結論
SCREENホールディングスは半導体ウェハーの枚葉洗浄装置で世界シェア38%前後を握る首位メーカーで、コータデベロッパ・熱処理・一部成膜装置を合わせた半導体製造装置(SPE)事業が売上の8割強を占める。顧客はTSMC・サムスン・SKハイニックス・マイクロンなど、東京エレクトロン・アドバンテストと重なる最先端ファウンドリ・メモリ各社で、AIデータセンター向けの先端ロジック・HBMメモリ投資がウェハー1枚あたりの洗浄回数を押し上げている。中期経営計画「Value Up Further 2026」では2025〜2027年3月期の3カ年累計売上高1.8兆円・営業利益率19%以上・ROIC15%以上を掲げ、2033年3月期には売上高1兆円・営業利益率20%以上という長期目標を描く。残りはGA(グラフィックアーツ機器)・FT(ディスプレイ製造装置・成膜装置)・PE(プリント基板関連機器)という非中核の成熟3事業である。
最大の気がかりは中国だ。売上の4割超が中国向けで、東京エレクトロンの34%より高い。洗浄装置の中国国産化率はすでに66%まで進んでいるとされ、北方華創(Naura)などの追い上げは、東京エレクトロンより直接的な脅威になる。
筆者の結論は「割高」だ。10年後の中立でも、時価総額は今の0.95倍にとどまる。やや悲観と悲観の確率も合わせると、本質価値は今の時価総額を3割ほど下回る。無借金で自己資本比率も67%超と、財務は安全弁になる。それでも今のPER28倍、PBR5倍超は、洗浄装置の首位が続き、中国リスクが軽く済むことをある程度前提にした値段だ。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、SCREENは洗浄装置の技術的な優位を保つための研究開発投資(IBMとの連携拠点新設など)を続ける必要があり、稼いだ利益のすべてが株主のものにはならない。無借金で自己資本比率も高く、キャッシュを生み出す力自体は強いが、中国の国産化という構造的な逆風に対する再投資負担は今後も続くとバリュー投資家は考えるだろう。
堀の幅と持続については、枚葉洗浄装置でのシェア38%という地位を評価するはずだが、その堀は東京エレクトロンのコータデベロッパ(9割シェア)ほど絶対的ではなく、中国メーカーの国産化率66%という既に進んだ侵食を軽視すべきではないと判断する。10年後も洗浄技術で優位を保てるかという一次審査で、慎重さを保つはずだ。
資本配分については、中期経営計画でROIC15%以上を掲げ、無理な多角化を避けて洗浄技術の深掘りに資金を使う規律を評価する一方、安全域という最後の判断軸では、現在の株価が直近実績に対して高い倍率(PER28倍・PBR5倍超)で評価されており、AI投資の持続をかなり強く前提にした値段だと見抜くはずだ。
何で稼ぐ会社か
収益の8割強をSPE(半導体製造装置)事業が占め、枚葉(まいよう)洗浄装置で世界シェア38%前後の首位、コータデベロッパ・熱処理装置、一部の成膜装置を合わせて最先端ファウンドリ・メモリ各社に供給する。顧客はTSMC・サムスン・SKハイニックス・マイクロン・インテルなど、東京エレクトロン・アドバンテスト・レーザーテックと重なる最先端の顧客基盤で、装置納入後の保守・部品・改造(アフターサービス)も安定収益源になっている。
残りはGA(グラフィックアーツ機器、CTP版下・デジタル印刷機)約1割、FT(ディスプレイ製造装置・成膜装置)約7%、PE(プリント基板関連露光装置)約2%の3事業で、いずれも半導体以外の成熟事業として扱う。GAは商業印刷・パッケージ印刷のオフセットからデジタルへの構造転換、FTは中国・韓国パネルメーカーの有機ELパネル投資サイクル、PEは基板の高密度化に連動する小規模事業で、SPEほどの成長は見込みにくい。
研究開発はIBMと連携した海外拠点を新設し、洗浄・熱処理・アドバンスドパッケージングの要素技術開発と装置開発期間の短縮に充てている。GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ・裏面給電・先進パッケージングといった工程転換のたびに、洗浄回数そのものが増える構造があり、これがSCREENの数量×単価の伸びの源泉になっている。
優良さと弱いところ
枚葉洗浄装置での世界シェア38%前後という首位の地位は、ウェハー表面の微粒子・薄膜残渣を均一に除去する技術と、顧客の生産ラインに深く組み込まれた共同開発の蓄積が堀になっている。装置を入れ替えるコスト(スイッチングコスト)も高く、簡単には崩れない。ROEは直近で19〜24%程度、無借金・自己資本比率67%超という財務の強さも併せ持つ。
