結論
ノキアは、携帯電話メーカーから通信ネットワークと特許の会社へ生まれ変わったフィンランド企業である。筆者の結論は割高だ。AI向け光通信の成長には期待できるが、その利益が株主の資本に十分な利回りをもたらすかは、まだ証明されていない。
2026年10月22日に発表された第3四半期決算では、光通信とIPネットワークが成長を牽引した。AI・クラウド顧客向け売上は前年同期比123%増え、新規受注も大幅に伸びた。インフィネラの統合は予定より早く進んでおり、会社は2027年の光通信とIPネットワークの合計売上について25〜30%の成長を見込む。事業の方向は確かに良くなっている。
しかし、会社の大半は依然として通信事業者の設備投資に左右される。無線基地局ではファーウェイとエリクソンに続く立場で、価格を一方的に決められない。過去10年のROE中央値は1.4%にすぎず、規模の大きさが株主の高い収益率につながってこなかった。特許収入は優良だが、その強さを設備事業の全体に広げて考えるべきではない。
2036年の中立では、光通信の拡大と事業再編により売上304億ドル、営業利益49億ドル、純利益32億ドルを見込む。その時点の会社全体の価値は約333億ドルとなる。10年間の正味株主還元120億ドルも含め、資本コスト9.0%で現在価値に直した確率加重評価は約216億ドルである。現在の時価総額448億ドルより約52%低い。通信インフラは10年後も必要だが、それを供給するノキアの利益と株主価値は別に考える必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノキアは必要な技術を持つ会社だが、長く保有するだけで高い利回りを得られる会社とはまだ言えない。10年後にも通信網は必要であり、基地局、光伝送、IPルーター、通信規格の特許も残る。しかし、必要とされる産業で働いていることと、供給企業が十分な利益を得ることは別である。
本来、株主が受け取るべきなのは売上でも調整後営業利益でもない。機器の研究開発、設備更新、運転資金、株式報酬を差し引いた後に残る利益である。2025年はフリーキャッシュフローが約16.5億ドルだったが、純利益は約7.1億ドルだった。将来の設備更新や統合費用を考えると、単年度の現金収入をそのまま永久に受け取れるものとして評価できない。
最も魅力的なのは特許収入だ。約250社を超えるライセンス先との契約は、設備の製造を伴わず現金を生む。反対に、無線設備では競争に勝つための研究開発を続ける必要があり、利益を稼ぐだけでなく、その利益を守るために資金を使う。会社全体として強い堀を認めない理由はここにある。
中立の10年後にはROEが約10%へ回復すると見込むが、それでも資本コスト9%との差は小さい。増分の投資が長期的に大きな超過収益を生むとまでは考えず、特許の安定収入と機器の改善を別々に評価する。現在の448億ドルという時価総額は、成長が続くだけでなく、利益率と資本効率が相当改善することまで期待している。悲観に耐えられる安全域を重視すると、現状の価格を正当化するのは難しい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は2026年からの新しい区分で、ネットワーク・インフラストラクチャーとモバイル・インフラストラクチャーの2つである。2025年の売上224.5億ドルは、光通信、IPネットワーク、固定通信、無線基地局、通信網の中核ソフト、通信規格の特許使用料、非中核事業に分けられる。以下の金額は添付factsのドル換算売上に合わせ、会社の2025年組替後セグメント開示を基準にしている。
光通信では、光ファイバーの両端に置く高速伝送装置やデータセンター間を結ぶ装置を売る。2025年2月に買収を完了したインフィネラは、光部品と高速伝送の技術をもたらした。IPネットワークでは、通信量を振り分ける大型ルーターやデータセンター用スイッチを売る。固定通信では、光回線の局側装置や加入者向け接続機器を提供し、通信事業者の更新需要から売上を得る。
最大の売上源である無線基地局は、携帯電話会社が5Gや将来の6Gの基地局を建て替えるときに機器とサービスを売る事業だ。中核ソフトは、5Gの通信制御、加入者管理、ネットワーク運用を担う。どちらも設置後の更新や保守はあるが、通信事業者の設備投資予算が減れば新規受注は減る。
最も質の高い利益は通信規格の特許から生まれる。ノキアは約2万6000の特許ファミリーを保有し、5Gの必須特許に関係するものだけでも8000超を公表している。スマートフォン、自動車、映像機器などのメーカーから使用料を受け取り、250社以上のライセンス先を持つ。機器を大量生産せずに稼げる反面、特許の更新、契約交渉、訴訟、規格の変化によって収入は動く。
2026年には利益率の低い非中核事業の整理も始まった。固定無線アクセス端末事業の売却は10月1日に完了し、企業向けキャンパスエッジ事業は売却契約が結ばれた段階にある。後者は2026年10月28日時点で未完了であり、売却の成否と条件には不確実性が残る。
優良さと弱いところ
ノキアの競争上の堀は、通信網の運用に深く組み込まれた技術と標準必須特許である。通信事業者は基地局やルーターを交換するとき、既存の設備との接続、障害対応、通信品質の試験に時間と費用を使う。そのため、一度採用された製品には一定の継続性がある。ベル研究所を含む研究開発の蓄積と、通信規格の制定に関わる立場も参入障壁だ。
ただし、切り替えにくいことは値上げできることと同じではない。基地局の大型契約は複数社の入札になり、顧客は価格と電力効率を厳しく比較する。ノキアは2025年に無線市場でシェアを回復したが、世界順位はファーウェイ、エリクソンに続く3位である。光通信でもシエナ、ファーウェイとの競争が続き、2025年のインフィネラ買収で増えた規模が、そのまま価格決定力に変わったとは言えない。
特許事業は別格である。通信規格を利用する製品が広く普及するほど、特許権者は機器の販売数量に直接依存せず使用料を得られる。もっとも、その利益を維持するためには新しい規格への研究開発が必要で、過去の特許だけで永久に稼げるわけではない。規制や訴訟による使用料の制約もある。
資本効率は厳しく評価する。2016年のアルカテル・ルーセント統合で規模は増えたが、株式数も大幅に増え、その後の利益は安定しなかった。2025年のROEは2.9%であり、過去10年の中央値は1.4%である。2026年に改善の兆しは出たものの、成長投資の増分収益率が資本コストを継続的に上回るという証拠はまだ弱い。堀は特許では強いが、会社全体では普通と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通信設備市場は、一見するとAIの普及で急成長する市場に見える。しかし、実際には光通信とデータセンター接続が伸びる市場と、通信事業者の設備更新が中心の成熟市場に分かれる。ノキアは両方に大きな事業を持つため、純粋なAIネットワーク企業と同じ成長率を期待することはできない。
デルオロの調査では、2025年の世界光伝送装置市場は約160億ドルだった。主要メーカーはファーウェイ、シエナ、ノキア、ZTE、シスコである。インフィネラ統合後のノキアの関連売上から計算した粗いシェアは約21%となる。2036年の中立では、2025年の価格で測った市場が約230億ドルへ拡大し、ノキアが約25%を取ると考える。ただし高速化によって1Gbps当たりの価格は下がるため、通信量の伸びほど売上は増えない。
