結論
ヤーマンは、家庭用の美顔器や脱毛器をつくる美容家電メーカーだ。高周波(RF)で肌を温める美顔器で2017年から急成長し、売上は134億円から430億円まで膨らんだ。
筆者の結論は、今の値段は割高という見方だ。会社は2028年12月期に売上500億円、営業利益50億円以上を掲げる。だが、その計画はすでに一度引き下げられた。足元は営業赤字である。
つまずきの原因は中国だ。日本製品の不買運動に続き、2024年4月にRF美容機器の認証制度が始まり、中国向けの売上が激減した。国内もパナソニックやMTGなど競合が増えた。
売上は、ピークの430億円から12カ月換算で約260億円に縮んだ。営業利益は61億円の黒字から、10億円ほどの赤字に落ちた。
支えは現金だ。手元に145億円あり、借金はほぼない。自己資本比率は87%と、すぐに行き詰まる心配は小さい。
回復の芽もある。上海に新しい子会社をつくり、銀座旗艦店は単月で過去最高を記録した。ただ、会社の計画の通りには進みにくい。筆者は10年で売上を1.7倍、利益率を1割弱と置いた。この水準でも、今の時価総額を満たさない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヤーマンは「かつて高収益だったが、今は評価が難しい会社」という位置づけになる。
事業の質を見ると、ブランドはあるが堀は浅い。流行に左右され、競合が増え、広告費をかけ続けないと売れない。ここ数年の業績は、その弱さをはっきり示した。10年後も強い会社かどうか、筆者には確信が持てない。
資本の使い方は、守りは固い。現金が厚く、借金がない。ただ、過去の好況期に中国に傾いた経営判断は、安全を欠いていた。中国向け売掛金の貸倒引当金は、その代償の一つだ。
安全域は、現金の厚さにある。時価総額430億円のうち145億円が現金で、事業の分は285億円だ。それでも、事業の稼ぐ力は低い。10年後に営業利益率が1割弱まで戻る前提でも、今の時価総額には届かない。
10年後の価値を確率で加重すると、今の時価総額を大きく下回る。割高という結論だ。市場は、会社の計画(売上500億円、営業利益50億円)の達成を、かなり織り込んでいる。
筆者がいちばん気にしているのは、固定費の重さだ。売上が戻らない限り、利益は出ない。予測が難しい事業で、確信度は低めに置いた。
何で稼ぐ会社か
ヤーマンは、自宅で使う美容・健康機器を企画し、売っている。看板は「YA-MAN」ブランドの美顔器で、RF、つまり高周波で肌を温めて引き締める機器が柱だ。脱毛器、ヘアケア機器、化粧品も扱う。
製造は外部の工場に任せ、企画と販売に力を入れる会社である。売り方は4つに分かれる。
店販は、家電量販店やドラッグストアなどの店頭で売る。2025年12月期(8カ月)の売上は50億円。通販は、地上波のテレビ通販などで15億円。直販は、自社の公式通販サイトと直営店(銀座旗艦店など)で49億円。海外は54億円で、中国、東南アジア、欧米に売る。
製品は数万円から十数万円の高価格帯で、広告で見せて売る商売だ。粗利益率は55%と高い。そのぶん広告費や販売員の人件費がかさむ。売上が減ると、固定費が重くのしかかる構造である。
2025年は、決算期を4月から12月に変えた。このため2025年12月期は8カ月分の変則決算だ。会社が公表した2028年12月期の目標は、売上500億円(国内300億円、海外200億円)と営業利益50億円以上だ。美顔器だけで280億円を目指す。
優良さと弱いところ
ヤーマンの強みは、ブランドと開発力だ。RF美顔器を日本の家庭に広げた先駆者で、「ヤーマン」の名は美容家電の中で通りがよい。2017年から2023年は、営業利益率が14〜23%という高収益を続けた。
しかし堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。美顔器は流行の影響を強く受け、競合がすぐに似た製品を出す。パナソニックやMTGなど、資本力のある会社も参入した。特許や規制で守られた事業ではない。
最大の弱点は、一つの国に依存したことだ。中国での不買運動とRF規制で、売上が2年で4割減った。海外売上のうち中国は大きな割合を占めていた。さらに中国向けの売掛金に、約10億円の貸倒引当金を積んだ。
資本効率は崩れている。ROEは2018年の28%から、2025年はマイナスになった。ここ10年の中央値の18.7%は、もはや当てにならない。
経営は創業家が握る。社長の山﨑貴三代氏が約11%、別の山﨑家の株主が約16%を持つ。意思決定は速いが、外部のチェックは効きにくい。
