結論
パランティア・テクノロジーズは、政府・防衛・情報機関向けの「ゴッサム」と、企業向けの「ファウンドリー」、AI を業務に組み込む「AIP」を売る会社で、2026 年 4〜6 月期の売上は 19.35 億ドル(前年比 +93%)、GAAP の営業利益率 47%・純利益率 55%に達した。通年の売上見通しは 81.5 億ドル(+82%)、米国の民間向けは +149% と、企業向けの AI 導入が急に立ち上がっている。
事業の質は高い。顧客数は 1,049 社、既存顧客の売上維持率は 157%、現金は 92 億ドルで負債はなく、10 年後も存在し今より強い可能性は高い。バリュー投資の観点で問題になるのは値段である。時価総額は約 4,770 億ドル、2025 年の利益に対する PER は約 290 倍で、2026 年の売上見通しの約 60 倍にあたる。
事業ごとに顧客数と顧客あたり売上を積み上げ、その時点の成長から、資本コスト 9.25%(基本 8.0% + quality +1.25%)の利益ベースの正当化 PER を出し(現金を除く事業の ROE は 100% の上限、資本コストを超える分は先で半分に薄れる)、その 7〜9 割に倍率を置くと、中立の時価総額は 10 年後に今の約 5 割にとどまる(純現金は 1 ドルで数える)。楽観の筋書きでも 10 年の年率は約 +3.7% で、資本コスト 9.25% に届かない。事業の成功を認めつつ、値段は将来の成功を何度も先払いしているというのがこの分析の結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず「10 年後もあるか」を問う。答えは、おそらくある。政府の機密と業務データの両方に入り込んだ基盤は、切り替えが難しく、堀は広がる方向にある。
次にオーナー利益を見る。2025 年の調整後フリーキャッシュフローは約 21 億ドルだが、株式報酬が上半期だけで約 4.7 億ドルあり、これを費用として差し引くと、株主が自由にできる利益はその分小さい。営業利益は急に増えたが、まだ 2 年分の実績しかなく、10 年にわたる利益の持続性は他の優良ソフトより確かでない。
安全域の議論では、今の値段が正当化されるには、2035 年までに売上が 1,000 億ドル級(今の約 20 倍)に達し、営業利益率が 50% を超え、しかも倍率が 20 倍近くを保つ必要がある。この計算では、楽観の筋書きでも 10 年の年率は 3% 台で、資本コストに届かない。優れた事業を高い値段で買うと、リターンは事業の質ではなく払った値段で決まる。事業の質への確信は中程度、値段への確信は持てない。
何で稼ぐ会社か
売上は大きく 3 つに分かれる。第一は米国の政府(国防総省・陸軍・情報機関・国土安全保障省など)で、2026 年 4〜6 月期の売上は 8.09 億ドル。陸軍とは 2025 年 7 月に 10 年・上限 100 億ドルの企業契約(75 本の契約を 1 本に統合)を結び、戦場データの統合基盤「メイブン・スマート・システム」も展開する。上限額は確定した支出ではなく、実際の発注は年度予算に左右される。
第二は米国の民間企業で、同期の売上は 7.64 億ドル(+149%)。AIP は、顧客の社内データに「業務の意味づけ(オントロジー)」を与え、AI に業務を実行させる仕組みで、数日で試作を作る「ブートキャンプ」を入口に導入を広げる。契約高(TCV)は同期に 21.3 億ドルで +153%。第三は海外で、英国の NHS(国民保健サービス)、北大西洋条約機構(NATO)、欧州・アジアの企業と政府が顧客。
収益は、顧客ごとの年間契約と、利用量に応じた拡張の 2 本立てで、売上の大半はソフトの利用料である。開発者を現場に派遣する運用の負担が重いと言われてきたが、規模が出て営業利益率は 2023 年の 5% から 2025 年の 32%、2026 年 4〜6 月期の 47% へ上がった。会社全体で見ると、政府の長期契約が土台、民間の AI 導入が成長の源泉という構造である。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一は切り替えの費用で、顧客の業務データとオントロジー(業務の定義)の上に作った仕組みは、他の基盤へ移すと作り直しになる。純収益維持率 157% は、一度入った顧客が使う範囲を広げ続けていることを示す。第二は政府・防衛での信用で、機密を扱う認証・実績・現場に入り込んだ運用が、新興企業の参入を難しくしている。第三は AI を業務に載せる実装力で、大手クラウドが提供するのはモデルと部品、パランティアが提供するのは動く業務である。
