結論
ファースト・ソーラーは、米国の大規模太陽光発電所向けに、テルル化カドミウムの薄膜モジュールを作る米国最大級のメーカーである。2025 年の売上は 52 億ドル(17.5 GW)、営業利益は 16 億ドルだが、そのほぼ全部が米国の製造税額控除(IRA の 45X)による。2026 年の見通しでも、控除 21〜22 億ドルが粗利 24〜26 億ドルの約 85% を占め、控除を除くと営業費用を引いた営業利益はほぼゼロか小さな赤字になる。
控除は 2025 年の税制法(OBBBA)で 2029 年末まで満額、2030 年に 75%、2031 年に 50%、2032 年に 25%、2033 年にゼロと決まっている。契約残高は 45.1 GW(2030 年まで、1 W あたり 0.30 ドル前後)で、控除が満額の間の利益は見通せる。問題はその後である。売上は「米国の大規模太陽光の設置量 × シェア × 1 W あたりの価格」で積み、価格は中国勢の 0.11 ドル/W と米国の 0.28〜0.30 ドル/W の差を、関税(Section 232 の 15% と最低輸入価格 0.38 ドル/W)が支えるかどうかで分けた。
10 年後の中立は、控除が消えて営業利益 9 億ドル、事業の ROE は 5〜6% と資本コストの 9.75% を下回る。伸びても価値は増えないので、倍率は上限の 1÷k(10.3 倍)の 8.5 割の 8.7 倍に置いた(余った現金を足した見かけは 9.7 倍)。現金は、今ある余剰 22 億ドルだけを 1 ドルで足し、これから積み上がる分は足さない。時価総額は約 108 億ドルで、今の 186 億ドルの 6 割弱。確率で加重した本質価値は今の値段を約 6 割下回り、割高と見る。バリュー投資の観点では、期限つきの収入に事業の価値が乗る形で、事業の堀が政策であることが評価を抑える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ファースト・ソーラーの利益は事業の力というより、法律が決めた期限つきの収入に近い。2026 年の見通しで、控除は粗利の約 85% を占め、これを除いた営業利益はゼロに近い。控除は 2029 年末までは満額、2033 年にゼロになる。オーナー利益(株主が取れる利益)で見ると、控除の合計(2026〜2032 年、約 126 億ドル)に、控除後の事業の価値と、今ある余剰現金 22 億ドルを足したものが価値になる。
堀は広くない。価格を決める力は無く(中国勢の 0.11 ドル/W が世界の価格を決める)、堀は関税・最低輸入価格・FEOC 規則という政策の壁に頼る。政策は 10 年後の姿を予測できない種類のもので、確信度は低い。控除後の事業の ROE は中立で 5〜6% と、資本コストの 9.75% を下回り、規律ある資本配分でないと、積み上がる現金の価値を事業が薄める。
一方で、安全域は薄い。事業は控除が消えると ROE が資本コストを下回り、価値は 1÷k の倍率(10.3 倍)が上限になる。今ある余剰現金 22 億ドルは 1 ドルで足すが、控除の期間にたまる現金は評価に足さない(還元か投資で薄まるため)。中立の 10 年後の時価総額は約 108 億ドルで、今の 186 億ドルを下回り、確率で加重した本質価値も今の値段を約 6 割下回った。10 年後も存在し今より強い事業とは言い切れず、強い会社が割安なのではなく、期限つきの収入を持つ会社の価値がこの水準だ、というのが結論である。
何で稼ぐ会社か
ファースト・ソーラーは、シリコンを使わないテルル化カドミウム(CdTe)の薄膜モジュールを、オハイオ・アラバマ・ルイジアナ(2025 年稼働の Series 7 の新工場)の米国内工場と、マレーシア・ベトナム・インドの工場で作る。買い手は米国の電力会社・独立系発電事業者・開発会社で、数年先まで出荷量と価格を決める長期契約が中心である。契約残高は 2026 年 6 月末で 45.1 GW(2030 年まで)、うち 41 GW に国内調達の要件がつく。
売上は「出荷量(GW)× 1 W あたりの価格」である。2025 年は 17.5 GW を売り、売上は 52 億ドル、平均で約 0.30 ドル/W。この内訳(米国向けと米国外)は決算書に無く、米国向けを約 9 割(15.8 GW)と推定した。2026 年の見通しは 17.0〜18.2 GW・売上 49〜52 億ドル。
利益の中身が特殊である。45X は米国で作ったモジュールの販売に応じて W あたりで受け取る税額控除で、決算書では売上原価から引かれ、現金で売ることもできる(2025 年は 7 億ドル分ずつ 2 回に分けて売却し、初回は額面の約 95% を受け取った)。推定で、米国製の販売 1 W あたり約 0.145 ドルにあたる。控除を除いた売上原価は 1 W あたり約 0.27 ドルで、売値 0.30 ドルとの差は薄い。2026 年の見通しでは控除が粗利の約 85% である。