財務は堅い。現金145億円、自己資本比率87%で、赤字が続いても数年は耐えられる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ヤーマンの市場は、家庭用の美容機器だ。日本では美顔器、脱毛器、ヘアドライヤーなどが、百貨店、量販店、通販、公式サイトで売られる。市場は成熟してきたが、高価格帯の製品は訪日客の需要にも支えられている。
2020年代前半は、自宅で美容を済ませる流れが広がった。RF美顔器は「エステに通わず家で」という価値で売れた。中国の消費者が日本の機器を大量に買い、ヤーマンの海外売上は急増した。
その後、環境が変わった。中国は2023年の処理水放出をきっかけに日本製品の不買が広がり、景気の減速も重なった。2024年4月にはRF美容機器の認証制度が導入され、認証のない製品は売れなくなった。ヤーマンは認可の取得を進めたが、売上の回復は遅い。
国内では競合が増えた。家電大手のパナソニックに加え、美容家電に特化したMTGなどが、美顔器の新製品を次々に投入する。新品の頻度が高く、広告に使う費用が増える。地上波のテレビ通販は、視聴者の減少で落ち込んだ。
一方で、訪日客の需要は戻りつつある。2026年1〜3月期は、インバウンド向けの高価格帯と、マスク型の美顔器が好調だった。海外は欧米や東南アジアにも広げる。ただ、世界に通用するブランドに育つには、時間がかかる。
美容機器の需要そのものは、人口減でも消えにくい。問題は、流行に左右される価格競争の中で、利益を残せるかだ。
資本政策と M&A
還元は、小さな配当を維持する方針だ。赤字の年でも減らしていない。自社株は発行済みの5.7%を保有している。
最大の特徴は、現金145億円を抱えていることだ。借金はほぼない。赤字が続けば現金は減るが、会社は黒字化を最優先に掲げている。余った現金を株主に戻す方針は、はっきりしていない。創業家が約27%を持つ構造もあり、筆者はこの現金のうち、事業に使う分を除いた約80億円を、半分だけ株主に届くと見る。
M&Aは目立った動きがない。のれん等の減損が5.4億円出ており、過去の投資が重荷になっている面がある。中国に上海の新しい子会社をつくったのは、規制への対応と、現地販売の立て直しが狙いだ。
中期経営計画は、2026年3月に見直された。以前は2028年4月期に売上700億円、営業利益70億円以上だったが、新しい計画は2028年12月期に売上500億円、営業利益50億円以上に下げた。ROE15%以上、美顔器280億円、海外比率40%、直販比率50%も掲げる。
同じ会社が目標を一度下げた事実は重い。筆者は新計画の達成確率を高くは見ない。買収の可能性は参考値で18.2%と、中程度だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中国の最悪期は過ぎた。RF美容機器の認可を取得し、4月には上海に新しい子会社をつくった。規制のハードルを越えた会社は、競合に対して優位に立つ。中国で売れる製品は限られ、先に認可を取った強みが生きる。
足元の回復も確かだ。2026年1〜3月期は、インバウンド向けの高価格帯「YA-MAN THE MIYABI」とマスク型の美顔器が好調だった。銀座旗艦店は5月に単月で過去最高を更新した。上半期は営業黒字に転じ、海外売上は通期予想の8割を半年で超えた。
固定費は大きいが、売上が戻れば利益が一気に増える。2023年4月期は、売上430億円で営業利益が61億円だった。同じ規模に戻れば、利益率は1割を超える。会社の計画は売上500億円、営業利益50億円で、実績のある水準だ。
現金145億円と無借金の財務は、投資を続ける体力になる。欧米と東南アジアで、日本発の美容家電ブランドとして認知が広がれば、海外売上は3倍になる。
ブランドと現金、回復の兆しがそろった今の時価総額は、安い入り口かもしれない。
慎重な見方
まず、会社が目標を一度引き下げた事実を重く見る。以前の計画は2028年4月期に売上700億円だった。いまは2028年12月期に500億円だ。それでも、足元の12カ月換算の売上は260億円で、倍近く伸ばす必要がある。年率で20%を超える成長が要り、実績の裏づけはない。
中国は戻らない。日本製品の不買と景気の減速に加え、RF規制の認証を通した競合が現地にいる。中国の消費者は、安価な現地ブランドに慣れた。貸倒引当金を積んだ事実は、取引先の信用にも疑問を残す。
国内は競合が増え、新製品の頻度が上がっている。パナソニックやMTGなどに比べ、ヤーマンの広告に使える体力は限られる。地上波のテレビ通販は縮み、訪日客の需要は為替と情勢に左右される。
利益の構造にも問題がある。粗利益率は55%と高いが、広告費と人件費でほぼ消える。売上が3割減ると赤字になり、2024年と2025年がそれを示した。