IPルーター市場でもデータセンター間の接続が成長源となる。デルオロは高性能ルーター・集約スイッチ市場が2030年に190億ドルへ達すると予想している。ここにはシスコ、ファーウェイ、HPE傘下のジュニパーが競合として存在する。ノキアは通信事業者向けルーターに強く、2026年第3四半期のIPネットワーク売上は前年同期比43%増だった。だが、その伸びが2030年代も続くと決めつけることはできない。
無線設備では状況が違う。オムディアによれば2025年の世界RAN市場は約350億ドルで、デルオロは2030年までの成長を年率約1%と見込む。ノキアの競争相手はファーウェイ、エリクソン、ZTE、サムスンであり、基地局の台数が急増する市場ではない。6Gは新たな更新需要を生むが、通信事業者が5G投資から十分に利益を得られなければ更新時期は延びる。
AIを巡っては、エヌビディアとのAI-RAN共同開発や2026年の実網試験が注目される。AIの計算を基地局に組み込む構想は有望だが、商用で大きな利益を得る段階にはまだ至っていない。ノキアにとって今後の勝負は、光通信でシエナに迫り、IPネットワークでシスコやジュニパーと競り、無線ではシェアの低下を防ぐという、異なる3つの競争を同時に進めることになる。
資本政策と M&A
資本配分の歴史は成功と失敗が混在する。2014年に携帯端末事業を売却し、2015年には地図事業HEREを手放した。2016年のアルカテル・ルーセント統合では、通信設備の規模と特許を獲得したが、株数は大きく増加した。その後の低いROEを見る限り、統合が長期株主に十分な利益を生んだとまでは言えない。
2025年のインフィネラ買収は、光通信で北米とデータセンター顧客への足場を広げる判断だった。2026年第3四半期には、会社は統合を予定より1年早い2026年末までに終え、年間約2億ユーロの正味相乗効果を得る見通しを示した。一方、統合・構造改革費用は重く、2026年の報告営業利益は調整後を大きく下回っている。
会社の2026年の調整後営業利益予想は約24〜30億ドル相当で、2028年目標は約32〜37億ドル相当である。長期の現金化率目標は調整後営業利益の65〜75%だが、2026年は運転資金投資やリストラで35〜55%に下げられた。調整後利益がそのまま株主に配れるわけではない。
2024年には約6億ユーロの自社株買いを完了し、2025年にはインフィネラ買収に伴う希薄化を相殺する買い戻しも行った。添付factsでは2025年の配当は約8.6億ドル、自社株買いは約7.0億ドルである。2025年のエヌビディアによる約10億ドルの出資は成立済みで、現在の株式構成に含まれる。今後10年間の総還元額について確定した数値の約束はないため、事業の利益と必要投資から独自に見積もる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光通信はAI時代の通信網を支える不可欠な設備になりつつある。AIの計算設備が各地に分散するほど、データセンター間を結ぶ高速光回線が必要となる。ノキアはインフィネラ買収で光伝送の製品群と北米の顧客基盤を拡大した。2026年第3四半期にはAI・クラウド顧客向け売上が倍増し、新規受注も増えている。会社が2027年の光通信・IPネットワーク合計で25〜30%の成長を見込むのは、すでに顧客の投資計画を受けているからだ。
さらに無線設備でも、エヌビディアとの協業が新しい競争軸を作る可能性がある。基地局の計算能力をAIと共有するAI-RANが普及すれば、従来の無線装置より機能が増える。ノキアは通信規格と基地局の実装技術を持っており、単なる安価な装置メーカーとは違う立場を築けるかもしれない。
特許事業には、光通信や無線設備より安定した収益構造がある。通信規格に関わる必須特許は、機器メーカーの順位が変わっても利用される。自動車やIoTへのライセンス拡大が進めば、スマートフォン依存も下がる。2026年からの組織再編で経費を減らし、非中核事業を売却すれば、これまで見えにくかった利益が表に出てくる。
こうした改善が重なれば、2036年の売上は400億ドルを超え、営業利益率は20%を上回る。光通信の競争力と特許の稼ぐ力が両立すれば、現在の利益水準からは想像しにくい大きな株主価値が生まれる。
慎重な見方
2026年のAI関連受注の伸びを、そのまま10年先へ延ばすのは危険である。光通信装置は通信量が増えても、1Gbps当たりの価格が下がる。シエナ、ファーウェイ、シスコとの競争に加え、データセンター事業者は光部品やネットワーク制御を内製する可能性がある。インフィネラの買収で売上が増えても、統合した設備と研究開発費を回収できなければ株主の利益は増えない。
最大の事業である無線基地局は、そもそも高成長市場ではない。2025年の市場は安定化したが、成長率は低い。ファーウェイとエリクソンは規模が大きく、通信事業者は2社以上の供給元を競わせる。6Gの技術開発にも多額の資金が必要だ。次世代技術で勝てなければ、研究開発費だけが残る。
2026年第3四半期は調整後営業利益が改善したが、報告営業利益率は3.8%だった。リストラと統合費用を除けば良い会社に見えるとしても、過去の再編を振り返ると、費用が完全になくなると期待するのは早い。実際、2016年の大型統合後も低い資本効率が長く続いた。
特許収入も無条件に安全ではない。古い権利は満了し、新しい規格では他社も必須特許を持つ。使用料には公平・合理的・非差別的な条件が求められ、裁判や政策で回収額が変わる。設備で負け、特許の成長も止まれば、ノキアは多額の自己資本を持ちながら利益を十分に稼げない会社のままになる。
どちらに重みを置いたか
光通信の成長は実績を伴い始めたため、全面的な衰退を前提にはしない。ただし、2026年の調整後利益と報告利益の差は大きく、設備事業が資本コストを超える収益を安定して生む証拠も不足している。確率は楽観側28%、中立34%、悲観側38%と、やや慎重な側に寄せた。特許収入と純現金が最悪時の下支えになる一方、成長が普通に進むだけでは現在の時価総額を十分に正当化できない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 6.20 ドル341 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 2.00 ドル110 億ドル)。 今の値に割り戻すと 3.92 ドル216 億ドル、今との差 −54.2%、 期待の年率 −0.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 16.56 ドル911 億ドル | 3.45 ドル190 億ドル | +133.8% | +10.0% | 1.80 ドル99 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 10.00 ドル550 億ドル | 2.91 ドル160 億ドル | +50.8% | +4.8% | 2.45 ドル135 億ドル |
| 中立 | 34% | 6.05 ドル333 億ドル | 2.18 ドル120 億ドル | −3.9% | −0.5% | 2.80 ドル154 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 2.19 ドル121 億ドル | 1.45 ドル80 億ドル | −57.4% | −9.8% | 0.91 ドル50 億ドル |