資本効率は急に改善した。ROE は 2024 年の 9% から 2025 年の 22% へ上がり、現金は自己資本の約 4 割に積み上がった。経営はアレックス・カープ氏(CEO)とピーター・ティール氏(創業者)が議決権の面で強く支配しており、少数株主の意見は届きにくい。
弱点は 4 つ。株式報酬が多く(2026 年上半期で約 4.7 億ドル)、株数が毎年 4〜5% 増えてきたこと、自社株買いの枠を 2026 年 1 月に終えたこと、政府依存と契約の波、創業者・役員による大量の売却が続くことである。事業の質は高いが、利益が黒字になって 3 年に満たず、10 年先までの持続性は読みにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
企業向けの業務ソフトと AI の市場は、業界ノートでは約 8,000 億ドル(推定)で、中立の見通しは売上が年 +4.5%、AI の消費量が座席の減少を補う形である。パランティアはその平均よりはるかに速く伸びており、会社の分析では「市場が伸びる」より「AI を導入する会社の数と 1 社あたりの範囲が増える」ことが効いている。
競争は 3 方向からくる。第一は大手クラウドの AI 基盤で、マイクロソフト(アジュール)・アマゾン(AWS)・グーグルが、データとモデルと実行環境を 1 つの契約で提供する。第二はデータブリックス(Databricks)やスノーフレイク(Snowflake)などデータ基盤の会社が、分析から業務の自動化へ範囲を広げること。第三は政府向けでアンドゥリル(Anduril)などの新興の防衛技術会社と、ロッキード・マーチンなど既存の防衛大手が自前の統合基盤を持つことである。
循環でいえば、AI 設備投資の山の手前の熱狂の中にいる。2026 年 2 月にはソフト株全体から 1 兆ドル超の時価が消えたと報じられたが、パランティアは AI の導入を進める側として逆に買われた。分かれ目は、AI を試した顧客が本番運用へ進み、契約高が売上に変わるかどうかと、政府予算の優先順位が変わらないかである。
資本政策と M&A
還元は配当なし、自社株買いも小さい。2023 年 8 月に決めた 10 億ドルの買い戻し枠は 2025 年に 0.75 億ドルしか使わず、2026 年 1 月に終了した。一方、株式報酬で毎年株数が増え、2025 年は 5.3% 増えた。2026 年 6 月末の現金は 92 億ドル(短期の米国債を含む)で負債はなく、利益と現金は自己資本に積み上がっている。
M&A は事実上していない。小さな買収と出資(防衛・AI の新興企業)に限り、自前の開発が中心である。大型の買収は規制と政府顧客との利益相反の観点で難しく、時価総額が 4,700 億ドル台では買われる側になる可能性も現実的でない。
今後の資本配分の鍵は 2 つ。第一に、利益が 100 億ドルを超える局面で、現金をどう株主へ戻すか(自社株買いは割高なうちは株主価値を壊す)。第二に、株式報酬を抑え、希薄化を止められるかである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
パランティアは AI の実装で他社より 2〜3 年先を走っている。AIP のブートキャンプは、顧客が数日で本番に近い試作を作る入口で、2026 年 4〜6 月期の米民間の契約高は 21.3 億ドルと前年の 2.5 倍、純収益維持率は 157% と、一度入った顧客が拡張し続けている。売上が 93% 伸びながら GAAP の営業利益率が 47% と、成長と利益を同時に出せる数少ない会社である。
政府では、陸軍の 10 年・上限 100 億ドルの企業契約が、国防総省全体の標準化の入口になる。メイブン・スマート・システムは戦場での意思決定に組み込まれ、一度入ると外せない。NATO・英国・日本など同盟国にも広がる余地がある。大手クラウドが提供するのは部品で、パランティアが提供するのは動く業務であり、顧客のデータの意味づけ(オントロジー)という切り替え費用が、時間とともに厚くなる。現金 92 億ドル・負債なしで、景気後退にも耐える。AI が全産業の業務に入る 10 年では、売上 900 億ドルも不可能ではない。
慎重な見方
値段が将来のすべての成功を織り込んでいる。時価総額は約 4,770 億ドルで、2025 年の純利益 16 億ドルに対し PER 約 290 倍、2026 年の売上見通しの約 60 倍である。資本コスト 9.25% で 10 年割り引くと、10 年後の時価総額は約 1.1 兆ドル(今の約 2.4 倍)が必要になり、売上 900 億ドルに営業利益率 47%、利益ベースの正当化 PER の 9 割の倍率と、積み上がった純現金約 1,400 億ドルを足す楽観の筋書きでも約 0.63 兆ドルで、資本コストに届かない。
