結論
モノリシック・パワー・システムズ(Monolithic Power Systems・MPS)は、工場を持たず(ファブレス)、電源 IC とパワーモジュールを AI サーバー・ストレージ・PC・車載・通信・産業に売る電源専業の半導体会社である。2025 年は売上 27.9 億ドル(企業データ 7.0・ストレージ・コンピューティング 7.3・車載 5.9・通信 3.1・産業と消費 4.5)、GAAP の営業利益率 26.1%、純利益 6.2 億ドル。2026 年 4-6 月期は売上 9.8 億ドル(前年比 +48%)、営業利益率 31%、企業データは前年の約 2.6 倍で、会社は 2026 年の企業データの伸びを +130% 以上に上げた。2026 年は売上 約 42 億ドル、純利益 約 11.5 億ドルになる見込み。
売上は「市場(実質)× シェア × 製品の価格の水準(物価並みで 10 年 1.41 倍)」で 5 つの市場に分けて積んだ。10 年後(2035 年)の中立は売上 119 億ドル、純利益 29 億ドルとみる。AI の設備投資が止まった時の落ち込みは、倍率でなく悲観の確率(10 年 16%)とひどさで表した。
バリュー投資の観点では、事業の質は高い(ファブレスで資本が軽く、無借金、設計が長く使われる)が、今の時価総額は GAAP の純利益の 94 倍、2026 年の見込みでも約 52 倍で、AI の電力需要が長く続き、競合の 800V 電源にも負けない未来を先に払っている。資本コストは 8.5%(基本 8.0% + quality 0.5%)。利益ベースの正当化 PER は、のれんの無い帳簿の ROE 19%・RONIC 14%・g 4.5% で 17 倍ほどになる。10 年後の中立にはその 8 割の 13.5 倍を置いた。確率で加重した本質価値は今の時価総額の 38% で、差は 62%(割高)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。電子機器が電気で動く限り電源は要り、MPS の設計の継続性と研究開発の効率は 10 年後も残る可能性が高い。AI の電力需要が構造的に大きいことも、事業の存在を支える。堀は「保たれる、少し広がる」が、AI 向けの電源は 800V への移行で競合が増えるため、広がるとは言い切れない。
オーナー利益(株主のものになる利益)は、GAAP の純利益から株式報酬分を引いたもの、すなわち株式報酬を費用にした純利益そのものと見る。ファブレスで再投資が小さいので、純利益の大半を株主に返せる事業の形をしている。一方、AI の設備投資に依存した利益は山があれば谷もあり、2026 年の純利益 11.5 億ドルを恒常の利益と見ない。2022〜25 年の営業利益率(29.8%→24.4%→26.1%)が示すとおり、景気と在庫で動く。
経営は創業者が率い、無借金・資本が軽い・研究開発に投資する、という点で資本配分は堅実。ただし株式報酬が重く、自社株買いが割高な株価で行われると価値を壊す。安全域は、今の時価総額が GAAP の PER で約 94 倍(2026 年の見込みで約 52 倍)と、利益ベースの正当化 PER(17 倍ほど)の 5 倍を超えるため、薄い。事業は優良だが、今の値段で買うと見込み違いの余地がない。AI 向けの利益には倍率を掛けず、10 年の筋書きと悲観の確率でその山を織り込んだ。
何で稼ぐ会社か
売上の中心は、プロセッサ・メモリ・基板に載る電源 IC(直流を電圧の違う直流に変える)と、電源を 1 個にまとめたパワーモジュールである。需要先は 6 つの市場に分かれ、2025 年はストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード)が 26%、企業データ(AI サーバー・データセンター)が 25%、車載が 21%、通信が 11%、消費が 9%、産業が 7%。2023〜24 年は企業データが最大(2024 年は 32%)だったが、2025 年は新しい世代への切り替えで前年を 2% 下回り、2026 年に入って急回復している(4-6 月期は 3.8 億ドルで前年比 約 2.6 倍)。
AI アクセラレータは 1 台に何十もの電源が要り、電流が大きいほど電源 IC とパワーステージの価値が増える。MPS は基板上の降圧(垂直給電を含む)の電源を持ち、データセンターのラックが 800V 直流に移る流れ(NVIDIA が主導し 2027 年の Vera Rubin から本格化)に合わせて 800V からの降圧電源のサンプルも出している。車載は電池管理・コックピット・ADAS・48V 系の電源で、2025 年は +43% だったが 2026 年 4-6 月期は +8% と落ち着いた。
製造は TSMC などの外部ファウンドリに任せ、自社の強みは独自のプロセスとパッケージ(モジュール化)の設計にある。生産能力は 40 億ドル超を確保済みで、設備投資は軽い。2026 年 4-6 月期の GAAP 粗利益率は 55.2%、営業費用は売上の約 24%(研究開発 12%・販売費と管理費 12%)で、営業利益率は 31%。創業者のマイケル・シン(Michael Hsing)が最高経営責任者として会社を率いる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。1 つ目は設計の継続性で、電源は基板の設計に組み込まれると世代をまたいで使われやすく、顧客は性能と信頼性で選ぶ。2 つ目は専用のプロセス・パッケージ技術と製品の幅(多数の品種)で、競合が同じ電流密度と効率を出すのに時間がかかる。3 つ目はファブレスで資本が軽いこと。現金等 14.1 億ドルで有利子負債は 0、自己資本比率は 84%、事業に使う資本(現金を除く自己資本)は約 25 億ドルと小さく、2026 年 4-6 月期の営業利益の年換算 12 億ドルに対し税引き後の資本利益率は約 40% に達する。
