結論
テラウルフは、ビットコイン採掘会社から、AI向けデータセンターの土地・電力・建物を長期で貸す会社へ急転換している。筆者の結論は「割高」である。契約済みの重要IT負荷はレイク・マリナー438MWとアンスロピック(Anthropic)向け401MWの合計839MWに達した。だが現在の時価総額は、その全量を予定どおり建て、さらに次の拠点まで高い利回りで増やせることをかなり先取りしている。
転換の実体はすでに見える。2026年4〜6月期は高性能計算(HPC)向け賃貸が売上の71%となり、7月初めには102MWが稼働した。米国では電力と系統接続が不足し、既存工業用地を再利用する同社の立地には価値がある。グーグル(Google)の信用補完が付くフルイドスタック(Fluidstack)契約と、20年のアンスロピック契約は、旧来のビットコイン価格一本足よりはるかに読みやすい。
ただし、建設費は1MW当たり0.08〜0.12億ドルと重く、2026年6月末の債務元本は57.3億ドルである。グーグルワラント7,358万株と三つの転換社債は現株主の取り分を薄め、追加の開発にも外部資本が要る。中立では2035年に約2.0GWを稼働させて黒字化するが、現株主に帰属する価値は会社全体の成長ほど増えない。契約の質は評価するが、建設・借換え・希薄化を引いた後の安全域は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、契約残高より先にオーナー利益を見る。賃料から電力のパススルー、運営費、減価償却、利払い、株式報酬を引き、さらに建物を次のGPU世代へ合わせ続ける維持投資を引いた残りが株主のものだ。テラウルフはまだ、この残りを実績で示していない。
契約済み839MWには価値がある。長期賃貸、年次増額、グーグル(Google)の信用補完、アンスロピック(Anthropic)の20年契約は、ビットコイン採掘よりはるかに予測しやすい。しかし1MWを作るのに0.08〜0.12億ドルが要り、建設中は現金を生まず、一年遅れるだけで利払いと増資の負担が先に来る。高い成長率より、完成後の投下資本利益率が11%の資本コストを超えるかが肝心である。
経営が契約前投資を抑え、完成資産を共同出資や売却で回し、株数を増やさずに次の拠点へ進めるなら、持ち続けられる会社へ変わる。現状は、事業の将来より資本構成の将来が読みにくい。強い需要を認めても、建設、借換え、希薄化の三つに十分な安全域が要る。現在の値段には、その安全域が見当たらない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はHPC賃貸で、顧客にデータホール、電力供給、冷却、警備、保守をまとめて提供し、固定賃料に年次の増額条項を付ける。電力代は原価同額で通すため、売上には入るが利益をほとんど生まない。レイク・マリナーではコア42(Core42)向け60MWとフルイドスタック(Fluidstack)向け378MWを契約した。2026年7月初めに102MWが稼働し、残る336MWを建設中である。
二本目の柱はケンタッキー州ジャスティファイド(Justified)のアンスロピック(Anthropic)向け401MWである。初期20年の契約収入は約190億ドルで、2027年後半から順次引き渡し、2028年初めの全面稼働を予定する。マスキー(Muskie)では1GWの電力契約を確保し、最初の500MWを2028年から、次の500MWを2029年から受電する計画である。会社は年250〜500MWの新規契約を目標にするが、未契約の電力枠は売上ではなく、許認可と資金を必要とする選択肢にすぎない。
旧事業のビットコイン採掘は縮小する。2025年は1,496BTCを採掘し、売上の90%を占めたが、2026年4〜6月期にはHPCが主役へ逆転した。採掘設備は電力需要を柔軟に落とせるため、HPC建設前の土地と系統を遊ばせない役割は残る。しかし採掘量はネットワーク難易度と半減期に削られ、長期価値の中核には置けない。
本分析は、稼働済み・契約済みHPC、新規に獲得するHPC、ビットコイン採掘の三つに分ける。HPCの数量は重要IT負荷のMW、価格は1MW当たりの年額賃料とサービス収入である。未開示の将来単価は既存契約の総額、コア42の初期賃料、アンスロピック契約の年額から組み立て、電力の無利幅パススルーは価格から外した。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単にまねできない強みは、ソフトではなく電力の入口にある。退役発電所や閉鎖工場の土地、既存変電所、送電線、系統接続をまとめて押さえ、数百MWを数年で顧客へ渡せる開発力には希少性がある。長期賃貸とグーグル(Google)の信用補完は、完成後の収入を見通しやすくし、建設資金も呼び込みやすい。