弱点は、洗浄装置の中国国産化率がすでに66%まで進んでおり、北方華創(Naura)など中国メーカーが成熟工程を中心にシェアを奪う構図が、東京エレクトロンの34%よりも高い中国売上比率(4割超)を通じて、より直接的な業績への影響として表れやすい点である。また事業規模が東京エレクトロン・アドバンテストより小さく、研究開発投資の絶対額で劣後する場面では、GAA・裏面給電といった工程転換で競合(アプライドマテリアルズ・Lam Research)に先行されるリスクも抱える。GA・FT・PEという非中核の成熟事業が売上の2割弱を占め、SPEの成長スピードを薄める面もある。経営陣は中期経営計画で成長投資(研究開発1,100億円・戦略投資800億円)を明示しており、資本配分の規律は保たれているが、大型M&Aで事業領域を広げる動きは乏しく、洗浄装置を軸にした一本足打法的な性格も残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体製造装置の世界需要(WFE)は2025年の1,170億ドル前後から、2026〜2027年に1,500〜1,900億ドル超へ急拡大する見通しで、AIデータセンター向けの先端ロジック・HBM投資が牽引役になっている。洗浄装置市場はこの中で2025〜2026年に65億〜70億ドル規模とみられ、SCREENがシェア38%前後で首位、Lam Researchが2割弱で追う構図にある。成膜・エッチングはアプライドマテリアルズ・Lam Research・東京エレクトロン、検査・計測はKLA・レーザーテックが並び、SCREENは洗浄・コータデベロッパ・熱処理という工程で独自の地位を築いている。
技術面では、トランジスタ構造のGAA(ゲートオールアラウンド)移行、裏面給電という電源配線の裏面化、先進パッケージングの普及が、洗浄工程の回数そのものを増やす方向に働いており、SCREENにとっては数量の伸びの機会になる。一方、中国は国家戦略として半導体装置の国産化を進め、洗浄装置の中国国産化率はすでに66%まで達しているとされ、北方華創(Naura)を中心とする中国メーカーが成熟工程でシェアを奪う構図が指摘される。SCREENの中国売上比率は4割超と、東京エレクトロンの34%よりも高く、輸出規制の強化・緩和のたびに業績への影響も相対的に大きい。
業界は歴史的に2〜4年周期で山と谷を繰り返しており、2026年3月期は前年比減収というやや一服した年だったが、会社は2027年3月期・2028年3月期に売上高7,430億円・8,500億円という回復計画を掲げている。中期経営計画「Value Up Further 2026」では3カ年累計売上高1.8兆円・営業利益率19%以上、2033年3月期には売上高1兆円という長期目標が示されている。
資本政策と M&A
配当政策は連結配当性向30%以上を目処とし、2026年3月期は期末配当を上方修正して過去最高の年間配当となった。2025年には自己株式取得とその消却を実施し、純資産の増加と並行して株主還元を進めている。中期経営計画ではROIC15%以上という資本効率の目標も掲げ、研究開発1,100億円・戦略投資800億円を含む約3,600億円の成長投資を計画している。
大型M&Aによる事業領域の拡大は目立たず、IBMとの研究開発連携のような技術アライアンス中心の資本配分が続いている。無借金・高い自己資本比率という財務基盤を背景に、業界循環の谷でも研究開発投資を維持できる余力はあるが、GA・FT・PEといった非中核事業の整理・売却といった再編の可能性は今後の論点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIデータセンター向けの投資はまだ序盤で、洗浄装置市場も2025年の65億〜70億ドルからさらに拡大が見込まれる。GAAトランジスタ・裏面給電・先進パッケージングという複数の工程転換は、いずれも洗浄回数そのものを増やす方向に働き、SCREENが首位を握る枚葉洗浄装置の需要を数量の面で押し上げる。会社自身も中期経営計画で3カ年累計売上高1.8兆円・営業利益率19%以上、2033年3月期には売上高1兆円という過去最高水準の目標を掲げ、2027年3月期・2028年3月期は会社計画でも増収増益に回帰する見通しが示されている。
中国の国産化は成熟工程が中心で、最先端工程では依然SCREEN・東京エレクトロン・アプライドマテリアルズ・Lam Researchという日米連合への依存が続く構造がすぐには崩れない。TSMC・サムスンの先端ロジック投資、SKハイニックス・マイクロンのHBM投資という複数の需要の波が重なっており、一つの顧客に業績が集中しているわけではない。
無借金で自己資本比率も高く、IBMとの研究開発連携拠点新設のような技術アライアンスを通じて、洗浄・熱処理・アドバンスドパッケージングの要素技術開発を加速できる財務基盤がある。GA・FT・PEという非中核事業も、ディスプレイ・印刷のデジタル化・高密度化という構造変化の中で緩やかな成長を続けられる余地がある。
慎重な見方
