結論
セムテックは、AIデータセンターの高速光通信と、低消費電力の無線接続を支える半導体会社である。筆者は、長期の成長機会を高く評価する一方、現在の株式は割高と判断する。成長が難しいからではない。市場が、まだ実証されていない大幅な利益拡大を先に評価しているためだ。
2026年7月26日までの四半期は売上3.42億ドルで、前年同期比33%増加した。光通信向けとLoRa向けの双方が伸び、GAAP営業利益率は16.3%まで回復した。ただし、純利益1.60億ドルには約1.01億ドルの一時的な税金利益が含まれる。この四半期をそのまま通常の利益として年率換算してはいけない。
経営陣は2026年10月、2030年度に売上32億ドル、うちデータセンター21億ドルという目標を示した。調整後営業利益率48〜50%と、売上に対するFCF比率35%も掲げている。これは魅力的な成長構想だが、株式報酬を除外した調整後利益と、普通株主に帰属するGAAP利益は区別する必要がある。
10年後の中立では、携帯通信モジュールの売却後に売上約37億ドル、GAAP純利益7.6億ドルを見込む。光通信の高成長が続いても、競争と開発投資によって利益率は会社の調整後目標ほど高くならないと考える。
資本コスト9.0%で将来価値と正味の株主還元を割り引くと、確率加重した本質価値は約63億ドルとなる。2026年10月23日の基準時価総額約123億ドルに対して約49%低く、判定は割高である。10月27日の時価総額約135億ドルと比べれば、安全域はさらに小さい。大きな成長機会があることと、その成長にいくら払ってよいかは別の問題だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も顧客が必要とするものか、競争相手に利益を奪われないか、稼いだ現金が本当に株主へ届くかを順に考える。高速通信と低消費電力の無線接続は、今後も必要とされる可能性が高い。だが、通信需要が増えることとセムテックが利益を独占することは別である。
LoRaは比較的理解しやすい。現場の機器に一度採用されれば長く使われ、認証と互換性が乗り換えの障害になる。反対に光通信は、製品の寿命より技術の進歩が速い。優れた新製品を毎世代開発し続ける必要があり、研究開発費は将来の利益を得るために不可欠な支出である。
筆者が特に気にするのはオーナー利益である。2025/12期の添付データではFCFは約1.6億ドルだが、株式報酬が約0.7億ドルあり、普通株主に帰属する経済的な現金は見かけより小さい。2026年7月までの12か月のFCFは改善したものの、2030年に11億ドルを超えるFCFを生むという会社目標はまだ実績ではない。
資本配分についても、シエラ・ワイヤレス買収の減損を忘れるべきではない。HieFoの取得と携帯通信モジュール事業の売却には合理性があるが、経営陣の新しい規律が長期で続くかはこれから確かめる必要がある。
安全域は、将来の成長に必要な再投資と株式報酬を費用として認めたうえで判断する。LoRaだけなら強い堀に近いが、全社の大きな成長を担う光通信には技術競争がある。中立の10年後純利益に見合う価値を割り引くと、現在の値段には十分な余裕が残らない。魅力的な事業の一部を持つことと、魅力的な投資価格であることは同じではない。
何で稼ぐ会社か
セムテックの稼ぎは、データを高速かつ低消費電力で運ぶ半導体と、離れた機器を無線でつなぐ半導体から生まれる。創業は1960年で、現在は光通信、アナログ混載信号、無線接続、産業用IoT機器を手掛ける。顧客は光モジュールメーカー、通信機器メーカー、クラウド事業者につながる供給網、工場設備メーカー、公共インフラ事業者などである。
第一の柱はSignal Integrityである。光受信側の微弱な電流を増幅するTIA、レーザー駆動用のIC、銅線通信の信号を補正するイコライザーなどを販売する。FiberEdgeやCopperEdgeは、800Gから1.6T、さらに3.2Tへ高速化する通信に使われる。採用される機器の数と、一つの光モジュールに搭載される半導体の機能量が売上を決める。2025年12月期に対応する会社の2026会計年度は、売上3.23億ドルだった。
第二の柱はAnalog Mixed Signal and Wirelessである。独自の低消費電力無線技術LoRa、静電気や過電圧から電子回路を守るTVS製品、センサー関連製品などを販売する。LoRaは水道メーター、建物管理、物流追跡、保安設備で使われる。2026会計年度の部門売上3.73億ドルのうち、LoRa対応製品は約1.56億ドルと会社が開示している。
第三の柱は、シエラ・ワイヤレス買収で加わった産業用ルーター、通信ゲートウェイ、SIM接続管理などである。2026会計年度のIoT Systems and Connectivityは3.54億ドルを売り上げた。ただし、そのうち約1.66億ドルを占めた携帯通信モジュール事業について、2026年8月にコンパル・エレクトロニクスへの売却契約を結んだ。分析では、この売却部分を独立して表示している。
製造は外部ファウンドリーへの委託が中心である。2026年3月に取得したHieFoの光部品製造能力が加わり、一部は自社でも作る軽資産型の体制となった。売上の拡大には大規模な工場建設より設計・研究開発・供給能力の確保が重要となるが、外部製造会社への依存は残る。
IoT接続サービスには管理画面もあるが、対価の中心は端末・回線・通信サービスであり、席課金の業務ソフトや人月販売ではない。そのため、指定されたAIエージェント代替の直接対象には当たらない。AIはむしろ、現場の機器から情報を集め、高速に運ぶ需要を増やす可能性がある。
優良さと弱いところ
最も長持ちしそうな強みはLoRaである。低消費電力、長距離通信、既存の開発環境、認証済み機器の広がりが組み合わさっている。会社は2026年3月までにLoRa ICを搭載した端末が世界で5億台を超えたと説明する。LoRa Allianceが公表した2026年9月のLoRaWAN接続機器数は1.5億台であり、両者は集計範囲が異なる。数字を直接比較して市場シェアを出してはいけない。
顧客が一度LoRaを組み込むと、無線認証、電池寿命、通信距離、既存のネットワークとの互換性を確かめ直す必要がある。したがって乗り換えには費用と時間がかかる。ただしLoRaWANは公開規格であり、半導体の供給にはライセンス先や競合も参加できる。高い採用実績は堀になるが、永続的な独占利益を保証するわけではない。
光通信の強みは、速度当たりの消費電力と信号品質である。DSPを多用する方式より、アナログ回路で処理する方式が有利になる場面がある。2026年10月にはタワー・セミコンダクターとの20年来の関係を拡大し、SiGe製造能力を長期で確保する契約を発表した。複数世代の製品開発を顧客と共同で進めることも、採用後の継続受注を助ける。