弱い所もある。第一に顧客と製品が AI アクセラレータ 1 つの世代に偏っており、企業データは 2024 年から 2025 年に前年比 −2% を経験した(要因は新しい世代への切り替え時期のずれと見るが、会社は理由を細かく開示していない)。第二に、800V・垂直給電という新しい電源の設計では TI(NVIDIA と協業を発表)、インフィニオン、ルネサス、ST、ナビタスが同じ顧客を狙い、これまでの優位が崩れうる。第三に株式報酬が売上の 8.7%(2025 年 2.4 億ドル)と大きく、調整後 EPS(4-6 月期)は GAAP の 1 株利益を 25% ほど高く見せる。最後に、2024 年の純利益 17.9 億ドルは外国子会社への税の優遇の認識(税の益 12.1 億ドル)で膨らんだ一時的な益であり、GAAP の収益力として使わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アナログ・電源の世界の市場は WSTS で 2026 年に +10% 程度と、業界全体は緩やかな回復にとどまる。その中で MPS の 4-6 月期は +48% と市場を大きく上回り、企業データ(+164%)と通信(+78%)の 2 つの AI 向けが全体を引き上げている。ストレージ・コンピューティング(+2%)・車載(+8%)・消費(−5%)は、2026 年のメモリ高騰でスマートフォン・PC の出荷が落ち込み(IDC は PC −9%・スマートフォン −12.9%)、鈍い。
AI の設備投資は、大手 5 社の 2026 年が 7,300〜8,050 億ドル、2027 年は 1 兆ドル前後の見方(業界ノート)。この需要が半導体全体を同時に押し上げているため、止まる時も同じ向きに崩れる。電源は、アクセラレータの電力が世代ごとに増えるため、1 ラックに使う電源の価値が急に増えている。ただし 800V 直流への移行(2027 年)は、基板上の降圧という MPS の領域を残しつつ、ラック内の変換を新しい競合に開く。
競合の形は、TI とインフィニオンが規模と価格、ルネサスとナビタスが GaN・SiC、ST と ADI が供給網、MPS が電流密度とモジュール化で対抗する。中国勢は成熟ノードの電源で価格を押し下げる。規制は輸出管理で、MPS は中国向けの出荷が売上に占める割合が大きく(出荷先ベース。割合は 10-K で確かめる)、米中の摩擦が効く。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2026 年 3 月から四半期配当を 28% 引き上げ、年間の配当総額は約 4 億ドル(2026 年の純利益の約 3 分の 1)。自社株買いの枠は 2026 年 7 月に 5 億ドル追加して計 10 億ドルだが、2025 年の実績は小さく、株式報酬で増える株を打ち消す程度にとどまる。現金等は 2025 年末 12.6 億ドルから 2026 年 6 月末 14.1 億ドルへ増えている。
買収は小さな技術の取り込みが中心で、のれんは小さい。大型の M&A は独占禁止の制約と、自社開発の路線から可能性が低い。創業者が率いる会社として、資本配分は「研究開発を落とさず、余った現金を配当と自社株買いに回す」という素朴な形。株価が高い局面で自社株買いを増やすと、買う価格が割高になる点に注意する。
株式報酬(2025 年 2.4 億ドル・売上の 8.7%)は費用として純利益から引き、正味の還元(payout)は配当 + 自社株買い − 株式報酬で増えた株の分で見た。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI の電力は始まったばかりである。2026 年 4-6 月期の企業データは前期比 +45%・前年比 約 2.6 倍で、会社は 2026 年の伸びの下限を +85% から +130% に引き上げた。アクセラレータの電力が世代ごとに増え、基板上の電源の価値は電流に比例して増える。800V への移行で電源の構成が変わっても、基板上の降圧は残り、MPS はそのモジュールで先頭を走る。2025 年の企業データ −2% は、新しい世代の電源への切り替えの谷にすぎず、2026 年に取り返した。ファブレスで資本が軽く、生産能力は 40 億ドル超を確保済み、無借金で現金が増え、価格を決める力も保たれる。利益率は山の 33% を超え、10 年後の純利益は大きく伸びうる。車載の 48V・ゾーン制御、通信の 1.6T 光モジュールという次の伸びも控え、AI 向けが一巡しても売上の土台は広がっている。電源は一度設計に入ると世代をまたいで使われやすく、新規参入が追いつくまでに時間がかかる。
慎重な見方
今の時価総額は、山の利益に高い倍率を掛けている。GAAP の PER は 94 倍で、2026 年の見込みでも約 52 倍。この利益の半分以上は AI の設備投資が支える企業データと通信に依存する。企業データは 2024 年の 32% から 2025 年に 25% へ下がり、2026 年に戻ったばかりで、山と谷の幅が大きい。TI が NVIDIA と 800V 電源を組む・インフィニオン・ルネサス・ST・ナビタスが同じ顧客を狙うなど、競合の数が増えるため、AI 向けのシェアと粗利益率が守れるとは限らない。株式報酬が売上の 8.7% と重く、調整後 EPS は GAAP の利益を 25% ほど高く見せる。ストレージ・車載・消費は 2026 年に 0〜8% の伸びでしかなく、AI 以外の下地は強くない。会社が自ら 800V の売上の読みを不確実と述べている点も、山の高さの読みづらさを表している。2022 年は株価が −38%、2008 年は −62% で、倍率が高い分、下げも深い。
どちらに重みを置いたか
