結論
シーゲイトは大容量ハードディスク(HDD)の 2 強の一角で、売上の 9 割近くがクラウド・AI 事業者向けのニアライン HDD。2026 年 6 月期(7/3 まで)の売上は 121.95 億ドル、営業利益率 33.6%、純利益 31.84 億ドル。直近の四半期は営業利益率 43%、次の四半期は売上 41 億ドル・営業利益率 約 50% の見通しで、利益はまだ上がっている。売上は「HDD の出荷容量(EB)× 1 TB あたり単価」で、ニアラインとそれ以外の 2 区分に分けて積んだ。
10 年後の中立は、容量が約 3 倍に増える一方、TB あたり単価が年 9% ほど下がり続け、売上は 180 億ドル、営業利益率 27% に落ち着く、という見立てである。
バリュー投資の観点では、HDD は技術の勝者が高い利益率を出せる時期(HAMR の先行・2 社寡占・契約)と、需給が緩むと単価が崩れる商品の性質が同居する。資本コストは基本 8.0% に quality 1.75%(HDD の周期・単価の下落・負の自己資本と純負債・SSD への置き換え)を足した 9.75%。利益ベースの正当化 PER の上限(中立で 13.1 倍)の 8.5 割の 11.2 倍を中立に置き、10 年後の時価総額は約 493 億ドル。確率で加重した価値は今の時価総額を約 62% 下回る(割高、10 年 −62%)。無借金に向かう財務と高い資本効率は事業の質の高さだが、山の利益を前提にした値段に安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。データの保存は 10 年後も増え続け、安く大量に置く媒体としての HDD は残る可能性が高い。ただし今より強いかは分からない。HAMR で WDC に先行し、2 社寡占で、契約が 2028 年までの売上を支えるが、2029 年以降は NAND の価格が戻れば SSD の追い上げを受け、WDC・東芝との単価競争も戻る。
次にオーナー利益。FY26 の純利益 31.84 億ドルは頂に向かう途中で、次の四半期は年率 約 65〜70 億ドルに上がる。今の時価総額の約 20 倍はこの年率に対する倍率で、安さの根拠にならない。10 年後のならした利益は 44 億ドル前後(山の約 6 割)に落ち着く。帳簿の ROE は自己資本が薄く 10 年の中立でも 23% と高い。ただし倍率は利益ベースの上限(中立で正当化 PER 13.1 倍)の 8.5 割、11.2 倍に抑えた。高い ROE が先まで続くとは見ず、単価が崩れた時の利益の落ち方も大きい。
資本配分は、債務を返してから自社株買いに回す順序は堅実。山の利益で自社株買いを増やすと割高で買うことになるので、株価が高い間の買い増しは気をつけて見る。安全域は、悲観でも設備が小さく、資産の裏づけが薄い点で弱い。結論として、事業の質は高く、見通しも 2028 年までは明るいが、利益が頂にあることは確か。山の利益を成熟後の倍率に持ち込まない点が値付けを決め、予測の確実性は中程度(契約の下限が 2028 年で切れる)で、資本コストは quality を足した 9.75% に置く。
何で稼ぐ会社か
売上の中心はニアライン HDD(データセンター向けの大容量ドライブ)で、FY26 の出荷 789 EB のうち 695 EB、売上の約 8 割を占める。残りの 94 EB は PC・映像監視・コンシューマー向けの HDD で、容量あたりの単価は高いが市場は縮小傾向にある。Q4 の出荷は 218 EB(前年比 +34%)で、データセンター向けが 195 EB(+43%)と全体の 89%。1 台あたりのニアライン容量は 23 TB 前後で、売上は 1 TB あたり約 15.5 ドル(FY26 平均)。
稼ぎ方は容量の積み増しにある。ドライブの台数はほぼ横ばいのまま、ディスク 1 枚あたりの記録密度を上げて 1 台の容量を増やす方針で、HAMR(熱で記録を助ける技術)を使う Mozaic が中核になる。FY26 末で HAMR はニアライン容量の約 40%、Mozaic 3+(3 TB 超/枚)は米国の主要クラウド全社で認定済み、Mozaic 4+(最大 44 TB)は 2 大クラウドで立ち上がり中、Mozaic 5(50 TB)は 2027 年末に認定出荷の計画。
顧客はクラウド大手が中心で、1 社が売上の約 14%(FY26)。ニアラインの容量はほとんどが 2028 年まで長期契約で割り当て済み、2027 暦年は構成と価格も契約で決まり、顧客は 2029 年の見通しを求めている。数量 × 価格で見ると、数量は容量の伸び(会社は「今後数年は 20% 台半ば」)、価格は TB 単価(会社は「横ばい〜やや上」)で、2026 年は需給の逼迫で単価が上がり、これが利益率を 21% から 50% へ押し上げた。
優良さと弱いところ
