結論
テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)は、電源・信号変換・センサー用のアナログ半導体と、マイコン・プロセッサー(組み込み処理)を、産業・車載・パソコン・通信・データセンターの数万社に長期で売る会社である。2025 年 12 月期は売上 177 億ドル(アナログ 140 億・組み込み 27 億・その他 10 億)、営業利益率 35%。2026 年 4-6 月期は売上 54.6 億ドル(前年比 +23%)、粗利益率 61%、営業利益率 42%、四半期の FCF は 27 億ドルと、2023〜25 年の在庫調整と、年 40〜50 億ドルを投じた工場投資の谷から戻ってきた。2026 年 2 月には無線マイコンのシリコン・ラボラトリーズ(Silicon Labs)を企業価値約 75 億ドルで買うと発表している(2027 年上期の完了予定で未成立のため、数字には入れない)。
売上は「市場(実質)× シェア × 製品の価格の水準(物価並みで 10 年 1.41 倍)」で積んだ。10 年後は売上 310 億ドル、純利益 100 億ドル弱とみる。値上げと工場の稼働率の上昇で利益率は前回の山(2022 年の 52%)に近づくが、中国の国産アナログがシェアと価格を押す。
バリュー投資の観点では、事業の質は高く、工場投資の終わりで FCF が急増する局面にある。資本コストは 8.0%(基本 8.0% + quality 0.0%)。利益ベースの正当化 PER は、堀を強いとして RONIC を高く見て(ROIC 基準の ROE 45%・g 4.5%)25 倍ほどで、その 8.5 割の 20.9 倍を 10 年後の中立に置いた。それでも楽観とやや楽観の筋書きでようやく今の時価総額(2025 年の利益に対して PER 51 倍・PBR 15.5 倍)に並ぶ程度で、確率で加重した本質価値は今の 61%(差 40%、割高)。今の値段は、循環の回復がそのまま高い成長に変わる未来まで先に払っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。電子機器がある限りアナログ・電源は要り、TI の自社工場と 8 万品種の組み合わせは、10 年後も残る可能性が高い。堀は広がるというより「保たれる」性質で、中国の国産化が価格を削る分、利益率はむしろ狭まりうる。
次にオーナー利益。2025 年 12 月期の純利益 50 億ドルに対し、FCF は 26 億ドルで、設備投資が利益を食っていた。2026 年は設備投資が 20〜30 億ドルに減り、FCF が 65 億ドル(直近 12 か月・CHIPS 法の 16 億ドルを含む)まで戻った。ただし株式報酬を引き、CHIPS 法の一時の補助を除くと、ならした 1 年のオーナー利益は 70 億ドル前後と見て、今の時価総額 2,524 億ドルに対する利回りは約 2.8% で、10 年国債の 5% を下回る。
資本配分は、工場に投資するときは需要の山を読み違え(2022〜25 年の年 40〜50 億ドルの投資は、需要の谷と重なった)、いまは全額返すと切り替えている。シリコン・ラボラトリーズの買収は売上の 9〜10 倍で割高に見える。
安全域:事業は理解でき、質は高いが、資本コスト 8.0% で割ると、利益ベースの正当化 PER は 25 倍ほど。10 年後の中立にはその 8.5 割の 20.9 倍を置いた。今の PER 51 倍(回復の途中の利益に対して)は、その倍率の 2.5 倍である。楽観でようやく届く値段に、払う理由は無い。
何で稼ぐ会社か
売上の約 8 割はアナログで、電源(電圧を変える・電池を管理する)、信号チェーン(センサーの信号をデジタルにする・増幅する)、車載・産業向けの専用品からなる。1 個数十セントから数ドルの小さな部品を約 8 万品種そろえ、ほとんどが 10 年以上の長寿命で、顧客が機器の設計に一度組み込むと、10〜20 年にわたり買い続ける。2 つ目の組み込み処理(売上の約 15%)は、車載・産業用のマイコンとプロセッサーで、アナログ品と一緒に売ることで顧客を囲い込む。残りの「その他」は電卓・DLP(映像投影用のチップ)・特注品で、利益は薄い。
顧客は産業(売上の約 3 割台)、車載(約 3 割台)、パソコン・スマホなどの個人向け(約 2 割)、通信機器、企業向け機器、データセンター(まだ 1 割に満たない)に分かれる。2026 年 4-6 月期は産業が前年比 +30%、車載が +10 台半ば、データセンターが 2 倍で、パソコン・スマホは横ばい。中国の顧客所在地は売上の約 2 割強を占める(第三者の集計)。
売上は「出荷個数 × 1 個あたりの単価」で決まり、固定費の大きい自社工場が利益の振れを大きくする。TI は 300mm(直径 12 インチ)のウェハ工場を米国(テキサス・ユタ)に建てて自社で作る比率を上げており、2030 年に自社製のウェハを 95% 以上にする計画。2025 年まで年 40〜50 億ドルの設備投資で減価償却が重くなり、営業利益率は 2022 年の 52% から 2024〜25 年の 34〜35% に下がった。2026 年の設備投資は 20〜30 億ドルに減るため、FCF が急に増える。
