結論
フィグマは、デザイナー、開発者、商品企画担当者が同じ画面でデジタル製品を設計するためのソフトウェア会社である。筆者の結論は割高だ。共同作業の基盤として優れた地位を築いているが、AIが人の操作を減らすことで、現在の課金の仕組みが10年後も通用するとは限らない。
2026年4〜6月期の売上は3.70億ドルで、前年同期より48%伸びた。年間経常売上が10万ドルを超える有料顧客も1635件に増え、既存大口顧客の純収益維持率は136%である。顧客の利用が広がっていることは疑いない。2026年通期の売上見通しも14.63〜14.67億ドルに引き上げられた。ただし、7〜9月期の決算発表は11月4日予定であり、現時点では確認できない。
強みは設計図そのものより、設計図を共有し、部品を管理し、開発者へ渡す仕事の流れにある。多くの会社がこの基盤を使うほど、別の道具に移る費用は高くなる。しかし、AIエージェントが画面を直接操作せずに製品を作る時代には、利用する人の席数が減りうる。フィグマはAI機能を自ら提供しているが、その追加課金が既存の席料金を長く補えるかは、まだ数字で証明されていない。
株主にとってさらに重いのは、GAAP利益と株式報酬の問題である。2025年の巨額の赤字には上場に伴う特殊な報酬費用が含まれ、これが毎年続くわけではない。それでも2026年上半期の株式報酬は3億ドルを超えた。現金収支だけでなく、株主全体に帰属する利益を見る必要がある。
10年後の中立では売上約10.1億ドル、GAAP純利益1.64億ドル、会社全体の時価総額約26.4億ドルと見る。5つの筋書きの現在価値と正味の還元を合計した価値は約5.3億ドルで、添付の時価総額126.4億ドルより約96%低い。これはAIへの悲観だけでなく、将来の株式報酬を伴う増資相当額を株主負担として差し引く厳格な評価の結果である。事業の優秀さと、株主が今払うべき値段は分けて考えたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フィグマの製品が優秀であることより、10年後にも顧客が必要な料金を払っているかを重く見る。設計の共同作業はなくならない。むしろAIが短時間で多数の案を作るほど、何を採用し、どの部品を標準とし、誰が承認するかを管理する場所は必要になる。フィグマはその場所になりうる。
しかし、優れた製品と優れた株主利益は同じではない。これまで売上を増やした中心は有料顧客と席数の拡大だった。AIが従業員の作業を肩代わりすれば、会社全体が利用する設計基盤は残っても、料金を払う人の数は減る。共同基盤の料金へ課金を移せなければ、現在の広い利用者基盤が将来の高い利益を保証しない。
オーナー利益では株式報酬が決定的だ。2025年の特殊な費用をそのまま将来へ延ばすのは誤りだが、調整後利益をそのまま株主の利益と呼ぶこともできない。開発者への株式報酬が続き、それを相殺する買い戻しがなければ、既存株主は将来の利益の一部を新しい株主に渡す。
自己資本を使わず高い粗利益を得られる性質は魅力的だ。AI開発とデータ処理に追加投資をしても、増分の利益率を資本コスト以上に保てれば価値は生まれる。ただし、今後はモデル提供者への支払いが増え、従来ほど軽い事業でなくなる可能性がある。
現在の値段には、この転換が成功し、株式報酬も正常化し、利益が継続的に出る未来がかなり先取りされている。現金があることで倒産は遠いが、株主の安全域は現金残高だけでは測れない。強いブランドを持つ会社であっても、料金を取る仕組みが変わる時期には、将来の成功を確実なものとして高い値段で買うべきではない。
何で稼ぐ会社か
フィグマの出発点は、ブラウザー上で複数人が同時に画面を設計できるFigma Designである。従来はデザイナーがファイルを作り、別の担当者へ送っていた。フィグマではデザイナー、企画担当者、開発者が同じファイルを開き、コメントし、部品を再利用する。設計の確認と修正にかかる時間を減らすことが、顧客が料金を払う理由である。
売上の中心は年間または月間の利用契約だ。企業は必要な人数に応じてFull、Dev、Collabの席を購入する。Fullは設計やAIによる試作まで扱う席で、Devは開発者向けの確認・連携機能、Collabは共同作業向けの機能を中心に使う。EnterpriseのFull席の公表料金は月90ドル、Organizationは月55ドルである。契約規模による値引きがあるため、実際の平均単価は異なる。
製品は設計画面の外へ広がっている。FigJamは会議や構想づくり、Dev Modeは設計から開発への受け渡し、Slidesはプレゼンテーション、MakeはAIによる試作、Sitesはウェブ公開、BuzzやWeaveは制作の領域を担う。2026年にはコードと設計を行き来するCode Layersや、作業を実行するFigma agentも加わった。2026年3月からはAIクレジットの利用上限を適用し、追加購入や従量課金を始めている。
会社の会計上の報告セグメントは一つであり、製品別の売上は開示されていない。そこで将来の収益を考えるため、有料顧客を年間契約額が10万ドル以上の大口顧客、1万〜10万ドルの中規模顧客、それ未満の小規模顧客に分ける。これは会社の正式な事業区分ではなく、料金を払う単位と利用目的の違いを把握するための分析上の区分である。
2025年末の大口顧客は1405件、中規模顧客は1万2456件である。大口顧客には全社で共有する設計部品や管理機能を使う企業が多いと考えられるが、顧客階層別売上は非開示だ。各階層の年間単価と売上配分には推計誤差がある。2025年の全社売上10.6億ドルと整合させつつ、開示された顧客数、契約額の下限、公表料金を使って収益構造を推定する。
