結論
チヨダは、「東京靴流通センター」と「シュープラザ」を全国に863店構える、靴の専門店チェーンだ。自社企画の靴を安く売り、店の数と低価格が売りである。ただ、客数が減り、稼ぐ力が細っている。
筆者の結論は「割高」だ。今の時価総額は約318億円で、そのうち純現金が約167億円ある。現金の厚みは確かに魅力だが、その現金を除いた靴の事業は、いまは薄利とみる。
利益の足取りは重い。2026年2月期の営業利益は10.9億円、純利益は2.4億円にとどまった。2027年2月期は、上期の不振で営業利益の予想を14億円から4.6億円へ引き下げた。純利益は0.1億円という予想だ。
会社の中期計画は、2027年2月期に営業利益52億円を掲げていた。実績はその5分の1に届かず、計画を外し続けてきた。
大株主には、いちごアセットが約19%で並ぶ。現金を株主に戻す圧力は強いが、配当は年約18億円と、稼ぎを大きく上回る。10年の稼ぎで測ると、価値は今の値段を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目では、チヨダは「現金は厚いが、事業は育たない」会社だ。堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。靴は買う場所が多く、客は値段を比べる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、いまは小さい。営業利益は10.9億円、純利益は2.4億円で、2027年2月期は営業利益が4.6億円まで下がる見通しだ。
現金は価値だが、使い道が鍵になる。純現金167億円のうち、約100億円は事業に要らない余りとみた。その余りを株主に戻す意思が会社にあるのは救いだが、戻すほど現金は減り、事業は残る。
経営の計画は信頼しにくい。中期計画の2026年2月期は営業利益36億円だったが、実績は10.9億円だった。2027年2月期の52億円は、いまの予想4.6億円との差が大きすぎる。
安全域は、現金に頼る形だ。事業が赤字に沈む筋書きでも、現金と売れる資産が株主価値の下支えになる。ただ、今の値段はその下支えを上回っており、安全域は厚くない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、靴を売る店だ。2026年2月期の売上は814億円で、その大半が店頭の売上である。靴の専門店として、店舗数は863店。ロードサイドやショッピングセンターに、広い売り場を借りて出している。
扱う商品は、自社企画のプライベートブランド(PB)が45%を占める。主力は、機能性を前面に出した「スパットシューズ」などの自社ブランドだ。PB比率は前の年の42%から3ポイント上がり、会社は粗利率の改善手段として力を入れている。
売り方は二つの業態に分かれる。「東京靴流通センター」は、価格の安さを前面に出した生活防衛型の店だ。「シュープラザ」は、少し高い付加価値型の店だ。
店頭の外に広げる動きもある。ネット通販の売上は36億円で、次の期は50億円を計画する。自社アプリの会員を500万人に増やす目標もある。ただ、売上全体に占める通販の割合は、まだ4%台にとどまる。
店は毎年入れ替わる。2026年2月期は14店を出し、24店を閉じた。計画の閉店15店を大きく上回り、店舗網は縮んでいる。従業員は連結で1,231名、ほかに年平均で約2,000人の臨時雇用者が店を支える。
優良さと弱いところ
優良さを分ける要素は、自社企画の商品力と、売り場の効率だ。チヨダはこの両方で、平均を抜けているとは言いにくい。
客数の落ち込みがすべてを物語る。2026年2月期の既存店の客数は5.3%減り、客単価が3.2%上がっても、売上は2.2%減った。会社は計画未達の理由として、客数、在庫の積み上がり、アプリ会員への働きかけの不足を挙げる。
値引きが利益を削る。在庫が増えれば、価格競争のなかで早めの値下げに走る。粗利率は計画に届かず、2027年2月期の上期でも同じことが起きた。
財務は厚い。自己資本比率は70%、有利子負債は8億円にすぎず、現預金は178億円ある。ただし、この現金は店を維持するための運転資金を兼ね、すべてが余っているわけではない。2026年2月期は退職給付信託に40億円を移したため、見かけの現金は減った。
資本の使い方は評価が分かれる。計画をはるかに下回る利益のなかで、配当15億円と自社株買い15億円を実行した。株主を向く姿勢は明確だが、その原資は事業の稼ぎではなく、ためた現金である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の靴・履物の小売市場は、2024年度で約1兆2,400億円とされる。前の年より0.8%増えたが、これは円安による単価上昇とスニーカー需要の増加の効果が大きい。革靴離れやパンプス離れ、子供の人口減は、長いトレンドとして続く。