成長の質にも不安がある。政府の契約は議会の予算や政権の方針で波打ち、陸軍の上限 100 億ドルは確定額ではない。民間は AI の試験導入が中心で、本番運用への移行が遅れると、契約高が売上に変わらない。株式報酬は毎年株数を 4〜5% 増やし、自社株買いの枠は終了した。ティール氏・カープ氏の大量売却は、内部者が今の値段を高いと見ていることを示す。マイクロソフト・アマゾン・グーグルが標準機能で追いつけば、単価は下がり、2022 年のように株価が 75% 下がる展開も過去にある。
どちらに重みを置いたか
事業の質と短期の成長は強気の見方が強く、10 年の楽観・やや楽観の合計は 25% に置いた。ただし値段の議論では慎重な見方が圧倒的に強い。楽観の筋書きでも 10 年の年率は約 +3.7% で資本コスト 9.25% に届かず、どの筋書きも下回るため、確率をどう動かしても結論は変わらない。10 年は構造的に負ける筋書き(商品化・政府依存の反転)を 18% と厚く置き、やや悲観と合わせて 45% を悲観側に寄せた。結論は「優良な事業だが、極端な割高」。 点検(2026-10-19):basis の株数が年次の古い 25.65 億株だったので、brief の写す値(直近四半期 2026 年 4〜6 月期)の 24.00 億株に直した(今の時価総額 4772→4464 億ドル)。自社株買いは 2025 年に 0.75 億ドルで枠も終了しており、還元との二重はない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 100.79 ドル2,419 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 11.00 ドル264 億ドル)。 今の値に割り戻すと 48.68 ドル1,168 億ドル、今との差 −75.2%、 期待の年率 −5.5%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 262.11 ドル6,290 億ドル | 25.00 ドル600 億ドル | +46.3% | +3.9% | 22.97 ドル551 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 185.73 ドル4,457 億ドル | 18.75 ドル450 億ドル | +4.2% | +0.4% | 34.76 ドル834 億ドル |
| 中立 | 30% | 102.33 ドル2,456 億ドル | 12.50 ドル300 億ドル | −41.5% | −5.2% | 34.45 ドル827 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 52.99 ドル1,272 億ドル | 6.25 ドル150 億ドル | −69.8% | −11.3% | 15.99 ドル384 億ドル |
| 悲観 | 18% | 18.03 ドル433 億ドル | 2.08 ドル50 億ドル | −89.7% | −20.4% | 3.62 ドル87 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 100.79 ドル2,419 億ドル | 11.00 ドル264 億ドル | −43.0% | −5.5% | 111.79 ドル2,683 億ドル |
今の株価時価総額 196.19 ドル4,708 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:政府と企業の標準の AI 基盤になり、売上は 900 億ドル 利益 374 億ドル · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 262.11 ドル6,290 億ドル
2035 年 12 月期、民間の顧客は米国だけで 2,800 社、顧客あたり売上は 1,429 万ドルまで伸びる(AI エージェントの消費量課金を含む)。政府は米国と同盟国で 700 組織、1 組織あたり 5,143 万ドル。海外民間は 1,000 社で 140 億ドル。売上は 900 億ドル、営業利益率は 47% を保つ。2030 年以降は自社株買いを再開し、株式報酬を差し引いた正味の還元は 10 年で 600 億ドル。成長が 8% に落ち着いた時点の事業の PER は約 18.3 倍(正当化 PER 20.4 倍の 9 割)、純現金 1,387 億ドルを足す。時価総額は約 0.75 兆ドルで今の約 1.6 倍。還元を入れた 10 年の年率は約 5% で、資本コストに届かない。
