結論
シノプシスは、半導体設計ソフト(EDA)でケイデンスと並ぶ 2 強の一角で、2025 年 7 月に約 350 億ドルでアンシス(Ansys)を買収し、機械・熱・流体・電磁の物理シミュレーションまで事業を広げた。2025 年 10 月期の売上は 70.5 億ドル(+15%)、アンシスを通期で数える 2026 年 10 月期の売上目標は 97.2 億ドル。会計上の営業利益率は買収の償却・株式報酬・リストラ費用で約 10% にとどまり、会社の見せる非 GAAP の 41.5% と大きく離れる。
事業の質は、複数年契約の経常収益、受注残 109 億ドル、EDA の寡占にある。弱いのは、アンシス買収で膨らんだ有利子負債(2026 年 7 月末で約 100 億ドル、現金 36 億ドル)、2025 年度に中国の規制と大手ファウンドリ顧客の需要不足で崩れた IP 事業、そしてケイデンスよりも遅い EDA の伸び(2026 年 5〜7 月期の EDA は +8.5%、ケイデンスのコア EDA は 4〜6 月期に +18%)である。
部門ごとに数量(市場の実質規模)× 価格(シェア × 単価)で積み上げ、資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4.0%・ROE から利益ベースの正当化 PER を出すと、堀は強い(RONIC 14.7%)ので 15.3 倍。その 8 割の 12.3 倍を中立の 10 年後(2035 年 10 月期)に置いた。売上は 204 億ドル、純利益は 61 億ドル、時価総額は約 753 億ドル。純利益は今の 4 倍以上になるが、倍率が 65 倍から 12 倍へ縮み、さらに年 8.75% で割り引くため、確率で加重した本質価値は今の時価総額の 52%(差 48%)で、結論は「割高」。事業の質への評価は高いが、値段が先取りしている成長は、利益ベースの倍率では正当化できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業はあるか」を問う。チップを設計する限り設計ソフトは要り、複雑さは増え続けるので、答えははっきりしている。「今より強いか」は、アンシスとの一体提案・AI 設計・熱の統合解析が堀を広げる方向、IP の失速・ケイデンスの攻勢・中国の国産化・AI による座席の減少が狭める方向に働き、純度は中〜高である。
オーナー利益は、フリーキャッシュフロー(2026 年度の見通し 約 26 億ドル)から株式報酬(約 11 億ドル)を引いた約 15 億ドルが目安で、今の時価総額 871 億ドルに対して約 1.7% にすぎない。国債の 5% に追いつくには、利益が 3 倍以上にならなければならない。2027 年度に FCF が約 31 億ドルへ、さらに 2030 年度まで年 20% 台で伸びるという会社の計画をそのまま信じても、割り引くと今の値段にほぼ届く程度で、安全域は無い。
資本配分は、買収(アンシス 約 350 億ドル)で事業の幅を広げた一方、借金と償却で利益の質が見えにくくなった。経営の質は高いが、買収後の統合・IP の立て直し・借金の返済が順調に進むかが見えるまでは、確信度を下げる。倍率は正当化 PER 15.3 倍の 8 割(中立の 10 年で 12.3 倍)にし、成長の鈍化と AI のリスクは悲観の確率と数量・シェア・価格で表した。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つに分けて見る。第一はコア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用のハードウェア)で、2025 年 10 月期に約 45 億ドルと推定(売上の約 64%)。論理設計・配置配線・回路の電気的検証・アナログ設計・ハードウェア・エミュレーションといった、チップ設計の全工程のソフトと専用機を、複数年の使用権契約で売る。顧客はエヌビディア・アップル・ブロードコム・クアルコム・AMD・TSMC・サムスンなどで、AI の設計エージェントは使用量や成果に応じた課金の形を探っている。
第二は半導体 IP(約 18 億ドル、約 25%)。インターフェース(PCIe・UCIe・DDR・HBM)や基盤の設計済み回路を他社のチップに組み込ませる事業で、シノプシスは世界最大級。ただし 2025 年度は、中国の輸出規制、大手ファウンドリ顧客(社名は非公表)の需要不足、ロードマップ判断の失敗が重なって落ち込み、2026 年 5〜7 月期にようやく前年比 +11%(4.7 億ドル)へ戻った。
第三がアンシスから引き継いだシミュレーション・解析で、2026 年 10 月期に約 29.8 億ドル(通期の会社見通し)。構造・流体・電磁・光学・半導体物理のソフトを、航空宇宙・自動車・産業機械・半導体に年単位の使用権で売る。調整後営業利益率は設計ソフト全体で 45% 台(2026 年 5〜7 月期は 45.2%)だが、買収の無形資産の償却(年 13 億ドル前後と推定)と株式報酬(年 11 億ドル前後)、リストラ費用(2026 年度に 3.8〜4.1 億ドル)を費用に入れた会計上の営業利益率は約 10% に落ちる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第一は切り替えの費用で、チップ 1 つの設計に数百人が数年かかり、途中でベンダーを替えると検証の環境・工場の認証済みの流れ・過去の設計資産を作り直す。第二は寡占で、シノプシス・ケイデンス・シーメンス EDA の 3 社が市場の 85% 超を握り、新規参入は極めて難しい。第三は幅で、シノプシスは設計の入口から出口まで、さらにアンシスで熱・構造・電磁のシミュレーションまでを 1 社で提案できる唯一の会社になった。エヌビディア・シスコ・メディアテック・サムスンファウンドリが検証済みとする、熱解析を設計の流れに直に組み込んだ「マルチフィジックス・フュージョン」はその具体例で、2027 年から EDA の伸びに寄与すると会社は言う。
