結論
スカイワークス(Skyworks Solutions)は、スマホの電波を送受信するパワーアンプ・フィルター・スイッチ(高周波=RF 部品)の大手で、2026 年 10 月 5 日に同業のクォルボ(Qorvo)との合併を完了した。合併発表時の合算は売上 77 億ドル(モバイル 51・幅広い市場 26)、調整後 EBITDA 21 億ドル。最大の顧客はアップルで、合併会社の売上の 5 割強、モバイルでは約 8 割を占める。合併はすでに成立しているので、合併後の会社として書いた(成立後の株数は約 2.35 億株、時価総額は約 186 億ドル)。
売上は「スマホ出荷 × 1 台あたり搭載額 × シェア × 価格」(モバイル)と「対象市場 × シェア × 価格」(幅広い市場)で積んだ。中立の 10 年後(2035 年度)は売上 128 億ドル、純利益 25 億ドル。モバイルは横ばい圏で、幅広い市場(AI データセンター・Wi-Fi 7・防衛)が主役に育つ見立て。悲観では、アップルが自社モデム・Wi-Fi に続いてフロントエンドまで内製して売上が半減する。
バリュー投資の観点では、アップルの席を失えば堀が消える点が最大の弱みで、確率を悲観寄りに厚くした(10 年後の悲観 20%)。資本コストは 9.5%(基本 8.0% + quality 1.5%)。堀は弱いとして、利益ベースの正当化 PER は 12 倍ほど(帳簿の ROE 19%・RONIC 13%・g 4.0%)。10 年後の中立は 1÷k の床にあたる 10.5 倍に置いた。本質価値は今の時価総額(約 186 億ドル)の 83%(差 17%、やや割高)。利益率が戻る前提でも倍率が低く出る。しかもその回復は利益率が経営陣の目標(非 GAAP で 30〜35%)の下限へ戻る前提に乗っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。スマホに RF 部品は要り続けるので事業は残るが、堀の大半はアップルの席に宿っており、アップルは過去にモデム・Wi-Fi・Bluetooth と内製を広げてきた。「今より強い」と言い切れず、予測しにくい事業なので確信は下げる。幅広い市場(防衛・AI データセンター)が第 2 の柱に育てば、堀は分散される。
次にオーナー利益。GAAP の純利益は買収無形の償却(年 7〜8 億ドル)で小さく、2025 年度は 5 億ドル、10 年後の中立で 25 億ドル。償却は現金の出ない費用なので、これを足し戻すと現金の稼ぎは約 16 億ドルだが、株式報酬(年 3〜4 億ドル)は本物の費用として引く。今の時価総額 約 186 億ドルに対する利回りは、10 年後の中立の GAAP の純利益 25 億ドルで約 14%。ただし 10 年かけて利益率が戻る前提の値で、今の利益(2025 年度 5 億ドル)では 3% に届かない。国債 5% を大きくは上回らない。
資本配分は評価が割れる。配当をやめて自社株買いへ変えたのは、株価が安い今なら理にかなう。一方で、株価の安い時に株を新しく出して合併に使い、会社の 37% を旧クォルボの株主に渡したのは、割高な買い方になりうる。経営陣はシナジー 5 億ドルを掲げており、実行がすべて。
安全域:中立の筋書きで今の時価総額に対して本質価値が上回るのは、利益率の回復(GAAP の営業利益率 13%→24%)に頼っているため。悲観ではアップルを失い、時価総額は今の 3 割以下になる。安全域は薄く、売上の大半を 1 社に握られた事業の予測しにくさを織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
スマホは電波を送るためのパワーアンプ(PA)、不要な周波数を除くフィルター、アンテナの切り替えスイッチを使う。これらをまとめたフロントエンド・モジュールを作るのがスカイワークスとクォルボである。ガリウムヒ素の PA、SAW・BAW・TC-SAW のフィルターが中心で、機種ごとに搭載額が決まる(高級機ほど周波数帯が多く搭載額が大きい)。スカイワークスはモバイルが 2026 年度 7-9 月期で売上の 57%(5.33 億ドル)、幅広い市場が 43%(4.02 億ドル。Wi-Fi・データセンター・車載が 3 分の 2 で前年比 +15%、全体で +8%)。クォルボは先進セルラー(ACG)が 4.77 億ドル(−16.6%)、高性能アナログ(HPA)2.06 億ドル(+50%)、コネクティビティ・センサー(CSG)1.02 億ドル(−7.5%)。
顧客はアップルが最大で、スカイワークスの売上の 57%(2026 年度 7-9 月期。新型機の出荷で 10-12 月期はさらに上がる)、クォルボの 50%(2026 年 3 月期。前年は 47%)。クォルボはサムスンが 10%。Android は米国の大手事業者との複数世代の設計獲得(約 10 億ドル規模、2030 年まで開発・出荷は 2031 年)があるが、アジアの Android は 2 四半期続けて減る。売上には季節性がある。新型 iPhone の立ち上がる 7-9 月期から 10-12 月期に大きく、1-3 月期と 4-6 月期は小さい(今の合算の四半期は 17 億ドル台で、年換算 69 億ドル)。
