結論
シスコシステムズは、企業・通信事業者・データセンターにスイッチ、ルーター、無線 LAN、セキュリティ、ログ分析(スプランク)を売る、ネットワーク機器の世界最大手である。2026 年 7 月期の売上は 633 億ドル(前年比 +12%)、営業利益 159 億ドル(利益率 25%)。第 4 四半期は売上が +18%、製品の受注が +35% と加速し、ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)向け AI 受注は年 93 億ドルと前年の 4.5 倍に達した。2027 年 7 月期の会社予想は売上 722〜734 億ドルで、AI 向け売上は約 40 億ドルから 75 億ドルへ伸びる見込みである。
事業の質は「堅い守りの会社」で、企業の LAN・ルーター・保守契約という切り替えにくい基盤が利益の土台になる。一方で、AI データセンターの高速スイッチではアリスタ(Arista)が首位で、シスコは追う側にいる。2025 年から売上総利益率はメモリ価格の上昇とハード比率の増加で約 2 ポイント下がった。
事業ごとに実質の市場 × シェア × 単価で積み上げ、資本コスト 8% と帳簿の自己資本 ROE(のれんを除かない)から出る利益ベースの正当化 PER の上限(中立で 18.2 倍)の 8.5 割(15.5 倍)を倍率に置くと、10 年後の中立の筋書きは利益が今の 1.5 倍弱で、時価総額は約 2,980 億ドルと今の約 7 割になり、資本コスト 8% で 10 年割り引くとさらに届かない。今の PER 32 倍(PBR 8.5 倍)を正当化するのは AI の波が長く続く楽観とやや楽観だけで、確率で加重した本質価値は今の時価総額より約 46% 低く(10 年 −46%、割高)、バリュー投資の観点では安全域が無い。事業は 10 年後も存在し今と同程度に強いが、成長の質と値段は別物、というのが結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、シスコは「10 年後も存在し、今と同程度に強い」と言い切れる数少ない大型の IT ハードの会社である。ネットワークは電気や水道に近い基盤で、AI の時代にも通信量は増え続ける。企業の LAN・ルーターと保守契約は顧客の運用に根づき、切り替えの費用が高い。堀は広がるというより、守りの堀が保たれるという評価である。
オーナー利益(純利益から株式報酬と再投資を引いた株主の取り分)は、純利益 133 億ドルに対し、株式報酬が約 25 億ドル、設備と運転資本の増加が数十億ドルで、実質は 100 億ドル前後、時価総額 4,282 億ドルの 2.3% である。長期金利 5% を大きく下回る。10 年後に利益が 1.5 倍になっても、倍率が正当化 PER の 8 割(中立で 14〜15 倍)へ戻れば、10 年の利回りは年 0% 前後で資本コスト 8% に届かない。
資本配分は、買収(スプランク)に大きな金額を使ったが、成果の確認はこれからで、評価は中程度。安全域は、AI の楽観がほぼ実現して初めて今の時価総額を超え、悲観のときの床(PBR 3 倍弱)と今の水準の差が大きいため、ほとんど無い。事業は良いが、値段が悪い。予測のしやすさは中程度で、AI 受注の持続は確信を持てない。
何で稼ぐ会社か
売上の約 8 割は製品、約 2 割がサービス(保守・技術支援)である。製品のうち最大の「ネットワーキング」(2026 年 7 月期の売上は約 340 億ドルと推定)は、キャンパス・支店のスイッチ、ルーター、無線 LAN(Wi-Fi 7 への更新が受注の約半分)、産業用 IoT 機器、そして AI データセンター向けの自社チップ(Silicon One)と光モジュールからなる。ネットワーク機器は一度入れると設定・運用の知識が社内に溜まるため、同じ会社の機器で更新される傾向が強い。
「セキュリティ」(ファイアウォール、ゼロトラスト、メール防御)と「可観測性」(スプランク。2024 年に約 280 億ドルで買収したログ分析・監視ソフト)はサブスクリプション型で、両者で売上は 100 億ドル弱。買収で ARR(年間の継続収入)は大きく増えたが、買収を除いた成長は低く、直近の四半期でセキュリティが +14%、可観測性が +6% にとどまる。「コラボレーション」(Webex の会議・電話・コンタクトセンター、約 43 億ドル)は成熟分野で、成長率は 0〜12% を行き来する。
サービスの売上は約 150 億ドルで、契約残高(RPO)467 億ドル(+7%)の中に積み上がっている。利益率は製品より高く、全社の営業利益の約 4 割をこの部分が支えると見る。顧客はハイパースケーラー、通信事業者、金融・官公庁などの大企業で、販売の多くは代理店経由である。全体として、約 5 割がサブスクリプション・保守による継続収入、残りが機器の販売という構造で、景気の波は機器の部分にだけ強く出る。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は設置基盤と切り替えの費用で、キャンパス・ルーター・無線の分野でシスコの機器と運用資格(CCIE など)が顧客の IT 部門に根づいており、他社への乗り換えは数年がかりになる。第 2 は販売網と保守契約で、代理店と一体の販売力、サービス契約の継続率の高さが、景気が悪くても収益を保つ。第 3 は自社設計のチップ(Silicon One)で、ルーターと AI スイッチの両方に使え、3 つのハイパースケーラーが P200 チップを採用した(2026 年の決算説明会)。
