結論
ケイデンスは、半導体とボードの設計ソフト(EDA)と、検証用の専用機、半導体 IP、電子機器・自動車の物理シミュレーション(システム設計・解析)を持つ、シノプシスと並ぶ設計ソフトの 2 強の一角である。2025 年 12 月期の売上は 53.0 億ドル(+14%)、会計上の営業利益率は 31.7%、純利益は 11.1 億ドル。2026 年 4〜6 月期の売上は 15.8 億ドル(+24%)、受注残は過去最高の 81 億ドルで、通期の売上目標は +19%(62.6〜63.4 億ドル)に上げられた。
事業の質は、チップの設計に不可欠な道具を使用権で複数年売る経常収益、インテル 14A を含む AI・ハイパースケーラーの設計需要、資本の軽さにある。弱いのは、株式報酬と買収の償却を費用に入れた利益が会社の見せる調整後の半分ほどしかない点、2026 年 2 月のヘキサゴン買収後に純負債が出た点、中国売上が 15% まで上がった点、AI が設計を自動化する長期のリスクである。時価総額は約 880 億ドルで、会計上の PER は約 79 倍、PBR は約 16 倍。
部門ごとに数量(市場の実質規模)× 価格(シェア × 単価)で積み上げ、資本コスト 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)。利益ベースの正当化 PER は、帳簿の ROE 21%・堀は強い(RONIC 17%)・g 4.0% で 21.8 倍。その 8.5 割の 18.5 倍を置くと、中立の 10 年後の時価総額は約 629 億ドルで今の 72% になる。純利益が 10 年で 3 倍になっても、倍率が 79 倍から 18 倍へ縮むためである。確率で加重した本質価値は今の時価総額の 46%(差 54%)で、結論は「割高」。事業の質への評価は高いが、値段が先取りしている成長は式では正当化できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業はあるか」を問う。答えは、はっきりしている。チップを作る限り設計ソフトは要り、設計の複雑さは増え続ける。「今より強いか」は、設計の複雑化と受注残・AI 設計需要が堀を広げる方向、AI による設計の自動化と中国の国産化が狭める方向に働き、純度は中〜高である。
オーナー利益を見ると、2025 年のフリーキャッシュフロー 15.9 億ドルから株式報酬 4.6 億ドルを引いた約 11.3 億ドルが、株主が自由にできる額の目安になり、会計上の純利益 11.1 億ドルとほぼ一致する。今の時価総額 880 億ドルに対する利回りは約 1.3% で、国債 5% を大きく下回る。2026 年の純利益見込み 約 13 億ドルでも約 1.5%。国債の利回りに追いつくには、利益が 3〜4 倍にならなければならない。つまり今の値段は、10 年以上の高い成長が続くことを前提にしている。
資本配分は、買収で製品を広げながら自社株買いを続ける形で、買収は規模が大きくなる(ヘキサゴン 27 億ユーロ)ほど失敗の影響も大きい。株価が高いときの自社株買いは価値を壊す。経営の質は高いが、値段が先に走りすぎている。倍率は利益ベースの正当化 PER の 8.5 割(中立の 10 年で 18.5 倍)に置き、成長の鈍化と AI のリスクは悲観の確率と数量・シェア・価格の置き方で表した。事業の質への確信は高く、安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
売上は大きく 3 つに分けて見る。第一はコア EDA で売上の約 7 割(2025 年に約 37 億ドルと推定)。チップを設計する流れ(論理設計・配置配線・回路の電気的な検証・アナログ設計・ボードとパッケージの設計)の各段階のソフトと、設計の検証に使う専用機のハードウェア・エミュレーション(パラディウム Palladium)とプロトタイピング(プロテウム Protium)が中核で、顧客はエヌビディア・アップル・ブロードコム・クアルコム・インテル・TSMC・サムスンなど半導体と電子機器の大手。複数年の使用権契約が中心で、受注残が売上の見通しを支える。AI で設計を自動化するクラウドの製品群(サレブラス Cerebrus・チップスタック ChipStack)は使用量に応じた課金を広げている。
第二は半導体 IP(約 13〜15%)で、HBM・DDR・PCIe・UCIe など他社のチップに組み込む設計済みの回路を売る。2026 年 4〜6 月期は前年比約 +40% と速く、インテルの 14A 工程向けの複数年契約が加わった。第三はシステム設計・解析(約 17%)で、電磁・熱・流体・構造のシミュレーション。2024 年に BETA CAE(構造・衝突解析)、2026 年 2 月にヘキサゴンの設計・エンジニアリング部門(MSC ソフトの Nastran・Adams。27 億ユーロ、約 7 割が現金・約 3 割が約 320 万株)を買収し、半導体から自動車・航空宇宙の機械設計へ広げた。