堀は 3 つあるが、いずれも「強いが永続的ではない」。第 1 は HAMR の量産で先行したこと。WDC は 2026 年は従来方式(ePMR・UltraSMR)の 40 TB で戦い、HAMR は 2027 年前半に 44 TB の見込みと、記録密度で約 1 年の差がある。第 2 は 2 社寡占(ウエスタンデジタルとシーゲイトで容量の大半、東芝が小さい 3 社目)で、新規参入者はほぼ無く、ヘッド・メディアの専用工程を持つこと自体が参入障壁になっている。第 3 は長期契約で、2028 年までの容量が割り当て済み、価格が契約で決まるため、売上と利益の見通しが 2 年先まで見える。
弱みは 4 つ。HDD 一本足で、NAND(SSD)に置き換えられる面を持つ。SSD は 2026 年は NAND 高騰で HDD の 7〜20 倍の TB 単価だが、メモリの供給が増えれば差は縮む(2Tb の QLC など)。顧客の集中(1 社が約 14%)。周期の振れが大きく、2023 年は営業利益率 1.8%・赤字で、2016 年も 6%。そして自己資本が長く負で(自社株買いの累積)、2026 年にようやく正に戻ったばかりで、財務の余裕は最近できたもの。経営は最近の数年は債務の返済と技術投資を優先し、HAMR という大きな賭けを成功させた点で資本配分の実績は良い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
HDD は容量でも金額でもデータセンター向けが 9 割近い。供給側は 3 社(ウエスタンデジタル・シーゲイト・東芝)で、2025 年の台数シェアは WDC 42%・STX 40%・東芝 18%、出荷容量では STX が追い上げ、直近の四半期では STX 218 EB・WDC 231 EB と並ぶ。業界全体の出荷は FY26 に約 1,800 EB で、会社の見方は「ニアラインの容量は今後数年は年 20% 台半ば」、ドライブの台数は横ばい。
構造の変化は 3 つ。第 1 に需要:AI の学習データ・推論の記録(KV キャッシュ)・エージェントの履歴が保存容量を押し上げ、クラウドが容量を先に確保する長期契約に動いた。第 2 に供給:両社とも台数を増やさず(設備投資は売上の 4〜6%)、ヘッド・メディア・工具を更新して容量を上げる。このため供給は容量の伸びで決まり、需給はきつい。第 3 に代替:SSD は性能と電力で優り、NAND の価格が戻れば差が縮む。2026 年は HDD の TB 単価がほぼ横ばいなのに対し SSD が数倍に上がったため、HDD の優位が広がった年だった。
今の位置は「山の頂付近」。契約が 2028 年まで割り当て済みで、FQ1 FY27 の営業利益率は約 50%。過去の山(2014 年は 13%・2022 年は 17%)と比べて、単価が上がった点が異なる。2029 年以降は契約の更新、WDC の HAMR(2027 年)、東芝の増産、中国メモリ勢による NAND 価格の下落が重なる局面で、HDD の単価が TB あたり年 8〜11% 下がる(ここ 10 年の趨勢)ところへ戻るかどうかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当(年間約 6.3 億ドル)と自社株買い。FY26 は配当 6.3 億ドル・自社株買い 1.8 億ドルで、残りの FCF(31 億ドル)の大半を債務の返済に充てた(有利子負債 49.95 億ドル → 35.65 億ドル)。7 月に高利回りの社債 10 億ドルを償還、9 月には 2028 年満期の転換社債(3.50%)も償還する見込みで、FQ1 末の債務は約 24 億ドル。その後は自社株買いを増やす方針。
設備投資は売上の 4〜6%(FY26 は 4.7%)の枠。台数を増やさず容量を上げる方針なので、重い工場の増設は要らず、ヘッド・メディア・工具に投資する。M&A はなく、買収で価値を壊す心配は小さい。時価総額(約 1,400 億ドル)を考えると買われる側になる可能性も小さい。
株式報酬は FY26 に 2.1 億ドルで、純利益(GAAP)は費用として引いたもの。自社株買いの額から株式報酬による増加分を引いた正味を還元として扱う。2026 年に自己資本が正に戻ったため、自己資本を見る指標(PBR)は使えるようになったが、まだ薄く、利益を見る方が妥当。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI のデータ量は構造的に増え、保存は「使うデータ」だけでなく学習・検証・監査用の全履歴に広がる。HDD は TB 単価が SSD の数分の一(2026 年は 7〜20 倍の差)で、ゼタバイト級の保存はコストで HDD 以外に選べない。シーゲイトは HAMR(Mozaic)で量産が先行し、FY26 末にニアライン容量の約 40%、暦年 2026 末には Mozaic 4+ が HAMR の半分、2027 年末に Mozaic 5(50 TB)、2032 年ごろ 100 TB 超と、記録密度の道筋が見えている。台数を増やさず容量だけ上げるので設備投資は売上の 4〜6% で済み、FCF は FY26 に 31 億ドル、売上の約 25%。
