を超える。従業員は連結で566人、平均年齢は29歳と若く、勤続は短い。
商品の仕入れは外貨建てが多く、会社はドル円で160水準を前提に今期の計画を立てた。円安は仕入れの負担になり、為替が小さく動くだけで営業利益が数千万円ずつ動く。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、企画力と自社ECだ。婦人靴は、素材やデザインで差が出る商品で、商業施設の客層に合うブランドを複数持つ。自社の企画から販売まで一気通貫なので、粗利は高い。ネット通販が3割近くになり、店舗の家賃に頼らない売上が育った。
資本の使い方は無難だ。借金がなく、自己資本比率は8割を超える。配当は性向5割を保つが、自社株買いはない。政策保有株は原則持たない方針で、保有は2.7億円とわずかだ。
弱点は四つある。第一に、利益率の振れが大きい。営業利益率は2020年1月期の9.7%から、コロナ期の2.3%、2024年1月期の8.3%、2026年1月期の4.6%と動いた。第二に、中計の達成度が低い。2026年1月期に売上260億円・営業利益40億円を掲げたが、実績は233億円・10.7億円だった。第三に、婦人服の黒字化が遅れている。第四に、全社費用が重い。婦人靴の事業利益30億円のうち、本社・物流などの費用で約19億円が消える。
ブランドの堀は広くない。流行に左右され、価格を自由に上げられる力は限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
婦人靴の市場は、人口減少と高齢化で数量が伸びない。靴の専門店チェーンは低価格のチヨダ、中価格帯のダブルエー、百貨店ブランドなどに分かれ、ネット通販や海外の安い靴が価格を引き下げる。ダブルエーは中高価格帯の自社ブランドで、価格競争から距離を置こうとしている。
国内のアパレル市場は2024年に約8.5兆円で、4年連続のプラスだった(矢野経済研究所)。ただし伸びは訪日客と値上げの寄与が大きく、数量は横ばいに近い。物価3%の世界では、仕入れ・人件費・家賃が毎年3%ほど上がる。値上げが通る強いブランドだけが利益率を守れる。
人件費は最低賃金の上昇で、店舗の運営費が名目で年3〜5%上がる。ダブルエーは平均年齢29歳と若く、人材の定着が課題だ。物流費も上がっている。
ECの比率は伸びるが、広告費が先に増える。2027年1月期の上期は、広告宣伝費の増加が営業利益を押し下げた。大手のファッション通販に客を奪われないためのコストは、今後も続く。
海外は香港と台湾に限られ、香港の景気悪化で拡大を止めた。靴の海外展開は現地の競合が多く、収益化は難しい。
業界のノートは、国内専業の専門店は店舗数が横ばいから微減、客単価の伸びも限られると置く。ダブルエーも、その中に入る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年間の配当は純利益の半分で、総額は3億円ほどである。自社株買いは実績がない。会社は「財務基盤の強化と投資資金の確保を重視しつつ、安定的な配当」を掲げる。
純現金は26億円で時価総額の約1割にとどまる。ただし、これは運転資金に近い。在庫が50億円あり、家賃は年24億円、敷金は8億円を超える。新リース会計基準が適用されると(この会社は2029年1月期から)、使用権資産とリース負債が貸借対照表に載り、見かけの自己資本比率は下がる。余った現金としては分けていない。
政策保有株は原則持たない方針で、上場株は2銘柄・2.7億円だけだ。
M&Aは、2025年に婦人服の31 Sons de modeを買い取った。ブランドの譲り受けで店舗を増やす手法で、買った事業は赤字から抜けていない。今後も同様の買収が続くなら、PMI(統合)の失敗が利益を削るリスクがある。
投資は好立地への出店、EC、物流の強化に向かう。大型の投資は想定しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
悪い材料は費用の増加が中心で、需要が崩れたわけではない。売上は2026年1月期に2%伸び、ネット通販は67億円、売上の3割近くに育った。上期の営業利益がほぼゼロなのは、販促の見直しと退店の費用が前倒しで出た影響で、下期にかけて戻る余地がある。
婦人靴は企画から販売まで自社で行うため、粗利が高い。婦人靴の事業利益率は15%を保つ。全社費用の約19億円は固定費の性格が強く、売上が戻れば利益に大きく効く。中計が掲げた売上260億円・営業利益40億円は未達でも、方向は間違っていない。
婦人服の31 Sons de modeを買い取り、ブランドの幅が広がった。黒字化すれば利益に上乗せされる。香港・台湾は拡大を止めて守りに入っており、無理な投資は避けている。
この分析が置く為替(ドル円150)は、会社の計画(160水準)より円高で、仕入れに有利になる。借金はなく、自己資本比率は8割を超える。配当性向5割を保つ財務の余力もある。十年で純利益が倍以上になる筋書きは十分にある。
慎重な見方
