結論
エリクソンは、携帯電話の基地局と通信網の中枢を世界の通信事業者に供給する、スウェーデンの通信機器大手である。筆者の結論は割高である。通信網そのものは10年後も必要だが、通信量が増えることと、設備を売る会社の利益が増えることは別だからだ。
最大の強みは、いったん設置した基地局を別のメーカーへ切り替える難しさにある。中国を除く無線アクセス網市場では2025年に約37%のシェアを持ち、世界でもファーウェイに次ぐ大手である。数万件の特許と長年の顧客関係が支えになり、簡単には姿を消さない。一方、購入者は巨大な通信事業者に集中しており、設備価格を自由に上げられるほど強い立場ではない。
2025年の純利益は29億ドルまで回復した。しかし、同年にはiconectivの売却益が含まれ、これを毎年の稼ぎと考えることはできない。2026年7〜9月期は売上が前年同期比6%増え、有機成長率も7%となったが、企業向け事業の損失が続いている。主力の無線設備が回復しても、グループ全体の利益が同じ勢いで増えるとは限らない。
2036年の中立では、売上を約292億ドル、純利益を約27億ドルと見る。5Gから6Gへの更新は続くが、市場全体の伸びは小さい。運用受託の一部はAIによって必要な工数が減り、過去のような売上の積み上がりは期待しにくい。10年間の還元を含めた確率加重の現在価値は約224億ドルで、台帳時価総額の356億ドルを約37%下回る。
これは事業の消滅を予想する評価ではない。優れた無線技術、特許、顧客基盤を残しながらも、その価値を得るために支払う価格が高いという判断である。長く保有する株主にとって最大の問題は、技術の寿命よりも、新たな投資と買収が資本コストを超える利益に結び付くかどうかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エリクソンは将来の存在をかなり確信できる事業と、利益の予測が難しい事業を併せ持つ会社である。無線設備の設置基盤は大きく、通信網が世界からなくなることは考えにくい。通信事業者は既存設備との互換性を重視するため、継続的な更新需要は残る。特許による収入もあり、単なる汎用機器メーカーよりは優れた経済性を持つ。
しかし、長く必要とされることだけでは高い本質価値は生まれない。通信事業者には、設備を長く使うほど投資を減らしたいという動機がある。顧客にとっての技術進歩が、製造会社にとっての売上成長と逆方向に働くこともある。このため、通信量の増加を売上の増加へ単純に置き換えることはできない。
最も気になるのは資本配分である。ボネージ買収に投じた資金は巨額で、後の減損は投資判断の誤りを示している。成長のために投じた資本が十分な利益を生まないなら、内部留保より株主還元を優先すべきである。近年は自社株買いと事業売却が進み、その方向へ変わる兆しがある。
2025年の会計上の純利益は29億ドルだが、売却益を除く実力はそれより低い。設備更新、研究開発、運転資金、株式報酬の負担を考えると、株主が毎年自由に受け取れる利益を同額とみなすことはできない。2026年の再編費用も無視できない。
中立の2036年純利益は約27億ドルである。事業の寿命が長くても、利益が大きく成長しないなら資本コストを上回る投資収益を得るには購入価格が重要になる。現在の時価総額には、6G更新による成長と企業向け事業の改善がかなり織り込まれているように見える。筆者は、事業の存続を評価する一方、今の価格には十分な安全域がないと判断する。
何で稼ぐ会社か
エリクソンの顧客は、ベライゾン、AT&T、Tモバイルなどの通信事業者を中心に、各国の通信会社と政府、企業に広がっている。最大のネットワーク事業では、基地局の無線機、アンテナ、信号処理装置、通信ソフトを供給する。機器を売った後にも、更新、最適化、保守、通信規格に関するライセンスから収入が生まれる。2025年の同事業は全社売上の約64%を占めた。
基地局は、単なる通信機器ではない。電波の周波数、基地局の配置、端末との互換性、電力効率を一体として設計する必要がある。既存設備を残したまま新しい通信規格へ移るため、顧客は採用済みのメーカーを使い続けやすい。これがエリクソンの最大の競争上の強みである。ただし、通信事業者は数年ごとの入札で価格を厳しく比較するため、乗り換えの難しさがそのまま値上げの自由につながるわけではない。
クラウドソフトウェア・サービス事業は、基地局の背後で通信を制御するコアネットワーク、加入者情報、課金、通信網の監視と運用を担う。2025年の売上は全社の約26%で、そのうちサービスが62%を占めた。ソフトウェアはネットワークに深く組み込まれ、契約を維持しやすい。一方、システム導入や監視、運用受託には人の作業も含まれ、AIによる自動化が顧客の支払う対価を減らす可能性がある。
企業向け事業には、2022年に買収したボネージの通信API、クラウド電話、コンタクトセンターと、クレイドルポイントを中心とする企業向け無線接続がある。通信APIは、アプリケーションから通話、認証、メッセージ送信などを利用する仕組みで、利用回数に応じて課金できる。しかし、トゥイリオやシンチなどの競合が多く、収益性は安定していない。席数に応じた課金の部分は、AIエージェントによる業務の自動化にもさらされる。
2025年には通信番号管理会社iconectivを売却した。売却によって現金を得た一方、毎年の安定した収益源を失った。2026年10月には企業向け無線事業の組織再編が発表され、専用5Gなどをネットワーク部門へ移すことになった。今後も報告上のセグメント構成は変わり得るが、評価では事業そのものの数量と価格を追うことが大切である。
優良さと弱いところ
エリクソンには長く残る競争上の強みがある。特に、世界の通信事業者が使う無線設備の設置基盤は強い。2025年には中国を除く市場で約37%のシェアを持ち、同社が構築した商用5Gネットワークは世界206網に達していた。大規模な通信網では、機器の置き換えに長期の試験と運用変更が必要になるため、新規参入企業が安い価格だけで既存設備を奪うことは難しい。
特許も重要な財産である。会社は6万件を超える登録特許と100件を超えるライセンス契約を持つ。2026年にはスマートフォンメーカーなどとの新たな契約も進み、継続的な特許収入の基盤が強化された。特許の価値は設備の出荷台数だけに依存しない。ただし、契約の更新時期や過年度分の一括収入によって、四半期の利益は大きく振れる。
弱点は顧客の交渉力である。通信事業者は少数の巨大企業であり、設備の調達規模が大きい。2025年には最大顧客だけで全社売上の約14%を占めた。ファーウェイやノキアと競り合う大型案件では、価格と納期が受注の決め手になる。2025年のネットワーク事業の営業利益率は会社開示で約20%だったが、この水準が常に保証されるわけではない。
資本効率も見かけほど安定していない。2025年のROEは24%を超えたが、過去10年の中央値は約2%にすぎない。2017年と2023年には大きな赤字を計上し、ボネージ関連の減損で自己資本が削られた。研究開発への再投資が必要な事業であり、当期の利益率だけから長期の増分ROICを推定するのは危険である。
したがって、無線設備と特許の競争上の強みは強いと評価するが、会社全体を無条件に優良企業とは呼べない。顧客を囲い込む力は残る一方、価格を決める力は限定的である。今後10年で強みが広がるには、6Gの更新需要だけでなく、通信ソフトと特許から継続的に高い利益を得る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の無線アクセス網市場は、成長市場というより更新市場になっている。オムディアによれば、2025年の無線アクセス機器市場は約350億ドルだった。市場調査会社Dell'Oroは、2025年から2030年の世界市場の売上成長を年1%程度と予想している。通信量は増えても、機器の性能向上によって単位通信量当たりの設備費用が下がるため、市場全体の売上は大きく増えない。
