結論
ビアサットは、旅客機、船舶、軍隊、遠隔地を衛星でつなぐ通信会社である。筆者の結論は割高だ。世界規模の通信網と希少な周波数免許は魅力的だが、利益を生むまでの投資額が大きく、普通株主に残る価値は見かけの事業規模ほど厚くない。
2023年のインマルサット買収で、同社は世界的な衛星通信事業者になった。2026年3月期の売上は46.4億ドルだが、GAAP営業利益は1.1億ドル、純利益は赤字である。純有利子負債は約52億ドルに達する。通信衛星が生む減価償却前の利益は大きいものの、衛星の更新費用と利払いを引くと、長期株主に帰属する利益はまだ乏しい。
2026年には重要な前進もあった。ViaSat-3 F3が8月31日にアジア太平洋で、F2が9月17日に米州で商用運用を開始した。長年の設備投資が収益に変わり始める局面である。しかし、同年6月期の直近四半期は売上が前年同期比1%減、純損失が約0.52億ドルだった。航空向けの成長を固定通信の縮小が打ち消している。
最も評価するのは、航空安全通信、海上通信、政府向けの暗号化された通信網である。これらは接続の信頼性が重視され、単純な通信速度や料金だけでは競争が決まらない。一方、家庭向け衛星インターネットと旅客機向けの大容量通信では、スターリンクやアマゾン・レオの低軌道衛星が競争条件を変えている。
10年後の中立では売上64.8億ドル、GAAP営業利益7.4億ドル、純利益3.5億ドルまで回復する。ただし自己資本利益率は約5.3%にとどまり、必要な資本コストを下回る。確率を加味した現在の本質価値は約8.7億ドルで、添付factsの時価総額82.8億ドルを約89.5%下回る。これは衛星事業が消えるという予想ではない。大きな設備投資を続ける会社に対し、株主が受け取れる利益だけで価値を測った結果である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、衛星通信の必要性とビアサット株の魅力を分けて考えたい。飛行中の航空機、遠洋の船舶、軍用機、災害時の通信には、今後10年以上も衛星が必要である。この需要自体は消えない。問題は、その需要を満たすために何度も衛星を打ち上げる資本の所有者が、最後にどれだけの利益を手にできるかだ。
最も持ち続けたい資産は、国際的な周波数免許、安全通信の認証、長い顧客関係である。これらは単純な通信速度競争では失われにくく、事業の下支えになる。一方、高速衛星インターネットの設備は技術進歩によって古くなる。後から参入した事業者が低い原価でよりよいサービスを提供できれば、先に投じた資金は堀ではなく重荷になる。
現在の年間調整後EBITDAは14億ドル台である。しかし、これをオーナー利益と呼んではならない。衛星の維持更新、地上設備、顧客端末、資本化した金利を差し引くと、自由に使える資金は大きく減る。会社の2027年3月期のフリーキャッシュフロー見通しは約1.8億ドルにすぎない。これは現在の時価総額に対して約2%である。普通株主への現金還元はさらに少ない。
長期に持つなら、投資した資本が資本コストを超えることと、利益が配当か負債減少という形で株主に戻ることを確かめたい。中立の10年後でもROEは約5%であり、必要な10.5%には遠い。負債の削減が進み、衛星の追加投資を抑えても収益が伸びる状態にならなければ、高い評価は難しい。
筆者が評価を変えるのは、航空と政府向けの利益成長が固定通信の衰退を明確に上回り、自由現金が継続的に積み上がるときである。現段階では、技術力と規制上の資産には価値を認めるが、普通株主がその価値を十分に受け取れると確信できない。事業の将来と株主価値の将来は同じではない。
何で稼ぐ会社か
事業の約7割は通信サービスである。残りは防衛・先端技術で、暗号装置、軍用通信機器、衛星関連システムを開発する。通信サービスには継続課金が多く、防衛事業には製品納入と政府契約が多い。顧客は航空会社、船舶運航会社、米国政府、各国の軍隊、通信事業者、遠隔地の企業と家庭である。
航空通信は最大の成長事業である。2026年3月末に商用接続を提供する航空機は約4580機、ビジネスジェットは約2100機だった。航空会社や航空機の機体構造に合わせて通信設備を設置し、帯域、運用、保守を提供する。一度設置したアンテナを交換するには航空機の認証と運航調整が要るため、顧客の切り替えには費用がかかる。年間航空売上は11.9億ドルである。
政府向け衛星通信は約8.0億ドルで、軍用機、艦艇、地上部隊に安全な接続を提供する。海上通信は約4.6億ドルで、インマルサット由来の海上安全通信やFleet Xpressなどが中心になる。2026年3月末の海上サービス対象船舶は約1万3200隻である。安全通信と高速インターネットは同じ船でも役割が違い、前者は後者より解約されにくい。
固定通信とその他サービスは約6.1億ドルで、米国の家庭向け衛星インターネット、企業通信、遠隔設備の監視などを含む。米国の家庭向け契約は約13万件、月間平均単価は約113ドルである。会社は限られた通信容量を航空向けに振り向けており、家庭向け契約の減少を成長事業の成功と取り違えてはいけない。
防衛・先端技術の売上は約13.4億ドルである。情報セキュリティ・サイバー防衛、宇宙・ミッションシステム、戦術ネットワークが中核だ。通信波形、暗号化、特殊な端末設計に強みを持つ。政府調達の認証や過去の納入実績は参入障壁になるが、入札で利益率が制約される。
この会社は、人月単価やSaaSの席数を売る会社ではない。防衛向けの受託開発にも技術者の仕事はあるが、開示上はほぼ固定価格契約で、価値の中心は物理的な通信網、認証、暗号装置、衛星設備である。したがって、AIエージェント代替の人月・席課金型には直接該当しない。AIによる設計効率化やサイバー防衛の自動化は競争条件に織り込む。
優良さと弱いところ
最も強い堀、つまり他社が簡単に再現できない強みは、周波数免許と安全通信網である。特にインマルサットが持つL帯の国際的な運用権と海上・航空の安全通信基盤は、新規参入企業が短期間で再現するのが難しい。衛星を打ち上げる資金だけでなく、国際調整、地上局、規制当局の認可、端末の認証が必要になる。
航空でも切り替えの手間はある。ただし、その堀を過信してはいけない。低軌道衛星による高速接続の体験が顧客に評価されれば、機体更新の時期に既存設備が置き換えられる。2026年6月末の商用接続機数は約4630機へ増えた一方、既存契約に基づく追加導入予定は約850機まで減った。契約残が減る理由には納入と競争の両方があり、継続率の数字だけで堀の強さを判断できない。
防衛分野は技術と規制による参入障壁があり、商用衛星通信より安定した収益を生みやすい。2026年3月期の防衛・先端技術のセグメント営業利益は約2.16億ドルである。通信サービスの約1.53億ドルを上回っていた。ただし、いずれも買収無形資産の本社調整前の数字であり、全社の株主利益をそのまま示すものではない。
決定的な弱点は資本効率である。過去10年間のROE中央値はマイナス2.1%で、2026年3月期のGAAP純利益も赤字だった。衛星通信網のような巨額設備を必要とする事業で、この実績は重い。衛星の設計に優れ、顧客との契約が長く続いても、新しく投じた資本から十分な利益が生まれなければ株主価値は増えない。
過去の増分ROICは、買収と衛星投資が重なったため信頼できる高い水準とは言えない。経営者が通信容量を採算のよい航空分野へ配分する判断は合理的である。しかし、将来の大型衛星投資まで含めて資本コストを超えることが証明されたわけではない。堀は安全通信では残るが、高速データ通信では縮小している。全社としては強い堀と評価しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビアサットをシスコやアリスタと同じネットワーク機器市場だけで評価するのは適切ではない。こちらの主戦場は衛星通信容量、航空機・船舶への接続、軍用通信、衛星ネットワークである。光スイッチやデータセンター向けの通信速度市場とは顧客も原価構造も異なるため、同じ領域の会社の利益率をそのまま当てはめない。
航空機内通信には成長余地がある。Novaspaceの2026年公表資料では、接続済み商用航空機は2024年の約1万1600機から2034年に約2万5500機へ増える見通しである。ビアサットは現在の航空機数から、商用機接続の大きな一角を占めていると推定できる。ただし、スターリンクは航空会社との新規契約で急速に拡大し、アマゾン・レオもデルタ航空などと契約した。今後は市場自体が拡大しても、ビアサットのシェアが低下しうる。