上期の営業利益は0.04億円と、ほぼゼロだった。売上は5%減り、販促費・人件費・物流費が増えた。会社は通期で営業利益15億円を見込むが、前期の下期は約4億円で、下期だけで15億円を稼ぐのは難しい。通期予想は下振れる可能性が高い。
中計は目標の売上260億円・営業利益40億円に対し、実績は233億円・10.7億円と大きく外れた。利益率は2024年1月期の8.3%から4.6%に落ち、改善の道筋はまだ見えない。婦人服は買収後も赤字だ。
固定費が重い。家賃が年24億円、敷金が8億円超、全社費用が19億円。売上が1割落ちれば、利益はほとんど消える。純現金26億円は、運転資金と家賃の約束に近く、余裕のある現金ではない。
ネット通販の比率が上がっても、広告費が先に増えて利益に貢献しにくい。大手の通販や安い海外商品との競争は続く。物価が3%上がる中で、値上げが通らなければ利益率は下がる。今の値段は、利益が数倍に戻ることを前提にしている。
どちらに重みを置いたか
財務の守りと企画力では強気の言い分が説得力を持つ。一方、上期の利益がほぼゼロであること、中計が大きく外れたこと、固定費の重さでは慎重な言い分が明確に勝つ。そこで中立の利益率を過去の中央値の少し下に置き、確率はやや悲観をやや楽観より厚くした。悲観は借金がなく現金があるので、1割強にとどめた。総合の差は、中立の利益が倍になっても今の値段に届かない点から来ている。会社の実力を否定するのではなく、今の値段が回復を先取りしているという見立てである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 982 円187 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 260 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 632 円121 億円、今との差 −55.2%、 期待の年率 −1.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,202 円611 億円 | 576 円110 億円 | +167.8% | +10.4% | 227 円43 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,757 円335 億円 | 367 円70 億円 | +50.5% | +4.2% | 382 円73 億円 |
| 中立 | 36% | 1,047 円200 億円 | 262 円50 億円 | −7.2% | −0.7% | 471 円90 億円 |
| やや悲観 | 28% | 276 円53 億円 | 189 円36 億円 | −67.1% | −10.5% | 130 円25 億円 |
| 悲観 | 12% | 157 円30 億円 | 105 円20 億円 | −81.4% | −15.5% | 31 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 982 円187 億円 | 260 円50 億円 | −12.0% | −1.3% | 1,242 円237 億円 |
今の株価時価総額 1,411 円269 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 靴の高価格帯とECが育ち、婦人服も黒字になる 利益 36 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 3,202 円611 億円
ORiental TRaffic を中心とした中高価格帯のブランドが定着し、自社ECの比率が4割を超える。店舗は好立地に絞って小さく増え、1店あたり売上(EC込み)が物価を上回って伸びる。婦人靴の利益率は18%に乗り、2025年に譲り受けた婦人服の31 Sons de modeやミッシュマッシュも黒字化して、利益の柱の一つになる。全社費用は効率化で物価ほどは増えない。香港と台湾も広がる。営業利益率は11%台で、2020年1月期の9.7%を超える。名目のROEは17%を超え、還元は純利益の半分強を保つ。ここまで順調に進むのは、この会社の過去10年でも珍しい。
- 婦人靴:数量 235(店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算))× 価格 1.64(1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み))→ 売上 385 億円・営業利益 69 億円。婦人靴:235 店(EC込み) × 1店あたり 1.6372億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.30 倍)、利益率 18.0%
