結論
ブロードコムは、グーグルの TPU・メタ・オープン AI などの AI チップ(XPU)を設計して作らせる受託と、AI クラスター用のイーサネットスイッチ・光接続チップ、そして 2023 年に買収したヴイエムウェア(VMware)などのインフラソフトを持つ会社である。2026 会計年度の第 3 四半期(2026 年 8 月 2 日終了)は売上 296 億ドル(前年比 +86%)、うち AI 半導体が 167 億ドル(+221%)で、次の四半期は売上 348 億ドル・AI 217 億ドルを見込む。会社は 2027 会計年度の AI チップ売上が 1,000 億ドルを超えるとしており、受注残は約 730 億ドル、供給も 2028 年まで確保している。
AI 半導体は、エヌビディアと同じ物差し(AI 演算チップ市場とネットワーク市場 × シェア × 物価並みの価格)で置いた。10 年後は顧客の自社設計とマーベル・メディアテックの追い上げで価格を決める力が削られるが、ASIC の比率が上がる中でシェアは 16% まで伸び、AI 半導体は約 2,300 億ドル・営業利益率 50%。ソフトは安定した収益の下支えになる。
バリュー投資の観点では、事業の質(営業利益率 41%・ソフト部門の営業利益率 77%・FCF 270 億ドル)は優れている。資本コスト 8.5%(基本 8% + 半導体の循環 0.5% ・値決め −0.25% ・寿命 0.25%)で割り引き、倍率を利益ベースの正当化 PER(余った現金を除いた事業の ROE 約 31%・堀は強い・g は半導体の数量の伸びを見て 4.5%)の 8.5 割に置くと、10 年後の成熟した倍率は純現金を 1 ドルで足して PER 18.1 倍で、確率で加重した本質価値は今の値段(PER 69 倍・PBR 19.6 倍)を 2 割ほど下回る(やや割高)。顧客がほぼ 6 社に集中し、設備投資の継続を前提にしている点も安全域を削る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。AI の演算需要が 10 年後に存在する可能性は高く、ブロードコムの設計・ネットワーク・ソフトの組み合わせも残る。ただし、XPU の設計は顧客が自社で担える領域で、堀は「独占」ではなく「顧客が自前でやるより安い間は残る」性質のもの。10 年で堀が広がるとは言い切れず、価格を決める力は顧客へ移っていく可能性が高い。
次にオーナー利益。2025 会計年度の純利益 231 億ドルは税の戻りを含み、営業利益 262 億ドルから株式報酬(約 65 億ドル)と買収の償却を除いた稼ぐ力は、見かけより小さい。現金の面では FCF 269 億ドルで、時価総額 1.6 兆ドルの約 1.7% にすぎず、10 年国債 5% を大きく下回る。
資本配分は、買収した会社の費用を削る手法で成果を上げてきたが、ヴイエムウェアののれん(1,000 億ドル前後)が自己資本の大半で、大型買収が価値を壊さなかった実績は評価できる一方、これからの AI 設備投資の山で顧客と同じ向きに動く資産を持つ。
安全域:事業の質は最高水準だが、成熟後は利益ベースの正当化 PER の 8.5 割、PER 18.1 倍(純現金込み)にとどまり、今の PER 69 倍は 10 年後の成熟をほぼ先取りした値。中立の筋書きでは 10 年後の時価総額が今の 1.3 倍弱で、8.5% で割り引くと今の値段の 6 割弱にしかならず、安全域は無い。事業は理解できるが、顧客の設備投資の継続という外部の要因に利益のほとんどを預ける会社なので、確信度は NVDA と同様に慎重に置く。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つに分かれる。1 つ目は AI 半導体(2025 会計年度で売上の約 3 割、2026 会計年度の第 3 四半期には 56%)で、中身は XPU(特注の AI アクセラレータ)と AI ネットワークの 2 つ。XPU はグーグルの TPU が最大で、メタ・バイトダンス・アンソロピック(TPU のラックを経由)・オープン AI など 6 社が顧客となる。ブロードコムは顧客と一緒に回路を設計し、製造は TSMC に任せ、HBM メモリとパッケージを調達して納める。AI ネットワークは、AI クラスターをつなぐイーサネットスイッチ(トマホーク)、ルーター(ジェリコ)、光接続用の DSP・NIC で、XPU の台数と クラスターの規模に付随して伸びる。
2 つ目は非 AI 半導体で、アップルの無線部品、ブロードバンド用チップ、企業・通信向けのイーサネット、ストレージ接続を含む。成熟した事業で景気の循環があり、アップルが自社の通信チップへ移す流れで無線は縮む方向にある。3 つ目がインフラソフトで、ヴイエムウェアの仮想化基盤(VCF)、メインフレームのソフト(CA)、シマンテックの法人向けセキュリティ。大企業との複数年の契約を更新して稼ぎ、営業利益率は 77% 前後と高い。ヴイエムウェアの買収(約 690 億ドル・2023 年 11 月完了)後は、契約を VCF に一本化して値上げと人員削減で利益を伸ばした。
売上の計算は「XPU の出荷個数 × 1 個あたり売上」で決まる。ラック単位で納めると HBM などの部品代が売上に入るため、売上は増えるが粗利益率は薄まる。固定費を持たない設計会社なので設備投資は小さく、利益のほとんどが現金になる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。1 つ目は、先端の SerDes(高速信号の送受信回路)・先端パッケージ・ネットワークのチップを何世代も顧客と共同設計してきた蓄積で、グーグルの TPU は 10 年近くブロードコムが設計してきた。顧客がほかの設計会社へ乗り換えるには数年かかる。2 つ目は、イーサネットのスイッチ・ルーター・光接続用の DSP を自社で揃え、AI クラスターを一式で納められること。3 つ目はヴイエムウェアなどのソフトで、基盤の仮想化は切り替えの費用が高く、更新による収益が景気に左右されにくい。