利益ベースの正当化 PER(10 年後の中立で上限 16.9 倍の 8 割=13.5 倍、k = 8.5%)は、今の 94 倍を大きく下回る。AI 電源の数量と価格の見通しは変えていないが、帳簿の ROE が 19% と、のれん込みの会社ほど高くないので上限が低く出る。確率で加重した本質価値は今の 38%、結論は割高になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 770.25 ドル372 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 178.77 ドル86 億ドル)。 今の値に割り戻すと 459.56 ドル222 億ドル、今との差 −60.7%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,781 ドル860 億ドル | 285.66 ドル138 億ドル | +76.9% | +5.9% | 165.30 ドル80 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 1,247 ドル602 億ドル | 238.05 ドル115 億ドル | +27.2% | +2.4% | 297.00 ドル143 億ドル |
| 中立 | 34% | 813.31 ドル393 億ドル | 198.72 ドル96 億ドル | −13.3% | −1.4% | 344.09 ドル166 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 389.16 ドル188 億ドル | 132.48 ドル64 億ドル | −55.3% | −7.7% | 114.76 ドル55 億ドル |
| 悲観 | 16% | 101.64 ドル49 億ドル | 72.45 ドル35 億ドル | −85.1% | −17.3% | 27.85 ドル13 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 770.25 ドル372 億ドル | 178.77 ドル86 億ドル | −18.7% | −2.1% | 949.01 ドル458 億ドル |
今の株価時価総額 1,168 ドル564 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% AI の電力が 10 年続き、電源の主力にまで広がる 利益 54 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 1,781 ドル860 億ドル
データセンターの電力が 2030 年代も増え、企業データの対象市場は実質 380 億ドル(2025 年の 9.5 倍)。MPS はシェア 19%(基板上の降圧と 800V の降圧の両方で採用)、価格の水準は物価並みの 141。通信は 1.6T・3.2T の光モジュールで市場 実質 160 億ドルでシェア 10.5%、車載は 48V とゾーン制御で市場 実質 180 億ドルでシェア 8%。2035 年の売上は約 180 億ドル(企業データ 102・ストレージ 22・車載 20・通信 24・産業・消費 11)、営業利益率 36%、営業利益 約 65 億ドル、純利益 約 54 億ドル。 一度採用された電源は世代をまたいで使われ、製品を増やす研究開発の効率が価格を決める力を保つ。競合が負けるわけではなく、AI 向けの電源で MPS の伸びが上回る筋。2035 年の成長は年 10% 台なので、倍率は利益ベースの正当化 PER の 9 割で置く。
- 企業データ(AI サーバー・データセンターの電源):数量 72.2(AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 102 億ドル・営業利益 41 億ドル。市場 実質 380 億ドル × シェア 19.0%・価格 141・営業利益率 40%
- ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード):数量 15.9(ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 110 億ドル × シェア 14.5%・価格 141・営業利益率 30%
- 車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V):数量 14.4(車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 20 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 実質 180 億ドル × シェア 8.0%・価格 141・営業利益率 30%
- 通信(スイッチ・光モジュール・基地局):数量 16.8(通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 24 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 実質 160 億ドル × シェア 10.5%・価格 141・営業利益率 38%
- 産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル):数量 8.0(産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 11 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 190 億ドル × シェア 4.2%・価格 141・営業利益率 26%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 22.3%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 22.3% − k 8.5%)= 15.4%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 9 割の 15.9 倍に置いた:AI の電力需要が続く上振れでも、堀は普通で電源は入れ替えられうるので控える。 時価総額 = 純利益 54.1 × 15.9 倍 = 860 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI の電力が 2035 年も実質で年 6〜7% 伸び、800V・垂直給電でも MPS が基板上の電源の主力にとどまる筋。価格を決める力が保たれる条件が重なるので 8% に留める。