洗浄装置の中国国産化率は既に66%まで進んでおり、北方華創(Naura)をはじめとする中国メーカーが成熟工程のシェアを奪う構図は、東京エレクトロンの34%よりも高いSCREENの中国売上比率(4割超)を通じて、より直接的に業績を揺さぶる。米国の輸出規制が強化されればその分が直接失われる一方、規制が緩んでも中国政府の国産化戦略自体は止まらず、どちらに転んでも中国関連の収益は長期的に縮んでいく板挟みの構図にある。
半導体投資サイクルはこれまでも好況の後に必ず深い谷を作ってきた(2008年のリーマンショックでは需要が数十%単位で消えた)。2026年3月期の売上高が前年比で減少した事実は、AI投資という新しい需要の柱があっても循環そのものが消えたわけではないことを示している。GAA・裏面給電という工程転換も、アプライドマテリアルズ・Lam Researchが新工程での洗浄・成膜技術で先行すれば、SCREENの既存シェアがそのまま引き継がれるとは限らない。
現在の株価はPER28倍・PBR5倍超と直近実績に対して高い倍率を付けており、これは「洗浄装置の首位がこのまま続く」という期待が強く乗った値段である。東京エレクトロン・アドバンテスト・レーザーテックという同じ領域の大型3社と比べても、SCREENは事業規模が小さく中国依存度が高い分、業界の循環と国産化の二重のリスクに対する耐性は相対的に弱い。
どちらに重みを置いたか
事業の堀と財務の強さでは強気の見方が優勢だが、中国の洗浄装置国産化率66%という既に進んだ侵食は、東京エレクトロンより直接的なリスクとして無視できない。本質価値の計算では、10年後の中立は今の時価総額の0.95倍にとどまり、やや悲観・悲観まで入れた総合では今の時価総額を3割ほど下回って割高になる。これは首位の実力を否定するものではなく、中国リスクと循環の重さをやや厚めに見た結果である。確率は中立をやや悲観側に寄せ、中国リスクの重みをやや厚めに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 20,764 円3.93 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,391 円8,306 億円)。 今の値に割り戻すと 13,134 円2.48 兆円、今との差 +11.6%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 47,873 円9.05 兆円 | 6,575 円1.24 兆円 | +362.6% | +16.6% | 6,534 円1.24 兆円 |
| やや楽観 | 23% | 32,915 円6.23 兆円 | 5,564 円1.05 兆円 | +226.9% | +12.6% | 8,850 円1.67 兆円 |
| 中立 | 33% | 19,462 円3.68 兆円 | 4,644 円8,784 億円 | +104.8% | +7.4% | 7,955 円1.50 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 4,503 円8,517 億円 | 3,098 円5,859 億円 | −35.4% | −4.3% | 1,672 円3,163 億円 |
| 悲観 | 10% | 360 円680 億円 | 1,084 円2,050 億円 | −87.7% | −18.9% | 144 円273 億円 |
| 加重平均 | 100% | 20,764 円3.93 兆円 | 4,391 円8,306 億円 | +113.7% | +7.9% | 25,156 円4.76 兆円 |
今の株価時価総額 11,770 円2.23 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% シェアを広げながら市場も拡大 利益 4,063 億円 · PER 21.9 倍 · 株価時価総額 47,873 円9.05 兆円
10年間でAI・先進パッケージング・次世代メモリの複数の投資波が重なり、SCREEN型装置市場は実質184億ドル(名目247億ドル)規模に拡大する。GAA世代、裏面給電、さらにその先の技術転換が連続して起き、SCREENはそのたびに枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理で新規採用を獲得し、シェアを45%まで広げる。TSMC・サムスン・インテルの最先端ロジック投資とSKハイニックス・マイクロンのHBM世代更新投資がともに10年間途切れず続き、営業利益率33%を維持する。中国はNaura・AMECを中心に装置の国産化を進めるが、最先端では依然SCREEN・東京エレクトロン・アプライドマテリアルズ・Lam Researchという日米連合に依存する構図が続く。無借金の財務を生かして自社株買いも継続し、ROEは26%前後の高水準を10年間保つ、同社にとって最も理想的な10年になる。