幅広い市場は、AI データセンター(電源・光・タイミングで年 50% 超の成長で供給が足りない)、Wi-Fi 7(アクセスポイント 1 台あたりの搭載額が 2 桁増)、車載、クォルボの防衛向けガリウムナイトライドの高出力部品が成長エンジン。民生 IoT は弱い。製造は自社の工場(砒化ガリウム・フィルター)と外部委託の併用で、クォルボはコスタリカの組み立てを閉じ、ノースカロライナの工場を売って軽くなった。2026 年度は在庫の積み増しと自社能力の増強で設備投資が増えた。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。1 つ目は、アップルの高級機でフィルターと PA の席を持ち続けてきた実績(2026 年 9 月発売の iPhone 18 Pro Max の分解でも、スカイワークスとクォルボのモジュールが同居している)。2 つ目は、PA・フィルター・スイッチをまとめて設計できる規模で、合併で RF 部品の最大手級になった。3 つ目は、防衛・航空宇宙の高出力部品(クォルボ)という、スマホとは別の安定した市場の入口。
弱い所は、堀の強さがアップル 1 社の席に宿っている点。アップルは価格を決める側で、2025 年に iPhone 17 の DRX ソケットをブロードコムとの 2 社に分け、スカイワークスの RF 搭載額は 20〜25% 減った。アップルは自社モデム(C1・C2)、Wi-Fi・Bluetooth(N1)と内製を広げており、フロントエンドまで及ぶかが 10 年の焦点になる。競合は、クアルコム(Yole の 2025 年のシェア 21%、モデムと RF を一体で売る)、ブロードコム(同 18%、アップル向け FBAR フィルターで強い)、ムラタ(SAW フィルターで 2026 年 3 月期に 438 億円の特別費用、スマホ向けモジュールは赤字)、中国勢。
資本効率は、帳簿の ROE が 2025 年度で 8.3%、営業利益率 12.8%(GAAP)と谷にいる。経営陣が掲げる合併後の目標は粗利益率 50〜55%・営業利益率 30〜35%(非 GAAP)で、スカイワークスは 2016〜18 年に 34% を出した。合併で自己資本の 9 割が のれんと買収の無形資産になり、帳簿の ROE は低く見えるが、事業の資本(運転資本と設備)に対する利益率は 25〜40% 台と高い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スマホ向け RF フロントエンドの市場は、Yole によれば 2024 年に約 154 億ドルで、2030 年に 170 億ドル超、2027 年までは横ばいという。理由は、構造の単純化・値下げ圧力・中国勢の台頭。今は需要が一段と弱い。IDC は 2026 年のスマホ出荷を 12.9% 減(4 月)から 16.7% 減(最新・約 10.4 億台)へ引き下げ、メモリ価格の急騰で平均単価は 27.6% 上がった。回復は 2027 年なかば以降で、アップルは次の標準モデルを 2027 年初へ延ばす。
競合の動きは 3 つ。第 1 に、クアルコムのハンドセット売上は 2026 年 4-6 月期に 20% 減(QCT 全体 −5%、税引き前利益率 26%)。アップルの自社モデム化の最大の被害者はクアルコムで、アップルの席が空くほどスカイワークスとクォルボにもフロントエンドの席が開く(経営陣は追い風と話す。ただし内製が完了すれば効果は薄れる)。第 2 に、ブロードコムはアップルのフィルターで強く、AI 半導体の売上(5-7 月期 167 億ドル)の資金力で、RF を守る余力が大きい。第 3 に、ムラタはスマホ向けの高周波モジュールが赤字で、SAW のれんを減損した。値下げ圧力が業界全体にかかっている。
幅広い市場の側では、AI データセンター・Wi-Fi 7(Wi-Fi 8 の準備も)・防衛が成長の中心。循環のどこにいるかは、モバイルは谷(メモリ危機で出荷が −16.7%)、幅広い市場は上り坂。
資本政策と M&A
合併の条件は、クォルボ 1 株につき現金 32.5 米ドルとスカイワークス株 0.96 株で、現金の総額は約 30 億ドル。旧スカイワークスの株主が 63%、旧クォルボの株主が 37% を持つ(完全希薄化後)。成立は 2026 年 10 月 5 日(9 月 30 日に全ての規制の承認を得た)。コスト・シナジーは年 5 億ドル以上を 24〜36 か月で。資金は 2026 年 8 月に出した 20 億ドルの無担保社債(2028・2032・2036 年満期の 3 本、利率 5.0〜6.25%)と手元の現金。クォルボの 2029・2031 年債(計約 14 億ドル)はスカイワークスの社債に交換された。成立時の純負債は約 28 億ドル(調整後 EBITDA の 1.3 倍ほど)と推定。
株主還元は大きく変わった。スカイワークスは配当(利回り約 4.75%)をやめ、自社株買い(新しく 20 億ドルの枠、2029 年 1 月まで)・負債の返済・買収にあてる。成立に伴う買収の無形資産の償却は年 7〜8 億ドルほど(推定。会社の公表前)で、GAAP の純利益を当面押し下げる。現金と株式を組み合わせた買収で、新しく出した株により会社の 37% を旧クォルボの株主に渡した点が、バリュー投資の目では重い。今後の買収は「利益率の改善と多角化」に絞ると経営陣は述べている。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 0.1 億ドル(10-Q・2025 年 10 月 4 日〜2026 年 7 月 3 日、自社株買い枠の分 0.075 億ドル)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アップルの自社モデム化は、RF 部品の席が外へ開く出来事で、モデムと一体で売られていたクアルコムの席が空く。経営陣も「追い風」と話し、実際に iPhone 18 Pro Max の分解でスカイワークスとクォルボのモジュールが両方載っていた。合併で PA・フィルターを両方持つ最大手級になり、アップルの調達の窓口は 1 本に近づく。