長期契約が 2028 年まで割り当て済みで、2027 暦年は価格も固定、顧客は 2029 年以降を求めている。契約価格より高く払う顧客もいる。HDD は 2 社寡占で、WDC も台数を増やさない(規律は両社の意思)。この構造が続けば、利益率は FY26 の 34% からさらに上がり(見通しは 50%)、10 年を通じて過去の山(13〜17%)を大きく上回る水準が定着し、時価総額は今の 1,387 億ドルを超える。
加えて自己資本が正に戻り、債務は 24 億ドルまで減るので、財務の余力が株主還元に向かう。ならした純利益が 70 億ドル台で続くなら、20 倍は妥当に近い。
慎重な見方
HDD は需給で単価が決まる周期の商品で、今は AI 投資が重なった山の頂。FY26 の営業利益率 34%・FQ1 FY27 の約 50% はどちらも過去最高で、FY25 は 21%、2023 年は 1.8% の赤字寸前、2016 年は 6%。2028 年に AI の設備投資が止まる、または WDC の HAMR(2027 年前半に 44 TB)と東芝の増産が重なれば、2019 年・2023 年のように在庫調整と単価の下落が同時に来る。長期契約は 2028 年までで、下限の保証が無く、更新時に買い手の力が戻る。
SSD の脅威も大きい。ニアラインの HDD と SSD は「補完する」と 10-K は書くが、QLC の大容量化(2Tb チップ)と NAND の供給増(サムスン電子・SK ハイニックス・マイクロン・キオクシア・YMTC)で SSD の TB 単価が下がれば、性能と電力で優る SSD が HDD の置き換えを始める。2026 年の NAND 高騰は一時的な需給の歪みで、2028〜29 年に NAND の供給過剰が来れば HDD の優位は縮む。
10 年の TB 単価の趨勢は年 −8〜11% で、容量が 3 倍に増えても売上は年 3% 前後しか伸びない(業界ノート)。利益率が 17〜21% に戻れば、時価総額は 1,400 億ドルの半分以下が相場になる。1 社が売上の約 14% という顧客集中、自社株買いで長く負だった自己資本、HAMR が一つの賭けに偏る点も重い。
どちらに重みを置いたか
強気の言う「2028 年までは契約で守られる」は正しいと見る(FY27・FY28 は全筋書きで高い利益率を置いている)。ただし 2029 年は契約の更新・WDC の HAMR・NAND の供給増が重なる年で、10 年のやや悲観・悲観に 38%、中立に 32% を置き、下側の厚みを残した。構造(SSD への置き換え・単価の下落・WDC との競争)の下振れが主な理由である。確率の寄せ方よりも、頂の利益を成熟後の倍率に持ち込まない点が結論を決める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 269.57 ドル585 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 216.72 ドル470 億ドル)。 今の値に割り戻すと 242.43 ドル526 億ドル、今との差 −62.2%、 期待の年率 −2.7%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 871.11 ドル1,890 億ドル | 479.03 ドル1,040 億ドル | +110.3% | +7.7% | 135.01 ドル293 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 422.67 ドル917 億ドル | 323.96 ドル703 億ドル | +16.3% | +1.5% | 149.33 ドル324 億ドル |
| 中立 | 32% | 227.14 ドル493 億ドル | 222.17 ドル482 億ドル | −30.0% | −3.5% | 143.78 ドル312 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 98.94 ドル215 億ドル | 117.65 ドル255 億ドル | −66.3% | −10.3% | 51.98 ドル113 億ドル |
| 悲観 | 14% | 10.65 ドル23 億ドル | 33.55 ドル73 億ドル | −93.1% | −23.5% | 6.19 ドル13 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 269.57 ドル585 億ドル | 216.72 ドル470 億ドル | −24.3% | −2.7% | 486.29 ドル1,055 億ドル |
