結論
NXP セミコンダクターズ(NXP Semiconductors N.V.・本社オランダ)は、車載向けのマイコン・プロセッサ・通信・安全チップに強い、車載半導体で世界の上位(TechInsights の 2024 年の推計で約 10%、インフィニオンに次ぐ)の会社である。2025 年は売上 122.7 億ドル(車載 71.2・産業と IoT 22.7・モバイル 15.8・通信インフラ他 13.0)、GAAP の営業利益率 24.8%、純利益 20.2 億ドル。2026 年は車載・産業の在庫調整が終わり、4-6 月期の売上は前年比 +19%(産業と IoT +38%・通信インフラ他 +41%)、GAAP の営業利益率は 30.6% まで戻った。2026 年は売上 約 143 億ドル、GAAP の営業利益 約 44 億ドル(MEMS センサー事業の売却益 6.3 億ドルを除く)、純利益 約 31 億ドルの見込みである。
売上は「市場(実質)× シェア × 価格(物価並みで 10 年 1.41 倍)」で 4 つの市場(車載・産業と IoT・モバイル・通信インフラ他)に分けて積んだ。10 年後(2035 年)の中立は売上 255 億ドル・営業利益率 30%・純利益 58 億ドルとみる。自動車向け半導体の在庫調整が繰り返す循環は、山や谷の年の利益に倍率を掛けず、悲観の確率(10 年 14%)とひどさで表した。
バリュー投資の観点では、車載の設計の継続性と安全・セキュリティの技術で堀は広く、資本の回りも悪くないが、純負債が 78 億ドル(2026 年 6 月末)あり、車載は景気と在庫で利益が大きく動く。資本コストは 8.5%(基本 8.0% + quality 0.5%)。利益ベースの正当化 PER は、のれん込みの帳簿の ROE 21%・RONIC 15%・g 4.5% で 17 倍ほどになる。10 年後の中立にはその 8 割の 13.9 倍を置いた。確率で加重した本質価値は今の時価総額の 82%(差 18%、やや割高)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。車は電動化しても、ソフトウェア定義でも、マイコン・電源・通信・セキュリティの半導体は要り、NXP の車載の設計の継続性と安全・セキュリティの実績は 10 年後も残る可能性が高い。堀は保たれ、ゾーン制御・UWB・エッジ AI の追加で少し広がる余地がある一方、中国の車載マイコンの台頭とインフィニオン・ルネサスの規模は、広がるとは言い切れない理由である。
オーナー利益(株主のものになる利益)は、株式報酬と買収の償却を費用にした GAAP の純利益から、伸びに要る再投資(工場・研究開発・買収)を引いたもの。2026 年の GAAP の純利益 約 31 億ドルは 2022 年のピーク(28 億ドル)を超えるが、これは回復途上の高さで、恒常の利益とは見ない。2025 年の 20 億ドルと 2026 年の 31 億ドルの間のどこかが、ならした利益である。
経営は、配当を安定して払い、総負債 ÷ EBITDA を 2.6 倍から 2.1 倍へ減らし、MEMS のような非中核を売る動きに規律がある。ただし買収で積んだのれんが厚く、資本の回りはファブレスの同業より劣る。安全域は、今の時価総額が 2026 年の GAAP の純利益の約 19 倍と、利益ベースの正当化 PER(17 倍ほど)を上回り、厚くない。楽観でも悲観でも今から大きく外れない値付けで、確信を持てるほど安くも、見送るほど高くもない。山や谷の利益には倍率を掛けず、10 年の筋書きと悲観の確率で循環を織り込んだ。
何で稼ぐ会社か
売上の 58% を占める車載は、車を動かす・守る・つなぐ半導体の集まりである。エンジン・車体・ADAS・ゾーン制御のマイコンとプロセッサ(S32 シリーズ)、バッテリー管理、レーダー、車内の通信(イーサネット・車載 SerDes)、キーレスの UWB・セキュアな車載認証などを自動車メーカーと部品大手(ボッシュ・コンチネンタル・デンソーなど)に売る。電動化とソフトウェア定義車(SDV)で、1 台あたりの半導体の金額(コンテンツ)が増えるのが成長の核である。
産業と IoT(19%)は、産業機器・スマート家電・ロボット向けのマイコン(i.MX・MCX)と無線(Wi-Fi・Bluetooth・Thread)、エッジ AI(2025 年に買収したキナラ(Kinara)のニューラル処理)である。モバイル(13%)は、スマートフォンの NFC(近距離無線)・セキュアエレメント・UWB・電源管理で、決済や車の鍵の機能を支える。通信インフラ他(11%)は、通信基地局の RF(高周波)パワー、電子パスポートなどのセキュア ID、データセンター向けの新しい需要で、2026 年 4-6 月期は前年比 +41%。
製造は自社工場(オランダ・米国など)と外部ファウンドリ、共同の工場(シンガポールの SSMC・2027 年に量産開始予定の VSMC)を組み合わせた、資産を軽くした形(ファブライト)。2026 年 2 月に MEMS センサー事業(売上 約 3 億ドル/年)を ST マイクロエレクトロニクスに売却し、受取額は 8.8 億ドル。最高経営責任者はラファエル・ソトマヨール(Rafael Sotomayor)。
優良さと弱いところ