幅広い市場は始まったばかり。AI データセンター向けは前年比 50% 超で供給が足りず(ブックトゥビルは 1 超)、Wi-Fi 7 はアクセスポイント 1 台あたりの搭載額が 2 桁増える。クォルボの高性能アナログは 2026 年 4-6 月期に +50%、防衛向けは「最も伸びしろが大きい」と経営陣が言う。非モバイル 25〜26 億ドルは、10 年で 2 倍以上になりうる。
コスト・シナジー 5 億ドルは売上の 6〜7% にあたり、営業利益率を 6 ポイント押し上げる。スカイワークスは 2016〜18 年に GAAP の営業利益率 34% 前後を出した実績がある。利益率が目標の 30% に戻れば、10 年後の時価総額は今の 2 倍を超える。
慎重な見方
アップルは内製に動く会社で、モデム(C1・C2)、Wi-Fi・Bluetooth(N1)を作り、ブロードコムとの 2 社目の席も 2025 年に増やした(スカイワークスの RF 搭載額は 20〜25% 減)。RF フロントエンドは売上の 5 割強(モバイルの約 8 割)がアップルなので、PA・フィルターの内製が広がれば合併会社の中身が崩れる。直接の報道は無くても、アップルが過去に外部の席を内製に変えた前例は多い。
メモリ高騰でスマホ出荷は 2026 年に 16.7% 減(IDC)、アジアの Android 向けは 2 四半期連続で減る。ムラタがスマホ向けモジュールで赤字になり SAW ののれんを減損したように、業界全体で値下げ圧力が強く、搭載額が増えても価格が負ける。合併後も GAAP の営業利益率は 2026 年 7-9 月期で 5% にすぎない。
合併の統合は難しく、シナジー 5 億ドルの達成は 2〜3 年先。買収無形の償却で GAAP の純利益は当面 1 桁億ドルしか出ず、純負債は約 28 億ドルで、社債の利払いは年 2 億ドル前後。配当もやめた。株価は 2008 年に −58%、2022 年に −48% の谷があり、アップル向けの席が 1 つ崩れれば同じ規模の下落がありうる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方(アップルの自社モデム化が追い風・幅広い市場の成長・シナジー)は実績に裏づけがあるが、強い反証が 2 つある。アップルが iPhone 17 で既にブロードコムに席を渡した事実、内製がモデム・Wi-Fi から続く傾向である。このため、10 年は悲観とやや悲観を合わせて 46%(同じ領域は 32〜38%)と慎重な見方に厚く寄せた。中立でも利益率は経営陣の目標の下限までしか戻らず、モバイルは横ばい圏に置いた。資本コスト 9.5% と利益ベースの正当化 PER(堀は弱い。10 年後の中立は 1÷k の床 10.5 倍)を当てはめると、利益の回復が大きくても、本質価値は今の時価総額の 83%(やや割高)にとどまる。結論は、利益率の回復の実現と、倍率の低さの両方で決まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 96.32 ドル226 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 42.90 ドル101 億ドル)。 今の値に割り戻すと 66.12 ドル155 億ドル、今との差 −19.8%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 245.62 ドル577 億ドル | 88.00 ドル207 億ドル | +304.9% | +15.0% | 20.02 ドル47 億ドル |
| やや楽観 | 16% | 173.19 ドル407 億ドル | 68.30 ドル161 億ドル | +193.1% | +11.4% | 38.64 ドル91 億ドル |
| 中立 | 32% | 113.49 ドル267 億ドル | 52.68 ドル124 億ドル | +101.7% | +7.3% | 53.17 ドル125 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 54.47 ドル128 億ドル | 27.40 ドル64 億ドル | −0.6% | −0.1% | 21.29 ドル50 億ドル |
| 悲観 | 20% | 16.98 ドル40 億ドル | 13.53 ドル32 億ドル | −63.0% | −9.5% | 6.10 ドル14 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 96.32 ドル226 億ドル | 42.90 ドル101 億ドル | +69.0% | +5.4% | 139.22 ドル327 億ドル |
今の株価時価総額 82.39 ドル194 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% アップルが外部調達を保ち、幅広い市場が第 2 の柱に育って、合併の目標を超える 利益 48 億ドル · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 245.62 ドル577 億ドル