南カロライナの仕上げ工場(2026 年後半に第 1 期、2027 年半ばに第 2 期で CuRe を追加)、ペロブスカイト・タンデムの試験ライン(2027 年上期)、東南アジアの完成品能力の一部(約 1.8 GW)の休止が、いまの動きである。
優良さと弱いところ
優良さは「非中国のサプライチェーンで米国内に作る」という一点に集まる。第 1 に、シリコンとポリシリコンに頼らない CdTe の薄膜で、新疆のポリシリコンや強制労働の疑いに関わる規制(FEOC・UFLPA)に強い。第 2 に、研究開発(年 2.3 億ドル)と自前の工場で、CuRe・ペロブスカイトなど技術の改良が早い。第 3 に、有利子負債がほぼなく、純現金 22 億ドルで、控除の期間に現金が積み上がる。
弱い所は、堀が製品でなく政策であることだ。中国国内のモジュールは約 0.11 ドル/W、米国は 0.28〜0.30 ドル/W で、FSLR の原価(約 0.27 ドル/W)は中国勢の倍以上ある。薄膜は変換効率が結晶シリコンの TOPCon より低く、設置の面積あたりの費用で不利になりやすい。2026 年は顧客の契約解除で第 2 四半期の売上が 4% 減り、契約残高は半年で 50.1 GW から 45.1 GW に減った(出荷 7.6 GW に対し新規 2.8 GW)。資本効率は 45X を含めて ROE 16% だが、控除を除くとほぼゼロである。バリュー投資の観点では、価格を決める力が無く、規模の経済も中国勢に負けているため、控除と関税が無いときの稼ぐ力は薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の太陽光設置は 2025 年に 43.1 GW(前年比 −14%)で、SEIA とウッド・マッケンジーは 2026〜2031 年を横ばいと見る。FSLR が売るのは大規模発電所向けで、設置のうち 7 割強(約 33 GW と推定)を占める。発電側の税額控除(45Y/48E)は、2026 年 7 月 4 日までに着工しなければ 2027 年末までの稼働が要り、通常は着工から 4 年以内の稼働が要件なので、2030 年ごろまでは着工済みの案件が支えるが、その後の新規は需要の見通しが悪い。ただしデータセンターなどの電力需要が強く、需要は完全には落ちない。
価格の枠は貿易政策で決まる。中国国内の価格は約 0.11 ドル/W(2026 年 4 月)、米国の中央値は 0.28 ドル/W(Anza、2026 年第 1 四半期。2025 年初は 0.25)、米国製セルを使うと 0.46 ドル/W。Section 232 は、ポリシリコンの派生品(ウェハー・セル・モジュール)に 15% の関税と、モジュール 0.38 ドル/W・セル 0.22 ドル/W の最低輸入価格をかけ、2026 年 12 月 4 日に始まる(中国・ベトナムなどは既存の AD/CVD に上乗せ)。Section 201 は 2026 年 2 月に失効した。
競合では、ジンコソーラー(2025 年の出荷 86 GW・純損失 44.5 億元)、ロンジ(出荷 約 86.6 GW・純損失 約 64 億元)、カナディアン・ソーラー(売上 56 億ドル・純損失 1.0 億ドル)と、中国系は赤字でも出荷を保つ。国内では、Qcells(ハンファ)や T1 エナジーが米国製のセル・モジュールを増やしている。循環の位置は、米国の設置の横ばいと、契約残高の減少、関税による価格の下支えが同居する局面にある。
資本政策と M&A
自社株買いも配当も、今は実施していない(2026 年 6 月期まで開示なし)。現金は 2025 年末に 28 億ドル(有価証券を含め約 29 億ドル)、有利子負債は 5 億ドルから 2026 年 6 月に 0.4 億ドルへ減り、実質無借金である。設備投資は年 8〜10 億ドル(南カロライナ・ルイジアナ・ペロブスカイトの試験ライン)。2026 年の期末の純現金の見通しは 17〜23 億ドルで、2025 年末の 24 億ドルより減る。これは控除の売却代金の入金が遅れるためで、未受取の控除も現金同様なので、ここでは数える。
借金がないので、金利の上昇で利払いは増えず、現金の利息は短期金利 3.5〜4% で回る(純現金の受取利息は筋書きの利益に入れ、倍率を掛ける利益からは除いた)。