2026年4〜6月期には年1万ドル超の有料顧客の80%以上がAIクレジットを毎週利用していた。ただし利用していることと、高い追加料金を継続して払うことは違う。AIクレジット単独の売上額は開示されていないため、将来の大きな独立収益として先取りしない。
優良さと弱いところ
フィグマの堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、同時編集と共有された設計資産の蓄積にある。複数の部署が同じ設計部品や画面の仕様を使っていると、別のソフトへ移すには大量の確認と修正が必要になる。開発者向けの連携機能も加わり、単なる描画ソフトから共同作業の基盤へ進んできた。
この強みには数字の裏付けがある。2025年末の純収益維持率は136%で、2026年6月末も同じ水準だった。既存の大口顧客は解約や縮小を差し引いても利用額を増やしている。2026年の決算説明では総収益維持率も90%台半ばから後半と説明されており、導入済みの仕事を簡単には他社へ移さないことを示す。利用者の多くがデザイナー以外であることも、社内の共同基盤としての広がりを物語る。
値決め力にも実績がある。2025年3月には席の種類と料金の体系を改め、2026年にはAIの追加使用料を導入した。それでも大口顧客の拡張が続いた。ただし、この維持率には席数の追加や契約変更の効果が含まれる。純粋な値上げだけで顧客が離れなかったとまでは言えない。
弱点は、設計データを保管する基盤の価値と、人が編集画面を操作するための席の価値が別物であることだ。前者には強い乗り換え費用があるが、後者はAIが仕事を代行すると必要数が減る。会社全体を規制で守られた記録システムと同じように評価することはできない。
資本効率もまだ確立していない。粗利益率は高いが、上場時の報酬費用と継続的な開発投資によってGAAP営業利益は赤字である。2026年4〜6月期も調整後では黒字だったが、GAAPでは1.17億ドルの営業損失だった。顧客の増加が、株式報酬を差し引いた株主利益へ変わることを確認するまでは、堀の価値を過大に評価すべきでない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は大きいが、すべてがフィグマの取り分になるわけではない。フィグマは2025年の上場資料で、ソフトウェア設計に関わる世界の人材を基に、自社が対象とする市場を約330億ドルと推計した。2025年の売上10.6億ドルはその約3.2%に相当する。ただし、この市場にはデザイナー以外の企画、開発、共同作業も含まれ、従来のUI設計ソフト市場よりかなり広い。
中核の画面設計では既に強い地位を得ている。6senseの2026年の導入先調査では、共同設計・試作ツールのカテゴリーでフィグマの採用シェアは約41.8%、アドビXDは約9.3%だった。これは調査対象企業での製品採用割合であり、売上シェアではない。カテゴリーに異なる種類の制作製品も混じるため、世界市場の厳密な占有率としては扱わない。
主な競争相手はアドビ、キャンバ、スケッチ、フレーマー、ペンポットである。アドビは画像や映像、ブランド制作に幅広い顧客を持ち、キャンバは専門家以外の制作を簡単にする。フィグマは製品の画面設計と共同編集に強いが、制作全体の財布を握っているわけではない。アドビのGAAP営業利益率が35%前後に達するのに対し、フィグマの利益率はまだ確立されていない。
今後の最大の変化はAIエージェントである。クロード・コードなどの開発エージェントや、大手クラウドの生成機能は、文章で指示された画面を直接コードへ変えられる。設計用の画面を経由しない開発が増えれば、デザイナーの席を販売する市場は縮む。一方で、人が作った製品の一貫性やブランドを確認する仕事は残る。フィグマが守るべきなのは描画操作そのものではなく、AIと人が共通して参照する設計部品や承認の仕組みだ。
業界ノートは従来の業務ソフト市場に名目年4.5%程度の成長余地を見ていた。しかし、AIエージェント代替を考えると、席課金にその成長を当てはめることはできない。中立では大口の共同基盤だけが比較的安定し、一般の操作席は数量と実質単価の両方で圧迫される。製品市場の拡大と、有料の人間の席数の拡大は同じではない。
資本政策と M&A
資本政策の評価では、会社が稼ぐ現金と既存株主が受け取る価値を分ける必要がある。2025年のGAAP赤字には上場に伴う大きな株式報酬が含まれた。2026年上半期の株式報酬も約3.17億ドルあり、通常の開発・販売費用とは別に、株主の持ち分が薄まる負担を生んでいる。配当はなく、継続的な自社株買いによる相殺方針も確認できない。
2025年末の純現金は約16.1億ドルで、財務上の余裕はある。2026年6月末も現金・現金同等物・有価証券を約16.7億ドル保有していた。借金による存続の危険は小さい。ただし、クラウド利用料、AIの推論費用、研究開発費、リースの支払いが続くため、現金のすべてを直ちに株主へ配れるわけではない。
過去の大きな資本政策上の出来事は、アドビによる買収計画の破談である。2023年12月に規制上の承認が難しいとして両社は契約を解除し、フィグマは10億ドルの違約金を受け取った。これは継続して稼げる利益ではない。その後、WeavyやPayload CMSなどの買収、2026年のBudの人材・技術取得を通じてAIや開発領域を広げた。現在、会社全体の買収や非公開化に関する成立済みの合意は確認されていない。
2026年通期の売上見通しは14.63〜14.67億ドル、調整後営業利益の見通しは1.25〜1.35億ドルである。GAAP利益の長期目標や数値を伴う配当・自社株買いの約束はない。将来の利益が安定すれば還元を始める余地はあるが、現時点では株式報酬とAI開発への再投資が優先されると見る。