やや楽観 20% AI 向けが高い水準を保ち、車載・通信が分厚くなる 利益 41 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 1,247 ドル602 億ドル
企業データの対象市場は実質 325 億ドル(2025 年の 8 倍)でシェア 18%、価格の水準 141。通信は市場 実質 140 億ドルでシェア 9.5%、ストレージは市場 実質 102 億ドルでシェア 13.7%、車載は市場 実質 168 億ドルでシェア 7.5%。2035 年の売上は約 149 億ドル(企業データ 82・ストレージ 20・車載 18・通信 19・産業・消費 10)、営業利益率 33%、営業利益 約 49 億ドル、純利益 約 41 億ドル。 競合の 800V 電源が追いついても、MPS は設計の継続性で AI 向けのシェアを 18% で守る。
- 企業データ(AI サーバー・データセンターの電源):数量 58.5(AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 83 億ドル・営業利益 30 億ドル。市場 実質 325 億ドル × シェア 18.0%・価格 141・営業利益率 36%
- ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード):数量 14.0(ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 20 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 実質 102 億ドル × シェア 13.7%・価格 141・営業利益率 28%
- 車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V):数量 12.6(車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 18 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 168 億ドル × シェア 7.5%・価格 141・営業利益率 28%
- 通信(スイッチ・光モジュール・基地局):数量 13.3(通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 19 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 140 億ドル × シェア 9.5%・価格 141・営業利益率 35%
- 産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル):数量 7.2(産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 10 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 180 億ドル × シェア 4.0%・価格 141・営業利益率 25%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 21.0% − k 8.5%)= 14.8%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.4 倍。上限の 8.5 割の 14.8 倍に置いた:強気寄りだが、800V で競合が追いつく余地を見て控える。 時価総額 = 純利益 40.7 × 14.8 倍 = 602 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI 向けが高い水準で長く続き、車載(48V・ゾーン)と通信(1.6T 光)の伸びも加わる。業界ノートの楽観(市場 10 年で約 2 倍)を、AI の電力が加えた形。20% を置く。
中立 34% 市場は伸びるが競合が価格を削り、利益率は今より下で安定する 利益 29 億ドル · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 813.31 ドル393 億ドル
企業データは AI の設備投資が 2030 年ごろまで増えたあと実質 3% 台に落ち、対象市場は実質 270 億ドル(2025 年の 6.8 倍)でシェア 16.5%(2025 年の 17.6% より少し低い。TI・インフィニオン・ルネサスが 800V 向けで追いつく)、価格の水準は物価並みの 141。通信は市場 実質 120 億ドルでシェア 8.5%、ストレージは市場 実質 95 億ドルでシェア 12.8%、車載は市場 実質 155 億ドルでシェア 7%。2035 年の売上は約 119 億ドル(企業データ 63・ストレージ 17・車載 15・通信 14・産業・消費 9)、営業利益率 29%、営業利益 約 35 億ドル、純利益 約 29 億ドル。 営業利益率は 2026 年の山(33%)から下がる。AI 向けの粗利益率が競合との競争で縮み、営業費用の比率も下がりにくい。堀は保たれるが広がらない。
- 企業データ(AI サーバー・データセンターの電源):数量 44.6(AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 63 億ドル・営業利益 20 億ドル。市場 実質 270 億ドル × シェア 16.5%・価格 141・営業利益率 32%
- ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード):数量 12.2(ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 17 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 95 億ドル × シェア 12.8%・価格 141・営業利益率 26%