控除の期間(2026〜2032 年、中立で約 126 億ドル)に積み上がる現金の使い道が最大の論点である。中立では 2029 年から純利益の半分を還元すると置いた(過去の実績はないので、これは前提の置き方である)。財務責任者は M&A に前向き(規律つき)と話しており、現金を事業の拡大や買収に使えば、資本効率が低い事業に戻る恐れがある。株式報酬は小さく、還元から引く分も小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
米国の電力需要はデータセンターと電化で 20 年ぶりに伸び、太陽光は最も早く作れる電源である。FSLR は中国のポリシリコンに頼らない唯一の大手で、FEOC 規則・UFLPA・Section 232 の最低輸入価格(モジュール 0.38 ドル/W)が、中国勢の入り口を閉じる。契約残高 45.1 GW のうち 41 GW が国内調達を要し、顧客は FSLR を買わざるをえない。
控除が終わっても、新規の契約が 0.38 ドル/W 以上で取れるなら、原価(約 0.27 ドル/W)との差は厚く、粗利益率は 3 割を超える。CuRe の追加とペロブスカイト・タンデム(2027 年の試験ライン)は、変換効率の弱みを埋め、原価を物価に逆らって下げる。2026 年上期の純利益は 7.7 億ドルと既に強く、純現金は 2030 年までに 100 億ドルを超える。
中国勢は赤字を続けており(ジンコ・ロンジとも 2025 年は大きな純損失)、米国に生産を移す余力は乏しい。現金の使い道も、自社株買いと技術投資に回せば、控除が終わっても時価総額は今を大きく上回る。強気の見方では、価値は控除ではなく、米国の電力網に入る国産のモジュールという地位にある。
慎重な見方
利益の構造を見ればわかる。2026 年の見通しで、控除 21〜22 億ドルは粗利 24〜26 億ドルの約 85% で、営業費用 6 億ドル超を引くと、控除なしの営業利益は赤字である。つまり FSLR の稼ぐ力は、控除が終わる 2033 年にほぼゼロへ戻る。市場が 12 倍の PER で買っている利益の大半は、法律が決めた期限つきの収入である。
価格の壁も当てにならない。最低輸入価格は名目で固定され、実質では毎年削られ、迂回(インド・東南アジア・中東の第三国製)が進み、政権が変われば緩む。中国国内の価格は 0.11 ドル/W で、米国の 0.28〜0.30 ドル/W との差は 2.5 倍以上あり、壁が少しでも低くなれば価格が崩れる。契約残高は半年で 50.1 GW から 45.1 GW に減り、顧客の契約解除で 2026 年第 2 四半期の売上は 4% 減った。
米国の設置は 2031 年まで横ばいで、発電側の控除が切れる 2030 年以降は需要の見通しも悪い。控除後の事業の ROE は 8% と資本コストの 9.75% を下回り、現金は積み上がるが、買収などで薄められる。10 年後の中立の時価総額は約 145 億ドルで今の 8 割弱にとどまり、年率で見ると資本コストに届かない。
どちらに重みを置いたか
控除が 2033 年にゼロになることは法律で決まっており、控除後の事業の稼ぐ力が弱いという慎重な見方のほうが強い。強気の見方は、貿易の壁が続き、新規の契約が 0.38 ドル/W 以上で取れるなら成り立つが、政策は 10 年後に確かめられない。確率は、10 年でやや悲観 25%・悲観 15% と厚く、楽観 8%・やや楽観 18%・中立 34% とした。その結果、今ある余剰現金 22 億ドルを 1 ドルで足しても、確率で加重した価値は今の時価総額を約 6 割下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 97.07 ドル104 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 42.93 ドル46 億ドル)。 今の値に割り戻すと 65.25 ドル70 億ドル、今との差 −61.9%、 期待の年率 −2.0%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 298.22 ドル321 億ドル | 97.18 ドル105 億ドル | +130.9% | +8.7% | 31.63 ドル34 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 167.20 ドル180 億ドル | 71.60 ドル77 億ドル | +39.4% | +3.4% | 42.98 ドル46 億ドル |
| 中立 | 34% | 100.15 ドル108 億ドル | 54.49 ドル59 億ドル | −9.7% | −1.0% | 52.58 ドル57 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 23.99 ドル26 億ドル | 14.97 ドル16 億ドル | −77.2% | −13.8% | 9.74 ドル10 億ドル |