2026 年 7-9 月期から値上げが効き始め、10-12 月期以降に厚くなる。売上は景気の循環に大きく左右されるが、価格を決める力と長い契約がその振れを小さくしている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。1 つ目は規模と原価である。TI は世界最大級のアナログ会社で、300mm の自社工場で作るウェハは、200mm の工場で作る競合より 1 個あたりの原価が約 4 割低いとされる。2 つ目は品種の多さと切り替えの費用の高さで、約 8 万品種を 10 万社超に長期で売るため、顧客は一部の部品だけを替えるのが難しい。3 つ目は在庫と供給の安定で、自社工場と複数拠点の在庫があるので、供給の約束を守る力が車載・産業の顧客に評価される。
資本効率は景気の山で ROE 約 60%・営業利益率 52%、谷でも ROE 28〜30%・営業利益率 34% と高い(自己資本は自社株買いの累積で薄い)。経営はハビブ・イラン CEO のもと、設備投資の山の終わりに FCF を全額返す方針を明確にしている。
弱い所は 3 つ。第一に、固定費の大きい自社工場のため、需要が落ちると稼働率の低下で利益が大きく減る(2022 年の営業利益 104 億ドルが 2024 年に 53 億ドルへ半減した)。第二に、中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した製品で価格を下げており、中国向けが売上の約 2 割強ある。第三に、アナログは製品の入れ替わりが遅い反面、成長も景気の伸び(名目 5% 前後)を大きく超えにくい。堀は広く深いが、独占の堀ではなく「原価と信頼で勝つ」タイプである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
対象の市場は、アナログ約 870 億ドル(2026 年)、マイコン・プロセッサー約 250 億ドルなどである。WSTS は 2026 年にアナログ +10%、マイクロ +20% を見込むが、TI の実績(4-6 月期の前年比 +23%)はそれを上回っており、TI の売上の伸びは市場の伸びにシェアの回復と値上げが乗った形である。2023〜25 年は産業・車載の在庫調整で、アナログの出荷が山から 15〜20% 落ちた。2026 年は顧客の在庫が底に近づき、補充の注文が一斉に戻っている。
構造の変化は 3 つ。第 1 に、車載の電動化(EV・ハイブリッド)と運転支援で、1 台あたりの半導体の量が増える。第 2 に、データセンターの電力(800V の直流給電・高密度の電源)で、電源チップの需要が伸びる。TI のデータセンター向けは 2026 年 4-6 月期に前年比 2 倍になった。第 3 に、中国の国産化と米中の摩擦で、成熟したアナログ・パワーの価格が下がる懸念がある。
競合は、アナログ・デバイセズ(Analog Devices)、インフィニオン(Infineon)、STマイクロエレクトロニクス、NXP、オン・セミコンダクター(onsemi)、マイクロチップ(Microchip)、ルネサス、そして中国勢。循環のどこにいるかは、「上り坂の前半〜中盤」と言える。在庫の補充が済んだあとの 2027〜28 年に、実需だけで伸びが保たれるかが焦点になる。業界ノートの置き方(市場 年 +5%)と比べ、TI は工場の稼働率の回復と値上げで、2026 年の伸びが市場を大きく上回るため、10 年後の市場の置き方にも反映した。
資本政策と M&A
還元は配当(毎年増配で 2025 年 12 月期は約 50 億ドル)と自社株買い(2025 年は 15 億ドルにとどまる)。FCF が 26 億ドルまで落ちていたため、2023〜25 年は配当が FCF を上回った。2026 年は FCF が 70 億ドル前後(会社は 1 株の FCF の増加を目標にしている)に戻る見通しで、会社は FCF を全額、配当と自社株買いで返すと明言している。株式報酬で株が増える分を打ち消す程度の買い戻しが多く、正味の還元は見かけより小さい。
M&A は少なく、2026 年 2 月のシリコン・ラボラトリーズの買収(企業価値 約 75 億ドル・全額現金・2027 年上期の完了予定)が久しぶりの大型である。TI の自社工場へ製造を移して原価を下げ、完了後 3 年で年 4.5 億ドルのシナジーを見込む。買収価格は売上の約 9〜10 倍と高く、値付けの規律が問われる。大型の M&A は独占禁止と中国の承認がかかるので、今後は小粒に限る。買われる側になる可能性はほぼ無い。
借金 約 148 億ドルは借り換えで金利が約 5.75% に上がり、利払いは税引き後で 10 年後に年 2 億ドルほど増える(各筋書きの純利益から引いた)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
循環の回復はまだ序盤で、利益は 2022 年の山を超える。2026 年 4-6 月期の売上は前年比 +23%、産業 +30%、データセンター 2 倍で、粗利益率は 1 四半期で 3.4 ポイント上がり 61% になった。7-9 月期の売上見通しは 56.5〜61.5 億ドルで、市場の予想を 5% 上回る。値上げが 7-9 月期から効き始め、10-12 月期以降に厚くなる。顧客の在庫は車載で極端に低く、補充の注文はこれから続く。