競争相手は、ファーウェイ、ノキア、ZTE、サムスンが中心である。オムディアの2024年の世界シェアは、ファーウェイ34.2%、エリクソン25.7%、ノキア17.6%、ZTE11.4%、サムスン4.8%だった。2025年も順位は変わらず、エリクソンのシェアは概ね横ばいだった。中国ではファーウェイとZTEが強く、中国以外ではエリクソンが最大手という地域差がある。
2026年時点で、5Gの普及は続いている。エリクソンの調査では同年半ばの世界の5G契約数は約33億に近づき、6Gの初期商用化は2030年前後と予想される。しかし、端末の契約数が増えても、通信事業者が基地局の設備投資を同じ割合で増やすわけではない。既存の4G設備の縮小、設備の共用、基地局の高性能化が、新しい5G投資の増加を相殺する。
6Gは次の成長機会だが、不確実性も大きい。新しい周波数やAIを使う通信制御には研究開発が必要で、先行企業が高い利益を得る可能性がある。一方、オープンRANやクラウドRANが普及すれば、無線ソフトを汎用計算機で動かす選択肢が増え、通信会社が調達先を分けやすくなる。技術の進歩が必ず既存メーカーの利益を増やすとは限らない。
企業向け通信も競争が激しい。世界のCPaaS市場は2025年に約149億ドルで、トゥイリオが25.4%のシェアを持つ。ボネージは主要事業者の一つだが、全社の通信プラットフォーム売上には席課金や音声サービスも含まれるため、CPaaSだけのシェアとは区別すべきである。企業向け専用LTE・5Gネットワークは世界で約6500網に増えたが、なお市場規模は小さく、エリクソン全体の利益を急増させるほどの規模には達していない。
同じネットワーク機器領域に分類されるシスコやアリスタは、主として企業LANやデータセンターで競う。エリクソンの主戦場は携帯電話網であり、AIデータセンター向け高速スイッチの急拡大を、そのままエリクソンの成長率に当てはめることはできない。今後の最大の分かれ目は、6G更新で市場規模が再び拡大するか、それとも通信の高速化が設備の単価下落に吸収されるかである。
資本政策と M&A
資本配分には明確な成功と失敗がある。2022年に約62億ドルで買収したボネージは、通信網の機能を企業向けAPIとして販売する構想の中心だった。しかし、期待した成長は実現せず、2023年と2024年に大型の減損を計上した。買収額に対して現在の収益力は弱く、この買収は株主資本の運用として成功したとは評価しにくい。
対照的に、2025年のiconectiv売却では約10億ドルの税後現金収入を得た。低成長の周辺事業を整理し、本業へ資源を集中する判断には合理性がある。ただし、売却益は一時的なものであり、継続利益として評価してはならない。2026年10月に就任した新CEOの下では、組織を簡素化し、研究開発と営業費用を抑える方針が示された。
株主還元は改善している。2026年の株主総会では通常配当の増額と自社株買いが決まり、B種株の買い戻し枠は最大150億スウェーデンクローナとなった。これはおおむね15億ドル規模で、2027年の株主総会までに実施する計画である。2026年7〜9月期にも買い戻しが進んだ。ただし、これは継続的な年間買い戻し額の約束ではない。
会社は、技術開発を続けるために十分な純現金と投資適格の信用力を保つ方針を示している。長期の目安として調整後EBITA利益率15〜18%、M&A前のフリーキャッシュフロー率9〜12%を掲げる。2025年の実績はこの水準に近かったが、2026年は再編費用や部品価格の上昇が重荷になる。通常配当以外の10年間の還元額について数字の約束はない。
今後の資本配分では、大型買収によって失った価値を、利益率の改善と還元で取り戻せるかが問われる。筆者は、再び企業向けソフトを高値で買うよりも、無線設備と特許の研究開発を維持しながら余剰資金を返す方が、少数株主にとって望ましいと考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
世界の通信網は、AIによって再び高度化を求められる。動画配信やスマートフォンだけでなく、ロボット、工場設備、無人車両、遠隔操作などが通信網を使うようになれば、上り方向の通信能力、遅延の小ささ、通信の確実性が以前より重要になる。こうした用途では、単に大量のデータを運ぶだけでなく、通信の品質を保証する機能が必要になる。
エリクソンは、その機能を提供できる有力企業の一つである。中国を除く市場で約37%のシェアを持つ既存設備は、新しいソフトを販売する土台になる。6Gへの移行で無線機器とソフトの更新が進めば、通信会社は既存の技術基盤を維持しながら新しい設備を導入する可能性が高い。通信規格の特許収入も、端末の普及や契約更新によって増える余地がある。
2026年7〜9月期にはネットワーク事業の有機売上が9%増え、主力事業の採算も改善した。無線設備で技術力を維持しながら製品の原価を下げれば、競合のノキアとの収益力の差を保つことができる。2025年のノキアのモバイルネットワーク事業は営業利益率が約3%にとどまり、エリクソンには競争力を利益へ結び付ける余地がある。
企業向け専用5Gと通信APIが本業を補完し、ボネージの赤字が縮小する可能性もある。大規模な再買収を避け、研究開発と還元を両立できれば、これまで減損に消えていた資金が株主に残る。6Gの普及が予想以上に速く進む場合、2036年の売上は400億ドルを超え、純利益が60億ドル程度に達する可能性もある。その場合、通信機器の会社として十分に魅力的な価値を生み出す。
慎重な見方
最大の問題は、無線アクセス網が長期にわたってほとんど成長していないことである。Dell'Oroは2025年から2030年の市場成長を年1%程度と見込む。通信量が増えても、基地局の処理能力向上によって設備の数量や単価が抑えられる。6Gが始まっても、以前の5G投資を更新するだけなら、業界全体の売上は大きく伸びない。
エリクソンの顧客は大規模な通信会社であり、価格交渉力が強い。ファーウェイは中国を中心に規模を持ち、ノキアは採算より市場シェアを優先して受注することもできる。さらにオープンRANが成熟すれば、ソフトや装置を複数のメーカーから調達しやすくなる。既存顧客の乗り換え費用は残るが、新規設備の採用では価格競争が厳しくなる。
企業向け事業では既に資本配分の失敗が起きている。ボネージは約62億ドルを投じた大型買収だったが、後に減損を重ねた。通信API市場ではトゥイリオが先行し、メッセージ送信や音声通信の単価競争も続く。クラウド電話やコンタクトセンターの席課金は、AIエージェントが人間の作業を代替するほど縮小する恐れがある。
通信網の運用受託も安全ではない。ネットワーク管理の自動化が進めば、同じ設備を少ない人員で管理できるようになる。顧客は生産性の改善を価格交渉に使い、受託企業が利益を独占できるとは限らない。ネットワークの設置基盤が強くても、周辺サービスの収入が細る可能性がある。
過去10年には大幅な減損と赤字が複数回発生した。2025年の高い純利益を長期の標準として扱うと、再編と売却益の効果を過大評価する。通信設備そのものは残っても、エリクソンが十分な利益を残せない会社へ変わる可能性を軽視すべきではない。
どちらに重みを置いたか
事業の存続については前向きな見方が強い。無線設備の世界的な設置基盤と特許は簡単には失われず、10年後も主要な供給者である可能性が高い。しかし、株主が得る経済的利益については慎重に見る必要がある。成熟した無線市場、顧客の交渉力、企業向け事業の失敗という三つの問題は、技術力だけでは解決しない。