堀は 4 つある。1 つ目は設計の継続性で、車載のマイコン・プロセッサは車種の開発に 3〜4 年かけて組み込まれ、車の寿命(10 年超)の間、そのまま供給される。切り替えの費用が高く、価格を決める力が働く。2 つ目は製品の幅で、マイコン・プロセッサ・アナログ・通信・安全・セキュリティを 1 社で組み合わせて売れる。3 つ目はセキュリティと機能安全の実績(NFC・セキュアエレメント・車載の安全規格)。4 つ目は自動車・産業の顧客の数と地域の広さで、売上の約 17%(出荷元ベース)が中国と、特定の国に偏らない。
資本効率は、GAAP の営業利益の税引き後を(自己資本+純負債)で割った値で 2026 年の見込みが約 18%、2022 年のピークで 20% 前後と、ファブレスの同業より低い(買収で積み上げたのれんと工場を持つため)。弱い所もある。第一に、車載の利益は自動車の生産と在庫で動き、営業利益率は 2023 年の 28.4% から 2025 年に 26.9%(GAAP 24.8%)へ下がった。第二に、GAAP の営業利益は株式報酬(2025 年 4.6 億ドル)と買収の償却を費用にしており、会社が出す非 GAAP の営業利益率(2025 年 33.1%)より約 8 ポイント低い。第三に、借金が多い(2025 年末の純負債 90 億ドル)。最後に、車載の中央計算(SDV の頭脳)では NVIDIA・クアルコム・モービルアイが先行している領域がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車向け半導体の市場は、2025 年で約 690 億ドル(推定)。電動化・ADAS・ゾーン制御で 1 台あたりの金額が増え、長期の需要は実質で年 4〜5% 伸びる見方が多い。ただし 2023〜25 年は車載・産業の在庫調整で、NXP の売上は 133 億ドルから 123 億ドルへ 8% 減った(販売店の在庫は 2025 年末に約 10 週、目標は 11 週)。2026 年は在庫調整が終わり、産業向け(+38%)の積み増しも加わって売上が戻っている。
競合の形は、インフィニオン(車載で首位。パワー半導体とマイコン AURIX)、ルネサス(車載マイコンで首位)、ST マイクロエレクトロニクス(SiC・マイコン。2026 年に NXP から MEMS を取得)、テキサス・インスツルメンツ(アナログ)、マイクロチップ。NXP は車載マイコンで約 3 割(二次情報)、レーダー・車内通信・セキュアな認証で強い。SDV では、車の機能をゾーンごとに 1 つの高性能チップにまとめる流れが進み、NXP の S32 はゾーン制御の側を押さえるが、ADAS と車載の中央計算は NVIDIA・クアルコム・モービルアイが競う。中国の車載マイコン各社は、成熟した製品で価格を下げながら、国内の自動車メーカーの採用を広げている。
循環のどこにいるか:2026 年は車載・産業の回復の途中で、会社は 2026・2027 年に 2 桁成長の約束(2024 年 11 月のアナリストデーで売上 約 160 億ドル・粗利益率 57〜63% を 2027 年の目標に置いたと二次情報にある)を再確認している。モバイルはスマートフォンの出荷が 2026 年にメモリ高騰で減る見込み(IDC は −12.9%)で、横ばい。規制は輸出管理と関税で、NXP は中国向けの販売と米国向けの供給の両方に影響を受ける。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2025 年は配当 10.3 億ドル・自社株買い 9.0 億ドル(株式報酬の源泉徴収を含む)、合計 19.2 億ドルで、非 GAAP のフリーキャッシュフローの 79%。2026 年は MEMS 売却の 8.8 億ドルを借金の返済(5.35% の社債 5.0 億ドル、3.875% の社債 7.5 億ドルの償還)に回し、4-6 月期の還元は 3.6 億ドル(フリーキャッシュフローの 46%)に抑えて財務を整えている。純負債は 2025 年末の 89.6 億ドルから 2026 年 6 月末の 77.5 億ドルへ減った(純負債 ÷ EBITDA は 1.5 倍)。
買収は小さな技術の取り込みが中心で、2025 年にエッジ AI のキナラ(3.1 億ドル)と車載 SerDes のアビバ・リンクス(2.4 億ドル)を取得した。大型の M&A は、クアルコムによる買収(2018 年に中国の規制で成立せず)の記憶と独占禁止の制約から可能性が低い。VSMC(シンガポールの 300mm 工場・NXP の持ち分 40%・出資 約 16 億ドル(二次情報))は 2027 年の量産開始を目指し、自社の供給を長く確保する投資。
株式報酬は 2025 年 4.6 億ドル(売上の 3.8%)で、費用として純利益から引き、正味の還元(payout)は配当 + 自社株買い − 株式報酬で増えた株の分で見た。MEMS の売却益 6.3 億ドルは一時の益で、将来の利益に入れていない(売却の受取は純負債の減りに入れた)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車載の 1 台あたりの半導体は、電動化・ADAS・ゾーン制御で今も増え続けている。NXP は車載マイコンで約 3 割を持ち、ゾーン制御用の S32 は SDV の標準になりうる。2026 年 4-6 月期は売上が前年比 +19%、GAAP の営業利益率は 30.6%、会社は 2026・2027 年の 2 桁成長の約束を再確認し、7-9 月期の売上は 37.5 億ドル(前年比 +15〜21%)と見ている。産業と IoT(+38%)では、エッジ AI のキナラ・フィジカル AI(ロボット・産業)の新しい需要が伸び、通信インフラ他(+41%)ではデータセンターが加わった。MEMS の売却で非中核を整理し、純負債 ÷ EBITDA は 1.9 倍から 1.5 倍へ下がった。2027 年に量産が始まる VSMC で 300mm の供給を確保し、粗利益率は 57〜63% の目標に向かう。1 台あたりの金額と顧客の幅で、車載の循環の谷は浅くなり、10 年後の GAAP の純利益は大きく伸びうる。