弱点も明確である。データセンターのイーサネットではアリスタが先行し、エヌビディア(NVIDIA)は自社のネットワークで AI の計算とスイッチを抱き込み、白箱(ホワイトボックス)は価格を取りにくる。コラボレーションとセキュリティは競合(マイクロソフト、パロアルトネットワークス、ゾーム)より小さく、価格を決める力は強くない。営業利益率は 2023 年 7 月期に 27%、2025 年 7 月期に 22%、2026 年 7 月期に 25% と、27〜28% の最良期には戻っていない。
資本効率は ROE 20〜30% と高いが、これは 2018〜2019 年の大規模な自社株買いで自己資本が薄くなっている影響が大きく、純粋な稼ぐ力の高さではない。経営はチャック・ロビンス氏の下で買収(アカシア、スプランク)を概ね堅実に進めたが、スプランクは買収後も成長が低く、価格に見合う成果はまだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の規模は、AI データセンター向け(スイッチ・光モジュール・光トランスポート)が 2026 年に約 600 億ドル、従来型(キャンパス・ルーター・通信事業者・セキュリティ付きネットワーク)が約 800 億ドルと推定する(業種ノート)。AI 向けは帯域が年 +30% 伸びる一方、1 ギガビットあたりの単価が年 −20% で下がり、差し引きは年 +4% 程度の長期の姿になる。従来型は年 +2% で、物価(3.5%)を下回る実質マイナスである。
競争は、データセンター向けでアリスタ(首位)・エヌビディア・ホワイトボックス(Accton・Celestica)、キャンパス向けでアリスタ・HPE(2025 年にジュニパーを買収)・ファーウェイ、セキュリティでパロアルト・フォーティネット、光モジュールで中国勢(Innolight・Eoptolink)と、領域ごとに相手が違う。シスコは全分野に出ているが、各分野の首位ではないことが多い。
循環でいえば、AI 設備投資の山の手前にいる。2026 年の大手 5 社の設備投資は約 7,300〜8,050 億ドルで、2027 年は 1 兆ドル前後の見方が多い。この投資が止まると AI 向けは同時に減るが、シスコの売上の約 8 割は AI 以外なので、半導体・光部品の会社より谷は浅い。分かれ目は、ハイパースケーラーが AI ネットワークを内製・ホワイトボックスへ寄せるか、イーサネットとシスコのチップを使い続けるかである。
資本政策と M&A
還元は配当(年約 66 億ドル。増配は 10 年以上連続)と自社株買い(年約 80 億ドル)で、純利益のほぼ全額に当たる。株式報酬による株数の増加を打ち消す程度で、株数の純減は直近 5 年で年 1〜2% にとどまる。2024 年にスプランクの買収資金で純有利子負債に転じ、現在は約 153 億ドルである。
M&A は歴史的にシスコの本業で、2018 年以降だけでも、アカシア(光トランスポート、約 45 億ドル)とスプランク(約 280 億ドル)が大型である。買収は ROIC(投下資本利益率)の低下を招きやすく、スプランクが価格に見合うかは、買収を除いた成長と安全保障ソフトの統合次第である。大型の買収は規制で難しく、時価総額 4,000 億ドル超の会社が買われる側になる可能性は現実的でない。
今後の鍵は 2 つ。AI 受注の急増に合わせて在庫と部品の調達(メモリ・光部品)に資金を使いすぎないこと、そして割高な局面で自社株買いを続けないことである。PER 30 倍超の局面での自社株買いは、利益の 30 倍の値段を払って利益を買うことになり、価値を壊す。借金 約 310 億ドルは借り換えで金利が約 5.75% に上がり、利払いは税後で年 2 億ドルほど増える(純利益から引いた)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI は 1 回の設備投資の波ではなく、10 年続くネットワークの作り替えである。ハイパースケーラー向け AI の受注は 2026 年 7 月期に 93 億ドル(前年の 4.5 倍)に達し、売上は 40 億ドルから 75 億ドルへ向かう。受注は売上に 1〜2 年遅れて化けるので、これから数年の売上は今の受注残が保証している。シスコは AI 向けのチップ(Silicon One)を自前で持つ数少ない会社で、3 つのハイパースケーラーが P200 を採用し、AI データセンター同士をつなぐ長距離の接続(スケールアクロス)でルーターの強みが活きる。
同時に、企業の更新サイクルが始まっている。Wi-Fi 7 は無線受注の約半分に達し、AI を動かす企業は LAN の更新と、AI 対応のセキュリティを必要とする。サービス契約の残高(RPO)は 467 億ドルで +7%、製品の受注は +35% と、継続収入と新規の両方が伸びている。営業費用は売上比で 3.7 ポイント下がり、メモリ費用の悪化を吸収している。
売上が 2029 年 7 月期に 900 億ドルを超え、営業利益率が 28% 前後に戻れば、純利益は 1.6 倍に近づく。AI 後の成熟した姿でも PER 20 倍が付く事業である。
慎重な見方
今の値段は、AI の需要が続くことと利益率の回復の両方を織り込んでいる。実際には、AI データセンターの高速スイッチでアリスタが首位で、エヌビディアは自社のネットワークを抱き込み、白箱が価格を取りにくる。シスコの AI 受注 93 億ドルは、光モジュールが 4 割を占める。光モジュールは中国勢の価格攻勢と世代ごとの値下がり(1 ギガビットあたり年 −20%)で、利益率が低く、数量が増えても利益は増えない。売上総利益率はすでにメモリ高とハード比率の上昇で 2.1 ポイント下がった。