地域は 2026 年 4〜6 月期で米州 43%・中国 15%・その他アジア 20%・欧州 15%・日本 7%。会計上の営業利益率は 2025 年に約 32% だが、株式報酬(年 6 億ドル前後)とヘキサゴンの償却で 2026 年の目標は 28% 前後に下がる。非 GAAP では 44% 前後で、この差が「今の値段が安く見える」理由になっている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一は切り替えの費用で、チップ 1 つの設計には数百人が数年かかり、設計の途中で別のベンダーのソフトに替えると過去の設計資産・検証の環境・製造工場(ファウンドリ)の認証済みの流れを作り直すことになる。第二は 2 社寡占(シノプシスとケイデンスにシーメンス EDA を加えた 3 社で市場の 85% 超)で、新規参入が極めて難しく、ケイデンスは回路の電気的な検証・アナログ設計・ハードウェアで強い。第三はハードウェア・エミュレーションと IP を足場にしたセット販売で、顧客の設計の最初から最後までを握る。
資本効率は高いが、見かけほどではない。帳簿の自己資本利益率は 2025 年に 20%、のれんが 49 億ドルまで増えた 2026 年の見込みでも約 19%。のれんを除けば 70% 近いが、ケイデンスは買収で製品を広げ続けてきた会社なので、のれんを除かず帳簿の水準を使う。営業利益率は会計上 2020 年の 25% から 2025 年の 32% へ上がり、受注残の積み上がりが続く。
弱点は 4 つ。株式報酬(2025 年に 4.6 億ドル)と買収の償却を費用に入れると純利益が非 GAAP の半分ほどにとどまること。シノプシスがアンシスを買収し(2025 年 7 月完了)、半導体とシミュレーションの両方で一体の提案ができるようになったこと。2025 年に輸出規制違反で 1.4 億ドルの罰金を払い有罪を認めた経緯(コンプライアンスの課題)。そして 2008 年に会計上の営業赤字(売上 −36%)を経験した景気の振れ方である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
EDA・IP の世界市場は ESD アライアンスの集計で 2026 年 1〜3 月期に 57.5 億ドル(+12.7%、年換算 約 230 億ドル)、うち IP が 23.3 億ドル(+14.1%)、CAE(コンピューター支援設計)が 20.2 億ドル(+15.5%)。業界ノートの置き方では、EDA は数量(設計プロジェクトの数と 1 チップあたりの複雑さ)が実質で年 +4%、価格(設計者あたりの使用権の額)が年 +4% で年 +8%、10 年で約 2.2 倍になる。
競争は 3 つの層で進む。第一は 2 強の取り合いで、シノプシスは半導体のデジタル実装に強く、アンシス統合でシミュレーションまで提案を広げる。ケイデンスは 2026 年 4〜6 月期の決算で「取り合い案件の圧力」をデジタル実装と検証で認めた。シーメンス EDA(旧メンター)は回路の物理検証(Calibre)で 7 割超のシェアを持つ。第二は中国で、エンピリアン(Empyrean 華大九天)が中国市場の約 6% を持ち、28 ナノ以上とアナログで国産化が進む。2025 年 5 月に米政府は中国向けの EDA 販売に許可を求め、7 月に解除した。中国はケイデンスの売上の 12〜15% で、規制が再び動けば直撃する。第三は AI で、設計を自動化するエージェント(ChipStack など)は、設計者あたりの座席数を減らす面と、設計の探索回数・実行回数を増やす面の両方がある。
循環でいえば、EDA は半導体の設計費が景気で絞られる産業の影響を受けるが、受注残 81 億ドルと複数年契約が緩衝になる。2008〜09 年は設計の新規着手が減り売上が約 −2 割になった。今は AI 設備投資の山と、ヘキサゴンの統合、インテル 14A の立ち上がりが重なる、需要が最も強い局面にいる。
資本政策と M&A
還元は自社株買い中心で、配当はない。2025 年は自社株買い 9.3 億ドル(フリーキャッシュフロー 15.9 億ドルの約 6 割)、2026 年は上半期だけで 4.0 億ドル。ただし株式報酬(年 6 億ドル前後)で新しい株が出るため、株数は 2.73 億株前後で動かない。正味の還元は自社株買いから株式報酬を引いて見る。
M&A は 2024 年の BETA CAE(約 12 億ドル)、2025 年の IP・設計資産の小口の買収(アームの一部の IP 資産を含む)、2026 年 2 月のヘキサゴンの設計・エンジニアリング部門(27 億ユーロ)と、買収で製品を広げる方針。ヘキサゴン分の現金(約 22 億ドル)は借入で賄い、2026 年 6 月末の有利子負債は 24.8 億ドル、現金 14.4 億ドルで純負債は約 10 億ドルになった。ヘキサゴンは 2026 年の 1 株利益を数パーセント押し下げ、2027 年から増益に転じる見込み。
今後の鍵は、買収の償却が減って会計上の利益率が戻るか、のれん(49 億ドル)に減損が出ないか、自社株買いを株価が高い局面で積まないか。売られる側になる可能性は時価総額が大きく小さい。CEO のアニルド・デヴガン氏は長期にわたり経営を率い、AI とハードウェアの両面に投資する姿勢を続けている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ケイデンスは AI 時代に最も勢いのある設計ソフトである。受注残は 81 億ドルと過去最高で、売上の 6 割近くが 1 年以内に取り込まれる。2026 年 4〜6 月期は売上 +24%、コア EDA が +18%、IP が約 +40%、受注残の積み上がりと中国の戻り(売上の 15%)に支えられ、通期の目標は 19% 増に引き上げられた。インテルの 14A 工程の複数年契約は 10 年来の悲願で、IP と EDA の両方を押し上げる。