海上通信では、インマルサット、イリジウム、SES、スターリンクなどが競う。既存の海上安全通信は規制と信頼性で守られるが、船員向けインターネットや商船の大容量接続では低軌道衛星が価格の基準を下げている。船舶数が増えても、1隻当たり売上が物価ほど増えるとは限らない。新しいNexusWaveは複数の通信方式を束ねる対抗策になる。
家庭向け衛星通信の競争はさらに厳しい。スターリンクは遅延が小さく、通信容量の拡大速度も速い。ビアサットの高軌道衛星は広い範囲を一度に覆えるものの、家庭向けの新規契約を価格と速度で奪い返すのは難しい。したがって、固定通信は成長源ではなく、利益と容量を再配分する対象として扱う。
政府向けの市場では、戦争や安全保障上の需要を背景に、多軌道で切れにくい通信網が求められる。競合はSES、ユーテルサット・ワンウェブ、スペースXの政府向けサービス、大手防衛装備企業である。暗号化と安全性の要求が高い領域ではビアサットにも機会があるが、政府は調達先の分散を進めるため、顧客を独占できるわけではない。
2026年にはViaSat-3の3機体制が稼働段階に達した。これは今後の通信容量と単位原価を改善する要因になる。一方、2023年のF1アンテナ展開不具合やインマルサット衛星の障害は、衛星の失敗が一度で多額の資本を損なうことを示した。市場の実質数量は航空・政府向けで増えるが、通信単価の低下と更新投資を合わせて考える必要がある。
資本政策と M&A
資本配分の歴史は厳しく評価する。2023年のインマルサット買収によって国際的な衛星網、L帯免許、航空・海上の顧客基盤を取得したが、負債と無形資産償却も大きく増えた。2023年1月にはLink 16の戦術データリンク事業を約19.6億ドルで売却した。事業を入れ替える力はあるものの、買収後の普通株主利益はまだ十分に改善していない。
2026年3月期のフリーキャッシュフローは添付factsで約6.0億ドルだが、Ligado関連の一時的な入金約4.2億ドルが含まれる。これを恒常的な自由現金と扱うのは危険である。2027年3月期の会社見通しは、売上が前年比で1桁台半ばの増加、調整後EBITDAは横ばいから微増、設備投資9.5〜10億ドル、フリーキャッシュフロー約1.8億ドルである。純負債倍率は年度末に小幅に低下する見込みとしている。
会社は普通株への配当を行っておらず、近い将来の現金配当も予定していない。自社株買いは小規模で、株式報酬による希薄化を十分に打ち消していない。従って10年間の正味還元は、全ての筋書きでマイナスになる。これは配当をマイナスにしたのではなく、増加する持ち分の元手を普通株主から見て差し引いたものである。
2026年9月にはSpace42と直接端末接続事業Equatysの設立に向けた拘束力ある合意を結んだ。ビアサット側には最大4億ドルの初期出資予定がある。しかし、事業体の設立や衛星調達には条件が残るため、未成立の事業の売上や利益を既存会社の実績には足していない。完成すれば成長の選択肢になる反面、借金の多い会社に新しい資本負担が加わる点も無視できない。
現在の財務改善が続けば、負債の借り換え費用を抑えられる可能性がある。ただしインマルサットの既存債務には高い金利があり、短期的な利払いの減少を永続的な利益と見なさない。大型買収や追加の衛星投資より、まず負債を減らして普通株主の取り分を増やすことを優先すべき段階である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ViaSat-3の投資がようやく収益化する。2026年8月から9月にかけてF3とF2が商用運用を開始し、米州とアジア太平洋に新しい容量が加わった。衛星の開発と打ち上げに必要な巨額の資金をすでに投じたため、追加の通信売上に対する限界利益は今後高くなる可能性がある。通信容量の不足で家庭向けから航空向けに振り向けていた状態も緩和され、利益率のよい顧客により多くの容量を売れる。
航空では接続機数が2025年3月の約4120機から2026年6月に約4630機へ増えた。商用航空機の接続需要は世界的に拡大しているため、会社が市場シェアをある程度失っても、機数そのものは増やせる。航空会社向けの安全通信や運用データは、旅客向け無料インターネットとは違う評価軸を持つ。高速通信に低軌道衛星を使いながら、安全通信をインマルサットに残す顧客も存在しうる。
防衛事業も長期的に有望である。暗号装置、戦術ネットワーク、宇宙システムは安全保障の重要な支出先であり、2026年6月末の防衛・先端技術の確定受注残は約14億ドルだった。政府調達の長い認証過程は参入を難しくする。米国政府との関係を維持すれば、商用通信の価格下落を利益成長で補える。
さらに、EquatysはL帯周波数資産を別の形で収益化する選択肢になる。通信事業者が共同の衛星基盤を利用できれば、各社が衛星を個別に所有する必要はなくなる。ビアサットが主要な技術供給者になれば、これまでの設備投資型の事業と異なる利益源が育つ可能性がある。ただし、未成立事業の売上は現時点で足さない。
最良の展開では、航空、政府、暗号装置の売上がそろって伸び、衛星の減価償却負担が相対的に小さくなる。GAAP営業利益は18億ドル台まで増え、純利益は11億ドル程度になる。負債を抑えながらこの水準に到達できれば、現在より大きな企業価値を生める。
慎重な見方
衛星の通信容量を増やせることと、その容量を高い値段で売れることは別である。スターリンクは低軌道の衛星網を大規模に整備し、航空機内通信と海上通信の新規契約を獲得している。アマゾン・レオも航空会社との契約を進める。利用者が地上と近い通信速度と遅延を求めれば、高軌道の通信容量を増やしても価格決定力は戻らない。
既存の航空顧客がすぐ解約できないことは一定の守りになるが、機体の更新時期には競争が再び始まる。既存契約に基づく追加導入予定機数が2026年3月の約1000機から6月には約850機へ減った事実は注視したい。新規受注が十分に増えなければ、今の設置基盤を維持するだけでは成長率が鈍る。
海上でもスターリンクの低料金と高速通信が基準になる。インマルサットの安全通信は残っても、従来の高額な広帯域契約が縮小する恐れがある。家庭向け通信はすでに縮小しており、会社自身が容量を航空へ移している。通信容量が拡大した後も、家庭向けの需要を十分な採算で取り戻せるとは限らない。
財務の弱さは競争よりも深刻である。2026年3月期は売上46億ドルに対してGAAP営業利益が約1億ドルしかない。取得した無形資産の償却、衛星設備の減価償却、金利負担が重い。2026年6月末の債務元本は約66億ドルで、インマルサットの借入には9%台の金利が残る。調整後EBITDAが改善しても、普通株主に帰属する利益が大きく改善するとは限らない。
2023年のインマルサット買収によって得た規模の利益はまだ十分には実証されていない。今後もGXシリーズ、Inmarsat-8、直接端末接続の設備が必要になる。資本負担を抑えるために増資や事業売却を迫られる可能性もある。低軌道衛星との競争に負けた場合、売上だけでなく衛星設備の回収可能価額も下がる。過去に投じた金額は、普通株主にとっての回収保証にならない。
最も厳しい展開では、航空接続機数が大きく減り、固定通信と海上通信も縮小する。防衛部門だけでは高い固定費を支えきれず、営業赤字と資産減損が再発する。衛星通信会社として事業が残っても、債権者が経済価値の大半を受け取る状態になりうる。
どちらに重みを置いたか
通信そのものの需要は長く残るが、競争の激化と資本効率の低さを重く見る。最も強い資産は周波数免許と安全通信であり、家庭向けや旅客向けの高速通信と同じ評価にはしない。ViaSat-3の稼働は大きな前進だが、今後必要な更新投資まで含めたROICの改善は確認できていない。