従来型の企業ネットワークは物価並みの成長しかなく、セキュリティとコラボレーションは競合より小さい。スプランクの買収(約 280 億ドル)は買収を除いた成長が低く、ROIC は資本コストを下回りやすい。利益率は 2023 年の 27% から 2025 年に 22% まで落ち、2026 年の 25% も部品費用で再び圧迫される。
AI 設備投資が 2027〜2028 年に止まれば、受注は 2023 年の在庫調整のように急減する。純利益 133 億ドルに対し時価総額は 4,282 億ドルで、PER 32 倍は成熟したネットワーク機器の過去の幅(12〜25 倍)を大きく超える。資本コスト 8% で測った成熟後の 14〜15 倍へ倍率が戻るだけで、利益が 1.5 倍になっても今の時価総額に届かない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の中心は、今の PER が 32 倍まで上がっていることと、AI 受注の質(光 4 割・低利益率)である。資本コスト 8% と利益ベースの倍率(正当化 PER の上限の 8.5 割)で測ると成熟後の PER は 15 倍台で、10 年は倍率の縮みが利益の伸びをすべて打ち消す。10 年は構造的に負ける筋書きを 11% 残した。確率は中立 36%・悲観側 32% に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 75.75 ドル3,020 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 33.18 ドル1,323 億ドル)。 今の値に割り戻すと 57.67 ドル2,299 億ドル、今との差 −45.0%、 期待の年率 +0.4%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 136.53 ドル5,443 億ドル | 42.64 ドル1,700 億ドル | +70.8% | +5.5% | 17.92 ドル714 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 100.30 ドル3,999 億ドル | 38.88 ドル1,550 億ドル | +32.7% | +2.9% | 30.62 ドル1,221 億ドル |
| 中立 | 36% | 74.80 ドル2,982 億ドル | 35.11 ドル1,400 億ドル | +4.8% | +0.5% | 39.57 ドル1,578 億ドル |
| やや悲観 | 21% | 52.10 ドル2,077 億ドル | 27.59 ドル1,100 億ドル | −24.0% | −2.7% | 16.74 ドル667 億ドル |
| 悲観 | 11% | 19.62 ドル782 億ドル | 17.56 ドル700 億ドル | −64.6% | −9.9% | 4.09 ドル163 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 75.75 ドル3,020 億ドル | 33.18 ドル1,323 億ドル | +3.9% | +0.4% | 108.93 ドル4,343 億ドル |
今の株価時価総額 104.89 ドル4,182 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:AI の中心基盤の 1 つになり、堀が広がる 利益 302 億ドル · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 136.53 ドル5,443 億ドル
10 年後(2036 年 7 月期)、AI データセンターのネットワーク市場は光学の共同パッケージ化(CPO)などで約 2,200 億ドルに伸び、全体の機器市場は約 3,300 億ドル。シスコは Silicon One のチップと、ルーター・スイッチ・光学を一体で売る強みで、シェアを 23% まで伸ばしネットワーキングは約 759 億ドル。セキュリティ・可観測性はスプランクの統合が実り、市場の伸びを上回って約 208 億ドル。サービスの契約残高は約 900 億ドルに積み上がる。営業利益率は 28% 近くに戻り、純利益は約 302 億ドル(今の 2.3 倍)。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 19.0 倍の 9.5 割(18.0 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)0 億ドルを足して時価総額 5443 億ドル。
- ネットワーキング:数量 60.7(シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア)× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 759 億ドル・営業利益 182 億ドル。名目市場 3300 億ドル × シェア 23.0%(単価 1.25)。市場 3,300 億ドル・シェア 23%
- セキュリティ・可観測性:数量 13.9(セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 15(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 208 億ドル・営業利益 46 億ドル。名目市場 3790 億ドル × シェア 5.5%(単価 1.5)。スプランクの統合が実る