- 米国の民間企業:数量 2,800(米国の民間顧客数(社))× 価格 1,429(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 400 億ドル・営業利益 224 億ドル。AIP が標準に
- 政府(米国・同盟国):数量 700(政府の顧客組織数)× 価格 5,143(1 組織あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 360 億ドル・営業利益 162 億ドル。同盟国にも拡大
- 海外の民間企業:数量 1,000(海外の民間顧客数(社))× 価格 1,400(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 140 億ドル・営業利益 50 億ドル。海外民間が定着
倍率:正当化 PER:事業の ROE 100.0%(現金を除く事業の投下資本がほぼ 0 で ROIC は 100% を超えるので、式の ROE は 100% で打ち止め)、RONIC = k 9.2% + 1/2 ×(ROE 100.0% − k 9.2%)= 54.6%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 9 割の 15.7 倍に置いた:AI 基盤の標準になり、売上 900 億ドルに営業利益率 47% を保つ上振れでも、大手クラウドの追随があるので上限の 9 割に置く。 時価総額 =(純利益 374 − 余った現金の税後利息)× 15.7 倍 + 戻り方を掛けた余った現金 694 = 6290 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:2035 年までに、政府・防衛でも民間でも AI を動かす層(データの意味づけ・権限・監査)を握り、顧客と単価の両方が伸び続ける必要がある。10 年にわたり 3 割近い成長を重ねる条件なので 1 割未満に置いた。
やや楽観 17% やや楽観:堀は広がるが競争で成長は年 20% 弱に落ち、売上 700 億ドル 利益 280 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 185.73 ドル4,457 億ドル
2035 年 12 月期、民間の顧客は 2,300 社・顧客あたり 1,348 万ドル、政府は 610 組織で 285 億ドル、海外民間は 105 億ドル。売上は 700 億ドル(2025 年の約 16 倍)、営業利益率は 45%。AI 基盤の単価は毎年実質で下がるが、顧客あたりの利用範囲が広がって補う。2031 年以降に自社株買いを始め、10 年の正味の還元は 450 億ドル。成長が 7% 前後に落ちた後の事業の PER は約 17.3 倍(正当化 PER 20.4 倍の 8.5 割)、純現金 1,086 億ドルを足す。2030 年代前半には、AI 基盤が各社の標準になった後も、オントロジー(業務の意味づけ)を作り込んだ顧客は他社へ移れず、更新時の値上げが物価(3.5%)並みに通る。政府では同盟国の採用が広がるが、陸軍の企業契約の上限額(100 億ドル)の消化は 10 年かけて 7 割程度にとどまる。
- 米国の民間企業:数量 2,300(米国の民間顧客数(社))× 価格 1,348(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 310 億ドル・営業利益 167 億ドル。定着と利用範囲の拡大
- 政府(米国・同盟国):数量 610(政府の顧客組織数)× 価格 4,672(1 組織あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 285 億ドル・営業利益 123 億ドル。国防・情報で標準
- 海外の民間企業:数量 800(海外の民間顧客数(社))× 価格 1,313(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 105 億ドル・営業利益 35 億ドル。欧州・アジア