資本効率も高く、営業利益率 41%・ROE 28%(買収の償却と自己資本の増加を含む)、FCF 269 億ドルで、2022 年度の ROE は 51%・営業利益率は 43% だった。ホック・タン CEO は 2006 年から経営を続け、買収した会社の費用を削って利益率を上げる手法で一貫している。
弱い所は 3 つ。第一に、XPU の顧客は 6 社に集中し、しかも顧客が価格を決める力を持つ。グーグルは設計の一部をメディアテック(MediaTek)へ分けた例があり、ブロードコムの粗利益率はラック納入と部品代の通し払いで下がっている。第二に、成長が AI の設備投資という 1 つの源泉に偏り、2022 年の GPU 在庫調整のような需要の落ち込みに弱い。第三に、ソフトは買収で伸びた事業で、契約の更新時に値上げへ反発した顧客が離れる兆しがある。堀は広いが「顧客が自分で作れる」タイプで、独占の堀ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
AI データセンター向けのアクセラレータの世界の売上は、2026 年に GPU と特注チップ(ASIC)を合わせて約 4,500 億ドルと推定される。その中で ASIC は約 800 億ドルで 2 割弱を占めるが、ブロードコム単独の AI 半導体は 2026 会計年度に約 575 億ドルと見込まれ、業界ノートの想定より早く伸びている。大手 5 社の設備投資は 2026 年で約 7,300〜8,050 億ドル、2027 年は 1 兆ドル前後と見られる。
構造の変化は 3 つ。第 1 に、GPU から ASIC への移り変わりである。グーグルの TPU(ブロードコム設計)は、アンソロピックとメタへの外販が始まり、アマゾンの Trainium(マーベルが設計に関与)や、メタの MTIA、オープン AI の自社チップが続く。顧客自身がコストを下げようとするため、ASIC の比率は 2 割弱から 10 年で 3〜4 割に上がると業界ノートは置く。第 2 に、ネットワークの規格争いで、AI クラスターをつなぐ方式は NVLink・InfiniBand から、ブロードコムが握るイーサネットへ広がろうとしている。第 3 に、ラック単位の納入で、部品代が売上に入り粗利益率が下がる。
循環のどこにいるかは「山へ向かう上り坂」と言える。2027 年度までは受注残と供給確保で見通しが利くが、2028〜29 年に電力・データセンター建設の遅れと、減価償却の負担が設備投資の抑制につながる局面があり得る。競合はマーベル(Trainium 系)、メディアテック(TPU の一部)、アルチップ、そしてエヌビディア(NVLink Fusion)。ソフトは、AI エージェントによる置き換え懸念と、ヴイエムウェアの値上げに反発して離れる顧客(Nutanix・Red Hat・クラウド)が論点になる。
資本政策と M&A
還元は配当(毎年増配)と、買収の借入の返済を優先する。2025 会計年度の配当は 115 億ドル、自社株買いは 63 億ドルにとどまり、FCF 269 億ドルの 66% を返した。株式報酬による株数の増加(2025 年度は +1.9%)を打ち消す程度の自社株買いであり、正味の還元はそれより小さい。2026 年度は FCF が 450 億ドル前後に急増する見通しで、借入を返したあとに、配当の増額と自社株買いが膨らむ余地がある。
買収は「売上の大きな会社を買い、費用を削って利益率を上げる」手法が一貫している。ブロケード(2017)・CA(2018)・シマンテックの法人事業(2019)・ヴイエムウェア(2023・約 690 億ドル)。ヴイエムウェアは契約の一本化と値上げで利益を伸ばし成功したが、のれんは 1,000 億ドル前後と自己資本の大半を占め、減損のリスクは残る。クアルコム買収(2018・1,000 億ドル超)は米国政府の判断で断念した例がある。
今後は大型の買収は規制と規模の面で難しく、小粒のネットワーク・セキュリティの補完に限る。買われる側になる可能性はほぼ無い。経営陣の持分は大きく、タン氏の契約は 2030 年まで続く。後継の育成と、タン氏が去ったあとの資本配分が長期の論点になる。
借金 約 665 億ドルは借り換えで金利が約 5.75% に上がり、利払いは税引き後で 3 年後に年 4 億ドル、10 年後に年 7 億ドルほど増える(各筋書きの純利益から引いた)。純負債は時価総額の 3% で、利益に比べて小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益は桁違いに伸び、まだ入口である。2026 会計年度の第 3 四半期の AI 半導体は 167 億ドル(前年比 +221%)、次の四半期は 217 億ドルと、年率で 870 億ドルに達する。2027 会計年度の AI チップ売上は 1,000 億ドルを超えると会社が見通し、受注残は約 730 億ドル、供給は 2028 年まで確保済みで、2027 年に 10GW 分を出荷し 2028 年は「それ以上」。
XPU の顧客は 6 社に広がった。グーグルは TPU の外販でアンソロピック(210 億ドルの発注)とメタに広げ、オープン AI も自社チップをブロードコムと設計する。顧客が増えれば集中は薄まる。AI ネットワークの方も、AI クラスターが大きくなるほどトマホークやジェリコの出番が増え、イーサネットが NVLink に代わる標準になれば XPU の売上以上に伸びる。