確率は楽観側30%、中立30%、悲観側40%とした。悲観側を厚くしたのは、AIエージェント代替ではなく、低軌道衛星との競争、既存債務、衛星更新費用の三つが同時に普通株主へ不利に働くためである。評価が変わる分岐点は、会計上の利益だけでなく、追加投資を差し引いた自由現金が継続的に増えるかどうかだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 25.47 ドル34 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −4.83 ドル−7 億ドル)。 今の値に割り戻すと 6.45 ドル9 億ドル、今との差 −91.6%、 期待の年率 −11.4%(資本コスト 10.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 78.72 ドル106 億ドル | −4.45 ドル−6 億ドル | −3.6% | −0.4% | 8.17 ドル11 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 36.13 ドル49 億ドル | −5.20 ドル−7 億ドル | −59.8% | −8.2% | 5.88 ドル8 億ドル |
| 中立 | 30% | 19.96 ドル27 億ドル | −5.94 ドル−8 億ドル | −81.8% | −13.9% | 4.21 ドル6 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 12.10 ドル16 億ドル | −5.20 ドル−7 億ドル | −91.0% | −18.3% | 1.59 ドル2 億ドル |
| 悲観 | 17% | 6.92 ドル9 億ドル | −2.23 ドル−3 億ドル | −93.9% | −22.2% | 0.80 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 25.47 ドル34 億ドル | −4.83 ドル−7 億ドル | −73.2% | −11.4% | 20.64 ドル28 億ドル |
今の株価時価総額 77.02 ドル104 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 楽観:衛星容量の収益化と防衛成長がそろう 利益 11 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 78.72 ドル106 億ドル
2036年3月期には、世界の接続済み商用航空機がさらに増え、ビアサットの航空機等価接続数は7850機になる。安全通信と高速通信を組み合わせることで、平均契約単価も上がる。ViaSat-3の容量を十分に活用でき、航空売上は26.7億ドルに増える。政府向けでは世界の実質対象市場が約120億ドルに拡大し、ビアサットは約10%のシェアを維持する。
海上通信ではNexusWaveが定着し、1万6500隻から売上を得る。家庭向けは縮小しても、企業向けサービスが補う。防衛では暗号装置と宇宙・戦術システムの受注が伸び、政府調達の技術障壁が高い利益率を守る。
全社売上は95.5億ドル、GAAP営業利益は18.3億ドルに増える。金利負担、税、少数株主の取り分を引いても純利益は11.1億ドルに達する。初期の赤字が残るため、10年間の純利益累計は45.5億ドルとする。株式報酬を差し引いた正味還元はマイナス6億ドルで、自己資本は98.1億ドルになる。Equatysの未成立事業収益は足さず、衛星・防衛の既存事業による改善だけを見込む。
- 航空衛星通信:数量 7,850(商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数)× 価格 0.00(商用機等価1機当たり年間売上、億ドル)→ 売上 27 億ドル・営業利益 6 億ドル。世界の接続済み航空機が約2.7万機以上へ拡大し、商用機換算で大きな顧客基盤を守る。平均単価は現状の約1.49倍。
- 政府向け衛星通信:数量 12.0(政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア)× 価格 1.45(2026年の契約単価を1とするサービス価格指数)→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質対象市場120億ドル×シェア10%。安全性と多軌道接続の価値を評価される。
- 海上衛星通信:数量 16,500(通信サービス契約を有する船舶数)× 価格 0.00(1隻当たり年間売上、億ドル)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。NexusWaveが浸透し、1万6500隻×年間4.8万ドル。
- 米国の家庭向け固定衛星インターネット:数量 85,000(米国家庭向けインターネット契約数)× 価格 0.00(1契約当たり年間売上、億ドル)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。家庭向け件数は減るが、通信容量の余裕から高い契約単価を保つ。
- 企業・IoT・その他固定通信:数量 5.4(企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.35(2026年を1とする企業通信サービス単価指数)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。企業・IoTの実質対象市場120億ドル×シェア4.5%。
- 衛星通信端末・ネットワーク製品:数量 3.4(衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.35(2026年を1とする製品混合単価指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。端末市場が伸び、航空・政府用途で独自製品を維持する。
- 防衛向け情報セキュリティ・暗号装置:数量 7.2(高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.40(2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数)→ 売上 10 億ドル・営業利益 3 億ドル。防衛暗号製品市場200億ドル×シェア3.6%。認証と独自技術が利益率を守る。
- 宇宙・ミッションシステム:数量 5.7(宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.40(2026年を1とするシステム・装置単価指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。対象市場150億ドル×シェア3.8%。政府の宇宙通信設備需要が伸びる。
- 戦術ネットワーク:数量 5.8(戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.40(2026年を1とする戦術機器の混合単価指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。戦術ネットワーク市場165億ドル×シェア約3.5%。
- 防衛の技術開発サービス・その他製品:数量 3.1(防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とする納入製品・契約単価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。技術開発・支援契約の増加。一時的なライセンス利益には依存しない。
倍率:資本コストk10.5%、10年目のROEは11.1÷98.1=11.31%。堀はweakで超過利益の残存割合1/3とし、RONICは10.77%。10年後以降のgは市場実質成長約1.0%と価格上昇約3.0%から名目4.0%。来期利益への正当化PERに1.04を掛けた上限は約10.06倍で、その95%の9.56倍を採用する。GAAP純利益11.1億ドル×9.5556=106.07億ドル。余った純現金はなく、二重の償却足し戻しもしない。
確率:ViaSat-3の新しい通信容量が高い稼働率を実現し、航空と政府向けでシェアを守り、暗号装置と戦術ネットワークも伸びる。資本効率がようやく資本コストを超える展開だが、低軌道衛星との競争と追加の設備投資負担を考えると、実現確率は11%にとどめる。