- 婦人服:数量 70.0(店舗数相当(推定50店分))× 価格 1.01(1店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 7 億円。婦人服:70 店分 × 1店あたり 1.005億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.25 倍)、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.21 倍、時価総額 611 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(営業利益40億円)が一度も達成できていない実績があり、連続して成功する確度は高くない。6%に置いた。
やや楽観 18% EC比率が上がり、店舗の統廃合も効いて利益率が戻る 利益 22 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 1,757 円335 億円
自社ECの比率が3割台後半まで上がり、実店舗は不採算店を整理して質を高める。婦人靴の利益率は16%台に戻り、婦人服も小さな黒字を出す。人件費と物流費の上昇は値上げと商品構成の改善で吸収する。営業利益は33億円ほどで、利益率は8%台。香港と台湾は小さな黒字にとどまる。還元は純利益の半分強。ただし、商品の企画力を落とさず、出店と在庫の判断を外さない経営が前提になる。売上は390億円近くまで伸び、全社費用は物価よりやや低い伸びで済む。婦人服が赤字を抜け、ECの広告効率も改善する。海外は小さいままで、国内の質の改善が主役の十年だ。
- 婦人靴:数量 225(店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算))× 価格 1.49(1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み))→ 売上 334 億円・営業利益 55 億円。婦人靴:225 店(EC込み) × 1店あたり 1.486億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.18 倍)、利益率 16.5%
- 婦人服:数量 60.0(店舗数相当(推定50店分))× 価格 0.88(1店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。婦人服:60 店分 × 1店あたり 0.8844億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.10 倍)、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.24 倍、時価総額 335 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の落ち込みは費用の増加が主因で、売上は伸びている。経営の立て直しが効く展開。
中立 36% 売上は物価並みに伸び、利益率は6%台で落ち着く 利益 15 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,047 円200 億円
国内の婦人靴の需要は人口とともに細るが、EC込みの1店あたり売上が物価を少し上回って伸び、売上は350億円ほどになる。婦人服は31 Sons de modeの黒字化が遅れつつも小さな利益を出す。利益率は婦人靴で15%、全社では6%台。人件費・物流費・家賃の上昇を価格に載せきれず、2024年1月期の8%台には戻らない。全社費用は物価で26億円まで増える。純利益は15億円ほどで、今の倍強。配当性向5割を保ち、自己資本は厚くなる。大きな成功も失敗もない、地味な十年になる。婦人靴は220店前後で、EC込みの1店あたり売上が物価を1割ほど上回る。婦人服は55店分に増えて小さな黒字になる。営業利益は23億円、純利益は15億円ほどで、今の倍強にとどまる。
- 婦人靴:数量 220(店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算))× 価格 1.41(1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み))→ 売上 310 億円・営業利益 47 億円。婦人靴:220 店(EC込み) × 1店あたり 1.4105億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.12 倍)、利益率 15.0%
- 婦人服:数量 55.0(店舗数相当(推定50店分))× 価格 0.84(1店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。婦人服:55 店分 × 1店あたり 0.8442億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.05 倍)、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.41 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上・利益の目標が未達の実績と、足元の販促・費用の増加を踏まえた落としどころ。