資本効率は見かけほどよくない。帳簿の自己資本利益率は 2025 年 10 月期に 4.7%(のれんと無形資産が自己資本 283 億ドルを膨らませ、償却が利益を削る)。アンシスを入れる前の 2023 年は 20%。買収で伸びる会社なので、のれんは除かずに式の ROE を置いた。営業利益率は非 GAAP で 41.5%(2026 年度)から 2027 年度に約 44%、2030 年度に約 50% を会社は掲げるが、株式報酬を費用に入れた会計上の値は 2035 年でも 35% 前後と置いた。
弱点は、IP 事業の判断の誤り(2025 年度の減速と、リストラで約 2,000 人・約 10% の削減)、EDA の伸びがケイデンスに劣ること、借金(有利子負債 約 100 億ドル)、そして 2006 年に営業利益率が 2.8% まで落ちた過去がある景気の振れである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
EDA・IP の世界市場は ESD アライアンスの集計で 2026 年 1〜3 月期に 57.5 億ドル(+12.7%)、年換算で約 230 億ドル。業界ノートの置き方では、EDA(IP を除く)は数量(設計の数と 1 チップの複雑さ)が実質で年 +4%、価格(設計者あたりの使用権の額)が年 +4% で、年 +8% に近い。半導体 IP は市場が約 85 億ドルで実質 +5%、CAE(シミュレーション)は約 200 億ドルで実質 +4%。
競争は 3 つの層で進む。第一は 2 強の取り合いで、ケイデンスは 2026 年 4〜6 月期にコア EDA が +18%、IP が約 +40%、受注残が過去最高の 81 億ドルと勢いがある。同じ時期にシノプシスの EDA は +8.5%(前年同期の +16% の反動もある)、IP は +11%。ケイデンスはデジタル実装と検証の取り合い案件で「圧力」を認めており、シノプシスは AI 設計エージェントとマルチフィジックスで取り返す構えだが、直近はケイデンスが速い。第二は中国で、エンピリアン(Empyrean 華大九天)などが 28 ナノ以上とアナログで国産化を進め、2025 年度のシノプシスの中国売上はアンシスを除いて −22%。米政府は 2025 年 5 月に中国向け EDA に許可を求め、7 月に解いたが、規制は再び動きうる。第三は AI で、設計エージェントが座席数を減らす面と、実行回数と探索を増やす面の両方がある。
循環でいえば、EDA は半導体の設計費が絞られると新規着手が減る。リーマン期の EDA 全体の売上はおよそ 5% の減にとどまったが、シノプシスの株価は山から谷で 43% 落ちた。今は AI 設備投資の山、受注残 109 億ドル、アンシスの統合(会社は 4 年目に 4 億ドルのコスト相乗効果を約束)が重なる、需要の強い局面にいる。
資本政策と M&A
アンシス買収(2025 年 7 月完了、約 350 億ドル、現金と新株の組み合わせ)のために借りた資金は 2026 年 7 月末で有利子負債 約 100 億ドル(短期 10.2・長期 90.2)、現金 36.1 億ドル。2025 年 12 月にエヌビディアが 20 億ドルを出資し、定期ローンの前倒し返済に充てた。リストラは従業員の約 10%(約 2,000 人)で、2026 年度の費用は 3.8〜4.1 億ドル。光学事業(OSG)とパワーアーティストは売却予定で、売上への影響は約 1.1 億ドル。
株主への還元は、2026 年に入ってからの 9 か月は自社株買い 3 億ドルと小さかったが、2026 年 9 月 30 日の投資家説明会で、フリーキャッシュフローの最大 5 割を還元する方針と、近く約 10 億ドルの自社株買いを示した。株式報酬(年 11 億ドル前後)で出る新株を打ち消すと正味の還元は小さい。配当はない。
今後の鍵は、アンシスののれんの減損が出ないか、借金の返済を急ぐあまり成長投資を削らないか、割高な局面で自社株買いを積まないか。IP のロードマップの誤りで壊れた価値を取り戻せるか。売られる側になる可能性は時価総額が大きく小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シノプシスは AI 時代の設計の土台である。受注残は 109 億ドルで、2026 年通期の売上は 97 億ドルと 2025 年度の約 1.4 倍、2027 年度の見通しは +15% の 111.5 億ドル、非 GAAP の営業利益率は 44%(2030 年度に 50%)へ上がる。ハードウェア・エミュレーションは過去最高の四半期で、新規 12 社・既存 66 社の受注が重なった。IP は 2026 年 5〜7 月期に前年比 +11% へ戻り、会社は長期の伸びを 10% 台半ばとし、投資家説明会は IP を 17% 超、シミュレーション解析を 10% 超、EDA を 13% 超と置いた。
アンシスとの統合は独自の強みを生む。熱解析を設計の流れに直に組み込んだマルチフィジックス・フュージョンは、エヌビディア・シスコ・メディアテック・サムスンファウンドリが設計の収束を最大 10 倍速くすると検証し、2027 年から EDA の伸びに乗る。コスト相乗効果 4 億ドルは 4 年目に確実で、リストラはすでに進み、定期ローンは前倒しで返済した。エヌビディアが 20 億ドルを出資して AI 設計で組み、検証エージェントで RTL の検証が最大 50 倍速くなり、30 を超える顧客と協議が進む。アンシスの償却が減るにつれ、会計上の利益率は 2030 年に向けて大きく戻る。