- 半導体製造装置(SPE):数量 185(SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質))× 価格 90(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 16,697 億円・営業利益 5,510 億円。市場184億ドル(実質)×シェア45%、営業利益率33%
- GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器):数量 3,600(GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定))× 価格 0.50(1台あたり平均売上(億円、名目))→ 売上 1,804 億円・営業利益 253 億円。3,600台×1台0.501億円、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 4,063 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.9 倍。全体の PER 21.9 倍、時価総額 88,980 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年の間にGAA・裏面給電・先進パッケージングの複数の波で装置更新需要を取り切り、かつ中国リスクを乗り越える必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 23% AI主導の成長が主軸として定着 利益 2,918 億円 · PER 21.1 倍 · 株価時価総額 32,915 円6.23 兆円
SCREEN型装置市場は実質163億ドル(名目218億ドル)まで拡大し、シェアは42%に改善。営業利益率29%は現状からさらに伸び、過去最高圏を10年近く維持する。TSMC・サムスンの最先端ロジック投資とSKハイニックス・マイクロンのHBM投資が主軸として定着し、裏面給電やGAAといった工程転換でもアプライドマテリアルズ・Lam Researchとの競争に競り勝ち続ける。中国向け比率は輸出規制の強化と国産化の進展で低下するが、米国・台湾・インドでの新設工場向け需要の取り込みでその分をカバーする。GA・FT・PEも緩やかな構造転換の中で安定した収益源を保ち、AI関連の投資は学習向けの一つの波で終わらず、推論向けやエッジ向けなど複数の需要の波が重なって成長の裾野が広がる10年になる。
- 半導体製造装置(SPE):数量 163(SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質))× 価格 84(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 13,744 億円・営業利益 3,986 億円。市場163億ドル(実質)×シェア42%、営業利益率29%
- GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器):数量 3,400(GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定))× 価格 0.50(1台あたり平均売上(億円、名目))→ 売上 1,690 億円・営業利益 186 億円。3,400台×1台0.497億円、営業利益率11%
倍率:事業の純利益 2,918 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.1 倍。全体の PER 21.11 倍、時価総額 61,599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI関連投資が業界の主役として定着するという、多くの業界団体見通しの上位レンジに近い想定。
中立 33% 中立:市場は構造的に大きくなるが倍率は平常化 利益 1,913 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 19,462 円3.68 兆円
10年後のSCREEN型装置市場は実質141億ドル(名目189億ドル)規模に構造的に拡大するが、シェアは39%で現状からの改善は小幅にとどまる。TSMC・サムスン・インテルの最先端ロジック投資は続くが、GAA・裏面給電という工程転換のたびにアプライドマテリアルズ・Lam Research・東京エレクトロンとのシェアの奪い合いが起き、SCREENが得るものと失うものが相殺し合う。営業利益率24%は過去の最良期に近い水準で、過去ほど極端な高倍率は付かない。中国向け比率はNaura・AMECの国産化でさらに低下し、代わりに米国・インドなどの新規拠点需要が補う。GA・FT・PEは緩やかに縮小・成熟する中、SCREENの優良さ(堀・資本効率)は維持されるものの、特別な超過成長は一巡した「普通に強い優良企業」としての評価に収まる10年になる。