やや悲観 28% 在庫と家賃の重さで利益率が3%台にとどまる 利益 6 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 276 円53 億円
実店舗の客数が減り、1店あたり売上が物価に届かない。人件費・物流費・家賃は物価並みに上がるので、婦人靴の利益率は13%に下がる。婦人服は赤字を抜けられず、ブランドを整理する。会社は不採算店を閉めるが、家賃の固定費は店を閉めても残り、閉店費用もかかる。ECは伸びるが、広告費で利益が消える。営業利益は10億円ほどで、利益率は3%台。配当は維持するが、性向は6割まで上がる。それでも借金はなく、事業は続く。売上は290億円ほどで、今より2割多いが、利益は今の水準に近い。婦人靴は205店まで減り、婦人服は45店分に縮む。EC比率は上がっても広告費に消え、増えた売上が利益に残らない。物価上昇の恩恵を、費用の上昇が食いつぶす十年だ。
- 婦人靴:数量 205(店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算))× 価格 1.26(1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み))→ 売上 258 億円・営業利益 34 億円。婦人靴:205 店(EC込み) × 1店あたり 1.2594億円(物価 1.34 倍 × 実質 1.00 倍)、利益率 13.0%
- 婦人服:数量 45.0(店舗数相当(推定50店分))× 価格 0.78(1店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。婦人服:45 店分 × 1店あたり 0.7799億円(物価 1.34 倍 × 実質 0.97 倍)、利益率 2.0%
倍率:ROE 4.6% は k 8% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、PER の上限 1÷k=11.8 倍の約 72%(8.5 倍)を置いた。
確率:上期の営業利益がほぼゼロになった事実があり、費用の増加が構造的である可能性は高い。やや楽観より厚い28%に置いた。
悲観 12% ブランドの力を失い、家賃を払うだけの赤字店が残る 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 157 円30 億円
ファッションの流行が動き、ORiental TRaffic のブランドの勢いが失われる。ECの競合(大手ファッション通販や中国発の通販)に客を奪われ、実店舗の客数が大きく減る。値引きで在庫を処分し、粗利が崩れる。家賃は固定で、閉店しても違約金や原状回復の費用がかかる。婦人服は撤退する。営業赤字が続き、配当は止まる。借金はなく存続には困らないが、ためた現金を食いつぶす十年になる。優良な専門店ではなくなり、価値は純現金に近づく。売上は215億円まで落ち、営業利益は14億円の赤字になる。店舗は婦人靴で180店、婦人服で30店分にまで減る。会社は債務超過にはならないが、ためた自己資本を取り崩し、配当は止まる。少数株主は、現金の使い道を決められないまま、再建を見守ることになる。
- 婦人靴:数量 180(店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算))× 価格 1.08(1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み))→ 売上 195 億円・営業利益 10 億円。婦人靴:180 店(EC込み) × 1店あたり 1.083億円(物価 1.34 倍 × 実質 0.86 倍)、利益率 5.0%
- 婦人服:数量 30.0(店舗数相当(推定50店分))× 価格 0.69(1店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 −2 億円。婦人服:30 店分 × 1店あたり 0.6914億円(物価 1.34 倍 × 実質 0.86 倍)、利益率 -10.0%
倍率:営業赤字で稼ぐ力では値が付かない。悲観の床は今の純現金(26億円)に近く、使い道を少数株主が決められないため、今の自己資本111億円に0.27倍を掛けた。
確率:婦人靴は景気と流行に左右される裁量消費で、中計の目標が大きく外れた実績がある。構造的に負ける道筋は現実的で、12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
婦人靴
ORiental TRaffic・ダブルエー・NICAL・卑弥呼などの婦人靴を、直営の実店舗とネット通販で売る。
| 数量店舗数(国内182+海外34の実店舗に、EC を店舗1つ分に含めた換算) | 価格1店あたり年間売上(億円・名目。EC込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 216 | 0.94 | 203 | 30 |