しかし、光通信では技術の世代交代が速い。ブロードコム、マーベル、マコム、クレドなどが性能と電力効率を競っている。今の設計採用が10年後の製品にも残る保証はない。製品の重要性と会社の支配力を混同してはならない。
資本効率には回復の余地が大きいが、過去の実績は安定していない。シエラ・ワイヤレス買収後の減損と借金は大きな損失を生み、2023/12期には自己資本がマイナスになった。2025/12期の純利益も赤字である。筆者は、LoRaの堀は比較的強いものの、全社では光通信の競争と買収の実績を踏まえ、普通の堀と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
セムテックを評価するには、通常のアナログ半導体市場と、AIデータセンターの高速接続市場を分ける必要がある。業界ノートではアナログ、マイコン、パワー、RF・モバイルなどの広い市場を2026年に約3500億ドル、2036年に約5700億ドルとする。しかし、その数字だけではセムテックの光通信の成長余地は説明できない。
会社が2026年10月の投資家説明会で示した、光受信増幅器、レーザー、光増幅器、アクティブ銅線などのサービス可能市場は、2026年の約30億ドルから2030年には約150億ドルへ広がる見通しである。650 Groupの調査を会社の製品構成に合わせて調整した数字で、会社の売上予想そのものではない。2026会計年度のデータセンター売上を会社の成長目標から逆算すると約2.2億ドルとなり、当時の対象市場に対する比率は概算7〜8%である。
2030年の会社目標であるデータセンター売上21億ドルは、対象市場150億ドルに対して約14%に相当する。これは市場拡大に加えてシェアの獲得を要する。競合各社の同一定義によるシェアは開示されていないため、数値を断定できない。ブロードコムやマーベルの高速接続製品、マコムの光部品、クレドの銅線接続が主要な比較対象となる。
LoRa市場では、LoRaWAN接続機器が2026年9月に1.5億台へ達し、業界団体は約25%の成長率を報告した。利用分野は水道・電力の計測、ビル管理、物流、農業、安全管理である。競争相手はSTマイクロエレクトロニクスなどの対応半導体メーカーに加え、NB-IoT、LTE-M、Wi-Fi、Bluetoothなどの別方式である。LoRaの利用者が増えても、端末の普及率や半導体単価が一定とは限らない。
大きな構造変化は、光配線と銅線配線の役割分担である。計算能力を増やすほど通信電力が制約になるため、低消費電力のアナログ方式には追い風がある。一方、光モジュールの集積化やCPOなどの新方式が進めば、現在の個別部品が不要になる部分も出る。技術が高度化することは市場拡大の理由であると同時に、既存製品が置き換わる理由でもある。
もう一つはAI設備投資の循環である。データセンター建設が数年間高水準でも、その後の注文が安定するとは限らない。大手顧客の設備投資と半導体の設計採用は連動するため、景気循環を通常の産業用アナログより強く受ける可能性がある。10年後の利益を考える際には、一時的な供給不足や投資の山を永続的な値上げ力とみなさない。
資本政策と M&A
資本配分の評価は、過去の大型買収と現在の事業の絞り込みを分ける必要がある。2023年に実施したシエラ・ワイヤレス買収は、IoT事業の規模を広げたが、借金の増加と大規模な減損を招いた。高い買収価格を長期の利益で回収できなかった点は、普通株主にとって重い失敗である。
その後は債務削減を優先した。添付の2025/12期末データでは純負債は約3.3億ドルで、2026年7月末の会社開示でも約3.0億ドルまで縮小した。2026年3月にはHieFoを約0.34億ドルで取得し、光部品と製造技術を補った。この買収は規模より技術の獲得を狙う小型案件であり、以前とは異なる資本配分の姿勢が見える。
2026年8月には携帯通信モジュール事業を0.62億ドルで売却する契約を締結した。完了予定は2027会計年度第4四半期で、規制当局の承認などが条件である。売却はまだ完了していないため、売却代金を現在の純現金には加えていない。10年後の事業構成では完了を前提とし、収入は債務返済や再投資に使われると考える。
普通株主への還元には慎重に見る必要がある。配当は実施しておらず、継続的な買戻し枠について金額の約束も確認できない。添付データでは2025/12期に2.2億ドルの買戻しが表示されるが、同時期には転換社債の交換と新株発行があった。見かけの現金支出をそのまま普通株主への還元と扱わない。
2026年10月の経営方針では、研究開発、選択的な事業買収、健全な財務を優先している。2030年のFCF目標は売上の35%だが、配当と自社株買いへの具体的な配分額は約束していない。将来のpayoutは、利益と現金創出力に応じて推定し、株式報酬や新株発行による持ち分の増加分を差し引いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
セムテックは、かつての成熟したアナログ半導体会社とは異なる成長企業に変わりつつある。AIデータセンターでは電力と通信距離が制約になり、低消費電力の光受信増幅器と銅線用イコライザーが必要になる。FiberEdgeとCopperEdgeは、既存のDSP中心の構成より少ない電力で高速通信を実現できる場面がある。この差はデータセンターの電力費用に直結する。
2026年7月までの四半期でSignal Integrityの売上は前年同期比64%増えた。会社は2027会計年度のデータセンター売上が前年度の2倍超になり、翌年度にも2倍超になる可能性を示している。直近の受注残と顧客の設計採用に裏付けられた部分があり、単なる遠い将来の期待だけではない。
光通信向けの製品構成も広がっている。HieFoの取得でインジウムリン系の光部品が加わり、レーザーと受信部品を組み合わせられるようになった。2026年10月のタワー・セミコンダクターとの長期供給契約は、生産能力の不足による失注を防ぐ手段となる。顧客が800Gから1.6T、3.2Tへ進むほど、一つの通信装置に載る半導体の価値が大きくなる。
LoRaも成長の第二の柱である。水道メーター、ビル管理、工場設備、物流の端末数が増え、Amazon Sidewalkなどの接続基盤との連携が利用範囲を広げる。会社が示した2030年までのLoRa売上成長率30%は、直近の販売増加と新製品投入の延長線上にある。
売上構成が光通信とLoRaへ移れば、粗利益率の低い携帯通信モジュールが外れる効果も加わる。軽資産型の製造体制で増収分が利益に残りやすくなり、資本効率とFCFが改善する。2030年の目標を達成し、その後もシェアを伸ばす場合には、10年後の会社価値は現在を大きく上回る可能性がある。
慎重な見方
最大の弱点は、現在の事業の強さと将来の予想を分けにくいことである。会社が2030年度に示した売上32億ドルは、売却対象の携帯通信モジュールを除く2026会計年度の売上から、約3.6倍になる水準だ。実現には、AIデータセンターの対象市場が予想どおり拡大することに加え、会社自身が競合からシェアを奪う必要がある。