倍率:正当化 PER:事業の ROE 100.0%(現金を除く事業の投下資本がほぼ 0 で ROIC は 100% を超えるので、式の ROE は 100% で打ち止め)、RONIC = k 9.2% + 1/2 ×(ROE 100.0% − k 9.2%)= 54.6%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 8.5 割の 14.7 倍に置いた:AI 基盤の単価が毎年実質で下がるが、顧客あたりの利用範囲が広がって補う筋書き。上限の 8.5 割に置く。 時価総額 =(純利益 280 − 余った現金の税後利息)× 14.7 倍 + 戻り方を掛けた余った現金 543 = 4457 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:オントロジー(業務の意味づけ)の切り替え費用が効き、顧客の定着は強いが、AI 基盤の単価競争で伸びが落ちる展開。
中立 30% 中立:優良なソフト会社として売上 420 億ドル、倍率は平常化 利益 162 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 102.33 ドル2,456 億ドル
2035 年 12 月期、民間の顧客は 1,900 社・顧客あたり 1,000 万ドルで 190 億ドル、政府は 500 組織・3,500 万ドルで 175 億ドル、海外民間は 55 億ドル。売上は 420 億ドル(2025 年の約 9 倍、年 +25% から +7% へ逓減)。AI 基盤はマイクロソフトやオープンエーアイ(OpenAI)などが同種の機能を提供し、営業利益率は 42% に落ち着く。株式報酬は売上の 1 割台で続く。事業の PER は約 16.3 倍(正当化 PER 20.4 倍の 8 割)、純現金 724 億ドルを足す。政府の長期契約は更新が続くが、契約の規模は議会の予算で毎年調整され、売上の伸びは物価と利用範囲の拡大で説明できる程度に落ち着く。民間では AIP が事業ごとの業務システムとして定着するが、大手クラウドの標準機能との価格競争で、新規案件の単価は実質で毎年下がる。
- 米国の民間企業:数量 1,900(米国の民間顧客数(社))× 価格 1,000(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 190 億ドル・営業利益 95 億ドル。競争で伸びが鈍化
- 政府(米国・同盟国):数量 500(政府の顧客組織数)× 価格 3,500(1 組織あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 175 億ドル・営業利益 72 億ドル。契約の更新が中心
- 海外の民間企業:数量 600(海外の民間顧客数(社))× 価格 917(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 17 億ドル。緩やかな拡大
倍率:正当化 PER:事業の ROE 100.0%(現金を除く事業の投下資本がほぼ 0 で ROIC は 100% を超えるので、式の ROE は 100% で打ち止め)、RONIC = k 9.2% + 1/2 ×(ROE 100.0% − k 9.2%)= 54.6%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 8 割の 13.7 倍に置いた:AI 基盤はマイクロソフトやオープンエーアイが同種の機能を出し、営業利益率は 42% に落ち着く。利益の持続性は実績が浅く他の優良ソフトより確かでないので上限の 8 割に置く。 時価総額 =(純利益 162 − 余った現金の税後利息)× 13.7 倍 + 戻り方を掛けた余った現金 362 = 2456 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(業務ソフト 年 +4.5%、AI 消費課金で補う)よりは速く伸びるが、2026 年の勢いは続かない。どちらの意見にも半分ずつ寄せた。
やや悲観 27% やや悲観:大手クラウドが標準機能で追いつき、売上 260 億ドルで成長が止まる 利益 88 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 52.99 ドル1,272 億ドル
2035 年 12 月期、民間の顧客は 1,400 社・顧客あたり 786 万ドル、政府は 400 組織で 112 億ドル、海外民間は 38 億ドル。売上は 260 億ドル、営業利益率は 35% まで下がる。更新の値引き・新興の AI 企業(アンドゥリルなど政府向けも含む)との競争で、新規案件の単価が実質で下がる。株式報酬は続き、自社株買いは希薄化を打ち消す程度。成長が物価並みに落ちて事業の PER は約 14.4 倍(正当化 PER 17.0 倍の 8.5 割)、純現金 503 億ドルを足す。政府では、国防総省が複数の事業者に分散発注する方針へ移り、パランティアのシェアは頭打ちになる。民間では、AI の実装が特別な技能でなくなり、顧客が自社で内製化する例が増える。それでも既存顧客の更新は続き、売上が減ることはないが、成長はほぼ物価並みに戻る。