慎重な見方
今の利益は在庫調整の後の戻りで、2026 年の GAAP の営業利益率 31% は 2022 年のピーク(28.7%)を超える高さである。産業向けの +38% は、2023〜25 年に絞った在庫の積み増しを含み、反動が来る。車載の利益は自動車の生産に左右され、2023 年から 2025 年に営業利益率が 1.5 ポイント下がった。競合は強く、インフィニオン(車載首位)・ルネサス(車載マイコン首位)・ST・テキサス・インスツルメンツが同じ顧客を狙い、中国の車載マイコン各社は成熟した製品の価格を押し下げている。SDV の中央計算は NVIDIA・クアルコム・モービルアイに取られ、NXP は周辺のチップの供給者にとどまるかもしれない。GAAP の営業利益は非 GAAP より 8 ポイント低く、純負債は 78 億ドルが残り、利払いは借り換えで増える。モバイル(13%)はスマートフォンが 2026 年に縮み、通信基地局の RF は構造的に細る。2009 年の不況ではマイコン・パワーの需要が 3 割落ちた(業界ノート)。
どちらに重みを置いたか
利益ベースの正当化 PER(10 年後の中立で上限 17.4 倍の 8 割=13.9 倍、k = 8.5%)は、2026 年の PER(約 19 倍)を下回る。本質価値は今の 82%、結論はやや割高。車載・産業の数量と価格の見通しは変えていない。堀は普通(設計採用は長いが、中国勢と在庫調整の振れがある)として上限の 8 割に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 284.39 ドル723 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 94.62 ドル241 億ドル)。 今の値に割り戻すと 188.71 ドル480 億ドル、今との差 −20.6%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 585.46 ドル1,489 億ドル | 141.15 ドル359 億ドル | +205.6% | +11.8% | 58.13 ドル148 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 450.59 ドル1,146 億ドル | 123.07 ドル313 億ドル | +141.2% | +9.2% | 114.73 ドル292 億ドル |
| 中立 | 34% | 316.44 ドル805 億ドル | 107.73 ドル274 億ドル | +78.4% | +6.0% | 144.22 ドル367 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 130.42 ドル332 億ドル | 69.99 ドル178 億ドル | −15.7% | −1.7% | 48.10 ドル122 億ドル |
| 悲観 | 14% | 61.02 ドル155 億ドル | 37.75 ドル96 億ドル | −58.5% | −8.4% | 13.83 ドル35 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 284.39 ドル723 億ドル | 94.62 ドル241 億ドル | +59.4% | +4.8% | 379.01 ドル964 億ドル |
今の株価時価総額 237.79 ドル605 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 1 台あたりの半導体が膨らみ続け、ゾーン制御と UWB・エッジ AI で車載の主役にとどまる 利益 90 億ドル · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 585.46 ドル1,489 億ドル
車載の対象市場は実質 1,180 億ドル(2025 年の 1.7 倍)に伸び、NXP はゾーン制御・レーダー・UWB でシェア 10.8%、産業と IoT はフィジカル AI・エッジ AI で市場 実質 1,250 億ドル・シェア 5.0%、通信インフラ他はデータセンターで市場 実質 420 億ドル・シェア 8.5%。価格は物価並みの 141。一度採用された車載のチップは車の寿命の間使われ、価格を決める力が保たれる。競合が負けるわけではなく、1 台あたりの金額が増える市場で NXP が上回る筋。10 年目の成長が年 9% 台なので、倍率は利益ベースの正当化 PER の 9 割で置く。 2035 年の売上は約 344 億ドル(車載 180・産業と IoT 88・モバイル 26・通信インフラ他 50)、営業利益率 34.3%、営業利益 118 億ドル、純利益 約 90 億ドル。
- 車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全):数量 127(車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 180 億ドル・営業利益 65 億ドル。市場 実質 1180 億ドル × シェア 10.8%・価格 141・営業利益率 36%