現金145億円は強みだが、赤字が続けば減る一方だ。創業家が約27%を持つ構造では、少数株主への還元も限られる。
どちらに重みを置いたか
中国の回復と、訪日客の需要は確かな追い風だ。ただ、会社が計画を一度下げた事実と、固定費の重い構造は事実で、慎重な見方が重い。中立を4割弱に置き、やや悲観を2割強、悲観を12%とした。
10年後の価値は、今の時価総額を大きく下回る。回復の期待が、すでに今の値段に織り込まれているためだ。上振れの筋書きでも、計画の水準に届く程度にとどまる。現金の厚さが下値を支えるので、悲観の確率は1割強に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 710 円391 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 107 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 385 円212 億円、今との差 −50.4%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,690 円930 億円 | 209 円115 億円 | +144.7% | +9.4% | 152 円84 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,130 円622 億円 | 147 円81 億円 | +64.7% | +5.1% | 256 円141 億円 |
| 中立 | 36% | 807 円444 億円 | 125 円69 億円 | +20.2% | +1.9% | 336 円185 億円 |
| やや悲観 | 24% | 178 円98 億円 | 45 円25 億円 | −71.2% | −11.7% | 54 円30 億円 |
| 悲観 | 12% | 128 円71 億円 | 36 円20 億円 | −78.8% | −14.4% | 20 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 710 円391 億円 | 107 円59 億円 | +5.2% | +0.5% | 817 円449 億円 |
今の株価時価総額 776 円427 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 中国と海外が回復し、計画線に届く 利益 62 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 1,690 円930 億円
中国で認可を取った強みが生き、現地の売上が戻る。欧米と東南アジアでは、日本発の美容家電ブランドとして認知が広がり、海外の数量は3倍に増える。
国内は高価格帯が定着し、訪日客の需要も続く。直販は、銀座旗艦店とECが育ち、数量が倍近くになる。国内卸は数量が微増し、単価も物価並みに上がる。
固定費が売上に比べて小さくなり、営業利益率は13%台に戻る。2023年4月期の水準に近い姿だ。
現金は貯め込まず、一部を自社株買いなどに回してROEは1割台半ばに届く。
この筋書きの前提は、中国の規制対応が済み、競合に先んじて販路を戻せることだ。認可の取得は終わっており、上海の子会社が現地の営業を担う。欧米は、日本発の高機能な美顔器が受け入れられる余地があり、ブランドの積み上げが売上に効いてくる。
- 国内卸(店販・通販):数量 35.2(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.92(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 138 億円・営業利益 19 億円。家電量販店・通販で高価格帯が定着し、数量も微増
- 直販(自社EC・直営店):数量 29.2(販売台数(万台、推定))× 価格 6.02(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 176 億円・営業利益 18 億円。銀座旗艦店とEC、訪日客で数量が倍近くに
- 海外(その他を含む):数量 76.5(販売台数(万台、推定))× 価格 4.56(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 349 億円・営業利益 52 億円。中国の認可取得後の回復に加え欧米・東南アジアで数量が3倍
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 14.19 倍、時価総額 930 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の回復と新市場の拡大が10年そろう必要があり、過去の実績はあるが再現は難しい。8%に置いた。
