結論
マイクロンは DRAM・HBM・NAND を作る米国唯一の大手メモリ会社で、DRAM はサムスン電子・SK ハイニックスと 3 社で市場を分け合う。2026 年 8 月期の売上は 1,332 億ドル(前の期の 3.6 倍)、営業利益率は 75%、純現金は 383 億ドルに達し、8 月までの四半期の売上は 542 億ドル、次の四半期の見通しは 615 億ドルと、年率 2,400 億ドルを超える。2027 年分の出荷の 75% 超がすでに契約済みで、供給は 2028 年末のクリーンルームまで増えにくい。
売上は「業界のビット出荷 × 当社シェア × ビット単価」で積んだ。10 年後は中国勢(CXMT・YMTC)の台頭でビット単価の下落が続き、当社は DRAM シェア 19%・売上 790 億ドルの普通に強い会社になる、というのが中立の見立てである。
バリュー投資の観点では、メモリは周期の山で利益が最大に見え、倍率が最も低く見える業種で、2026 年の PER 12 倍は罠である。資本コストは基本 8.0% に quality 1.75%(メモリの大きな振れ・価格を決められない・中国勢の追い上げ)を足した 9.75%。中立は ROE が資本コストに届かず、正当化 PER の上限は 1÷k の 10.3 倍で、その 9.5 割の 9.7 倍に、余った現金 383 億ドル(戻り方 0.5)を足して、10 年後の時価総額は約 2,712 億ドル(今の 2.7 割)。確率で加重した本質価値は今の値段を約 6 割下回り(割高、10 年 −62%)、事業の質は上がったが、安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。メモリは 10 年後も必要で、マイクロンも 3 社寡占の一角として残る可能性が高い。ただし今より強いかは分からない。堀は規模と技術で、需給がきつい時にしか価格を決める力が出ない。2026 年の営業利益率 75% は、10 年の平均ではなく山の頂である。
次にオーナー利益。ならし利益で見ると今の時価総額は 26 倍前後で、5% の国債の世界では高い。
資本配分は、山で増設を決めて谷で苦しんだ歴史(2008〜09 年・2023 年)があり、今も建屋への投資を増やしている点が気になる。安全域は、悲観でも純現金と HBM 契約の残りが下を支えることだが、自己資本の大半は工場で、悲観では自己資本の 5 割ほど(PBR 0.5 倍前後)までは下がりうる。
結論として、事業の質は上がったが、予測の確実性は低く(需給の山と谷)、資本コストは quality を足した 9.75% に置く。値段が山の利益を前提にしているなら、待つのが正しい。
何で稼ぐ会社か
売上の大半は DRAM で、サーバー・PC・スマホ・車載に使う汎用品と、AI 用 GPU に載せる HBM(高帯域メモリ)に分かれる。残りが NAND(SSD・モバイル用フラッシュ)で、データセンター向け SSD の比率が上がっている。2026 年 8 月期は DRAM が約 8 割(1,060 億ドル)、NAND が約 2 割(270 億ドル)と置く(数量 × 価格でなく、市場規模 × シェアで推定した)。
HBM は GPU(エヌビディア(NVIDIA)のブラックウェル・ルービン、AMD)の隣に積むメモリで、通常の DRAM の 3 倍前後のウエハー面積を使うのに、出荷ビットは小さい。そのため HBM が増えるほど汎用 DRAM が足りなくなり、全体の価格が上がる構造がある。顧客は上位クラウド(マイクロソフト・アマゾン・グーグル・メタ)、AI 企業、サーバー・PC・スマホのメーカー。2026 年は 26 件の戦略顧客契約が総ビットの約 35% を 2030 年まで押さえた。
製造は米国(アイダホ・ニューヨーク)・日本(広島)・台湾・シンガポールなどで、自社の工場を持つ装置産業である。設備投資は 2026 年 8 月期に 274 億ドルで、2027 年はさらに増える。売上の変動が大きく、固定費も大きい。
優良さと弱いところ
堀は 3 つあるが、どれも「広いが永続的ではない」。第 1 は規模と製造技術で、DRAM は 3 社寡占であり、最先端の微細化・EUV・積層の費用が新規参入を阻む。第 2 は HBM の設計と顧客との結びつきで、2026 年に HBM が 2 位集団に入り、エヌビディアと特注の HBM を共同で作り始めた。ただし HBM のシェアは SK ハイニックスが約 6 割で、MU は 1〜2 割、ルービン向け HBM4 では 1 割台と見られ、設備の規模でも 2 強に劣る。第 3 は米国の補助金(CHIPS 法)と国内生産の優位で、国内顧客と政府から見た安全保障上の価値がある。