ソフトは AI のブームとは無関係に営業利益率 77% の収益を生み、FCF の土台になる。今後 FCF が 450 億ドルから 1,000 億ドル級に膨らめば、配当と自社株買いの余力が一気に増える。10 年後も AI の演算の需要は 1 兆ドル規模で続き、ブロードコムは XPU の設計受託の最大手として、XPU の過半を持ち続ける。
慎重な見方
売上の伸びの大半が顧客 6 社の設備投資に乗っているため、設備投資が 1 年止まると売上が数割減る。大手 5 社の設備投資は年 7,000 億ドル超だが、AI アプリの課金収入がその半分にも届かず、減価償却の負担が 2028 年以降に利益を圧迫すれば、設備投資は抑えられる。2022 年の GPU 在庫調整と 2001 年のネットワーク機器の需要消失は、同じ構図だった。
しかも顧客が価格を決める。グーグルは TPU の設計の一部をメディアテックへ分けた。ラック納入は売上を膨らませるが、HBM などの通し払いで粗利益率を下げる。会社も粗利益率の低下を認めており、「営業利益率を見てほしい」と言い換えている。ブロードコムの設計の堀は、顧客が内製できる間しか通用しない。
ヴイエムウェアの値上げに反発して離れる顧客があり、ソフトの成長は買収の効果が一巡したあとに鈍る。のれん 1,000 億ドル前後は自己資本の大半を占め、減損のリスクがある。
値段の面では、FCF 269 億ドルに対し時価総額 1.6 兆ドルで FCF 利回りは約 1.7%、10 年国債の 5% を大きく下回る。10 年後の成熟した倍率は PER 17.7 倍で、今の倍率からは 7 割半ば下がる計算になる。利益が 5 倍に伸びても、倍率の縮みで時価総額は 3 割弱しか上がらない(10 年で年 2% 台)。
どちらに重みを置いたか
強気の見方「受注残と供給確保で 2027 年度までは見通しが利く」は強く、10 年後は楽観・やや楽観・中立を合わせて 67% とした。資本コスト 8.5% と、利益ベースの正当化 PER の 8〜9.5 割に置いた倍率(純現金込みで 10 年 16.1〜20.6 倍)を当てはめ、8.5% で割り引くと、今の時価総額を上回るのは楽観とやや楽観までで、中立では 10 年で今の値段を 4 割強下回る。慎重な見方は、顧客 6 社への集中と設備投資への依存、顧客が価格を決める点が強く、10 年はエヌビディアと同じ程度(やや悲観・悲観で 33%)の確率を置いた。結論は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 432.92 ドル2.10 兆ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 106.72 ドル5,179 億ドル)。 今の値に割り戻すと 262.45 ドル1.27 兆ドル、今との差 −18.8%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 931.47 ドル4.52 兆ドル | 181.33 ドル8,800 億ドル | +244.3% | +13.2% | 133.54 ドル6,480 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 627.34 ドル3.04 兆ドル | 142.18 ドル6,900 億ドル | +138.1% | +9.1% | 169.29 ドル8,216 億ドル |
| 中立 | 33% | 422.30 ドル2.05 兆ドル | 113.33 ドル5,500 億ドル | +65.7% | +5.2% | 176.76 ドル8,578 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 204.64 ドル9,931 億ドル | 68.00 ドル3,300 億ドル | −15.7% | −1.7% | 54.53 ドル2,646 億ドル |
| 悲観 | 13% | 21.87 ドル1,061 億ドル | 20.61 ドル1,000 億ドル | −86.9% | −18.4% | 5.52 ドル268 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 432.92 ドル2.10 兆ドル | 106.72 ドル5,179 億ドル | +66.9% | +5.3% | 539.64 ドル2.62 兆ドル |
今の株価時価総額 323.24 ドル1.57 兆ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% AI の電力・計算の主役が XPU になり、市場が 1 兆ドル超へ 利益 2,193 億ドル · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 931.47 ドル4.52 兆ドル
AI の推論で XPU が GPU のシェアを奪い、2035 会計年度の AI 演算チップ市場(実質 1 兆 500 億ドル)で当社は 20%、ネットワーク市場(2,800 億ドル)で 25% を取る(エヌビディア 62%)。XPU は 2,140 万個・1 個あたり 1.9 万ドル(価格は物価並みの 1.45 倍)、AI 半導体は約 4,070 億ドル。イーサネットが AI クラスターの標準となり、スイッチ・DSP も取り込む。営業利益率は 58%(顧客の交渉力で今より下がる)。インフラソフトは約 600 億ドル。営業利益は約 2,610 億ドル、純利益は約 2,190 億ドル。10 年間の還元は配当と自社株買いから株式報酬の分を引いて約 8,800 億ドル。
- AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ):数量 2,140(XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す))× 価格 1.90(XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる))→ 売上 4,066 億ドル・営業利益 2,358 億ドル。演算市場 10,500 億ドル(実質)× 20% + ネットワーク市場 2,800 億ドル × 25%・価格 1.45(XPU 2,140 万個 × 1.90 万ドル)・営業利益率 58%
- 非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ):数量 196(当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 284 億ドル・営業利益 165 億ドル。市場 1,400 億ドル(実質)× シェア 14%・価格 1.45・営業利益率 58%
- インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ):数量 414(当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 600 億ドル・営業利益 468 億ドル。市場 4,400 億ドル(実質)× シェア 9.4%・価格 1.45・営業利益率 78%
倍率:正当化 PER は 20.9 倍(g 4.5%、RONIC 27.3%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 36.7% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は strong)。これに対し 19.8 倍(9.5 割)に置いた。カスタム AI チップの顧客が増え、ネットワーク向けも伸びる筋書きだが、顧客の自社設計への依存が残るので 9.5 割に留めた。 g の内訳:AI の計算量とデータ通信量は 10 年より先も実質で伸びるので、長期の g は structural の 4.5%(k − g ≥ 3.5% も守る)。 純現金 4156 億ドルは戻り方 1 を掛けて数え、時価総額 =(純利益 2193 − 受取利息の税引き後 123)× 19.8 + 4156 × 1 = 45204 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 20.6 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの楽観(数量 年 +10%・単価横ばい)に当たる。AI の推論需要が設備投資を支え続け、XPU が GPU のシェアを奪う場合。顧客の自社設計の値下げ圧力をはねのける必要があり、12% に留める。
やや楽観 22% 市場は大きく伸び、ブロードコムは XPU の過半を保つ 利益 1,577 億ドル · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 627.34 ドル3.04 兆ドル
2035 会計年度の AI 演算チップ市場は実質 9,000 億ドル。ASIC の比率が 3〜4 割に上がる中で当社は設計受託の最大手を保ち、演算で 18%、ネットワーク市場(2,400 億ドル)で 23%。XPU は 1,700 万個・1 個あたり 1.83 万ドルで AI 半導体は約 3,110 億ドル。顧客の自社設計の比率が上がり粗利益率は下がるが、営業利益率は 54% を保つ。インフラソフトは約 530 億ドル。営業利益は約 1,880 億ドル、純利益は約 1,580 億ドル。10 年の還元は約 6,900 億ドル。M&A は大型を避け、ネットワーク・セキュリティの補完買収に限る。堀は残るが、広がりはしない。
- AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ):数量 1,700(XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す))× 価格 1.83(XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる))→ 売上 3,111 億ドル・営業利益 1,680 億ドル。演算市場 9,000 億ドル(実質)× 18% + ネットワーク市場 2,400 億ドル × 23%・価格 1.43(XPU 1,700 万個 × 1.83 万ドル)・営業利益率 54%
- 非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ):数量 172(当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 245 億ドル・営業利益 137 億ドル。市場 1,320 億ドル(実質)× シェア 13%・価格 1.43・営業利益率 56%
- インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ):数量 370(当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 529 億ドル・営業利益 402 億ドル。市場 4,200 億ドル(実質)× シェア 8.8%・価格 1.43・営業利益率 76%