- コラボレーション:数量 4.5(コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 59 億ドル・営業利益 13 億ドル。名目市場 977 億ドル × シェア 6.00%(単価 1.3)。市場 +5%/年
- サービス:数量 19.2(保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量))× 価格 15(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 279 億ドル・営業利益 117 億ドル。契約残高 900 億ドル × 売上化率 31.0%(単価 1.45)。契約残高 900 億ドル
倍率:AI のデータセンター向けネットワークが加わり、ソフトと保守の経常収益が伸びて利益率が上がる筋書き。堀は広いが、アリスタ・ブロードコムとの競りは続くので、上限に近く置く。 正当化 PER の上限は 19.0 倍(g 4.0%、RONIC 16.6%。RONIC = k 8.0% + 1/2 ×(事業の ROE 25.3% − k)。堀は普通)。その 9.5 割の 18.0 倍に置いた。g の内訳(この筋書き 4.0%):市場の実質と価格から 4.8% 近いが、倍率に使う g は 4.0% で打ち切る。時価総額 = 事業の純利益 301.8 × 18.0 + 余った現金(戻り方込み)0 = 5443 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 18.0 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI ネットワークの成長が 10 年続き、シスコが Silicon One と光学の統合で首位級になり、セキュリティも伸びる。大型でここまで揃う確率は 1 割。
やや楽観 22% やや楽観:AI の恩恵を受けるが、単価の競争で利益率は小幅に低下 利益 237 億ドル · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 100.30 ドル3,999 億ドル
10 年後、AI 向けの市場は約 1,500 億ドル、全体の機器市場は約 2,800 億ドル(中立より 2 割上)。シェアは 22%(今の 24% から小幅に低下)でネットワーキングは約 616 億ドル。単価の下落と光モジュールの比率上昇で、ネットワーキングの利益率は 21.5% にとどまる。セキュリティ・可観測性は年 +6% で約 190 億ドル、サービスは約 253 億ドル。全社の営業利益率は約 26% で、純利益は約 237 億ドル(今の 1.8 倍)。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 18.7 倍の 9 割(16.9 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)0 億ドルを足して時価総額 3999 億ドル。
- ネットワーキング:数量 51.3(シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア)× 価格 12(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 616 億ドル・営業利益 132 億ドル。名目市場 2800 億ドル × シェア 22.0%(単価 1.2)。市場 2,800 億ドル・シェア 22%
- セキュリティ・可観測性:数量 13.1(セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 15(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 190 億ドル・営業利益 39 億ドル。名目市場 3790 億ドル × シェア 5.0%(単価 1.45)。年 +6%
- コラボレーション:数量 4.4(コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 55 億ドル・営業利益 12 億ドル。名目市場 977 億ドル × シェア 5.60%(単価 1.25)。やや拡大
- サービス:数量 17.7(保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量))× 価格 14(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 253 億ドル・営業利益 104 億ドル。契約残高 830 億ドル × 売上化率 30.5%(単価 1.43)。契約残高 830 億ドル
倍率:AI 向けの受注が積み上がり、キャンパスの更新が進む筋書き。上限から少し下げて置く。 正当化 PER の上限は 18.7 倍(g 4.0%、RONIC 16.0%。RONIC = k 8.0% + 1/2 ×(事業の ROE 23.9% − k)。堀は普通)。その 9 割の 16.9 倍に置いた。g の内訳(この筋書き 4.0%):市場の実質と価格から 4.0%。時価総額 = 事業の純利益 237.2 × 16.9 + 余った現金(戻り方込み)0 = 3999 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 16.9 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI の需要は続くが、1 ギガビットあたりの単価の下落で成長は物価をやや上回る程度。守りの堀(企業 LAN・保守)が保たれる筋書き。