経営権にも注意が要る。クラスB株には一株15票の議決権があり、2026年6月末時点で最高経営責任者のディラン・フィールド氏は委任分を含め約70.8%の議決権を握っていた。長期の製品開発には有利でも、少数株主が現金の使途や大型買収に異議を唱える力は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フィグマはAIによって消える設計ソフトではなく、AIが作った成果物を企業が管理するための共通基盤になる。多くの会社では、画面を一つ作ることより、何百もの画面の使い勝手やブランドを揃えることの方が難しい。フィグマには再利用できる設計部品、企業の共有ライブラリ、開発者との連携、承認の履歴が蓄積されている。AIが設計とコードを速く作るほど、成果物を統一する場所への需要は残る。
既存顧客の行動はこの見方を支える。2026年6月末の純収益維持率は136%で、大口顧客は前年より46%増えていた。2026年4〜6月期は売上が48%伸び、年間見通しも引き上げられた。AIクレジットの利用は広く浸透し、Figma agentも大口顧客に使われ始めた。顧客が機能を試すだけでなく、席の追加やAI使用料を実際に払っていることは重要である。
アドビが買収を断念した後も独立して製品群を広げ、アドビXDからは大きく市場を奪ってきた。デザイナーから企画、開発、公開までを一つの契約にまとめられれば、個別の制作ツールに分断されていた支出を獲得できる。マイクロソフトやグーグルがAI機能を提供しても、顧客が特定のモデルに依存しない共通の設計基盤を求めるなら、フィグマは中立的な接続先として生き残る。
2025年の巨額の報酬費用は上場時の特殊事情が大きく、これを将来の定常費用と同一視する必要はない。AIへの投資が落ち着き、株式報酬が減れば、粗利益率の高さがGAAP利益へ現れる。手元の現金は研究開発を支え、大口顧客の強い定着は収益の土台になる。この場合、10年後のフィグマは小さくても高収益の共同設計基盤として存続し、現在よりはるかに高い利益を稼ぐ可能性がある。
慎重な見方
現在の顧客数の増加は、10年後の課金力を証明していない。フィグマの利用者が増えたのは、人が画面を作り、修正し、確認する工程を便利にしたからである。AIエージェントが自然言語から直接コードを作り、修正も自動で進めるなら、同じ人数の有料席を持つ必要がなくなる。設計の仕事が増えても、設計用ソフトの席数は減りうる。
強い共同編集機能も永久の独占ではない。生成されたコードを直接管理する開発環境が標準になれば、設計の正本は画面ファイルではなくコード側へ移る。クロード・コードなどの開発エージェント、大手クラウド、キャンバやアドビがそれぞれ設計や制作を自動化すると、フィグマは異なる環境をつなぐ便利な道具の一つに下がりかねない。オープンソースのペンポットや他の設計ツールも、単価を引き下げる競争要因になる。
2026年のAIクレジット課金は始まったばかりで、独立した売上と利益の実力はまだ分からない。週次利用率が高くても、使う回数が増えればモデル提供者への支払いも増える。高い粗利益率を長く保てるとは限らず、顧客が他のAIサービスを直接利用すれば追加料金も取れない。
財務を見ると、上場時の特殊な株式報酬があったとはいえ、2026年上半期にもGAAP営業赤字が続いた。調整後の黒字だけを見て企業価値を測るのは危うい。将来の株式報酬が多いままなら、現金が積み上がっても既存株主の持ち分は薄まる。経営者が強い議決権を持つため、現金を還元させる外部の圧力も弱い。
現在の値段は、AIがフィグマの競争相手になる場合と、AIを利用した追加収入が小さい場合を十分に許容していない。大口顧客の一部が残るだけでも会社は存続できるが、存続することと現在の時価総額を正当化することは全く違う。
どちらに重みを置いたか
共同設計の基盤としての強さと足元の顧客拡大では、強気の見方に十分な根拠がある。しかし、10年後にどの単位で料金を取るかという問いでは、不確実性が大きい。AIエージェント代替は中立の数量・価格と長期成長率に織り込み、資本コストの寿命項目では重ねて引かない。
やや悲観と悲観の合計確率は43%とした。AIの普及だけを理由に重ねて悲観確率を上げたのではなく、株式報酬を減らせない可能性、創業者による強い議決権支配、追加AI料金の利益率が未確認であることを考慮した。楽観側も28%残し、顧客基盤がAI時代の共通設計基盤になる余地を認める。
現在価値と市場価格の差は約マイナス96%で、結論は割高である。大きな差には将来の株式報酬による正味の還元負担が効いている。この負担が大幅に減れば価値は上がるが、それを会社の約束として先取りする根拠はまだない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4.66 ドル24 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −1.64 ドル−8 億ドル)。 今の値に割り戻すと 1.04 ドル5 億ドル、今との差 −95.2%、 期待の年率 −15.6%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 8.83 ドル45 億ドル | −0.97 ドル−5 億ドル | −63.7% | −9.2% | 0.86 ドル4 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 7.42 ドル38 億ドル | −1.36 ドル−7 億ドル | −72.0% | −11.1% | 1.03 ドル5 億ドル |
| 中立 | 29% | 5.14 ドル26 億ドル | −1.95 ドル−10 億ドル | −85.3% | −15.0% | 0.92 ドル5 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 2.25 ドル12 億ドル | −1.56 ドル−8 億ドル | −96.8% | −22.0% | 0.18 ドル1 億ドル |