やや楽観 19% やや楽観:航空と防衛が伸び、設備投資を吸収する 利益 6 億ドル · PER 8.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 36.13 ドル49 億ドル
航空機等価接続数は6900機となり、接続設備の取り替えを伴う競争にも耐える。機体数の増加と新しいViaSat-3の容量によって、航空売上は20.7億ドルへ伸びる。政府通信は実質対象市場の拡大とシェア維持で14.0億ドルを確保する。海上通信はスターリンクとの競争で単価の上昇が限定的だが、接続船舶数は1万4500隻となる。
防衛では情報セキュリティ、宇宙システム、戦術ネットワークがそれぞれ成長する。政府調達の需要は堅いが、特許・ライセンスによる一時利益は持続しない。営業利益率は全社で約13.7%まで改善し、GAAP営業利益は10.5億ドルとなる。
金利と税金を差し引いた純利益は5.8億ドルである。初期数年間の利払いと設備投資の負担により、10年間の純利益累計は23億ドルにとどまる。配当と買い戻しによる大きな還元はなく、株式報酬を差し引いた正味還元はマイナス7億ドルとなる。衛星の追加投資には慎重になるが、事業全体のROEは資本コストを下回る。
- 航空衛星通信:数量 6,900(商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数)× 価格 0.00(商用機等価1機当たり年間売上、億ドル)→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場の機数増が既存顧客の更新による流出を上回る。
- 政府向け衛星通信:数量 10.4(政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア)× 価格 1.35(2026年の契約単価を1とするサービス価格指数)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。政府通信の実質対象市場130億ドル×シェア8%。
- 海上衛星通信:数量 14,500(通信サービス契約を有する船舶数)× 価格 0.00(1隻当たり年間売上、億ドル)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。船舶数が増加し、安全通信の料金を守る。
- 米国の家庭向け固定衛星インターネット:数量 110,000(米国家庭向けインターネット契約数)× 価格 0.00(1契約当たり年間売上、億ドル)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約縮小が続くが、残る契約の単価は上がる。
- 企業・IoT・その他固定通信:数量 4.7(企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.28(2026年を1とする企業通信サービス単価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。企業向け市場が拡大し、価格下落は小幅にとどまる。
- 衛星通信端末・ネットワーク製品:数量 3.0(衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とする製品混合単価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。航空・政府用の端末需要が伸びる。
- 防衛向け情報セキュリティ・暗号装置:数量 6.0(高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。暗号製品市場180億ドル×シェア3.3%。
- 宇宙・ミッションシステム:数量 4.8(宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とするシステム・装置単価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。宇宙通信システムの政府発注が堅調。
- 戦術ネットワーク:数量 4.8(戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とする戦術機器の混合単価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。戦術通信の市場拡大を取り込む。
- 防衛の技術開発サービス・その他製品:数量 2.8(防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.25(2026年を1とする納入製品・契約単価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。研究開発契約と関連製品が緩やかに拡大する。
倍率:ROEは5.8÷76.6=7.57%、kは10.5%。弱い堀の残存割合1/3を用いたRONICは9.52%。2036年以降のgは市場実質成長約0.7%と価格上昇約3.0%で3.7%。翌年利益倍率を1.037倍した正当化PER上限は9.33倍となる。利益の質からその90%の8.39倍を採用する。5.8億ドル×8.3929=48.68億ドル。純利益はGAAPであり、余剰純現金はない。
確率:航空機数と防衛契約の増加は十分ありうる。ただし高速通信の単価競争が残り、純利益の伸びは売上ほど大きくならない。衛星の追加投資が続くことも踏まえて19%とした。
中立 30% 中立:必要な通信網として残るが、資本効率は低い 利益 4 億ドル · PER 7.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 19.96 ドル27 億ドル
世界の航空機内通信市場は拡大するが、ビアサットはスターリンク、アマゾン・レオ、SES・インテルサットとの競争でシェアを失う。世界の接続済み商用機が2万7000機前後になるなか、自社の商用機等価接続数は6000機にとどまる。航空売上は16.7億ドルへ増えるが、平均単価は10年間で約1.22倍と物価の1.41倍を下回る。
政府向けは実質対象市場を約105億ドル、シェア9%として数量9.45単位となる。海上通信は1万2500隻で、低軌道衛星との競争により料金の伸びは小さい。家庭向け固定通信は8万件へ減る。防衛事業は暗号装置と戦術ネットワークを中心に拡大するが、大手防衛装備企業との入札競争が続く。
全社売上は64.8億ドル、GAAP営業利益は7.44億ドルとなる。既存の高金利借入の借り換えと緩やかな負債返済で金融負担を減らすが、税と非支配持分を引いた純利益は3.5億ドルにとどまる。2027年から数年は衛星の投資回収が遅れるため、10年間の純利益累計は11億ドルである。正味還元はマイナス8億ドルで、自己資本は65.6億ドルとなる。
事業は存続し、衛星通信の必要性も増す。しかし普通株主のROEは約5.3%であり、巨大な資産を保有することと十分な価値を生むことは別である。
- 航空衛星通信:数量 6,000(商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数)× 価格 0.00(商用機等価1機当たり年間売上、億ドル)→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。商用機市場は成長するがシェアは約20%へ低下。実質数量1.15倍、単価約1.22倍。
- 政府向け衛星通信:数量 9.5(政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア)× 価格 1.30(2026年の契約単価を1とするサービス価格指数)→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質対象市場105億ドル×シェア9%。
- 海上衛星通信:数量 12,500(通信サービス契約を有する船舶数)× 価格 0.00(1隻当たり年間売上、億ドル)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。船舶数は微減。安全通信の価格を守るが、広帯域通信は値下げ競争。