資本効率は周期で激しく振れる。営業利益率は 2018 年に 49%、2023 年に −33%、2026 年に 75%。ROE は 2018 年 44% から 2023 年 −13% へ。商品としてのメモリは顧客から見て差別化が小さく、価格を決める力は需給がきつい時だけ。経営は周期の読みを誤って山で設備投資を増やす癖が過去にあり、そこを監視する必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
メモリ市場は 2025 年の約 2,300 億ドルから 2026 年に約 8,000 億ドル超(前年比約 +250%)へ、WSTS の見方では 2027 年はさらに +32%。TrendForce では DRAM の契約価格が 2026 年第 1 四半期に前期比 +90〜95%、第 2 四半期に +58〜63%、第 3 四半期に +13〜18%と、上げ幅が縮み始めた。HBM が DRAM のウエハーの 22% を使うのに出荷ビットは 9% で、通常の DRAM が足りない。NAND はモルガン・スタンレーが 2027 年まで不足と見る。
構造の変化は 3 つ。第 1 に AI のメモリ容量:サーバー 1 台あたりの DRAM が増え続ける。第 2 に供給:サムスン電子・SK ハイニックスの増設、CXMT(DRAM 月 32 万枚から 2027 年に 42 万枚、世界シェア 9.5%)、YMTC の第 3 工場が 2027 年に立ち上がる。新しいクリーンルームは MU でも 2028 年末以降で、それまで供給が増えにくい。第 3 に反動:メモリの高騰は PC・スマホの出荷を押し下げる(IDC は 2026 年の PC を最大 −9%)。
循環の位置は「山の頂」と見る。契約価格の上げ幅が縮み、会社が 2027 年の契約を積み上げている点は強いが、2028〜29 年に新しい供給と AI 投資の鈍化が重なる局面は、2018 年→2019 年、2022 年→2023 年と同じ形になりうる。競合はサムスン電子、SK ハイニックス、キオクシア・サンディスク(NAND)、CXMT・YMTC。
資本政策と M&A
還元は「フリーキャッシュフローの 100% を還元」が方針で、目標の現金水準(2026 年 8 月末の流動性 735 億ドル)に達した後、自社株買いを中心に増やす。2026 年の調整後 FCF は 623 億ドルで、自社株買いは 18 億ドル・配当は 6 億ドルにとどまり、大半が現金に積み上がった。つまり還元の本番はこれからで、2027 年以降の株価(割高な水準での買い戻しか)が資本配分の質を決める。
設備投資は 2026 年に 274 億ドル、2027 年は上期だけで約 250 億ドルを見込み、アイダホ・ニューヨークの新工場の建屋に回る。メモリは山で増設を決めて谷で供給過剰になる癖があり、これが資本配分の最大の論点である。大型の M&A は無く、買われる側になる可能性も時価総額(約 1 兆ドル)を考えるとほぼ無い。株式報酬は年 1% ほど株数を増やしており、正味の還元は自社株買いの額より小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI のメモリ容量の需要は構造的で、供給が追いつかない。HBM は DRAM のウエハーの 22% を使って出荷ビットは 9% なので、汎用 DRAM が足りず、全体の価格が支えられる。MU は 2027 年の出荷の 75% 超を契約済みで、26 件の戦略契約が 2030 年まで総ビットの約 35% を押さえる。価格の上げ幅が縮んでも水準は高く、粗利益率は 87% から 86% 台を保つ見通しである。
新しい供給は遅い。クリーンルームは MU で 2028 年末以降、サムスン電子・SK ハイニックスも同様で、CXMT は国内の AI・クラウド需要に吸われて世界へ溢れにくい。HBM4 でエヌビディアと特注の HBM を共同開発しており、ルービン以降のシェアも上がる。
メモリが大型の商品から AI の必須部品へ変わったなら、周期の山と谷の幅が縮み、過去の PER 6〜10 倍は低すぎる。調整後 FCF 623 億ドルと純現金 383 億ドル、年 2,400 億ドル超の売上の勢いを見れば、現在の時価総額 約 1 兆ドルは年率換算の利益の 5 倍以下で、割安である。
慎重な見方
メモリは需要の山で増設が決まり、供給が出るころに需要が鈍る、という周期を 40 年繰り返してきた。2026 年の営業利益率 75% は過去最高(2018 年は 49%)で、価格の上げ幅はすでに縮んでいる。2028 年に各社の新工場が立ち上がり、CXMT(2027 年に月 42 万枚)と YMTC が重なると、2019 年・2023 年と同じ急落が来る。2023 年は営業利益が −52 億ドルだった。
HBM は当社のシェアが 1〜2 割で、SK ハイニックスが約 6 割を握る。ルービン向けの HBM4 でも当社は 1 割台で、設備の規模で 2 強に劣る。特注の HBM は顧客が価格を決める力を強める。顧客(クラウド 5 社)の設備投資が、AI の収益を大きく上回る状態が続く点も、需要の質を疑わせる。
