結論
オン・セミコンダクター(onsemi)は、電気自動車・産業機器・AI データセンターに使う電力半導体(炭化ケイ素 SiC・IGBT・MOSFET)、電源とセンサーのアナログ・混成信号 IC、車載の運転支援向けイメージセンサーを作る会社である。2025 年は売上 59.95 億ドル(電力 28.1・アナログ 22.6・イメージセンサー 9.3)で前年比 −15%、GAAP の営業利益は 7.5 億ドル(利益率 12.5%)、純利益は 1.2 億ドルまで落ちた。工場の再編(Manufacturing Realignment)の費用と減損が重なり、需要の谷と稼働率の低下が同時に来たためである。2026 年 4-6 月期は売上 16.0 億ドル(+9%)、GAAP の営業利益率 16.1%、7-9 月期は売上 16.5〜17.5 億ドル・GAAP の粗利益率 39.9〜41.9% の見通しで、谷からは戻っている。
売上は「事業ごとの市場(数量)× シェア × 価格」で、SiC・シリコンの電力・アナログ・イメージセンサーの 4 つに分けて積んだ。用途は自動車(EV)が約半分、産業が 3 割前後、AI データセンターの電源はまだ小さいが急に伸びる。10 年後(2035 年)の中立は売上 136 億ドル、営業利益率 25%、純利益 28 億ドルとみる。SiC は中国勢の値下げで価格が物価を下回り、シェア争いで取り分が減る(中立で 24% から 18%)と置いた。
バリュー投資の観点では、電力と車載センサーに強みはあるが、工場の稼働率に利益が左右される資本の重い事業で、SiC は価格決定力が弱い。資本コストは 9.5%(基本 8.0% + quality 1.5%)。利益ベースの正当化 PER は、帳簿の ROE 25%・RONIC 17%・g 4.5% で 15 倍になる。SiC の価格競争があるので、10 年後の中立にはその 7.5 割の 11.1 倍を置いた。確率で加重した本質価値は今の時価総額の 68%(差 32%、割高)。会社の 2030 年目標(売上約 110 億ドル・営業利益率 38%)は、楽観〜やや楽観の筋書きにあたり、そこまで届く確率は高くないとみた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後もこの事業が存在し、今より強いかを問う。電力半導体とセンサーは、電動化・運転支援・AI の電力で需要が増える領域にあり、存在は揺らがない。ただし「今より強いか」は SiC で分かれる。SiC は自動車の主機に使う高性能品でも、中国勢の追い上げで価格は物価を下回り続けるとみられ、シェアも取り分が減る。堀は広がらず、狭まる可能性の方が高い。
オーナー利益(株主のものになる利益)で見ると、GAAP の純利益は株式報酬を費用に入れた値で、2022〜25 年の平均は約 14 億ドル、2022〜23 年の山は 19〜22 億ドル、2025 年は 1.2 億ドルだった。事業は資本が重く、稼働率が利益率を大きく動かすため、山の利益をそのまま続くとは見ない。FCF が利益を上回る年(2025 年は 14.2 億ドル)があるのは、設備投資を絞ったからで、長くは続かない。
資本配分は、自社株買いは値段を選ばず買う面があるが、買収を抑え現金を株主に返してきた点は評価できる。シナプティクスの買収は現金 57 億ドルと大きく、事業の関連が薄く、規律が試される。安全域は、中立の筋書きでも今の値段をやや上回るだけで、楽観が当たる確率は低く、悲観で割れる幅は大きいため、厚くはない。予測のしにくい(SiC の価格・EV の伸び・中国)事業なので、確信度は下げる。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つの部門に分かれる。電力ソリューション(PSG)は 2025 年の売上 28.1 億ドルで、SiC と IGBT・MOSFET・電源 IC を電気自動車の主機インバーター・充電器、太陽光・蓄電、産業用電源、AI サーバーの電源に売る。アナログ・混成信号(AMG)は 22.6 億ドルで、電源管理・センサーとのつなぎ・通信用 IC を車載と産業に売る(新しいアナログの土台は Treo と呼ばれる)。インテリジェント・センシング(ISG)は 9.3 億ドルで、運転支援(ADAS)カメラや産業の画像検査向けのイメージセンサーを作る。車載向けのイメージセンサーは会社が首位級と説明する分野である。
用途で見ると、自動車が売上の約半分、産業が 3 割前後、残りがクラウド・通信・民生(会社の開示の概数)。電動化で 1 台あたりの半導体の量が増え、AI データセンターは 800V の直流給電への移行で 1 ラックあたりの搭載額が約 1.5 万ドルから 11.5 万ドル超へ増えると会社は説明する(2026 年 9 月の Investor Day)。AI データセンター向けの売上は 2026 年に 5 億ドル超、2030 年に 25 億ドル超が目標である。
製造は自社工場が中心で、SiC は結晶(基板)から作る垂直統合を取る。この結果、稼働率が粗利益率を大きく動かす。2025 年は需要の谷で稼働率が下がり、工場の再編と減損(2026 年 1-3 月期にも 3.3 億ドル、4-6 月期 0.4 億ドル)が続いた。設備投資は 2025 年の約 3.4 億ドルから 2026 年は売上の 2% 前後(4-6 月期 0.34 億ドル)まで絞っており、自由キャッシュフロー(FCF)は 2025 年に約 14 億ドル(売上の 24%)、2026 年 4-6 月期は 4.3 億ドルと、利益より現金の方が先に戻っている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つあるが、どれもアナログ大手ほど深くない。1 つ目は車載で長期に認証された電力・センサーの部品である。車に載る部品は認証に数年かかり、いったん採用されると 10 年近く使われる。ISG の車載イメージセンサーは首位級で、運転支援カメラの普及で数量が伸びる。2 つ目は SiC を結晶から作る垂直統合で、供給の確かさを顧客に示せる。ただし中国勢(BYD 半導体・三安光電・士蘭微など)が価格で追い上げ、基板(結晶)も中国が世界の約 4 割を握る(Yole の 2025 年の分析)。3 つ目は AI データセンターの 800V 給電で、エヌビディア(NVIDIA)との協業を発表している。