2035 年度のスマホ出荷は 12.8 億台、搭載額は 6G 準備・衛星直接通信・上り回線の増加で 2025 年の 1.25 倍の 16.0 米ドル、シェアは 36%。アップルはフロントエンドを外部調達のまま保ち、ブロードコムとの 2 社目の席の割合も固定される。幅広い市場は AI データセンター(電源・光・タイミング)と防衛(クォルボのガリウムナイトライドの高出力部品)が 2 桁成長を長く保ち、市場は 2025 年の約 2.2 倍の実質 1,000 億ドル、シェア 6.5%、価格は 1.41 倍(物価並み)で 91.6 億ドル。売上は合計 187.5 億ドル、シナジーは満額(年 5 億ドル)、非 GAAP の営業利益率は 36%(スカイワークスが 2016〜18 年に GAAP で出した 34% 前後を上回る)。この筋書きでも、競合のブロードコム(全社の非 GAAP 営業利益率 68%)には及ばないが、合併会社は第 2 の柱を持つ。
- モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール):数量 73.7(スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル)× 価格 130(RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115))→ 売上 96 億ドル・営業利益 25 億ドル。出荷 12.8 億台 × 搭載額 16.0 米ドル(実質)× シェア 36.0%・価格 130・営業利益率(償却前・株式報酬後)26.0%
- 幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業):数量 65.0(対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130))→ 売上 92 億ドル・営業利益 29 億ドル。対象市場 実質 1000 億ドル × シェア 6.5%・価格 141・営業利益率(償却前・株式報酬後)32.0%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 26.5%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(ROE 26.5% − k 9.5%)= 15.2%(moat=弱い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.4 倍。上限の 9 割の 12.0 倍に置いた:クォルボとの統合の相乗効果が出てアップル以外が伸びる上振れでも、顧客が集中し価格競争があるので控える。 時価総額 = 純利益 48.1 × 12.0 倍 = 577 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年間アップルが外部調達を保ち、幅広い市場も育つという両方が必要。アップルが過去に内製へ移した前例(モデム・Wi-Fi・ブロードバンド)が多いので 6% に絞った。
やや楽観 16% 幅広い市場が伸びてモバイルの減りを埋め、利益率は目標の中ほどに届く 利益 36 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 173.19 ドル407 億ドル
スマホ出荷は 12.4 億台、搭載額は実質 15.2 米ドル、シェア 34% で、モバイルは物価に負ける価格(1.22 倍)の分だけ今の 51 億ドルから 78 億ドルまでしか伸びない。幅広い市場は市場が実質 930 億ドル、シェア 6.2%、価格 1.35 倍で 77.8 億ドルとなり、モバイルと同じ大きさに並ぶ。売上は合計 156.0 億ドル、シナジーは満額、非 GAAP の営業利益率は 33% 前後で経営陣の目標(30〜35%)の中ほど。アップルはモデムとトランシーバーは内製するが、フロントエンドは外部調達を続ける。クアルコムは Android の高級機で、ブロードコムはアップルで、それぞれ今の位置を保つ。
- モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール):数量 64.1(スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル)× 価格 122(RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115))→ 売上 78 億ドル・営業利益 18 億ドル。出荷 12.4 億台 × 搭載額 15.2 米ドル(実質)× シェア 34.0%・価格 122・営業利益率(償却前・株式報酬後)22.5%