設計の複雑化(チップレット・先端パッケージ・AI アクセラレータ・車載)が数量を押し上げ、設計の検証に使う専用機のハードウェアは、AI・ハイパースケーラー向けで 12 社の新規顧客を獲得して過去最高を更新した。AI の設計エージェントは、設計の探索と検証の回数を増やし、基盤のソフトの使用量を押し上げる。経営は「顧客が使用量を減らす話はない」と述べている。
事業は資本を食わず、営業キャッシュフローは 2026 年に約 20 億ドルになる見込み。非 GAAP の営業利益率は 44% を超え、シノプシスとの 2 強は新規参入が起きにくい。ヘキサゴンの統合が済めば、会計上の利益率も戻る。長期の成長は設計の複雑さの増加分が価格に乗る形で、年 +10% 前後が見える。
慎重な見方
会社が見せる非 GAAP の利益は株式報酬と買収の償却を足し戻した値で、会計上の純利益は 2025 年に 11.1 億ドル、2026 年の目標でも約 13 億ドルと、非 GAAP の半分ほどしかない。今の時価総額 880 億ドルは会計上の PER で約 66〜79 倍で、国債の利回りを大きく下回る水準。高い成長が 10 年続いても、倍率が 16 倍前後へ縮めば時価総額は今の水準に戻らない。2022 年の利上げ局面でソフト株が倍率を落としたのはその一例だった。
シノプシスがアンシスを買収し、半導体と物理シミュレーションの両方を一体で提案できるようになった。ケイデンスは 2026 年 4〜6 月期の決算で、デジタル実装と検証の取り合い案件で圧力を認めている。中国は売上の 15%(前年は 9%)まで戻ったが、規制は 2025 年 5 月のように突然動き、2025 年の罰金(1.4 億ドル)が示すとおりコンプライアンスの課題も残る。エンピリアンなど国産ツールは 28 ナノ以上とアナログで広がる。
AI の設計エージェントは、設計者あたりの座席数を減らす面も持つ。顧客は巨大(エヌビディア・アップル・ブロードコム)で、自社の AI 設計基盤を整え、交渉力を持つ。ヘキサゴン買収は 27 億ユーロの大型で、純負債が出て、のれんが 49 億ドルに膨らんだ。買収後の統合が遅れれば、償却と減損が利益を圧迫する。2008 年には売上 −36%・会計上の赤字・株価 −84% を経験した景気の振れも残る。
どちらに重みを置いたか
事業の質(寡占・切り替えの重さ・受注残・資本の軽さ)では強気の見方が強く、値段(会計上の利益に対する倍率)では慎重な見方が圧倒的に強い。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7.5〜9.5 割(中立の PER 18.5 倍。ROE 約 21%・g 4.0%・k 7.5%)で、純利益は株式報酬を費用に入れた会計上の値で積んだ。確率は 10 年で楽観とやや楽観を合計 33%、やや悲観と悲観を合計 32% とほぼ均衡させ(寡占の質を評価して悲観は 12% にとどめた)。堀は強いので残る割合を 2/3 にしたが、本質価値は今の時価総額の 46%(差 54%)で、結論は「割高」。ただし、非 GAAP の利益を前提にした市場の見方との差が大きいので、確信度は中程度とする。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 238.56 ドル652 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 44.62 ドル122 億ドル)。 今の値に割り戻すと 146.82 ドル401 億ドル、今との差 −52.6%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 474.11 ドル1,296 億ドル | 35.86 ドル98 億ドル | +64.7% | +5.1% | 51.00 ドル139 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 332.04 ドル908 億ドル | 42.81 ドル117 億ドル | +21.1% | +1.9% | 86.21 ドル236 億ドル |
| 中立 | 35% | 230.14 ドル629 億ドル | 47.20 ドル129 億ドル | −10.4% | −1.1% | 97.07 ドル265 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 145.80 ドル399 億ドル | 49.39 ドル135 億ドル | −37.0% | −4.5% | 39.04 ドル107 億ドル |
| 悲観 | 12% | 42.22 ドル115 億ドル | 39.88 ドル109 億ドル | −73.5% | −12.4% | 9.85 ドル27 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 238.56 ドル652 億ドル | 44.62 ドル122 億ドル | −8.6% | −0.9% | 283.17 ドル774 億ドル |
今の株価時価総額 309.65 ドル846 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:AI 時代の設計の基盤になり、売上 220 億ドル台・会計上の利益率 37% 利益 63 億ドル · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 474.11 ドル1,296 億ドル