| 悲観 | 17% | 2.06 ドル11 億ドル | −1.95 ドル−10 億ドル | −99.5% | −23.2% | 0.02 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 4.66 ドル24 億ドル | −1.64 ドル−8 億ドル | −86.1% | −15.6% | 3.02 ドル15 億ドル |
今の株価時価総額 21.65 ドル111 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 楽観:共同設計の正本として残り、GAAP利益率が大幅改善 利益 3 億ドル · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8.83 ドル45 億ドル
2035年、フィグマは人とAIが共同で設計資産を扱う基盤として残る。企業はAIで多数の画面を作るが、ブランドや部品の統一、承認、開発者への受け渡しには共通の場所が必要になる。大口顧客は1405件を維持し、共有ライブラリや管理機能の料金を守る。中規模顧客も1万2456件を保ち、小規模の有料顧客も50万件にとどまる。
価格には共同基盤の値決め力が残る。大口の平均単価は2025年の1.34倍、中規模と小規模は1.15倍となる。これは物価上昇を十分に取り込めない部分もあるという前提であり、AIエージェントが既存の人間の席数を大幅に増やす筋書きではない。全社売上は約13.1億ドルとなる。
AI開発費の効率化と株式報酬の正常化により、GAAP営業利益は約3.27億ドルに改善する。営業利益率は約25%で、アドビの35%前後には届かない。2031年以降には一部の買い戻しも始まるが、10年間の株式報酬を完全には相殺できず、正味の還元はマイナス5億ドルにとどまる。買収は小規模の技術取得に限り、純現金は24億ドルを確保する。
2026年と2027年のGAAP赤字が縮小した後、利益が段階的に増え、10年間の純利益累計は8.3億ドルとなる。これは既存顧客の定着と費用の正常化が成功する筋書きであり、AIによる新規の席数爆発を前提にしない。
- 大口企業の設計・共同作業基盤:数量 1,405(年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数)× 価格 48(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。共有設計基盤の契約を維持し、管理・連携機能で単価を守る
- 中規模顧客の設計・開発席:数量 12,456(年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数)× 価格 3.14(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。席数は横ばいで、製品統合が解約を抑える
- 小規模チーム・個人向け有料利用:数量 500,000(小規模有料顧客アカウント数の推定)× 価格 506(1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模チームの有料利用が維持される
倍率:k8.0%、全社g_long0%。事業ROEの基礎は2035年のGAAP純利益3.0÷自己資本28.4=10.6%。余剰現金を別評価するが、式のROEを無形資産の恣意的な除外で膨らませない。moatは全社で普通とし、RONIC=8.0%+1/2×(10.6%-8.0%)=9.3%。正当化PER=(1-0%/9.3%)/(8.0%-0%)×(1+0%)=12.5倍。AIエージェント代替の上限そのものを採用し、将来の高成長を倍率へ加えない。GAAP純利益には株式報酬費用を含む。余剰現金24億ドルの税後利息相当0.336億ドルを除いた事業利益に12.5倍を掛け、現金に戻り方0.5を掛けて12億ドル加える。計算は(3.0-0.336)×12.5+24×0.5=45.3億ドル。
確率:共有設計資産の堀が守られ、AIの普及で席数が増えなくても企業の契約が維持される展開。高い純収益維持率と製品統合が根拠になる。ただしAI追加課金の売上額は非開示で、大きな新規収益を先取りしないため11%。
やや楽観 17% やや楽観:大口の定着が続き、利益率は成熟ソフト並みに改善 利益 3 億ドル · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7.42 ドル38 億ドル
2035年、フィグマは設計から開発までの情報を共有する場所として企業に残る。しかし、人がすべての画面を手で作る時代は終わり、AIエージェントが一部の作業を担う。大口顧客は1377件となり、2025年末からわずかに減る。中規模顧客は1万1833件、小規模顧客は45万件となる。AIが製品を作る量は増やしても、フィグマに料金を払う人の数は増えない。
大口顧客は共有部品、管理機能、監査のために契約を続け、平均単価を1.30倍にできる。中規模は1.13倍、小規模は1.12倍となり、値上げは物価を下回る。合計売上は約12.2億ドルとなる。競合のアドビやキャンバに一部の制作需要を奪われるが、製品設計の共同基盤としての地位は保つ。
経営はAIの推論費用を抑え、特定のモデル提供者に依存しない仕組みを整える。GAAP営業利益は約2.67億ドル、純利益は2.5億ドルとなる。報酬株式の発行は減るものの、10年間の正味の還元はマイナス7億ドルで、現金は21億ドル残る。
2026年からの赤字縮小を経て、2030年代に利益が増える道筋を想定する。10年間のGAAP純利益累計は4.05億ドルとなる。優れた会社として生き残るが、AIが業界全体の席数を増やすという楽観は必要としない。