- 幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業):数量 57.7(対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア)× 価格 135(製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130))→ 売上 78 億ドル・営業利益 22 億ドル。対象市場 実質 930 億ドル × シェア 6.2%・価格 135・営業利益率(償却前・株式報酬後)28.5%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 22.8%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(ROE 22.8% − k 9.5%)= 13.9%(moat=弱い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.0 倍。上限の 8.8 割の 11.4 倍に置いた:強気寄りだが、顧客の集中と価格競争が残るので控える。 時価総額 = 純利益 35.7 × 11.4 倍 = 407 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:幅広い市場が AI データセンター・防衛で伸び続ける筋は強いが、モバイルの減りを埋める速さは読みにくく、16% とした。
中立 32% モバイルは横ばい圏、幅広い市場が主役になり、利益率は目標の下限に着く 利益 25 億ドル · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 113.49 ドル267 億ドル
2035 年度のスマホ出荷は 12.0 億台(人口と買い替えの周期は伸びず 2025 年の 12.5 億台をやや下回る)、搭載額は 5G-Advanced・衛星・上り回線の追加で実質 14.4 米ドル(2025 年の約 1.12 倍)、シェアは 31%(2028 年度の 33% から、アップルの内製化の一部とブロードコム・中国勢に削られて下がる)。価格は 1.15 倍(物価の 1.41 倍に負ける。ムラタ・ブロードコムとの競り合いとアップルの値下げ要求のため)。モバイルは 61.6 億ドルで 2025 年から年 +1.9%。幅広い市場は市場が実質 865 億ドル(年 +6.5%)、シェア 5.9%、価格 1.30 倍で 66.3 億ドル(年 +9.8%)。売上は合計 127.9 億ドルでモバイルと幅広い市場がほぼ半々になり、アップルの比率は売上の 55% から 3 割台へ下がる。シナジーは年 4.5 億ドル、GAAP の営業利益率 23.7%(償却と株式報酬を戻した非 GAAP で 30%、経営陣の目標 30〜35% の下限)。
- モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール):数量 53.6(スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル)× 価格 115(RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115))→ 売上 62 億ドル・営業利益 12 億ドル。出荷 12.0 億台 × 搭載額 14.4 米ドル(実質)× シェア 31.0%・価格 115・営業利益率(償却前・株式報酬後)19.0%
- 幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業):数量 51.0(対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130))→ 売上 66 億ドル・営業利益 17 億ドル。対象市場 実質 865 億ドル × シェア 5.9%・価格 130・営業利益率(償却前・株式報酬後)25.0%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 18.7%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(ROE 18.7% − k 9.5%)= 12.6%(moat=弱い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.4 倍。上限の 8.5 割の 10.5 倍に置いた:統合後も顧客の集中(アップル・サムスン)と価格競争が続く領域で、堀は弱い。1÷k の床を下回らない範囲に置く。 時価総額 = 純利益 25.4 × 10.5 倍 = 267 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:モバイルは横ばい圏、幅広い市場が主役に育つ筋。経営陣の「中〜高い 1 桁成長」よりモバイルを低く置いて、最大の 32%。
やや悲観 26% アップルが一部のフロントエンドを内製し、価格もシェアも下がる 利益 13 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 54.47 ドル128 億ドル
アップルが一部の機種でパワーアンプやフィルターを自社設計にし、ブロードコム・ムラタ・中国勢が残りの席を取って、モバイルのシェアは 26%(今の 32% から −6 ポイント)、価格は 1.05 倍にとどまり、モバイルは 43.7 億ドル(今より 14% 減)。幅広い市場は成長するが、市場は実質 780 億ドル、シェア 5.2%、価格 1.20 倍で 48.7 億ドルと基本より 27% 小さい(民生 IoT の価格崩れ、データセンターの競争激化)。売上は合計 92.4 億ドル、GAAP の営業利益率 17.2%。シナジーは目標の 7 割しか出ず、合併のための社債と買収の負担が残り、純負債が 10 年後も残る。事業の優良さは薄れるが、事業が壊れる筋書きではない。
- モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール):数量 41.6(スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル)× 価格 105(RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115))→ 売上 44 億ドル・営業利益 6 億ドル。出荷 11.6 億台 × 搭載額 13.8 米ドル(実質)× シェア 26.0%・価格 105・営業利益率(償却前・株式報酬後)14.0%
- 幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業):数量 40.6(対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア)× 価格 120(製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130))→ 売上 49 億ドル・営業利益 9 億ドル。対象市場 実質 780 億ドル × シェア 5.2%・価格 120・営業利益率(償却前・株式報酬後)19.0%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 12.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(ROE 12.0% − k 9.5%)= 10.3%(moat=弱い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.1 倍。上限の 9 割の 10.0 倍に置いた:アップルの内製化・中国勢の値下げで利益の質が落ちる。ROE が k に近く上限がほぼ 1÷k に寄る。 時価総額 = 純利益 12.8 × 10.0 倍 = 128 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:アップルがフロントエンドの一部を内製する・ブロードコムなどが席を取るという筋は、過去の動き(iPhone 17)から現実味が高く、26% を置く。
悲観 20% 構造的な敗北:アップルがフロントエンドまで内製し、事業は半分の大きさになる 利益 4 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 16.98 ドル40 億ドル
アップルがモデム・トランシーバー・N1 に続いてフロントエンドも自社設計に移し、アップル向け(今のモバイルの約 8 割)の半分超を失って、モバイルのシェアは 18%、売上は 24.1 億ドルに半減する。残りは Android 向けで、中国勢との価格競争が続き価格は 0.95 倍。幅広い市場も AI の山が崩れ、市場は実質 650 億ドル、シェア 4.2% で 28.7 億ドル。売上は合計 52.7 億ドルと今の 7 割の大きさ。固定費を削り(シナジーは目標の 6 割にあたる年 3 億ドル、工場の統合)、GAAP の営業利益率は 11.2% まで戻す。堀は「アップルの席」に宿っていたので、それを失えば優良ではなくなる。のれん・買収無形(約 100 億ドル)の大きな減損が出ても現金は減らないが、帳簿の自己資本は縮む。社債の返済を優先し、自社株買いは止まる。
- モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール):数量 25.3(スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル)× 価格 95(RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115))→ 売上 24 億ドル・営業利益 2 億ドル。出荷 11.0 億台 × 搭載額 12.8 米ドル(実質)× シェア 18.0%・価格 95・営業利益率(償却前・株式報酬後)10.0%
- 幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業):数量 27.3(対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア)× 価格 105(製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130))→ 売上 29 億ドル・営業利益 4 億ドル。対象市場 実質 650 億ドル × シェア 4.2%・価格 105・営業利益率(償却前・株式報酬後)14.0%
倍率:事業の ROE 5.0% が k 9.5% 以下なので正当化 PER は 1÷k = 10.5 倍が上限(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満)。上限の 9 割の 9.5 倍に置いた:ROE が k 以下で、純利益 ÷ k を超えない範囲に置く。アップルがフロントエンドまで内製し、事業は半分の大きさになる筋。 時価総額 = 純利益 4.2 × 9.5 倍 = 40 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:アップルは 10 年で、モデム(C1・C2)、Wi-Fi・Bluetooth(N1)と内製を広げてきた。フロントエンドの内製は直接の報道が無いが、可能性は低くないと見て、同じ領域の標準(12〜14%)より厚い 20% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