| 悲観 | 15% | 20.46 ドル22 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −88.1% | −19.1% | 3.07 ドル3 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 97.07 ドル104 億ドル | 42.93 ドル46 億ドル | −18.2% | −2.0% | 140.00 ドル151 億ドル |
今の株価時価総額 171.25 ドル184 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:貿易の壁が続き、控除が終わっても粗利益率 4 割を保つ 利益 31 億ドル · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 298.22 ドル321 億ドル
2033 年に 45X が終わった後も、米国は Section 232・AD/CVD・FEOC 規則を維持し、中国製・中国系の輸入は実質閉め出されたまま。データセンター・産業の電力需要で大規模太陽光の設置は 44 GW まで戻り、FSLR は 45.5% の 20.0 GW を売る。価格は 0.44 ドル/W(10 年で 1.47 倍。物価並みと、米国製・国内調達の上乗せ)。ペロブスカイト・タンデムと CuRe で原価は 0.25 ドル/W と、物価が 1.41 倍になっても下がる。粗利益率は 4 割で、営業利益は 32.5 億ドル。米国外も 5.0 GW に伸びる。2029 年から純利益の半分を還元し、累計 104 億ドル。それでも純現金は 169 億ドル残る。ジンコ・ロンジ・カナディアン・ソーラーが米国で作る能力を持っても、規則が参入を抑える前提である。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 10.7 倍の 9.5 割(10.2 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)11 億ドルを足して時価総額 321 億ドル。
- 米国向け(大規模発電所):数量 20.0(FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア)× 価格 0.44(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 88 億ドル・営業利益 38 億ドル。市場 44 GW × シェア 45.5%。営業利益は 45X 控除 0.0 億ドルを含む(本社費・開発費の前)
- 米国外:数量 5.0(米国外の出荷量(GW))× 価格 0.36(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 6 億ドル。米国外(インド・欧州・豪州・日本など)。45X なし。営業利益は本社費・開発費の前
倍率:上限に近く置いた。 正当化 PER の上限は 10.7 倍(g 4.0%、RONIC 10.4%。RONIC = k 9.8% + 1/3 ×(事業の ROE 11.8% − k)。堀は弱い)。その 9.5 割の 10.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 30.4 × 10.2 + 余った現金(戻り方込み)11 = 321 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 10.4 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:控除の終了後も関税・最低輸入価格・FEOC 規則が続き、技術でも先行する、FSLR にとって最良の筋書き。政策・需要・技術がそろう必要があり 1 割弱。
やや楽観 18% やや楽観:壁は残るが緩み、粗利益率は 3 割強で落ち着く 利益 19 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 167.20 ドル180 億ドル