市場全体は横ばいでも、チヨダの客は減っている。靴はもともと必需品に近いが、買う場所は多い。ABCマートなど靴の専門チェーンに加え、ワークマンやユニクロ、ドラッグストア、通販大手が、靴を安く売る時代になった。
物価が3%上がる環境は、チヨダにとって両刃だ。値上げが通れば客単価は上がるが、低価格が売りの店で値上げすると客足が離れる。人件費と家賃は上がり続けるので、売上が伸びなければ利益は圧迫される。
通販は逆風でも追い風でもある。靴はサイズ合わせが要るため、通販比率は服より低く推移してきたが、返品の手間を下げる動きは広がっている。実店舗が主体のチヨダは、通販に客を奪われる側に立ちやすい。
10年の見通しは、店舗網の縮小と、1店あたりの売上の細りだ。人口減と、スニーカー化による買い替え周期の長期化が、数量を押し下げる。
資本政策と M&A
還元の方針は大きい。会社は、連結配当性向50%、純資産に対する配当率(DOE)3.5%以上、ROEが8%になるまで総還元性向100%以上を掲げる。2026年2月期は配当15億円と自社株買い15億円を実行した。
問題は、この方針が稼ぎと釣り合っていないことだ。2027年2月期の純利益予想は0.1億円で、年約18億円の配当予想は稼ぎを大きく上回る。配当を維持すれば現金が減る。
大株主のいちごアセットは約19%を持つ。2025年9月の約8%から買い増しが続き、現金を株主に戻す圧力は強い。TOB(株式公開買い付け)の可能性は、当サイトの参考値で10年以内に2割ほどある。
株主優待も出している。100株以上で20%割引券を年10枚出す。費用は開示がなく、筆者は年1億円前後と推定し、還元に加えて見た。
店舗は大部分が賃借で、建物のリース料は年9億円ほどだ。売上が減っても家賃は残る固定費で、閉店には違約金や撤去の負担がつきまとう。
退職給付信託には40億円を移した。年金の穴を埋めるための手当てで、事業の稼ぎには寄与しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
靴の量販店には、まだ立て直しの余地がある。PB比率は45%まで上がり、自社企画の商品は粗利率を押し上げる材料だ。スパットシューズは累計1,000万足を目指す段階まで来ており、商品力のある品が育てば客数は戻る。
店の入れ替えは進む。2026年2月期は24店を閉じ、14店を出した。不採算店を閉じ、郊外型の大型店や都心の駅前店に集めれば、1店あたりの売上と利益は上がる。
デジタルの接点も増える。アプリ会員は500万人を目指し、通販は2027年2月期に50億円を計画する。通販と店舗を結びつければ、客数の減少に歯止めがかかる。
財務が厚いので、時間をかけて立て直せる。自己資本比率は70%、純現金は167億円ある。大株主のいちごアセットは約19%を持ち、現金を戻す圧力と経営の規律づけが、同時に働く。
物価の上昇が追い風になる面もある。節約志向の高まりで、低価格の店が選ばれる局面が来れば、客数は反転しうる。
慎重な見方
客数は減り続けている。2026年2月期の既存店の客数は5.3%減り、2027年2月期の上期でも客数と客単価がともに計画を下回った。値下げと在庫の積み上がりは、改善どころか繰り返されている。
会社の計画は何度も外れた。2026年2月期の営業利益は、計画36億円に対して10.9億円だった。2027年2月期の予想も、14億円から4.6億円へ引き下げられ、下期は赤字になる計算だ。
配当が稼ぎを上回る。年約18億円の配当予想は、予想純利益0.1億円を桁違いに超える。この水準を続ければ、現金は年々減っていく。
固定費の重さも効いてくる。店は大部分が賃借で、建物のリース料は年9億円ほどだ。売上が下がっても家賃は残り、閉店には撤去の費用がかかる。人件費は物価並みに上がる。
通販やスニーカーの専門店、他業態の安売り靴に、客を奪われ続ける。10年後には店が大きく減り、赤字が続く構造になりかねない。現金は事業を支えるために減り、株主に戻らない。
どちらに重みを置いたか
現金の厚みという強気の言い分は事実で、客数の減少と計画未達という慎重な言い分も事実だ。ただ、事業が稼ぐ力は、いまのところ慎重な言い分のほうが重い。
そこで、中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて40%とした。楽観とやや楽観は合わせて22%にとどめた。
結果として、本質価値は今の時価総額を下回った。現金の下支えはあるが、事業の価値と将来の還元を合わせても、今の値段には届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 685 円232 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 382 円130 億円)。 今の値に割り戻すと 567 円193 億円、今との差 −39.4%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,353 円459 億円 | 619 円210 億円 | +110.6% | +7.7% | 118 円40 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,066 円362 億円 | 530 円180 億円 | +70.5% | +5.5% | 255 円87 億円 |