それでも堀は弱く、独自技術やネットワーク効果はない。競合にはキュー・ティー・エス(QTS)、ヴァンテージ(Vantage)、コンパス(Compass)、デジタル・リアルティ、エクイニクスがいる。アプライド・デジタルやIRENなど、採掘拠点から同じ転換を狙う会社も多い。
大口顧客は自社建設もでき、契約更新時には賃料と設備仕様を強く交渉する。契約期間が終われば、建物の再利用価値は次世代GPUの電力密度と冷却方式に左右される。
資本配分と統治も弱点である。赤字と増資が続く中で2024〜2025年に自社株を買い、その後2026年に大規模な公募とATM増資を行った。経営陣の関係者が支配するベオウルフE&D(Beowulf E&D)の取得や関係者取引は、少数株主が厳しく見るべき点だ。
AIエージェント代替の型には直接当たらない。人月・席・操作画面を売る事業ではなく、エージェントが増えても電力、冷却、接続設備は要るからである。ただし計算効率の上昇が設備需要を鈍らせる間接リスクは大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のデータセンター需要は歴史的な増設局面にあり、EPRIは2024年の名目IT容量を35〜44GW、2030年を56〜132GWと見る。LBNLの基準ケースではデータセンターの電力使用は2030年に649TWh、全米需要の11.8%へ増える。CBREによれば主要市場の空室率は1.4%で、建設中容量の80%超がすでに予約されている。近い将来の数量は増え、電力を確保した土地の価格も上がりやすい。
添付の領域ノートは基盤ソフトの利用量と単価を前提にするが、同社は物理的な電力・建物を貸す会社へ変わったため、その数量前提は直接使えない。ここでは米国データセンターのMWと1MW当たり賃料で測る。
一方、この成長は一本調子ではない。ハイパースケーラーとAIクラウド各社が同時に設備を注文しており、2028〜2030年に供給が一斉に出れば賃料と開発利回りは下がる。GPUの性能向上、推論の省電力化、モデルの小型化も、同じAI処理に必要なMWを減らす。電力網の増強費や地域住民への負担が問題になれば、州公益委員会やFERCが接続条件を厳しくする。
競争相手は二層に分かれ、事業者別の全米MWシェアは各社が統一基準で開示していないため、稼働容量と契約容量で比べる。デジタル・リアルティ、エクイニクス、キュー・ティー・エス(QTS)、ヴァンテージ(Vantage)、コンパス(Compass)は資本力と運営実績で優位に立つ。コアウィーブや大手クラウドは顧客であると同時に、自ら建てる競争相手でもある。アプライド・デジタル、IREN、サイファー、ハット8は、安い電力を持つ採掘拠点をAI向けへ変える点で直接競合する。
テラウルフの2026年7月の稼働102MWは、2024年の米国容量の約0.2〜0.3%にすぎない。契約済み839MWなら同じ分母の約1.9〜2.4%だが、未完成分が大半である。2035年の中立は米国市場が実質で拡大し続ける中、同社が約2.0GWを稼働させる姿で、シェアは数%未満にとどまる。市場は大きいが、勝敗は需要予測より、安い資本で期限どおり建てられるかで決まる。
資本政策と M&A
2026年6月末の現金・制限付現金は30.3億ドル、債務元本は57.3億ドルである。レイク・マリナー向けの32億ドルの担保付債は7.75%で2030年に満期を迎える。さらに2030年、2031年、2032年満期の転換社債があり、グーグル(Google)には行使価格がほぼゼロの7,358万株のワラントを渡した。契約の信用力を得る代わりに、将来価値の一部を先に手放している。
資金の使い方には一貫性を欠く。会社は2024年に1.18億ドル、2025年に0.33億ドルの自社株を買った一方、2026年前半には公募とATMで多額の株式を発行した。配当の数字の約束はなく、年250〜500MWの契約目標が主な長期方針である。10月にはリボルバー枠を2.5億ドルから約4億ドルへ増やし、さらに1.5億ドルの追加枠を設けた。
良い判断は、アバナシー(Abernathy)持分を約5.3億ドルで売り、資本を回収したことだ。今後も「契約を取ってから建て、完成後に売却や共同出資で資本を戻す」ことができれば、増資依存を下げられる。逆に未契約のマスキー(Muskie)やチェサピーク(Chesapeake)へ先に資金を入れれば、借金と希薄化が株主価値を食う。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
839MWの契約は単なる計画ではない。レイク・マリナーでは102MWがすでに賃料を生み、残る336MWも建設中である。ジャスティファイド(Justified)では州当局が482MWの電力契約を承認し、アンスロピック(Anthropic)は401MWを20年借りる。既存契約の総収入は約270億ドル、会社が示す平均年次のサイト純収益(NOI)は約15億ドルで、完成すれば現在の企業規模を大きく変える。