最低輸入価格は名目で据え置かれ、実質では下がるが、米国の設置は 40 GW(データセンター向け)まで戻り、FSLR は 43.8% の 17.5 GW。価格は 0.41 ドル/W(10 年で 1.37 倍)、原価は 0.3 ドル/W。粗利益率は 32% 台、営業利益は 18.1 億ドル。ペロブスカイト・タンデムは小さな量産にとどまり、米国外は 3.5 GW。自社は 2029 年から純利益の半分を還元し、累計 77 億ドル。45X の終わった後の事業の ROE は 8% 前後で、資本コストの 9.75% に届かない。Qcells や T1 エナジーなど米国製のセル・モジュールを作る競合が増え、価格を物価並みには上げられない。成熟後の倍率は、g 0.0% の正当化 PER の上限 10.3 倍の 9 割(9.2 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)11 億ドルを足して時価総額 180 億ドル。
- 米国向け(大規模発電所):数量 17.5(FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア)× 価格 0.41(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 72 億ドル・営業利益 25 億ドル。市場 40 GW × シェア 43.8%。営業利益は 45X 控除 0.0 億ドルを含む(本社費・開発費の前)
- 米国外:数量 3.5(米国外の出荷量(GW))× 価格 0.32(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。米国外(インド・欧州・豪州・日本など)。45X なし。営業利益は本社費・開発費の前
倍率:上限から少し下げて置いた。 事業の ROE 8.1% が k 9.8% 以下なので PER の上限は 1÷k = 10.3 倍。その 9 割の 9.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 18.3 × 9.2 + 余った現金(戻り方込み)11 = 180 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 9.7 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:関税・最低輸入価格が名目で据え置かれ、実質では下がるが、国産の需要が支える。2 割弱。
中立 34% 中立:壁は残るが価格は物価に届かず、控除の後は低利益の製造業になる 利益 11 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 100.15 ドル108 億ドル
45X は 2033 年にゼロになり、2035 年の FSLR は控除なしで稼ぐ。米国の設置は 36 GW(2031 年まで横ばい、その後は緩やかに戻る)、シェア 44% の 16.0 GW。価格は 0.38 ドル/W(最低輸入価格と同水準。10 年で 1.27 倍で物価 1.41 倍に届かない)、原価は 0.3 ドル/W(物価で上がる分を技術で相殺)。粗利益率は 24% 台、営業利益は 9.4 億ドルと、控除のあった 2028 年の 26 億ドルの 3 分の 1 強。事業の ROE は 5〜6% で資本コストの 9.75% を下回る。2029 年から純利益の半分を還元し累計 59 億ドル。純現金は 126 億ドルまで積み上がるが、評価に足すのは今の余剰 22 億ドルだけ。成熟後の倍率は、g 0.0% の正当化 PER の上限 10.3 倍の 8.5 割(8.7 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)11 億ドルを足して時価総額 108 億ドル。
- 米国向け(大規模発電所):数量 16.0(FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア)× 価格 0.38(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 36 GW × シェア 44.4%。営業利益は 45X 控除 0.0 億ドルを含む(本社費・開発費の前)
- 米国外:数量 3.0(米国外の出荷量(GW))× 価格 0.30(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。米国外(インド・欧州・豪州・日本など)。45X なし。営業利益は本社費・開発費の前