- 米国の民間企業:数量 1,400(米国の民間顧客数(社))× 価格 786(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 48 億ドル。単価下落
- 政府(米国・同盟国):数量 400(政府の顧客組織数)× 価格 2,800(1 組織あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 112 億ドル・営業利益 40 億ドル。競合が参入
- 海外の民間企業:数量 450(海外の民間顧客数(社))× 価格 844(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 38 億ドル・営業利益 8 億ドル。伸びず
倍率:正当化 PER:事業の ROE 100.0%(現金を除く事業の投下資本がほぼ 0 で ROIC は 100% を超えるので、式の ROE は 100% で打ち止め)、RONIC = k 9.2% + 1/2 ×(ROE 100.0% − k 9.2%)= 54.6%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 7.5 割の 12.5 倍に置いた:更新の値引きと新興の AI 企業との競争で新規案件の単価が実質で下がる筋書き。上限の 7.5 割に置く。 時価総額 =(純利益 88 − 余った現金の税後利息)× 12.5 倍 + 戻り方を掛けた余った現金 252 = 1272 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI 基盤が大手クラウドとモデル各社の標準機能になり、切り替え費用の効果が薄まる展開。高成長企業の多くが 10 年後には普通のソフト会社に戻る実績を踏まえ、重く置いた。
悲観 18% 悲観:基盤の商品化と信用の事故で優良企業でなくなる 利益 31 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 18.03 ドル433 億ドル
2035 年 12 月期、民間の顧客は 700 社・顧客あたり 571 万ドル、政府は 250 組織で 65 億ドル、海外民間は 15 億ドル。売上は 120 億ドル(2028 年の中立の想定より少ない)、営業利益率は 22% に落ちる。ブランドと国防案件は残るが、民間では大手クラウドとオープンソースのモデルに押され、AI 基盤の単価が崩れる。純利益は 31 億ドル。自己資本の大半は純現金(約 240 億ドル)なので、現金は 1 ドルで数え、残る事業の利益に実質で縮む会社の式の倍率(g 2.5%、約 12 倍)を掛けて測る(PBR にすると約 2.2 倍)。創業者の経営への関与が薄れ、後継の体制づくりに失敗する。株式報酬を増やして人材をつなぎとめるため利益率が下がり、株数も増え続ける。2022 年の下げ(−75%)を経験した株主が、再び高値で買う理由はなくなる。
- 米国の民間企業:数量 700(米国の民間顧客数(社))× 価格 571(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 9 億ドル。商品化
- 政府(米国・同盟国):数量 250(政府の顧客組織数)× 価格 2,600(1 組織あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 65 億ドル・営業利益 20 億ドル。国防案件が中心
- 海外の民間企業:数量 300(海外の民間顧客数(社))× 価格 500(1 社あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 2 億ドル。撤退・縮小