確率は中立33%、楽観側29%、悲観側38%とした。AI代替リスクは対象セグメントの数量と価格に織り込み、同じ理由で資本コストや確率を二重に悪化させていない。悲観側を厚くした主な理由は、6Gへの移行期に市場シェアと採算を同時に失う可能性、および大型買収の資本配分実績である。結果として本質価値は現在の時価総額を約37%下回り、割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 10.01 ドル335 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 4.20 ドル141 億ドル)。 今の値に割り戻すと 6.96 ドル233 億ドル、今との差 −37.7%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 25.17 ドル841 億ドル | 6.85 ドル229 億ドル | +186.4% | +12.9% | 3.20 ドル107 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 15.21 ドル508 億ドル | 5.54 ドル185 億ドル | +85.5% | +7.6% | 3.94 ドル132 億ドル |
| 中立 | 33% | 10.35 ドル346 億ドル | 4.94 ドル165 億ドル | +36.7% | +3.9% | 5.04 ドル169 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 3.91 ドル131 億ドル | 3.14 ドル105 億ドル | −37.0% | −5.6% | 1.69 ドル57 億ドル |
| 悲観 | 14% | 1.80 ドル60 億ドル | 0.60 ドル20 億ドル | −78.6% | −15.6% | 0.34 ドル11 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 10.01 ドル335 億ドル | 4.20 ドル141 億ドル | +27.1% | +2.9% | 14.21 ドル475 億ドル |
今の株価時価総額 11.18 ドル374 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:6G更新を主導し、無線設備と通信ソフトの価値が高まる 利益 62 億ドル · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 25.17 ドル841 億ドル
2036年には6Gの導入が主要市場で進み、基地局の更新だけでなく、産業用AIや高信頼通信向けの機能追加が増える。世界の無線アクセス機器市場は2025年価格で約430億ドルまで拡大し、エリクソンの世界シェアは約30%へ上昇する。ファーウェイに対抗する主要な供給者として、北米と欧州での地位をさらに固める。ネットワーク機器の実質販売量が増え、機能の高度化によって単価も物価を上回る。
通信コアソフトは5Gスタンドアロン網の拡大から6G対応へ移行し、導入数と機能数が増える。運用受託ではAIによって必要工数が減るものの、契約の拡大と運用効率の改善が利益を押し上げる。ボネージの席課金は縮むが、通信APIの利用増加が補い、企業向け事業も黒字化する。
ネットワークの営業利益率は技術面の優位性と特許収入で高い水準を保つ。全社売上は約433億ドル、営業利益は約92億ドル、純利益は約62億ドルとなる。10年間の累計純利益は360億ドルで、そのうち229億ドルを正味の配当と自社株買いで還元する。大型買収を繰り返さず、継続的な研究開発と還元を両立できた場合の姿である。
- 無線アクセス機器・通信特許:数量 156(世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.47(機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。)→ 売上 229 億ドル・営業利益 62 億ドル。実質RAN市場430億ドル×世界シェア30%と、伝送・特許契約の拡大。6Gで機能単価も高まる。
- ネットワーク構築・保守:数量 50.0(基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.47(案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 74 億ドル・営業利益 10 億ドル。6G更新の施工・保守契約が増え、案件量と付加価値がともに増加。
- 通信コア・運用ソフトウェア:数量 38.0(通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.48(ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 56 億ドル・営業利益 15 億ドル。コア網の機能・容量需要が増え、既存顧客との契約を拡張。
- 通信システム導入・運用受託:数量 33.0(管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.34(管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 44 億ドル・営業利益 6 億ドル。AIで人の工数は減るが、管理対象網が増え、高い生産性を利益に残す。
- ボネージ通信API・クラウド電話:数量 13.2(API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。)× 価格 1.15(通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 15 億ドル・営業利益 2 億ドル。席課金の減少を通信APIの利用増加で補い、実質数量は現状維持。
- 企業向け専用無線・その他企業事業:数量 8.5(企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.43(専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。売却済み事業を除いても専用5Gと無線WANが大きく成長。
- その他・周辺事業:数量 1.3(周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.45(周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。周辺事業を縮小し、損失をほぼ解消。
倍率:2036年ROEは61.5÷249.8=24.6%。強い堀の残存割合2/3を使い、RONIC=9.0%+2/3×(24.6%−9.0%)=19.4%とする。長期gは市場の実質成長とシェア、価格から会社全体2.5%。10年目利益に掛ける正当化PERの上限は約13.74倍であり、6G技術と特許収入の質が高い場合としてその約96%の13.189倍を採用した。PERに長期高成長を二重に織り込まない。会計上の純利益には株式報酬と買収償却を含む。余剰現金の別加算はない。
確率:6Gの商用化が予定より速く進み、中国以外の高いシェアを維持しながら世界市場でもシェアを拡大する。さらに企業向けの赤字を解消する必要があるため、複数の好条件が重なる確率を10%とした。
やや楽観 19% やや楽観:6G更新が進み、利益率の改善が定着する 利益 40 億ドル · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15.21 ドル508 億ドル