| 悲観 | 13% | 1.61 ドル89 億ドル | 0.22 ドル12 億ドル | −78.6% | −14.9% | 0.24 ドル13 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 6.20 ドル341 億ドル | 2.00 ドル110 億ドル | −4.2% | −0.5% | 8.20 ドル451 億ドル |
今の株価時価総額 8.56 ドル471 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:AI光通信で世界の中心企業となり、無線事業も再生する 利益 68 億ドル · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16.56 ドル911 億ドル
2036年にはAIの計算拠点が世界各地に分散し、それらを結ぶ高速光通信が大きな市場となっている。光伝送市場は2025年価格で約280億ドルへ拡大し、ノキアはシエナとの競争を制してシェアを約30%まで伸ばす。光通信売上は111億ドル近くになり、利益率も21%へ上がる。IPネットワークではシスコやジュニパーからシェアを奪い、78億ドルの売上を得る。
無線設備ではエヌビディアとのAI-RANが商用化し、基地局の更新需要を取り込む。ファーウェイとエリクソンに対して電力効率と運用性能で差別化し、無線売上は117億ドル近くに伸びる。通信規格の特許は自動車、IoT、6Gでも利用が広がり、特許収入は32億ドルに達する。
非中核事業の整理とインフィネラの統合は計画以上の成果を上げ、研究開発費の重複が減る。全社の営業利益は95億ドル、純利益は68億ドルになる。期間中には累計190億ドルを正味で株主へ返しながら、AI向け製品と次世代通信の研究開発を進める。10年後の自己資本は約432億ドルで、資本効率も明確に改善している。
- 光ネットワーク:数量 85.0(世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.30(2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数)→ 売上 111 億ドル・営業利益 23 億ドル。2025年価格の世界市場280億ドル×シェア約30%。シエナを上回る製品競争力が定着。
- IPネットワーク:数量 63.0(高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.24(2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数)→ 売上 78 億ドル・営業利益 17 億ドル。実質市場260億ドル×シェア約24%。データセンター間接続でシスコなどからシェアを獲得。
- 固定ネットワーク:数量 29.0(世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.25(2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数)→ 売上 36 億ドル・営業利益 5 億ドル。実質PON市場150億ドル×シェア約19%。高付加価値アクセス装置への更新。
- 無線ネットワーク:数量 92.0(世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.27(2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数)→ 売上 117 億ドル・営業利益 18 億ドル。実質RAN関連市場440億ドル×シェア約21%。AI-RANと6Gの更新が成功。
- コアソフトウェア:数量 38.0(通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.27(2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数)→ 売上 48 億ドル・営業利益 11 億ドル。実質市場250億ドル×シェア約15%。5GコアからAI自動化基盤へ拡張。
- 通信規格・特許ライセンス:数量 19.0(スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当)× 価格 1.70(対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算)→ 売上 32 億ドル・営業利益 25 億ドル。19億台相当の契約量。自動車・IoT・6Gの追加ライセンスが広がる。
- 非中核ポートフォリオ事業:数量 0.7(対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当)× 価格 1.20(2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。非中核事業の大部分を売却し、ごく小規模な残存事業のみ。
倍率:資本コストk9.0%、2036年のROE15.8%、普通の堀で超過収益の残存割合1/2とする。RONICは12.4%。2036年以降のgは4.0%で、実質市場の伸び約1.6%、シェア改善約0.8%、価格上昇約1.6%の合成。来期利益基準の正当化PERに1+gを掛けた上限は約14.1倍。その93%となる13.1倍を使用。高い利益率の持続には競争上の不確実性が残るため上限を使い切らない。IFRS報告純利益68.0から余剰現金25.0の税後利息相当0.35を除いた67.65×13.1+現金25.0=911.2億ドル。
確率:AI設備投資が長く続き、インフィネラ統合とAI-RANの商用化がともに成功する筋書き。必要な条件が多いため9%とする。
やや楽観 19% やや楽観:光通信が成長し、無線設備の収益性も回復する 利益 46 億ドル · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.00 ドル550 億ドル
光通信はAI設備投資の恩恵を受け続けるが、競争は残る。2036年の実質光伝送市場は約260億ドルとなり、ノキアはシェアを約27%へ伸ばす。光通信売上は85億ドルとなり、利益率は18%に改善する。IPネットワークも通信事業者とデータセンターの双方で拡大し、約59億ドルを売り上げる。
無線設備ではファーウェイとエリクソンが引き続き強く、ノキアは価格競争に参加せざるを得ない。それでも製品の電力効率が改善し、無線売上は106億ドル、利益率は12%へ上がる。中核ソフトは通信網の自動化から収入を増やし、特許ライセンスは約26億ドルに成長する。
インフィネラの統合効果はおおむね実現し、余分な製品群と不採算事業を整理できる。全社の営業利益は67億ドル、純利益は46億ドルとなる。正味の株主還元は10年間で160億ドルに達し、自己資本は約352億ドルに増える。利益を生む事業に投資しながら、株主へ資金を返せる会社へ変わる筋書きである。