今の株価時価総額 642.14 ドル1,393 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 10% AI の保存が 3 倍になり、HAMR の先行も保たれる 利益 142 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 871.11 ドル1,890 億ドル
2036 年(FY36)の出荷は 4,510 EB(ニアライン 4,400 EB、年 20% で FY26 の約 6 倍。HDD 全体で約 10 ZB)。HAMR は 2032 年ごろ 100 TB 超まで進み、2 社寡占と契約の文化が保たれ、TB 単価は FY26 の 0.62 倍(年 4.7% の下落。物価を考えると実質では年 8% の下落)で、コスト低下とほぼ釣り合う。売上は 410 億ドル、営業利益率 39%。SSD は大容量でも HDD の 3 倍以上の TB 単価が続く。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 14.8 倍の 9 割(13.4 倍)を事業の純利益に掛けて時価総額 1,890 億ドル。10 年の純利益の合計は約 1,333 億ドル(山の FY27〜29 を含む)で、還元 1,040 億ドルは債務を返した後の自社株買いと配当(純現金は 183 億ドル)。(最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の売却はしない)
- ニアライン HDD(データセンター向け大容量):数量 4,400(ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア)× 価格 8.74(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 385 億ドル・営業利益 154 億ドル。ニアライン 4,400 EB × TB 単価 FY26 比 0.62 倍・営業利益率 40%
- ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー):数量 110(ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB))× 価格 23(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。それ以外 110 EB × TB 単価 FY26 比 0.9 倍・営業利益率 25%
倍率:上限から少し下げて置いた。 正当化 PER の上限は 14.8 倍(g 4.0%、RONIC 27.3%。RONIC = k 9.8% + 1/2 ×(事業の ROE 44.8% − k)。堀は普通)。その 9 割の 13.4 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 141.5 × 13.4 = 1890 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:保存データが指数的に増え、HDD の容量あたりコストが SSD に対して優位のまま。過去の周期より構造的に良い利益率が定着する最良の展開。そうなる条件は多く、確率は 10%。
やや楽観 20% 容量は伸び続け、単価の下落が緩やかで利益率は高めに残る 利益 76 億ドル · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 422.67 ドル917 億ドル
出荷は 3,600 EB(ニアライン 3,500 EB、年 17.5%)、TB 単価は FY26 の 0.50 倍(年 6.7% の下落)。HAMR の先行が中堅の差を保ち、利益率は過去の山を上回る。売上は 267 億ドル、営業利益率 32%。SSD は電力と性能が求められる用途に限られ、ニアラインの大半は HDD のまま。WDC は 2027 年に HAMR を出すが、容量あたりのコストで当社が半年から 1 年先行し、東芝は小さい 3 社目にとどまる。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 14.1 倍の 8.5 割(12.0 倍)を事業の純利益に掛けて時価総額 917 億ドル。10 年の純利益の合計は約 914 億ドル、還元 703 億ドルは債務を返した後の自社株買いと配当。(最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の売却はしない)
- ニアライン HDD(データセンター向け大容量):数量 3,500(ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア)× 価格 7.05(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 247 億ドル・営業利益 81 億ドル。ニアライン 3,500 EB × TB 単価 FY26 比 0.5 倍・営業利益率 33%
- ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー):数量 100(ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB))× 価格 20(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。それ以外 100 EB × TB 単価 FY26 比 0.8 倍・営業利益率 20%
倍率:上限から一段下げて置いた。 正当化 PER の上限は 14.1 倍(g 4.0%、RONIC 21.3%。RONIC = k 9.8% + 1/2 ×(事業の ROE 32.8% − k)。堀は普通)。その 8.5 割の 12.0 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 76.4 × 12.0 = 917 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の趨勢(容量 +15%・単価 −11%)を単価の下落が小さい側へ寄せた展開で、売上は 10 年で約 2.2 倍。確率は 20%。
中立 32% 容量は約 4 倍、単価は年 9% 下がり、利益率は 27% に落ち着く 利益 44 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 227.14 ドル493 億ドル
2036 年の出荷は 2,990 EB(ニアライン 2,900 EB、年 15.4%。HDD 全体で約 6.8 ZB)。TB 単価は FY26 の 0.40 倍(年 8.7% の下落。業界ノートの趨勢 −11% より緩いのは、HAMR の先行で容量あたりのコストが下がり、2 社寡占が保たれるため)。売上は 180 億ドル(FY26 の約 1.5 倍、年 3.9%)、営業利益率は 27%(FY26 の 34%、FY25 の 21%、過去の山 13〜17% の間)。SSD は大容量でも HDD の数倍の TB 単価を保ち、置き換えは一部。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 13.1 倍の 8.5 割(11.2 倍)を事業の純利益に掛けて時価総額 493 億ドル。10 年の純利益の合計は約 654 億ドル(山の FY27〜29 を含む)で、還元 482 億ドルは債務を返した後の配当と自社株買い(残りは設備と運転資金の投資 約 55 億ドルと純現金 99 億ドル)。(最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の売却はしない)
- ニアライン HDD(データセンター向け大容量):数量 2,900(ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア)× 価格 5.64(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 164 億ドル・営業利益 46 億ドル。ニアライン 2,900 EB × TB 単価 FY26 比 0.4 倍・営業利益率 28%
- ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー):数量 90.0(ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB))× 価格 18(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。それ以外 90 EB × TB 単価 FY26 比 0.7 倍・営業利益率 16%
倍率:上限から一段下げて置いた。 正当化 PER の上限は 13.1 倍(g 4.0%、RONIC 16.3%。RONIC = k 9.8% + 1/2 ×(事業の ROE 22.8% − k)。堀は普通)。その 8.5 割の 11.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 44.2 × 11.2 = 493 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの趨勢(容量 年 15%・単価 年 −11%)に当て、HAMR の先行で単価をやや緩く置いた。確率は 32%。
やや悲観 24% SSD の追い上げと WDC との単価競争で、利益率は過去の山並みに戻る 利益 20 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 98.94 ドル215 億ドル