- 半導体製造装置(SPE):数量 141(SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質))× 価格 78(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 11,061 億円・営業利益 2,655 億円。市場141億ドル(実質)×シェア39%、営業利益率 24%
- GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器):数量 3,100(GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定))× 価格 0.49(1台あたり平均売上(億円、名目))→ 売上 1,519 億円・営業利益 122 億円。3,100台×1台0.49億円、営業利益率8%
倍率:事業の純利益 1,913 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.24 倍、時価総額 36,806 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界団体・会社の長期見通しの中心値と、過去の循環を踏まえた倍率の平常化を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 22% シェアがじわり侵食される 利益 881 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 4,503 円8,517 億円
中国の装置国産化がNaura・AMECを中心に中位工程からさらに広がり、SCREENのシェアは34%まで低下。SCREEN型装置市場自体も実質119億ドル(名目160億ドル)にとどまり、TSMC・サムスンの最先端投資は続くもののペースが鈍り、営業利益率は16%まで低下する。AIデータセンター投資も一段落し、成長の勢いは過去10年ほど強くない。GAAや裏面給電への対応はアプライドマテリアルズ・Lam Researchにも先行される場面が増え、かつてのような独走状態ではなくなる。それでも技術の核心(枚葉洗浄装置)では優位を保ち、事業自体が崩れるわけではなく、配当・自社株買いによる株主還元も規模を縮小しつつ継続される10年になる。
- 半導体製造装置(SPE):数量 119(SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質))× 価格 68(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 8,160 億円・営業利益 1,306 億円。市場119億ドル(実質)×シェア34%、営業利益率16%
- GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器):数量 2,700(GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定))× 価格 0.47(1台あたり平均売上(億円、名目))→ 売上 1,269 億円・営業利益 38 億円。2,700台×1台0.47億円、営業利益率3%
倍率:ROE 11.0%(事業の純利益÷自己資本)。k 7.5%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC=k+残る割合 1/2×(ROE−k)=9.7%、長期の成長率 g 4.5% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.5 倍。中国の国産化が広がり利益率が16%まで下がる局面なので、上限の 7.0 割の 9.4 倍に置いた。
確率:中国の国産化が中位工程を越えて広がり、SCREEN型装置市場の伸び自体も鈍化する想定。SEMIの長期見通しのうち弱めのレンジに相当。
悲観 10% 構造的に優良さを失う 利益 76 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 360 円680 億円
Naura・AMECをはじめとする中国の国産装置メーカーが最先端工程にも食い込み、SCREENの世界シェアは22%まで低下する。TSMC・サムスンが中国国内生産の一部を国産装置に切り替え、SKハイニックス・マイクロンのHBM投資も米中対立の激化で不透明になる。同時にAI投資の反動とメモリの供給過剰が重なり、SCREEN型装置市場自体も実質136億ドル(名目182億ドル)にとどまる中でシェア損失が業績を直撃。東京エレクトロン・アプライドマテリアルズも同様の打撃を受けるが、SCREENは中国依存度が高かった分だけ相対的に傷が深い。営業利益率は5%まで落ち込み、GA・FT・PEも合計で赤字。研究開発投資は維持するため利益を圧迫する。配当は無借金で積み上げた手元資金と純現金の取り崩しを一部あてて維持する。枚葉洗浄装置での技術優位は残るが、かつての「首位」という評価は市場から外れ、普通の資本財企業として評価されるようになる10年になる。