やや楽観 20% 海外が戻り、固定費を吸収する 利益 43 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,130 円622 億円
中国の認可取得が実を結び、現地の売上がじわじわ戻る。欧米・東南アジアも広がり、海外の数量は2倍強になる。
国内卸は数量が横ばいで、単価は物価並みに上がる。直販は旗艦店とECで数量が5割増える。固定費の吸収が進み、営業利益率は1割に乗る。
会社の計画線(売上500億円、営業利益50億円)にほぼ近づく姿だ。ただし計画の期限より、かなり遅れる。
この筋書きは、中立よりも海外の戻りが早く、直販の伸びが固定費の吸収を助ける点が違う。ただし会社の計画の期限である2028年には届かず、数年遅れで近づく形だ。国内の単価は物価並みに上がる。
- 国内卸(店販・通販):数量 32.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.86(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 123 億円・営業利益 14 億円。数量は横ばい、単価は物価並み
- 直販(自社EC・直営店):数量 25.1(販売台数(万台、推定))× 価格 5.93(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 149 億円・営業利益 10 億円。直販の拡大と固定費の吸収が進む
- 海外(その他を含む):数量 61.2(販売台数(万台、推定))× 価格 4.49(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 275 億円・営業利益 36 億円。中国の回復と新市場で計画線に近づく
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 13.42 倍、時価総額 622 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の認可取得と訪日客の回復が実績で出始めており、計画線に近づく筋書き。2割に置いた。
中立 36% 回復はするが、利益率は1割弱 利益 31 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 807 円444 億円
海外は中国の回復が半分程度にとどまり、欧米・東南アジアが補って、数量は8割増える。国内卸は数量が微減し、単価は競争で物価に届かない。直販は旗艦店とECで数量が3割台半ば増える。
売上は10年で1.7倍の444億円になる。会社の計画(2028年に500億円)より遅いペースだ。固定費の吸収が進み、営業利益率は1割弱まで戻る。
過去の高収益(14〜23%)には届かない。流行と競争の中で、広告費をかけ続けないと売れないためだ。
配当は性向4割程度で、現金は大きく動かない。
国内卸の単価は、量販店と通販の値引き競争で物価に届かず、10年で1.25倍にとどまる。海外と直販の単価は、高価格帯の比率が上がって物価に近づく。
- 国内卸(店販・通販):数量 30.4(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.77(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 115 億円・営業利益 12 億円。数量は微減、単価は物価に届かない
- 直販(自社EC・直営店):数量 21.9(販売台数(万台、推定))× 価格 5.84(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 128 億円・営業利益 8 億円。旗艦店とECが育ち、数量は3割台半ば増
- 海外(その他を含む):数量 45.9(販売台数(万台、推定))× 価格 4.38(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 201 億円・営業利益 24 億円。中国は規制対応後も半値戻し、欧米・東南アジアが補う
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.77 倍、時価総額 444 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が戻り、国内は横ばいで、利益率が回復するが、過去の高収益には戻らない。最も蓋然性が高く4割弱。