弱い所ははっきりしている。第一に、価格を決める力が弱い。2022〜23 年の GAAP の営業利益率は 32〜33% に達したが、2025 年は 12.5% まで落ち、純利益は 1.2 億ドルだった。同じ領域のアナログ・デバイセズ(ADI)の中立の営業利益率は 46%、NXP は 30% で、ON はこれらに比べ、工場の稼働率と SiC の値崩れに左右される。第二に、SiC は需要が EV の伸びに依存し、EV の伸びが鈍ると稼働率が落ちる。第三に、経営は資本配分で自社株買いを重視し(2025 年に 13.8 億ドル)、買収は少なかったが、2026 年にシナプティクス(Synaptics)の買収に踏み出した。資本の重い事業で買収の統合を重ねると、資本効率が落ちる恐れがある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電力・アナログ・センサーの市場は、2023〜25 年の在庫調整の谷を抜けつつある。WSTS は 2026 年にアナログ +10%、ディスクリート +8% を見込み、産業・車載の在庫の積み増しも始まった。ON の売上は 2026 年 4-6 月期に前年比 +9%、電力は +19% だが、アナログは −2% で、回復は電力が先で、アナログは遅れている。
電力は構造が変わりつつある。EV は世界では伸びるが、2026 年の中国の車販売は −4% で、SiC は価格競争が激しい。ON は中国の SiC 売上が 2026 年に +60〜70% と見込み、吉利・ZEEKR・小米で採用を伸ばすが、競合のインフィニオン(Infineon)・STマイクロエレクトロニクス・ローム・中国勢も同じ顧客を狙い、価格は物価を下回る方向に動く。TrendForce の 2023 年の順位では ST が約 33% で首位、ON が 2 位、上位 5 社で 9 割超だったが、中国勢の伸びで集中度は下がる。米国のウルフスピード(Wolfspeed)は 2025 年に連邦破産法 11 条の手続きに入り、同年 9 月に債務を約 7 割減らして脱したが、SiC の採算の難しさを示した。
一方、AI データセンターの電力は新しい需要である。サーバー 1 ラックあたりの電力が増え、800V の直流給電と半導体変圧器(SST)への移行が 2027 年後半から立ち上がると会社は見る。イメージセンサーは運転支援の普及で市場が年 9% ほど伸びる一方、ソニー・オムニビジョン(OmniVision)・中国勢との競争で単価は下がりやすい。成熟品のアナログは TI・ADI・NXP・マイクロチップ・中国勢がひしめき、価格競争が続く。
資本政策と M&A
資本配分は自社株買い中心である。2025 年の自社株買いは 13.8 億ドル(FCF 14.2 億ドルに近い)、2026 年 1-6 月は 6.9 億ドルで、株数は 2025 年に 3.8% 減った。配当は出さない。株式報酬は年約 1.4 億ドルで、自社株買いはこの希薄化の相殺も担う。手元は現金と短期投資が 38.6 億ドル、有利子負債が 44.6 億ドル(2026 年 7 月 3 日)で、純負債は約 6 億ドルとほぼ均衡している。
最大の論点は買収である。2026 年 6 月にシナプティクス(Synaptics)の買収を発表した。当初は全株式交換(1 株につき ON 株 1.35 株、買収額 約 62 億ドル)だったが、競合する提案を受けて 10 月 1 日に現金買収(総額約 57 億ドル)に改め、手元資金とモルガン・スタンレーの確約した借入で賄う。成立は 2027 年半ばの目標で、米連邦取引委員会(FTC)は承認済み、他国の承認待ちである。年 2 億ドル以上のコスト削減を見込む。成立していないため、この分析は今の会社だけで書いた。成立すれば、約 57 億ドルの現金流出(純負債の増加)と、エッジ AI・コネクテッドの事業が加わる。現金主導なので自社株買いの余地が縮み、資本の重い電力事業に非電力の買収を重ねる点は、成否が分かれる。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 6.9 億ドル(10-Q・2026 年 1 月〜7 月 3 日)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI データセンターの 800V 給電は始まったばかりで、1 ラックあたりの半導体が約 1.5 万ドルから 11.5 万ドル超へ増える。ON は SiC・シリコンの電力・アナログ・センサーをそろえ、エヌビディアと組んでいるので、25 億ドル超(2030 年)の目標は控えめですらある。SiC は 2026 年に AI データセンター向けが約 6 割伸び、中国の吉利・ZEEKR・小米でも採用が広がっている。工場は 2025 年の再編で費用をほぼ出し切り、稼働率が戻れば粗利益率は 2022〜23 年の山の水準に向かう。2026 年 7-9 月期の見通しで GAAP の粗利益率はすでに 40% を超え、設備投資は軽く、売上が伸びても追加の工場は要らない。会社の 2030 年目標(売上 110 億ドル・営業利益率 38%・FCF 35 億ドル)が達成されれば、純利益は今の 10 倍近くになる。しかも 2025 年の再編で費用を先に出し切ったので、今の GAAP の利益は底に近く、戻る幅が大きい。電力と車載センサーは電動化と運転支援で数量が増える側にあり、シェアを守れば売上は年 12% 前後で伸びる。
慎重な見方