出荷は 2,480 EB(ニアライン 2,400 EB、年 13.2%)、TB 単価は FY26 の 0.32 倍(年 10.7% の下落。業界ノートの趨勢どおり)。WDC の HAMR が追いつき、NAND の供給増で SSD の TB 単価が下がって、ニアラインの一部が置き換わる。売上は 121 億ドル(FY26 とほぼ同じ)、営業利益率は 18%(過去の山 13〜17% と FY25 の 21% の間)。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 11.8 倍の 9 割(10.6 倍)を事業の純利益に掛けて時価総額 215 億ドル。10 年の純利益の合計は約 370 億ドル(山の FY27〜29 を含む)で、還元 255 億ドルは債務を返した後の自社株買いと配当。(最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の売却はしない)
- ニアライン HDD(データセンター向け大容量):数量 2,400(ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア)× 価格 4.51(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 108 億ドル・営業利益 21 億ドル。ニアライン 2,400 EB × TB 単価 FY26 比 0.32 倍・営業利益率 19%
- ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー):数量 80.0(ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB))× 価格 15(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。それ以外 80 EB × TB 単価 FY26 比 0.6 倍・営業利益率 10%
倍率:ウエスタンデジタルとの競争と SSD への置き換えで利益の質が落ちる筋書き。上限から少し下げて置いた。 正当化 PER の上限は 11.8 倍(g 4.0%、RONIC 12.3%。RONIC = k 9.8% + 1/2 ×(事業の ROE 14.9% − k)。堀は普通)。その 9 割の 10.6 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 20.3 × 10.6 = 215 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの趨勢をそのまま当てた展開で、頂の利益は戻らない。慎重な見方(10 年の TB 単価は年 −8〜11%)を重く見て 24%。
悲観 14% 構造的な敗北:SSD が大半を置き換え、HDD は価格を決められない 利益 3 億ドル · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 10.65 ドル23 億ドル
NAND の供給増と QLC の大容量化で SSD の TB 単価が HDD の 2 倍以内に近づき、ニアラインの大半が SSD へ置き換わる。HDD の出荷は 1,750 EB で伸びが止まり、TB 単価は FY26 の 0.22 倍(年 14% の下落)、売上は 58 億ドル、営業利益率 4%(FY23 と同じ薄利)。赤字に近い薄利で ROE が k 以下なので、倍率は 1÷k の 10.3 倍の 9 割(9.2 倍)を事業の純利益 2.5 億ドルに掛けて時価総額 23 億ドル(自己資本 76 億ドルの 0.3 倍)。10 年の純利益の合計は約 127 億ドル(山の FY27〜28 を含み、2029 年以降はほとんど出ない)で、還元 73 億ドルは債務を返した後の配当と自社株買い。(最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の売却はしない)
- ニアライン HDD(データセンター向け大容量):数量 1,700(ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア)× 価格 3.10(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 53 億ドル・営業利益 3 億ドル。ニアライン 1,700 EB × TB 単価 FY26 比 0.22 倍・営業利益率 5%
- ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー):数量 50.0(ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB))× 価格 11(TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。それ以外 50 EB × TB 単価 FY26 比 0.45 倍・営業利益率 -5%