チップの複雑さ(AI アクセラレータ・チップレット・車載)が設計の数量を押し上げ、AI 設計エージェント(ChipStack など)が「使った量」で課金されて単価が物価を超えて伸びる筋書き。2035 年 12 月期のコア EDA は市場の実質規模が年 6%(1.79 倍)、シェアは 10% 上がり、単価は物価(1.41 倍)を 16% 上回って売上 119.6 億ドル、会計上の利益率 41%。IP はインテルと先端工程向けの拡大で 50.7 億ドル(利益率 36%)、システム設計・解析はヘキサゴンと BETA CAE を核にした機械・電子の統合解析で 50.5 億ドル(28%)。売上は 221 億ドル(2025 年比 年 +15.3%)、営業利益 81 億ドル、純利益 63 億ドル。10 年の正味の還元は約 98 億ドルで、買収は小口にとどめる。倍率は利益ベースの正当化 PER の 9.5 割の 18.2 倍。
- コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ):数量 242(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 49.5%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 120 億ドル・営業利益 49 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP):数量 175(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 28.9%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 51 億ドル・営業利益 18 億ドル。半導体 IP
- システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト):数量 393(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 12.8%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 51 億ドル・営業利益 14 億ドル。システム設計・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 7.5% + 2/3 ×(ROE 21.4% − k 7.5%)= 16.8%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 21.8 倍。上限の 9.5 割の 20.7 倍に置いた:AI 設計で数量が増える上振れでも、中国の国産化と価格の上限があるので上限の手前に置く。 時価総額 = 純利益 62.6 × 20.7 倍 = 1296 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:設計の複雑化と AI 課金で単価が物価を超える必要があり、寡占の質も保たれる前提。予想の幅が広い 10 年なので 10%。
やや楽観 23% やや楽観:年 +12.6% の成長が続き、売上 170 億ドル台・利益率 35% 利益 46 億ドル · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 332.04 ドル908 億ドル
設計の複雑化が続き、コア EDA の数量が年 5% 伸びて価格もわずかに物価を上回り、IP とシステム解析がシェアを広げる筋書き。2035 年 12 月期のコア EDA は市場が 1.63 倍、シェアは 4% 上がり、単価は物価を 10% 上回って売上 97.5 億ドル、利益率 39%。IP は 36.3 億ドル(利益率 34%)、システム設計・解析は 39.2 億ドル(26%)。売上は 173 億ドル、営業利益 61 億ドル、純利益 46 億ドル。シノプシスとシーメンス EDA(Siemens EDA)との 3 社寡占は崩れず、3 社で市場の 85% 以上を保つ。10 年の正味の還元は約 117 億ドル。倍率は上限の 9 割の 17.2 倍。
- コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ):数量 220(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 44.3%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 98 億ドル・営業利益 38 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP):数量 152(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 23.8%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 36 億ドル・営業利益 12 億ドル。半導体 IP
- システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト):数量 358(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 11.0%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 39 億ドル・営業利益 10 億ドル。システム設計・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 7.5% + 2/3 ×(ROE 21.4% − k 7.5%)= 16.8%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 21.8 倍。上限の 9 割の 19.6 倍に置いた:強気寄りだが、中国の国産化と価格の上限を見て控える。 時価総額 = 純利益 46.3 × 19.6 倍 = 907 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:今の事業の質(2 強の寡占・切り替えの重さ・受注残)なら十分ありうる。上振れ側では最も重く 23%。
中立 35% 中立:売上 135 億ドル、会計上の利益率 33%。寡占は保たれ、年 +9〜10% で伸びる 利益 34 億ドル · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 230.14 ドル629 億ドル
コア EDA は市場の実質規模が年 4%(1.48 倍、業界ノートどおり)、シェアは維持、単価は物価(1.41 倍)を 5% 上回って売上 81.3 億ドル、会計上の利益率 37%。半導体 IP は市場が年 5% 伸び、インテルとの契約と先端工程向け IP でシェアが 1.5 倍(8.5% → 13%)に上がり 24.8 億ドル、利益率 31%。システム設計・解析はヘキサゴンの統合でシェアが 1.45 倍に上がり 29.0 億ドル、利益率 24%。売上は 135 億ドル(2025 年比 年 +9.8%)、営業利益 45 億ドル、純利益 34 億ドル。株式報酬は費用に入っており、10 年の正味の還元は約 129 億ドル。倍率は上限 19.1 倍の 8.5 割の 16.2 倍。
- コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ):数量 200(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 40.7%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 81 億ドル・営業利益 30 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP):数量 139(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 17.9%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 25 億ドル・営業利益 8 億ドル。半導体 IP
- システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト):数量 326(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 8.9%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 7 億ドル。システム設計・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 7.5% + 2/3 ×(ROE 21.4% − k 7.5%)= 16.8%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 21.8 倍。上限の 8.5 割の 18.5 倍に置いた:寡占の堀は強いが、半導体の景気の振れと買収の統合を見て控える。 時価総額 = 純利益 34 × 18.5 倍 = 629 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの数量 年 +4%・価格は物価並み+αを素直に置いた筋書き。寡占が保たれ、AI は設計の数量を増やす面と座席を減らす面が相殺する。35%。
やや悲観 20% やや悲観:成長が年 +6.8% に鈍り、売上 100 億ドル・利益率 30% 利益 23 億ドル · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 145.80 ドル399 億ドル
シノプシスがアンシスと一体で攻め、中国の国産ツールが 28 ナノ以上で定着し、AI による設計の自動化で 1 チップあたりの設計者数と座席が減る筋書き。コア EDA は市場の伸びが年 3%、シェアは 8% 失い、単価は物価並みで売上 64.7 億ドル、利益率 34%。IP はアーム・シノプシスとの競争でシェアが 1.1 倍にとどまり 15.7 億ドル、システム設計・解析は 21.6 億ドル。売上は 102 億ドル、営業利益 31 億ドル、純利益 23 億ドル。株式報酬の比率が高止まりして利益率は 30% 前後。10 年の正味の還元は約 135 億ドル。倍率は上限の 8 割の 15.3 倍。
- コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ):数量 181(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 35.7%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 65 億ドル・営業利益 22 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP):数量 126(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 12.5%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 16 億ドル・営業利益 4 億ドル。半導体 IP
- システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト):数量 296(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 7.3%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。システム設計・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 21.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 7.5% + 2/3 ×(ROE 21.4% − k 7.5%)= 16.8%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 21.8 倍。上限の 8 割の 17.4 倍に置いた:中国の国産化と AI 設計の自動化で単価が下がる筋書き。 時価総額 = 純利益 22.9 × 17.4 倍 = 398 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:シノプシス・アンシス連合の攻勢、中国の国産化、AI による座席の減少がじわじわ効く筋書き。今の PER 約 79 倍が示す高い期待が外れる形で 20% と重めに置いた。
悲観 12% 悲観:AI が設計を自動化し、座席と単価が崩れて売上は 10 年でほぼ横ばい 利益 8 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 42.22 ドル115 億ドル
AI エージェントが検証・実装の大半を代行して必要な座席数と実行回数が減り、顧客(エヌビディア・アップル・ブロードコム・インテルなど)は自社の AI 設計基盤も整えて価格交渉力を持ち、中国は国産化で切り離される、構造的に負ける筋書き。寡占が崩れ、もう優良ではなくなる。コア EDA は市場が 1.16 倍にしか伸びず、シェアは 15% 失い、単価は物価に対し 3 割低く売上 36.1 億ドル、利益率 26%。IP は 7.9 億ドル、システム設計・解析は 12.3 億ドル。売上は 56 億ドル(今を 6% 上回るだけで、物価を考えると実質で約 3 割の減少)、営業利益 12 億ドル、純利益 8 億ドル。10 年の正味の還元は約 109 億ドル。倍率は ROE 13% で上限 16 倍ほどの 7.5 割の 12.0 倍(PBR は約 1.6 倍で床の 0.35 倍を大きく上回る)。
- コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ):数量 157(コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く))× 価格 23.1%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 36 億ドル・営業利益 9 億ドル。コア EDA
- 半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP):数量 104(半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 7.6%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。半導体 IP
- システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト):数量 244(設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 5.1%(1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。システム設計・解析
倍率:正当化 PER:事業の ROE 13.4%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 7.5% + 2/3 ×(ROE 13.4% − k 7.5%)= 11.4%(moat=強い)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.6 倍。上限の 7.5 割の 13.9 倍に置いた:AI が設計を自動化し、座席と単価が崩れる構造的に負ける筋書き。 時価総額 = 純利益 8.3 × 13.9 倍 = 115 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの構造的な悲観(AI による自動化・中国の切り離し・価格の低下)。寡占は法的な壁が弱く、顧客が巨大で交渉力が強いので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コア EDA(デジタル実装・検証・アナログ/カスタム・ハードウェア・エミュレーション・PCB/パッケージ)