- 車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V):数量 10.9(車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 15 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 実質 155 億ドル × シェア 7.0%・価格 141・営業利益率 26%
- 通信(スイッチ・光モジュール・基地局):数量 10.2(通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 14 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 120 億ドル × シェア 8.5%・価格 141・営業利益率 32%
- 産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル):数量 6.5(産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 170 億ドル × シェア 3.8%・価格 141・営業利益率 23%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 19.2%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 19.2% − k 8.5%)= 13.8%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.9 倍。上限の 8 割の 13.5 倍に置いた:ファブレスで資本は軽いが、AI の山の利益を含み、堀は普通なので控える。 時価総額 = 純利益 29.1 × 13.5 倍 = 393 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI 向けは 2030 年ごろまで伸び、その後は市場の伸びが実質 3% 台に落ちる。競合が追いつき利益率が今より下で落ち着く。業界ノートの中立(アナログ全体 10 年で 1.6 倍)より MPS の市場は大きく伸びるが、シェアは現在のまま。34% を置く。
やや悲観 22% 競合の電源が追いつき、AI 向けのシェアが 14% 台に落ちる 利益 16 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 389.16 ドル188 億ドル
企業データの対象市場は実質 215 億ドル(2025 年の 5.4 倍)に伸びるが、MPS のシェアは 14.5% まで下がり、価格の水準は 138(競合に 2% 譲る)。通信は市場 実質 95 億ドルでシェア 7%、ストレージは市場 実質 85 億ドルでシェア 11.5%。2035 年の売上は約 85 億ドル(企業データ 43・ストレージ 14・車載 12・通信 9・産業・消費 7)、営業利益率 22%、営業利益 約 19 億ドル、純利益 約 16 億ドル。 営業利益率は競合との値下げ競争と研究開発費の増加で 2026 年の山より約 11 ポイント下がる。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7.5 割で置く。TI・インフィニオン・ルネサスが規模の経済で上回り、MPS は「高性能の専業」から「中位の電源会社」に変わる。
- 企業データ(AI サーバー・データセンターの電源):数量 31.2(AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 138(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 43 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 実質 215 億ドル × シェア 14.5%・価格 138・営業利益率 24%
- ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード):数量 9.8(ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 138(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 85 億ドル × シェア 11.5%・価格 138・営業利益率 20%
- 車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V):数量 8.8(車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 138(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 12 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 実質 140 億ドル × シェア 6.3%・価格 138・営業利益率 21%
- 通信(スイッチ・光モジュール・基地局):数量 6.7(通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 138(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 95 億ドル × シェア 7.0%・価格 138・営業利益率 24%