倍率:上限から少し下げて置いた。 事業の ROE 3.3% が k 9.8% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 10.3 倍。その 9 割の 9.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 2.5 × 9.2 = 23 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。 EV で見ても、時価総額 23 億ドルに今の純負債 45 億ドルを足した約 68 億ドルを営業利益 2.3 億ドルで割ると 30 倍と高く、借金が重く薄利の筋書きでは株主の取り分が小さい。
確率:業界ノートの悲観(HDD が NAND(QLC)に置き換わる)に当てた。中国メモリ勢の台頭と AI 投資の急減が重なる場合を含めて 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ニアライン HDD(データセンター向け大容量)
クラウド・AI 事業者向けの大容量 HDD(Mozaic の HAMR と従来方式)。長期契約が集中する区分で、売上と利益の大半。
| 数量ニアライン HDD の出荷容量(EB)= 業界の出荷 × 当社シェア | 価格TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 695 | 14 | 98 | 36 |
| 10 年後 中立 | 2,900 | 5.64 | 164 | 46 |
取り方:FY26(2026 年 7/3 まで)のニアライン出荷は 695 EB(10-K)。区分別の売上は開示が無いので推定(ニアラインは容量の 88%・TB 単価はそれ以外より低い)で 98.0 億ドル、1 TB あたり 14.1 ドル。業界の HDD 出荷は FY26 に約 1,800 EB(STX 789・WDC 約 850・東芝 約 170 の推定)で当社のシェアは約 44%、直近の四半期は WDC 231 EB・STX 218 EB と並ぶ。数量は業界の伸び(会社の見方は年 20% 台半ば)× シェア。価格は物価に連れて上がらない例外で、容量の増加とコストの低下で TB 単価は年 8〜11% 下がる趨勢(業界ノート)。2026 年は需給の逼迫で逆に上がり、契約が 2028 年までを固定。営業利益 36.4 億ドルは推定(全社の GAAP 営業利益 40.94 億ドルと合計が一致)。
ニアライン以外(PC・映像監視・コンシューマー)
PC・映像監視・外付け・ゲーム機向けの HDD。容量あたりの単価は高いが、SSD に置き換わって縮む区分。
| 数量ニアライン以外の HDD 出荷容量(EB) | 価格TB あたり売上(ドル/TB。売上 = EB × ドル/TB × 0.01 億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 94.0 | 26 | 24 | 5 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 18 | 16 | 3 |
取り方:FY26 の出荷は 94 EB(10-K。ニアライン以外の合計)で売上 24.0 億ドルは推定(合計 121.95 億ドルが決算と一致)。1 TB あたり約 25.5 ドルと、ニアラインより高い(小容量のドライブ・小売)。数量は PC・映像監視向けの SSD への置き換えで横ばいから減少、価格は物価に連れて上がらない例外(同じく TB 単価の下落が趨勢)。営業利益 4.5 億ドルは推定(営業利益率 19%)。
リスクと懸念
HDD の単価の下落と周期の反転
HDD は需給で単価が決まる周期の商品で、FY26 の営業利益率 34%・FQ1 FY27 の約 50% は過去最高。2023 年は 1.8%、2016 年は 6% だった。2029 年に契約が切れ、WDC の HAMR(2027 年前半に 44 TB)と東芝の増産が重なれば、TB 単価が年 8〜11% の趨勢に戻り、利益は山の半分以下になる。
SSD(NAND)への置き換え
10-K は「SSD の普及が HDD の市場を狭めうる」と明記する。QLC の大容量化と NAND の供給増(サムスン電子・SK ハイニックス・マイクロン・キオクシア・YMTC)で SSD の TB 単価が下がれば、性能と電力で優る SSD がニアラインの一部を奪う。2026 年の NAND 高騰は一時的で、2028〜29 年に反転しうる。
長期契約の更新と顧客の力
容量は 2028 年まで割り当て済みだが、2029 年以降は交渉中で未契約。AI の設備投資が止まる、または投資効率が疑われると、買い手の力が戻り、価格の上乗せも消える。1 社が売上の約 14% を占めるため、1 社の更新条件が全体の利益に響く。
AI 投資の山と谷