- 産業と IoT:数量 62.5(産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 88 億ドル・営業利益 29 億ドル。市場 実質 1250 億ドル × シェア 5.0%・価格 141・営業利益率 33%
- モバイル:数量 18.6(モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 26 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 175 億ドル × シェア 10.6%・価格 141・営業利益率 28%
- 通信インフラ他:数量 35.7(通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 50 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 420 億ドル × シェア 8.5%・価格 141・営業利益率 34%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 26.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 26.0% − k 8.5%)= 17.2%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.5 倍。上限の 9 割の 16.6 倍に置いた:車載のゾーン制御・UWB・エッジ AI が伸びる上振れでも、堀は普通で在庫調整の振れも残るので控える。 時価総額 = 純利益 89.7 × 16.6 倍 = 1489 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:車載の 1 台あたりの金額が実質で年 5% 台伸び続け、SDV のゾーン制御・レーダー・UWB・エッジ AI で NXP が主役にとどまる筋。価格を決める力も保たれる必要があり、8% に留める。
やや楽観 20% 車載と産業が高い水準を保ち、中国勢と欧州勢の追い上げをしのぐ 利益 75 億ドル · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 450.59 ドル1,146 億ドル
車載の対象市場は実質 1,100 億ドル・シェア 10.5%、産業と IoT は市場 実質 1,100 億ドル・シェア 4.7%、通信インフラ他は市場 実質 380 億ドル・シェア 8.0%、モバイルは市場 実質 168 億ドル。価格は 141。中国の車載マイコンが国内に閉じ、インフィニオン・ルネサスと NXP の 3 社が欧米・日本を分ける形が保たれ、利益率は 2022 年のピークの 28.7% を上回る。 2035 年の売上は約 303 億ドル(車載 163・産業と IoT 73・モバイル 24・通信インフラ他 43)、営業利益率 32.8%、営業利益 99 億ドル、純利益 約 75 億ドル。
- 車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全):数量 116(車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 163 億ドル・営業利益 56 億ドル。市場 実質 1100 億ドル × シェア 10.5%・価格 141・営業利益率 34%
- 産業と IoT:数量 51.7(産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 73 億ドル・営業利益 23 億ドル。市場 実質 1100 億ドル × シェア 4.7%・価格 141・営業利益率 32%
- モバイル:数量 17.3(モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 24 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 168 億ドル × シェア 10.3%・価格 141・営業利益率 27%
- 通信インフラ他:数量 30.4(通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 43 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 実質 380 億ドル × シェア 8.0%・価格 141・営業利益率 32%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 23.8%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 23.8% − k 8.5%)= 16.2%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.0 倍。上限の 8.5 割の 15.3 倍に置いた:強気寄りだが、中国の車載マイコンとインフィニオン・ルネサスの追い上げを見て控える。 時価総額 = 純利益 74.9 × 15.3 倍 = 1146 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:車載・産業が中立より 1 割高い水準で長く続く筋。業界ノートの楽観(10 年で約 2 倍)の入り口。20% を置く。