- 大口企業の設計・共同作業基盤:数量 1,377(年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数)× 価格 46(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。共同基盤は残り、顧客数は小幅減
- 中規模顧客の設計・開発席:数量 11,833(年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数)× 価格 3.08(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。AI代替で一部の席数が減る
- 小規模チーム・個人向け有料利用:数量 450,000(小規模有料顧客アカウント数の推定)× 価格 493(1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模の有料利用は緩やかに減少
倍率:k8.0%、g_long0%、事業ROEの基礎は2.5÷26.15=9.6%。moatは普通でRONIC=8.0%+1/2×(9.6%-8.0%)=8.8%。正当化PER=12.5倍。AIエージェント代替の型に従って上限そのものを使い、残る共同基盤の価値を認める。GAAP純利益から余剰現金21億ドルの税後利息0.294億ドルを除く。時価総額は(2.5-0.294)×12.5+21×0.5=38.075億ドル。市場の過去倍率は使っていない。
確率:大口顧客の継続性は強いが、AIが席数を削るため数量は小幅に減る。共同基盤の値決め力が残り、株式報酬が現在より正常化する展開は十分ありうると見て17%。
中立 29% 中立:共同設計基盤は残るが、AIにより有料席が減少 利益 2 億ドル · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5.14 ドル26 億ドル
2035年、フィグマの共同設計基盤は企業に残る。しかし、AIが画面作成、修正、試作からコード生成までを担い、人間が購入する有料席の数は減る。大口顧客は1265件、中規模顧客は9965件、小規模顧客は37万5000件となる。2026年の顧客増加がそのまま10年間続くわけではなく、途中からAIによる席数削減が上回る。
大口顧客は設計部品の正本と共有管理機能を必要とし、平均単価は2025年の1.20倍まで上がる。中規模は1.10倍、小規模は1.05倍にとどまる。どちらも物価の10年間の上昇約1.41倍を下回る。全社売上は約10.1億ドルとなり、2026年の会社見通しを一度上回った後、AI代替により市場規模が縮む道筋を含む。
株式報酬とAI開発費は次第に減る。GAAP営業利益率は約16.7%に改善するが、アドビの35%前後には届かない。純利益は1.64億ドルとなる。2026年の約5億ドルのGAAP赤字から、2027年、2028年と損失が縮小し、2029年に黒字へ転じる。2030年代前半は毎年利益を増やすが、10年間の累計利益はマイナス1.96億ドルにとどまる。
株式報酬による既存株主の負担が残り、買い戻しや配当を差し引いた正味の還元はマイナス10億ドルとなる。純現金は残るため経営は続けられるが、オーナー利益としての成果は限定的である。価値の中心は大口顧客が手放しにくい設計基盤であり、一般の席課金は成熟市場として扱う。
- 大口企業の設計・共同作業基盤:数量 1,265(年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数)× 価格 43(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。共同基盤の数量0.90倍、価格1.20倍
- 中規模顧客の設計・開発席:数量 9,965(年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数)× 価格 3.00(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。操作席の数量0.80倍、価格1.10倍
- 小規模チーム・個人向け有料利用:数量 375,000(小規模有料顧客アカウント数の推定)× 価格 462(1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模席の数量0.75倍、価格1.05倍
倍率:k8.0%、g_long0%。式のROEの基礎はGAAP純利益1.64÷2035年自己資本23.14=7.1%。成長に必要な無形資産を除外してROEを高く見せない。moatは全社で普通としRONIC=8.0%+1/2×(7.1%-8.0%)=約7.55%。ROEが資本コスト以下のため正当化PERの上限は1/k=12.5倍。g0%なら翌期利益に対する式も12.5倍となり、AIエージェント代替の規則に従って上限を採用する。純利益はGAAPで株式報酬を費用計上済み。現金の税後利息相当18×0.014=0.252億ドルを除いた事業利益へ掛け、現金の戻り方0.5を加える。時価総額は(1.64-0.252)×12.5+18×0.5=26.35億ドル。
確率:大口の共同設計基盤は残りやすい一方、中小の操作席にはAIエージェント代替が効く。足元の高成長を10年先へ延ばさず、2030年代の成熟した収益構造を見る。中心となる筋書きだが不確実性が高いため29%。
やや悲観 26% やや悲観:操作席が大きく減り、共同基盤だけが収益を支える 利益 1 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.25 ドル12 億ドル