| 中立 | 38% | 805 円273 億円 | 442 円150 億円 | +33.2% | +2.9% | 474 円161 億円 |
| やや悲観 | 28% | 327 円111 億円 | 280 円95 億円 | −35.1% | −4.2% | 170 円58 億円 |
| 悲観 | 12% | 295 円100 億円 | 118 円40 億円 | −55.9% | −7.9% | 49 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 685 円232 億円 | 382 円130 億円 | +14.0% | +1.3% | 1,067 円362 億円 |
今の株価時価総額 936 円318 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% PBと通販が客数を支え、店を絞って利益率が3%台へ戻る 利益 31 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,353 円459 億円
PB商品とアプリ会員の働きかけが実り、客数の減少に歯止めがかかる。店は840店まで絞りつつ、1店あたりの売上は実質で今の水準を保つ。通販の強化で、客単価の上昇が客数の減少を上回る。
粗利率は、PB比率の上昇と在庫管理の改善で戻る。値引き販売が減り、営業利益率は3.6%まで回復する。これは過去12年の最高6.5%に届かず、2025年2月期の2.4%を上回る水準だ。
営業利益は38億円、純利益は31億円になる。2026年2月期の純利益2.4億円から大きく伸びる。配当は自己資本に対する配当率3.5%の水準を保ち、いちごアセットなどの意向で自社株買いも続く。ROEは7%前後まで上がる。
- 靴の専門店(店舗とネット通販):数量 840(店舗数(店))× 価格 1.26(1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む))→ 売上 1,061 億円・営業利益 38 億円。店舗は840店。1店あたりの実質売上は今の水準を保つ
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.14 倍、時価総額 459 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数が戻り、PBの粗利で3%台の営業利益率を回復する必要がある。計画を外し続けてきた現状を考え、6%と低めに置いた。
やや楽観 16% 店舗を整理し、利益率が2%台後半へ戻る 利益 23 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,066 円362 億円
店舗は810店まで減る。閉店を進めて1店あたりの効率を上げるが、客数の減少は止まらず、実質の売上は今より3%ほど細る。値引きは減り、営業利益率は2.7%まで戻る。
営業利益は27億円、純利益は23億円になる。2025年2月期の純利益29億円に近づくが、そこまでは届かない。PB比率の上昇と通販の拡大が、利益の戻りを支える。
配当はDOE3.5%を保てず、少し下がる。それでも現金の余りを使って還元を続け、株主優待も維持する。人件費と家賃の上昇は、価格転嫁で吸収する。通販は50億円を超え、アプリ会員も増えて、店と通販を行き来する客が増える。一方で、客数の減少は完全には止まらず、値引きの圧力も残る。ROEは5%前後で、資本コストには届かない。
- 靴の専門店(店舗とネット通販):数量 810(店舗数(店))× 価格 1.23(1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む))→ 売上 993 億円・営業利益 27 億円。店舗は810店。1店あたりの実質売上は3%減
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:不採算店の整理と在庫の適正化で、利益率が2%台後半に戻る筋書き。蓋然性のある強気の姿として16%を置いた。
中立 38% 客数の減少が続き、店を絞って薄利を守る 利益 16 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 805 円273 億円
店舗は780店まで減る。年に10店ほどの純減が続き、客数の減少で1店あたりの売上は実質で7%ほど細る。物価の上昇分だけ客単価は上がるが、売上の伸びは物価に届かない。