設備投資は 2025 年の約 46 億ドルから 2026 年は 20〜30 億ドルへ減り、減価償却のピークも過ぎる。売上が 250 億ドルを超えれば、増えた売上の 6 割以上が営業利益になり、営業利益率は 50% 台に戻る。FCF は 2026 年に 70 億ドル、工場投資が終わる 2028 年ごろから 130 億ドル超になり、全額を配当と自社株買いで返す。
自社の 300mm 工場は 200mm 工場の競合より原価が約 4 割安く、中国勢の安値でも利益を守れる。データセンターの 800V 給電と車載の電動化は数量を押し上げ、シリコン・ラボラトリーズの買収が完了すれば無線マイコンが加わり、組み込みの成長も上乗せされる。10 年後の市場の拡大(約 1.6 倍)と TI の自社工場の優位を合わせれば、売上は 400 億ドル台に届く。
慎重な見方
売上の伸びの大半は、在庫の補充という一度きりの動きである。産業・車載の顧客は 2023〜25 年に在庫を減らしすぎ、いま取り戻しているだけで、補充が済めば 2027 年に伸びが止まる。2023 年(売上 −13%)と 2024 年(−11%)の落ち込みがわずか 2 年前だった。固定費の大きい自社工場なので、売上が 1 割落ちると営業利益は 3 割落ちる。
中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した製品で価格を下げ、中国の顧客は売上の約 2 割強を占める。米中の摩擦が強まれば、この売上は直接減る。値上げは中国の顧客を国産品へ向かわせる動機にもなる。
FCF の急増は、CHIPS 法の補助 16 億ドルと設備投資の減少という一時の要因が大きい。需要が増えれば、また 40〜50 億ドルの設備投資が必要になり、FCF は再び圧迫される。シリコン・ラボラトリーズの買収は売上の 9〜10 倍で、営業利益率が TI より低い会社を、借入を使って買う(2027 年上期の完了)。
値段の面では、時価総額 2,524 億ドルに対し、FCF の利回りは約 2.6%(直近 12 か月)で、10 年国債の 5% の半分。成熟した PER は 20 倍前後で、今の 51 倍から 6 割下がる。利益が 2 倍になっても、倍率の縮みで時価総額は今を下回る。
どちらに重みを置いたか
資本コスト 8.0% と利益ベースの正当化 PER(10 年後の中立で、上限 24.6 倍の 8.5 割の 20.9 倍)を当てると、今の時価総額に並ぶのは 10 年の楽観とやや楽観だけである。堀が強い会社として残る割合を 2/3 にしても結論は変わらない。結論は事業の見通しの差でなく、倍率で決まる。自社工場の償却が重い時期は利益が薄く、設備投資が終わって現金が出る前提でも、10 年分を 8.0% で割り引くと今の時価総額には届かない。強気の見方の数量と価格は変えていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 208.48 ドル1,903 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 103.94 ドル949 億ドル)。 今の値に割り戻すと 167.31 ドル1,528 億ドル、今との差 −40.1%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 350.70 ドル3,202 億ドル | 153.34 ドル1,400 億ドル | +80.3% | +6.1% | 50.40 ドル460 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 286.51 ドル2,616 億ドル | 131.43 ドル1,200 億ドル | +49.5% | +4.1% | 91.95 ドル839 億ドル |
| 中立 | 35% | 226.17 ドル2,065 億ドル | 109.53 ドル1,000 億ドル | +20.1% | +1.8% | 117.49 ドル1,073 億ドル |
| やや悲観 | 21% | 129.89 ドル1,186 億ドル | 76.67 ドル700 億ドル | −26.1% | −3.0% | 43.38 ドル396 億ドル |
| 悲観 | 12% | 32.88 ドル300 億ドル | 43.81 ドル400 億ドル | −72.6% | −12.1% | 9.20 ドル84 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 208.48 ドル1,903 億ドル | 103.94 ドル949 億ドル | +11.8% | +1.1% | 312.43 ドル2,852 億ドル |
今の株価時価総額 279.50 ドル2,552 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% データセンター電源と車載の電動化が数量を押し上げ、自社工場の原価が中国勢を抑える 利益 135 億ドル · PER 23.7 倍 · 株価時価総額 350.70 ドル3,202 億ドル