- 米国の家庭向け固定衛星インターネット:数量 80,000(米国家庭向けインターネット契約数)× 価格 0.00(1契約当たり年間売上、億ドル)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。スターリンクと地上回線に契約を奪われる。
- 企業・IoT・その他固定通信:数量 3.9(企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.25(2026年を1とする企業通信サービス単価指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。対象市場100億ドル×シェア3.9%。企業IoTは伸びるが通信単価は圧迫される。
- 衛星通信端末・ネットワーク製品:数量 2.7(衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.28(2026年を1とする製品混合単価指数)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。端末市場40億ドル×シェア6.75%。
- 防衛向け情報セキュリティ・暗号装置:数量 5.4(高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.28(2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。防衛暗号装置市場150億ドル×シェア約3.6%。
- 宇宙・ミッションシステム:数量 4.3(宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.30(2026年を1とするシステム・装置単価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。宇宙通信装置市場120億ドル×シェア約3.6%。
- 戦術ネットワーク:数量 4.4(戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.32(2026年を1とする戦術機器の混合単価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。戦術ネットワーク市場135億ドル×シェア約3.2%。
- 防衛の技術開発サービス・その他製品:数量 2.4(防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.25(2026年を1とする納入製品・契約単価指数)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。一時的な知財収入を正常化し、政府向け開発の成果物需要を見込む。
倍率:k10.5%、ROE=3.5÷65.6=5.34%、moatはweakのためRONIC=10.5%+1/3×(5.34%−10.5%)=8.78%。2036年以降のg3.0%は、実質市場数量約+1.5%、シェア変化約−0.7%、実質単価と物価を合わせた価格寄与約+2.2%から導く。正当化PERの上限は10年目利益基準で9.04倍であり、その85%の7.684倍を採用する。ROEがkを下回るため、1÷kの上限も守る。GAAP純利益3.5億ドル×7.684=26.89億ドル。余った純現金は0。
確率:航空機接続市場の拡大と防衛需要は確認できる一方、高速通信のシェア低下と固定通信の縮小も進んでいる。両方を反映した最も自然な道筋として30%とした。負債が減っても新しい衛星への投資が必要なため、ROEは資本コストを超えない。
やや悲観 23% やや悲観:航空の顧客流出が進み、利益が再び赤字になる 利益 −2 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 12.10 ドル16 億ドル
航空向けでは新規契約の多くをスターリンクとアマゾン・レオが獲得し、既存顧客の更新時にも切り替えが進む。ビアサットの航空機等価接続数は4600機まで減る。機内通信の平均単価は物価に追いつかず、航空売上は11.6億ドルとなる。政府向け衛星通信は必要とされ続けるが、低軌道網を含む他社への調達分散が進む。
海上通信は1万500隻へ減り、高速通信の料金を引き上げられない。家庭向け固定通信は4万5000件へ縮小する。防衛の暗号装置と戦術ネットワークは残るが、成長率は低くなる。買収した衛星通信設備は需要が足りず、減価償却の固定費が重く残る。
全社売上は45.7億ドル、GAAP営業利益は1.76億ドルまで下がる。純利益はマイナス1.8億ドルとなる。10年間の累計純損失は6億ドル、株式報酬による正味還元はマイナス7億ドルで、自己資本は47.6億ドルとなる。負債を十分に減らせないため、高い金利と将来の衛星更新費用が普通株主を圧迫する。
この筋書きでは利益を資本還元して企業価値を測ることができず、売却可能な防衛事業、通信設備、周波数関連資産を税後で評価する。帳簿上の資産価値をそのまま残すことはせず、担保債務と処分費用を控除する。
- 航空衛星通信:数量 4,600(商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数)× 価格 0.00(商用機等価1機当たり年間売上、億ドル)→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。航空機数は市場全体と逆行して減少し、接続契約単価も物価を下回る。
- 政府向け衛星通信:数量 8.0(政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア)× 価格 1.16(2026年の契約単価を1とするサービス価格指数)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。政府調達は続くがシェアは低下。
- 海上衛星通信:数量 10,500(通信サービス契約を有する船舶数)× 価格 0.00(1隻当たり年間売上、億ドル)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。スターリンクとの競争で隻数・実質単価とも低下。
- 米国の家庭向け固定衛星インターネット:数量 45,000(米国家庭向けインターネット契約数)× 価格 0.00(1契約当たり年間売上、億ドル)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。固定費が残り、家庭向けの損失が続く。
- 企業・IoT・その他固定通信:数量 2.9(企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.15(2026年を1とする企業通信サービス単価指数)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。低軌道衛星に企業契約を奪われる。
- 衛星通信端末・ネットワーク製品:数量 2.0(衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.20(2026年を1とする製品混合単価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。端末受注が縮小。
- 防衛向け情報セキュリティ・暗号装置:数量 4.1(高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.18(2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。暗号装置市場は拡大するが入札競争でシェアが低下。
- 宇宙・ミッションシステム:数量 3.2(宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.15(2026年を1とするシステム・装置単価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。政府宇宙予算の伸びが販売には十分結びつかない。
- 戦術ネットワーク:数量 3.5(戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.18(2026年を1とする戦術機器の混合単価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。戦術機器は存続するが利益率が低下。