回復の中身は、在庫調整の戻りと AI 設備投資の山が重なった一時的な面が大きい。アナログ部門は 2026 年 4-6 月期も前年を下回り、回復はまだ電力だけだ。SiC の中国売上の 6〜7 割増は、価格の下落を数量で補っているだけで、利益は付いてこない。中国の車販売が減り、BYD 半導体など現地勢が自社調達を強めれば、ON の取り分は減る。工場は自社で結晶まで作る重い構造で、需要が落ちると稼働率の低下で粗利益率が一気に 10 ポイント下がる(2025 年にそうなった)。会社は 2030 年に営業利益率 38% を掲げるが、GAAP の営業利益率の過去最高は 33%(2022 年)で、株式報酬と買収の償却を除いた値の目標である。そのうえ、非電力の買収で約 57 億ドルの現金を使えば、自社株買いの余力と純現金が消え、資本効率が落ちる。AI データセンター向けの 25 億ドル超(2030 年)は、2030 年の売上目標の 2 割強にすぎず、残りの大半は在庫調整の影響を受ける車載・産業である。工場の再編と減損は 2025 年から 2026 年も続き、利益の質は会社の「非 GAAP」の数字より低い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方(AI の電力・車載センサーの成長)は筋が通るが、2030 年目標は非 GAAP の 38% と売上 110 億ドルを前提とし、中立の 2030 年(売上約 91 億ドル)より約 2 割高い売上と、約 9 ポイント高い利益率を要する。慎重な見方(SiC の価格と稼働率)は、過去に 2025 年の落ち込みで実際に起きたため、重く見た。確率で加重した本質価値は今の 68%で、割高。中立 34% を最大に、楽観 7%・やや楽観 20%・やや悲観 25%・悲観 14% と、やや悲観側に寄せた。同じ領域の MCHP(7/20/35/24/14)とほぼ同じ物差しである。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 74.82 ドル292 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 27.42 ドル107 億ドル)。 今の値に割り戻すと 47.61 ドル186 億ドル、今との差 −35.0%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 188.39 ドル735 億ドル | 30.77 ドル120 億ドル | +199.3% | +11.6% | 15.34 ドル60 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 125.93 ドル492 億ドル | 31.80 ドル124 億ドル | +115.4% | +8.0% | 31.54 ドル123 億ドル |
| 中立 | 34% | 80.19 ドル313 億ドル | 32.56 ドル127 億ドル | +54.0% | +4.4% | 38.34 ドル150 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 31.54 ドル123 億ドル | 24.88 ドル97 億ドル | −23.0% | −2.6% | 14.10 ドル55 億ドル |
| 悲観 | 14% | 9.25 ドル36 億ドル | 11.56 ドル45 億ドル | −71.6% | −11.8% | 2.91 ドル11 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 74.82 ドル292 億ドル | 27.42 ドル107 億ドル | +39.6% | +3.4% | 102.24 ドル399 億ドル |
今の株価時価総額 73.23 ドル286 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% AI の電力・EV・産業が同時に伸び、会社の 2030 年計画の延長線で利益率が山を超える 利益 58 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 188.39 ドル735 億ドル
2035 年の SiC は市場が数量で 6.5 倍(EV の主機・AI データセンター・太陽光・電力網)、シェア 22%、価格は 95(物価の 141 より大きく下がるが、数量が補う)で売上 54.3 億ドル。シリコン電力は 800V 給電の本格化で市場が 2.2 倍、シェア 11% 、価格 135 で 59.4 億ドル。アナログは Treo で産業・車載のシェアを 7.4% へ上げ 60.1 億ドル、イメージセンサーは運転支援の標準化で 34.3 億ドル。売上は約 208 億ドル(会社の 2030 年目標の約 110 億ドルから年 12% を 5 年続けた水準にほぼ等しい)、GAAP の営業利益率は 33%(会社の非 GAAP 目標 38% から株式報酬などを引いた水準)、純利益は約 58 億ドル。それでも SiC の価格は物価に負け続ける。工場の増設で再投資が重く、還元は約 120 億ドルにとどまる。
- SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光):数量 57.2(SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 95(SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く))→ 売上 54 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場 数量 260 × シェア 22.0%・価格 95・営業利益率 33%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC):数量 44.0(シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 59 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 数量 400 × シェア 11.0%・価格 135・営業利益率 36%
- アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業):数量 41.4(アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 60 億ドル・営業利益 22 億ドル。市場 数量 560 × シェア 7.4%・価格 145・営業利益率 36%
- イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像):数量 26.4(車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 34 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 数量 240 × シェア 11.0%・価格 130・営業利益率 32%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
倍率:正当化 PER:事業の ROE 26.3%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/2 ×(ROE 26.3% − k 9.5%)= 17.9%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.0 倍。上限の 8.5 割の 12.7 倍に置いた:AI の電力・車載センサーが伸びる上振れでも、SiC の価格決定力が弱く、堀は普通なので控える。 時価総額 = 純利益 57.9 × 12.7 倍 = 735 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI データセンターの 800V 給電(1 ラックあたり 11.5 万ドル超)と SiC が計画どおり立ち上がり、EV の伸びと中国の価格競争の抑えも同時に必要なため、7% に留める。
やや楽観 20% 成長は計画より緩やかだが、電力と車載センサーで営業利益率が山の近くまで上がる 利益 41 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 125.93 ドル492 億ドル
2035 年の SiC は市場が数量で 5.4 倍、シェア 21%、価格 90 で売上 40.6 億ドル。シリコン電力は市場 1.95 倍・シェア 10.5%・価格 130 で 49.1 億ドル、アナログは 50.4 億ドル、イメージセンサーは 27.6 億ドル。売上は約 168 億ドル(2025 年から年 11%)、GAAP の営業利益率は 29%、純利益は約 41 億ドル。AI データセンターの 800V 給電は 2028〜29 年に立ち上がり、電力の数量を押し上げる。中国勢との競争で SiC は物価に負ける価格が続き、シェアは 24% から 21% へ下がるが、車載センサーと電源のシェアは保つ。
- SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光):数量 45.1(SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 90(SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く))→ 売上 41 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 数量 215 × シェア 21.0%・価格 90・営業利益率 28%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC):数量 37.8(シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 49 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場 数量 360 × シェア 10.5%・価格 130・営業利益率 33%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業):数量 36.0(アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 140(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 50 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 数量 500 × シェア 7.2%・価格 140・営業利益率 33%
- イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像):数量 22.1(車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 28 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 数量 210 × シェア 10.5%・価格 125・営業利益率 28%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