中立 36% 中立:守りの堀は保たれるが、成長は物価並みに戻る 利益 192 億ドル · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 74.80 ドル2,982 億ドル
10 年後、AI 向け市場は約 1,400 億ドル、従来型は約 970 億ドルで合計約 2,400 億ドル(業種ノートの中立)。シェアは AI 向けの希薄化で 21%、ネットワーキングは約 504 億ドル。セキュリティ・可観測性は市場が年 +6% 伸びるが、シェアが 4.5% に落ち約 171 億ドル、コラボレーションは約 54 億ドル、サービスは約 228 億ドル。売上は約 957 億ドルで、10 年間の年平均は +4.2%(物価 3.5% を少し上回る)。営業利益率は約 24.6%、純利益は約 192 億ドル(今の 1.5 倍)。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 18.2 倍の 8.5 割(15.5 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)0 億ドルを足して時価総額 2982 億ドル。
- ネットワーキング:数量 43.8(シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア)× 価格 12(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 504 億ドル・営業利益 101 億ドル。名目市場 2400 億ドル × シェア 21.0%(単価 1.15)。市場 2,400 億ドル・シェア 21%
- セキュリティ・可観測性:数量 12.1(セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 14(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 171 億ドル・営業利益 32 億ドル。名目市場 3790 億ドル × シェア 4.5%(単価 1.41)。市場 +6%/年・シェア 4.5%
- コラボレーション:数量 4.5(コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 12(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 54 億ドル・営業利益 11 億ドル。名目市場 977 億ドル × シェア 5.50%(単価 1.2)。物価並み
- サービス:数量 16.2(保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量))× 価格 14(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 228 億ドル・営業利益 91 億ドル。契約残高 760 億ドル × 売上化率 30.0%(単価 1.41)。物価並み
倍率:設置基盤と経常収益の堀は強いが、成長は物価並みで、AI 向けはアリスタ・ホワイトボックスと分け合う。堀は普通と見て、上限から一段下げて置く。 正当化 PER の上限は 18.2 倍(g 4.0%、RONIC 14.8%。RONIC = k 8.0% + 1/2 ×(事業の ROE 21.6% − k)。堀は普通)。その 8.5 割の 15.5 倍に置いた。g の内訳(この筋書き 4.0%):市場の実質 +0.5%・価格 +3.5%(物価並み)で 4.0%。時価総額 = 事業の純利益 192.4 × 15.5 + 余った現金(戻り方込み)0 = 2982 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 15.5 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI の波が終わった後の、物価並みに成長する成熟した機器・ソフトの会社。議論の落としどころで、最も確率が高い。
やや悲観 21% やや悲観:シェアを少しずつ失い、利益率が 21% 台に下がる 利益 151 億ドル · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 52.10 ドル2,077 億ドル
10 年後、機器市場は約 2,300 億ドルと中立とほぼ同じだが、シスコのシェアは 19% に落ちる。ホワイトボックスと中国の光モジュール、アリスタが AI 向けで価格を取り、エヌビディアが計算とネットワークを抱き込む。ネットワーキングは約 437 億ドルで利益率 17%。セキュリティ・可観測性は生成 AI によるソフト置き換えと競合の台頭でシェアが 4% に下がり約 152 億ドル。サービスは約 206 億ドル。営業利益は約 181 億ドル(利益率 21.6%)、純利益は約 151 億ドル。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 17.2 倍の 8 割(13.8 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)0 億ドルを足して時価総額 2077 億ドル。
- ネットワーキング:数量 41.6(シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア)× 価格 11(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 437 億ドル・営業利益 74 億ドル。名目市場 2300 億ドル × シェア 19.0%(単価 1.05)。シェア 19%・価格競争