2036年には6Gの導入が主要通信市場で進み、無線設備の更新が安定して続いている。世界の無線アクセス機器市場は2025年価格で約390億ドルへ広がる。エリクソンの世界シェアは約27%となり、非中国市場での強い地位を維持する。ファーウェイとノキアは競争を続けるが、エリクソンは省電力性能と既存設備との互換性によって採算のよい案件を選別できる。
通信コアソフトは5Gから6Gへの移行で増えるが、運用受託は自動化によって必要な工数が減る。サービス部門の実質数量は現在より小さくなる一方、コスト削減によって利益率は改善する。ボネージの通信APIも一定の利用を維持し、赤字から小幅な黒字へ転換する。
全社売上は約351億ドル、営業利益は約62億ドル、純利益は約40億ドルになる。利益率は現在より改善するものの、無線設備は通信事業者の投資サイクルを受ける事業であり、高い成長を永続させることは難しい。累計純利益265億ドルに対して185億ドルの正味還元を行い、自己資本は約199億ドルとなる。買収よりも本業への再投資と株主還元を重視した成果が表れる筋書きである。
- 無線アクセス機器・通信特許:数量 130(世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.38(機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。)→ 売上 179 億ドル・営業利益 41 億ドル。実質RAN市場390億ドル×世界シェア27%を基礎に、伝送・特許収入の維持を加える。
- ネットワーク構築・保守:数量 43.0(基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.43(案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 61 億ドル・営業利益 7 億ドル。更新案件が増え、保守契約の継続によって数量は現在を上回る。
- 通信コア・運用ソフトウェア:数量 33.0(通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.41(ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 47 億ドル・営業利益 11 億ドル。通信コアの導入網数とソフト機能の追加によって実質数量が増える。
- 通信システム導入・運用受託:数量 29.0(管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.34(管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 39 億ドル・営業利益 4 億ドル。人手の運用工数は減るが、契約を維持して利益率を改善する。
- ボネージ通信API・クラウド電話:数量 12.0(API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。)× 価格 1.13(通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 14 億ドル・営業利益 1 億ドル。AIによる席数減少があってもAPI利用が補い、小幅な黒字を確保。
- 企業向け専用無線・その他企業事業:数量 7.0(企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.40(専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。専用5Gと無線WANが成長し、売却済み事業の減少を補う。
- その他・周辺事業:数量 1.3(周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.40(周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。周辺事業の損失が縮小。
倍率:2036年ROEは40.4÷198.8=20.3%。強い堀の残存割合2/3を使い、RONICは16.5%となる。会社全体の長期gは2.5%で、式の正当化PERは約13.39倍。技術面の地位は維持するが、通信設備の競争と需要循環が残るため上限の90%である12.048倍とした。成長は無線市場、シェア、ソフト数量と単価の積から決めており、ROEから推定していない。余剰現金は別加算しない。
確率:6Gの更新需要は続き、エリクソンは非中国市場で主力供給者としての地位を維持する。コスト削減が定着し、企業向け損失も縮むが、大きな市場シェア拡大までは実現しない筋書きとして19%とした。
中立 33% 中立:主力網の地位を守るが、成長は成熟した通信設備並みに落ち着く 利益 27 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.35 ドル346 億ドル
2036年になっても世界の通信網は主要な社会インフラであり、エリクソンは無線アクセス機器の大手として残る。世界の無線アクセス市場は2025年価格で約380億ドルとなるが、シェアは現在の約26%から23%へ下がる。ファーウェイとノキアの競争に加え、オープンRANや新しいクラウド型の構成が、特定メーカーに機器をまとめて発注する必要性を少しずつ減らす。
それでも既存の基地局と通信特許は収入を支え、ネットワーク機器の販売は名目で現在より増える。通信コアソフトは5Gスタンドアロン網の普及と6Gの初期導入によって成長する。一方、通信網の導入・運用受託はAIエージェントの活用によって人が必要な作業が減り、実質の契約工数が現在の約7割になる。ボネージでは席課金の減少と競合の価格圧力が続き、大きな利益は残らない。
全社売上は約292億ドル、営業利益は約42億ドル、純利益は約27億ドルとなる。2025年の純利益に含まれていたiconectivの売却益は繰り返さない。2026年の低い利益を出発点とし、その後の回復を含めた10年間の累計純利益は230億ドルである。配当と自社株買いの正味還元165億ドルを行い、自己資本は約184億ドルとなる。堅い本業を持つ成熟企業として利益は残るが、高成長企業にはならない筋書きである。
- 無線アクセス機器・通信特許:数量 112(世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.30(機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。)→ 売上 146 億ドル・営業利益 30 億ドル。実質RAN市場380億ドル×世界シェア23%に伝送・特許契約を加える。単価は物価を下回る1.30倍。
- ネットワーク構築・保守:数量 37.3(基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.37(案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 51 億ドル・営業利益 4 億ドル。設備更新で実質案件量はほぼ横ばい。作業単価は物価並み近く上昇。
- 通信コア・運用ソフトウェア:数量 30.0(通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.33(ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 40 億ドル・営業利益 8 億ドル。スタンドアロン網と6G対応の機能追加で実質ライセンス量が約22%増加。