倍率:正当化 PER は 20.4 倍(g 4.5%、RONIC 24.7%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 32.8% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は strong)。これに対し 18.4 倍(9 割)に置いた。主要顧客の需要が続く筋書きで 9 割。 g の内訳:AI の計算量とデータ通信量は 10 年より先も実質で伸びるので、長期の g は structural の 4.5%(k − g ≥ 3.5% も守る)。 純現金 3139 億ドルは戻り方 1 を掛けて数え、時価総額 =(純利益 1577 − 受取利息の税引き後 93)× 18.4 + 3139 × 1 = 30445 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 19.3 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立〜楽観の中間。ASIC の比率が 3〜4 割に上がる中で、ブロードコムが設計受託の最大手の地位を保つ筋。マーベルとメディアテックに一部を取られても、市場の拡大で絶対額は増える。
中立 33% 市場は伸びるが、価格と利益率は顧客の自社設計に押される 利益 1,131 億ドル · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 422.30 ドル2.05 兆ドル
2035 会計年度の AI 演算チップ市場は実質 7,500 億ドルで、エヌビディア 55%・当社 16%・AMD 約 8%・ほかの ASIC(マーベル・メディアテック・アルチップ・顧客の自前設計)が残り。ネットワーク市場(2,000 億ドル)では 22%。XPU は 1,350 万個・1 個あたり 1.71 万ドル(3 年後から物価並みに上がる)、AI 半導体は約 2,310 億ドル。グーグル・メタ・オープン AI の価格交渉で営業利益率は 50% まで下がる。インフラソフトは約 500 億ドル、非 AI 半導体は約 210 億ドル。営業利益は約 1,340 億ドル、純利益は約 1,130 億ドル。10 年の還元は約 5,500 億ドル。設計の堀(先端パッケージ・SerDes・ネットワーク)は残るが、「利益率を決める会社」から「顧客と利益を分け合う会社」へ評価が変わる。
- AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ):数量 1,350(XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す))× 価格 1.71(XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる))→ 売上 2,308 億ドル・営業利益 1,154 億ドル。演算市場 7,500 億ドル(実質)× 16% + ネットワーク市場 2,000 億ドル × 22%・価格 1.41(XPU 1,350 万個 × 1.71 万ドル)・営業利益率 50%
- 非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ):数量 150(当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 212 億ドル・営業利益 117 億ドル。市場 1,250 億ドル(実質)× シェア 12%・価格 1.41・営業利益率 55%
- インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ):数量 353(当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 497 億ドル・営業利益 373 億ドル。市場 4,100 億ドル(実質)× シェア 8.6%・価格 1.41・営業利益率 75%
倍率:正当化 PER は 20.3 倍(g 4.5%、RONIC 23.7%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 31.4% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は strong)。これに対し 17.2 倍(8.5 割)に置いた。堀は強いが、利益の大半が数社の大口顧客に偏るので、中立は 8.5 割に置いた。 g の内訳:AI の計算量とデータ通信量は 10 年より先も実質で伸びるので、長期の g は structural の 4.5%(k − g ≥ 3.5% も守る)。 純現金 2069 億ドルは戻り方 1 を掛けて数え、時価総額 =(純利益 1131 − 受取利息の税引き後 61)× 17.2 + 2069 × 1 = 20494 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 18.1 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(市場 1.8 倍・ASIC 比率 3〜4 割・単価 年 −1%)と整合し、ブロードコムの規模に当てはめた。最も確からしい筋を最大の確率にした。
やや悲観 20% XPU の置き換えが進み、AI 半導体の単価と利益率が下がる 利益 616 億ドル · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 204.64 ドル9,931 億ドル
顧客の内製化(グーグルが設計の一部をメディアテックへ移す、メタ・オープン AI が自前の設計を増やす)が進み、2035 会計年度の AI 演算チップ市場(実質 6,000 億ドル)での当社のシェアは 15%、価格は 1.25 倍と物価に負ける。XPU は 990 万個・1 個あたり 1.5 万ドルで AI 半導体は約 1,490 億ドル、営業利益率は 42%。インフラソフトは AI エージェントによる置き換えと VMware 離れ(ニュータニックス・オープンソース・クラウドへの移行)でシェアが 7.5% へ落ち、約 380 億ドルにとどまる。営業利益は約 720 億ドル、純利益は約 620 億ドル。10 年の還元は約 3,300 億ドル。設計の最大手としては残るが、「受託の部品会社」へ評価が下がる。
- AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ):数量 990(XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す))× 価格 1.50(XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる))→ 売上 1,485 億ドル・営業利益 624 億ドル。演算市場 6,000 億ドル(実質)× 15% + ネットワーク市場 1,600 億ドル × 18%・価格 1.25(XPU 990 万個 × 1.50 万ドル)・営業利益率 42%
- 非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ):数量 115(当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 125(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 144 億ドル・営業利益 72 億ドル。市場 1,150 億ドル(実質)× シェア 10%・価格 1.25・営業利益率 50%
- インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ):数量 285(当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 385 億ドル・営業利益 270 億ドル。市場 3,800 億ドル(実質)× シェア 7.5%・価格 1.35・営業利益率 70%
倍率:正当化 PER は 18.7 倍(g 4.5%、RONIC 17.8%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 22.5% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は strong)。これに対し 14.9 倍(8 割)に置いた。顧客が自社設計へ切り替え、値下がりが入る筋書きで 8 割。 g の内訳:AI の計算量とデータ通信量は 10 年より先も実質で伸びるので、長期の g は structural の 4.5%(k − g ≥ 3.5% も守る)。 純現金 1305 億ドルは戻り方 1 を掛けて数え、時価総額 =(純利益 616 − 受取利息の税引き後 39)× 14.9 + 1305 × 1 = 9931 億ドル(純利益に対する見かけの PER は 16.1 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:顧客の自社設計の内製化(グーグルが設計の一部をメディアテックへ移す、メタ・オープン AI が自前の設計を増やす)が進み、価格を決める力が顧客へ移る筋。慎重な見方の中心で、21% を置く。
悲観 13% 構造的な敗北:顧客が自前設計へ移り、VMware も縮む 利益 125 億ドル · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 21.87 ドル1,061 億ドル
AI の収益が設備投資に追いつかず、2035 会計年度の AI 演算チップ市場は実質 3,500 億ドルにとどまる。XPU の設計は顧客の内製と他社へ移り、当社のシェアは 12%、価格は 1.05 倍と物価に大きく負ける。XPU は 600 万個・1 個あたり 1.0 万ドルで AI 半導体は約 600 億ドル、営業利益率は 28%。非 AI 半導体は約 80 億ドル、インフラソフトは VMware の顧客離れで約 250 億ドルまで縮む(営業利益率 60%)。営業利益は約 180 億ドル、純利益は約 130 億ドル。VMware ののれんの一部(約 300 億ドル)を減損し、自己資本は約 1,500 億ドル。もう優良企業ではない。
- AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ):数量 600(XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す))× 価格 1.00(XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる))→ 売上 600 億ドル・営業利益 168 億ドル。演算市場 3,500 億ドル(実質)× 12% + ネットワーク市場 1,000 億ドル × 15%・価格 1.05(XPU 600 万個 × 1.00 万ドル)・営業利益率 28%
- 非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ):数量 80.0(当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 105(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 84 億ドル・営業利益 29 億ドル。市場 1,000 億ドル(実質)× シェア 8%・価格 1.05・営業利益率 35%
- インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ):数量 187(当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 135(価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141))→ 売上 252 億ドル・営業利益 151 億ドル。市場 3,400 億ドル(実質)× シェア 5.5%・価格 1.35・営業利益率 60%