営業利益率は1.8%にとどまる。2025年2月期の2.4%には戻らず、この3年の平均に近い。人件費と家賃は物価並みに上がり、値引きの圧力も残る。営業利益は16.5億円、純利益は15.7億円だ。
現金の利息が純利益を支える。純現金は2%で回り、営業利益を上回る金額が利息として残る。配当は年10億円台に落ち着き、DOE3.5%の約束は守れない。優待は続く。自己資本は440億円ほどで、ROEは3.5%前後だ。
- 靴の専門店(店舗とネット通販):数量 780(店舗数(店))× 価格 1.18(1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む))→ 売上 917 億円・営業利益 17 億円。店舗は780店。1店あたりの実質売上は7%減(客数の減少)
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 273 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数の減少は続くが、店舗整理とPBで薄利を保つ筋書き。いちばん確からしい姿として38%を置いた。
やや悲観 28% 客数の減少が加速し、利益がほぼ消える 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 327 円111 億円
店舗は700店に減り、1店あたりの売上は実質で15%細る。スニーカー専門店やワークマン、通販に客を奪われ、値引きでも客足は戻らない。
営業利益率は0.5%まで下がる。2027年2月期の予想0.6%と同じ水準が続くイメージだ。営業利益は3.8億円、純利益は6.2億円。現金の利息が純利益の大半を占める。
配当は稼ぎに合わせて減る。優待は縮小に向かう。配当の原資は余った現金で、利益ではない。自己資本は447億円と、10年で50億円ほど細る。現金は店舗網の維持と配当に使われ、事業が稼ぐ力は戻らない。ここでは構造が変わらないまま、10年がたつ姿を描いた。靴の需要そのものは残るが、店の数と価格で勝負する形では、利益が出にくくなる。
- 靴の専門店(店舗とネット通販):数量 700(店舗数(店))× 価格 1.07(1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む))→ 売上 752 億円・営業利益 4 億円。店舗は700店。1店あたりの実質売上は15%減
倍率:事業のROEは1〜2%で資本コスト8.25%に遠く届かない。式の約7.7倍の範囲で、稼ぐ力の弱さを見て約9割の7.0倍を置いた。
確率:客数が減り続け、値引きと固定費で利益がほぼ消える筋書き。計画を外し続けてきた経緯から、28%と中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:店が半減し、赤字が続いて現金が減る 利益 −11 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 295 円100 億円
客数の減少が止まらず、店は580店まで減る。1店あたりの売上は実質で28%細り、値引きでも歯止めがかからない。店を閉じるたびに撤去の費用と違約金が出て、家賃の固定費も残る。
営業利益率はマイナス2.5%まで落ちる。営業損益は13億円の赤字、純損益も11億円の赤字になる。人件費は物価並みに上がるが、価格に転嫁できない。
配当は急減し、優待も廃止に向かう。現金は赤字と閉店費用で年々減るが、それでも会社は存続する。残る現預金と売れる資産が、株主の価値を下支えする。自己資本は416億円まで細るが、借入はほぼなく、経営が行き詰まる前に店舗網を畳む余地は残る。大株主が現金の分配を迫る展開もありうるが、ここでは赤字で現金が先に減る姿を置いた。
- 靴の専門店(店舗とネット通販):数量 580(店舗数(店))× 価格 0.91(1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む))→ 売上 528 億円・営業利益 −13 億円。店舗は580店。1店あたりの実質売上は28%減。赤字
倍率:稼ぐ力はなく、事業のROEは資本コスト8.25%を大きく下回る。そこで値は、赤字で目減りした後に残る純現金と有価証券の税後(床の資産100億円、今の自己資本の約0.20倍)で置いた。市場の値付けは根拠にしない。
確率:客数の減少が止まらず、10年で店が大きく減り赤字が続く構造的な負けの姿。現金の下支えが効くので、12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
靴の専門店(店舗とネット通販)
「東京靴流通センター」「シュープラザ」を全国863店で運営し、自社企画(PB)を中心に靴を安く売る。ネット通販(売上36億円)も含む。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗あたりの年間売上(億円・名目。通販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 863 | 0.94 | 814 | 11 |