需要側も強い。米国のデータセンター容量は2030年までに少なくとも5割超増える見通しで、主要市場の空室率は1%台である。送電線、変電所、工業用地を同時に持つ拠点は短期間では増えない。グーグル(Google)の信用補完でフルイドスタック(Fluidstack)の信用リスクを軽くし、アンスロピックという別顧客を加えたことで、一本足も少し薄れた。
さらにマスキー(Muskie)の1GW電力契約は、2028年以降の次の成長を用意する。契約前に土地と電力を押さえ、顧客を付けてからプロジェクト借入を行い、アバナシー(Abernathy)のように持分を売れば、同じ自己資本を繰り返し使える。2035年に3.5GW前後を稼働させ、サイト利益率を保てれば、純利益は30億ドル規模へ届く。既知のワラントと転換社債で現株主の取り分が減っても、会社全体の価値の増加がそれを上回る余地はある。
慎重な見方
契約が強いことと、普通株が安いことは別である。2026年6月末には債務元本が57.3億ドルあり、2030年に大きな満期が集中する。現金30.3億ドルの多くは建設、担保、信用状に結び付く。レイク・マリナー(Lake Mariner)の建設費だけで1MW当たり0.08〜0.10億ドル、ジャスティファイド(Justified)では0.10〜0.12億ドルが見込まれ、次の1GWには再び外部資本が要る。
株主はすでに高い代金を払っている。グーグル(Google)ワラントは7,358万株、転換社債は株価次第で合計約1.9億株相当になりうる。2024〜2025年に自社株を買った後、2026年には公募とATMで株を増やした。株価が上がるほど転換が進み、会社が成功しても一株当たりの取り分は会社全体ほど増えない。
事業の堀も完成後には薄くなり、交渉力の強い大手クラウドやAI企業は自ら建設する選択肢を持つ。2028〜2030年に競合の容量が出そろい、AI計算の効率が上がれば、未契約のマスキー(Muskie)は低い賃料でしか埋まらない。フルイドスタック(Fluidstack)の信用補完には条件があり、アンスロピック(Anthropic)も長期にわたり巨額の賃料を払い続ける必要がある。建設遅延、借換え、契約不履行のどれか一つで、普通株は残余請求権の弱さを露呈する。
どちらに重みを置いたか
需要と契約の質では強い見方が勝つが、普通株の価値では慎重な見方が上回る。839MWが収益化すれば存続不安は大きく下がる一方、未完成資産、57.3億ドルの債務、ワラントと転換社債が同時に乗る。確率は楽観側28%、中立30%、やや悲観・悲観42%へ寄せた。中立でも現株主の取り分は約4分の3に薄まり、現在の時価総額を正当化するにはマスキー(Muskie)以降まで高い利回りで成功する必要があるため、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 18.16 ドル88 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −1.68 ドル−8 億ドル)。 今の値に割り戻すと 5.40 ドル26 億ドル、今との差 −54.0%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 11.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 51.51 ドル250 億ドル | −4.20 ドル−20 億ドル | +303.3% | +14.0% | 4.73 ドル23 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 34.97 ドル170 億ドル | −2.88 ドル−14 億ドル | +173.6% | +10.0% | 5.78 ドル28 億ドル |
| 中立 | 30% | 18.91 ドル92 億ドル | −1.54 ドル−8 億ドル | +48.1% | +3.8% | 5.21 ドル25 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 3.87 ドル19 億ドル | −0.87 ドル−4 億ドル | −74.5% | −11.7% | 0.75 ドル4 億ドル |
| 悲観 | 17% | 0.42 ドル2 億ドル | −0.37 ドル−2 億ドル | −99.6% | −29.6% | 0.01 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 18.16 ドル88 億ドル | −1.68 ドル−8 億ドル | +40.4% | +3.3% | 16.47 ドル80 億ドル |