- 防衛の技術開発サービス・その他製品:数量 2.0(防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.10(2026年を1とする納入製品・契約単価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。一時的な知財収入が消え、受託開発の利益率も低下。
倍率:GAAP純利益がマイナスであり、利益へのPERは適用できない。資産評価は2026年の現金約17.5億ドル、回収可能な債権・在庫約9.5億ドル、衛星・地上網の処分価値約30億ドル、周波数資産約20億ドル、防衛事業売却価値約19.4億ドルから、有利子負債69.4億ドルと税・整理費用等約10.7億ドルを差し引いて約16.3億ドルとする。現在の自己資本46.6億ドルに対する換算倍率が約0.35倍であり、将来の自己資本に掛けて床を膨らませない。市場の過去のPBRは使っていない。
確率:航空機内通信の新規契約で低軌道衛星に押される可能性が高く、海上通信にも価格低下圧力がある。家庭向け固定通信はすでに縮小中であり、政府・防衛だけでは巨額の固定費を吸収しきれない展開を23%とする。
悲観 17% 悲観:高軌道衛星の競争力が失われ、資産売却に追い込まれる 利益 −6 億ドル · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.92 ドル9 億ドル
航空機内通信は高速の低軌道衛星へ大きく移り、ビアサットの航空機等価接続数は2800機に縮小する。接続済み航空機が世界で増えても、顧客の機体更新が流出の機会になる。平均単価はほとんど上がらず、航空売上は6.3億ドルとなる。海上通信も7000隻へ減り、家庭向け固定通信は1万5000件だけが残る。
政府向け衛星通信と暗号装置は事業を支えるが、国防予算の拡大分は大手防衛企業と他の衛星事業者が取る。周波数免許には一定の価値が残っても、高速通信設備の経済的価値は下がる。衛星の不具合や陳腐化による減損が重なり、追加の資金調達と事業整理が必要になる。
全社売上は26.1億ドル、GAAP営業損失は2.06億ドルとなる。利払いを含めた純損失は5.9億ドルである。期間中に約29億ドルの純損失を計上し、そのうち大きな部分には衛星・無形資産の減損が含まれる。事業の縮小と人員削減で株式報酬の増加も鈍るが、正味還元はマイナス3億ドルとなる。自己資本は20.6億ドルまで減る。
残る価値は黒字の利益ではなく、売却できる防衛技術事業、周波数関連資産、残存設備にある。債権者への返済が優先されるため、帳簿に残った資産を普通株主がそのまま受け取れるわけではない。これは事業を存続させるだけでも資本政策の再編が必要になる筋書きである。
- 航空衛星通信:数量 2,800(商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数)× 価格 0.00(商用機等価1機当たり年間売上、億ドル)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。航空のシェアを大きく失い、設備保守の固定費が重くなる。
- 政府向け衛星通信:数量 5.5(政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア)× 価格 1.02(2026年の契約単価を1とするサービス価格指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。政府は調達先を分散し、価格もほぼ上がらない。
- 海上衛星通信:数量 7,000(通信サービス契約を有する船舶数)× 価格 0.00(1隻当たり年間売上、億ドル)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。安全通信だけが残り、広帯域の契約が縮む。
- 米国の家庭向け固定衛星インターネット:数量 15,000(米国家庭向けインターネット契約数)× 価格 0.00(1契約当たり年間売上、億ドル)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。家庭向けの設備を維持する採算が合わない。
- 企業・IoT・その他固定通信:数量 2.0(企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.03(2026年を1とする企業通信サービス単価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。企業通信は低軌道と地上回線に置き換わる。
- 衛星通信端末・ネットワーク製品:数量 1.3(衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.05(2026年を1とする製品混合単価指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。独自端末の出荷が減り、利益が残らない。
- 防衛向け情報セキュリティ・暗号装置:数量 2.4(高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.08(2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。暗号製品は残るが他の防衛企業にシェアを奪われる。
- 宇宙・ミッションシステム:数量 2.0(宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.08(2026年を1とするシステム・装置単価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。宇宙通信装置の新規案件を獲得できない。
- 戦術ネットワーク:数量 2.3(戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.06(2026年を1とする戦術機器の混合単価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。大手防衛装備企業への契約移転が進む。
- 防衛の技術開発サービス・その他製品:数量 1.4(防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア)× 価格 1.00(2026年を1とする納入製品・契約単価指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。受託開発の減少で固定費が残る。
倍率:営業赤字と高い借入負担が続き、PERによる利益価値は成立しない。売却可能な資産から優先債務を控除した普通株主の残余価値を約9.3億ドルと見積もる。現在の自己資本46.6億ドルに対する換算倍率は約0.20倍であり、10年間に積み上がった自己資本には掛けない。取得原価や過去のPBR底値から床を作らず、換価価値だけを基礎とした。
確率:スターリンクやアマゾン・レオへの大規模な顧客移動に加え、衛星の追加障害、収益化の遅れ、借り換えの失敗が重なる構造的な敗北を想定する。完全な事業消滅ではないが、普通株主に残る価値が大きく減る展開として17%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
航空衛星通信
商用航空機、ビジネスジェット、航空安全・運航データ向けの通信サービス。機内インターネットと安全通信の両方を含む。
| 数量商用航空機とビジネスジェットの接続機数を商用機等価に換算した機数 | 価格商用機等価1機当たり年間売上、億ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,210 | 0.00 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 0.00 | 17 | 3 |