中立 34% 市場は伸びるが競合が価格を削り、利益率は 2022 年のピーク並みで落ち着く 利益 58 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 316.44 ドル805 億ドル
車載の対象市場は実質 1,000 億ドル(2025 年の 1.45 倍。年 +3.8%)でシェア 10.0%(MEMS の売却分を除き、競合の追い上げで少し下がる)、産業と IoT は実質 960 億ドルでシェア 4.3%、通信インフラ他は市場 実質 330 億ドルでシェア 7.2%、モバイルは市場 実質 160 億ドルでシェア 10.0%。価格は物価並みの 141。インフィニオン・ルネサス・ST・中国勢が追いつき、粗利益率が競争で縮み、営業利益率は 2026 年の 31% から 30% へ少し下がる。堀は保たれるが広がらない筋。 2035 年の売上は約 255 億ドル(車載 141・産業と IoT 58・モバイル 23・通信インフラ他 34)、営業利益率 30.4%、営業利益 78 億ドル、純利益 約 58 億ドル。
- 車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全):数量 100(車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 141 億ドル・営業利益 45 億ドル。市場 実質 1000 億ドル × シェア 10.0%・価格 141・営業利益率 32%
- 産業と IoT:数量 41.3(産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 58 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 960 億ドル × シェア 4.3%・価格 141・営業利益率 29%
- モバイル:数量 16.0(モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 23 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 実質 160 億ドル × シェア 10.0%・価格 141・営業利益率 25%
- 通信インフラ他:数量 23.8(通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 34 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 実質 330 億ドル × シェア 7.2%・価格 141・営業利益率 30%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.1%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 21.1% − k 8.5%)= 14.8%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.4 倍。上限の 8 割の 13.9 倍に置いた:設計採用は長いが、中国勢と在庫調整の振れがあり、堀は普通として控える。 時価総額 = 純利益 57.9 × 13.9 倍 = 805 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:車載の市場は実質で年 4% 台、産業は年 4〜5% 伸び、シェアは 10% 前後を保つが、競合が追いつき利益率は今より少し下で落ち着く筋。業界ノートの中立(1.6 倍)より車載のコンテンツ増の分だけ大きい。34% を置く。
やや悲観 24% 中国勢とインフィニオン・ルネサスに押されシェアが 9% を割り、利益率が下がる 利益 29 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 130.42 ドル332 億ドル
車載の対象市場は実質 900 億ドルに伸びるが、NXP のシェアは 8.8% まで下がり(中国の車載マイコン・インフィニオン・ルネサスに取られる)、価格の水準は 135(競合に 4% 譲る)。産業と IoT は市場 実質 850 億ドルでシェア 3.6%、通信インフラ他は市場 実質 270 億ドルでシェア 6.2%。営業利益率は競合の値下げと研究開発費の増加で 21.5% まで下がる。NXP は「車載の幅広い供給者」から「中位の半導体会社」に変わる。 2035 年の売上は約 189 億ドル(車載 107・産業と IoT 41・モバイル 18・通信インフラ他 23)、営業利益率 21.5%、営業利益 41 億ドル、純利益 約 29 億ドル。
- 車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全):数量 79.2(車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 107 億ドル・営業利益 25 億ドル。市場 実質 900 億ドル × シェア 8.8%・価格 135・営業利益率 23%
- 産業と IoT:数量 30.6(産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 41 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 実質 850 億ドル × シェア 3.6%・価格 135・営業利益率 20%