| 10 年後 中立 | 220 | 1.41 | 310 | 47 |
取り方:婦人靴の売上203億円を、期末の実店舗216店(国内182・海外34)で割り、1店あたり約0.94億円とした。ネット通販(連結で67億円)は店舗に含めて数える。数量は店舗数で、客数の変化と物価は1店あたり売上の側に入れる。セグメント利益30.1億円は全社費用を引く前の数字で、全社費用約19.4億円は調整に置く。
婦人服
ミッシュマッシュなどのブランドと、2025年に譲り受けた31 Sons de modeの婦人服。
| 数量店舗数相当(推定50店分) | 価格1店あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 50.0 | 0.60 | 30 | −1 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.84 | 46 | 3 |
取り方:婦人服の売上30億円を、店舗数相当50店(開示が無く推定。譲受の16店を含む)で割った。店舗とECの合計を店舗数に換算した。セグメント損失は0.9億円。
リスクと懸念
通期予想の下振れ
2027年1月期の上期の営業利益は0.04億円で、通期予想の15億円は下期だけで稼ぐ計算になる。前期の下期は約4億円。予想を下回れば、回復期待が剥がれて評価が下がる。
固定費の重さ
家賃は連結で年に24億円ほど、全社費用は約19億円。売上が1割落ちれば営業利益はほとんど消える。店を閉めても家賃の違約金と原状回復の費用がかかる。
中計の未達と計画の信頼性
2026年1月期の目標は営業利益40億円だったが、実績は10.7億円だった。目標から4分の1の達成にとどまり、次の計画も同様に外れる恐れがある。
婦人服事業の赤字
31 Sons de modeを買い取り、黒字化を目標にしたが、婦人服は赤字のままだ。ブランド整理や追加の減損が出れば利益を押し下げる。
為替と仕入れコスト
仕入れは中国・香港が中心で外貨建てが多い。為替が小さく動くだけで営業利益が数千万円ずつ動く。この分析は150円固定だが、実際の為替が動けば利益は大きく振れる。
ECの広告費と競争
ネット通販の比率は3割近くに上がったが、広告費が先に増えて利益に結びつかない。大手のファッション通販や海外の安い商品との競争は続く。
今後の分かれ目
- 下期に営業利益が10億円を超えて、通期予想に近づいたら
- 費用増加は一時的だったと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 2027年1月期の通期営業利益が10億円を下回ったら
- 回復の見立てが外れたとして、やや悲観の確率を上げる。
- 31 Sons de modeを含む婦人服が黒字になったら
- 婦人服の利益率を引き上げて見直す。
- ネット通販の売上比率が4割に近づき、営業利益率も改善したら
- ECが家賃に頼らない利益になったとして、中立の利益率を上げる。
- 実店舗の統廃合が進み、1店あたり売上が大きく伸びたら
- 店舗の質の改善として評価し、中立の数量を上げる。
- 配当性向が下がり、自社株買いも出ないまま現金が積み上がったら
- 資本の使い方に疑問が出るので、余った現金の戻り方を下げて見直す。
見ておくもの
- 下期の営業利益と通期予想の達成度
- 婦人靴の1店あたり売上とEC比率
- 婦人服の損益
- 店舗数(出店・退店)と家賃の総額
- 為替(1ドル)と仕入れ原価率
倍率と資本コストの決め方
婦人靴は店舗数(EC込み)×1店あたり売上、婦人服は店舗数相当×1店あたり売上で積み上げた。数量は店舗数で実質に近く、物価3%は1店あたり売上の指数(10年1.34倍)に入れ、客数の増減と商品構成は実質の倍率で表した。全社費用も物価で増やし、10年後に26億円とした。為替はドル円150で固定し、会社の前提(160水準)との差は筋書きに入れていない。倍率は資本コスト8%(quality +1.0%)とROE約9%から正当化PERを計算し、ROEがkをわずかに超えるので1÷kの11.8倍を置いた。今のPERやPBR、過去の倍率は使っていない。純現金は運転資金・家賃・敷金に見合うため分けていない。新リース会計基準(2029年1月期から)で数字の形が変わるが、10年後は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。悲観は家賃が固定費として残る構造的な負けで置き、床は今の純現金に近い。今の株価には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.3→17.21 倍・やや楽観 PER 12.8→15.24 倍・中立 PER 11.8→13.41 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0%(循環 +0.5、値決め +0.25、寿命 +0.25)。事業は傾いていないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。