今の株価時価総額 11.73 ドル57 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:3.5GWを稼働し、電力拠点を繰り返し資本化する 利益 30 億ドル · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 51.51 ドル250 億ドル
レイク・マリナー(Lake Mariner)とジャスティファイド(Justified)が予定どおり稼働し、契約更新もほぼ全量で通る。マスキー(Muskie)、レイク・ホークアイ(Lake Hawkeye)、チェサピーク(Chesapeake)を含む新規開発は2,700MWまで伸び、全社で約3.5GWを運営する。米国市場は2030年以降も実質成長し、同社は数%未満のシェアながら、電力を先に押さえた強みで上位の新興事業者になる。
賃料の増額と高稼働率で営業利益は43.1億ドル、GAAP純利益は30億ドルへ増える。10年累計純利益は100億ドルだが、建設には正味30億ドルの新株資金も入るため、自己資本は131.4億ドルとなる。既存のグーグル(Google)ワラントと三つの転換社債は高い株価で株式化し、現株主の取り分は68%まで薄まる。堀は電力開発に残るが独占ではなく、成熟後の利益の質は普通の資本集約企業に近づく。
- 稼働済み・契約済みHPC:数量 839(平均稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.45(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 21 億ドル・営業利益 13 億ドル。全契約を維持し、増額条項と高稼働率が続く
- 新規HPC開発:数量 2,700(新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.20(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 59 億ドル・営業利益 33 億ドル。年250〜500MWの新規契約を継続し約2,700MWを追加
- ビットコイン採掘:数量 400(年間採掘量(BTC))× 価格 125,000(1BTC当たり実現価格(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。電力調整用の小規模事業として残す
倍率:k11.0%、g4.5%、事業ROE22.8%、moat weakなのでRONICは14.9%。10年目利益に対する正当化PER上限は11.24倍で、全量完成と資本回転が定着する利益の質を認め、その95%の10.67倍とした。純利益はGAAPで株式報酬を費用に含み、余った現金は別加算しない。
確率:839MWの全量を予定どおり完成し、マスキー(Muskie)などで毎年250〜500MWの契約を取り続け、完成資産の売却や共同出資で資本を回せる展開。ただし大規模建設を10年連続で成功させる必要があるため1割に抑えた。
やや楽観 18% やや楽観:既存契約を完遂し、2.7GWの中堅基盤へ育つ 利益 21 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 34.97 ドル170 億ドル
レイク・マリナー(Lake Mariner)の438MWとアンスロピック(Anthropic)向け401MWを予定に近い時期で完成させる。マスキー(Muskie)とレイク・ホークアイ(Lake Hawkeye)では顧客を確保するが、未契約拠点をすべて開発せず、新規稼働は1,900MWにとどまる。全社容量は約2.7GWとなり、QTSやVantageほどの規模ではないが、電力制約の強い地域で有力な卸売事業者になる。
既存契約の増額は続く一方、新規賃料は競争で抑えられ、営業利益は31.7億ドル、純利益は21億ドルとなる。10年累計純利益75億ドルに正味20億ドルの新株資金を加え、自己資本は96.4億ドルへ増える。グーグル(Google)ワラントと転換社債の一部が株式化し、現株主の取り分は70%となる。完成資産を一部売却して次の建設費へ回せるため、楽観より増資は少ない。
- 稼働済み・契約済みHPC:数量 839(平均稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.30(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 19 億ドル・営業利益 12 億ドル。契約全量を稼働し、更新と増額もおおむね維持
- 新規HPC開発:数量 1,900(新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.10(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 40 億ドル・営業利益 22 億ドル。マスキー(Muskie)中心に1,900MWを追加、未契約案件は選別