光通信ではブロードコム、マーベル、マコム、クレドなどが技術を競っている。光モジュールが高速化しても、どの半導体が内部に使われるかは変化する。CPOのように光部品を演算装置へ近づける方式が広がれば、既存の個別部品に対する需要は別の形へ移る。セムテックがすべての世代で勝つ保証はない。
AI設備投資の集中も危険である。2026年の受注増には供給能力の確保を急ぐ顧客の動きが含まれる。データセンター事業者の投資が数年後に落ち着けば、売上の伸びは急減する。会社の調整後営業利益率48〜50%という目標を、そのままGAAP利益率として長期に延ばすことはできない。
経営の資本配分にも疑問が残る。シエラ・ワイヤレスの取得では大きな借金を抱え、その後の減損で株主資本を傷つけた。2024年から2025年にかけて転換社債の処理と新株発行が進み、普通株主の持ち分は薄まった。将来の利益が増えても、株式報酬や資金調達が続けば、利益の伸びのすべてが既存株主へ帰属するわけではない。
LoRaも公開規格であり、独占的な値上げは難しい。価格の上昇を物価並みに維持できるかは、競合技術と顧客の調達方針次第である。成長市場にいるという理由で高い将来利益を確実視すれば、技術の変化と資本配分の失敗を過小評価することになる。
どちらに重みを置いたか
光通信の成長は実際の受注と製品投入に支えられており、事業そのものについては強気の材料がある。ただし、2030年の目標達成には短期間での大幅なシェア拡大が必要で、競争相手も強い。さらに、過去の大型買収と株式希薄化の実績を考えると、成長の成果を既存株主が十分に受け取れるかには不確実性が残る。
確率は楽観側30%、中立31%、慎重側39%とし、やや慎重に寄せた。景気循環だけを理由に二重に引いたのではなく、2030年目標の実行難度と製品世代交代の不確実性を重視したためである。中立でも事業は大きく成長するが、現在の株価はその成果の相当部分を先取りしていると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 134.38 ドル125 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 20.50 ドル19 億ドル)。 今の値に割り戻すと 70.09 ドル65 億ドル、今との差 −45.0%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 426.63 ドル398 億ドル | 62.18 ドル58 億ドル | +283.7% | +15.9% | 53.77 ドル50 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 244.61 ドル228 億ドル | 32.70 ドル31 億ドル | +117.7% | +8.7% | 52.69 ドル49 億ドル |
| 中立 | 31% | 112.42 ドル105 億ドル | 17.69 ドル17 億ドル | +2.1% | +0.2% | 40.33 ドル38 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 24.25 ドル23 億ドル | 7.50 ドル7 億ドル | −75.1% | −14.1% | 7.62 ドル7 億ドル |
| 悲観 | 15% | 2.06 ドル2 億ドル | 1.07 ドル1 億ドル | −97.5% | −33.4% | 0.47 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 134.38 ドル125 億ドル | 20.50 ドル19 億ドル | +21.6% | +2.1% | 154.88 ドル144 億ドル |
今の株価時価総額 127.38 ドル119 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 光通信のシェアを大きく伸ばし、LoRaも世界的な接続基盤として成長する 利益 22 億ドル · PER 17.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 426.63 ドル398 億ドル
AIデータセンターの設備投資が長期で続き、セムテックは高速接続部品の主要供給会社の一角を占める。2030年までにデータセンター売上21億ドルの目標を達成し、その後も1.6T、3.2T、さらに次の世代に対応する。HieFoで取得した光部品の技術と、タワー・セミコンダクターの供給能力が組み合わさり、設計採用が新しい製品にも継続する。
2035年のデータセンター接続半導体の実質対象市場を230億ドル、当社シェアを15%とする。通信インフラ向けを加えたSignal Integrityの実質出荷価値は36.3億ドルとなる。製品の高機能化が進み、同一機能当たりの名目価格も物価を少し上回る。営業利益率は47%まで高まるが、研究開発を続けるため競合のいない独占企業のような利益率にはならない。
LoRaは水道・電力、建物管理、物流、保安設備で普及し、アナログ・無線部門の実質出荷価値は9億ドルへ増える。産業用IoT接続機器も拡大する。低採算の携帯通信モジュールは計画どおり売却され、追加の大型買収は行わない。
売上は約73億ドル、営業利益は29億ドル、GAAP純利益は22億ドルへ増える。10年間の純利益累計は112億ドルで、株式報酬と新株発行の影響を差し引いた正味の還元は58億ドルとなる。残る資金は研究開発と運転資本の拡大に使い、自己資本は59.5億ドルとなる。LoRaの堀は広がり、光通信でも技術と顧客関係の優位が長く残る。
- Signal Integrity(光通信・高速銅線接続):数量 36.3(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値)× 価格 150(同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100))→ 売上 54 億ドル・営業利益 26 億ドル。データセンター実質対象市場230億ドル×シェア15%=34.5億ドルに通信インフラ等1.8億ドルを加える。価格指数150。高速光通信と銅線の製品採用が広がる。
- Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー):数量 9.0(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値)× 価格 150(製品価格指数(2025/12=100))→ 売上 14 億ドル・営業利益 5 億ドル。LoRaチップ実質対象市場10億ドル×想定シェア64%=6.4億ドルに、TVS・センサー等2.6億ドルを加える。価格指数150。
- IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業):数量 3.5(継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア)× 価格 150(機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。産業用IoT接続市場の実質規模50億ドル×シェア7%。低採算部分の整理後も機器と接続サービスを伸ばす。
- 携帯通信モジュール(売却契約済み):数量 0.0(売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル))× 価格 100(価格指数(2025/12=100))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。コンパルへの売却が予定どおり完了し、2035年には連結対象から外れている。
倍率:k=9.0%、2035年の帳簿ROEは22.0÷59.5=37.0%。自己資本が極端に小さくなる筋書きではないため、このROEを伸びに要る元手の利益率に使う。全社の堀は普通とし、RONIC=9.0%+1/2×(37.0%-9.0%)=23.0%。長期gは市場の実質成長2.5%前後、シェア成熟による減速約1.5%、名目価格上昇3.5%を合わせて4.5%。正当化PER=(1-4.5%÷23.0%)÷(9.0%-4.5%)×1.045=約18.7倍。その約94%で17.5倍とした。GAAP純利益22億ドルには株式報酬を費用として含め、無形資産償却を倍率で再度足し戻さない。時価総額は22.0×17.5=385.0億ドル。
確率:2030年目標をほぼ達成し、その後も新しい光通信方式で競争優位を維持する筋書き。2026年の受注と製品投入は追い風だが、複数世代にわたる大きなシェア拡大を要するため11%とした。
やや楽観 19% データセンターで強い地位を確立し、LoRaも堅調に拡大する 利益 14 億ドル · PER 16.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 244.61 ドル228 億ドル
光通信市場は2020年代後半に急拡大し、2030年代に入ると成長率が落ち着く。セムテックは大手光モジュールメーカーとの関係を深め、ブロードコムやマーベルと競いながら、低消費電力のアナログ部品でシェアを伸ばす。製品の一部は置き換わるが、次世代品への設計採用がそれを補う。
2035年のデータセンター接続半導体の実質対象市場は195億ドルで、セムテックのシェアは12.5%となる。通信インフラ向けを含めたSignal Integrityの売上は約38億ドルに達する。高い利益率の製品が増え、事業の営業利益率は43.5%へ改善する。
LoRaは水道・電力メーター、建物管理、物流で使われ続ける。成長率は会社が2030年までに想定する高水準から次第に落ち着くが、機器の設計に入り込んだ強みは残る。アナログ・無線部門は約11億ドルの売上を生み、IoT接続事業も売却後の体制で利益を増やす。
全社売上は約52億ドル、営業利益18.1億ドル、GAAP純利益13.6億ドルとなる。10年間の純利益累計は73億ドルで、株式報酬等を差し引いた正味の還元は30.5億ドル、自己資本は48億ドルとなる。軽資産型の製造体制が利益率の改善を支える一方、競争が続くため、全社が独占的な堀を持つ企業にはならない。
- Signal Integrity(光通信・高速銅線接続):数量 25.7(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値)× 価格 146(同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100))→ 売上 38 億ドル・営業利益 16 億ドル。データセンター実質対象市場195億ドル×シェア12.5%=約24.4億ドルに通信インフラ等約1.3億ドルを加える。価格指数146。
- Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー):数量 7.3(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値)× 価格 146(製品価格指数(2025/12=100))→ 売上 11 億ドル・営業利益 3 億ドル。LoRaチップ実質対象市場8.2億ドル×想定シェア61%=約5.0億ドル、その他2.3億ドル。価格指数146。
- IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業):数量 2.8(継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア)× 価格 146(機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。継続IoT接続市場の実質規模45億ドル×シェア約6.2%。競争によってシェアは少し低下する。
- 携帯通信モジュール(売却契約済み):数量 0.0(売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル))× 価格 100(価格指数(2025/12=100))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約済みの携帯通信モジュール事業売却が完了する。
倍率:k=9.0%、ROE=13.6÷48.0=28.3%。堀は普通で残る割合1/2とし、RONIC=18.7%。長期gは、実質の対象市場成長約2.5%、シェア成熟による減速約1.5%、価格上昇3.5%から4.5%とする。正当化PER=(1-4.5%÷18.7%)÷(9.0%-4.5%)×1.045=約17.6倍。その約91%を採用し、製品世代交代の継続費用を考慮して16.0倍とした。時価総額=13.6×16.0=217.6億ドル。純利益はGAAPでありSBCを費用として含む。
確率:光通信の設計採用が順調に増え、LoRaの長期需要も続く。2030年の目標には一部届かなくても、両事業が競合より速く成長する可能性は十分あるため19%とした。
中立 31% 光通信は成長するが、競争と開発費が利益率の上昇を抑える 利益 8 億ドル · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 112.42 ドル105 億ドル