- 通信システム導入・運用受託:数量 27.5(管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.30(管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 36 億ドル・営業利益 3 億ドル。AIエージェント代替で必要工数が約30%減る。価格は物価未満の1.30倍。
- ボネージ通信API・クラウド電話:数量 10.6(API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。)× 価格 1.10(通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 12 億ドル・営業利益 0 億ドル。席課金の縮小とAPI価格競争により実質数量0.80倍、価格1.10倍。
- 企業向け専用無線・その他企業事業:数量 5.2(企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.32(専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みiconectivを除外し、専用5Gと無線WANの事業だけが残る。
- その他・周辺事業:数量 1.1(周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.35(周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。周辺事業を縮小するが、小幅な損失が残る。
倍率:2036年ROEは27.3÷183.8=14.9%。強い堀の残存割合2/3を使い、RONIC=9.0%+2/3×(14.9%−9.0%)=12.9%となる。市場の実質成長とシェア低下、価格上昇を合わせた長期gは2.5%。正当化PERの上限は約12.71倍であり、利益に占める通信事業者向け設備と受託サービスの割合が高いことから90%の11.442倍とする。資本コスト9%の逆数11.11倍を上回る。2025年の売却益を将来へ延長せず、株式報酬と買収償却を控除した報告ベースの純利益を使う。余剰現金は別加算しない。
確率:世界のRAN市場は緩やかにしか成長せず、エリクソンはシェアをやや失う。通信コアソフトは拡大するが、運用受託のAI自動化とボネージの低成長が相殺する。最も自然な継続事業の姿として33%とした。
やや悲観 24% やや悲観:無線設備のシェアと価格を失い、企業向けの赤字が残る 利益 13 億ドル · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.91 ドル131 億ドル
世界の無線アクセス市場は大きく伸びず、通信会社は設備更新の費用を厳しく抑える。世界市場の規模は2025年価格で約350億ドルにとどまり、エリクソンのシェアは19%まで低下する。ファーウェイは中国と新興国で強く、ノキアは欧州と北米で顧客を奪う。オープンRANによって新しい装置メーカーも一部の受注へ参加し、エリクソンの設備価格は物価ほど上がらなくなる。
通信コアソフトは既存顧客によって維持されるが、契約の更新時に値引きを求められる。運用受託ではAIエージェント代替によって必要な工数が減り、顧客が生産性改善の利益を値下げとして取り込む。ボネージは収益性の低い音声・席課金事業を縮小し、通信APIでも主要競合に勝てないため赤字が続く。
全社売上は約210億ドルに縮み、営業利益は約19億ドル、純利益は約13億ドルとなる。研究開発費や保守体制を急には削れず、利益率は大きく下がる。2026年以降の累計純利益は125億ドルで、105億ドルを正味で還元する。自己資本は約139億ドルへ増えるが、資本コストを大きく上回るROEは得られない。会社は存続し配当も続けるものの、成長企業としての価値は失われる。
- 無線アクセス機器・通信特許:数量 86.0(世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.16(機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。)→ 売上 100 億ドル・営業利益 14 億ドル。実質RAN市場350億ドル×世界シェア19%を基礎に、伝送・特許収入も減る。
- ネットワーク構築・保守:数量 30.0(基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.23(案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 37 億ドル・営業利益 2 億ドル。設備更新案件の減少と値引きで、施工・保守の利益率が低下。
- 通信コア・運用ソフトウェア:数量 25.0(通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.22(ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 31 億ドル・営業利益 5 億ドル。既存ライセンスは残るが、新機能販売と値上げは限定的。
- 通信システム導入・運用受託:数量 23.0(管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.23(管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 28 億ドル・営業利益 2 億ドル。AI自動化と受託単価の低下で工数相当の実質数量は約58%へ縮む。
- ボネージ通信API・クラウド電話:数量 8.0(API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。)× 価格 1.05(通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 8 億ドル・営業利益 −1 億ドル。席課金の代替とAPIの値下げによって赤字が残る。
- 企業向け専用無線・その他企業事業:数量 4.0(企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.18(専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。専用5Gの普及が想定を下回り、規模不足で赤字。
- その他・周辺事業:数量 1.0(周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.30(周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。周辺事業の固定費が残る。
倍率:2036年ROEは12.5÷138.8=9.0%で、資本コスト9.0%とほぼ同じである。強い堀の残存割合2/3を使ってもRONICは約9.0%にとどまる。長期g2.5%の正当化PER上限は約11.39倍だが、無線設備のシェア低下と顧客への値引きが続くため、上限の約83%の9.4倍で評価する。中立の11.442倍より低い。利益が小さいため、純利益に対する倍率を高くして価値を救済しない。
確率:ファーウェイとノキアの価格競争が続き、オープンRANで機器の一括調達が減る。6Gへの移行はあるが利益率が下がり、企業向けの赤字削減も進まない。成熟市場で10年間のシェア低下は十分あり得るため24%とした。
悲観 14% 悲観:技術の中心から外れ、資産と特許の回収価値が中心になる 利益 1 億ドル · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.80 ドル60 億ドル