2035 年 12 月期のアナログは市場 実質 1,035 億ドル(名目 1,500 億ドル)でシェア 20%、価格の水準は 145、売上 300 億ドル、営業利益率 52%(300mm 工場の原価の差と値上げで山の水準を保つ)。組み込みは約 72 億ドル、営業利益率 45%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは入れない)。営業利益は約 182 億ドル、純利益は約 135 億ドル(純負債の利払いを引いた後)。10 年間の還元は、配当と自社株買いから株式報酬の分を引いて約 1,400 億ドルで、10 年の純利益の合計(約 1,190 億ドル)を上回る分は借入で払い、純負債は約 320 億ドルに増える。大型 M&A は避け、アナログの補完に限る。
- アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け):数量 207(当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 300 億ドル・営業利益 156 億ドル。市場 実質 1,034 億ドル(名目 1,500)× シェア 20%・価格 145・営業利益率 52%
- 組み込み処理(マイコン・プロセッサー):数量 49.7(当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 72 億ドル・営業利益 32 億ドル。市場 実質 414 億ドル(名目 600)× シェア 12.0%・価格 145・営業利益率 45%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは外した)
- その他(DLP・電卓・特注品):数量 9.0(当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。対象市場 実質 約 105 億ドル・価格 145・営業利益率 12%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 50.0%(帳簿の自己資本は小さく、帳簿の ROE は使えないので、ROIC 基準の ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後)× 純負債÷自己資本 1 倍)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 50.0% − k 8.0%)= 36.0%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 25.0 倍。上限の 9.5 割の 23.7 倍に置いた:上振れ(産業・車載の回復と設備投資の終了)でも、アナログは中国勢が追う領域なので控える。 時価総額 = 純利益 135.1 × 23.7 倍 = 3202 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの楽観(市場 10 年で約 2 倍)に当たる。AI の電力需要と電動化が長く続き、中国の価格競争を自社工場の原価で跳ね返す場合。10% に留める。
やや楽観 22% 市場は約 1.7 倍に伸び、TI はシェアを少し回復する 利益 117 億ドル · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 286.51 ドル2,616 億ドル
2035 年 12 月期のアナログは市場 実質 995 億ドルでシェア 19%、価格の水準は 143、売上 270 億ドル、営業利益率 50%。組み込みは約 66 億ドル、営業利益率 44%。その他は約 12 億ドル。営業利益は約 157 億ドル、純利益は約 117 億ドル。中国の国産品は低価格帯を取るが、車載・産業の高信頼の領域は当社が守り、アナログ・デバイセズとの 2 強は崩れない。10 年の還元は約 1,200 億ドル。M&A は補完の小粒にとどまる。10 年後も堀は残り、広がりも狭まりもしない。
- アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け):数量 189(当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 270 億ドル・営業利益 135 億ドル。市場 実質 994 億ドル(名目 1,420)× シェア 19%・価格 143・営業利益率 50%
- 組み込み処理(マイコン・プロセッサー):数量 46.2(当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 66 億ドル・営業利益 29 億ドル。市場 実質 399 億ドル(名目 570)× シェア 11.6%・価格 143・営業利益率 44%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは外した)