チップとボードの設計・検証ソフトと、検証用の専用機(エミュレーション・プロトタイピング)。契約は複数年の使用権が中心。
| 数量コア EDA の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格。IP を除く) | 価格1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 135 | 27.5% | 37 | 13 |
| 10 年後 中立 | 200 | 40.7% | 81 | 30 |
取り方:2025 年の売上 53.0 億ドルのうちコア EDA を約 7 割の 37.1 億ドルと推定(4〜6 月期の構成比は 2025 年 71%・2026 年 68%)。EDA の市場(IP を除く)は、シノプシス(アンシスを除く)約 50〜55 億ドル・ケイデンス約 37 億ドル・シーメンス EDA 約 23〜25 億ドルを 3 社で 85% 超として約 135 億ドルと置き、ケイデンスのシェアは約 27.5%。数量=市場の実質規模、価格=シェア × 単価(物価は 10 年 1.41 倍が中立)。営業利益率は 36% と推定。競合はシノプシス・シーメンス EDA・中国のエンピリアン。
半導体 IP(インターフェース・メモリ・コア・基盤 IP)
他社のチップに組み込む設計済みの回路(HBM・PCIe・UCIe・DDR など)。インテル 14A・アーム系の先端工程向けが拡大。
| 数量半導体 IP の市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85.0 | 8.5% | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 139 | 17.9% | 25 | 8 |
取り方:IP を 2025 年の約 13.5% の 7.2 億ドルと推定。IP の世界市場は ESD アライアンスの 2026 年 1〜3 月期 23.3 億ドル(年換算 約 93 億ドル)から 2025 年を約 85 億ドルと置き、シェア約 8.5%(シノプシスとアームが大手)。4〜6 月期の IP は前年比 約 +40%。営業利益率は 25% と推定(開発費が重い)。
システム設計・解析(電磁・熱・流体・構造のシミュレーション、BETA CAE、ヘキサゴンの MSC ソフト)
電子機器・自動車・航空宇宙の設計を物理でシミュレーションするソフト。2024 年に BETA CAE、2026 年 2 月にヘキサゴンの設計・エンジニアリング部門を買収。
| 数量設計・解析(CAE)ソフトの市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのケイデンス売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 4.4% | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 326 | 8.9% | 29 | 7 |
取り方:システム設計・解析を約 16.5% の 8.7 億ドルと推定。CAE(機械・流体・電磁・半導体物理)の世界市場を約 200 億ドル(アンシス・シーメンス・ダッソー・アルテア・ヘキサゴンなどの合計から推定)と置き、シェア約 4.35%。2026 年はヘキサゴン分(約 1.6 億ドルの寄与)で 11 億ドル前後になる見込み(4〜6 月期の構成比 17%)。営業利益率は買収の償却で 18% と推定。
リスクと懸念
株式報酬と買収の償却を費用に入れた利益の薄さ
会計上の純利益は 2025 年に 11.1 億ドルで、会社の見せる非 GAAP の半分ほど。株式報酬は年 6 億ドル前後でヘキサゴンの償却も加わる。今の値段は非 GAAP に近い見方を織り込みやすく、会計上の利益の伸びだけでは正当化できない。
シノプシスのアンシス統合による一体提案
シノプシスは 2025 年 7 月にアンシスを買収し、半導体とシミュレーションを一体で売れる。ケイデンスは 2026 年 4〜6 月期の決算でデジタル実装・検証の取り合い案件の圧力を認めた。価格の引き下げとシェアの喪失が同時に起きうる。
中国の規制と国産化
中国売上は 4〜6 月期に 15% まで戻った(前年 9%)。2025 年 5 月に米政府が中国向け EDA 販売に許可を求め 7 月に解いたように、規制は突然動く。エンピリアンなど国産ツールは 28 ナノ以上とアナログで定着し、長期には切り離しが進む。
AI による設計の自動化と座席の減少
設計エージェント(ChipStack など)は、設計者あたりの座席数を減らす可能性がある。使用量課金への移行は収益を増やす面もあるが、顧客(エヌビディア・アップル・ブロードコム)は巨大で自社の AI 設計基盤を整え、価格の交渉力を持つ。10 年の悲観の中心。
ヘキサゴン買収の統合と減損
27 億ユーロの大型買収で、のれんは 49 億ドル、純負債が出た。2026 年の 1 株利益を数パーセント押し下げ、2027 年に増益化の見込み。統合が遅れる、顧客(自動車・航空宇宙)の解析ソフトが乗り換えられないなど、償却と減損が利益を圧迫する可能性がある。