モバイル(スマホ向けの高周波部品:パワーアンプ・フィルター・スイッチ・フロントエンド・モジュール)
スマホの電波の送受信に使うパワーアンプ・フィルター・スイッチを束ねたモジュール。スカイワークスのモバイルとクォルボの先進セルラー(ACG)を合わせた事業で、最大の顧客はアップル。
| 数量スマホ出荷(億台)× 1 台あたり RF 搭載額(2025 年の値段で測った実質の米ドル)× 合併会社のシェア = 実質の億ドル | 価格RF 部品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141 だが、値下げ圧力で中立は 3 年 103・10 年 115) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 51.0 | 100 | 51 | 8 |
| 10 年後 中立 | 53.6 | 115 | 62 | 12 |
取り方:合併前の 2 社の合算(2025 年度)。合併の発表資料は、2025 年 6 月までの 12 か月でモバイル 51 億ドル・幅広い市場 26 億ドルと示した。数量は、2025 年のスマホ出荷 約 12.5 億台 × 1 台あたり RF 搭載額 12.8 米ドル(Yole のモバイル RF フロントエンド市場 154 億ドル(2024 年)に、モバイル売上のうちフロントエンド以外の約 1 割を合わせて 2025 年の対象を約 160 億ドルと置いた推定)× 合併会社のシェア 31.9%。Yole の 2025 年の順位はクアルコム 21%・ブロードコム 18%・上位 5 社で 70% 超で、スカイワークスとクォルボを足した見かけのシェアはこれより高く出る(定義の差)。アップル向けはモバイルの約 8 割(スカイワークスの最大顧客が売上の 5〜7 割、クォルボのアップルが 47〜50%。推定)。営業利益は株式報酬後・買収の償却前の利益率 15% と推定(スカイワークスの非 GAAP 営業利益率 19%(2026 年度 7-9 月期)から株式報酬の約 4 ポイントを引いた値)。
幅広い市場(Wi-Fi・IoT・車載・AI データセンター・防衛・産業)
Wi-Fi 7 のフロントエンド、AI データセンター向けの電源・光・タイミング、車載、防衛・航空宇宙の高出力部品、クォルボの高性能アナログ(HPA)とコネクティビティ・センサー(CSG)。
| 数量対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 合併会社のシェア | 価格製品の価格の水準(2025 年度=100。物価並みなら 3 年 111・10 年 141。Wi-Fi・民生 IoT の値下げ圧力があるので中立は 3 年 108・10 年 130) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 26.0 | 100 | 26 | 5 |
| 10 年後 中立 | 51.0 | 130 | 66 | 17 |
取り方:合併の発表資料の幅広い市場 26 億ドル(2025 年 6 月までの 12 か月)。対象市場は、Wi-Fi・Bluetooth・UWB のフロントエンド、防衛・航空宇宙の RF、データセンター向けのアナログ・電源・光、車載・産業の無線と電源、IoT を合わせて約 460 億ドルと推定(出典のある数字は無く、担当の推定)。シェアは約 5.65%。2026 年度 7-9 月期はスカイワークスの幅広い市場が +8%(Wi-Fi・データセンター・車載の合計が +15%)、クォルボの高性能アナログ +50%、コネクティビティ −7.5%(合算で約 +15%)。営業利益は株式報酬後・買収の償却前の利益率 20% と推定。
リスクと懸念
アップルへの集中と内製化
合併会社の売上の 5 割強がアップル(スカイワークスの最大顧客 57%、クォルボのアップル 50%)で、モバイルの約 8 割。アップルが PA・フィルターを自社設計に移せば、10 年後の売上は半分になる。アップルはモデムと Wi-Fi・Bluetooth を内製してきた。直接の報道は今回の検索では見つからない。
ブロードコムへの席の流出(2 社目の席)
iPhone 17 の DRX ソケットは 2 社に分けられ、スカイワークスの RF 搭載額は 20〜25% 減った(TD カウエンは約 6 億ドルの売上減と試算)。次の機種でも同じことが続くと、搭載額は増えても合併会社のシェアが下がる。ブロードコムは AI 半導体の収益(5-7 月期 167 億ドル)で、アップル向けに価格で攻める余力が大きい。
メモリ危機によるスマホ出荷の減少
IDC は 2026 年の出荷を 12.9% 減から 16.7% 減(約 10.4 億台)へ引き下げ、メモリ高騰は 2027 年なかばまで続くと見る。アジアの Android 向けは 2 四半期連続で減る見通し。出荷の戻りが遅れると、10 年後(2035 年度)の売上も中立(128 億ドル)より小さくなる。
統合の失敗・シナジーの遅れと負債
年 5 億ドルのシナジーは売上の 6〜7%。工場の統合は遅れる傾向にあり、24〜36 か月の目標の達成は読みにくい。成立時の純負債は約 28 億ドル、新規の社債は利率 5.0〜6.25% で、景気が悪化する局面では利払い(年 約 2 億ドル)が利益を圧迫する。
AI データセンター・防衛への依存と供給制約