倍率:上限から一段下げて置いた。 事業の ROE 5.5% が k 9.8% 以下なので PER の上限は 1÷k = 10.3 倍。その 8.5 割の 8.7 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 11.1 × 8.7 + 余った現金(戻り方込み)11 = 108 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 9.4 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:控除の終了は法律で決まっている。それ以外は中心の筋書きで、最大の確率。
やや悲観 25% やや悲観:壁が弱まり価格が下がる。控除が消えると事業は赤字 利益 2 億ドル · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 23.99 ドル26 億ドル
最低輸入価格の迂回(東南アジア・インド・中東の第三国製)と、米国製を増やす Qcells・T1 エナジーなど競合の増加で、2035 年の価格は 0.32 ドル/W(10 年で 1.07 倍。中国国内の 0.11 ドル/W との差が詰まらない)。米国の設置は 33 GW・シェア 41% の 13.5 GW、米国外 2.5 GW。原価は 0.3 ドル/W。45X が終わった 2033 年から営業赤字(2035 年に 1.5 億ドルの赤字)になり、増設は止まり工場の縮小を進める。純利益は現金の利息で 2.4 億ドルと小さな黒字。還元は純利益の 4 分の 1(累計 16 億ドル)にとどまる。稼ぐ力は小さな黒字だけなので、事業の純利益 2.2 億ドルを 1÷k の倍率で見て、余った現金(戻り方込み)を足した時価総額は約 26 億ドル。
- 米国向け(大規模発電所):数量 13.5(FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア)× 価格 0.32(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 43 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 33 GW × シェア 40.9%。営業利益は 45X 控除 0.0 億ドルを含む(本社費・開発費の前)
- 米国外:数量 2.5(米国外の出荷量(GW))× 価格 0.27(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。米国外(インド・欧州・豪州・日本など)。45X なし。営業利益は本社費・開発費の前
倍率:45X が終わって営業利益が赤字に近づく筋書きで、稼ぐ力は受取利息による小さな黒字だけ。事業の ROE が資本コストを下回るので PER の上限は 1÷k の 10.3 倍で、その 8.5 割の 8.7 倍を事業の純利益 2.2 億ドルに掛け、余った現金(戻り方込み)8 億ドルを足して時価総額は約 26 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 10.8 倍)。専用の薄膜設備は転用が利かないので、帳簿の自己資本には掛けない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:最低輸入価格の迂回や国産の競合の増加で価格が上がらない筋書き。実現しやすく 2 割台半ば。
悲観 15% 悲観:構造的に負ける。関税が後退し、控除が消えた後に赤字が続く 利益 −5 億ドル · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 20.46 ドル22 億ドル
2029 年以降の政権で Section 232 の最低輸入価格と関税が緩み、中国勢(赤字でも出荷を維持してきた)が第三国経由で 0.25 ドル/W 前後まで価格を押し下げる。米国の設置は 30 GW、シェア 32% の 9.5 GW(契約の解除で出荷が縮む)、米国外 1.5 GW。原価は 0.3 ドル/W まで下げてもなお、価格が原価と同水準で、営業損失は 7 億ドル超。45X が終わった 2033 年以降は赤字で、純現金も 2031 年の 61 億ドルから減り始め 2035 年は 47 億ドル。工場の閉鎖と減損で、簿価を大きく割る。還元はなく、控除で稼いだ現金の大半を設備に戻して失う筋書きである。赤字なので稼ぐ力は見ず、売れる資産は今の純現金 22 億ドルだけを数えて、時価総額は約 22 億ドル。
- 米国向け(大規模発電所):数量 9.5(FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア)× 価格 0.25(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 −1 億ドル。市場 30 GW × シェア 31.7%。営業利益は 45X 控除 0.0 億ドルを含む(本社費・開発費の前)