2035年、フィグマは依然として知られた製品だが、有料席の需要は大きく減っている。AIエージェントが多くの設計と開発を直接処理し、中小企業は画面設計の専用席を以前ほど必要としない。大口顧客は1082件、中規模顧客は7723件、小規模顧客は27万5000件となる。
大口の契約では共有ライブラリや管理機能が残るため、平均単価は1.10倍を保つ。しかし中規模の単価はほぼ横ばい、小規模は名目でも1割下がる。競合のキャンバやアドビ、大手クラウドのAI制作機能が価格交渉力を強める。売上は約7.4億ドルへ減少する。
費用削減と開発チームの縮小によって営業黒字は保つが、営業利益率は約6.5%しかない。利益の中心は企業向けの共同設計基盤であり、小規模顧客向けの事業は赤字に落ちる。GAAP純利益は0.65億ドルとなる。
経営は製品の統廃合を進めるが、株式報酬の負担は残る。2026年から数年間の損失によって10年間の純利益累計はマイナス6.15億ドルとなり、正味の還元もマイナス8億ドルである。純現金は14億ドルを残すが、企業価値の多くを現金が占めるようになる。かつての成長企業ではなく、縮小しながら既存顧客を維持する会社という姿である。
- 大口企業の設計・共同作業基盤:数量 1,082(年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数)× 価格 39(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。一部の大口顧客がAI中心の開発環境へ移行
- 中規模顧客の設計・開発席:数量 7,723(年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数)× 価格 2.70(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。席数が約4割減り、実質単価も低下
- 小規模チーム・個人向け有料利用:数量 275,000(小規模有料顧客アカウント数の推定)× 価格 396(1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。無料AIと低価格ツールが浸透
倍率:k8.0%、全社g_long0%の下で1/kは12.5倍だが、構造的な競争劣位により将来利益の持続性を低く見る。正当化PERの上限12.5倍より低い10.0倍を採用する。2035年のROEは0.65÷16.95=3.8%で資本コストに届かない。余剰現金14億ドルの税後利息0.196億ドルを除いた事業利益に掛け、現金の戻り方0.5を加える。計算は(0.65-0.196)×10+14×0.5=11.54億ドル。中立の倍率より低い。
確率:大手AI企業が設計からコードまでを直接扱い、中小企業が有料席を減らす。顧客数の減少に加え、報酬株式が引き続き株主負担となる。AIによる数量減少は既に計算へ反映し、確率には収益化の遅れとガバナンスの不確実性を加えて26%。
悲観 17% 悲観:AIが設計操作を代替し、残る現金と顧客資産が価値の中心 利益 0 億ドル · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.06 ドル11 億ドル
2035年、フィグマの設計画面は以前ほど使われなくなる。開発者はAIに指示し、コードを直接生成して製品を変更する。大企業の一部には共有設計部品の保管と承認の仕事が残るが、中小企業では専用の設計ソフトを買わない例が増える。大口顧客は843件、中規模顧客は4982件、小規模顧客は20万件となる。
価格も崩れる。大口の平均単価は2025年の0.90倍、中規模は0.85倍、小規模は0.80倍に下がる。10年間で物価が上昇する中、名目の料金さえ維持できない。全社売上は約4.56億ドルで、2025年の半分を下回る。アドビやキャンバの制作基盤に加え、開発エージェントが製品の作り方そのものを変えるため、フィグマが画面設計で独立した課金を続ける意味が弱くなる。
共通基盤の一部だけが黒字で、中規模・小規模顧客向けは赤字となる。全社営業損失は約0.45億ドルで、GAAP純損失は0.18億ドル。2026年から2035年までの累計純損失は13.13億ドルに及ぶ。株式報酬による正味の還元負担も10億ドル残るが、経営は大きな縮小の判断を遅らせる。
手元現金の一部は赤字、AI開発、固定費、事業再編に使われる。それでも2035年には現金性資産約8億ドルと、回収可能な顧客債権などが残る。倒産を前提に全てを失う筋書きではない。会社の価値は将来の高成長ではなく、残る現金と売れる資産を中心に決まる。
- 大口企業の設計・共同作業基盤:数量 843(年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数)× 価格 32(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。設計基盤の一部だけが残り、値引きが進む
- 中規模顧客の設計・開発席:数量 4,982(年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数)× 価格 2.32(1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェントによる直接開発が席需要を奪う
- 小規模チーム・個人向け有料利用:数量 200,000(小規模有料顧客アカウント数の推定)× 価格 352(1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。無料・低価格の生成AIに置き換わる