慎重な見方
会社が見せる非 GAAP の利益は株式報酬と買収の償却を足し戻した値で、会計上の営業利益率は 2026 年度に約 10%、GAAP の 1 株利益は非 GAAP の約 4 分の 1 にとどまる。今の時価総額 871 億ドルは会計上の PER で約 65 倍。2030 年度まで年 15% で伸びても、倍率が 20 倍前後へ縮めば今の水準に戻らず、割り引くと今の値段に届かない。2022 年にソフトの倍率が一斉に縮んだのがその例だった。
ケイデンスとの取り合いで遅れが出ている。ケイデンスはコア EDA が +18%、IP が約 +40% で、シノプシスの EDA は +8.5%、IP は +11%。2025 年度の IP の失速はロードマップ判断の誤りと大手ファウンドリ顧客の需要不足で、一度失った顧客を取り戻すのは遅い。アンシスは 350 億ドルの大型買収で、のれんが自己資本の大半を占め、有利子負債は約 100 億ドル、減損が出れば利益と自己資本を同時に削る。約 2,000 人の削減は開発力の低下も招きうる。
中国は 2025 年度に −22%(アンシス除く)で、規制は突然動く。AI の設計エージェントは座席数を減らす面も持つ。顧客(エヌビディア・アップル・ブロードコム)は巨大で、自社の AI 設計基盤を整え、価格の交渉力を持つ。エヌビディアの出資も、顧客が株主になって価格を握るという見方ができる。リーマン期にはシノプシスの株価が山から谷で 43% 落ちた景気の振れも残る。
どちらに重みを置いたか
事業の質(寡占・切り替えの重さ・受注残・アンシスとの幅)では強気の見方が強く、値段(会計上の利益に対する倍率)では慎重な見方が圧倒的に強い。倍率は正当化 PER の 7〜9 割(中立の 10 年 12.3 倍。正当化 PER 15.3 倍・ROE 約 18%・g 4.0%・k 8.75%)で、純利益は株式報酬を費用に入れ、買収の償却だけを税引き後で戻した値で積んだ。確率は 10 年で楽観とやや楽観を合計 28%、やや悲観と悲観を合計 38% とし、IP の不振・ケイデンスとの差・借金で悲観側を厚くした(同じ領域のケイデンスより悲観側を 6 ポイント重く、楽観側を 5 ポイント軽く置いた)。本質価値は今の時価総額の 52%(差 48%)で、結論は「割高」。非 GAAP の利益を前提にした市場の見方との差が大きいので、確信度は中程度とする。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 362.20 ドル694 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 118.48 ドル227 億ドル)。 今の値に割り戻すと 234.45 ドル449 億ドル、今との差 −44.5%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 640.09 ドル1,226 億ドル | 182.73 ドル350 億ドル | +94.8% | +6.9% | 65.83 ドル126 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 503.25 ドル964 億ドル | 155.58 ドル298 億ドル | +55.9% | +4.5% | 131.77 ドル252 億ドル |
| 中立 | 34% | 393.03 ドル753 億ドル | 133.13 ドル255 億ドル | +24.5% | +2.2% | 178.90 ドル343 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 262.93 ドル504 億ドル | 91.37 ドル175 億ドル | −16.1% | −1.7% | 85.03 ドル163 億ドル |
| 悲観 | 14% | 97.21 ドル186 億ドル | 39.68 ドル76 億ドル | −67.6% | −10.7% | 19.17 ドル37 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 362.20 ドル694 億ドル | 118.48 ドル227 億ドル | +13.8% | +1.3% | 480.68 ドル921 億ドル |
今の株価時価総額 422.48 ドル809 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:AI 時代の設計の土台になり、売上 250 億ドル台・会計上の利益率 38% 利益 83 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 640.09 ドル1,226 億ドル
AI が設計の数量を増やし、マルチフィジックスと AI 設計エージェントが価格を引き上げ、IP が回復してシェアを取り戻す筋書き。コア EDA は市場の実質規模が年 5%(1.63 倍)、シェアは 33.6% から 35.9% へ上がり、単価は物価を 8% 上回って 120.3 億ドル。IP は市場が年 6%、シェアが 26.6% へ戻り(2025 年度の失速を取り返す)60.0 億ドル。シミュレーション・解析は市場が年 5%、シェアが 15.7% へ上がり 74.9 億ドル。売上は 255.3 億ドル(2025 年度の擬似値 90.5 億ドルの約 2.8 倍)、会計上の営業利益率は 38.7%(会社の 2030 年度の非 GAAP 50% から株式報酬約 9% と償却を引いた水準)、純利益は 83.4 億ドル(償却を戻した値)。10 年の正味の還元は約 350 億ドルで、借金は返し終えて純現金になる。10 年目の成長はおよそ 8% まで落ち、倍率は長期の g 4.5%(5.0% の伸びは 10 年目までの利益に入れた)の正当化 PER 18.1 倍の 9 割。
- コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード):数量 220(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 54.7%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 120 億ドル・営業利益 52 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP):数量 152(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 39.5%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 60 億ドル・営業利益 19 億ドル。半導体 IP
- シミュレーション・解析(アンシス):数量 326(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 23.0%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 75 億ドル・営業利益 29 億ドル。シミュレーション・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 22.7%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 2/3 ×(ROE 22.7% − k 8.8%)= 18.0%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.4 倍。上限の 9 割の 14.7 倍に置いた:AI が設計の数量を増やし IP が回復してシェアを取り戻す上振れでも、ケイデンスとの差があるので上限の 9 割に置く。 時価総額 = 純利益 83.4 × 14.7 倍 = 1226 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:マルチフィジックスと AI 設計で価格が物価を上回り、IP が戻り、寡占の質も保たれる必要がある。予想の幅が広い 10 年なので 8%。
やや楽観 20% やや楽観:年 +10% 前後の成長が続き、売上 230 億ドル・利益率 36% 利益 71 億ドル · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 503.25 ドル964 億ドル
設計の複雑化が続き、コア EDA の数量が年 4.5%、価格が物価をわずかに上回り、IP とアンシスがシェアを広げる筋書き。コア EDA は市場が 1.55 倍、シェアが 35.2% へ上がり、単価は物価を 6% 上回って 110.2 億ドル。IP は市場が 1.70 倍、シェアが 25.4% へ戻り 52.8 億ドル。シミュレーション・解析はシェアが 15.1% へ上がり 67.4 億ドル。売上は 230.4 億ドル、会計上の営業利益率は 36.5%、純利益は 71.4 億ドル。3 社寡占は崩れず、シーメンス EDA・ケイデンスとの取り合いは個別案件にとどまる。10 年の正味の還元は約 298 億ドル。倍率は長期の g 4.5% の正当化 PER 17.4 倍の 8.5 割。
- コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード):数量 209(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 52.7%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 110 億ドル・営業利益 45 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP):数量 145(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 36.5%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 53 億ドル・営業利益 15 億ドル。半導体 IP
- シミュレーション・解析(アンシス):数量 310(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 21.8%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 67 億ドル・営業利益 24 億ドル。シミュレーション・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 20.1%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 2/3 ×(ROE 20.1% − k 8.8%)= 16.3%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.9 倍。上限の 8.5 割の 13.5 倍に置いた:設計の複雑化が続き IP とアンシスがシェアを広げる筋書き。ケイデンスの攻勢を見て上限の 8.5 割に置く。 時価総額 = 純利益 71.4 × 13.5 倍 = 964 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:寡占・切り替えの重さ・受注残からは十分ありうる。上振れ側では最も重いが、ケイデンスより遅い伸びを考えて 20%。