| 10 年後 中立 | 780 | 1.18 | 917 | 17 |
取り方:連結売上813.8億円と営業利益10.9億円は2026年2月期の決算による。期末の店舗数863店で割って1店あたり約0.94億円とした。通販36億円と他の売上は店舗の売上に含め、利益も分けない(通販の利益は非開示)。物価3%の分は価格に入れ、客数の減少による実質の細りも価格の側で表す。
リスクと懸念
客数の減少と店舗網の縮小
既存店の客数は2026年2月期に5.3%減り、2027年2月期の上期も計画を下回った。閉店は計画の15店を上回る24店で、店舗網は縮んでいる。革靴離れ・パンプス離れと子供の人口減は、長期のトレンドとして続く。
値引きと在庫による粗利率の低下
売上が計画に届かず在庫が積み上がり、値下げの前倒しが粗利率を押し下げた。2027年2月期の上期でも、在庫消化の値引きとポイント還元が繰り返された。値引きが常態化すると、薄い利益はすぐに消える。
計画を外し続ける経営
2026年2月期の営業利益は、計画36億円に対し10.9億円だった。2027年2月期は、中期計画の52億円に対し、予想が4.6億円まで下がっている。会社の数字を前提に価値を置くと、大きく外す。
配当が稼ぎを大きく上回る
年約18億円の配当予想は、予想純利益0.1億円を桁違いに超える。方針を守れば現金が減り、守らなければ株主還元への信頼が揺らぐ。いちごアセットなどの大株主との関係も、取り分の議論を呼ぶ可能性がある。
固定費の重さ(家賃・人件費)
店の大部分は賃借で、建物のリース料は年9億円ほどだ。最低賃金の上昇で人件費も物価以上に増える。売上が減れば固定費の比率が上がり、閉店には撤去費用と違約金がかかる。
競合と通販への客の流出
ABCマートなど靴の専門チェーン、ワークマン、ユニクロ、ドラッグストア、通販大手が、靴を安く売る。通販売上は36億円と小さく、実店舗が主体の会社は、通販に客を奪われる側に立ちやすい。
大株主による買い増しと支配権の動き
いちごアセットは約19%を持ち、買い増しが続く。現金を戻す圧力は強まる一方、さらに買い進めば経営に影響する。TOBの可能性は、当サイトの参考値で10年以内に2割ほどある。
今後の分かれ目
- 既存店の客数が、前の年を上回る(下期の客単価3.5%増も実現する)
- 客数の減少に歯止めがかかった証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 粗利率が改善し、営業利益率が2%を超える
- 値引きの悪循環を断てた証拠になる。中立の営業利益率を引き上げる。
- 閉店が出店を大きく上回り、店舗数が800店を割る
- 縮小が加速している証拠になる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当を稼ぎに合わせて減らす方針に変える
- 現金の流出が止まる。10年の還元の合計を見直し、余った現金の評価は保つ。
- いちごアセットが保有を大幅に増やす、または株主提案を出す
- 現金を戻す動きが早まる。TOBなら提示価格を確認する。
- 通販の売上が50億円を超え、通販の利益が出る
- 店舗に頼らない稼ぎが育った証拠になる。中立の売上の伸びを引き上げる。
見ておくもの
- 既存店の客数・客単価・売上
- 粗利率とPB比率
- 店舗数(出店・閉店)
- 配当の方針と自社株買い
- 現預金の増減と退職給付信託
- いちごアセットの保有比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きの事業のROEと資本コスト8.25%(基本7.5%に循環+0.5・値決め+0.25・寿命+0.25)から正当化PERを計算し、弱い堀(残る割合1/3)の上限の9割前後に置いた。ROEがkに届かない中立・やや悲観は、稼ぐ力の弱さを見て倍率を下げた。悲観は10年の赤字で目減りした後の現預金と有価証券を床にした。純現金167億円のうち100億円を余りとし、残りは運転資金とみて足していない。今の時価総額は自社株買い実行済みの株数で計算し、実行済みの自社株買い15億円は自己資本の起点と還元の両方に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.14 倍・やや楽観 PER 9.7→12.12 倍・中立 PER 8.7→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%(循環+0.5・値決め+0.25・寿命+0.25)を足してk 8.25%。純現金で借金の上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。