やや悲観 24% 競争と中国低迷で薄利が続く 利益 7 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 178 円98 億円
中国は戻らず、現地ブランドとの競争が続く。海外の数量は3割増にとどまり、単価は物価に追いつかない。国内卸は通販の縮小で数量が1割以上減る。
直販は店舗の固定費を吸収できず、損益はトントンになる。営業利益率は2%台で、薄い黒字が続く。
配当は維持しようとするが、現金は少しずつ減る。ROEは3%を割り、資本コストを大きく下回る。会社の計画は届かない。
この筋書きでは、売上は320億円にとどまり、会社の計画の3分の2に届かない。広告費を削ると売上が落ち、増やすと利益が出ないという悪循環に陥る。人員の削減で黒字を保つ程度の姿だ。
- 国内卸(店販・通販):数量 27.2(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.46(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 3 億円。通販・量販の縮小が続く
- 直販(自社EC・直営店):数量 17.0(販売台数(万台、推定))× 価格 5.39(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 92 億円・営業利益 0 億円。固定費を吸収できず損益が均衡
- 海外(その他を含む):数量 33.2(販売台数(万台、推定))× 価格 4.03(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 134 億円・営業利益 5 億円。中国が戻らず、新市場も伸び悩む
倍率:事業のROE 2.7%はk 8.5%以下なので、正当化PERの上限は1÷k=11.4倍(ためた利益は額面未満)。この筋書きの稼ぐ力の弱さを反映して上限の8.0割の9.39倍に置いた。余った現金は戻り方0.5を掛けて足した。
確率:中国が戻らず、国内の競争が続いて、薄利から抜けられない筋書き。計画を一度引き下げた実績から、2割強と厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:流行と規制に取り残される 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 128 円71 億円
流行が移り、RF美顔器の需要がしぼむ。中国は実質撤退となり、他の海外市場も採算に乗らない。国内は競合に押され、取扱店が減る。
売上は今の12カ月換算より小さくなり、営業赤字が続く。広告費と人件費、店舗の固定費が重く、現金を食いつぶす。
配当は大きく削られ、リストラで人員と店舗を減らす。それでも黒字には戻らない。
現金は残るが、10年の赤字で目減りし、評価は純資産の半分以下に落ちる。
売上の縮小と固定費の重さが、数年のうちに現金を減らす。創業家の意向で事業は続くが、株主の取り分は純現金の半分程度になる。流行の移り変わりが速い事業では、一度落ちた会社が戻るのは難しい。
- 国内卸(店販・通販):数量 19.2(出荷台数(万台、推定))× 価格 3.16(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 −1 億円。競合に押され、取り扱いも縮小
- 直販(自社EC・直営店):数量 11.3(販売台数(万台、推定))× 価格 4.94(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 −5 億円。店舗の固定費が重く赤字
- 海外(その他を含む):数量 20.4(販売台数(万台、推定))× 価格 3.68(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 75 億円・営業利益 −4 億円。中国から実質撤退、他市場も採算に乗らない
倍率:悲観は赤字で、PERは当てられない。今の自己資本244億円に掛ける床の倍率として0.29倍に置いた。純現金145億円に戻り方0.5を掛けた約72億円とほぼ同じ水準。10年の赤字で現金が目減りする前提。市場の評価は根拠にしていない。
確率:流行の移り変わりと中国の規制で、売上がさらに縮み、赤字が続く構造的な負け。現金が下値を支えるため、1割強に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内卸(店販・通販)