倍率は、周期のメモリで山の PER が低いのは利益が一時的だからで、PER 12 倍は安さの証拠でなく罠。10 年後の中立の純利益 264 億ドルに、1÷k の上限 10.3 倍の 9.5 割(9.7 倍)を掛け、純現金の半分(戻り方 0.5)を足しても、時価総額は 2,700 億ドル強で、今の約 1 兆ドルの 3 割に届かない。
どちらに重みを置いたか
強気の言う「供給が足りない」は 2028 年ごろまでは正しいと見る。ただしメモリの歴史(2019 年・2023 年)と、新工場・CXMT・YMTC の供給が 2028〜29 年に重なる点を重く見て、10 年のやや悲観・悲観に 38%、中立に 32% を置き、下側の厚みを残した。確率の寄せ方で結論が決まるのでなく、山の利益を成熟後の倍率に持ち込まない点が効く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 238.28 ドル2,724 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 376.08 ドル4,299 億ドル)。 今の値に割り戻すと 330.17 ドル3,774 億ドル、今との差 −61.5%、 期待の年率 −3.3%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 656.40 ドル7,503 億ドル | 851.27 ドル9,730 億ドル | +76.0% | +5.8% | 150.77 ドル1,723 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 356.98 ドル4,080 億ドル | 547.68 ドル6,260 億ドル | +5.6% | +0.5% | 180.93 ドル2,068 億ドル |
| 中立 | 32% | 237.24 ドル2,712 億ドル | 379.70 ドル4,340 億ドル | −28.0% | −3.2% | 197.42 ドル2,257 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 70.69 ドル808 億ドル | 204.72 ドル2,340 億ドル | −67.8% | −10.7% | 66.10 ドル756 億ドル |
| 悲観 | 14% | 59.76 ドル683 億ドル | 76.99 ドル880 億ドル | −84.0% | −16.8% | 19.14 ドル219 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 238.28 ドル2,724 億ドル | 376.08 ドル4,299 億ドル | −28.3% | −3.3% | 614.36 ドル7,022 億ドル |
今の株価時価総額 856.49 ドル9,790 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 10% HBM が高い価格で恒常化し、AI のメモリ容量が増え続ける 利益 706 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 656.40 ドル7,503 億ドル
HBM とサーバー用の大容量 DRAM が恒常的に高い値で売れ、2036 年のメモリ市場は 7,500 億ドル。業界の DRAM ビットは 10 年で 4.4 倍、ビット単価は 2026 年の山から 8 割弱下がるが、下げ幅は過去の周期より小さい。当社は DRAM の 23% を握り(SK ハイニックスと並ぶ)、営業利益率は山と谷をならして 58%、NAND は 40%。新工場(アイダホ・ニューヨーク・広島・シンガポール)が計画どおり立ち上がり、堀は規模と HBM の設計力で広がる。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 11.6 倍の 9 割(10.4 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方 0.5 込み)192 億ドルを足して時価総額 7,503 億ドル。10 年の還元を合わせると今の時価総額の約 1.7 倍になる。10 年の純利益の合計は約 13,000 億ドル(山の 2027〜28 年を含む)で、正味の還元は株式報酬を除いた FCF の全額にあたる約 9,730 億ドル(純利益の約 75%。残りは新工場の設備投資に回り、純現金は今の約 380 億ドルを保つ。最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の取り崩しはしない)。年ごとの道筋は、2027〜29 年の累計約 6,000 億ドルのあと、2030 年 約 1,100・2031 年 約 1,300・2032 年 約 1,200・2033 年 約 1,000・2034 年 約 900・2035 年 約 800・2036 年 約 706 億ドル(周期の山をもう一度挟んで細る。年ごとの金額は仮に置いた。減損は置かない)。