2036年のエリクソンは、無線通信網の主要メーカーではあるものの、かつての競争力を大きく失っている。世界の無線アクセス市場は2025年価格で約320億ドルとなり、同社のシェアは16%まで落ちる。ファーウェイが新興国と中国で強い地位を保ち、ノキアと新興のオープンRANメーカーが北米・欧州の受注を奪う。エリクソンは既存設備の更新契約を残すが、新しい設備では低価格で競わざるを得ない。
通信コアソフトも汎用計算基盤と競合し、以前のような囲い込みが効かなくなる。ネットワークの運用受託ではAIによる自動化が進み、必要な人手と契約金額がともに減少する。ボネージでは席課金と従来型の音声サービスが大きく縮み、通信APIでも十分なシェアを得られない。企業向け事業と過去の買収資産に減損が発生し、経営は人員削減と周辺事業の整理を繰り返す。
全社売上は約150億ドル、営業利益は約2億ドル、純利益は約1億ドルに落ちる。期間中には約80億ドルの減損や再編関連の損失が発生し、通常事業の累計利益約35億ドルを上回るため、10年間の純利益累計は約45億ドルの赤字となる。配当は大幅に減り、正味の累計還元は20億ドルにとどまる。自己資本は約54億ドルまで減る。
この姿では、正常な成長企業としての利益価値よりも、残った純現金と売却可能な資産を重視する。通信網に必要な特許の一部、売却可能な在庫・設備、手元資金に価値は残るが、大きな再建費用も必要になる。倒産に近い評価ではなく、独立企業として事業を続けながら、かつての優良さを失う筋書きである。
- 無線アクセス機器・通信特許:数量 70.0(世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.02(機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。)→ 売上 71 億ドル・営業利益 6 億ドル。実質RAN市場320億ドル×世界シェア16%。価格は10年間ほぼ据え置き。
- ネットワーク構築・保守:数量 22.0(基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。)× 価格 1.10(案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 24 億ドル・営業利益 0 億ドル。既存設備の保守だけが残り、更新工事と採算が大幅に縮小。
- 通信コア・運用ソフトウェア:数量 20.0(通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.10(ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 22 億ドル・営業利益 2 億ドル。コア網ソフトの囲い込みが弱まり、価格競争が進む。
- 通信システム導入・運用受託:数量 20.0(管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.15(管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 23 億ドル・営業利益 −1 億ドル。AIエージェントが作業を代替し、人手依存の受託規模が約半分になる。
- ボネージ通信API・クラウド電話:数量 6.7(API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。)× 価格 1.00(通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 7 億ドル・営業利益 −1 億ドル。クラウド電話とコンタクトセンターの席課金が縮小し、API競争でも劣後。
- 企業向け専用無線・その他企業事業:数量 2.2(企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.05(専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。専用無線の顧客獲得に失敗し、事業を縮小。
- その他・周辺事業:数量 0.7(周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。)× 価格 1.15(周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。撤退費用と固定費が残る。
倍率:構造的に競争力を失い、2036年ROEは約1.9%で資本コスト9.0%を大きく下回る。利益による価値は1.0÷9.0%で約11億ドルにすぎないため、純現金と売却可能資産の税後回収価値60億ドルを優先した。倍率0.50505倍は2025年の現在自己資本118.8億ドルに掛けて約60億ドルとするための表示であり、過去の市場PBRから選んだ数字ではない。2036年の自己資本53.8億ドルに過去の谷の倍率を掛けてはいない。利益価値と資産価値は重複するため合算しない。
確率:6GとオープンRANへの移行でシェアを失い、企業向け事業にも新たな減損が生じる。通信設備大手が急に消える可能性は低いが、2017年や2023年のような利益の大幅な毀損を経験しているため14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
無線アクセス機器・通信特許
基地局の無線機、アンテナ、信号処理装置、無線ソフト、通信規格の特許ライセンス。ネットワーク事業の製品売上に相当し、通信設備の設置基盤と特許が収益の中心である。
| 数量世界の無線アクセス機器市場の実質規模×エリクソンのシェアに、伝送機器と特許契約の量を加えた2025年価格換算の販売量。1単位は2025年価格で1億ドル分。 | 価格機器とソフト・特許契約を組み合わせた1単位の名目販売価格。2025年を1.0とする億ドル建て価格指数。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 118 | 1.00 | 118 | 25 |
| 10 年後 中立 | 112 | 1.30 | 146 | 30 |
取り方:2025年のネットワーク事業の製品売上1154.88億スウェーデンクローナを、会社の同年売上構成比76.5%としてfactsのネットワーク相当売上154億ドルへ適用し、約117.8億ドルとした。世界の無線アクセス機器市場は2025年に約350億ドルである。直近の世界シェア約26%から、純粋なRAN機器の売上は約90億ドルと推定し、残り約28億ドルを伝送機器、関連ソフト、特許ライセンスの市場に対応する売上と解釈した。特許収入は2025年にネットワーク部門で約119億スウェーデンクローナだった。無線機の出荷台数と単価は非開示のため、この現行価格換算量を数量とする。営業利益は製品の高い粗利益率と特許収入を考慮した推計であり、公式の製品別営業利益ではない。市場シェアはOmdiaの2025年版と2026年のDell'Oro調査を参照した。
ネットワーク構築・保守
基地局の設置、更新、調整、保守、ライフサイクル管理。既存の設置基盤に結び付く契約と、通信事業者の設備投資に応じた工事・更新案件で稼ぐ。
| 数量基地局の新設・更新案件と稼働設備の保守契約を2025年の作業内容・価格で換算した実質提供量。1単位は2025年価格で1億ドル分。 | 価格案件・保守契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 36.2 | 1.00 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 37.3 | 1.37 | 51 | 4 |