- その他(DLP・電卓・特注品):数量 8.4(当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。対象市場 実質 約 100 億ドル・価格 143・営業利益率 11%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 47.0%(帳簿の自己資本は小さく、帳簿の ROE は使えないので、ROIC 基準の ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後)× 純負債÷自己資本 1 倍)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 47.0% − k 8.0%)= 34.0%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 24.8 倍。上限の 9 割の 22.3 倍に置いた:強気寄りだが、中国勢の追い上げを見て控える。 時価総額 = 純利益 117.3 × 22.3 倍 = 2616 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立〜楽観の間。電動化とデータセンターが市場を押し上げ、TI が自社工場の優位でシェアを少し戻す筋。
中立 35% 市場は伸びるが、中国の価格競争で利益率は山の水準より下に落ち着く 利益 99 億ドル · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 226.17 ドル2,065 億ドル
2035 年 12 月期のアナログは市場 実質 960 億ドル(名目 1,350 億ドル。実質で年 2% 弱の伸び)でシェア 18%、価格の水準は物価並みの 141、売上 243 億ドル。営業利益率は 47%(2022 年の山の 52% までは戻らない。中国の国産品が成熟製品でシェアを取り、稼働率を保つための値引きが利益率を削る)。組み込みは約 58 億ドル、営業利益率 42%。営業利益は約 132 億ドル、純利益は約 99 億ドル(純負債の利払いを引いた後)。10 年の還元は約 1,000 億ドルで純利益の合計(約 900 億ドル)を上回り、純負債は約 200 億ドルに増える。10 年後も自社工場と 8 万品種の堀は残るが、「価格を決める会社」から「原価で勝つ会社」へ性格が少し変わる。
- アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け):数量 172(当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 243 億ドル・営業利益 114 億ドル。市場 実質 957 億ドル(名目 1,350)× シェア 18%・価格 141・営業利益率 47%
- 組み込み処理(マイコン・プロセッサー):数量 41.1(当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 58 億ドル・営業利益 24 億ドル。市場 実質 383 億ドル(名目 540)× シェア 10.7%・価格 141・営業利益率 42%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは外した)
- その他(DLP・電卓・特注品):数量 7.8(当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。対象市場 実質 約 95 億ドル・価格 141・営業利益率 10%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 45.0%(帳簿の自己資本は小さく、帳簿の ROE は使えないので、ROIC 基準の ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後)× 純負債÷自己資本 1 倍)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 45.0% − k 8.0%)= 32.7%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 24.6 倍。上限の 8.5 割の 20.9 倍に置いた:設備投資が一巡して現金が出る前提。堀は強いが山の利益を含むので控える。 時価総額 = 純利益 98.8 × 20.9 倍 = 2065 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(市場 1.6 倍・車載が数量を支え、中国の国産品が価格を削る)と整合。TI の規模に当てはめた最も確からしい筋として、最大の確率にした。
やや悲観 21% 中国の国産化が進み、価格とシェアが下がる 利益 67 億ドル · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 129.89 ドル1,186 億ドル