- DRAM(HBM 含む):数量 581(当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 2.38(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 1,380 億ドル・営業利益 800 億ドル。業界のビット 4.4 倍 × シェア 23%・ビット単価 2026 年比 −78%・営業利益率 58%
- NAND(SSD・フラッシュ):数量 528(当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 0.43(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 225 億ドル・営業利益 90 億ドル。業界のビット 5.0 倍 × シェア 15%・ビット単価 2026 年比 −84%・営業利益率 40%
倍率:楽観でも利益の多くは周期の山の分で、商品としてのメモリは価格を決める力が乏しい。上限から少し下げて置いた。 正当化 PER の上限は 11.6 倍(g 4.0%、RONIC 12.0%。RONIC = k 9.8% + 1/3 ×(事業の ROE 16.5% − k)。堀は弱い)。その 9 割の 10.4 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 700.6 × 10.4 + 余った現金(戻り方込み)192 = 7503 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの楽観(2036 年の市場 約 7,500 億ドル・HBM が恒常化)に相当する。供給が絞られ続け、中国勢が高性能品に届かない場合で、10% に留める。
やや楽観 20% 市場は 6,000 億ドル級を保ち、MU は HBM で 3 強の一角に残る 利益 428 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 356.98 ドル4,080 億ドル
HBM4・HBM5 で当社は SK ハイニックスに次ぐ位置を保ち、DRAM のシェアは 21%。業界の DRAM ビットは 10 年で 4.2 倍、ビット単価は年 16% 前後下がり、市場は 6,000 億ドル。営業利益率はならして 50% と、過去の山と谷の中間より高い。ただし CXMT が汎用 DRAM でシェアを取るため、汎用品のビット単価は上がらない。この年は周期のやや下側で ROE 11%。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 10.8 倍の 8.5 割(9.2 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方 0.5 込み)192 億ドルを足して時価総額 4,080 億ドル。10 年の純利益の合計は約 8,700 億ドル(山の 2027〜28 年を含む)で、正味の還元は株式報酬を除いた FCF の全額にあたる約 6,260 億ドル(純利益の約 72%。残りは新工場の設備投資に回り、純現金は今の約 380 億ドルを保つ。最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の取り崩しはしない)。年ごとの道筋は、2027〜29 年の累計約 4,900 億ドルのあと、2030 年 約 800・2031 年 約 700・2032 年 約 600・2033 年 約 500・2034 年 約 450・2035 年 約 380・2036 年 約 428 億ドル(周期の波を挟んで谷から戻る途中で終わる。年ごとの金額は仮に置いた。減損は置かない)。
- DRAM(HBM 含む):数量 507(当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 1.97(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 998 億ドル・営業利益 499 億ドル。業界のビット 4.2 倍 × シェア 21%・ビット単価 2026 年比 −81%・営業利益率 50%