半導体の景気と AI 設備投資の山
2008〜09 年は設計の新規着手が減り、売上が約 −2 割、会計上の営業赤字になった。今は AI 設備投資の山にあり、投資が止まる・効率が疑われると同じ向きに崩れる。受注残 81 億ドルが緩衝になる。
輸出規制違反の経緯とコンプライアンス
2025 年 7 月、中国の国防科技大学向けの輸出で有罪を認め、1.4 億ドル超を払った(5 年の保護観察)。再発すれば事業の制限につながる。規制対応の費用と、中国での売上の制約が続き、政府の許可の出方次第で売上の 1 割超が動く。経営の統制の弱さとして株主の信頼にも響く。
今後の分かれ目
- コア EDA の受注が 2 年続けて年 +15% を超え、受注残が売上の 1.5 倍以上を保ったら
- 設計の複雑化が価格と数量の両方に乗っている合図。楽観・やや楽観の確率を上げ、コア EDA のシェアを微増に置き直してよい。
- 会計上の営業利益率が 2027 年に 31% を超えて戻り、純利益の伸びが売上の伸びを上回ったら
- ヘキサゴンの償却と株式報酬の比率が下がっている合図。10 年の利益率の置き方を 1〜2 ポイント上げて見る。
- シノプシスとの取り合い案件でケイデンスが失注した例が複数出る、またはデジタル実装の価格が下がり始めたら
- コア EDA のシェアと単価の置き方を 1 割下げて見直す。やや悲観の確率を上げる。
- 米政府が中国向けの EDA 販売に再び許可を求めたら
- 中国売上(売上の 12〜15%)が直撃する。10 年の悲観・やや悲観の確率を上げ、シェアの置き方を中国分だけ下げて見る。
- AI 設計エージェントの収益が開示され、売上の 1 割を超える、または顧客が座席数を減らし始めたら
- 前者は使用量課金が座席の減少を補っている合図で、10 年の価格の置き方を上げる。後者は 10 年の悲観の確率を上げ、座席ベースの売上の伸びを下げて見る。
- 50 億ドル級の追加の買収、またはのれんの減損が出たら
- 資本配分に疑いが出る。買収のたびに ROE が下がるので、10 年の ROE の置き方を下げ、倍率を 1〜2 倍下げて見る。
見ておくもの
- コア EDA・IP・システム設計・解析の売上の伸びと、受注残(81 億ドル)の水準
- 会計上と非 GAAP の営業利益率の差(株式報酬・ヘキサゴンの償却)
- 中国の売上比率(15%)と、米政府の輸出規制の動き
- シノプシスのアンシス統合後の取り合い案件の勝敗と価格
- AI 設計エージェント(ChipStack・Cerebrus)の収益と使用量課金の比率
- 自社株買いの額と平均単価、株数の増減、純負債とのれんの減損
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 880 億ドルや PER 約 79 倍を見る前に、部門ごとに数量(市場の実質規模)と価格(シェア × 単価、物価は 10 年 1.41 倍)を置き、利益率を積み上げて純利益(株式報酬を費用に入れた会計上)を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)、k 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)、帳簿の ROE 約 21%、堀は強い(moat_why:EDA の寡占とファウンドリーの認定フロー)で RONIC = k + 2/3 ×(ROE − k)、g 4.0%。中立は 10 年で上限 21.8 倍の 8.5 割の 18.5 倍。総合は -54%(割高)で、これは今の株価に寄せず式から出したもの。非 GAAP の利益を前提にした市場の見方との差である。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β 1.07 × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.5% = 7.5%(β は使わない)。複数年契約で景気に強く(−0.25)、寡占で値段を決められる(−0.25)。強い堀と「長く続く」理由が重なるので下げは −0.5% で止めた。純負債は時価総額の 1%(ヘキサゴン買収後の 2026 年 6 月末で約 10 億ドル)で借金は 0、存続の危機ではないので上乗せは置かない。AI による設計の自動化・中国・輸出規制・買収の実行は、k に重ねず筋書き(数量・シェア・価格・利益率)と確率(悲観・やや悲観を 10 年で 32%)で表した。
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読んだ資料
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- Cadence がヘキサゴンの設計・エンジニアリング部門の買収を完了(2026-02)
- SemiAnalysis:EDA 市場の入門(3 社の売上とシェア)
- TrendForce:中国向け EDA 規制と売上への影響
- 米司法省:Cadence が有罪を認め 1.4 億ドル超を支払う(2025-07)
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- ESD アライアンス:2026 年 1〜3 月期の EDA 売上
- StockAnalysis:CDNS の時価総額(2026-09-30)