- セキュリティ・可観測性:数量 11.7(セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 152 億ドル・営業利益 24 億ドル。名目市場 3790 億ドル × シェア 4.0%(単価 1.3)。シェア 4%
- コラボレーション:数量 4.0(コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 11(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 44 億ドル・営業利益 7 億ドル。名目市場 977 億ドル × シェア 4.50%(単価 1.1)。シェア低下
- サービス:数量 15.3(保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量))× 価格 14(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 206 億ドル・営業利益 78 億ドル。契約残高 700 億ドル × 売上化率 29.5%(単価 1.35)。契約残高の伸び鈍化
倍率:ホワイトボックスと中国勢にシェアを譲り、ハードの値引きが進む筋書き。低めに置く。 正当化 PER の上限は 17.2 倍(g 4.0%、RONIC 12.9%。RONIC = k 8.0% + 1/2 ×(事業の ROE 17.8% − k)。堀は普通)。その 8 割の 13.8 倍に置いた。g の内訳(この筋書き 3.5%):市場の実質が伸びず、シェアも落ちて 3.5%。時価総額 = 事業の純利益 150.6 × 13.8 + 余った現金(戻り方込み)0 = 2077 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 13.8 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI のスイッチと光モジュールが白箱・中国勢に流れ、企業 LAN でも価格競争が続く。安く売る側に回る筋書き。10 年の構造変化としては十分ありうる。
悲観 11% 悲観:構造的に負け、もう優良ではなくなっている 利益 77 億ドル · PER 10.2 倍 · 株価時価総額 19.62 ドル782 億ドル
10 年後、構造的に負けて優良ではなくなっている。AI データセンターではエヌビディアと自社設計(ハイパースケーラーのチップ・白箱)が主流になり、シスコのシェアは 15% に落ちる。企業ネットワークはクラウド管理型の安価な機器と白箱に置き換わり、価格が崩れる。スプランクは生成 AI で価値が下がり、数百億ドル規模の減損が出て自己資本が薄くなる。ネットワーキングは約 300 億ドルで利益率 10%、セキュリティは約 90 億ドルで利益率 10%、サービスは契約の解約で約 157 億ドル。営業利益は約 87 億ドル(利益率 15%)、純利益は約 77 億ドル(借金を返して利払いが減る)。成熟後の倍率は、g 4.0% の正当化 PER の上限 14.6 倍の 7 割(10.2 倍)を事業の純利益に掛け、余った現金(戻り方込み)0 億ドルを足して時価総額 782 億ドル。
- ネットワーキング:数量 31.6(シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア)× 価格 9.50(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 300 億ドル・営業利益 30 億ドル。名目市場 2000 億ドル × シェア 15.0%(単価 0.95)。シェア 15%・価格崩壊
- セキュリティ・可観測性:数量 7.8(セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 12(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 90 億ドル・営業利益 9 億ドル。名目市場 3000 億ドル × シェア 3.0%(単価 1.15)。シェア 3%・減損
- コラボレーション:数量 2.9(コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア)× 価格 10(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 29 億ドル・営業利益 1 億ドル。名目市場 977 億ドル × シェア 3.00%(単価 1.0)。解約・縮小
- サービス:数量 12.6(保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量))× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2026 年=10))→ 売上 157 億ドル・営業利益 52 億ドル。契約残高 560 億ドル × 売上化率 28.0%(単価 1.25)。契約解約