- NAND(SSD・フラッシュ):数量 473(当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 0.37(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 175 億ドル・営業利益 60 億ドル。業界のビット 4.8 倍 × シェア 14%・ビット単価 2026 年比 −86%・営業利益率 34%
倍率:周期のやや下側の年で、中国勢の追い上げも残る。上限から一段下げて置いた。 正当化 PER の上限は 10.8 倍(g 4.0%、RONIC 10.6%。RONIC = k 9.8% + 1/3 ×(事業の ROE 12.3% − k)。堀は弱い)。その 8.5 割の 9.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 422.6 × 9.2 + 余った現金(戻り方込み)192 = 4080 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立と楽観の中間。AI のメモリ容量の増加が続く一方、価格の下落が速い。強気側の中心として 20% を置く。
中立 32% 市場は約 4,500 億ドルで、MU は普通に強い 3 強の 1 社になる 利益 264 億ドル · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 237.24 ドル2,712 億ドル
2036 年のメモリ市場は 4,500 億ドル(2025 年から見れば年 +8%、2026 年の山から見れば約 −45%)。業界の DRAM ビットは 10 年で約 4 倍、ビット単価は年 18% 前後下がる。当社は DRAM 19%・NAND 12% で売上 790 億ドル、営業利益率はならして 39%。CXMT の台頭で汎用 DRAM は価格を決める力が弱まり、HBM が利益の中心になる。この年は谷から戻る途中で ROE 8〜9%。事業の ROE が k 9.75% 以下なので、成熟後の倍率は 1÷k の 10.3 倍の 9.5 割(9.7 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方 0.5 込み)192 億ドルを足して時価総額 2,712 億ドル。10 年の純利益の合計は約 6,200 億ドル(山の 2027〜28 年を含む)で、正味の還元は株式報酬を除いた FCF の全額にあたる約 4,340 億ドル(純利益の約 70%。残りは新工場の設備投資に回り、純現金は今の約 380 億ドルを保つ。最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の取り崩しはしない)。年ごとの道筋は、2027〜29 年の累計約 3,400 億ドルのあと、2030 年 約 250・2031 年 約 450・2032 年 約 600・2033 年 約 550・2034 年 約 400・2035 年 約 300・2036 年 約 264 億ドル(2029 年の谷のあと、次の周期の山が 2032 年前後に来て、10 年目は谷から戻る途中。年ごとの金額は仮に置いた。減損は置かない)。
- DRAM(HBM 含む):数量 442(当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 1.53(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 674 億ドル・営業利益 324 億ドル。業界のビット 4.05 倍 × シェア 19%・ビット単価 2026 年比 −86%・営業利益率 48%
- NAND(SSD・フラッシュ):数量 388(当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 0.29(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 114 億ドル・営業利益 36 億ドル。業界のビット 4.6 倍 × シェア 12%・ビット単価 2026 年比 −89%・営業利益率 32%
倍率:上限に近く置いた。 事業の ROE 9.0% が k 9.8% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 10.3 倍。その 9.5 割の 9.7 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 258.6 × 9.7 + 余った現金(戻り方込み)192 = 2712 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立を MU の位置(シェア 2 割前後・HBM は 2 位集団)に直した。強気の需要と慎重な供給増の落としどころとして最も厚い 32% を置く。