- ビットコイン採掘:数量 400(年間採掘量(BTC))× 価格 100,000(1BTC当たり実現価格(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。余剰電力の調整用として小さく残る
倍率:k11.0%、g4.5%、事業ROE21.8%、moat weakからRONIC14.6%。10年目利益に対する正当化PER上限11.12倍に対し、既存契約の可視性は高いが新規開発の賃料競争と資本負担が残るため90%の10.01倍とした。GAAP純利益を使い、株式報酬を戻していない。
確率:既存839MWはほぼ計画どおり稼働し、マスキー(Muskie)を中心に新規容量も取るが、競争で賃料と利益率は楽観ほど上がらない展開。電力需要の強さを認めつつ、資本制約を踏まえて2割弱とした。
中立 30% 中立:既存契約を収益化し、約2.0GWで成熟する 利益 13 億ドル · PER 9.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 18.91 ドル92 億ドル
既存契約は工期のずれと一部更新減を含め、2035年に800MWが稼働する。マスキー(Muskie)などでは新たに1,200MWを契約・完成し、全社は約2.0GWとなる。米国市場は拡大を続けるが、大手事業者と自社建設するハイパースケーラーが強く、テラウルフのシェアは数%未満である。チェサピーク(Chesapeake)など未成立・未契約案件の価値は先に足さない。
電力パススルーを除く賃料は物価と増額条項で上がるが、新規案件の利回りは競争で低下し、営業利益は21.0億ドル、GAAP純利益は13億ドルとなる。2026年の大幅損失の後、契約稼働で黒字へ転じ、10年累計純利益は45億ドルとなる。正味10億ドルの新株資金を使い、自己資本は56.4億ドルへ増える。グーグル(Google)ワラントと主な転換社債の希薄化を反映し、現株主の取り分は75%とする。
- 稼働済み・契約済みHPC:数量 800(平均稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.15(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 17 億ドル・営業利益 10 億ドル。契約済み839MWのうち更新減と稼働余力を差し引く
- 新規HPC開発:数量 1,200(新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 2.00(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 24 億ドル・営業利益 12 億ドル。マスキー(Muskie)などで1,200MWを追加、制御パイプラインの半分程度
- ビットコイン採掘:数量 250(年間採掘量(BTC))× 価格 80,000(1BTC当たり実現価格(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。採掘は電力調整用途となり超過利益を生まない
倍率:k11.0%、g4.0%、事業ROE23.0%、moat weakからRONIC15.0%。10年目利益に対する正当化PER上限は10.90倍。契約の可視性はあるが、資本集約、借換え、顧客交渉力、技術更新を考え、上限の83.5%である9.10倍とした。gは物価3.5%と実質需要の残り0.5%から出した。
確率:米国のデータセンター容量が実質成長し、契約済み839MWの大半を完成させる一方、未契約パイプラインは資本制約で半分程度しか実現しない展開。最も再現性が高い落としどころとして3割とした。
やや悲観 25% やや悲観:工期遅延と賃料競争で約1.2GWにとどまる 利益 3 億ドル · PER 7.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.87 ドル19 億ドル
レイク・マリナー(Lake Mariner)とジャスティファイド(Justified)は完成するが、遅延と仕様変更で建設費が膨らむ。更新時に一部容量を失い、既存契約の稼働は700MWとなる。マスキー(Muskie)は電力を確保しても顧客契約が遅れ、新規稼働は500MWにとどまる。AI計算の単価低下で顧客が賃料を押し下げ、競合の完成容量も増えるため、電力拠点の希少性は薄れる。
営業利益は9.1億ドルまで出るが、借換え金利、減価償却、追加修繕で純利益は3億ドルにとどまる。2026年の損失と後半の小幅黒字を合わせ、10年累計純利益は12億ドルである。建設超過分を補う正味5億ドルの新株資金により自己資本は18.4億ドルとなる。株価が低く転換社債の多くは現金借換えになるが、グーグル(Google)ワラントと一部の債務株式化で現株主の取り分は85%へ下がる。