倍率:正当化 PER:事業の ROE 25.5%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/2 ×(ROE 25.5% − k 9.5%)= 17.5%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.9 倍。上限の 8 割の 11.9 倍に置いた:強気寄りだが、SiC の価格競争と稼働率の振れを見て控える。 時価総額 = 純利益 41.3 × 11.9 倍 = 491 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:電力・車載センサーの強みは生きるが、SiC の価格が下がりシェアも少し落ちる筋。楽観ほど全部は当たらない現実的な上振れとして 20%。
中立 34% 市場は伸びるが、SiC の価格とシェアの低下で営業利益率は 25% にとどまる 利益 28 億ドル · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 80.19 ドル313 億ドル
2035 年の SiC は市場が数量で 4.5 倍(AI・EV・太陽光)、シェアは 24% から 18%(中国勢・ST・インフィニオン・ロームに押される)、価格は 85(物価の 141 に対し大きく下回る)で売上 27.5 億ドル。シリコン電力は市場 1.8 倍・シェア 10%・価格 125 で 41.2 億ドル(AI の電源が上積み)、アナログは市場 1.44 倍・シェア 7%・価格 135 で 44.9 億ドル、イメージセンサーは市場 2.2 倍・シェア 10%・価格 120 で 22.8 億ドル(運転支援は伸びるが、ソニー・オムニビジョンに価格を削られる)。売上は約 136 億ドル(2025 年から年 8.6%。2030 年は約 91 億ドルで会社の目標の約 8 割)、GAAP の営業利益率は 25%(NXP の中立 30% より低い)、純利益は約 28 億ドル。10 年の還元は約 127 億ドル。電力と車載センサーの優良さは保たれるが、価格を決める会社にはならない。
- SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光):数量 32.4(SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 85(SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く))→ 売上 28 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 数量 180 × シェア 18.0%・価格 85・営業利益率 20%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC):数量 33.0(シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 41 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 数量 330 × シェア 10.0%・価格 125・営業利益率 28%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業):数量 33.2(アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 45 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 数量 475 × シェア 7.0%・価格 135・営業利益率 30%
- イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像):数量 19.0(車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 120(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 23 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 数量 190 × シェア 10.0%・価格 120・営業利益率 24%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
倍率:正当化 PER:事業の ROE 25.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/2 ×(ROE 25.0% − k 9.5%)= 17.2%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.8 倍。上限の 7.5 割の 11.1 倍に置いた:SiC の価格競争と稼働率の振れを見て、上限の 7 割台半ばに置く。 時価総額 = 純利益 28.2 × 11.1 倍 = 313 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(市場が年 5%・車載が数量を支え、中国の国産品が価格を削る)に、ON の特徴(SiC の価格競争・工場の稼働率)を合わせた最も確からしい筋として最大の 34%。
やや悲観 25% SiC は中国勢に負け、価格は物価の半分で、営業利益率は 2 割を割る 利益 13 億ドル · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 31.54 ドル123 億ドル
2035 年の SiC は市場が数量で 3.3 倍にとどまり、シェア 14%、価格 70(物価の 141 の半分)で売上 12.7 億ドル。シリコン電力は市場 1.5 倍・シェア 9%・価格 110 で 27.7 億ドル、アナログは市場 1.27 倍・シェア 6.5%・価格 120 で 32.8 億ドル、イメージセンサーは 15.8 億ドル。売上は約 89 億ドル(2025 年から年 4%)、GAAP の営業利益率は 18%、純利益は約 13 億ドル。SiC の工場の稼働率が下がり、減損(約 8 億ドル。非現金)も出る。ROE は約 18% に下がり、正当化 PER の 7 割で置く。自社株買いを減らし、還元は約 97.1 億ドル。
- SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光):数量 18.2(SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 70(SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く))→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 数量 130 × シェア 14.0%・価格 70・営業利益率 8%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC):数量 25.2(シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 110(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 28 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 数量 280 × シェア 9.0%・価格 110・営業利益率 22%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業):数量 27.3(アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 120(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 33 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 数量 420 × シェア 6.5%・価格 120・営業利益率 25%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像):数量 14.4(車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 110(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 数量 160 × シェア 9.0%・価格 110・営業利益率 18%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
倍率:正当化 PER:事業の ROE 17.7%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/2 ×(ROE 17.7% − k 9.5%)= 13.6%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.4 倍。上限の 7 割の 9.4 倍に置いた:中国勢の値下げと稼働率の低下で利益の質が落ちる。 時価総額 = 純利益 13.1 × 9.4 倍 = 123 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国勢(BYD 半導体・三安光電・士蘭微)が SiC とシリコン電力の価格を下げ、EV の伸びも鈍る筋。2025 年に利益が急落した実績と、ウルフスピードの破綻が示した採算の難しさを重く見て 25%。
悲観 14% SiC の価格が崩れて構造的に負け、もう優良な会社ではなくなる 利益 4 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 9.25 ドル36 億ドル
2035 年の SiC は価格が 55(物価の 141 の 4 割)まで崩れ、シェア 9%・数量 100 で売上 5.0 億ドルにとどまり赤字が続く。シリコン電力は価格 95・シェア 7% で 16.0 億ドル、アナログは 23.9 億ドル、イメージセンサーは 11.2 億ドル。売上は約 56 億ドル(2025 年より少ない)、GAAP の営業利益率は 9%、純利益は約 4 億ドル。SiC の工場と設備の減損(約 25 億ドル。非現金で自己資本を減らす)が出る。ROE は約 6% で、「価格を決める優良会社」ではなく、配当はないまま自社株買いを大きく減らす。シナプティクスの買収が成立しても統合に失敗すれば悪化はさらに深いが、今回は含めない。
- SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光):数量 9.0(SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 55(SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 数量 100 × シェア 9.0%・価格 55・営業利益率 -5%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC):数量 16.8(シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 95(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 数量 240 × シェア 7.0%・価格 95・営業利益率 17%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業):数量 22.8(アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 105(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 24 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 数量 380 × シェア 6.0%・価格 105・営業利益率 22%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
- イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像):数量 11.2(車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア)× 価格 100(製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 数量 140 × シェア 8.0%・価格 100・営業利益率 14%(価格が物価並みの 141 より低い理由:競争と単価の下落)
倍率:事業の ROE 6.2% が k 9.5% 以下なので正当化 PER は 1÷k = 10.5 倍が上限(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満)。上限の 9 割の 9.5 倍に置いた:ROE が k 以下で、純利益 ÷ k を超えない範囲に抑える。もう優良ではない筋。 時価総額 = 純利益 3.8 × 9.5 倍 = 36 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの 10 年の悲観(中国の国産パワー・アナログが価格を 30% 押し下げ、米中の摩擦で中国売上を失う)の筋。SiC の垂直統合の工場が重荷になり、大きな減損を伴う。ON の負けはその型が大きいため 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
SiC 電力(EV の主機・AI データセンター・太陽光)
炭化ケイ素(SiC)の MOSFET・ダイオードとモジュール。電気自動車の主機インバーター・充電器、AI データセンターの給電、太陽光・蓄電に売る。結晶(基板)から自社で作る。
| 数量SiC 電力デバイスの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア | 価格SiC の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。実際は値下がりが続く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.5 | 100 | 10 | −2 |
| 10 年後 中立 | 32.4 | 85 | 28 | 6 |
取り方:SiC は売上が開示されない。2025 年は電力部門 28.1 億ドルのうち約 9.5 億ドルと推定した(対象市場 約 40 億ドル × 当社シェア 約 24%。TrendForce の 2023 年の順位では ST に次ぐ 2 位)。2025 年は EV の伸びの鈍化と稼働率の低下で赤字と推定し、営業利益は −2.0 億ドルとした(セグメント別の営業利益は開示されず、全社の GAAP 営業利益 7.5 億ドルから逆算した推定)。
シリコン電力(IGBT・MOSFET・電源 IC)
IGBT・低中高圧の MOSFET・電源 IC。自動車(48V・車載充電)、産業(モーター・太陽光)、AI サーバーの電源に売る。
| 数量シリコン電力・電源 IC の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.6 | 100 | 19 | 4 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 125 | 41 | 12 |
取り方:電力部門 28.05 億ドルから SiC の推定 9.5 億ドルを引いた 18.55 億ドル。対象市場(業界ノートのパワー・ディスクリート約 400 億ドルのうち、当社が戦う車載・産業・AI サーバー向けのシリコン電力と電源 IC)を約 185 億ドルと推定し、シェアは約 10%(インフィニオン・ST・ルネサス・東芝・中国勢が競合)。営業利益は開示されず、一時費用を引いた推定値。
アナログ・混成信号(電源管理・車載・産業)
電源管理・センサーとのつなぎ・通信の IC。車載と産業が中心で、新しい土台は Treo。
| 数量アナログ・混成信号の対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.6 | 100 | 23 | 3 |
| 10 年後 中立 | 33.2 | 135 | 45 | 14 |
取り方:AMG の 2025 年の売上 22.62 億ドル(前年比 −13%)。対象市場(アナログ約 870 億ドルのうち、当社が戦う電源管理・車載・産業向け)を約 330 億ドルと推定し、シェアは約 6.9%(TI・ADI・NXP・マイクロチップ・インフィニオンが競合)。2026 年 4-6 月期は前年比 −2% で、回復は遅れている。営業利益は開示されず推定。
イメージセンサー(運転支援カメラ・産業画像)
運転支援(ADAS)カメラと産業画像検査向けのイメージセンサー。車載向けは会社が首位級と説明する。
| 数量車載・産業向けイメージセンサーの対象市場(2025 年の値段で測った数量、億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.3 | 100 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 120 | 23 | 6 |
取り方:ISG の 2025 年の売上 9.28 億ドル(前年比 −17%)。対象市場(車載・産業向けのイメージセンサー)を約 85 億ドルと推定し、シェアは約 10.9%(ソニー・オムニビジョン・サムスン・中国勢が競合)。営業利益は開示されず推定。