- 産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル):数量 5.3(産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 138(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 実質 155 億ドル × シェア 3.4%・価格 138・営業利益率 18%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 16.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 16.0% − k 8.5%)= 12.3%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.8 倍。上限の 7.5 割の 11.9 倍に置いた:MPS のシェアと価格が下がり、利益の質が落ちる。 時価総額 = 純利益 15.8 × 11.9 倍 = 188 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:インフィニオン・ルネサス・テキサス・インスツルメンツの電源が AI 向けで追いつき、MPS のシェアが 17.6% から 14.5% に下がる。価格も物価並みより 2% 下がる。業界ノートの悲観(10 年・構造)の入り口。22% を置く。
悲観 16% AI の山が崩れ、電源が部品として横並びになる 利益 5 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 101.64 ドル49 億ドル
AI の設備投資が実需より先に積み上がっていたことが分かり、企業データの対象市場は実質 140 億ドル(2025 年の 3.5 倍)にとどまる。そこに電源が横並びの部品になり、MPS のシェアは 9% まで下がり、価格の水準は 125(物価に 25% 負ける。中国勢の成熟ノードと欧州勢が押し下げる)。2035 年の売上は約 38 億ドル(企業データ 16・ストレージ 7・車載 7・通信 3・産業・消費 5)、営業利益率 13%、営業利益 約 5 億ドル、純利益 約 5 億ドル。 営業利益率は粗利益率の低下(46%)と研究開発費の固定で 10% 台に下がる。もう「価格を決める専業」ではなく、倍率は ROE が k 以下なので 1÷k の 11.1 倍。配当は守り、自社株買いは止める。
- 企業データ(AI サーバー・データセンターの電源):数量 12.6(AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 140 億ドル × シェア 9.0%・価格 125・営業利益率 14%
- ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード):数量 6.0(ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 実質 70 億ドル × シェア 8.5%・価格 125・営業利益率 12%
- 車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V):数量 5.5(車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 実質 115 億ドル × シェア 4.8%・価格 125・営業利益率 15%
- 通信(スイッチ・光モジュール・基地局):数量 2.7(通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 実質 60 億ドル × シェア 4.5%・価格 125・営業利益率 16%
- 産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル):数量 3.8(産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 実質 135 億ドル × シェア 2.8%・価格 125・営業利益率 11%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 9.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.5% + 1/2 ×(ROE 9.0% − k 8.5%)= 8.8%(moat=普通)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.2 倍。上限の 9 割の 10.9 倍に置いた:ROE が k に近い。電源が横並びの部品になり、もう優良ではない筋なので下限寄り。 時価総額 = 純利益 4.5 × 10.9 倍 = 49 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI の設備投資が実需より先に積みすぎだったとわかり、かつ電源が横並びの部品になって、中国勢(成熟ノードの電源)と欧州勢に価格を 25% 押し下げられる筋。業界ノートの悲観(10 年・構造:価格 30% 下落)に沿う。MPS は事業が AI に偏るので、同じ領域の 12% より少し厚い 16% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
企業データ(AI サーバー・データセンターの電源)
AI アクセラレータ(GPU・ASIC)や CPU の基板に載る、大電流の多相電源(電源 IC とパワーステージ)と、ラックの 800V 直流から基板へ降ろす電源。伸びの中心で、2026 年は前年の約 2.3 倍になる見込み。
| 数量AI・サーバー向け電源の対象市場(2025 年の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.0 | 100 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 44.6 | 141 | 63 | 20 |