やや悲観 24% 中国勢に汎用品を奪われ、HBM も差別化が弱まる 利益 76 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 70.69 ドル808 億ドル
CXMT・YMTC が 2030 年代に汎用 DRAM・NAND で世界の 2 割以上を握り、ビット単価が下がり続ける。当社のシェアは DRAM 16%・NAND 10% へ下がり、売上は 490 億ドル弱、営業利益率はならして 30% と 15%。HBM は SK ハイニックス・サムスン電子との価格競争で超過利益が減る。ROE 3% は k 以下なので、成熟後の倍率は 1÷k の 10.3 倍の 9 割(9.2 倍)を事業の純利益 72 億ドルに掛け、余った現金(戻り方 0.5 込み)144 億ドルを足して時価総額 808 億ドル。10 年の純利益の合計は約 3,600 億ドル(山の 2027〜28 年を含む)で、正味の還元は株式報酬を除いた FCF の全額にあたる約 2,340 億ドル(純利益の約 65%。残りは新工場の設備投資に回り、純現金は今の約 380 億ドルを保つ。最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の取り崩しはしない)。年ごとの道筋は、2027〜29 年の累計約 2,600 億ドルのあと、2030 年 約 60・2031 年 約 120・2032 年 約 200・2033 年 約 220・2034 年 約 180・2035 年 約 140・2036 年 約 76 億ドル(低い山を 1 度挟む。年ごとの金額は仮に置いた。減損は置かない)。
- DRAM(HBM 含む):数量 349(当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 1.19(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 415 億ドル・営業利益 124 億ドル。業界のビット 3.8 倍 × シェア 16%・ビット単価 2026 年比 −89%・営業利益率 30%
- NAND(SSD・フラッシュ):数量 310(当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 0.23(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 70 億ドル・営業利益 10 億ドル。業界のビット 4.4 倍 × シェア 10%・ビット単価 2026 年比 −92%・営業利益率 15%
倍率:上限から少し下げて置いた。 事業の ROE 3.1% が k 9.8% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 10.3 倍。その 9 割の 9.2 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 72.0 × 9.2 + 余った現金(戻り方込み)144 = 808 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国勢の国産化の進展と米中規制の緩和が重なる筋書き。慎重な見方の中心で 24% を置く。
悲観 14% 構造的な敗北:汎用品が崩れ、HBM も差別化を失う 利益 −15 億ドル · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 59.76 ドル683 億ドル
中国勢が汎用 DRAM・NAND の供給を大きく増やしてビット単価が崩れ、HBM もサムスン電子・SK ハイニックスとの競争で超過利益を失う。当社は新工場の巨額の固定費だけが残り、シェアは DRAM 12%・NAND 7% へ。2036 年のメモリ市場は 2,500 億ドルで、当社の売上は 270 億ドル、営業損益はほぼ赤字。もう優良ではない。赤字なので稼ぐ力では測らず、売れる資産の床で置く(今の純現金 383 億ドルと、事業資産のうち工場・設備の 3 割を税引き後で売れる分の約 300 億ドル、計 683 億ドル)。10 年の純利益の合計は約 1,600 億ドル(山の 2027〜28 年を含む)で、正味の還元は株式報酬を除いた FCF の全額にあたる約 880 億ドル(純利益の約 55%。残りは新工場の設備投資に回り、純現金は今の約 380 億ドルを保つ。最後の年の利益だけで見ると多く見えるが、借入や資産の取り崩しはしない)。年ごとの道筋は、2027〜29 年の累計約 1,900 億ドル(2027 年 約 1,250・2028 年 約 750・2029 年 約 −52)のあと、2030 年 約 −100・2031 年 約 −90・2032 年 約 −70・2033 年 約 −40・2034 年 約 −25・2035 年 約 −5・2036 年 約 −15 億ドルと赤字が続く(年ごとの金額は仮に置いた。減損は別に置かず、新工場の償却の重さを赤字に含める)。