- 稼働済み・契約済みHPC:数量 700(平均稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 1.90(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 13 億ドル・営業利益 6 億ドル。遅延、更新減、追加修繕で数量と利益率が低下
- 新規HPC開発:数量 500(新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 1.75(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。マスキー(Muskie)の契約が遅れ、追加容量は500MWのみ
- ビットコイン採掘:数量 500(年間採掘量(BTC))× 価格 60,000(1BTC当たり実現価格(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。空いた電力を採掘へ戻すが採算は悪い
倍率:k11.0%、g2.5%、事業ROE16.3%、moat weakからRONIC12.8%。10年目利益に対する正当化PER上限9.70倍に対し、工期遅延、低い賃料、重い借換えで利益の質が落ちるため76%の7.37倍とした。中立より低い倍率で、GAAP純利益に株式報酬を含む。
確率:既存契約は大半が生きるが、工期と建設費が悪化し、マスキー(Muskie)の顧客獲得が遅れる展開。業界全体の需要は残るため破綻までは見ないが、資本集約型の新興企業では十分起こりうるとして4分の1とした。
悲観 17% 悲観:顧客・借換え・技術更新が重なり、資産床まで落ちる 利益 −1 億ドル · PBR 3.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0.42 ドル2 億ドル
フルイドスタック(Fluidstack)またはアンスロピック(Anthropic)の契約で支払い・仕様変更の問題が起き、グーグル(Google)の信用補完も全損を埋めない。レイク・マリナー(Lake Mariner)とジャスティファイド(Justified)の一部は動くが、更新されない容量が出て既存稼働は550MWへ減る。マスキー(Muskie)は100MWしか契約できず、残りの電力枠は信用状と固定費だけを残す。AI設備の効率化と競合供給で賃料が下がり、旧式建物には減損が生じる。
営業利益は3.0億ドルを残すが、利払い、再編費、減損で2035年の純利益は0.5億ドルの赤字となる。途中の稼働収入と最終年の減損を合わせた10年累計純損失は0.9億ドル、正味4億ドルの救済増資で自己資本は4.5億ドルとなる。担保付債と転換社債の交換で現株主の取り分は45%へ落ちる。普通株の会社全体価値は稼ぐ力でなく、基準時点で保有する給電済み・建設中資産と電力接続権を税後で清算した普通株残余4.5億ドルを床とし、2035年までの累計利益で膨らんだ自己資本には掛けない。
- 稼働済み・契約済みHPC:数量 550(平均稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 1.65(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。顧客問題と更新減で契約容量・単価・利益率が同時に落ちる
- 新規HPC開発:数量 100(新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年))× 価格 1.50(1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。マスキー(Muskie)は100MWだけ稼働し、残りは遊休
- ビットコイン採掘:数量 500(年間採掘量(BTC))× 価格 40,000(1BTC当たり実現価格(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。採掘へ戻しても電力・難易度に負ける
倍率:最終年が赤字なのでPERを使わない。悲観の床は、基準時点で保有する給電済み・建設中のデータセンター、土地、変電・送電設備、電力接続権の税後売却価値から、担保付債務、転換債、工事債務、契約清算・撤去費を引いた普通株残余4.5億ドルである。表示上のPBRは今の自己資本1.4億ドルに対する3.21倍で、2035年の自己資本4.5億ドルには掛けていない。
確率:顧客の契約不履行または更新減、建設費超過、2030年前後の借換え難が重なる構造的失敗。長期契約と電力資産があるため普通株価値ゼロにはしないが、資本構成の弱さから2割弱の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
稼働済み・契約済みHPC