取り方:2025 年の売上は 7.02 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 40 億ドルと推定し、当社シェアは約 17.6%(推定)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 26.1%(株式報酬を費用にした値)を、粗利益率の高い順に 企業データ 32%・通信 27%・ストレージ 25%・車載 24%・産業・消費 22% と推定して割り振り、推定の合計と全社の営業利益 7.29 億ドルの差(約 0.1 億ドル)は調整に入れた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
ストレージ・コンピューティング(メモリ・SSD・ノート PC・グラフィックスカード)
DRAM・SSD・ノート PC・グラフィックスカードの電源。2025 年は +46% だったが、2026 年 4-6 月期は前年比 +2% と足踏み。
| 数量ストレージ・コンピューティング向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.3 | 100 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12.2 | 141 | 17 | 5 |
取り方:2025 年の売上は 7.33 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 55 億ドルと推定し、当社シェアは約 13.3%(推定)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 26.1%(株式報酬を費用にした値)を、粗利益率の高い順に 企業データ 32%・通信 27%・ストレージ 25%・車載 24%・産業・消費 22% と推定して割り振り、推定の合計と全社の営業利益 7.29 億ドルの差(約 0.1 億ドル)は調整に入れた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
車載(電池管理・コックピット・ADAS・48V)
電気自動車の電池管理、コックピット、ADAS、照明、48V 系の電源。2026 年 4-6 月期は前年比 +8%。
| 数量車載向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.9 | 100 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.9 | 141 | 15 | 4 |
取り方:2025 年の売上は 5.93 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 90 億ドルと推定し、当社シェアは約 6.6%(推定)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 26.1%(株式報酬を費用にした値)を、粗利益率の高い順に 企業データ 32%・通信 27%・ストレージ 25%・車載 24%・産業・消費 22% と推定して割り振り、推定の合計と全社の営業利益 7.29 億ドルの差(約 0.1 億ドル)は調整に入れた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
通信(スイッチ・光モジュール・基地局)
データセンターのスイッチ、光モジュール(800G・1.6T)、通信基地局の電源。2026 年 4-6 月期は前年比 +78%。
| 数量通信向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.1 | 100 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.2 | 141 | 14 | 5 |
取り方:2025 年の売上は 3.09 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 45 億ドルと推定し、当社シェアは約 6.9%(推定)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 26.1%(株式報酬を費用にした値)を、粗利益率の高い順に 企業データ 32%・通信 27%・ストレージ 25%・車載 24%・産業・消費 22% と推定して割り振り、推定の合計と全社の営業利益 7.29 億ドルの差(約 0.1 億ドル)は調整に入れた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
産業・消費(工場・計測・家電・ウェアラブル)
産業機器・計測・家電・ウェアラブルの電源(産業 1.99 億ドル+消費 2.55 億ドル)。景気と消費に左右される下地の事業。
| 数量産業・消費向け電源の対象市場(実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.5 | 100 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 141 | 9 | 2 |
取り方:2025 年の売上は 4.54 億ドル(決算の市場別の開示)。対象市場を 120 億ドルと推定し、当社シェアは約 3.8%(推定)。営業利益は市場別の開示が無く、全社の GAAP 営業利益率 26.1%(株式報酬を費用にした値)を、粗利益率の高い順に 企業データ 32%・通信 27%・ストレージ 25%・車載 24%・産業・消費 22% と推定して割り振り、推定の合計と全社の営業利益 7.29 億ドルの差(約 0.1 億ドル)は調整に入れた。価格は製品の水準(2025 年=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。
リスクと懸念
AI 設備投資の山と谷