- 米国外:数量 1.5(米国外の出荷量(GW))× 価格 0.22(1 W あたり販売価格(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 −1 億ドル。米国外(インド・欧州・豪州・日本など)。45X なし。営業利益は本社費・開発費の前
倍率:45X が終わった後も赤字が続くので稼ぐ力では測らず、売れる資産で床を置く。売れる資産は今の純現金 22 億ドルだけを数え(専用の薄膜設備・建設中の工場は転用が利かず、減損と閉鎖費用で売却益は見込まない)、今の自己資本 95 億ドルに対する PBR 0.23 倍に当たる。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の悲観は景気でなく構造負け。政権交代で関税・最低輸入価格が緩み、中国勢が迂回して価格を壊す。政策依存の会社なので 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国向け(大規模発電所)
米国の大規模太陽光発電所向けのモジュール販売。45X 控除を受ける米国製が大半。
| 数量FSLR の米国向け出荷量(GW)= 米国の大規模太陽光の設置量(GW)× FSLR のシェア | 価格1 W あたり販売価格(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.8 | 0.30 | 47 | 21 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.38 | 61 | 17 |
取り方:2025 年の販売 17.5 GW・売上 52.2 億ドルのうち、米国向けを約 9 割と推定(決算書に内訳なし):15.8 GW × 0.30 ドル/W × 10 = 47.4 億ドル。米国の大規模向けの設置は約 33 GW(2025 年の全体 43.1 GW の約 7 割強と推定)、シェア 約 48%。営業利益は本社費・開発費の前(粗利)で、45X 控除 約 16.0 億ドル(米国製の販売 約 11 GW × 約 0.145 ドル/W と推定)を含み、控除を除くと約 5 億ドル(原価 約 0.269 ドル/W)。中立は価格を契約残高の 0.30 ドル前後から最低輸入価格 0.38 ドルへ(10 年で 1.27 倍。物価の 1.41 倍より低い)、シェアは横ばいと置いた。
米国外
インド・欧州・豪州・日本などへの販売(マレーシア・ベトナム・インド製が中心)。45X なし。
| 数量米国外の出荷量(GW) | 価格1 W あたり販売価格(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.7 | 0.28 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 0.30 | 9 | 1 |
取り方:米国外を約 1.7 GW × 0.28 ドル/W = 約 4.8 億ドルと推定(決算書に内訳なし)。営業利益は粗利で約 4%(控除なし、原価は米国向けと同じ約 0.269 ドル/W)。中立は出荷が 1.8 GW・3.0 GW(10 年)、価格は 0.27→0.30 ドル/W。
リスクと懸念
控除(45X)の縮小・失効・規則の変更
2030 年から 75%・50%・25% と下がり、2033 年にゼロになる。財務省の FEOC の材料支援の規則(太陽光は 2026 年 50% から 2029 年後 85%)の解釈次第で、対象外になる恐れもある。控除は 2026 年の粗利の約 85% なので、1 つの規則の変更が利益の大半を左右する。
関税・最低輸入価格の後退と迂回
Section 232 の 15% と最低輸入価格 0.38 ドル/W は 2026 年 12 月に始まるが、政権交代・訴訟・迂回輸入で緩めば、中国国内の 0.11 ドル/W との差が価格を壊す。IEEPA の関税は還付(2026 年第 2 四半期に純益 0.89 億ドル)となり、制度が変わりうることを示した。
契約残高の減少と顧客の解除
契約残高は 2026 年上期に 50.1 GW から 45.1 GW へ減った(出荷 7.6 GW、新規 2.8 GW、解除 0.2 GW)。第 2 四半期の売上は解除で 4% 減った。新規が出荷を下回る状態が続けば、2028 年以降の稼働率が落ち、売上と固定費の吸収の両方が悪化する。
2030 年以降の米国の需要