倍率:正当化 PER:事業の ROE 100.0%(現金を除く事業の投下資本がほぼ 0 で ROIC は 100% を超えるので、式の ROE は 100% で打ち止め)、RONIC = k 9.2% + 1/2 ×(ROE 100.0% − k 9.2%)= 54.6%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.7 倍。上限の 7 割の 11.2 倍に置いた:民間は大手クラウドとオープンソースに押され、AI 基盤の単価が崩れる構造的な悲観。上限の 7 割に置く。 時価総額 =(純利益 31 − 余った現金の税後利息)× 11.2 倍 + 戻り方を掛けた余った現金 120 = 433 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI 基盤の商品化で単価が崩れる、政府依存の裏返しで政権や調達方針が変わる、という構造的な負け。創業者による大量売却の継続やガバナンスの懸念も重なる。確率は 2 割弱。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国の民間企業
AIP とファウンドリーを米国の企業に売る。ブートキャンプから拡張する消費課金の契約。
| 数量米国の民間顧客数(社) | 価格1 社あたりの年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 540 | 270 | 15 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 1,000 | 190 | 95 |
取り方:2026 年のガイド(米民間 34.2 億ドル超・+134% 以上)から 2025 年の売上を約 14.6 億ドルと逆算し、顧客数は総顧客 954 社(2025 年末)のうち米民間を約 540 社と推定して割った。米国の大企業(売上 10 億ドル超の約 2,000 社)のうち 4 社に 1 社強が顧客という計算。競合はデータ基盤のデータブリックス(Databricks)・スノーフレーク(Snowflake)、マイクロソフト・アマゾン・グーグルの AI 基盤、業務アプリの SAP・セールスフォースで、顧客あたり売上(約 270 万ドル)は導入の深さで大手のデータ基盤を上回る。単価は中立で物価(10 年 1.41 倍)を上回り、利用範囲の広がりで伸びると置いた。営業利益は推定。
政府(米国・同盟国)
ゴッサム・メイブンなどを国防・情報・公共機関に売る長期契約。
| 数量政府の顧客組織数 | 価格1 組織あたりの年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 940 | 24 | 8 |
| 10 年後 中立 | 500 | 3,500 | 175 | 72 |
取り方:2026 年 4〜6 月期の政府合計 9.9 億ドル(+79%)から 2025 年の政府売上を約 23.5 億ドルと逆算し、顧客組織は 250 と推定して割った。米国防総省の IT・ソフト予算(年 600 億ドル規模)に占める割合はまだ数%で、競合はアンドゥリル(Anduril)、ブーズ・アレン、レイドスなどの政府系の IT 会社と大手クラウド。1 組織あたりの売上は大型の企業契約で物価を上回って伸びると置いた。営業利益は推定。
海外の民間企業
欧州・アジア・中東の企業向け。立ち上がり中。
| 数量海外の民間顧客数(社) | 価格1 社あたりの年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 164 | 405 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 600 | 917 | 55 | 17 |
取り方:全売上 約 44.8 億ドルから米民間と政府を引いた残り約 6.6 億ドルを、顧客 164 社(総顧客 954 から推定)で割った。欧州では SAP とデータ主権を重んじる地元勢が強く、米民間ほど単価が上がっていない。単価は導入の深まりで物価を上回って伸びると置いた(中立は 10 年 2.3 倍)。営業利益は推定。
リスクと懸念
極端な高値と倍率の縮み
時価総額は 2025 年の利益の約 290 倍、売上見通しの約 60 倍。成長が 3 割に落ちるだけで、倍率が半分以下になる。2022 年は 14 か月で株価が 75% 下がった。事業が好調でも株価で損をしうる。顧客が AI を導入してもすぐ契約高が売上へ変わらない点にも注意が必要で、期待が先行している分、決算の小さな未達でも株価は大きく反応する。
政府依存と契約の波
売上の約 5 割が政府。陸軍の企業契約は上限 100 億ドルだが、確定額ではなく年度予算次第。議会の予算停止・政権の優先順位の変更・調達の見直しで、四半期ごとに大きく振れる。政府案件は成長を支える一方で、利益率が民間より低く、契約の更新時期や会計年度末に売上が集中して四半期の振れが大きくなる。
株式報酬と希薄化