- DRAM(HBM 含む):数量 227(当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 1.00(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 227 億ドル・営業利益 23 億ドル。業界のビット 3.3 倍 × シェア 12%・ビット単価 2026 年比 −91%・営業利益率 10%
- NAND(SSD・フラッシュ):数量 197(当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア))× 価格 0.21(ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 −1 億ドル。業界のビット 4.0 倍 × シェア 7%・ビット単価 2026 年比 −92%・営業利益率 -3%
倍率:赤字が続く筋書きなので稼ぐ力では測らず、売れる資産で床を置く。売れる資産は今の純現金 383 億ドルと、今の事業資産(自己資本 1,384 億ドルから純現金を引いた約 1,000 億ドル)のうち工場・設備の 3 割を税引き後で売れる分の約 300 億ドルで、合計 683 億ドル。今の自己資本 1,384 億ドルに対する PBR 0.49 倍に当たる。専用の新工場は転用しにくく、中国勢が供給を増やす局面では安く売るしかないので 3 割にとどめた。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの悲観(10 年・構造)に沿う。技術で置いていかれる、または補助金と関税の変化で競争力を失う場合で 14% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
DRAM(HBM 含む)
サーバー・PC・スマホ・車載の汎用 DRAM と、AI 用 GPU に載せる HBM。
| 数量当社の DRAM ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア) | 価格ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 100 | 11 | 1,062 | 818 |
| 10 年後 中立 | 442 | 1.53 | 674 | 324 |
取り方:2026 年 8 月期の売上 1,332 億ドルのうち、DRAM を約 8 割(1,062 億ドル)と推定。世界の DRAM 市場は約 6,100 億ドルで、当社のシェアは期中平均 17%(サムスン電子 約 4 割・SK ハイニックス 3 割強・CXMT など中国勢 数%)。数量は当社のビット出荷を 2026 年 8 月期=100 の指数(業界のビット出荷 × 当社シェア)で、価格は指数 1 あたりの売上(ビット単価)で置く。ビット単価は物価に連れて上がらない例外で、微細化でビットあたりの費用が年 15〜20% 下がるため、山を過ぎると名目で下がり続ける(2019 年・2023 年は 1 年で 4〜5 割下落)。利益率は物価ではなく需給で決まる。営業利益率 77%。
NAND(SSD・フラッシュ)
データセンター用 SSD・モバイル・クライアント用の NAND フラッシュ。
| 数量当社の NAND ビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100。業界のビット出荷 × 当社シェア) | 価格ビット単価(指数 1 あたりの売上・億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 100 | 2.70 | 270 | 181 |
| 10 年後 中立 | 388 | 0.29 | 114 | 36 |
取り方:売上のうち NAND を約 2 割(270 億ドル)と推定。世界の NAND 市場は約 1,900 億ドルで、当社のシェアは 14%(サムスン電子・SK ハイニックス〔ソリダイム〕・キオクシア/サンディスク・YMTC が競合)。数量は当社のビット出荷の指数(2026 年 8 月期=100)、価格は指数 1 あたりの売上(ビット単価)。層の積み増しでビットあたりの費用が下がり続けるので、ビット単価は物価並みには上がらない。営業利益率 67%。2 つの合計の営業利益 999 億ドル・売上 1,332 億ドルは brief.py と一致。
リスクと懸念
メモリの循環の反転
メモリは需要の山で増設を決め、供給が出るころに需要が鈍る。2019 年・2023 年(営業利益 −52 億ドル)、2008〜09 年(株価 −79%)が前例。2026 年の営業利益率 75% は過去最高で、反転した時の利益の落ち幅が桁違いになる。