データセンター向けが容量の 89%。上位クラウドと AI 事業者の設備投資が 2027 年に 1 兆ドル前後に向かう見方に支えられ、止まれば HDD・メモリ・サーバーが同時に崩れる。保存は投資の後に効くため遅れて効くが、在庫調整は速い。
HAMR の技術・歩留まりの賭け
HAMR(Mozaic)は FY26 末で容量の約 40%。Mozaic 4+・5 の歩留まり・信頼性(ヘッドとメディアの寿命)に問題が出ると、顧客の認定が遅れ、従来方式の WDC に先行の利点を失う。会社は 2027 年末に Mozaic 5(50 TB)、2032 年ごろ 100 TB 超と、密度の道筋を公表している。
資本配分と株価の高さ
債務を返した後は自社株買いを増やす方針だが、株価が頂の利益の上で高い間に買うと割高で買うことになる。自己資本が正に戻ったのは FY26 で、財務の余裕は新しい。株式報酬は FY26 に 2.1 億ドルで、株数は年 1% ほど増える。
今後の分かれ目
- ニアラインの TB 単価が前年比でマイナスに転じる
- 頂の通過のサイン。悲観・やや悲観の確率を引き上げ、倍率は低い ROE(利益ベースの上限が下がる)の方へ寄せる。
- WDC の HAMR が 44 TB で量産に入り、東芝も増産に動く
- シーゲイトの記録密度の先行が縮み、単価競争が早まる。10 年の悲観の確率を引き上げる。
- 主要クラウドが 2029 年以降の長期契約を 2028 年末までに結び、価格に下限が付く
- 頂が長引くサイン。楽観・やや楽観の確率を引き上げ、10 年の中立の営業利益率を上げる。
- NAND の TB 単価が下がり、ニアライン SSD の価格が HDD の 3 倍以内に近づく
- HDD の置き換えが始まる合図。10 年の悲観・やや悲観の確率を引き上げ、容量の伸び(年 15%)を下げる。
- AI 事業者の設備投資が 2 割以上減り、データセンター向けの出荷が前年比で落ちる
- 在庫調整の入口。HDD・NAND・サーバーが同時に崩れる。
- 自社株買いが株価の高い間に大きく進み、債務が再び増える
- 資本配分の質の低下。倍率の根拠である株主の取り分が減る。
見ておくもの
- ニアライン HDD の TB 単価(四半期の売上 ÷ 出荷 EB)と契約更新の条件(2029 年分)
- WDC の HAMR 44 TB の量産と東芝の増産の時期、記録密度(TB/枚)の差
- 主要クラウドの設備投資の計画と AI 向けの保存容量の伸び(KV キャッシュなど)
- NAND の TB 単価とニアライン SSD の価格差(QLC の大容量化)
- 自社株買いの額と株価(頂の利益の上で買っていないか)、債務の残高
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。売上は 2 区分(ニアライン・それ以外)を「出荷容量(EB)× TB 単価」で置き、FY26(789 EB・約 15.5 ドル/TB)から 10 年へ筋書きごとに動かした。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g/RONIC)/(k−g)(k 9.75%、g 4.0%、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)、堀は普通)の上限に対し、楽観 9 割・やや楽観 8.5 割・中立 8.5 割・やや悲観 9 割・悲観 9 割で置いた(中立は上限 13.1 倍の 8.5 割で 11.2 倍)。悲観は ROE が k 以下なので 1÷k の倍率を稼ぐ力に掛けた。ROE は帳簿の自己資本に対する純利益で、自己資本が薄いため高く出る。総合は今の時価総額に対し -62.1% で、割高。結論は計算の結果で、先に決めたものではない。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 5% + β 1.75 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.75% = 9.75%。β は使わない。HDD の周期(+0.75)、商品として単価が下がること(+0.25)、負の自己資本と純負債(+0.25)、SSD への置き換え(+0.5)を quality で見た。事業は傾いておらず extra は置かない。山の利益と WDC・SSD の競争は筋書きと確率(10 年のやや悲観・悲観 38%)で表し、k には二重に足していない。
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読んだ資料
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- シーゲイト FY2026 第 4 四半期の電話会議の要約(MarketBeat)
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