中立 34% 中立:売上 204 億ドル、会計上の利益率 35%。寡占は保たれ、年 +8% 台で伸びる 利益 61 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 393.03 ドル753 億ドル
コア EDA は市場の実質規模が年 4%(1.48 倍、業界ノートどおり)、シェアは 33.6% を維持し、単価は物価(1.41 倍)を 4% 上回って 98.3 億ドル(利益率 40%)。IP は市場が年 5%、回復でシェアが 23.3% へ 1.1 倍に上がり 45.6 億ドル(利益率 27%)。シミュレーション・解析は市場が年 4%、統合でシェアが 14.4% へ上がり 60.3 億ドル(利益率 33%)。売上は 204.1 億ドル(2025 年度の擬似値の約 2.3 倍、年 +8.5%)、営業利益 71.5 億ドル(会計上の利益率 35.0%)、純利益は 61.2 億ドル(償却を戻した値。GAAP では 57.2 億ドル)。ケイデンスとシーメンス EDA との 3 社寡占は崩れず、AI は設計の数量を増やす面と座席を減らす面が相殺する。10 年の正味の還元は約 255 億ドル(自社株買いから株式報酬と増資の払い込み(エヌビディアの私募 20 億ドル)を引いた値)。倍率は長期の g 4.5%(市場 +1.0%・価格 +3.5%・シェア 0)の正当化 PER 16.7 倍の 8 割。
- コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード):数量 200(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 49.2%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 98 億ドル・営業利益 39 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP):数量 139(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 32.9%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 46 億ドル・営業利益 12 億ドル。半導体 IP
- シミュレーション・解析(アンシス):数量 296(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 20.4%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 60 億ドル・営業利益 20 億ドル。シミュレーション・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 17.7%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 2/3 ×(ROE 17.7% − k 8.8%)= 14.7%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.3 倍。上限の 8 割の 12.3 倍に置いた:コア EDA は市場が年 4% 伸びシェアを維持し、IP が回復してアンシスが統合で伸びる中立。IP の失速とケイデンスの攻勢を見て上限の 8 割に置く。 時価総額 = 純利益 61.2 × 12.3 倍 = 753 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの数量 年 +4%・価格は物価+αを素直に置き、シェアはコア EDA で維持・IP とアンシスで小幅の上乗せ。AI は座席を減らす面と数量を増やす面が相殺する。34%。
やや悲観 24% やや悲観:シェアを譲り年 +6% に鈍り、売上 170 億ドル・利益率 31% 利益 46 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 262.93 ドル504 億ドル
ケイデンスとシーメンス EDA にコア EDA のシェアを譲り、中国の国産ツールが定着し、AI による設計の自動化で座席が減る筋書き。コア EDA は市場が年 3.4%、シェアは 30.9% へ下がり、単価は物価並みで 82.3 億ドル(利益率 36%)。IP は市場が年 4%、シェアが 19.8% にとどまり 35.6 億ドル、シミュレーション・解析はシェアが 13.3% へ下がり 52.7 億ドル。売上は 170.5 億ドル(年 +6%)、営業利益率は 30.8%、純利益は 46.2 億ドル。アンシスののれんに約 40 億ドルの減損が出て自己資本が減る。10 年の正味の還元は約 175 億ドル。倍率は長期の g 4.0%(市場 +0.8%・価格 +3.5%・シェア −0.3%)の正当化 PER 14.9 倍の 8 割。
- コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード):数量 189(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 43.5%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 82 億ドル・営業利益 30 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP):数量 128(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 27.9%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 36 億ドル・営業利益 8 億ドル。半導体 IP
- シミュレーション・解析(アンシス):数量 280(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 18.8%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 53 億ドル・営業利益 15 億ドル。シミュレーション・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 15.1%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 2/3 ×(ROE 15.1% − k 8.8%)= 13.0%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.6 倍。上限の 7.5 割の 10.9 倍に置いた:ケイデンスとシーメンスにシェアを譲り、中国の国産ツールが定着して AI で座席が減る筋書き。上限の 7.5 割に置く。 時価総額 = 純利益 46.2 × 10.9 倍 = 504 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:ケイデンスとシーメンス EDA の攻勢、中国の国産化、AI による座席の減少がじわじわ効く筋書き。IP の不振の実績とアンシスの減損のおそれを考えて 24% と重めに置いた。
悲観 14% 悲観:AI が設計を自動化し、座席と単価が崩れて売上は 10 年でほぼ横ばい 利益 21 億ドル · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 97.21 ドル186 億ドル
AI エージェントが検証・実装の大半を代行して必要な座席と実行回数が減り、顧客(エヌビディア・アップル・ブロードコム)は自社の AI 設計基盤で価格交渉力を持ち、中国は国産化で切り離され、IP は顧客を取り戻せず、アンシスの製造業向けは汎用の解析に価格を削られる筋書き。寡占の価格決定力が崩れ、もう優良ではなくなる。コア EDA は市場が 1.16 倍にしか伸びず、シェアは 26.8% へ 2 割失い、単価は物価に対し 2 割低く 47.4 億ドル(利益率 29%)。IP は 18.0 億ドル、シミュレーション・解析は 32.5 億ドル。売上は 97.9 億ドル(2026 年度の見通しと同水準で、物価を考えると実質で約 3 割の減)、営業利益 22.8 億ドル、純利益は 21.4 億ドル(償却を戻した値)。アンシスののれんに約 100 億ドルの減損が出て自己資本が縮み、10 年の正味の還元は約 76 億ドルにとどまる。倍率は長期の g 3.0%(市場 +0.5%・価格 +3.0%・シェア −0.5%)の正当化 PER 12.2 倍の 7.5 割。 10 年の純利益の累計は約 −20 億ドル。償却を戻した値の累計は約 175 億ドル(2026〜28 年度に年 13〜15 億ドル、その後は 16 億ドルから 21.4 億ドルへ緩やかに戻る)で、そこから無形資産の償却(年 10 億ドル前後から 8 億ドルへ、合計で約 95 億ドル)と、のれんの減損 100 億ドルを引いた。償却と減損の金額は仮に置いた。自己資本は 283 +(−20)− 還元 76 = 187 億ドルが目安で、210 は償却が早く減る分を見て少し高めに置いた。
- コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード):数量 157(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 30.3%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 47 億ドル・営業利益 14 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP):数量 102(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 17.6%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。半導体 IP
- シミュレーション・解析(アンシス):数量 232(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 14.0%(1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 33 億ドル・営業利益 7 億ドル。シミュレーション・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 10.2%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 2/3 ×(ROE 10.2% − k 8.8%)= 9.7%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.4 倍。上限の 7 割の 8.7 倍に置いた:AI エージェントが検証を代行して座席が減り、大手顧客が価格交渉力を持つ構造的な悲観。上限の 7 割に置く。 時価総額 = 純利益 21.4 × 8.7 倍 = 186 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの構造的な悲観(AI による自動化・中国の切り離し・価格の低下)。寡占に法的な壁は弱く、顧客が巨大で交渉力が強く、買収後の借金と減損も重なるので 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コア EDA(アンシスを除く設計ソフトと検証用ハード)