中国勢の増産(CXMT・YMTC)
CXMT の DRAM は月 32 万枚から 2027 年に 42 万枚、世界シェアは 2026 年 4〜6 月に 9.5%。YMTC の第 3 工場は 2026 年末に稼働。汎用 DRAM・NAND の価格を押し下げる最大の構造要因で、米中規制の緩和で一気に変わる可能性もある。
HBM でシェアが取れない
HBM は SK ハイニックスが約 6 割、MU は 1〜2 割。ルービン向け HBM4 では 1 割台と見られる。顧客が特注の仕様で価格を決める力を握ると、HBM の超過利益も長く続かず、サムスン電子の巻き返しも続く。
AI 投資の巻き戻し
需要の大半はクラウド上位 5 社の設備投資で、2027 年に 1 兆ドル近い見方がある。AI の収益が追いつかず投資が半減すれば、メモリの需要と価格が同時に崩れる。エヌビディアなどの他の AI 部品と相関が高い。
設備投資の増額と資本配分
設備投資は 2026 年に 274 億ドル、2027 年は上期だけで約 250 億ドル。新工場のクリーンルームが 2028 年末以降に立ち上がるころが需給の山と重なれば、固定費の重さだけが残る。山での増設は過去に価値を壊した。
米中・台湾・関税
製造は台湾・日本・シンガポールなど海外に多く、米中の輸出規制・関税・台湾海峡の緊張の影響を受ける。中国向けの売上は規制で制限され、CHIPS 法の補助金の条件変更や関税の引き上げも利益に効く。いずれも 10 年を通じて続く構造的な不確実性である。
今後の分かれ目
- DRAM の契約価格が 2 四半期続けて前期比マイナスになる
- 山の通過のサイン。悲観・やや悲観の確率を引き上げる。倍率は稼ぐ力(1÷k)と売れる資産の床で見る。
- サムスン電子・SK ハイニックスが設備投資を大幅に増額する
- 2028〜29 年の供給過剰の確率が上がる。
- CXMT・YMTC が高性能の DRAM・NAND で上位 3 社並みの品質に達する
- 10 年の悲観の確率を引き上げる。汎用品の価格を決める力が失われ、HBM にも波及する。
- MU が HBM4 のルービン向けでシェア 2 割を超え、2028 年分の価格も積み上げる
- 強気側の確率を寄せる。ただし倍率は成熟後の公式を超えないため、本質価値への影響は限定的。
- AI 向けの設備投資が 2 四半期続けて下方修正される
- メモリ全体の需要が崩れる。悲観の確率を引き上げる。エヌビディアなど他の AI 部品と同時に効く。
- 自社株買いが目標の現金水準の後、割高な水準で大きく始まる
- 資本配分の質の低下。正味の還元(株式報酬を引いた額)を下げて見る。
見ておくもの
- DRAM・NAND の契約価格の前期比(TrendForce)と在庫日数
- サムスン電子・SK ハイニックス・MU の設備投資の増額と新工場の立ち上げ時期
- HBM4 のルービン向けシェアと 2028 年分の価格交渉
- CXMT・YMTC の月間ウエハー能力と上位品の品質
- クラウド上位 5 社の設備投資の改定と AI の課金収入
- MU の自社株買いの額・株式報酬による株数の増減
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。売上と利益は DRAM・NAND を「業界のビット出荷 × シェア × ビット単価」で積み、サムスン電子・SK ハイニックス・中国勢とのシェアの取り合いを筋書きごとに置いた。10 年後の倍率は、利益ベースの正当化 PER = (1−g/RONIC)/(k−g)(k 9.75%、ROE が k 以下の筋書きでは 1÷k、堀は弱い)の上限に対し、楽観 9 割・やや楽観 8.5 割・中立 9.5 割・やや悲観 9 割で置き、事業の純利益に掛けて余った現金(戻り方 0.5)を足した。悲観は赤字なので稼ぐ力では測らず、今の純現金と売れる工場・設備の税後(683 億ドル)で置いた。結論は、利益が周期の頂でその後に正常化するという前提に依存する。総合は今の時価総額に対し -62.4% で、割高。結論は計算の結果で、先に決めたものではない。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 5% + β 1.80 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.75% = 9.75%。β は使わない。メモリの振れの大きさ(+1.0)、商品として価格を決められないこと(+0.5)、中国勢の追い上げ(+0.25)を quality で見た。純現金で借金は無く extra は置かない。新工場の増設と供給過剰は筋書きと確率(10 年のやや悲観・悲観 38%)で表し、k には二重に足していない。