リスクと懸念
SiC の価格崩れと中国勢
BYD 半導体・三安光電・士蘭微などが SiC とシリコン電力の価格を下げ、結晶(基板)も中国が世界の約 4 割を握る。ON の中国 SiC 売上は 2026 年に +60〜70% の見込みだが、数量で価格の下落を補っているだけなら利益は付いてこない。価格が物価に負け続けると、SiC は永く低い利益率にとどまる。米中の摩擦で中国売上を失う恐れもある。
EV の伸びの鈍化と稼働率
SiC は EV の主機に依存し、2026 年は中国の車販売が −4% で EV の伸びは鈍い。ON は結晶から自社で作る垂直統合のため、需要が落ちると工場の稼働率が下がり、粗利益率が 10 ポイント近く動く。2025 年に営業利益率が 12.5% まで、純利益が 1.2 億ドルまで落ちたのがその例で、再び起こりうる。
回復の偏りと AI の山
2026 年 4-6 月期は電力が +19% だが、アナログは −2%、回復は電力に偏る。AI データセンター向けは 2026 年 5 億ドル超と小さく、2027 年後半に立ち上がる 800V 給電は先の話で、遅れれば計画(2030 年に 25 億ドル超)は届かない。大手クラウドの設備投資が止まれば、AI の電力の需要も同時に崩れる。
シナプティクスの買収(成立前)
2026 年 6 月に発表し、10 月に現金約 57 億ドルへ条件を改めた。成立すれば現金の流出(純負債の増加)と、電力・車載と関連の薄いエッジ AI・コネクテッドの統合が加わり、資本効率の低下と自社株買いの縮小につながる恐れがある。この分析は成立前なので今の会社だけで書いた。成立後は筋書きを見直す。
工場の再編と減損
2025 年の製造再編に続き、2026 年 1-3 月期に 3.3 億ドル、4-6 月期に 0.4 億ドルの再編・減損費用が出た(年初来の非現金の減損は 1.6 億ドル)。SiC の工場が低い稼働率のままなら、追加の減損が自己資本を減らす。GAAP の利益は、会社の「非 GAAP」の数字より常に低く出る点にも注意。
自社株買いの規律と株式報酬
2025 年に FCF とほぼ同額の 13.8 億ドルを自社株買いに使ったが、買った値段を選ばなければ、山の値段で買って価値を減らす。株式報酬は年約 1.4 億ドルで、純利益の小さい年には利益の 1 割を超える。還元はこの希薄化を引いた正味で見る。
工場の設備投資の再開
今は設備投資を売上の 2% 前後に絞って FCF を厚く見せているが、AI の電力と SiC の 8 インチへ移るには工場への投資が要る。楽観の筋書きでは再投資が利益の半分を超えるため、売上が伸びても株主のものになる利益は少ない。
今後の分かれ目
- アナログ部門の売上が前年比でプラスに戻り、電力の伸びが +15% 前後を保つ
- やや楽観へ確率を寄せ、中立の 10 年の利益率の置き方を上げる。回復が電力だけでなく広がった証拠になる。
- 工場の稼働率の改善で GAAP の粗利益率が 42% を超えて定着する
- 営業利益率の置き方を上げ、楽観寄りへ確率を寄せる。2026 年 7-9 月期の見通し(39.9〜41.9%)の上限を超える水準。
- SiC の中国向けの数量は伸びるが、売上総利益率が下がる(価格が数量の伸びを食う)
- 10 年のやや悲観・悲観へ確率を寄せる。SiC のシェアと価格の置き方を下げる。
- AI データセンターの 800V 給電が 2027 年後半に量産に入り、売上が 2026 年の 5 億ドル超から倍以上に伸びる
- 電力の市場の置き方を上げ、10 年の楽観寄りへ確率を寄せる。ただし大手クラウドの設備投資の計画を同時に確認する。
- シナプティクスの買収が成立し、現金約 57 億ドルが出る
- 成立後の会社で筋書きを書き直す。自社株買いが縮み純負債が増える点と、統合の成否を確率に織り込む。
- 大手の EV メーカーが SiC から別の方式へ切り替える、または中国の EV 販売が大きく減る
- SiC の数量とシェアの置き方を下げ、工場の減損と稼働率の低下を悲観に厚く入れる。
見ておくもの
- 電力・アナログ・イメージセンサーの部門別の売上の伸び(四半期の決算ごと)
- GAAP の粗利益率と工場の稼働率(7-9 月期の見通しの達成)
- SiC の中国向けの売上と、売上総利益率の動き
- AI データセンター向けの売上(2026 年 5 億ドル超が目標)と 800V 給電の量産の時期
- シナプティクス買収の各国の承認と、成立後の現金・純負債
- 再編・減損の追加費用と、自社株買いの規模
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) で出した。k 9.5%(基本 8.0% + quality 1.5%)、ROE は帳簿(中立 25%)、堀は普通、g は半導体の数量が実質で伸び続けるとして 4.5%(k − g = 5.0%)。SiC の価格競争を見て、中立は上限 14.8 倍の 7.5 割、やや楽観・楽観はそれより高く 8〜8.5 割、やや悲観は 7 割。10 年の悲観は ROE が k 以下なので 1÷k の 9 割。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。今の PER 234 倍(谷の利益)には寄せていない。総合は -32%(割高)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β 1.74 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%(β は使わない)。循環の大きい電力半導体(+1.0)で、SiC は価格決定力が弱い(+0.5)。純負債は時価総額の約 2.5% で存続の不安はなく、上乗せは 0。SiC の価格、中国、稼働率の下振れは、k でなく確率と悲観の深さで表した。