AIデータセンターの高速接続市場は拡大を続けるが、2020年代後半のような急増は2030年代には落ち着く。セムテックは光通信向け部品で存在感を増すものの、ブロードコム、マーベル、マコムなどとの競争が続く。既存の光モジュール向け部品から新方式向け製品へ切り替えるため、研究開発費の負担は残る。
2035年のデータセンター接続半導体の実質対象市場は160億ドル、当社シェアは10.5%となる。これは現在の推定7〜8%より高いが、会社の2030年目標が示唆する約14%には届かない。通信インフラ等も含めたSignal Integrityの売上は約25億ドルとなる。事業の営業利益率は39%へ改善するが、競争があるため技術の優位がすべて利益として残るわけではない。
LoRaは長寿命の産業機器に組み込まれ、2026年より広く使われる。成長率は下がるが、認証と開発環境が一定の乗り換え費用を作る。アナログ・無線部門の売上は約8.3億ドル、売却後のIoT接続事業は約3.4億ドルとなる。携帯通信モジュールの売却は計画どおり完了する。
全社売上は約37億ドル、営業利益10.54億ドル、GAAP純利益7.6億ドルとなる。利益は2026年から段階的に増え、10年間の累計は44億ドルとなる。初期は債務返済と成長投資を優先し、その後に買戻しを増やすが、株式報酬と新株発行の影響を除いた正味の還元は16.5億ドルにとどまる。自己資本は33億ドルへ増える。事業の堀は残るものの、競争相手を圧倒するほどには広がらない。
- Signal Integrity(光通信・高速銅線接続):数量 18.0(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値)× 価格 141(同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100))→ 売上 25 億ドル・営業利益 10 億ドル。データセンター接続の実質対象市場160億ドル×シェア10.5%=16.8億ドルに通信インフラ等1.2億ドルを加える。価格指数141は物価3.5%の10年累積に相当する。
- Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー):数量 5.9(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値)× 価格 141(製品価格指数(2025/12=100))→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。LoRaチップの実質対象市場6.7億ドル×想定シェア約57%=約3.8億ドルに、その他約2.1億ドルを加える。価格指数141。
- IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業):数量 2.4(継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア)× 価格 141(機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。継続IoT接続市場の実質規模40億ドル×シェア6%。市場は拡大するが、競合に一部シェアを取られる。
- 携帯通信モジュール(売却契約済み):数量 0.0(売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル))× 価格 100(価格指数(2025/12=100))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。携帯通信モジュールの売却を完了し、売上と営業利益は連結に含めない。
倍率:k=9.0%、2035年のROE=7.6÷33.0=23.0%。買収で増やす必要がある資本と営業資産を除外せず、余剰現金もないため帳簿自己資本を基本とする。堀は普通で、RONIC=9.0%+1/2×(23.0%-9.0%)=16.0%。長期gは、実質市場成長約2.0%、シェア成熟による減速約1.5%、名目価格上昇3.5%で4.0%。正当化PER=(1-4.0%÷16.0%)÷(9.0%-4.0%)×1.04=約15.6倍。その約85%の13.2倍とした。技術の世代交代とGAAP利益の変動を考慮した。mcap=7.6×13.2=100.32億ドル。SBCと償却はGAAP利益から除外せず、倍率でも重複加算しない。
確率:受注と市場の構造的成長は確かに存在する一方、会社の2030年目標は大幅なシェア拡大を要する。売上は大きく伸びても利益率は慎重に見る筋を中心とし、31%とした。
やや悲観 24% 光通信のシェアが伸び悩み、LoRaも競合に価格を削られる 利益 3 億ドル · PER 8.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.25 ドル23 億ドル
2020年代後半のAI設備投資は大きいが、その後の需要は想定ほど伸びない。光モジュールメーカーは、電力効率と性能の改善を求めて部品の採用先を入れ替える。セムテックのTIAやドライバーは必要とされるが、ブロードコム、マーベル、マコムなどが一部の設計採用を奪う。CPOや新しい光接続方式への移行にも開発費が必要となり、営業利益率は期待ほど改善しない。
2035年のデータセンター接続半導体の実質対象市場は130億ドルとし、セムテックのシェアは現在に近い7.5%にとどまる。通信インフラ向けを合わせてもSignal Integrityの実質出荷価値は10.7億ドルで、名目価格は物価に追いつかない。営業利益率は29%へ低下する。
LoRaは既存の産業顧客に残るが、新規の大規模案件ではNB-IoTや別の無線技術が選ばれる。公開規格の利点が、競合半導体を採用しやすくする面も出る。アナログ・無線部門の売上は約4.9億ドルにとどまり、IoT接続事業も利益が薄い。
全社売上は約21億ドル、営業利益3.7億ドル、GAAP純利益2.6億ドルとなる。利益は2020年代後半に一度増えた後、競争の激化で減速するため、10年間の純利益累計は24億ドルとなる。株式報酬の相殺を考慮した正味の還元は7億ドルにとどまり、自己資本は22.5億ドルとなる。LoRaの顧客関係は一部残るが、光通信の技術的な優位は縮小する。
- Signal Integrity(光通信・高速銅線接続):数量 10.7(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値)× 価格 125(同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100))→ 売上 13 億ドル・営業利益 4 億ドル。データセンター接続の実質対象市場130億ドル×シェア7.5%=9.75億ドルに通信インフラ等0.95億ドルを加える。価格指数125。
- Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー):数量 3.8(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値)× 価格 128(製品価格指数(2025/12=100))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。LoRa実質対象市場4.7億ドル×想定シェア約45%=2.1億ドルと、その他1.7億ドル。価格は物価上昇を下回る。
- IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業):数量 1.8(継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア)× 価格 128(機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。IoT接続市場の実質規模36億ドル×シェア5%。機器価格競争とサービス費用が利益を圧迫する。
- 携帯通信モジュール(売却契約済み):数量 0.0(売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル))× 価格 100(価格指数(2025/12=100))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。携帯通信モジュールの売却は完了している。
倍率:k=9.0%、ROE=2.6÷22.5=11.6%、堀を普通としたRONICは約10.3%。長期gは市場の実質成長がほぼ横ばいから小幅増、価格上昇約3%、シェア低下分を考慮して3.0%とする。式に翌期利益係数1.03を掛けた正当化PERの上限は約12.2倍。競争で利益の質が弱まるため約71%の8.7倍を採用した。mcap=2.6×8.7=22.62億ドル。悲観側の稼ぐ力の上限2.6÷9.0%=約28.9億ドルも下回る。
確率:データセンター投資の成長鈍化と製品の競争力低下が同時に起きる筋書き。過去の大型買収の失敗を踏まえ、計画未達が利益を大きく削る可能性を重く見て24%とした。
悲観 15% 構造的な敗北:光通信で採用を失い、LoRaの堀も狭まる 利益 0 億ドル · PER 6.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.06 ドル2 億ドル
AIデータセンターの通信市場自体は残るが、主要顧客が部品構成を変更する。新しい光接続方式において、セムテックの製品が採用される割合は大きく低下する。ブロードコム、マーベル、マコムなどの競合が機能を統合し、セムテックの個別部品の価値が小さくなる。高速通信の技術開発費は残るため、売上が減っても費用を同じ割合で下げられない。
2035年のデータセンター接続半導体の実質対象市場は100億ドルにとどまり、セムテックのシェアは4%まで低下する。通信インフラ向けを加えたSignal Integrityの実質出荷価値は4.8億ドルとなる。価格も競争によって物価上昇を大きく下回り、営業利益率は24%へ下がる。
LoRaでは、NB-IoTや他の低消費電力無線方式が普及する。公開規格の利用が続いても、他社の半導体が選ばれ、セムテックの想定シェアは約30%まで低下する。産業用IoT機器も低価格競争にさらされる。既存顧客向けの保守的な売上は残るが、価格を自分で決める力は弱まる。
全社売上は約9.5億ドル、営業利益0.48億ドル、GAAP純利益0.32億ドルとなる。2031年までに約11.5億ドルの利益を得るものの、その後の受注減と再編・減損で2032〜2034年に合計約3.5億ドルの損失が生じる。最終年の利益を含めた10年間の累計は8.3億ドルとなる。買戻しはほぼ停止し、正味の還元は1億ドルにとどまる。自己資本は12.8億ドルとなるが、のれんと事業価値が傷むため、その帳簿額を清算価値とはみなさない。
なお、倒産を当然の前提にはしていない。会社は小さくても事業を続けるが、以前のような成長企業ではなくなり、株主が受け取れる利益は大幅に縮む筋書きである。
- Signal Integrity(光通信・高速銅線接続):数量 4.8(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値)× 価格 115(同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。データセンター接続の実質対象市場100億ドル×シェア4%=4.0億ドルに通信インフラ等0.8億ドルを加える。価格指数115。
- Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー):数量 2.5(当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値)× 価格 110(製品価格指数(2025/12=100))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。LoRaチップ対象市場4.2億ドル×想定シェア30%=約1.26億ドルと、その他約1.24億ドル。価格指数110。
- IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業):数量 1.1(継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア)× 価格 110(機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。IoT接続の実質対象市場30億ドル×シェア約3.7%。低価格競争で営業利益はほとんど残らない。
- 携帯通信モジュール(売却契約済み):数量 0.0(売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル))× 価格 100(価格指数(2025/12=100))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。携帯通信モジュールは売却済みであり、利益も残らない。
倍率:k=9.0%、ROE=0.32÷12.8=2.5%で資本コストを大きく下回る。追加投資が十分な利益を生まないため、正当化PERは1÷k=11.1倍が上限となる。構造的に負けた企業として6.0倍とした。mcap=0.32×6.0=1.92億ドルであり、稼ぐ力の上限0.32÷9.0%=約3.56億ドルを超えない。税後売却可能資産の床0.5億ドルも上回る。企業価値をゼロとはせず、小さいながら利益を生む事業の残存価値を認めた。
確率:技術の世代交代に取り残されるうえ、LoRaの普及による利益も競争相手へ移る場合。2023年の巨額減損と株主資本の毀損を経験しているため、極端な失敗を軽視せず15%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Signal Integrity(光通信・高速銅線接続)