- 光ネットワーク:数量 70.0(世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.22(2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数)→ 売上 85 億ドル・営業利益 15 億ドル。実質市場260億ドル×シェア約27%。インフィネラ統合の成果が定着。
- IPネットワーク:数量 48.0(高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.23(2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数)→ 売上 59 億ドル・営業利益 11 億ドル。実質市場240億ドル×シェア20%。データセンター接続の成長を獲得。
- 固定ネットワーク:数量 26.0(世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.30(2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数)→ 売上 34 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質PON市場145億ドル×シェア約18%。光アクセスの更新が順調。
- 無線ネットワーク:数量 80.0(世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.32(2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数)→ 売上 106 億ドル・営業利益 13 億ドル。実質RAN関連市場420億ドル×シェア約19%。市場成長は限定的。
- コアソフトウェア:数量 33.0(通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.30(2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数)→ 売上 43 億ドル・営業利益 9 億ドル。実質市場240億ドル×シェア約14%。通信網の自動化需要を獲得。
- 通信規格・特許ライセンス:数量 17.0(スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当)× 価格 1.55(対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算)→ 売上 26 億ドル・営業利益 19 億ドル。17億台相当の契約量。特許使用料は物価未満の伸びだが契約対象が増える。
- 非中核ポートフォリオ事業:数量 0.8(対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当)× 価格 1.15(2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。非中核事業は大部分が会社から外れる。
倍率:ROE13.1%、k9.0%、普通の堀1/2からRONICは11.0%。2036年以降のg3.5%は、実質市場の伸び約1.0%、シェア横ばい、価格約2.5%の合成。正当化PERの上限は約12.85倍で、その90%を使用。光通信の増分利益には競争と設備投資の負担があるため上限より低くする。IFRS報告純利益46.0から余剰現金20.0の税後利息相当0.28を除き、45.72×11.6+現金20.0=550.4億ドル。
確率:AI向け光通信の受注増加と統合効果が続くが、基地局市場で急激なシェア回復までは起きない筋書き。会社の2026年時点の事業方針から比較的実現可能性があるため19%。
中立 34% 中立:光通信は伸びるが、無線設備の低成長が全社を抑える 利益 32 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.05 ドル333 億ドル
2036年には光通信市場が2025年価格で約230億ドルへ広がる。ノキアはインフィネラ統合の成果を一定程度保ち、シエナやファーウェイとの競争の中でシェアを約25%へ上げる。光通信売上は69億ドルとなり、営業利益率は15.5%になる。IPネットワークでもデータセンター間接続が伸び、売上は50億ドルに増える。
反対に、無線基地局は世界市場が緩やかに伸びるだけで、ノキアのシェアは低下する。ファーウェイとエリクソンの規模に対抗するには値引きと開発投資が必要であり、無線売上は96億ドル、利益率は10.5%にとどまる。中核ソフトは顧客基盤を維持し、通信規格のライセンス収入は23億ドル程度となる。
非中核事業の大部分は売却され、全社売上は約304億ドルに増える。営業利益は約49億ドル、純利益は32億ドルとなり、過去の低い利益率から改善する。10年間の正味還元は120億ドルで、自己資本は約322億ドルとなる。ROEは約10%に回復するが、資本コストとの差はまだ小さい。光通信で勝ち、無線で大きく負けないという、控えめな回復の筋書きである。
- 光ネットワーク:数量 58.0(世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.19(2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数)→ 売上 69 億ドル・営業利益 11 億ドル。実質市場230億ドル×シェア約25%。容量単価の下落で価格指数は物価1.41を下回る。
- IPネットワーク:数量 42.0(高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.19(2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数)→ 売上 50 億ドル・営業利益 9 億ドル。実質市場230億ドル×シェア約18%。シスコやジュニパーとの競争が続く。
- 固定ネットワーク:数量 22.0(世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.32(2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数)→ 売上 29 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質PON市場140億ドル×シェア約16%。数量面でのシェア低下を単価上昇が一部補う。
- 無線ネットワーク:数量 72.0(世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.33(2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数)→ 売上 96 億ドル・営業利益 10 億ドル。実質RAN関連市場400億ドル×シェア約18%。6G更新があっても競争は厳しい。
- コアソフトウェア:数量 30.0(通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.23(2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数)→ 売上 37 億ドル・営業利益 6 億ドル。実質市場225億ドル×シェア約13%。顧客維持と通信容量拡大が中心。