- 半導体製造装置(SPE):数量 136(SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質))× 価格 44(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 6,001 億円・営業利益 300 億円。市場136億ドル(実質)×シェア22%、営業利益率5%
- GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器):数量 2,200(GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定))× 価格 0.43(1台あたり平均売上(億円、名目))→ 売上 946 億円・営業利益 −76 億円。2,200台×1台0.43億円、営業利益率-8%
倍率:悲観の純利益 76 億円は ROE 1.4% で、ためた利益は額面未満の価値しかない。やや悲観の時価総額÷純利益 9.4 倍より悲観ほど低く置くので、その約 95% の 8.9 倍(時価総額 680.1 億円)とした(稼ぐ力 純利益÷k も超えない)。自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。
確率:中国の国産化が最先端工程にまで及び、かつ循環の谷が同時に来るという複合シナリオ。技術優位の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体製造装置(SPE)
枚葉洗浄装置を中核に、コータデベロッパ・熱処理・一部成膜装置を含む、ウェハー工程向けの主力装置群。
| 数量SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理、億ドル・実質) | 価格実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.1 | 57 | 4,853 | 1,116 |
| 10 年後 中立 | 141 | 78 | 11,061 | 2,655 |
取り方:SCREENは枚葉洗浄装置で世界シェア38%(2025年、単独首位)を持つ。コータデベロッパ・熱処理・一部成膜装置も同じ顧客基盤で売っているため、これらを合わせた「SCREEN型装置市場」をSPE売上4,853億円とシェア38%から逆算すると約85億ドル(2025年)となる。シェア38%×150円で1ドルあたりの売上(価格)を置き、物価3%の名目で3年1.09倍・10年1.34倍とした。市場規模自体(実質の数量)は、TSMC・サムスン・SKハイニックス・マイクロンなどの最先端ロジック・メモリ投資でWFE市場と同様に伸びるとみて、中立で3年1.56倍・10年1.66倍(東京エレクトロンのWFE前提と同じ伸び率。業種ノートのドル建ての市場の伸びは名目なので、物価1.34倍で割った実質)。工程数の増加(洗浄回数の増加)を反映した。営業利益率は会社全体の2026年3月期実績(20.2%)を基準に、SPE単体でやや高めの23%程度と置いた。
GA・FT・PE(印刷関連機器・ディスプレイ製造装置・PCB関連機器)
GA(グラフィックアーツ機器、CTP版下・デジタル印刷機)、FT(ディスプレイ製造装置・成膜装置)、PE(プリント基板関連露光装置)の3事業の合算。
| 数量GA・FT・PE合計の年間出荷台数(台、推定) | 価格1台あたり平均売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.37 | 1,123 | 109 |
| 10 年後 中立 | 3,100 | 0.49 | 1,519 | 122 |
取り方:GA(573億円)・FT(405億円)・PE(145億円)の合計売上1,123億円を基に、各事業の出荷台数の開示がないため、年間出荷台数を3,000台と推定し、1台あたり平均単価を約3,740万円(保守・消耗品込みの概算)とした。GAは商業印刷・パッケージ印刷のオフセットからデジタルへの構造転換が続く成熟事業、FTは中国・韓国パネルメーカーの有機EL投資サイクルに連動、PEは基板の高密度化で単価が緩やかに上がる。半導体のような高成長はなく、物価並みの価格上昇にとどまる非中核事業として扱う。
リスクと懸念
中国の国産化と輸出規制の板挟み