企業データと通信は 2026 年 4-6 月期の売上の 52% を占め、前年比 +164% と +78%。大手 5 社の設備投資が 2027 年の 1 兆ドル前後に届かない、または AI の投資効率が疑われると、この 2 つが同時に崩れる。2024 年に企業データが 32% の構成比だったように、山から谷への幅が大きく、利益率の高い電源から落ちる。悲観の筋書きでは 2028 年の企業データが 2026 年の山の約半分になる。
800V 直流への移行と競合の増加
NVIDIA が主導する 800V 直流のラックは 2027 年から広がる。TI は NVIDIA と電源の協業を発表し、インフィニオン(SiC)・ルネサス・ST・ナビタス(GaN)も参入する。基板上の降圧は残るが、ラックから基板までの変換の段が変わり、MPS の採用の枠が入れ替わる可能性がある。シェアと粗利益率が下がる筋は、やや悲観の筋書きで表した。
特定の顧客・世代への偏り
企業データの売上は大口の AI アクセラレータ顧客の世代交代に左右される。2025 年は前年比 −2% と足踏みし、2026 年に前年の約 2.6 倍へ戻った。次の世代(Rubin)でも採用が続くかが利益の山の高さを決める。顧客が自社設計の電源を増やす・複数社に分ける動きも起こりうる。
株式報酬と調整後の数字の見かけ
株式報酬は 2025 年に 2.4 億ドル(売上の 8.7%)で、GAAP の純利益 6.2 億ドルの 4 割近い。調整後 EPS(4-6 月期)は GAAP の 1 株利益より約 25% 高い。調整後で見ると今の PER は 2 割ほど低く見えるが、本質価値の評価は GAAP で行った。
中国・輸出管理
中国向けの出荷が売上に占める割合は大きい(出荷先ベース。割合は 10-K で確かめる)。米国の輸出管理が AI 向けの電源にも及ぶ・中国の国産電源が価格を押し下げる、のいずれも利益率と数量に効く。悲観(10 年)は、成熟ノードの電源で中国勢と欧州勢に価格を 25% 押し下げられる筋。
高い倍率による下げの深さ
今の GAAP の PER は 94 倍、PBR は 16.6 倍。2022 年は株価が −38%(PER の谷 39 倍)、2008 年は −62%。業績が悪くなくても、倍率が利益ベースの正当化 PER(13〜17 倍)に向かうだけで、時価総額は大きく下がりうる。
メモリ高騰による PC・スマートフォンの落ち込み
ストレージ・コンピューティング(26%)と消費(9%)は、2026 年のメモリ高騰で PC・スマートフォンの出荷が落ち込む影響を受ける。4-6 月期のストレージ・コンピューティングは前年比 +2%、消費は −5%。メモリの供給が落ち着けば戻るが、需要の弱さが続けば、全社の利益率を稼働率の面から押し下げる。
今後の分かれ目
- 企業データが 2027 年も +40% 超で伸び、800V の電源の設計採用(デザインイン)が公表される
- 楽観へ確率を寄せ、企業データのシェアの置き方を上げる。ただし AI 設備投資の山の高さを同時に確認する。
- 大手クラウド 5 社の 2027 年の設備投資計画が前年比で伸び 1 割以下に落ちる
- やや悲観・悲観へ寄せる。企業データの 2028 年の売上を 2026 年の山の半分近くまで下げる。
- TI・インフィニオン・ルネサスが NVIDIA の 800V ラックの電源で主要な採用を公表する
- AI 向けのシェアを 17.6% から 14% 台へ下げ、中立から やや悲観へ確率を移す。価格の水準も物価並みから 2% 下げる。
- GAAP の粗利益率が 56% を超えて定着し、営業費用の比率が 21% に下がる
- 営業利益率 36% 超の楽観の筋が現実になる。倍率は変えず、利益の置き方を上げる。
- 企業データが 2026 年 10-12 月期に前期比で減る
- 2026 年が山だった可能性が高まる。10 年の中立の置き方を下げ、悲観を厚くする。
- 自社株買いが株価の高い局面で急に増える(年 10 億ドル規模)
- 還元の質(割高で買う)を下げて見る。正味の還元から株式報酬の分を引いた額が増えるかを確認する。
見ておくもの
- 企業データの四半期の売上と前期比、新しい世代の電源の採用の公表
- 大手クラウド 5 社の設備投資の計画と AI の投資効率に関する発言
- TI・インフィニオン・ルネサスの 800V 電源の採用の公表
- GAAP の粗利益率(55.2%)と営業費用の比率、株式報酬(売上比 8.7%)
- ストレージ・コンピューティング・車載の売上の回復(2026 年 4-6 月期は +2%・+8%)
- 中国向けの売上比率と輸出管理の動き
- 現金等(14.1 億ドル)の増減と自社株買いの額
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(GAAP の PER 94 倍)ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) で出した。k 8.5%(基本 8.0% + quality 0.5%)、ROE は帳簿(中立 19%)、堀は普通(電源の製品は入れ替えられうる)、g は半導体の数量が実質で伸び続けるとして 4.5%(k − g = 4.0%)。AI 電源の山の利益に高い倍率は掛けず、中立は上限 16.9 倍の 8 割の 13.5 倍。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。今の値段に寄せず、結果は割高(総合 -62%)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.47 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0.5% = 8.5%(β は使わない)。AI 設備投資と在庫で利益が動く半導体として循環の分だけ +0.5。純負債は −12 億ドル(無借金・純現金)で存続の不安は無く、上乗せは 0。AI 設備投資の山と競合の 800V 電源は、k でなく確率(悲観 10 年 16%)と悲観の深さで表した。