家電量販店・ドラッグストアなどの店頭と、地上波のテレビ通販。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.0 | 3.01 | 96 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.4 | 3.77 | 115 | 12 |
取り方:12カ月換算(8カ月決算×1.5)。台数は非開示。1台約3万円とみて約32万台と推定し、売上を台数で割って単価を逆算した。営業利益は全社共通費(年約49億円)を売上比で配賦した仮置き。
直販(自社EC・直営店)
公式通販サイトと直営店(銀座旗艦店など)での販売。
| 数量販売台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.2 | 4.49 | 73 | −7 |
| 10 年後 中立 | 21.9 | 5.84 | 128 | 8 |
取り方:12カ月換算。高価格帯が中心とみて1台約4.5万円、約16万台と推定した。営業利益は共通費を売上比で配賦した仮置きで赤字。
海外(その他を含む)
中国、東南アジア、欧米向けの販売。上海に新しい子会社を設立。
| 数量販売台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.5 | 3.51 | 89 | −5 |
| 10 年後 中立 | 45.9 | 4.38 | 201 | 24 |
取り方:12カ月換算(海外とその他の合計)。1台約3.5万円、約25万台と推定した。中国向けはRF規制で激減しており、数量は過去のピークより大きく低い。営業利益は共通費の配賦後の仮置き。
リスクと懸念
中国の規制と不買
2023年の不買運動と、2024年4月のRF美容機器の認証制度で、中国向けの売上が激減した。認可を取得したが回復は遅く、政策の再変更のリスクも残る。
固定費の重さ
粗利益率は55%と高いが、広告費と人件費で消える。売上が3割減ると赤字になることを、2024年4月期と2025年12月期が示した。
競合の増加と新製品の頻度
パナソニックやMTGなどが美顔器を次々に投入する。広告に使える資金で劣れば、国内シェアを失い、値段も上げられない。
目標の未達
以前の計画(2028年4月期に売上700億円)を引き下げ、新計画は2028年12月期に500億円だ。足元は12カ月換算で約260億円と、ほぼ倍の成長が要る。
チャネルの縮小
地上波のテレビ通販は不振で、国内の通販売上は縮んだ。訪日客に頼る店頭も為替と情勢に左右される。
創業家の支配
創業家が約27%を持ち、現金の使い方や買収の判断は、少数株主に影響されにくい。ガバナンスの外部チェックが弱い。
のれんの減損
2025年12月期は、のれん等の減損5.4億円を出した。過去の投資の回収が計画を下回った例で、今後も追加の減損が出る可能性がある。
今後の分かれ目
- 中国の売上が2期連続で前年を上回る
- 認可取得の効果が出ている証拠で、楽観側の確率を上げる。
- 営業利益が2期連続で赤字に戻る
- 固定費の重さが解消されておらず、悲観側へ確率を寄せる。
- 2026年12月期の通期予想(営業利益4.5億円)を達成できない
- 2028年の計画(営業利益50億円)の達成可能性が一段と下がる。
- 自社株買いを決議し、現金の一部を戻す
- 余った現金の戻り方が1.0に近づき、価値が上がる。
- 創業家が大株主として株式の売却や非公開化を示す
- 少数株主の取り分が見直され、買収の可能性が高まる。
- 競合が中国向けのRF認可を取って現地で価格を下げる
- 中国の回復が遅れ、海外の数量が伸びなくなる。
見ておくもの
- 中国の売上と、RF美顔器の認可後の販売実績
- 営業利益(通期予想4.5億円の達成)
- 銀座旗艦店とECの売上、訪日客の動向
- パナソニック・MTGなど競合の新製品
- 現金残高と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、3つの販路の台数×単価で10年後の売上と利益を積み上げ、その時点のROEとk 8.5%から正当化PERを決めた。堀が弱いので、中立は上限の8.5割(10.4倍)に置いた。会社の計画(2028年に営業利益50億円)は根拠にせず、過去の高収益(14〜23%)にも戻らないと置いた。悲観は赤字で、純現金の半分を床にした。市場の倍率は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→14.19 倍・やや楽観 PER 10.9→13.42 倍・中立 PER 10.4→12.77 倍・やや悲観 PER 9.1→9.39 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。