- モバイル:数量 13.3(モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 148 億ドル × シェア 9.0%・価格 135・営業利益率 17%
- 通信インフラ他:数量 16.7(通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 23 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 270 億ドル × シェア 6.2%・価格 135・営業利益率 21%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 14.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 14.4% − k 8.5%)= 11.5%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.2 倍。上限の 7.5 割の 11.4 倍に置いた:中国勢と在庫調整で利益の質が落ちる。 時価総額 = 純利益 29.1 × 11.4 倍 = 332 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国の車載マイコン各社とインフィニオン・ルネサスが NXP の顧客を取り、シェアが 10.3% から 8.8% に下がり、価格も物価並みより 4% 低い筋。業界ノートの悲観(構造)の入り口。24% を置く。
悲観 14% 構造的に負け、車載の中位の部品会社になる 利益 16 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 61.02 ドル155 億ドル
車載の対象市場は実質 850 億ドルに伸びるが、NXP のシェアは 8.2%(中国勢が欧米の自動車メーカーに広がり、SDV の中央計算は NVIDIA・クアルコムが取る)、価格の水準は 125(競合に 11% 譲る)。産業と IoT は市場 実質 780 億ドルでシェア 3.2%、通信インフラ他は基地局の細りで市場 実質 250 億ドルでシェア 5.5%。営業利益率は 17.6% まで下がり、NXP は車載の中位の部品会社になる。倍率は ROE が k を少し上回る水準の上限の 7 割だが、1÷k の 11.1 倍を床にする。 2035 年の売上は約 150 億ドル(車載 87・産業と IoT 31・モバイル 14・通信インフラ他 17)、営業利益率 17.6%、営業利益 26 億ドル、純利益 約 16 億ドル。
- 車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全):数量 69.7(車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 87 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 850 億ドル × シェア 8.2%・価格 125・営業利益率 20%
- 産業と IoT:数量 25.0(産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 31 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 780 億ドル × シェア 3.2%・価格 125・営業利益率 15%
- モバイル:数量 11.5(モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 135 億ドル × シェア 8.5%・価格 125・営業利益率 12%
- 通信インフラ他:数量 13.8(通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 250 億ドル × シェア 5.5%・価格 125・営業利益率 15%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 11.6%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 11.6% − k 8.5%)= 10.0%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.8 倍。上限の 7 割の 9.7 倍に置いた:ROE が k を少し上回るだけの、構造的に負ける筋書きなので上限の下側に置く。 時価総額 = 純利益 16 × 9.7 倍 = 155 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国勢が成熟した製品を中心に欧米の自動車メーカーにも広がり、SDV の中央計算は NVIDIA・クアルコムが取り、NXP は周辺のチップの供給者になる筋。優良ではなくなる条件が重なるので 14% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
車載(マイコン・プロセッサ・通信・安全)
エンジン・車体・ADAS・ゾーン制御のマイコンとプロセッサ(S32)、バッテリー管理、レーダー、車内通信、車載のセキュアな認証。電動化とソフトウェア定義車(SDV)で 1 台あたりの金額が増える。2026 年 4-6 月期は前年比 +12%。