取り方:2026年3月期10-Kの航空売上11.914億ドルを使用。商用機4580機とビジネスジェット2100機を確認し、後者を商用機の0.3機相当とするため等価機数は5210機。単価は年間約22.9万ドルで、航空安全サービス等も含めた混合単価である。競合はスターリンク、パナソニック・アビオニクス、SES・インテルサット、アマゾン・レオ。市場の接続機数はNovaspaceの予測を参照する。事業別営業利益は非開示なので、通信サービス全体の利益から推定した。
政府向け衛星通信
軍用・政府向けの衛星通信容量、移動体接続、ISR支援、暗号化された通信サービス。
| 数量政府衛星通信の実質市場規模、億ドル×自社売上シェア | 価格2026年の契約単価を1とするサービス価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.0 | 1.00 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 1.30 | 12 | 2 |
取り方:2026年3月期10-Kの政府向け衛星通信売上7.950億ドルを使用。対象とする政府・防衛向け衛星接続サービス市場を2026年価格で約80億ドルとする分析上の推定で、自社シェアは約9.9%。政府衛星通信市場には軍専用衛星と民間衛星調達が混在するため公式な一律シェアはない。競合はSES、ユーテルサット・ワンウェブ、スペースX、防衛装備企業。価格は政府の帯域・サービス契約の混合指数である。
海上衛星通信
商船、海運会社、海上安全通信、船員向け通信を提供するインマルサット系サービス。
| 数量通信サービス契約を有する船舶数 | 価格1隻当たり年間売上、億ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13,200 | 0.00 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12,500 | 0.00 | 5 | 0 |
取り方:2026年3月期10-Kの海上売上4.631億ドルと会社の同年度末約1万3200隻を使用。平均年間売上は約3.51万ドルで、安全通信と高速通信を合わせた値である。広義の世界の海上衛星通信市場は2025年に約32億ドルとの業界推定があり、自社の売上シェアは参考値として約14%。対象範囲が完全には一致しない。競合はスターリンク、SES、イリジウムなど。
米国の家庭向け固定衛星インターネット
米国内の家庭向け衛星ブロードバンド。低軌道衛星と地上回線の普及によって契約が縮小している。
| 数量米国家庭向けインターネット契約数 | 価格1契約当たり年間売上、億ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130,000 | 0.00 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 80,000 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社の2026年3月期第4四半期説明資料の米国固定契約約13万件と月間平均単価113ドルを使用。13万件×113ドル×12か月で年換算1.763億ドル。固定・その他サービス全体の売上6.077億ドルから家庭向けを分離した推定であり、会社が単独の年間実績として開示した売上ではない。競合はスターリンク、地上光回線、固定無線通信。
企業・IoT・その他固定通信
企業向け広域衛星通信、遠隔設備の監視、エネルギー産業、プリペイド通信など。
| 数量企業・IoT関連の実質対象市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とする企業通信サービス単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.3 | 1.00 | 4 | −1 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 1.25 | 5 | 0 |
取り方:10-Kの固定・その他サービス売上6.077億ドルから、家庭向け契約数と月額単価で推定した1.763億ドルを差し引く。対象企業・IoT衛星接続市場を約80億ドルと仮定すれば売上シェアは約5.4%となるが、市場の定義が複数の用途にまたがるため参考値である。価格には企業向けの容量契約とIoT通信の混合単価を用いる。
衛星通信端末・ネットワーク製品
衛星モデム、地上局、アンテナ、航空・海上用通信端末など、通信サービスを支える製品販売。
| 数量衛星地上設備・端末の実質対象市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とする製品混合単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.4 | 1.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 1.28 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月期10-Kの通信サービス部門製品売上2.424億ドルを使用。対象となる専用衛星端末・地上ネットワーク製品市場を約30億ドルと仮定すれば売上シェアは約8.1%。市場の範囲は通信容量のサービス売上を含めない。個別の出荷台数は非開示のため、市場実質規模×シェアで数量を表した。競合はハネウェル、コムテック、各衛星通信機器企業。
防衛向け情報セキュリティ・暗号装置
軍用暗号装置、通信セキュリティ、サイバー防衛関連製品。
| 数量高信頼暗号装置・防衛通信セキュリティ市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とする暗号装置・安全通信製品の価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.1 | 1.00 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 1.28 | 7 | 1 |
取り方:2026年3月期10-Kの情報セキュリティ・サイバー防衛製品売上4.145億ドルを使用。政府向け高信頼暗号製品の対象市場を約100億ドルと仮定した場合のシェアは約4.1%。企業向け一般セキュリティソフト全体は含めない。競合はタレス、ジェネラル・ダイナミクス、L3ハリスなど。開示された部門利益から製品別の利益を推定配分した。
宇宙・ミッションシステム
政府向け衛星通信システム、宇宙機器、通信アンテナ、地上設備、特殊なミッション用端末。
| 数量宇宙通信システムの実質対象市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とするシステム・装置単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.3 | 1.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.3 | 1.30 | 6 | 1 |
取り方:2026年3月期10-Kの宇宙・ミッションシステム製品売上3.309億ドルを使用。政府向け衛星通信システムと関連端末の対象市場を約80億ドルとする推定ではシェア約4.1%。衛星製造全体の市場とは異なり、ビアサットが納入する通信システム部分に限定する。競合はボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンなど。
戦術ネットワーク
戦術データ無線、独自の通信波形、戦場の端末を結ぶネットワーク機器。
| 数量戦術無線・軍用ネットワーク機器の実質対象市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とする戦術機器の混合単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.3 | 1.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 1.32 | 6 | 1 |
取り方:2026年3月期10-Kの戦術ネットワーク製品売上3.294億ドルを使用。対応する戦術無線・ネットワーク市場を約100億ドルと仮定するとシェアは約3.3%。2026年6月四半期にはTrellisWareを含む戦術ネットワーク製品が前年同期比で伸びた。競合はL3ハリス、タレス、ローデ・シュワルツなど。