洗浄装置の中国国産化率はすでに66%まで進んでおり、SCREENの中国売上比率も4割超と東京エレクトロンの34%より高い。米国の輸出規制が強化されればその分が直接失われ、規制が緩んでも中国政府の国産化戦略自体は止まらず、どちらに転んでも中国関連の収益は長期的に縮んでいく板挟みの構図にある。
半導体投資サイクルの波
過去にも2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックで半導体投資が数十%単位で消える局面が繰り返されており、2026年3月期の減収も示すとおり、AI投資という新しい需要の柱ができても循環そのものが消えたわけではない。
倍率の圧縮
現在の株価はPER28倍・PBR5倍超と直近実績に対して高い倍率で評価されており、AI投資への期待が少しでも後退すれば、業績そのものが落ちる前に倍率の圧縮だけで株価が下がる場面が起こりやすい。2000年のITバブル後にも同様の圧縮が起きた。
事業規模の小ささによる研究開発の劣後
東京エレクトロン・アプライドマテリアルズと比べて事業規模が小さく、研究開発投資の絶対額で劣後する場面がある。GAA・裏面給電といった次世代の工程転換で競合に先行されれば、枚葉洗浄装置でのシェアを個別工程で落とすリスクがある。
GA・FT・PEという非中核事業の構造的な縮小
GA(印刷)・FT(ディスプレイ)・PE(プリント基板)の3事業は売上の2割弱を占めるが、いずれも成熟・縮小方向にある。SPEの成長を薄める要因になるほか、業績の重荷になれば事業の整理・売却という再編圧力が強まる可能性がある。
顧客の投資判断への依存
TSMC・サムスン・SKハイニックス・マイクロン・インテルといった少数の大口顧客の投資計画に業績が直結しており、どの1社の投資計画の変更(延期・前倒し・縮小)も、装置受注全体に大きく影響する顧客集中リスクを抱えている。
今後の分かれ目
- 洗浄装置の中国国産化率がさらに上昇し、SCREENの中国売上比率が急低下したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。特に成熟工程でのシェア損失が最先端工程にまで及ぶかを見る。
- 次の中期経営計画で営業利益率19%以上・ROIC15%以上が上方修正されたら
- 中立の筋書きの利益率前提を上方修正し、価値を見直す。
- GAAや裏面給電の新工程でアプライドマテリアルズ・Lam Researchが先行採用を獲得したら
- シェア前提を下方修正し、技術転換点でのシェア損失リスクとして悲観側にやや寄せる。
- 半導体投資の世界的な過熱が急に冷めて受注が前年割れしたら
- やや悲観・悲観の筋書きが近づいていると見て、倍率の圧縮も合わせて想定する。
- SKハイニックス・マイクロンのHBM投資計画が相次いで延期されたら
- メモリ向け需要の前提を下方修正し、やや悲観の確率を上げる。
- GA・FT・PEの構造的な縮小が続き、事業の整理・売却が発表されたら
- 非中核事業の縮小分を売上・利益の前提から外し、SPEへの集中度が高まった会社として前提を作り直す。
見ておくもの
- 枚葉洗浄装置の世界シェア(SCREEN・Lam Research・中国メーカー)の推移
- 中国向け売上比率と輸出規制の強化・緩和の動き
- 中期経営計画「Value Up Further 2026」の進捗と次期計画の内容
- 北方華創(Naura)など中国装置メーカーの技術キャッチアップの速度
倍率と資本コストの決め方
SCREEN型装置市場(枚葉洗浄・コータデベロッパ・熱処理)をシェア38%から逆算し、物価3%はシェア×150円×物価の倍率という価格の側に入れて売上を積み上げた(二重に物価を掛けない)。倍率は「最後は利益ベース」の決まりに従い、今の利益水準はそのまま残し、資本コスト7.5%(基本7.5%に、循環+0.75%・寿命+0.25%)を超える新規投資の稼ぎ(RONIC)だけを残る割合1/2で薄めた正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。長期の成長率gは、半導体の数量が10年より先も伸びる領域(growth_long=structural)なので最大4.5%までとした。中立のPERは10年12.9倍で、今のPER28倍には寄せていない。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、倍率をやや悲観の約95%に置いた。過去の倍率や自己資本の厚さは根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.17→21.9 倍・やや楽観 PER 14.9→21.11 倍・中立 PER 12.93→19.24 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。
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