中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した製品を押し下げ、米中の摩擦で中国向けの売上が減る。2035 年 12 月期のアナログは市場 実質 960 億ドルでシェア 16.5%、価格の水準は 130 と物価に負け、売上 206 億ドル、営業利益率 40%。組み込みは約 48 億ドル、営業利益率 36%(中国・欧州の競合に押される)。営業利益は約 91 億ドル、純利益は約 67 億ドル。10 年の還元は約 700 億ドル。当社は自社工場の稼働率を保つため値下げで対抗し、利益率が下がる。「価格を決める会社」としての評価は弱まる。10 年の純利益の累計は約 640 億ドル(2026〜28 年は 66・62・59 億ドルと谷に向かい、その後は 61 億ドルから 67 億ドルへ戻る。年ごとの内訳は道筋から仮に置いた)。
- アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け):数量 158(当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 205 億ドル・営業利益 82 億ドル。市場 実質 961 億ドル(名目 1,250)× シェア 16.5%・価格 130・営業利益率 40%
- 組み込み処理(マイコン・プロセッサー):数量 36.9(当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 48 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 実質 385 億ドル(名目 500)× シェア 9.6%・価格 130・営業利益率 36%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは外した)
- その他(DLP・電卓・特注品):数量 6.9(当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。対象市場 実質 約 90 億ドル・価格 130・営業利益率 5%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 35.0%(帳簿の自己資本は小さく、帳簿の ROE は使えないので、ROIC 基準の ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後)× 純負債÷自己資本 1 倍)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 35.0% − k 8.0%)= 26.0%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 23.6 倍。上限の 7.5 割の 17.7 倍に置いた:中国勢の値下げと稼働率の低下で利益の質が落ちる。 時価総額 = 純利益 67 × 17.7 倍 = 1186 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した製品を押し下げ、米中の摩擦で中国向けの売上が減る筋。慎重な見方の中心で 21% を置く。
悲観 12% 構造的な敗北:中国国産品に価格を崩され、自社工場が重荷になる 利益 22 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 32.88 ドル300 億ドル
中国の国産アナログ・パワーが価格を崩し、2035 年 12 月期のアナログは市場 実質 960 億ドルでシェア 13.5%、価格の水準は 115 と物価に大きく負け、売上 149 億ドル、営業利益率 28%。組み込みは約 44 億ドル、営業利益率 18%、その他は利益が出ない。営業利益は約 41 億ドル、純利益は約 22 億ドル。配当を借入と短期の有価証券の売却で守るので、還元 400 億ドルが 10 年の純利益の合計(約 320 億ドル)を上回り、純負債は約 180 億ドル、自己資本は約 80 億ドルに減る。自社工場の資産は厚いが、稼働率が落ちれば重荷になり、もう「価格を決める優良企業」ではない。倍率は ROE 27%・堀は強い・g 5% の正当化 PER の 7 割。10 年の純利益の累計は約 320 億ドル(2026 年 約 62、2027 年 約 42、谷の 2028 年 約 26、その後は 30 前後から 22 億ドルへ下がる。減損は置かず、年ごとの内訳は道筋から仮に置いた)。
- アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け):数量 130(当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 150 億ドル・営業利益 42 億ドル。市場 実質 957 億ドル(名目 1,100)× シェア 13.5%・価格 115・営業利益率 28%
- 組み込み処理(マイコン・プロセッサー):数量 27.8(当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 32 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 実質 383 億ドル(名目 440)× シェア 7.3%・価格 115・営業利益率 23%(未成立のシリコン・ラボラトリーズは外した)