長期契約済みのデータホール、電力供給、冷却、警備、保守。固定賃料と増額条項が利益の源で、電力代は原価同額で顧客へ通す。
| 数量平均稼働した重要IT負荷(MW年) | 価格1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.3 | 1.50 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 800 | 2.15 | 17 | 10 |
取り方:FY2025のHPC売上0.169億ドルを、コア42(Core42)の初期賃料である1MW年当たり150万ドルで割り、平均稼働11.27MW年とした。年末の稼働容量はこれより大きいが、2025年7〜8月から段階稼働したため平均は小さい。営業利益は会社開示のHPCセグメント利益0.071億ドルで、減価償却と本社費は全社調整へ残る。
新規HPC開発
マスキー(Muskie)、レイク・ホークアイ(Lake Hawkeye)、レイク・マリナー(Lake Mariner)増設など、今後顧客を付けて建てる容量。未契約の電力枠は売上に含めず、契約と資金調達が成立した分だけ数量にする。
| 数量新たに契約・稼働した重要IT負荷(MW年) | 価格1MW年当たりの賃料・サービス収入(百万ドル、電力パススルーを除く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 1.80 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 2.00 | 24 | 12 |
取り方:FY2025の売上には将来拠点を入れない。参考単価1.8百万ドルは、フルイドスタック(Fluidstack)の10年契約総額とアンスロピック(Anthropic)の20年契約総額をMWで割った範囲の中央である。数量はEPRIの米国容量35〜44GW、2030年56〜132GWを母数にし、各筋書きで同社が契約・完成できるシェアをMWへ戻す。
ビットコイン採掘
保有採掘機で計算能力を提供し、採掘プールからBTCを受け取って売却する。HPCへ電力を移すため、長期では補助事業へ縮む。
| 数量年間採掘量(BTC) | 価格1BTC当たり実現価格(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,496 | 101,307 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 250 | 80,000 | 0 | 0 |
取り方:会社開示の採掘量1,496BTCと、採掘時価値1BTC当たり101,307ドルを掛けた。売上1.516億ドル、セグメント利益0.590億ドルはFY2025開示と一致する。競合はクリーンスパーク、マラ・ホールディングス、サイファーなどで、数量は世界ハッシュレートと半減期に押し下げられる。
リスクと懸念
建設費と引渡しのずれ
レイク・マリナー(Lake Mariner)の目安は1MW当たり0.08〜0.10億ドル、ジャスティファイド(Justified)は0.10〜0.12億ドルである。変圧器、タービン、冷却機器、人件費が上がり、引渡しが一年遅れると、賃料開始前の利払いと固定費だけが増える。顧客の仕様変更も追加投資を生む。
2030年前後の借換えと希薄化
債務元本57.3億ドルのうち大きな部分が2030年に集中する。グーグル(Google)ワラント7,358万株と三つの転換社債があり、成功時は転換、失敗時は高い金利か債務交換が株主を薄める。建設資金の追加増資も続きうる。 借換え時に金利が上がれば、完成したHPCの利益が普通株へ届く前に債権者へ流れ、契約が好調でも株主価値が伸びにくい。
顧客集中と信用補完の限界
契約容量の大半はフルイドスタック(Fluidstack)、コア42(Core42)、アンスロピック(Anthropic)の少数顧客に集中する。グーグル(Google)の補完はフルイドスタックの支払いを強くするが、すべての建設超過、仕様紛争、再賃貸損失を無条件で埋めるわけではない。アンスロピックの20年支払い能力も検証が必要である。
AI需要の反転と計算効率
AIエージェント代替はこの事業に直接当たらない。人の席や操作画面ではなく、電力と冷却を売るからだ。ただしGPU性能、モデル小型化、推論効率が上がり、同じ仕事に必要なMWが減れば、2028年以降の未契約容量と更新賃料が傷む。とくに学習需要から低単価の推論へ比重が移ると、同じ電力枠でも顧客が払える賃料が下がる。
電力・許認可・地域負担
1GW級の負荷は送電網、発電余力、水、騒音、地域料金に影響する。州公益委員会やFERCが接続費、信用状、最低需要料金を厳しくすれば、未稼働でも支払いが生じる。マスキー(Muskie)とチェサピーク(Chesapeake)は承認と工事日程に依存する。電力契約だけを先に結び、顧客契約が遅れると、容量料金と信用補完費が遊休資産の固定費になる。