防衛の技術開発サービス・その他製品
政府向けの開発・技術サービス、その他防衛製品、知的財産のライセンス等。
| 数量防衛技術開発・関連製品の実質対象市場、億ドル×自社シェア | 価格2026年を1とする納入製品・契約単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.7 | 1.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1.25 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月期10-Kの防衛部門サービス2.172億ドルとその他製品0.487億ドルを合算。対象市場約60億ドルに対するシェアは約4.4%という分析上の仮定である。主要契約は固定価格の技術成果物・製品納入であり、人月課金のITサービスとは異なる。ただし技術開発業務はAIによる設計自動化の影響を受ける。前年の一時的な知財ライセンス収益は将来に引き延ばさない。
リスクと懸念
低軌道衛星による高速通信の置き換え
スターリンクは航空と海上の新規契約で拡大しており、アマゾン・レオも航空会社との契約を獲得した。低軌道の通信は遅延が小さく、容量増加の速度も速い。ビアサットが自社の高軌道容量を増やしても、顧客の評価軸が速度と料金に移れば単価は上がらない。特に新規の航空機と商船向け契約でシェアが失われる可能性が高い。
巨額の借入と借り換えリスク
添付factsの純有利子負債は約52億ドルである。2026年6月末の債務元本は約66億ドル、既存債務には9%台の高金利借入が含まれる。仮に通信容量が増えても、借り換え条件が悪化すれば株主利益が減る。負債契約の制限条項が厳しくなり、事業の売却や増資を迫られると普通株主の取り分はさらに弱くなる。
衛星の技術障害と減損
ViaSat-3 F1のアンテナ展開不具合、インマルサット衛星の障害は、衛星の運用開始後にも大きな損失が発生しうることを示した。1基の建造と打ち上げに多額の資金が必要であり、代わりの設備をすぐ用意できない。保険があっても失ったサービス能力と顧客機会のすべてが補償されるとは限らず、将来の衛星更新費用を過小評価する危険がある。
インマルサット買収の資本回収
2023年の買収は世界的な通信網と周波数免許を取得する大きな決断だった。しかし買収で増えた借入と無形資産の償却を負担しており、普通株主のGAAP利益は弱い。衛星・地上網の統合で十分な利益率改善が生まれなければ、規模の拡大が株主価値の拡大にならない。将来ののれんや無形資産の減損も残る。
海上・航空での価格決定力の低下
航空機と船舶に一度設置した通信設備は切り替えに費用がかかる。しかし新造機や新造船では毎回競争が起こり、既存設備も更新時には比較される。スターリンクの低料金が市場の基準になれば、従来の高額な広帯域契約を維持できない。安全通信の規制上の強みが、高速インターネット全体の値決め力まで保証するわけではない。
Equatysと直接端末接続への追加投資
2026年9月のSpace42との拘束力ある合意では、ビアサットに最大4億ドルの初期出資予定がある。直接端末接続は成長市場だが、衛星の設立、各国の許認可、通信事業者との商業契約がそろうまで収益の確度は低い。巨額の純負債を抱える会社が新しい宇宙基盤へ投資するため、採算の悪い投資を繰り返す危険がある。
政府調達・安全保障・技術認証
米国政府は2026年6月四半期の全社売上の約18%を占め、重要な顧客である。予算の変更、調達先の分散、輸出規制によって防衛・政府通信の契約量は変わる。暗号装置と軍用通信では高い認証障壁がある一方、技術が採用されなかった場合の損失も大きい。米国以外への販売には地政学と規制による制約がある。
今後の分かれ目
- 商用航空機の接続数が6000機を超え、平均売上も2年以上連続して伸びたら
- 新しいViaSat-3の容量が収益化し、低軌道衛星との競争を吸収できている。航空の中立数量と利益率を上げ、楽観側の確率を増やしてよい。ただし更新投資の増加も合わせて確認する。
- 航空機の追加導入予定数が500機を下回り、既存顧客の契約更新でもスターリンクへの流出が続いたら
- 航空の設置基盤という堀が縮小している。中立の航空機数を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 一時収入を除いた年間フリーキャッシュフローが5億ドル以上となり、純負債が35億ドル以下へ下がったら
- 債権者ではなく普通株主に残る利益が改善している。利払いと資本コストに関する見方を再確認し、利益の持続性が確認できれば中立価値を上方修正する。
- 海上接続船舶が1万隻を下回り、1隻当たり売上も前年割れを続けたら
- 安全通信の強みで高速通信の価格下落を補えなくなっている。海上事業の長期利益率と売却可能価値を下げる。
- 防衛・先端技術の確定受注残が20億ドルを超え、セグメント営業利益率も20%以上で安定したら
- 防衛の技術障壁が利益に変わっている。政府・防衛事業の数量と利益率を上げ、同事業の資産売却価値も見直す。
- Equatysの設立条件が満たされ、第三者資金調達と有償の商業契約が具体化したら
- 周波数免許を使う新しい事業が投資対象として評価できる段階になる。ビアサットの実際の持分、追加出資額、受注額を確かめてから既存事業と別に価値を算定する。
- 新しい衛星の大型障害や債務制限条項への抵触が生じたら
- 衛星設備と周波数資産の換価可能性を優先して再評価する。資本調達条件が悪化した場合は、普通株主に残る資産の床も下がるため、悲観の確率と深さを見直す。
見ておくもの
- 商用航空機の接続数、ビジネスジェットの接続数、既存契約に基づく追加導入予定機数
- 航空事業の1機当たり平均売上と契約更新時の競争状況
- ViaSat-3 F2・F3の稼働率、衛星容量当たりの売上、障害の発生
- 海上接続船舶数とNexusWaveの契約・導入状況
- 固定通信の契約数と平均売上、企業・IoT通信への再配分
- 防衛・先端技術の受注残、売上、GAAPセグメント営業利益
- 通常の設備投資と衛星更新投資を分けた年間キャッシュフロー
- Ligado関連の一時収入を除いた自由現金と純有利子負債
- 2027年から2029年にかけての借入返済・借り換え条件
- Equatysの設立、第三者出資、実際の有償契約とビアサットの追加出資
倍率と資本コストの決め方
今の株価、過去のPER・PBR、同業の市場倍率から10年後の価値を逆算していない。航空機数、船舶数、家庭向け契約数、政府・防衛の実質対象市場とシェアを先に設定し、単価と利益率からGAAP営業利益・純利益を積み上げた。現在の財務数値は添付factsを正本とし、2026年の新しい四半期と衛星稼働状況は外部資料で補った。
資本コストは米国基本8.0%と質の調整2.5%から10.5%。堀は全社ではweakで、超過利益が残る割合は3分の1とする。楽観・やや楽観・中立の10年後PERは、利益ベースの正当化PER上限の95%、90%、85%をそれぞれ使用した。gは市場数量、シェア、価格から出し、ROEから成長を作っていない。悲観側は赤字のため、現在の自己資本と実際に売却できる資産の税後価値からPBRを換算した。純現金の上乗せはなく、買収無形資産の償却を二重に足し戻していない。
自己資本は10年間のGAAP純利益累計と株式報酬・増資を差し引いた正味還元に合わせた。確率加重後の現在価値は約8.7億ドル、添付factsの時価総額82.8億ドルとの差は約マイナス89.5%で、判定は割高である。悲観の回収価値には推定誤差が大きいが、それを理由に中立の利益や倍率を現在の株価へ近づけていない。
資本コスト 10.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に事業の質による2.5%を加え、資本コストを10.5%とした。βと現在の市場評価は使わない。同じ領域のシスコ8.0%、シエナ9.2%、ルメンタム10.0%より高いのは、衛星設備の長期固定化、高い純負債、技術世代交代が重なるためである。現在は約17億ドルの現金と信用枠があり、継続企業の前提に重要な疑義が示された状態ではないので、存続危機のextraは加えない。