2026 年上半期の株式報酬は約 4.7 億ドル。株数は 2025 年に 5.3% 増えた。自社株買いの枠は終了し、売上の伸びで目立たないが、成長が止まると 1 株の価値を直接削る。AI の普及で新規顧客が増えるほど、報酬として配る株式も増え、利益の伸びに対して株主の持ち分が薄まる速度は速くなる。
大手クラウド・新興との競争
マイクロソフト・アマゾン・グーグルが AI 基盤を標準機能にし、データブリックス・スノーフレイクが業務の自動化へ範囲を広げる。政府ではアンドゥリルなどの新興が参入する。単価の下落が利益率に響く。契約を取り合う局面では、価格を下げずに機能で勝ち続ける必要があり、顧客の内製化や複数事業者への分散発注という調達方針の変化も重なる。
創業者の支配と内部者の売却
カープ氏とティール氏が議決権で支配し、両氏は過去に合計 10 億ドル超を売却したと報じられた。少数株主の意見が届きにくく、売却が続けば経営への信頼が損なわれる。経営の意思決定が少数の人に集まる構造は、うまくいく間は強みだが、後継や方針転換の局面で株主が口を出せない弱点にもなる。
倫理・政治の反発
英 NHS への批判、移民取締・監視用途への反対運動など、政治と世論の反発が契約の更新・新規獲得に影響しうる。欧州では特に、データ主権の観点で国産品が好まれる。世論の逆風が強まると、自治体や病院などの公共の調達で採用が見送られ、民間でも評判を気にする企業が導入をためらう。
今後の分かれ目
- 米民間の契約高(TCV)が 2027 年も前年の 2 倍以上で伸び、顧客あたり売上も上がり続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし倍率は成長の減速を先に映すので、時価総額が追いつく前に利益が伸びる保証はない。
- 陸軍の企業契約の実行額が年 10 億ドルを超えず、他の軍種への展開も遅れたら
- 政府の売上が計画を下回る。やや悲観の確率を上げる。
- 大手クラウドが同種の業務自動化を標準機能として値下げしたら
- 民間の新規単価が 2〜3 割下がる。米民間の営業利益率の置き方を 5 ポイント下げて見る。
- 自社株買いを再開し、株式報酬の希薄化を打ち消したら
- 株数の増加が止まる。還元の置き方を引き上げ、倍率を 1〜2 倍上げて見る。
- 純収益維持率が 130% を下回り、顧客数の伸びも 1 割台に落ちたら
- 拡張の勢いが失われた合図。10 年の確率をやや悲観・悲観の側へ動かす。
- 株価が下がり、時価総額が 10 年の中立の現在価値に近づいたら
- 値段への評価が変わる。その時点の利益の持続性を見て再評価する。
見ておくもの
- 米民間の契約高(TCV)と顧客あたり売上、純収益維持率
- 政府の売上と、陸軍の企業契約の実行額・他の軍種への展開
- 調整後ではなく GAAP の営業利益率と、株式報酬の売上比
- 株数の増減と自社株買いの再開
- 大手クラウド・データブリックスの業務自動化の価格動向
- 創業者・役員の株式売却
倍率と資本コストの決め方
今の PER 約 290 倍や時価総額 4,770 億ドルを見る前に、セグメントごとに顧客数と顧客あたり売上、利益率を積み上げ、次に利益ベースの正当化 PER (1−g/RONIC)/(k−g)(k 9.25%=基本 8.0% + quality +1.25%。現金を除く事業の ROE は ROIC が 100% を超えるので上限の 100%、RONIC = k + 1/2 ×(100% − k)、g 4.0%)の 7〜9 割で倍率を置いた。純現金は 1 ドルで数え、余った現金は半分だけ株主に戻る前提(excess_cash_return 0.5)。総合の差は -76%(割高)で、楽観の筋書きでも 10 年の年率は約 +3.7% で資本コスト 9.25% に届かず、割高が極端に出たが、計算に従った。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β 1.43 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.25% = 9.25%(β は使わない)。政府の予算と企業の AI 試験導入で契約が波打つ(cycle +0.25)。マイクロソフトやオープンエーアイが同種の機能を出すため AI 基盤の単価は下がりやすい(pricing +0.5)。純現金で負債はなく debt は 0。黒字化して 3 年に満たず、AI 基盤の技術が入れ替わる恐れもあって利益の持続性が読みにくい(life +0.5)。堀は普通。政府依存・内部者の売却・株式報酬による希薄化は k に重ねず、筋書き(顧客数・顧客あたり売上・利益率)と確率(やや悲観・悲観を 10 年で 45%)で表した。