光受信増幅器、レーザードライバー、高速銅線用イコライザーなど。データセンターと通信インフラの光モジュールや通信機器に搭載される。
| 数量当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=データセンター接続半導体の実質対象市場×当社シェア+通信インフラ向け実質出荷価値 | 価格同一機能当たりの名目価格指数(2025/12=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.2 | 100 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 141 | 25 | 10 |
取り方:SECの2026会計年度10-Kに開示されたSignal Integrity売上3.22608億ドルを使用する。データセンター売上は、2026年10月の会社目標である2030年21億ドルと、FY2026〜2030の年成長率75%から逆算して約2.24億ドルと推定した。会社の投資家説明会資料が示すFY2026の対象市場約30億ドルに対して、データセンター部分の推定シェアは約7.5%である。残り約0.99億ドルは通信インフラ等とした。数量は同一機能のチップ価値を2025年価格で測る実質出荷価値であり、将来の搭載機能増加は数量側に含める。価格指数にシェアを混ぜない。営業利益は会社が事業別に開示していないため、粗利益率65.2%と開発・販売費の配賦から推定した。市場資料:https://investors.semtech.com/media/document/1990dee5-1dee-4ff0-b311-750aaf76c638/assets/Semtech_Analyst_Day_Final_101526_FULL-DECK.pdf
Analog Mixed Signal and Wireless(LoRa・保護回路・センサー)
LoRa無線IC、TVS過電圧保護製品、センサー向けアナログ半導体。水道・電力計測、建物管理、産業機器、民生電子機器で使われる。
| 数量当社の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=LoRa向けチップ対象市場×当社シェア+保護回路・センサー等の実質出荷価値 | 価格製品価格指数(2025/12=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.7 | 100 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.9 | 141 | 8 | 2 |
取り方:SECの2026会計年度10-Kに開示された売上3.73444億ドルを使用する。同年度の会社決算資料はLoRa対応製品売上を約1.56億ドルと開示しており、残り約2.17億ドルをTVS、センサーなどとした。LoRaチップ単独の世界市場規模と供給会社別シェアは、比較可能な形では開示されていない。数量モデルでは仮に対象市場2.6億ドル、当社シェア60%とすれば1.56億ドルになるが、これは売上と市場採用状況から組み立てた分析上の推定であり、確認済みの市場シェアではない。LoRaWAN接続台数は2026年9月時点で1.5億台とLoRa Allianceが公表した。https://lora-alliance.org/lora-alliance-press-release/lora-alliance-reports-150-million-lorawan-devices-deployed-globally/ 。営業利益は開示粗利益率58.9%から開発・販売費を配賦して推定した。
IoT Systems and Connectivity(売却後の継続事業)
産業用通信ルーター、ゲートウェイ、接続サービス、SIM管理など。携帯通信モジュールの売却対象を除いた継続部分である。
| 数量継続事業の実質出荷価値(2025年価格の億ドル)=産業用IoT接続機器・管理サービスの対象市場×当社シェア | 価格機器・接続サービスの平均価格指数(2025/12=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.9 | 100 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 141 | 3 | 0 |
取り方:会社のIoT Systems and Connectivityの2026会計年度売上3.53923億ドルから、2026年10月の投資家説明会で売却対象と示した携帯通信モジュール売上1.66億ドルを引いた1.87923億ドルを使用する。対象市場の直接的な統計とシェアは開示されていないため、2025年価格の産業用ルーター・ゲートウェイ・接続管理サービス市場を仮に25億ドル、シェア7.5%として組み立てた。これは推定であり、他社の正式な市場シェアを意味しない。将来はDigi、Telit Cinterion、Quectel、Cisco系の機器などとの競争によるシェア変化を反映する。営業利益は開示の事業全体粗利益を参考に配賦した。
携帯通信モジュール(売却契約済み)
シエラ・ワイヤレス買収から引き継いだ携帯通信モジュール事業。2026年8月にコンパル・エレクトロニクスへの資産売却を契約した。
| 数量売却予定事業の実質売上換算数量(2025年価格の億ドル) | 価格価格指数(2025/12=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.7 | 100 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 100 | 0 | 0 |
取り方:2026年10月15日の会社8-Kは、2030年度目標の成長率を算定する際、FY2026の携帯通信モジュール売上1.66億ドルを除外したと明記している。売却価格は2026年8月13日の契約で0.62億ドルである。数量は当該事業の実質売上換算で、10年後の基本前提は売却完了によりゼロとする。営業損益は開示されていないため、低い粗利益率と事業整理費用を踏まえた推定である。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/88941/000119312526347716/d123711dex991.htm
リスクと懸念
AIデータセンター投資の山と谷
光通信向け売上の急増には、AIデータセンター事業者の設備投資拡大が大きく影響している。顧客の光モジュール在庫や発注が一度に増えると、実際の最終需要より出荷が強く見える。投資の伸びが落ち着けば、会社の高成長目標が未達になり、固定的な研究開発費が営業利益率を押し下げる可能性がある。