契約満了後の残存価値
データホールはGPUの電力密度、液冷方式、ネットワーク仕様が変わると更新投資が要る。10〜20年後に同じ賃料で再契約できる保証はない。土地と変電設備は残るが、建物の帳簿価額をそのまま普通株の床にはできない。維持投資を怠れば、契約中の稼働率やサービス水準にも違約金が生じ、長期契約が逆に固定負担へ変わる。
資本配分と関係者取引
赤字と大規模投資の最中に自社株買いを行い、その後に高額の公募増資を実施した。経営陣関係者が支配したベオウルフE&D(Beowulf E&D)の取得や、土地・サービスの関係者取引もある。契約前投資や買収が増えれば、少数株主の取り分が弱まる。独立取締役が契約条件と取得価格を厳しく監督し、外部株主へ継続的に説明できるかが重要である。
今後の分かれ目
- レイク・マリナー(Lake Mariner)の438MWが2027年前半までに予算内で全面稼働し、年率換算HPC賃料が契約水準へ達したら
- 既存契約の施工リスクが下がる。中立からやや楽観へ確率を移せるが、ワラントと転換社債の希薄化は残る。
- ジャスティファイド(Justified)の401MWが2028年初めまでに稼働し、建設費が1MW当たり0.12億ドル以下に収まったら
- アンスロピック(Anthropic)契約の価値が実績に変わる。中立の既存契約数量を839MWへ戻し、利益率も上方修正できる。
- マスキー(Muskie)で投資適格級または十分な信用補完付き顧客を500MW以上確保してから本格建設を始めたら
- 新規HPCの数量をやや楽観側へ寄せられる。契約前投資を抑えた証拠となり、資本配分の評価も改善する。
- 完成資産の売却・共同出資で投下資本の大半を回収し、年250〜500MWを追加増資なしで契約できたら
- 事業ROEと現株主の取り分が同時に改善する。楽観側の確率とholder_shareを引き上げてよい。
- 建設費が会社の上限を15%以上超える、または主要棟の賃料開始が12か月以上遅れたら
- やや悲観の利益率と累計利益へ直ちに下げる。追加増資を増やし、自己資本の道筋を引き直す。
- フルイドスタック(Fluidstack)またはアンスロピック(Anthropic)が支払いを遅らせ、グーグル(Google)の補完や担保で全額回収できないことが判明したら
- 悲観の確率を大幅に上げる。契約済み容量を資産床で測り、未契約パイプラインの価値はゼロにする。
- 2030年満期群を株数の大幅増加なしで借換え、純負債が稼働HPCの年次NOIの4倍以下へ下がったら
- 借金と希薄化の最大の懸念が後退する。資本コストのdebt部分と悲観確率を見直せる。
見ておくもの
- 稼働中の重要IT負荷MW、各棟の引渡し日、賃料開始日
- 1MW当たりの総建設費、残工事費、顧客前払金と工事変更額
- HPCの固定賃料・保守収入、電力パススルー、サイトNOIの内訳
- 現金・制限付現金、債務元本、利払い、2030年満期の借換え計画
- 発行済み株数、グーグル(Google)ワラント、転換社債、株式報酬、公募・ATM増資
- フルイドスタック(Fluidstack)・コア42(Core42)・アンスロピック(Anthropic)の信用状態と契約変更・更新
- マスキー(Muskie)、レイク・ホークアイ(Lake Hawkeye)、チェサピーク(Chesapeake)の電力承認と顧客契約の順序
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額を見る前に、FY2025の採掘量とHPC稼働MWを起点に、既存契約、新規契約、ビットコインの数量と価格を積み上げた。倍率は市場の現在値や同業の取引倍率から取らず、k11.0%、事業ROE、g、moat weakを正当化PER式へ入れた。中立のg4.0%は物価3.5%と長期の実質需要0.5%から出し、正当化上限10.90倍の83.5%で9.10倍とした。会社全体の時価総額とは別に、既発のグーグル(Google)ワラントと転換社債による現株主の取り分をholder_shareで下げ、将来の増資払込はpayout_okuで差し引いた。現在株価へ結論を寄せていない。 悲観は基準時点の売れる資産4.5億ドルを床とし、2035年の自己資本にはPBRを掛けていない。
資本コスト 11.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k=基本8.0%+quality3.0%=11.0%。契約済み839MWと30.3億ドルの現金・制限付現金があり、直ちに存続が危うい会社ではないためdistress上乗せは0。同じ領域のアプライド・デジタル、コアウィーブ、IRENと同じく、資本集約・負債・技術寿命を重く見てqualityは上限の+3.0%とした。個別の建設失敗、顧客信用、希薄化は筋書きと確率で表した。