チップ設計の全工程のソフトと検証用の専用機(エミュレーション・プロトタイピング)。複数年の使用権契約が中心。
| 数量コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く) | 価格1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 135 | 33.6% | 45 | 14 |
| 10 年後 中立 | 200 | 49.2% | 98 | 39 |
取り方:2025 年 10 月期の売上 70.54 億ドルから、アンシスの寄与 7.57 億ドル(10-K)と IP の推定 17.7 億ドルを引いて 45.3 億ドル。EDA(IP を除く)の市場は、シノプシス・ケイデンス約 37 億ドル・シーメンス EDA 約 23〜25 億ドルを 3 社で 85% 超として約 135 億ドルと置き、シノプシスのシェアは約 33.6%(業界ノート)。数量=市場の実質規模、価格=シェア × 単価(物価は 10 年 1.41 倍が中立)。営業利益率は会計上 30% と推定(株式報酬を費用に入れ、買収の償却は小さい)。競合はケイデンス・シーメンス EDA・中国のエンピリアン。
半導体 IP(インターフェース・メモリ・基盤 IP)
他社のチップに組み込む設計済みの回路(PCIe・UCIe・DDR・HBM など)。2025 年度は不振、2026 年 5〜7 月期に +11% へ戻った。
| 数量半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85.0 | 20.8% | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 139 | 32.9% | 46 | 12 |
取り方:IP を 2025 年 10 月期に約 17.7 億ドルと推定(2026 年 5〜7 月期は 4.74 億ドル・前年比 +11%、前年同期 4.28 億ドル)。IP の世界市場は ESD アライアンスの 2026 年 1〜3 月期 23.3 億ドル(年換算 約 93 億ドル)から 2025 年を約 85 億ドルと置き、シェア約 20.8%。営業利益率は会計上 12% と推定(調整後は 26.5% だが、株式報酬・償却・開発費の配賦で落ちる)。
シミュレーション・解析(アンシス)
構造・流体・電磁・光学・半導体物理のシミュレーション。2025 年 7 月に買収したアンシスの事業。
| 数量設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのシノプシス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 13.8% | 28 | 2 |
| 10 年後 中立 | 296 | 20.4% | 60 | 20 |
取り方:2025 年 10 月期の報告売上にはアンシスが 7.57 億ドル(買収後の 3.5 か月)しか入っていないので、通期の擬似値 27.5 億ドルで置く(2026 年度の会社見通しは約 29.8 億ドル)。CAE の世界市場を約 200 億ドル(業界ノート)と置き、シェア約 13.75%。営業利益率は買収の無形資産の償却(年 13 億ドル前後と推定)で会計上 8% と推定。
リスクと懸念
株式報酬と買収の償却を費用に入れた利益の薄さ
2026 年度の会計上の営業利益率は約 10%(非 GAAP は 41.5%)、GAAP の 1 株利益は非 GAAP の約 4 分の 1。株式報酬は年 11 億ドル前後、アンシスの償却は年 13 億ドル前後と推定され、今の値段は非 GAAP に近い見方を織り込みやすい。償却は年々減るが、株式報酬は事業の費用として残る。
ケイデンスとの取り合いと伸びの差
直近の四半期はケイデンスのコア EDA が +18%・IP が約 +40%、シノプシスの EDA が +8.5%・IP が +11%。デジタル実装と検証で取り合いが続き、シェアと価格の両方で譲れば、EDA(売上の約 5 割)の伸びが年 1〜2 ポイント下がる。
IP 事業の立て直しの遅れ
2025 年度は中国の規制・大手ファウンドリ顧客の需要不足・ロードマップの誤りで IP が落ち込み、2026 年 5〜7 月期に +11% へ戻った段階。会社は 10% 台半ばを長期の目標とするが、一部の大手顧客への依存と、アームやケイデンスの攻勢で、17% 超という投資家説明会の目標は届かない可能性がある。
借金とアンシスののれんの減損
アンシス買収(約 350 億ドル)で有利子負債が約 100 億ドルに膨らみ、自己資本の大半がのれんと無形資産。リストラ(約 2,000 人)と統合が遅れる、顧客(自動車・航空宇宙)の解析ソフトが乗り換えられないなどで利益が落ちれば、減損と金利負担が同時に重なる。
中国の規制と国産化