倍率:ネットワークが汎用品になり、経常収益も縮む筋書き。堀が壊れる側なので最も低く置く。 正当化 PER の上限は 14.6 倍(g 4.0%、RONIC 9.6%。RONIC = k 8.0% + 1/2 ×(事業の ROE 11.2% − k)。堀は普通)。その 7 割の 10.2 倍に置いた。g の内訳(この筋書き 3.0%):市場の実質が縮み、価格もシェアも落ちる世界で 3.0%。時価総額 = 事業の純利益 76.5 × 10.2 + 余った現金(戻り方込み)0 = 782 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 10.2 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI の中心はエヌビディアと自社設計に移り、企業ネットワークはクラウド管理型・ホワイトボックスで価格が崩れ、スプランクに大きな減損が出る、構造的に負ける筋書き。1990 年代のルーセント・ノーテルの転落に近い。10 年の悲観として 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ネットワーキング
スイッチ・ルーター・無線 LAN・AI データセンター向け機器と光モジュール(Silicon One)。製品売上の大半。
| 数量シスコが売るネットワーク機器の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の機器市場 × シェア | 価格1 単位の値段(億ドル。2026 年=10) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 34.0 | 10 | 340 | 70 |
| 10 年後 中立 | 43.8 | 12 | 504 | 101 |
取り方:AI・従来型を合わせた機器市場を約 1,400 億ドル(業種ノートの推定)とし、2026 年 7 月期のネットワーキング売上 340 億ドルからシェア約 24% とした。競合はデータセンターの高速スイッチで首位のアリスタ(Arista)、計算とネットワークを一体で売るエヌビディア(NVIDIA)、通信事業者向けのジュニパーを取り込んだ HPE、ファーウェイ、ホワイトボックス(台湾の受託製造)で、企業の LAN・ルーターではシスコが首位を保つ。数量は実質の市場 × シェア、価格は機器 1 単位の値段。1 ギガビットあたりの単価は世代ごとに下がる(光モジュールは年 −20%)が、機器 1 台の値段は速度と機能で上がるので、中立は 10 年 1.15 倍と物価(1.41 倍)より低く置いた。営業利益は開示が無いため、全社の営業利益 159 億ドルをサービスの高い利益率を先に引いて配分した推定。
セキュリティ・可観測性
ファイアウォール・ゼロトラスト・スプランク(Splunk)のログ分析と可観測性。サブスクが中心。
| 数量セキュリティ・可観測性の契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア | 価格1 単位の値段(億ドル。2026 年=10) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 9.8 | 10 | 98 | 17 |
| 10 年後 中立 | 12.1 | 14 | 171 | 32 |
取り方:セキュリティ・可観測性の市場を約 2,000 億ドルと推定し、自社の売上約 98 億ドル(スプランクを含む)からシェア約 5% とした。競合はパロアルトネットワークス、フォーティネット、クラウドストライク、マイクロソフト、可観測性ではデータドッグで、シスコは製品の幅は広いがどの分野でも首位ではない。数量は実質の市場 × シェア、価格は契約 1 単位の値段で、ソフトの購読は物価並みに上がるのが基本。営業利益は買収の償却費を含む推定。
コラボレーション
会議(Webex)・電話・ビデオ機器・コンタクトセンター。成熟し低成長。
| 数量コラボの契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の市場 × シェア | 価格1 単位の値段(億ドル。2026 年=10) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 4.3 | 10 | 43 | 9 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 12 | 54 | 11 |
取り方:コラボ市場を約 600 億ドルと推定、自社の売上約 43 億ドルでシェア約 7%。マイクロソフトのチームズが Microsoft 365 に束ねて売られ、ズーム(Zoom)とグーグルも安値で競うので、Webex の単価は物価ほど上げられない(中立は 10 年 1.20 倍)。成熟で利益率は中程度の推定。
サービス
保守・技術支援・導入支援。製品と抱き合わせの契約が積み上がる。
| 数量保守・サービス契約の量(単位=2026 年の価格で 10 億ドル分)(契約残高 × 売上化率を今の価格で数えた量) | 価格1 単位の値段(億ドル。2026 年=10) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 15.2 | 10 | 152 | 61 |
| 10 年後 中立 | 16.2 | 14 | 228 | 91 |
取り方:契約残高(RPO)467 億ドルに対し、サービス売上約 152 億ドルは年 33% 相当。数量はその契約の量、価格は保守料の水準で、保守料は人件費とともに物価並みに上がる。機器の設置台数の大きさがアリスタなど新興勢にない強み。保守契約の利益率が高いと見て 40% の推定。
リスクと懸念
AI 設備投資の停止と受注の急減
ハイパースケーラー向け AI 受注(2026 年 7 月期 93 億ドル)は、設備投資の増加が止まれば急減する。2023 年の在庫調整では受注が急落した。AI 以外が約 8 割でも、売上の伸びと倍率の両方が下がる。 受注は売上に 1〜2 年遅れて化けるため、受注の減速は数四半期後の売上の減速として表に出る。