倍率:2035年もGAAP純損失が続くためPERは適切でない。SCHEMA.md §1-3に従い、悲観の床をその時点に残る純現金と売却・回収できる資産の税後価値から評価する。2035年の純現金8.0億ドルに、売掛債権・契約資産・換金可能な事業資産の税後回収見込額2.5億ドルを加えると、床は10.5億ドルとなる。これは実績開示額ではなく、悲観シナリオの資産回収に関する仮定である。2035年の自己資本11.97億ドルから純現金8.0億ドルを除いた非現金純資産3.97億ドルのうち、約63%が回収可能という前提である。過去の谷のPBRや、2035年までに積み上げた自己資本へ倍率を掛けて価値を膨らませる方法は使わない。2025年末の自己資本15.1億ドルを基準にPBR0.70倍とすると10.57億ドルであり、資産回収の床10.5億ドルをわずかに上回る。時価総額10.57億ドルと正味の還元マイナス10.0億ドルの合計はプラス0.57億ドルである。
確率:AIによる制作の自動化が進み、フィグマの有料席と単価がともに崩れる構造的な負け。さらに経営が事業の縮小と資本政策の転換を遅らせ、現金を消費する展開を想定する。存続可能性は残るが17%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
大口企業の設計・共同作業基盤
年間経常売上が10万ドル以上の有料顧客。企業全体の設計部品、共同編集、管理機能、開発者連携が中心で、操作席と共有基盤が混在する。分析上は共有基盤の継続性を重視する。
| 数量年間経常売上10万ドル以上の有料顧客アカウント数 | 価格1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,405 | 36 | 5 | −6 |
| 10 年後 中立 | 1,265 | 43 | 5 | 1 |
取り方:2025年末の年間経常売上10万ドル以上の有料顧客1405件は会社の開示値。このうち100万ドル以上が67件であり、大口顧客の年間売上には下限がある。顧客階層別売上は非開示のため、1アカウント平均約35.6万ドル、全体売上5.0億ドルは推計であり実績ではない。公表されたEnterpriseのFull席月90ドルや複数人利用と整合する範囲を採った。2025年の営業損失は全社共通の株式報酬と開発費を含む配賦であり、顧客階層別利益の実績ではない。AIエージェント代替に対しては、総収益維持率が90%台半ばから後半であることと、設計部品や共有ライブラリが部署横断の仕事に使われていることを堀の証拠とする。ただし全契約が記録の正本ではないため、中立でも数量0.90倍、単価1.20倍にとどめる。
中規模顧客の設計・開発席
年間経常売上1万ドル以上10万ドル未満の顧客。デザイナーと開発者のFull・Dev席への依存が大きく、AIによる席数削減が収益へ直接響きやすい。
| 数量年間経常売上1万〜10万ドルの有料顧客アカウント数 | 価格1顧客アカウント当たり推定年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12,456 | 2.73 | 3 | −4 |
| 10 年後 中立 | 9,965 | 3.00 | 3 | 1 |
取り方:会社開示の年1万ドル以上の有料顧客13861件から年10万ドル以上の1405件を差し引き、12456件を得た。1顧客平均約2.73万ドルは1万〜10万ドルという開示区間に収まる推計である。売上3.4億ドルは階層別の実績ではなく、FY2025全社売上と大口顧客・小規模顧客の推計を照合した値。比較対象はアドビの制作ソフト、キャンバ、スケッチ、フレーマー、開発エージェントである。業務画面と席数の代替を受ける型と判断し、中立の数量を0.80倍、価格を物価1.41倍より低い1.10倍、長期gを-1%とする。営業損失は全社費用の推計配賦。
小規模チーム・個人向け有料利用
小さな制作チームや個人の有料利用。Professionalなどの席料金が中心で、無料プランやAI生成ツールとの切り替えが比較的容易である。
| 数量小規模有料顧客アカウント数の推定 | 価格1顧客アカウント当たり推定年間売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500,000 | 440 | 2 | −3 |
| 10 年後 中立 | 375,000 | 462 | 2 | 0 |
取り方:小規模アカウント数は会社のFY2025開示値ではなく推計。会社は2026年3月末の全有料顧客を約69万件、前年比54%増と開示したため、2025年春には約45万件あったことになる。2025年末の小規模顧客を約50万件と仮定し、年間平均売上440ドルを掛けた。公表された月額の席料金と、小規模チームでの複数席利用を参考にしたが、顧客数・単価・売上ともに独立して検証できない部分が大きい。AIエージェント代替と無料競争が最も直接的に効くため、中立の数量0.75倍、価格1.05倍、長期g-1%とする。営業損失は全社共通費の推計配賦。
リスクと懸念
AIエージェント代替
フィグマの主な収益は人が画面を操作することを前提とした席課金である。開発エージェントが画面設計とコード生成を直接行えば、設計する製品が増えても有料席は減る。共同基盤が残ることと操作席が残ることは別であり、中立では中小顧客の数量を10年で0.75〜0.80倍に減らした。AIを自社製品に取り込んでも、席数の減少を必ず補えるわけではない。
AI追加課金の採算と開示不足
2026年にはAIクレジットの追加購入が始まり、大口顧客の80%以上が毎週利用した。ただし、利用回数と収益額は違う。会社はAI追加課金だけの売上や利益を独立して開示していない。推論費用が高く、競合が同じ機能を安く提供すれば、利用が増えても粗利益は増えない。実際に独立した収益源になったかを継続して確かめる必要がある。