- 通信規格・特許ライセンス:数量 15.4(スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当)× 価格 1.47(対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算)→ 売上 23 億ドル・営業利益 15 億ドル。15.4億台相当の契約量。特許単価の伸びは物価未満だがライセンス対象が広がる。
- 非中核ポートフォリオ事業:数量 0.8(対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当)× 価格 1.10(2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。主要な非中核事業を整理し、ごく小さい残存事業のみ。
倍率:10年後の帳簿ROEは32.0÷321.7=9.95%。k9.0%、普通の堀の残存割合1/2からRONICは9.47%。gは3.0%で、長期の実質市場+0.8%、シェア変動−0.3%、実効価格+2.5%の合成。光通信の高速化による容量単価の下落、RANの成熟、特許使用料の制約により物価3.5%より低くする。10年目利益基準の正当化PER上限は約11.73倍で、利益の変動性を考えその85%の10.0倍を使用。IFRS報告純利益32.0から余剰現金15.0の税後利息0.21を引き、31.79×10.0+15.0=332.9億ドル。
確率:光通信とIPネットワークの拡大を認める一方、RAN市場の低成長、価格競争、設備更新費用を織り込んだ筋書き。特許収入の継続性も考え、最も確率を高くする。
やや悲観 25% やや悲観:光通信で価格競争が強まり、無線のシェアも失う 利益 13 億ドル · PER 8.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.19 ドル121 億ドル
光伝送市場そのものは2036年にも成長しているが、ノキアはシェアを失う。シエナが高速光通信で先行し、ファーウェイも主要地域で強さを保つ。光通信の実質市場は約240億ドルまで拡大するものの、ノキアのシェアは約18%に低下し、売上は48億ドルにとどまる。利益率は8%まで下がり、インフィネラ統合後の規模の利点を十分に活かせない。
無線設備では、通信事業者が基地局の更新を遅らせる。ファーウェイとエリクソンが主要案件を獲得し、ノキアの売上は62億ドルに縮む。中核ソフトも競争にさらされ、技術開発費を十分に回収できない。特許収入は17億ドル程度を保つが、古い権利の満了と使用料交渉で大きくは伸びない。
不採算事業の売却で赤字は整理できるものの、残った設備事業の利益率は低い。全社の営業利益は約21億ドル、純利益は13億ドルにとどまる。経営は株主還元を減らし、10年間の正味還元は80億ドルとなる。自己資本は約267億ドル残るが、ROEは5%を下回る。会社は存続しても、資本コストに見合う利益を生めない。
- 光ネットワーク:数量 42.0(世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.14(2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数)→ 売上 48 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場240億ドル×シェア17.5%。シエナとファーウェイに案件を奪われる。
- IPネットワーク:数量 31.0(高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.14(2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数)→ 売上 35 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場215億ドル×シェア約14%。ルーターの競争が厳しくなる。
- 固定ネットワーク:数量 16.0(世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.27(2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数)→ 売上 20 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質PON市場135億ドル×シェア約12%。安価な中国製機器に押される。
- 無線ネットワーク:数量 52.0(世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.20(2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数)→ 売上 62 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質RAN関連市場400億ドル×シェア13%。基地局契約を失う。
- コアソフトウェア:数量 21.0(通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.15(2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数)→ 売上 24 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場220億ドル×シェア約10%。運用ソフトの価格競争が進む。
- 通信規格・特許ライセンス:数量 13.0(スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当)× 価格 1.32(対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算)→ 売上 17 億ドル・営業利益 11 億ドル。13億台相当の契約量。特許単価は2025年とほぼ変わらない。
- 非中核ポートフォリオ事業:数量 0.4(対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当)× 価格 1.00(2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。不採算事業の多くを売却し、規模は縮小。
倍率:ROEは13.0÷266.7=4.87%でk9.0%に届かない。普通の堀1/2のRONICは6.94%。2036年以降のg2.0%は市場の実質伸び0%、シェア低下約−0.8%、価格上昇約2.8%の合成。正当化PERの上限は約10.37倍で、資本効率が低く再投資の価値が小さいため8.6倍とする。悲観側に上限の7割を機械的に適用しない。IFRS報告純利益13.0から余剰現金10.0の税後利息0.14を除き、12.86×8.6+10.0=120.6億ドル。売れる資産だけでなく、その時点の利益の稼ぐ力で測る。
確率:AI関連設備投資は残るが、シエナ、ファーウェイ、シスコとの競争でノキアの利益率が上がらない筋書き。通信事業者の投資抑制も十分に起こり得るため25%。