発電側の税額控除(45Y/48E)が着工期限で切れ、設置は 2031 年まで横ばいの見通し。着工済みの案件が尽きると、新規は控除なしの発電で採算が合うかに左右され、大規模太陽光の設置が減りうる。FSLR の出荷の約 9 割が米国向けなので、需要の落ち込みがそのまま出荷の減少になる。
技術で追い越される
結晶シリコンの TOPCon・バックコンタクトの変換効率が上がり続け、FSLR の薄膜は面積あたりの出力で不利。ペロブスカイト・タンデム(2027 年上期の試験ライン)と CuRe が遅れれば、コストの差が開く。中国勢は赤字でも研究開発を続け、変換効率の差が縮まらないと価格差がさらに広がる。
現金の使い道と資本配分
控除の期間に純現金が中立で 126 億ドルまで積み上がる。自社株買いの実績はなく、財務責任者は M&A に前向きと述べている。事業の ROE が資本コストを下回るため、現金を事業に戻すほど価値を薄める。買収で中国以外の工場を買う場合も、割高なら控除で稼いだ現金を失う。
今後の分かれ目
- 財務省が FEOC の材料支援の規則を厳しくし、FSLR の控除が一部でも対象外になったら
- 控除が粗利の約 85% なので、中立の 2028 年の営業利益 26 億ドルが 2 割以上減る。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- Section 232 の最低輸入価格(0.38 ドル/W)が据え置かれ、新規の契約が 0.38 ドル/W 前後で取れたら
- 10 年後の中立の価格 0.38 ドル/W を裏付け、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 最低輸入価格が緩められる・迂回輸入が増え、米国の価格が 0.28 ドル/W 前後へ戻ったら
- 控除後の事業が赤字になり、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。
- 契約残高が 40 GW を下回り、新規の契約が出荷を下回り続けたら
- 2028 年の出荷が 15 GW 以下になり、10 年のやや悲観に近づく。
- 自社株買いを始めるなど、純現金を還元する方針が出たら
- 現金が積み上がるだけの前提より価値が上がるが、事業の ROE が資本コストより低い点は変わらない。
- ペロブスカイト・タンデムが量産に入り、原価が 0.25 ドル/W を下回ったら
- 控除後も粗利益率 3 割台を保てる。10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- 契約残高(GW)と新規の予約・解除の量(四半期の決算)
- 45X の認識額と、財務省の FEOC の規則
- Section 232 の最低輸入価格・関税の運用と迂回の動き
- 米国の大規模太陽光の設置(SEIA・ウッド・マッケンジー)と 2030 年以降の着工
- 1 W あたりの平均価格と原価、稼働率不足の費用
- 南カロライナ・ペロブスカイトの進み具合と設備投資
- 純現金の使い道(自社株買い・M&A)
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。10 年後の倍率は、利益ベースの正当化 PER = (1−g/RONIC)/(k−g)(k 9.75%、g 0.0%、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)、堀は弱い)の上限に対し、楽観 9.5 割・やや楽観 9 割・中立 8.5 割・やや悲観 8 割・悲観 7 割 で置いた。中立は上限 10.3 倍の 8.5 割で、事業の純利益に 8.7 倍(余った現金を足した見かけは 9.4 倍)。余った現金は戻り方 0.5 を掛けて足す。総合は今の時価総額に対し ?% で、?。結論は計算の結果で、先に決めたものではない。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 5% + β 1.50 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.75% = 9.75%。β は使わない。太陽光の政策・設置の循環(+0.75)、中国勢に価格を決められること(+0.5)、控除後の単一技術・米国偏重(+0.5)を quality で見た。純現金で借金は無く、事業は傾いていないので extra は置かない。製造税額控除が薄れる影響は筋書き(控除後の利益)と悲観側の確率(10 年 40%)で表し、k には二重に足していない。
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