2025 年度の中国売上はアンシスを除いて −22%。2025 年 5 月に米政府が中国向け EDA に許可を求め 7 月に解いたように、規制は突然動く。エンピリアンなど国産ツールは 28 ナノ以上とアナログで定着し、長期には切り離しが進む。
AI による設計の自動化と顧客の交渉力
設計エージェントは座席数を減らす可能性がある。使用量課金への移行は収益を増やす面もあるが、価格づけの方法はまだ手探りで、顧客(エヌビディア・アップル・ブロードコム)は巨大で自社の AI 設計基盤を整え、交渉力を持つ。エヌビディアが株主になったことで取引の力関係も変わりうる。
半導体の景気と AI 設備投資の山
2006 年に営業利益率が 2.8% まで落ち、リーマン期には株価が山から谷で 43% 下がった。今は AI 設備投資の山にあり、投資が止まる・効率が疑われると同じ向きに崩れる。受注残 109 億ドルが緩衝になる。
今後の分かれ目
- EDA の売上の伸びがケイデンスのコア EDA に並ぶ(年 +15% 前後)まで戻り、マルチフィジックス・フュージョンの追加売上が見えたら
- 取り合いで負けていない合図。コア EDA のシェアを微増に置き直し、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 会計上の営業利益率が 2027 年度に 20% を超えて戻り、リストラ費用と償却が減ったら
- 会社の計画どおり利益の質が戻っている合図。10 年の利益率を 1〜2 ポイント上げて見る。
- IP の売上が 2 年続けて年 +15% を超え、特定のファウンドリ以外の先端工程向けの契約が広がったら
- 投資家説明会の 17% 超に近づく合図。IP のシェアを上げ、10 年の IP の売上を 1 割上げて見る。
- 米政府が中国向け EDA に再び許可を求めたら
- 中国売上が直撃する。10 年の悲観・やや悲観の確率を上げ、シェアの置き方を中国分だけ下げて見る。
- 顧客が AI 設計エージェントを使って座席数を減らし始めたら
- 座席ベースの売上の伸びを下げ、10 年の悲観の確率を上げる。使用量課金への移行で売上が補われるなら価格の置き方を上げる。
- アンシスののれんの減損や、50 億ドル級の追加買収が出たら
- 資本配分に疑いが出る。買収のたびに ROE が下がるので、10 年の ROE を下げ、倍率を 1〜2 倍下げて見る。
見ておくもの
- EDA・IP・シミュレーション解析の売上の伸びと、受注残(109 億ドル)の水準
- 会計上と非 GAAP の営業利益率の差(株式報酬・償却・リストラ費用)
- ケイデンスとの伸びの差(EDA・IP)と、取り合い案件の勝敗・価格
- IP の伸び(先端工程向け)と、2027 年度の売上 111.5 億ドルの達成
- 有利子負債(約 100 億ドル)の返済と、自社株買い(約 10 億ドル)の実行、のれんの減損
- 中国の売上比率と米政府の輸出規制、AI 設計エージェントの収益化
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 871 億ドルや PER 約 65 倍を見る前に、部門ごとに数量(市場の実質規模)と価格(シェア × 単価、物価は 10 年 1.41 倍)を置き、利益率を積み上げた。倍率は利益ベースの正当化 PER (1−g/RONIC)/(k−g)(k 8.75%=基本 8.0% + quality +0.75%、RONIC = k + 2/3 ×(帳簿の自己資本 ROE − k)、EDA の寡占を強い堀と見る、g 4.0%)の 7〜9 割に置き、10 年中立は上限 15.3 倍の 8 割の 12.3 倍。総合の差は -48%(割高)で、今の株価に寄せず式から出した値である。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 1.13 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(β は使わない)。EDA は複数年契約で景気に強いが、IP は半導体の景気と大手ファウンドリの需要に左右される(cycle +0.25)。値決めは寡占で強い一方、大手顧客の交渉力と IP の価格圧力があり pricing は 0。アンシス買収で純負債は 113 億ドル(時価総額の 13%)、EBITDA の約 3 倍を超える(debt +0.5)。EDA の標準の地位は 10 年先も続くと見て life は 0(強い堀は筋書きのシェアで扱う)。IP の不振・ケイデンスとの取り合い・中国・減損は k に重ねず、筋書き(数量・シェア・価格・利益率)と確率(やや悲観・悲観を 10 年で 38%)で表した。
同じ業種(情報技術)の AI 分析
読んだ資料
- Synopsys 2026 年 5〜7 月期(第 3 四半期)決算(売上・部門別・貸借対照表・通期見通し)
- Synopsys 第 3 四半期決算 8-K(2026-08-26)
- Synopsys 第 3 四半期 決算説明会の記録(EDA・IP・アンシスの寄与・相乗効果・AI)
- Synopsys 2026 年投資家説明会(長期目標・2027 年度見通し・株主還元)
- Synopsys 2025 年度 10-K(アンシスの寄与・IP の不振要因・中国)
- Synopsys 2025 年度 第 4 四半期決算 8-K(2026 年度の見通し・売却予定事業)
- Synopsys が従業員約 2,000 人(約 10%)を削減
- Synopsys の動き:中国の逆風・エヌビディアとの提携・利益率
- ESD アライアンス:2026 年 1〜3 月期の EDA 売上
- Cadence 2026 年 4〜6 月期 決算 8-K(比較:コア EDA・IP の伸び)