幅広い市場の成長の中心は AI データセンター(年 50% 超)と防衛で、AI 設備投資が止まれば真っ先に崩れる。民生 IoT は弱く、2026 年 10-12 月期の幅広い市場は +5% にとどまる見通し。供給制約でデータセンターの伸びが抑えられている面もある。
買収会計の重さと減損
成立で、のれんと買収の無形資産が約 118 億ドル(推定)、自己資本の 9 割になった。償却は年 7〜8 億ドルで GAAP の純利益を押し下げる。10 年後に構造的に負ければ大きな減損が出る(ムラタも SAW 事業で 438 億円の特別費用を出した)。
値下げ圧力と中国勢
ムラタのスマホ向けモジュールが赤字で、中国勢(フロントエンドの国産化)が低価格帯を取る。Yole は 2027 年まで市場が横ばいで、搭載額が増えても価格が下がると見る。RF 部品の価格は物価(3.5%)に負けるのが基本になる。
今後の分かれ目
- 次の iPhone(2027 年)でも、ブロードコムなど 2 社目への発注が増える
- 10 年の、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。モバイルのシェア 33% の置き方を下げる。
- アップルが自社設計のパワーアンプやフィルターを発表する、あるいは報じられる
- 10 年の悲観の確率を大きく引き上げる。アップル向け(モバイルの約 8 割)の席が構造的に失われる。
- 2026 年 11 月 3 日の決算で、合併後の通期見通し(売上・粗利益率)が上振れ、シナジーの進みが目標を上回る
- 中立の GAAP 営業利益率(10 年後 24%)の置き方を上げる。楽観寄りへ確率を移す。
- スマホ出荷が 2027 年に戻らず、メモリ価格が下がらない
- 10 年後のモバイルの出荷の置き方を下げ、10 年の悲観寄りに確率を寄せる。
- AI データセンター向けの売上が前年比 50% 超を保ち、受注残が積み上がる
- 幅広い市場の市場とシェアの置き方を上げる。幅広い市場がモバイルを上回る時期が早まる。
- 米国の大手 Android 事業者との設計獲得(約 10 億ドル規模)が計画より早く出荷される
- モバイルのシェアの置き方を上げ、アップル集中の度合いが下がる分、悲観の確率を少し下げる。
見ておくもの
- アップル向けの売上の割合(四半期ごと)と、次の iPhone の分解でのスカイワークス・クォルボ・ブロードコムの席の数
- 合併後の粗利益率(目標 50〜55%)と営業利益率(目標 30〜35%、非 GAAP)、シナジーの進み具合
- スマホ出荷(IDC・カナリス)とメモリ価格、アジアの Android 向けの売上
- 幅広い市場の成長率(AI データセンター・Wi-Fi 7・防衛)と受注残
- 純負債と社債の返済、自社株買いの実績、買収無形の償却と減損
- アップルの内製チップ(C2・N1 以降)の搭載範囲の報道
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) で出した。k 9.5%(基本 8.0% + quality 1.5%)、g 4.0%(スマホ中心で structural は使わない)、ROE は帳簿(中立 19%)、堀は弱い(アップルへの集中と価格競争)。上限 12.4 倍の 8.5 割が 1÷k の 10.5 倍とほぼ同じなので、中立は 1÷k の床に置いた。10 年の悲観は ROE が k 以下なので 1÷k の 9 割。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。利益率が目標の下限へ戻る前提は変えていない。総合は -17%(やや割高)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β 1.35 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%(β は使わない)。スマホの循環(+0.5)、アップルに価格を握られる値決め力の弱さ(+0.5)、内製化で席を失いうる寿命の不安(+0.5)。純負債は成立時で時価総額の約 15% なので借金の上乗せは 0、存続の不安も無く上乗せは 0。アップルへの集中・内製化・統合の失敗は、k に重ねず確率(悲観を厚く)と悲観の深さで表した。
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読んだ資料
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- スカイワークスが全ての規制承認を取得(2026-09-30)
- クォルボ 2026 年 3 月期 決算(SEC 8-K)
- クォルボ 2027 年度 4-6 月期 10-Q
- スカイワークス 2025 年度 年次報告書(10-K)
- iPhone 17 での RF 搭載額の減少(モーニングスター)
- iPhone 18 Pro Max の分解(TechInsights)
- モバイル RF フロントエンド市場(Yole 2025)
- IDC スマホ出荷 2026 年 16.7% 減
- クアルコム 2026 年度 4-6 月期 決算説明会
- 村田製作所 2026 年 3 月期 決算短信
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- スカイワークスのクォルボとの統合の完了(Capital.com・2026-10-05)