悲観 13% 悲観:無線と光通信で構造的に負け、特許だけが残る 利益 2 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.61 ドル89 億ドル
2036年のノキアは、通信設備市場で主要な技術供給元としての地位を大きく失っている。光通信ではシエナとファーウェイが主な案件を取り、ノキアのシェアは約13%へ下がる。データセンター事業者の内製化と光部品の汎用品化も進み、光通信売上は30億ドル程度まで縮む。無線設備ではエリクソンとファーウェイが契約を獲得し、売上は40億ドル程度となる。
古い機器との互換性は残るが、新しい設備の採用は減り、研究開発費と保守費用が重荷となる。インフィネラ関連資産や無線技術の一部には減損が発生し、2020年代後半から2030年代前半にかけて赤字の年が続く。2036年の営業利益は約4億ドル、純利益は約1.5億ドルまで落ちる。期間の純利益累計は減損を含めて12億ドルにとどまり、正味還元も12億ドルへ減る。
それでも会社が完全に無価値になるとは考えない。標準必須特許と既存のライセンス契約には、独立して売却できる価値がある。余剰現金、特許権、設備・債権を保守的に処分した後の価値を約89億ドルと見る。自己資本が帳簿上残っても、稼ぐ力の乏しい事業全体に帳簿額を払う理由はない。
- 光ネットワーク:数量 29.0(世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.03(2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数)→ 売上 30 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場220億ドル×シェア約13%。光通信で技術優位を失う。
- IPネットワーク:数量 20.0(高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.03(2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数)→ 売上 21 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場200億ドル×シェア10%。クラウド事業者の内製と競合製品へ移行。
- 固定ネットワーク:数量 12.0(世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.15(2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数)→ 売上 14 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質PON市場130億ドル×シェア約9%。低価格製品との競争で利益が消える。
- 無線ネットワーク:数量 37.0(世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.09(2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数)→ 売上 40 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質RAN関連市場380億ドル×シェア約10%。6Gの主要契約を失う。
- コアソフトウェア:数量 14.0(通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当)× 価格 1.08(2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数)→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場200億ドル×シェア7%。通信網ソフトでも顧客流出が進む。
- 通信規格・特許ライセンス:数量 10.5(スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当)× 価格 1.18(対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算)→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。10.5億台相当の契約量。古い特許の満了と使用料引き下げ。
- 非中核ポートフォリオ事業:数量 0.0(対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当)× 価格 1.00(2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。非中核事業はすべて売却または閉鎖。
倍率:構造的な敗北でROEは1%未満になり、利益の永続価値だけでは資産の処分価値を下回る。資本コスト9%に対する純利益1.5億ドルの稼ぐ力は約16.7億ドルで、残る余剰現金5億ドルを足しても約21.7億ドルにすぎない。一方、税後に売れる資産は88.6億ドルと推定する。これは今の自己資本246.2億ドルの約0.36倍に当たる。過去のPBRの谷から倍率を決めておらず、売れる資産の税後価値を優先した。期末自己資本は現在と同水準だが、低いROEを理由に全額は評価しない。
確率:主要設備事業で技術と価格の競争に負け、統合資産の減損と顧客離れが重なる筋書き。長年の特許収入と純現金が残るため倒産に近い確率ではないが、構造的な敗北を13%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
光ネットワーク
長距離光伝送、データセンター間接続、コヒーレント光通信装置。2025年に買収したインフィネラを含む。
| 数量世界光伝送市場の実質販売規模×ノキアのシェア。数量は2025年価格換算の億ドル相当 | 価格2025年の販売単価を1.0とした装置・伝送容量当たりの実効価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 34.0 | 1.00 | 34 | 3 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 1.19 | 69 | 11 |
取り方:会社の2025年組替後の光ネットワーク売上30.18億ユーロを、添付factsの全社売上に整合するドル換算で約34.0億ドルとした。デルオロが公表した2025年世界光伝送市場約160億ドルに対し、関連売上で割ったシェアは約21.3%。会社自身は台数・ポート数を開示していないため、市場の実質販売規模×シェアを数量の代理とする。インフィネラ由来の光部品等が市場定義から一部外れるので、これは正式な市場シェアではなく売上比較の目安である。競合はファーウェイ、シエナ、ZTE、シスコ。営業利益はネットワーク・インフラストラクチャー全体の開示利益を各事業の製品構成から配分した推計。市場出典:https://www.delloro.com/news/optical-transport-market-grew-to-16-billion-in-2025/
IPネットワーク
通信事業者向け大型ルーター、データセンターのルーティング・スイッチング、IPネットワーク自動化。