データセンター市場でアリスタ・エヌビディア・ホワイトボックスに押される
AI のバックエンド網はイーサネットが主流になりつつあるが、首位はアリスタ。エヌビディアは計算とネットワークを抱き込み、ホワイトボックスは価格を取りにくる。シスコの AI 売上は競争で利益率が薄い。 価格が決め手の分野で、数量が増えても利益率が上がりにくく、首位を取れないまま AI の売上だけが増える形になりうる。
利益率の悪化(メモリ・光部品・ハード比率)
売上総利益率はメモリ価格の上昇とハード比率の増加で 2.1 ポイント低下(66.3%)。AI 向け光モジュールは利益率が低く、数量が増えても利益が増えにくい。営業利益率が 22% 台に戻るリスクがある。 利益率が 1 ポイント下がると、純利益は約 5% 減る。値上げで転嫁できるかは、顧客との力関係次第である。
スプランクの買収の回収
約 280 億ドルの買収だが、買収を除いた成長は低く、セキュリティ・可観測性の伸びも 5〜14% にとどまる。生成 AI によるソフトの置き換えで、ログ分析の単価が下がる懸念もあり、減損のリスクがある。 減損が出れば自己資本が薄くなり、資本配分への評価も下がる。買収後の統合の成果を見る必要がある。
従来型の企業ネットワークの伸び悩み
キャンパス・ルーターは物価並みの成長しかなく、Wi-Fi 7 などの更新需要が終われば再び低成長に戻る。HPE(ジュニパー)やアリスタとの競争で価格も圧迫される。 受注は戻っても、更新需要は数年で一巡し、その後の売上は保守契約と物価の分だけの伸びに戻る。
倍率の縮み(PER 32 倍から成熟後の 24 倍前後へ)
今の PER は過去 20 期の中央値 18 倍の約 1.8 倍。利益が予想通り伸びても、倍率が過去の幅へ戻れば時価総額は下がる。最も確からしい下振れ要因である。 業績が計画どおりでも株価が下がる唯一の確かな道で、利益の伸びより倍率の縮みの方が大きい期間がありうる。
地政学と輸出規制・関税
中国の売上は小さいが、部品の調達(台湾・東南アジア)と関税が原価を押し上げる。AI 向けの輸出規制は、顧客の調達方針にも影響する。 台湾・東南アジアの製造、中国の調達規制に加え、関税が原価を 1〜2 ポイント押し上げる可能性があり、価格転嫁が遅れると利益率を削る。AI 向けの輸出規制が顧客の調達方針を変える点も見ておく。
今後の分かれ目
- ハイパースケーラー向け AI 売上が 2027 年 7 月期に 75 億ドルを超え、2028 年 7 月期も +30% 以上を保ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし倍率は成熟後の 15〜19 倍へ戻るので、時価総額が今を大きく超えるには利益が 1.5 倍以上になる必要がある。
- 売上総利益率が 64% を下回り、営業利益率が 22% 台へ戻ったら
- AI 向けの低利益率の売上が全体を引き下げている。やや悲観の確率を上げ、倍率も 1〜2 倍下げる。
- アリスタかエヌビディアがキャンパス・企業 LAN で明確にシェアを奪い始めたら
- 守りの堀が崩れる。10 年の悲観(構造的に負ける)の確率を 5 ポイント以上上げる。
- スプランクの買収を除いたセキュリティ・可観測性の成長が 10% を超えたら
- 買収が価値を生んでいる。セキュリティの数量を上げ、全社の利益率を 1 ポイント上方へ。
- ハイパースケーラーの設備投資の増加が 2027 年に止まり、AI 受注が 3 四半期連続で前年割れしたら
- 受注から売上への化けが止まり、倍率も縮むため、時価総額は大きく下がる。
- 大型 M&A(数百億ドル級)を再び発表したら
- 買収額が高いほど ROIC は資本コストを下回りやすい。資本配分の評価を下げ、中立の倍率を 1 倍下げる。
見ておくもの
- ハイパースケーラー向け AI 売上と受注の差(受注残の化け具合)
- 売上総利益率と営業利益率(メモリ・光部品の影響)
- サービス契約の残高(RPO)の伸びと、製品の受注の伸び
- セキュリティ・可観測性の成長(買収を除く)
- AI 設備投資の大手 5 社の計画(2027 年)
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。10 年後の倍率は、利益ベースの正当化 PER = (1−g/RONIC)/(k−g)(k 8.00%、g 4.0%、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)、堀は普通)の上限に対し、楽観 9.5 割・やや楽観 9 割・中立 8.5 割・やや悲観 8 割・悲観 7 割 で置いた。中立は上限 18.2 倍の 8.5 割で、事業の純利益に 15.5 倍(余った現金を足した見かけは 15.5 倍)。余った現金は戻り方 None を掛けて足す。総合は今の時価総額に対し -46.3% で、割高。結論は計算の結果で、先に決めたものではない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.00 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。β は使わない。循環・値決め・借金・寿命のどれも目安の上げ下げに当たらないので quality は 0。純負債は時価総額の 3.6% で借金の上乗せは無く、事業は傾いていないので extra も置かない。AI 受注の持続性やホワイトボックスとの競争は筋書きと悲観側の確率で表し、k には足していない。
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