| 数量車載向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 71.2 | 100 | 71 | 20 |
| 10 年後 中立 | 100 | 141 | 141 | 45 |
取り方:2025 年の売上は 71.16 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 690 億ドルと推定し、当社シェアは約 10.3%(推定。MEMS 事業の売上 約 3 億ドルを含む)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 24.8%(株式報酬と買収の償却を費用にした値)を、車載 27.5%・産業と IoT 22%・モバイル 20%・通信インフラ他 21% と推定して割り振り、合計は全社の営業利益 30.5 億ドルと一致させた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
産業と IoT
産業機器・スマート家電・ロボット向けのマイコン(i.MX・MCX)、無線、エッジ AI(キナラ)。2026 年 4-6 月期は前年比 +38%(在庫の積み増しを含む)。
| 数量産業と IoT向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.7 | 100 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 41.3 | 141 | 58 | 17 |
取り方:2025 年の売上は 22.73 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 600 億ドルと推定し、当社シェアは約 3.8%(推定。MEMS 事業の売上 約 3 億ドルを含む)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 24.8%(株式報酬と買収の償却を費用にした値)を、車載 27.5%・産業と IoT 22%・モバイル 20%・通信インフラ他 21% と推定して割り振り、合計は全社の営業利益 30.5 億ドルと一致させた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
モバイル
スマートフォンの NFC・セキュアエレメント・UWB・電源管理。2026 年 4-6 月期は前年比 +6% だが、スマートフォンの出荷は 2026 年に減る見込み。
| 数量モバイル向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.8 | 100 | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 141 | 23 | 6 |
取り方:2025 年の売上は 15.84 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 150 億ドルと推定し、当社シェアは約 10.6%(推定。MEMS 事業の売上 約 3 億ドルを含む)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 24.8%(株式報酬と買収の償却を費用にした値)を、車載 27.5%・産業と IoT 22%・モバイル 20%・通信インフラ他 21% と推定して割り振り、合計は全社の営業利益 30.5 億ドルと一致させた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
通信インフラ他
通信基地局の RF パワー、電子パスポートなどのセキュア ID、データセンター向けの新しい需要。2026 年 4-6 月期は前年比 +41%。
| 数量通信インフラ他向け半導体の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.0 | 100 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 141 | 34 | 10 |
取り方:2025 年の売上は 12.96 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 180 億ドルと推定し、当社シェアは約 7.2%(推定。MEMS 事業の売上 約 3 億ドルを含む)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 24.8%(株式報酬と買収の償却を費用にした値)を、車載 27.5%・産業と IoT 22%・モバイル 20%・通信インフラ他 21% と推定して割り振り、合計は全社の営業利益 30.5 億ドルと一致させた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
リスクと懸念
車載・産業の在庫調整の循環
車載と産業は売上の 77% を占め、自動車の生産と部品の在庫で利益が大きく動く。2023 年 133 億ドルの売上は 2025 年に 123 億ドルへ下がり、2026 年の産業向けの +38% には積み増しの反動の可能性がある。悲観の筋書きは 2028 年の売上が 2026 年の約 26% 減(106 億ドル・営業利益率 12.6%)、2009 年(マイコン・パワー −30%)を下敷きにした。