株式報酬による既存株主の持ち分の減少
2025年の上場に伴う巨額の報酬費用は特殊だが、2026年上半期にも株式報酬が約3.17億ドル発生した。調整後利益ではこの費用の多くが除外される。将来も従業員への株式交付が続き、買い戻しで相殺しなければ、会社全体の利益が増えても既存株主の取り分は薄まる。分析ではGAAP利益を使い、さらに正味の還元で株式交付の経済的負担を反映した。
大手制作ソフトと開発基盤との競争
アドビやキャンバは制作全体の顧客を持ち、開発エージェントは設計工程そのものを短くする。スケッチやペンポットなども価格競争の圧力となる。フィグマが共同編集の中心を守っても、顧客が支払う席料金を維持できるとは限らない。大口契約が減るよりも、Full席から安い席へ切り替わることの方が先に売上へ効く可能性がある。
創業者の議決権支配と資本配分
2026年6月末時点で最高経営責任者は約70.8%の議決権を支配していた。強い経営権は一貫した研究開発を可能にする反面、利益が出ても現金を株主へ還元しない判断や、採算が不確かな買収を外部株主が止めにくい。アドビとの過去の買収計画は解消済みだが、将来の大型再編が起きても少数株主の発言力は限定的である。
粗利益率の低下と固定的な支出
2026年4〜6月期のGAAP粗利益率は84%と高かったが、AIモデル利用料と研究開発費は増えている。クラウド利用契約、オフィスのリース、顧客向けの運用費は需要が減ってもすぐには消えない。売上が減少する局面では高い固定費が利益率を急速に悪化させる。過去の粗利益率を将来の営業利益率としてそのまま使うことは危険である。
市場規模と有料顧客数の取り違え
会社が示した約330億ドルの市場規模にはソフトウェア開発や共同作業の広い領域が含まれる。フィグマの中核である画面設計だけの市場ではない。利用者が増えることと有料契約が増えることも一致しない。無料利用者やAIによる自動操作が増えれば、全体の利用量は増えながら売上が縮む場合もある。将来の評価では月間利用者数より有料顧客、単価、GAAP利益を優先する。
今後の分かれ目
- 年10万ドル以上の有料顧客が2027年以降も2桁成長を続け、総収益維持率も95%以上を保ったら
- 大口企業の設計基盤の堀は想定より強い。中立の大口顧客数量を引き上げ、楽観側の確率を増やす余地が生まれる。ただし他の席課金まで同じ成長を認めるわけではない。
- AIクレジットの独立した売上と粗利益が開示され、既存席数の減少を補える金額が確認できたら
- AIを自社の売り物として収益化した証拠になる。従来の席課金から利用量課金への転換を独立した収益源として評価できるため、中立と楽観の価値を引き上げる。
- 大口顧客の純収益維持率が110%を下回り、Full席から低価格席への移行が広がったら
- AIエージェント代替が企業の契約額に影響し始めた合図である。大口の価格と数量を下げ、やや悲観の筋書きを重くする。
- GAAP営業利益率が2年間連続して15%以上になり、株式報酬の売上比が10%以下に下がったら
- オーナー利益の持続性が明確に改善する。純利益の見通しと正味の還元を引き上げる。ただし調整後営業利益だけで判定しない。
- 年間の自社株買いが株式報酬による株式交付を継続的に上回り、実質的な希薄化が止まったら
- 株主に帰属する価値が大きく改善する。payout_okuのマイナス幅を縮め、現金が実際に株主へ戻るかを確認して再評価する。
- 大手クラウドや開発エージェントが、設計部品の管理と企業の承認機能まで標準で提供し始めたら
- 共同基盤の堀まで弱まる。大口顧客を記録の正本に近い型と扱う根拠が失われるため、数量・価格・長期成長率を引き下げ、悲観の可能性を重くする。
見ておくもの
- 年間経常売上10万ドル以上の有料顧客数と、1万ドル以上の顧客数の伸び
- 純収益維持率136%の変化と総収益維持率の推移
- Full・Dev・Collabの席数と契約単価の変化
- AIクレジットの独立売上、追加購入率、推論費用、粗利益率
- 調整後ではなくGAAP営業利益と株式報酬の売上比
- 発行済株式総数と自社株買いによる希薄化の相殺状況
- Figma agent、Figma Make、開発エージェント連携の有料利用への転換
- 2026年11月4日発表予定の7〜9月期決算と通期見通し
倍率と資本コストの決め方
最初に市場の時価総額や市場PERから将来価値を決めず、2025年の開示顧客数を起点に、大口・中規模・小規模の数量と価格を組み立てた。ただし階層別売上は非開示であり、推計の不確実性は大きい。AIエージェント代替は中立の席数と価格、長期g0%へ反映し、kのlifeには重ねていない。
米国株の基本k8.0%から正当化PERを計算し、GAAP純利益を使った。楽観から中立までの12.5倍はg0%の正当化PER上限であり、現在や同業の市場倍率から求めていない。純現金は受取利息を事業利益から除いて別に評価し、経営による還元実績の乏しさを戻り方0.5で表した。
確率加重後の現在価値は約5.34億ドル、添付の時価総額126.4億ドルとの差は約マイナス95.8%で割高となる。10年後の時価総額の順序、PER・PBRの計算、自己資本の繰越、悲観の売却可能資産の床を検算した。悲観の時価総額10.57億ドルと正味還元マイナス10.0億ドルの合計はプラス0.57億ドルである。差は極端だが、株価へ結論を寄せる調整はしていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは米国株の基本8.0%にquality0.0%を加えた8.0%。株価βと市場PERは使わない。アドビの8.8%より低いのは純現金と共同設計の値決め力によるが、AIによる席課金の縮小と株式報酬は将来利益・正味還元・確率で別途厳しく評価する。存続危機はなくextraは0%。