- その他(DLP・電卓・特注品):数量 5.2(当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。対象市場 実質 約 85 億ドル・価格 115・営業利益率 0%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 27.0%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 27.0% − k 8.0%)= 20.7%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 22.3 倍。上限の 6 割の 13.4 倍に置いた:構造的に負ける筋書きで、堀は強くても中国の国産品に価格を崩され、自社工場が重荷になる。 時価総額 = 純利益 22.4 × 13.4 倍 = 300 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの悲観(10 年・構造:中国の国産アナログ・パワーが価格を 30% 押し下げ、米中の摩擦で中国売上を失う)。自社工場は固定費が重く、稼働率が落ちると利益が急に減る。12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
アナログ(電源・信号チェーン・車載産業向け)
電圧変換・電池管理・信号のデジタル化・増幅などの小さな部品。約 8 万品種を 10 万社超に長期で売る。
| 数量当社のアナログ出荷(実質の億ドル)= アナログ市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 100 | 140 | 54 |
| 10 年後 中立 | 172 | 141 | 243 | 114 |
取り方:2025 年 12 月期のアナログ売上は約 140 億ドル(前年比 +15%)。アナログ市場を約 790 億ドルと推定し(2026 年の 870 億ドルを WSTS の +10% で戻した)、当社のシェアは約 17.7%(アナログ・デバイセズ 約 12%、インフィニオン・ST マイクロ・NXP が各 5〜7%、中国勢が数%)。数量は「市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× シェア」=当社の出荷、価格は製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100、rev_factor 0.01)で、中立は物価並み(10 年 141)。2026 年の値上げは楽観で物価を上回る形に、中国の安値は悲観で物価を下回る形に置く。セグメント利益は開示の概数をもとに営業利益率約 39% と推定した(全社の営業利益 61 億ドルから逆算)。
組み込み処理(マイコン・プロセッサー)
車載・産業用のマイコンと、組み込みのプロセッサー。アナログ品と一緒に売る。2027 年以降はシリコン・ラボラトリーズの無線マイコンが加わる。
| 数量当社の組み込み出荷(実質の億ドル)= マイコン・プロセッサー市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 27.0 | 100 | 27 | 7 |
| 10 年後 中立 | 41.1 | 141 | 58 | 24 |
取り方:2025 年 12 月期の組み込み売上は約 27 億ドル(前年比 +6%)。市場(マイコン・プロセッサー)を約 208 億ドルと推定し(2026 年の 250 億ドルを +20% で戻した)、当社のシェアは約 13%(NXP・ルネサス・インフィニオン・マイクロチップ・ST マイクロが上位)。数量は市場(実質)× シェア、価格は製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100)。2027 年上期に完了予定のシリコン・ラボラトリーズの無線マイコン(約 11 億ドル)は、未成立なので筋書きに入れない。営業利益率は約 24% と推定した。
その他(DLP・電卓・特注品)
映像投影用の DLP、電卓、特注品など。成長は小さく、利益は薄い。
| 数量当社のその他の出荷(実質の億ドル)= DLP・電卓・特注品の市場(2025 年 12 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年 12 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 100 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 141 | 11 | 1 |
取り方:2025 年 12 月期のその他売上は約 10 億ドル。DLP・電卓・特注品の対象市場を約 120 億ドルと推定し、シェア約 8% で置いた(推定)。数量は市場(実質)× シェア、価格は価格の水準(2025 年 12 月期=100)。営業利益率は約 7%。全社の営業利益 61 億ドルとの差は 0.7 億ドルの範囲に収めた。
リスクと懸念
在庫補充の一巡と景気の循環