取り方:2025年のネットワーク事業のサービス売上355.26億スウェーデンクローナを会社開示から取得し、同事業内の比率23.5%をfactsの財務基準に当てはめて約36.2億ドルとした。基地局の件数や保守対象台数は会社が統一単位で開示していないため、世界の商用5Gネットワーク約370網という設置基盤と、既存顧客の更新案件を市場の実質数量の根拠とする。需要は新規設置網数と既存設備の更新頻度に依存し、価格は作業単価と契約料に分けて考えた。現場施工や保守は物理的な作業を伴うため、AIエージェントによる人月代替を全量には適用しない。営業利益は推計である。
通信コア・運用ソフトウェア
5Gコアネットワーク、加入者管理、課金システム、運用支援ソフト。通信事業者の中核設備に組み込まれ、契約更新と機能追加が売上になる。
| 数量通信コアと運用ソフトの導入契約、稼働中の機能モジュール、処理容量を2025年価格で換算した実質ライセンス量。1単位は1億ドル分。 | 価格ネットワークソフトウェアの機能・容量当たり名目価格指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24.5 | 1.00 | 25 | 5 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1.33 | 40 | 8 |
取り方:会社の2025年Cloud Software and Services部門の製品売上240.16億スウェーデンクローナを、セグメント売上627.15億クローナに対する38.3%として取り、factsの同部門相当額64億ドルへ適用した。約24.5億ドルが基準となる。市場の数量は商用5Gスタンドアロン網の稼働数とコア網の導入範囲、ソフトウェア機能・処理容量から考える。2025年末の世界の商用5Gスタンドアロン網は約90網で、同社は55網の導入実績を公表している。ただし競合との契約数の定義が同じではないため、その比率を厳密な市場シェアとはしない。中立の数量成長には導入網と処理容量の増加を反映し、営業利益はソフト製品の高い限界利益を考慮した推計である。
通信システム導入・運用受託
通信網の設計、システム導入、運用監視、管理、保守の受託。現場の物理的な保守と、人の作業時間に依存する導入・運用業務が混在する。
| 数量管理対象の通信網と導入プロジェクトで必要となる受託工数・運用契約量を2025年価格に換算した実質提供量。1単位は1億ドル分。 | 価格管理対象網の受託料および導入・運用作業の単価指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39.5 | 1.00 | 40 | 0 |
| 10 年後 中立 | 27.5 | 1.30 | 36 | 3 |
取り方:2025年Cloud Software and Services部門のサービス売上386.99億スウェーデンクローナを、同部門のサービス比率61.7%としてfactsに当てはめた。約39.5億ドルを基準とする。契約別の人月、管理設備数、工数単価は非開示であるため、同部門の実際のサービス売上と管理対象網の稼働を数量の代理として使う。AIエージェント代替の型では、人月・工数で売る導入・運用受託に分類する。中立の数量は39.5から27.5へ0.70倍、価格は1.30倍とし、指定範囲の数量0.55〜0.75倍、価格1.34倍以下を守る。物理的な設備保守は代替されにくいが、遠隔監視、設定変更、障害の初期診断などは自動化が進む。市場規模の独立した統計がないため、会社のセグメント開示から契約数量を逆算し、数量の将来変化は顧客の設備更新と業務自動化の両方から判断した。
ボネージ通信API・クラウド電話
メッセージ、音声、認証などの通信API、クラウド電話、コンタクトセンター。API利用量による課金と、ユーザー席数による課金が混在する。
| 数量API呼び出し・メッセージ送信量とクラウド電話・コンタクトセンターの有料席数を、2025年の売上構成で加重した実質利用量。1単位は当時の価格で1億ドル分。 | 価格通信APIの利用単価と席課金の単価を加重した名目価格指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.2 | 1.00 | 13 | −3 |
| 10 年後 中立 | 10.6 | 1.10 | 12 | 0 |
取り方:2025年のGlobal Communications Platform、主にボネージの売上129億スウェーデンクローナを、全社売上2366.81億クローナに対する割合でfactsの241.3億ドルへ換算した。営業利益は買収償却を含む損失事業として推定した。Metrigyによる2025年の世界CPaaS市場は149億ドルで、トゥイリオのシェアは25.4%。ボネージの売上にはUCaaS、CCaaS、消費者向け音声サービスも含むため、13.2億ドルをそのままCPaaSの市場シェア計算に使わない。AIエージェント代替の型では、席課金と操作画面中心の業務ソフトを含む事業と判定する。中立の実質数量は0.80倍、価格は1.10倍、10年後以降のこの部分の成長は0%以下とする。APIは従量課金のため席数とは異なるが、競合間の価格競争を数量と価格の双方に反映した。市場資料はhttps://www.metrigy.com/press-release-communications-platform-as-a-service-market-up-4-2-year-over-year-in-2025/ 。
企業向け専用無線・その他企業事業
クレイドルポイントの無線WAN、企業向け専用5G、屋内通信設備など。2025年の基準値には売却済みiconectivの一部期間の売上と売却益も含まれる。
| 数量企業向け無線装置、専用ネットワーク導入案件とサービス契約を2025年価格で換算した実質販売量。1単位は1億ドル分。 | 価格専用無線機器・契約1単位の名目価格指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.3 | 1.00 | 8 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 1.32 | 7 | 0 |
取り方:会社のEnterprise売上211.17億スウェーデンクローナからGlobal Communications Platformの129億クローナを引いた82.17億クローナを、factsの全社売上241.3億ドルに占める比率で約8.3億ドルとした。このうちEnterprise Wireless Solutionsの会社開示売上は48億クローナであり、残りには2025年8月に売却したiconectivや周辺事業が含まれる。営業利益5.3億ドルは2025年の売却益を含む会計上の配賦額で、継続事業の利益ではない。売却済み事業は2036年の数量から除外し、専用無線網の成長だけを評価する。Berg Insightでは2025年の世界の専用LTE・5G網は約6500網、関連市場は約24億ドルだった。ただし無線WANと専用網では市場の範囲が異なるため、全額をこの市場で割ってシェアを計算しない。
その他・周辺事業
小規模な周辺サービスとその他の事業。全社に対する売上の割合は小さく、独立した成長の柱とはみなさない。
| 数量周辺事業の契約と提供量を2025年価格で換算した実質数量。1単位は1億ドル分。 | 価格周辺事業の平均名目価格指数。2025年を1.0とする。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.8 | 1.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 1.35 | 1 | 0 |