倍率:谷の純利益は小さく(125 億ドル)、事業の ROE は 8.9% と k 8.50% 並みで、新しく投じる資本はほとんど超過利益を生まない。正当化 PER は 12.1 倍(g 4.5%・RONIC 8.7%・moat は強い)。AI の収益が設備投資に追いつかない構造的に負けた筋書きなので上限の 7 割の 8.5 倍に置いた。純現金は積み上がらないとして足さない。時価総額 = 純利益 125 × 8.5 倍 = 1061 億ドル(VMware ののれん約 300 億ドルを減損した自己資本 1,500 億ドルの 0.71 倍)。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの悲観(10 年・構造)。AI の収益が設備投資に追いつかず設備投資が半減する、または XPU の設計が顧客の内製と他社へ移り単価が 40% 下がる場合。顧客が 6 社に集中しているため、そこで一社でも抜けると影響が大きい。13% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
AI 半導体(カスタム XPU・AI ネットワークチップ)
グーグルの TPU・メタの MTIA・オープン AI 向けなどのカスタム AI チップ(XPU)と、AI クラスター用のイーサネットスイッチ(トマホーク)・ルーター(ジェリコ)・光接続用の DSP・NIC。
| 数量XPU の出荷個数(万個。AI 演算チップ市場 × 当社シェアから割り戻す) | 価格XPU 1 個あたりの売上(AI ネットワークの付随分を含む・万ドル。中立は物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 0.67 | 202 | 117 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 1.71 | 2,308 | 1,154 |
取り方:2025 会計年度の AI 半導体売上は約 202 億ドル(XPU が約 7 割、ネットワークが約 3 割)。エヌビディアと同じ物差しで、AI 演算チップ市場(GPU と ASIC。約 2,100 億ドル)での当社の XPU のシェアは約 7%(エヌビディア 77%・AMD 約 5%)、AI ネットワーク市場(約 470 億ドル)でのシェアは約 13%。数量は TPU を中心とした XPU の出荷個数(約 300 万個)、価格はネットワークの付随分を含めた 1 個あたり売上 0.67 万ドル(万個 × 万ドル = 億ドル)。ラック単位の納入(HBM などの通し払い)で 1 個あたり売上は 3 年後に 2 倍前後へ上がり、その後は物価並みに上がるのが中立。筋書きごとの市場・シェアは note に書いた。
非 AI 半導体(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ)
アップル向けの無線部品、ブロードバンド用チップ、企業・通信向けイーサネット、サーバーストレージ接続のチップ。景気循環がある成熟事業。
| 数量当社の出荷(実質の億ドル)= 対象市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ。2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 167 | 100 | 167 | 95 |
| 10 年後 中立 | 150 | 141 | 212 | 117 |
取り方:2025 会計年度の半導体売上 約 369 億ドルから AI を引いた約 167 億ドル。対象の市場(無線・ブロードバンド・企業ネットワーク・ストレージ接続の合計)を約 1,100 億ドルと推定し、シェア約 15%(クアルコム・マーベル・メディアテックが競合)。数量は「市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× シェア」=当社の出荷、価格は価格の水準(2025 年度=100、rev_factor 0.01。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141)。アップルの無線の内製化でシェアは下がる方向。営業利益率は 57%。
インフラソフト(VMware・メインフレーム・サイバーセキュリティ)
ヴイエムウェア(VMware)の仮想化基盤(VCF)、メインフレーム用ソフト(CA)、シマンテックの法人向けセキュリティ。契約の更新で稼ぐ。
| 数量当社の契約の量(実質の億ドル)= 企業向けインフラソフト市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 3 年 111・10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 270 | 100 | 270 | 208 |
| 10 年後 中立 | 353 | 141 | 497 | 373 |
取り方:2025 会計年度のインフラソフト売上は約 270 億ドル。開示は売上のみなので、仮想化・メインフレーム・法人向けセキュリティの市場を約 3,000 億ドルと推定しシェア 9% で置いた(ニュータニックス・レッドハット・クラウド各社が競合)。数量は「市場(実質)× シェア」=当社の契約の量、価格は価格の水準(2025 年度=100)。契約の更新で値上げが通るので、景気後退の筋書きでも価格は物価並みに置く。営業利益率は約 77%。
リスクと懸念
顧客 6 社の設備投資への集中