| 数量高性能ルーター・関連IP装置市場の実質販売規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当 | 価格2025年を1.0としたIP機器1単位当たりの実効価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 29.2 | 1.00 | 29 | 4 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 1.19 | 50 | 9 |
取り方:組替後の2025年売上25.94億ユーロからドル換算約29.2億ドル。高性能ルーター・関連IP装置の比較可能な市場を2025年価格で約150〜170億ドルと推定し、中心値155億ドルならシェア約18.8%。推定市場にはデータセンター向けの製品範囲のずれがあるため厳密な世界シェアではない。デルオロは2030年の高性能ルーター・集約スイッチ市場を190億ドルと予測している。競合はシスコ、ファーウェイ、HPE傘下のジュニパー。会社は販売ポート数を開示しないため実質市場×シェアで数量を代理する。市場出典:https://www.delloro.com/news/19-billion-high-end-router-and-aggregation-switch-market-by-2030/
固定ネットワーク
PON光アクセス装置、OLT、加入者宅の光接続装置、固定網の管理製品。
| 数量世界PONアクセス装置市場の実質規模×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当 | 価格2025年を1.0とした光アクセス機器の平均販売価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.9 | 1.00 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 1.32 | 29 | 3 |
取り方:会社の2025年組替後売上20.34億ユーロを約22.9億ドルに換算した。デルオロの2024年PON市場約105億ドルと2029年121億ドルの予測から、2025年市場を約110億ドルと概算すると、関連売上の比較でシェアは約20.8%。サービスや周辺製品を含むため正式シェアとは一致しない。競合はファーウェイ、ZTE、アドトラン、シスコ。会社はOLT・ONT出荷数を一括開示しないので実質市場を数量代理とする。出典:https://www.delloro.com/news/broadband-equipment-spending-expected-to-peak-at-19-2-b-in-2028-driven-by-ongoing-docsis-4-0-and-rural-broadband-expansions/
無線ネットワーク
5G基地局、無線装置、アンテナ、基地局関連ソフトと保守。6GとAI-RANの開発も含む。
| 数量世界RAN設備・関連サービスの実質需要×ノキアのシェア。2025年価格換算の億ドル相当 | 価格2025年を1.0とした基地局・無線装置の実効販売価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 84.6 | 1.00 | 85 | 4 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 1.33 | 96 | 10 |
取り方:会社の2025年組替後のRadio Networks売上75.07億ユーロを、添付factsに合わせ約84.6億ドルとした。オムディア推定の2025年RAN機器市場約350億ドルで割ると約24%となるが、ノキア売上にはサービス等が含まれ、正式な機器シェアより高く出る可能性がある。デルオロの世界順位はファーウェイ、エリクソン、ノキアの順であり、2025年にノキアはシェアを伸ばした。2030年までの市場成長は年約1%とする独立調査を数量の基本とする。出典:https://www.delloro.com/news/ran-market-stabilized-in-2025/
コアソフトウェア
5Gコア網、加入者情報管理、通信制御、通信事業者向けのネットワーク運用・自動化ソフト。
| 数量通信事業者向けコア・運用ソフト市場の実質規模×シェア。2025年価格換算の億ドル相当 | 価格2025年を1.0としたネットワーク機能・運用ソフトの実効契約価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 27.0 | 1.00 | 27 | 2 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1.23 | 37 | 6 |
取り方:会社の2025年組替後のCore Software売上24億ユーロから約27.0億ドル。2025年投資家説明会で示された中国・ロシアを除く関連市場約160億ユーロを参考に、比較可能な市場を約180億ドルとし、売上比較のシェアを約15%と推定する。市場はコア網と運用自動化に分かれ、ノキアの順位は製品ごとに違う。競合はファーウェイ、エリクソン、オラクル、マベニアなど。これは人の座席数で課金する業務SaaSではなく、通信網の機能と利用容量が主な価値なのでAIエージェント代替の席課金型には該当しない。出典:https://www.nokia.com/newsroom/nokia-announces-new-strategy-evolution-of-its-operating-model-new-long-term-financial-target-strategic-kpis-and-changes-to-its-group-leadership-team/
通信規格・特許ライセンス
5G・6Gなどの標準必須特許、映像・Wi-Fi関連特許の使用料。スマートフォン、自動車、IoTなどのライセンス契約。
| 数量スマートフォン等のライセンス対象機器・契約量の換算数量。単位は億台相当 | 価格対象機器1台相当の年間実効ロイヤルティ。ドル換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.0 | 1.30 | 17 | 11 |
| 10 年後 中立 | 15.4 | 1.47 | 23 | 15 |
取り方:組替後のTechnology Standards売上15.01億ユーロを約16.9億ドルとした。会社は契約ごとの端末数や単価を開示していないため、世界のスマートフォン出荷と自動車・映像・IoTライセンスを合わせて約13億台のスマートフォン換算契約量を仮定し、売上から1台相当1.30ドルを逆算した。これは実際のスマートフォンだけの徴収単価ではない。会社が公表する250社以上のライセンス先と約2万6000の特許ファミリーが事業の規模と継続性を示す。営業利益は開示済みの特許事業の高い利益率を参考にした推定で、新しい規格の研究開発費は全社費用にも残る。出典:https://www.nokia.com/licensing/
非中核ポートフォリオ事業
固定無線アクセス端末、企業向けエッジ、施工関連、マイクロ波無線など。2026年から売却・整理が進む事業。