車載の競合と中国勢
インフィニオン(車載首位)・ルネサス(車載マイコン首位)・ST・テキサス・インスツルメンツが同じ車載の顧客を狙い、中国の車載マイコンは成熟した製品の価格を押し下げる。NXP のシェアが 10.3% から 8% 台へ下がり、価格が物価並みより 1〜4% 低い筋は、やや悲観・悲観で表した。売上の約 17% が中国。
SDV の頭脳(中央計算)を取れない
車の機能が 1 つの高性能チップに集まる流れで、NVIDIA・クアルコム・モービルアイが先行する。NXP のゾーン制御・レーダー・通信が中央計算の周辺にとどまると、1 台あたりの金額の伸びが想定より小さく、車載のシェアを 10% 前後に保てない。やや悲観・悲観の筋書きは、この場合のシェアと価格の低下を表している。
借金と利払い
純負債 77.5 億ドル(2026 年 6 月末)。低い金利の社債が 2026 年から借り換えで 5% 台に上がり、利払いは増える。景気が悪化すると EBITDA が減り、純負債 ÷ EBITDA が上がる。MEMS 売却の 8.8 億ドルは借金の返済に回した。
株式報酬と非 GAAP の見かけ
株式報酬は 2025 年 4.6 億ドル(売上の 3.8%)、買収の償却も大きい。会社が出す非 GAAP の営業利益率(2025 年 33.1%)は GAAP(24.8%)より約 8 ポイント高く、非 GAAP の 1 株利益は GAAP より 49% 高く見える。本質価値の評価は GAAP で行った。
モバイル・通信基地局の弱さ
モバイル(売上の 13%)はスマートフォン出荷が 2026 年に減る見込みで、基地局向けの RF パワーは構造的に細る。通信インフラ他の +41% は、データセンターなどの新しい需要が基地局の減少を上回っている状態だが、詳細な売上は開示されていない。この 2 市場は合わせて売上の 24%。
関税・輸出管理・VSMC の立ち上げ
米国の関税と輸出管理は、中国向けの販売と部材の調達の両方に効く。VSMC(持ち分 40%・出資 約 16 億ドル(二次情報))は 2027 年の量産開始を目指し、立ち上げが遅れると費用が先に出る。関税が自動車部品や半導体に広がれば、顧客の自動車メーカーの生産計画と NXP の価格の両方に響く。
今後の分かれ目
- 車載の売上が 2026 年 10-12 月期に前期比で減り、販売店の在庫が 12 週を超える
- 2026 年が山だった可能性が高まる。10 年の中立の置き方を下げ、悲観を厚くする。
- 産業と IoT の +38% が 2027 年 1-3 月期に +10% 以下へ急に落ちる
- 積み増しの反動と見て、産業のシェアの置き方(4.6%)を下げ、やや悲観へ確率を寄せる。
- S32 のゾーン制御が複数の大手自動車メーカーの次期車種に採用される
- 車載のシェアを 10.4% から 10.8% へ上げ、楽観へ確率を寄せる(採用は売上になるまで 2〜3 年かかる)。
- 中国の車載マイコン各社が欧米の自動車メーカーにも採用される
- 車載のシェアを 8% 台、価格を物価並みの −4% へ下げ、やや悲観・悲観へ確率を移す。
- GAAP の営業利益率が 33% を超えて 2 四半期定着する(非 GAAP で 38% 超)
- 楽観の筋書き(営業利益率 34%)が近づく。倍率は変えず、利益の置き方を上げる。
- 自社株買いが急に増える(年 20 億ドル規模)か、大型の M&A が出る
- 還元の質(割高で買う)と買収で積むのれんを確かめ、正味の還元から株式報酬の分を引いた額で見直す。
見ておくもの
- 車載・産業と IoT の四半期の売上と前期比、販売店の在庫(週)
- GAAP の粗利益率(2026 年 4-6 月期 57.3%)と営業利益率(30.6%)、株式報酬(売上の 3.8%)
- S32・i.MX の新しい世代の採用(ゾーン制御・ADAS・レーダー)の公表
- インフィニオン・ルネサス・ST・TI の車載の売上と中国の車載マイコン各社の動き
- 純負債 ÷ EBITDA(2026 年 6 月末 1.5 倍)と社債の借り換え
- VSMC(シンガポール)の量産開始(2027 年)と NXP の出資額
- 中国向けの売上比率(約 17%)と関税・輸出管理の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) で出した。k 8.5%(基本 8.0% + quality 0.5%)、ROE は帳簿(のれん込み。中立 21%)、堀は普通、g は半導体の数量が実質で伸び続けるとして 4.5%(k − g = 4.0%)。2026 年の回復途上の利益や 2022 年のピークには高い倍率を掛けず、中立は上限 17.4 倍の 8 割。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。今の値段には寄せていない。総合は -18%(やや割高)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.57 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0.5% = 8.5%(β は使わない)。車載・産業の在庫調整の循環の分だけ +0.5。純負債は 2026 年 6 月末 77.5 億ドルで時価総額の 15.8%、EBITDA の 2 倍前後なので借金の上乗せは 0。存続の不安もなく上乗せは 0。中国・競合の圧力と循環の山谷は、k でなく確率(悲観 10 年 14%)と悲観の深さで表した。