2026 年の売上の伸びには、産業・車載の顧客が減らしすぎた在庫を取り戻す一度きりの動きが含まれる。補充が済むと注文が急に細り、固定費の大きい自社工場の稼働率が落ちて利益が大きく減る。2023 年(売上 −13%)と 2024 年(−11%)の再来が最大のリスクである。
中国の国産アナログとの価格競争
中国の顧客は売上の約 2 割強を占め、士蘭微・杰華特などが成熟した製品で価格を下げている。値上げは顧客を国産品へ向かわせる動機にもなる。米中の摩擦が強まれば、この売上は直接減る。中国の国産化が進む速さが、価格と数量の両方を決める。
工場投資のやり直しと FCF の一時的な押し上げ
FCF の急増は、設備投資の減少(2025 年の約 46 億ドルから 20〜30 億ドル)と CHIPS 法の補助 16 億ドルの一時の要因が大きい。需要が想定を超えて増えれば、また 40〜50 億ドルの設備投資が必要になり、FCF は圧迫される。
シリコン・ラボラトリーズの買収の割高さと統合
企業価値約 75 億ドルは売上の 9〜10 倍で、営業利益率が TI より低い会社を借入を使って買う。年 4.5 億ドルのシナジーが出なければ、買収は資本を壊す。完了は 2027 年上期で、規制の承認(特に中国)も条件になる。未成立なので筋書きの数字には入れていない。
高い倍率が先に織り込まれている
今の時価総額は PER 51 倍(2025 年の利益)、2026 年の利益でも約 30 倍。資本コスト 8.0% を当てはめても、利益ベースの正当化 PER は 25 倍ほど(中立は 20.9 倍)で、利益が計画どおり伸びても、倍率の縮みで時価総額は今を下回る可能性が高い。
自社工場の地政学と供給の集中
生産の大半は米国内の自社工場で、地政学の影響は小さいが、テキサスとユタの新工場の立ち上げ遅れや事故は、供給の約束と原価の優位を損なう。CHIPS 法の補助は工場の建設の進み具合に応じて支払われるため、遅れは補助の受け取りにも響く。
今後の分かれ目
- 産業・車載の受注(Book-to-bill)が 1 を割り、顧客の在庫が元の水準に戻る
- 10 年の慎重な筋書きの確率を引き上げる。補充の効果が剥がれた後の実需の伸びを確かめる。
- 値上げが全製品に広がり、粗利益率が 65% を超える
- 営業利益率の置き方を上げ、楽観寄りへ確率を寄せる。ただし中国の顧客の流出が起きていないかを同時に見る。
- 中国の売上比率が 2 割を割り込む、または国産品が車載に入る
- 10 年の慎重・悲観の確率を引き上げる。価格を決める力が失われた証拠で、アナログの堀が狭まる。
- データセンター向けの売上が全体の 1 割を超え、さらに倍増が続く
- 楽観へ確率を寄せる。800V 給電が数量を押し上げ、成長の源泉が景気循環から構造へ移る。
- 2027 年も設備投資が 30 億ドルを超えて膨らむ、または CHIPS 法の補助が減る
- FCF の置き方を下げる。「工場投資の終わり」が一時の動きだったことになり、オーナー利益を見直す。
- シリコン・ラボラトリーズの買収が中国当局の承認を得られず破談になる
- 組み込みの上積みとシナジーを外し、借入の返済が不要になる分、還元を増やす方向へ。企業価値の変化は小さい。
見ておくもの
- 産業・車載の受注と顧客の在庫の日数(四半期の決算ごと)
- 粗利益率と営業利益率(値上げの効果と減価償却の増加の差し引き)
- FCF と設備投資(2026 年 20〜30 億ドルの達成、CHIPS 法の受け取り)
- 中国の売上比率と国産アナログの価格
- データセンター向けの売上の伸び
- シリコン・ラボラトリーズの買収の承認の進み具合とシナジーの立ち上がり
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) で出した。k は 8.0%(基本 8.0% + quality 0.0%)。RONIC = k + 2/3 ×(ROE − k)で、堀は強いとした(moat_why:自社 300mm 工場の原価優位・約 8 万品目・設計採用の長さ)。自己資本が小さく負にもなり帳簿の ROE が 40% を超えるので、式の ROE は ROIC 基準(ROIC +(ROIC − 借入金利の税引き後)× 純負債÷自己資本 1 倍)で、中立は 45%。g は半導体の数量が 10 年より先も実質で伸びるとして 4.5%(structural、k − g = 3.5%)。10 年中立は正当化 PER 24.6 倍の 8.5 割の 20.9 倍。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。今の PER 51 倍には寄せていない。総合は -40%(割高)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.28 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0.0% = 8.0%(β は使わない)。景気の循環と固定費の重さ(+0.5)が、10 年以上使われ続ける製品の寿命(−0.5)と打ち消し合う。純負債は時価総額の 4% で存続の不安は無く、上乗せは 0。景気の循環と中国の価格競争は、k に重ねず確率と悲観の深さで反映した。