取り方:会社が2025年に開示したOther部門の売上18.35億スウェーデンクローナをfactsのドル基準へ換算し、端数を調整して1.8億ドルとした。営業利益は会社開示のOther部門の赤字を全社営業利益33.4億ドルへ合わせて推計した。独立した製品数量は非開示のため、継続する契約と事業活動を2025年価格の実質数量に置き換えた。
リスクと懸念
通信事業者の設備投資の停滞
世界のRAN市場は2025年に約350億ドルで、2030年までの成長予想は年1%程度にすぎない。携帯電話の通信量が増えても、基地局の性能改善と既存設備の長期利用によって売上が伸びない可能性がある。6Gの導入が遅れれば、研究開発を続けても新規設備の受注が増えず、利益率が低下する。
ファーウェイ、ノキア、オープンRANとの競争
エリクソンは中国以外のRAN市場で強い地位を持つが、世界首位ではない。ファーウェイは規模と国内市場を持ち、ノキアは既存の通信事業者との取引関係を持つ。オープンRANの普及で機器の調達先が分散すれば、既存メーカーの囲い込みが弱くなる。値引き競争が続けば、販売数量を維持しても利益率が悪化する。
AIエージェント代替
通信網の運用監視、障害対応、システム設定、導入支援には人手に依存する仕事が残る。AIエージェントがこれらを自動化すると、顧客は同じネットワークをより少ない作業時間で運営できる。エリクソンの運用受託売上は必要工数の減少に直面する。ボネージのクラウド電話やコンタクトセンターも、人間の有料席数が減ることで収益が圧迫される。通信網そのものや通信APIがなくなるという意味ではない。
買収による資本毀損の再発
2022年のボネージ買収では約62億ドルを投じ、その後に大きな減損が発生した。これは成長分野へ進出するという説明だけでは高い買収価格を正当化できないことを示している。今後も企業向けソフトや通信APIを高値で買収すれば、稼いだ利益が株主還元ではなく減損に消える恐れがある。買収後の増分ROICが資本コストを超えるかを確認する必要がある。
特許ライセンス収入の変動
通信規格の特許は強い資産だが、ライセンス収入は契約更新、訴訟、過年度分の精算によって変動する。2026年には新たなライセンス契約が成立したが、同じような遡及収入が毎年発生する保証はない。スマートフォンメーカーの交渉力や標準必須特許の規制によって条件が変われば、高利益率の収入が減る可能性がある。
地政学、輸出規制、部品費用
エリクソンの通信機器は各国の安全保障政策に左右される。中国製設備の排除が追い風になる市場もあるが、逆に中国や一部新興国での事業機会を失う可能性がある。無線機器の部品調達には国際的な供給網が必要であり、関税や輸出規制、半導体の費用上昇は利益率を下げる。2026年の会社説明でも部品費用の上昇が翌年の逆風になるとされた。
顧客集中と議決権の偏り
2025年の最大顧客は売上の約14%を占めた。大規模な通信会社が設備投資の時期を変えるだけで、四半期の売上と利益は動く。さらにエリクソンにはA種株とB種株があり、A種株の議決権はB種株の10倍である。ADR保有者の経済的な配当請求権は共通だが、議決権の影響力は小さい。資本配分に不満があっても少数株主が経営方針を変えることは容易ではない。
今後の分かれ目
- 2027〜2029年にRAN市場が複数年連続で実質成長し、エリクソンの非中国シェアが40%へ近づいたら
- 6G更新による数量増加とシェア拡大が見え始める。楽観側の確率を引き上げ、無線機器の2036年数量と営業利益率を上方修正する。ただし同じ市場成長をPERにも重ねて織り込まない。
- ネットワーク事業の報告営業利益率が18%を下回る状態が数年間続いたら
- 価格競争や原価上昇で主力事業の優位性が弱まっている可能性がある。中立の利益率を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を増やす。
- 通信ソフト・サービス事業の利益率が15%を超え、サービス売上も増加したら
- ソフトの契約基盤が拡大し、運用自動化による生産性改善を会社が利益として保持している証拠となる。中立の通信ソフトの数量と利益率を上方修正する。
- ボネージの年間売上が継続的に増え、買収償却を含む営業黒字が定着したら
- 企業向け通信APIの競争力が改善したと判断できる。企業向け事業の中立利益を上げ、過去の買収が将来の追加損失を生む確率を下げる。ただし席数課金の成長率と従量課金の成長率は分けて確認する。
- ネットワーク運用受託の売上が数年連続で大きく減少し、AI自動化による契約単価の下落も確認されたら
- AIエージェント代替が中立より速く進んでいる。managedの2036年数量をさらに減らし、会社全体の長期成長率も見直す。物理的な施工と無線機器には同じ減少率を機械的に当てはめない。
- 大型買収の発表があり、買収価格に対する追加利益と投下資本利益率の根拠が示されなかったら
- 過去のボネージ買収のような資本毀損リスクが増える。将来の還元可能額を減らし、買収に必要な資金と減損の可能性を筋書きへ反映する。未成立の案件は現在の会社の利益に足さない。
- 配当と自社株買いが継続する一方、研究開発投資を維持したまま純現金が増えたら
- 事業のキャッシュ創出力が利益以上に強いことを示す。正味還元額の見通しを増やし、別に余剰現金として評価できる部分が生じた場合は重複計上しないよう資本の流れを確認する。
見ておくもの
- 世界のRAN市場規模とエリクソンの世界シェア、中国を除く市場シェア
- ネットワーク事業の有機売上成長率と報告営業利益率
- 通信特許の継続的な年間ライセンス収入と過年度分の遡及収入
- Cloud Software and Servicesの製品売上・サービス売上と利益率の変化
- 運用受託におけるAI自動化の進展と、必要工数・契約単価の変化
- ボネージの通信API利用量、席課金契約数、買収償却を含む営業損益
- 6Gの商用化時期、通信事業者の設備投資計画、オープンRANの採用比率
- 研究開発費、再編費用、純現金、株式報酬を差し引いた正味の株主還元
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や現在のPER、過去のPBRを将来の倍率の根拠には使っていない。セグメントごとに2025年の実質数量と価格を基準として2036年の売上を積み上げ、その時点の営業利益と純利益を計算した。倍率は資本コスト9.0%、長期g2.5%、事業ROE、強い堀の残存割合2/3から利益ベースの正当化PERを求めた。10年目利益へ掛けるため、式の倍率に1+gを掛けている。中立の上限約12.71倍に対し11.442倍とした。悲観では低い利益から時価総額を救済せず、純現金と売却可能資産の税後回収価値を床に使い、今の自己資本をPBRの基準にした。2025年の売却益は将来に繰り返さず、IFRS上の株式報酬と買収償却を利益から戻していない。純現金も二重加算していない。10年の確率加重価値は約223.6億ドル、台帳時価総額356.3億ドルに対する差は約−37.2%となる。これは割高という結論に対応する。将来の上振れを避けるために数字を下げたのではなく、数量、価格、資本配分から得た結果である。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは基本8.0%にqualityの1.0ポイントを加えた9.0%。βや時価総額による上乗せは使わない。経営の買収失敗や地政学上の個別リスクは確率と事業の筋書きで表現する。会社全体の存続が危ぶまれる状態ではないためdistressの上乗せは0とする。同じ領域のシスコの8.0%より高い理由は、通信事業者の設備投資への依存と、企業向け事業の収益不安定性である。