光通信の世代交代と競合の技術力
800G、1.6T、3.2Tへの移行は市場拡大の理由だが、同時に既存製品の置き換えでもある。ブロードコム、マーベル、マコム、クレドなどの競合は開発力と顧客基盤を持つ。CPOや新しい光接続方式が普及したとき、セムテックの製品が引き続き必要とされるかは確実ではない。新世代の採用を失うと数量と価格の双方が悪化する。
LoRaの公開規格と代替無線技術
LoRaは多くの機器に採用されており、既存の認証や開発環境が乗り換えを難しくする。しかし、公開規格の普及によって他社製チップも使われやすくなる。さらにNB-IoT、LTE-M、Wi-Fi、Bluetoothなどが用途ごとに競争する。接続端末数の増加が、そのままセムテックのチップ単価や市場シェアの維持につながるとは限らない。
買収の失敗と資本配分
シエラ・ワイヤレス買収後には巨額の減損が発生し、普通株主の資本が大きく傷んだ。現在は小型の技術取得と事業売却へ方針を変えているが、2030年の高い成長目標を追う過程で再び高額な買収を行うリスクがある。将来の投資利益率が資本コストを下回れば、売上が伸びても株主価値は増えない。
株式報酬と転換社債による希薄化
2025/12期の添付データでは株数が大きく増加しており、転換社債の交換と新株発行が重要な要因となった。2026年7月までの四半期にも株式報酬が発生している。会社の調整後利益は株式報酬を除外しているため、調整後利益の成長をそのままオーナー利益の成長と考えると過大評価になる。将来の還元額は必ず正味で確認する必要がある。
外部ファウンドリーと地政学・供給制約
高速アナログ半導体の製造には高度な工程と安定した供給能力が必要である。タワー・セミコンダクターとの長期契約は供給能力確保に役立つが、外部製造会社への依存をなくすものではない。台湾やアジアの供給網、米中の輸出規制、設備事故、材料不足などによって、受注を売上へ変えられない可能性がある。供給量を増やす投資が想定以上に重くなることもある。
2030年の調整後目標とGAAP利益の差
会社は2030年度に調整後営業利益率48〜50%、FCF比率35%を目標としている。しかし、株式報酬、買収償却、再編費用などは調整後利益から除外される。2026年7月期の四半期純利益には一時的な税金利益も含まれた。これらを通常の利益として将来へ延ばすと、株主に帰属する利益と評価額を過大に見積もる危険がある。
今後の分かれ目
- データセンター売上が2027年度と2028年度にそれぞれ前年度比2倍超で伸び、設計採用と粗利益率も改善する
- 2030年目標の実現可能性が高まるため、やや楽観・楽観の確率を上げる。ただし、利益率の判断ではGAAPの株式報酬費用を引いた状態を維持する。
- 2030年のデータセンター売上が21億ドルを大きく下回り、顧客の注文が減速する
- 中立のSignal Integrity数量を減らし、やや悲観の確率を引き上げる。目標未達が一時的な設備投資の谷なのか、競合へのシェア喪失なのかを区別する。
- LoRa対応製品の売上成長率が継続的に20%を超え、価格と粗利益率も維持される
- LoRaのネットワーク効果と乗り換え費用が利益に結びついている証拠となる。アナログ・無線部門の数量と利益率を上げ、堀の再評価も検討する。
- 光通信の新方式で主要顧客が競合製品へ切り替え、Signal Integrityの粗利益率が50%を下回る
- 技術的優位が弱まった可能性が高い。数量のシェアを引き下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。新しい研究開発費による回復可能性も確かめる。
- 携帯通信モジュール事業の売却が完了し、低採算事業の整理後もGAAP営業利益率が改善する
- 事業の絞り込みが株主価値の改善につながったと評価できる。売却代金の使途と残る事業の固定費を確認し、将来の利益率を見直す。
- 新しい大型買収、転換社債発行、株式報酬の増加によって既存株主の持ち分が再び大きく薄まる
- 買収による利益の上積みと、そのために必要な資金調達を一体で評価する。payoutから増資や株式報酬の負担を控除し、資本配分の規律が改善しているという見方を弱める。
- FCF比率が30%を超える状態が複数年続き、純負債が減少したうえで正味の自社株買いが実施される
- 成長の成果が普通株主に戻り始めた証拠となる。将来の正味還元額を上げ、余剰現金が継続的に積み上がるなら事業価値と分けて評価する。
見ておくもの
- データセンター売上の成長率、2027年度・2028年度の倍増計画、2030年度21億ドル目標への進捗
- Signal Integrityの売上、粗利益率、設計採用状況と主要顧客の製品世代交代
- LoRa対応製品の売上と成長率、LoRaWAN接続機器数、競合チップの採用状況
- 携帯通信モジュール事業の売却完了と、売却後の全社GAAP粗利益率・営業利益率
- 株式報酬費用、転換社債の残高、発行済み株式数と正味の株主還元
- 営業キャッシュフロー、設備投資、FCFと純有利子負債の推移
- タワー・セミコンダクターとの製造能力確保、HieFo由来の光部品売上と追加投資
- GAAP純利益と調整後純利益の差、税金利益や減損による一時要因
倍率と資本コストの決め方
価値の数字は現在の株価や市場のPERから逆算していない。まず光通信、LoRa、継続IoT接続、売却予定事業に分け、市場の実質規模、シェア、価格指数から2035年の売上を組み立てた。次に営業利益率、GAAP純利益、純利益累計と正味還元から自己資本を計算した。
資本コストは9.0%。全社の堀は普通とし、RONICには超過利益が半分残る前提を使った。中立ではROE23.0%、長期g4.0%、正当化PERの上限約15.6倍に対して13.2倍を採用した。長期gは市場成長・シェア・名目価格から出し、ROEから成長率を逆算していない。
確率加重価値は約63.33億ドルで、2026年10月23日の台帳時価総額123.13億ドルとの差は約-48.6%、判定は割高である。ウェブ上の2026年10月27日時価総額134.7億ドルとの差は基準日後の株価上昇によるもので、株数の大幅な不一致ではない。価値を市場時価総額へ合わせる調整は行っていない。米国会計基準のリース負債は既に財務諸表へ計上されるため、新リース基準の移行による調整は不要である。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality +1.0%を加え、資本コストを9.0%とする。βや現在の株価倍率からは決めない。過去の減損と買収実行リスクは、原則として将来の事業利益と確率に反映する。純負債が大幅に減少しており、現時点で継続企業の存続そのものが危ういとは判断しないため、追加のdistress上乗せはしない。