XPU の顧客はグーグル・メタ・アンソロピック・オープン AI・バイトダンスなど 6 社に集中し、AI 売上は設備投資の継続に完全に乗っている。AI の収益化が設備投資に追いつかず、設備投資が 1 年止まれば、売上は数割落ちる。2022 年の GPU 在庫調整の再来になる。
顧客の自社設計とラック納入による利益率の低下
顧客が価格を決める立場にあり、グーグルは設計の一部をメディアテックへ分けた例もある。ラック単位の納入は HBM などの部品代が売上に入り、粗利益率が薄まる。営業利益率 55% から 50% 以下に下がれば、利益の伸びは売上の伸びを下回る。営業利益率を見るよう求める会社の説明が成り立つかが焦点になる。
オープン AI・アンソロピックなど新興顧客の資金力
XPU の大型の発注には、まだ赤字の AI 企業が含まれる。アンソロピックの 210 億ドルの発注やオープン AI の 10GW 計画は、資金調達が続く前提である。調達が止まれば、受注残の一部が売上に変わらない。顧客の信用力が受注残の質を決める点が見えにくい。
TSMC・HBM・電力の制約
製造は TSMC の先端工程と CoWoS 頼み、HBM はメモリ 3 社が握る。台湾の地政学や HBM の価格上昇は粗利益率を下げ、データセンターの電力不足は顧客の出荷を遅らせる。供給は 2028 年まで確保済みだが、価格は固定されていない。
ヴイエムウェアの顧客離れとのれんの減損
契約の一本化と値上げに反発した顧客が、Nutanix・オープンソース・クラウドへ移る動きがある。のれん 1,000 億ドル前後は自己資本の大半を占め、ソフトの成長が鈍れば減損のリスクがある。AI エージェントによるソフトの置き換えも論点になる。
輸出規制と米中関係
AI チップの輸出許可の変更や、中国向けの制限は、顧客のバイトダンスの発注に直結する。規制の強化は上振れも下振れも生む。非 AI 半導体の中国向け売上にも影響し、中国の国産チップへの置き換えも進む。先行きの読みにくさが残る。
後継者と資本配分
ホック・タン CEO の契約は 2030 年まで。買収した会社の費用を削る手法は、タン氏の個人の手腕に負う面が大きい。後継者が資本配分を同じ水準で続けられるか、割高な自社株買いを増やさないかが長期の論点になる。株式報酬も大きく、正味の還元が小さくなりやすい。
今後の分かれ目
- 大手 5 社のうち 2 社以上が次年の設備投資を減らす
- 3 年・10 年とも慎重な筋書きの確率を引き上げる。受注残の 730 億ドルが売上へ変わるか、キャンセルと延期の動きを見る。
- XPU のラック納入の比率が上がり、粗利益率が 70% を割る
- 営業利益率の置き方を下げる。会社が説明する「営業利益率を見る」という見方が成り立つか(部品の通し払いを除いた利益額が伸びているか)を確認する。
- グーグルが TPU の設計を他社へ大きく分ける、またはメタ・オープン AI が自社の比率を高める
- 10 年の慎重・悲観の確率を引き上げる。価格を決める力が顧客へ移った証拠で、設計の堀が縮む。
- AI アプリの課金収入が設備投資の半分を超えて伸びる
- 楽観へ確率を寄せる。設備投資の持続性が高まり、倍率が縮む速度も遅くなる。
- イーサネットが AI クラスターの標準となり、NVLink 陣営が押される
- ネットワークの売上が XPU 以上に伸び、利益率の下支えになる。非 AI と AI の比率の置き方を上げる。
- ヴイエムウェアの顧客離れが加速し、インフラソフトの売上が減り始める
- ソフトの下支えが崩れ、悲観の床(谷の PBR)を下げる。のれんの減損にも注意する。
見ておくもの
- 大手 5 社の設備投資の改定(四半期の決算ごと)と AI アプリの課金収入
- AI 半導体の売上と受注残、第 4 四半期(217 億ドル)の達成と 2027 会計年度の 1,000 億ドルの維持
- 粗利益率と営業利益率(ラック納入の比率)
- XPU の顧客の構成(グーグル以外の比率・未公表の 2 社の量産開始)
- TSMC の CoWoS・HBM の供給と電力・データセンターの建設の進み具合
- インフラソフトの売上の伸びと VMware の更新率
倍率と資本コストの決め方
売上は AI 半導体・非 AI 半導体・インフラソフトの 3 事業を「市場(実質)× シェア × 価格の水準」で積み、AI 半導体はエヌビディアと同じ AI 演算チップ市場・ネットワーク市場に置いて、両社と AMD・他の ASIC のシェアが足して 100% を超えないようにした。倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)で置いた。k = 8.5%、残る割合は強い堀の 2/3、g は structural の 4.5%、置く倍率は上限の 8〜9.5 割(中立は 8.5 割)。ROE は検査と同じく帳簿の自己資本から余った現金(212 億ドル)を除いて取り、期末の純現金は 1 ドルを 1 ドルで足した(中立は 10 年で見かけ 18.1 倍)。10 年の悲観(赤字に近い)は、上限の 7 割の PER で置いた。純利益は GAAP(株式報酬と買収の償却は費用)。今の PER 69 倍・PBR 19.6 倍には寄せていない。事業の見通し(数量・価格・確率)は倍率の置き直しでは変えていない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.32 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.50% = 8.50%。循環 +0.5%・値決め −0.25%・寿命 +0.25% で quality は +0.5%(前は β 1.32 から上限 9% に収めた k 9.0%)。顧客集中と自社設計は k に足しすぎず、やや悲観・悲観の確率(10 年で 33%)と悲観の深さで表した。VMware ののれんの減損は悲観の筋書きに入れた。存続は危うくないので上乗せ 0。