| 数量対象事業の2025年価格換算の実質販売量。単位は億ドル相当 | 価格2025年の製品・サービス単価を1.0とした価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.9 | 1.00 | 10 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1.10 | 1 | 0 |
取り方:2025年組替後のPortfolio Businesses売上8.45億ユーロと本社部門の小額売上を、全社の2025年売上224.5億ドルに整合するよう約9.9億ドルに換算・集約した。主な対象は4つの非中核製品・サービス群である。販売台数の開示がないため実質売上量を代理数量とした。2026年10月1日に固定無線アクセス端末事業の売却が完了し、10月13日には企業向けキャンパスエッジ事業の売却契約が発表された。2036年には大部分が会社から外れると想定するが、未成立の売却代金は価値に先取りして加えていない。
リスクと懸念
無線基地局のシェア低下と研究開発費
RAN市場は2025年に安定化したが、2030年までの長期成長率は年約1%と見込まれる。ファーウェイとエリクソンは規模が大きく、顧客は複数メーカーを競わせる。ノキアが6Gの主要契約を失っても研究開発費をすぐには減らせず、利益率が大きく下がるおそれがある。
AI設備投資の循環と光通信の過剰投資
2026年のAI・クラウド向け売上と受注は大幅に増えたが、ハイパースケーラーの設備投資は永久に加速するわけではない。大型の光通信装置は顧客の在庫調整や設備計画の変更を受けやすい。需要の山に合わせて工場や在庫を増やしすぎると、次の谷で利益と現金が同時に減る。
技術の汎用品化と顧客による内製化
光伝送やIPネットワークは帯域が拡大しても、単位容量当たりの価格が下がる。共同パッケージ化光学技術、白箱機器、クラウド事業者の内製が進めば、ノキアが取れる付加価値は小さくなる。通常のAIエージェント代替で機器そのものが不要になるわけではないが、AIによるネットワーク運用の自動化は管理ソフトと保守契約の単価に圧力をかけうる。
特許使用料の交渉と権利の満了
特許事業はノキアで最も利益率が高いが、標準必須特許の使用料には公平・合理的な条件が求められる。スマートフォンメーカーとの契約更改、規制、訴訟、古い特許の満了により収入が減る可能性がある。新たな6G技術で優位を保てなければ、現在の特許収入を永続的な年金として評価することはできない。
買収・構造改革費用と現金創出力
インフィネラ統合が順調でも、2026年第3四半期の報告営業利益は調整後利益を大きく下回った。リストラ費用、買収無形資産の償却、設備の更新は株主が負担する経済的な費用である。2026年のフリーキャッシュフロー転換率見通しも35〜55%に引き下げられており、調整後利益の成長ほど還元余力が増えない危険がある。
地政学・通信安全保障・供給網
通信設備は国家安全保障と密接に関わり、各国の調達政策や輸出規制によって売れる地域が変わる。中国での競争制約が西側市場でのノキアに有利に働く場合もあるが、台湾やアジアの半導体供給、関税、部品不足はコストを増やす。特に光半導体や高速部品の供給が滞れば、受注があっても売上と利益を実現できない。
今後の分かれ目
- 2027年の光通信・IPネットワークの合計売上が会社見通しに沿って25〜30%増え、2028年も受注増加が続いたら
- AI設備投資が売上として実現する確度が上がる。光通信の2036年実質数量と利益率を引き上げ、やや楽観の確率を高める。ただし調整後利益だけではなく報告利益と現金創出を確認する。
- 無線設備の主要市場でシェアが回復し、営業利益率が継続的に12%を上回ったら
- 基地局の価格競争と研究開発費の負担が和らいだ証拠になる。中立の無線事業の利益を上方修正し、会社全体のROE回復への確信を強める。
- 特許契約の継続収入が大きく減り、年間の契約済み収入水準が2025年の約14億ユーロから明確に低下したら
- 最も質の高い利益源に問題が出ている。中立の特許事業の数量と価格を下げ、悲観時の売れる資産の床も引き下げる。
- 2028年に向けて調整後営業利益は増えても、報告利益率とフリーキャッシュフローが改善しなかったら
- 事業再編の成果が株主の取り分になっていない。中立の純利益と還元を引き下げ、買収の資本配分の評価を厳しくする。
- 光通信でシエナやファーウェイに対してシェア低下が続き、1Gbps当たりの価格下落を製品性能で補えなくなったら
- 光通信の堀が縮んでいる。中立よりもやや悲観の筋書きに近づき、光通信の2036年営業利益率を10%未満へ見直す。
- 非中核事業の売却が完了し、追加の大型買収を行わず、ROEが資本コスト9%を安定して超えるようになったら
- 資本配分の規律が実際に改善したと判断できる。将来の純利益と正味株主還元の見積もりを上げ、会社全体の利益の質を再評価する。
見ておくもの
- 光通信とIPネットワークの受注・売上成長率、およびAI・クラウド顧客向け売上の継続性
- インフィネラ統合の年間相乗効果と、報告利益に残る統合・構造改革費用
- 無線基地局の世界シェア、主要通信事業者との契約獲得、無線事業の営業利益率
- 技術規格・特許ライセンスの契約済み年間収入と、スマートフォン以外の収入の増加
- 調整後営業利益とIFRS報告営業利益の差
- フリーキャッシュフロー転換率、運転資金、設備投資、純現金残高
- 2028年の会社目標に対する進捗と、株式報酬・増資を控除した正味株主還元
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額448億ドルや過去・同業のPER、PBRから2036年の価値を逆算していない。各事業について市場の実質数量×シェア×販売単価を考え、営業利益とIFRS報告純利益を求めた。その後、資本コスト9.0%、2036年のROE、普通の堀の残存割合1/2、事業別の長期成長から正当化PERを算出した。中立の上限11.73倍に対して10.0倍であり、光通信の成長を評価しつつ無線設備の競争と資本効率の低さを割り引いている。
純現金は事業利益と分け、受取利息を除いてから帳簿価値で加算した。悲観は過去のPBRの底ではなく、税後の売却可能資産88.6億ドルで測った。10年間の自己資本は、現在246.2億ドル+各筋書きの純利益累計−正味還元と一致する。2025年の株数はADR1株と普通株1株の対応であり、将来の株数による二重の希薄化調整はしていない。
確率加重の2036年時価総額は約341億ドル、正味還元累計は約110億ドルである。資本コスト9%で10年間の時価総額と期間中の還元を割り引くと現在価値は約216億ドルとなり、添付factsの時価総額447.9億ドルとの差は約−51.9%、判定は割高である。比較したシスコより資本効率が低く、シエナより特許の下支えが強いという会社固有の違いを反映した結果である。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality+1.0%を加え、資本コストは9.0%。存続そのものへの懸念はないためextraは0%。βと市場の倍率は使わない。シスコの8.0%より高いのは保守・ソフトの収益比率が低く、無線設備の競争にさらされるため。シエナの9.2%よりやや低いのは特許収入と純現金の下支えがあるため。