結論
IBM は、レッドハットなどのソフト(売上の 4 割強)、メインフレームのインフラ、IT 改革と運用のコンサルティングを持つ会社で、2025 年の売上は 675 億ドル、営業利益率は約 21%、フリーキャッシュフローは 147 億ドル。筆者の結論は割高で、コンサルは人月型、ソフトは基盤と席の混合、メインフレームは記録の正本として分けて見た。
コンサルは要員約 16 万人の人月で売る仕事で、AI エージェントが最も置き換えやすい。数量を今の0.65倍、価格を物価に届かない1.25倍に置いた。ソフトは基盤(レッドハット)が中心だが、自動化・取引処理・データ管理の席・開発者向けの課金も含むため、数量0.92倍・価格1.25倍とした。メインフレームは銀行・保険・政府の基幹系に入り、乗り換えに年単位の移行と規制対応が要る。開示で確かめられる証拠が 2 つあるので、その部分の利益比で g を認めた。AI を自社の売り物にした金額の開示は、売上の裏付けを確かめられなかったため、楽観でも数量は今以下とした。
中立の売上は今の1.04倍の701億ドル、純利益は96.3億ドル。k は基本 8.0% に上乗せ+1.25%で9.25%、倍率は10.9倍。やや悲観と悲観の確率は合わせて35%。本質価値は 816億ドル、今の時価総額 2,202億ドル に対して-63%で、評価は割高。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、メインフレームは銀行・保険・政府の基幹系に深く入り、10 年後も存在する確信が高い。ソフトの経常収益が売上の大半を占める点も質が高い。堀は、乗り換えに年単位の移行と規制対応が要る点と、基幹系の業界共同利用の 2 点で認める。
弱いのはコンサルで、利益率が低く AI で人月が減りやすい。買収で積み上げたソフトは、有機の成長が横ばいのまま借金が増える形になっていないかを見る。オーナー利益は、一回限りの税の効果を除いた GAAP の純利益で見て、起点は約 92 億ドルとした。
本質価値は 816億ドル で、今の時価総額 2,202億ドル に対して-63%。堀のあるメインフレームにだけ長く続く値上げを認め、人月と席には高い値を払わない。10 年後の利益への確信は中程度で、安全域は厚くない。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つの部門に分かれる。ソフトウェア(2025 年に約 298 億ドルと推定)は、レッドハット(オープンソースの基盤ソフトと、OpenShift というコンテナの運用基盤)、オートメーション(業務の自動化・監視)、データ(データベース・watsonx・2025 年 2 月に完了したハシコープ、2026 年 3 月に完了したコンフルエントを含む)、取引処理(メインフレームで動く基幹ソフト)からなる。ソフト売上の約 8 割が経常型で、経常収益は 246 億ドル(+8%)に達する。
コンサルティング(約 211 億ドル)は、顧客の IT 改革・クラウド移行・アプリ開発と運用を人月で請け負う。受注の約半分が生成 AI 関連で、生成 AI の累計受注は 2025 年末に 125 億ドルを超えた。ただし売上は 2025 年にほぼ横ばいで、利益率はアクセンチュアに比べ低い。インフラ(約 167 億ドル、顧客向けファイナンスを含む)は、メインフレーム(IBM Z)・パワー・ストレージ・分散サーバー。メインフレームは約 4 年周期で新機種が出て、2025 年は z17 の発売で +12% と大きく伸びた。
収益は、ソフトの経常契約と、メインフレームのハードと基幹ソフトの買い替えサイクル、コンサルの人月の 3 本立て。部門の違いは大きく、ソフトとインフラが利益の大半を稼ぎ、コンサルは売上の 3 割強ながら利益の 1 割台にとどまる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一は切り替えの費用で、メインフレームとその上の取引処理ソフトは、銀行・保険・航空・政府の基幹系で何十年も動いており、移すには数年と大きな危険を伴う。約 4 年ごとの新機種で買い替えが起き、事実上競合のいない市場である。第二はレッドハットで、企業のハイブリッド・クラウドの標準基盤として、大手クラウドとも提携しながら存在感を保つ(2026 年 4〜6 月期に +11%)。第三はコンサルとソフトを組み合わせて売れる顧客との深い関係である。
資本効率は ROE 32% と高く見えるが、自己資本が自社株買いと年金の影響で小さいことが大きな理由で、実質の資本の稼ぐ力は営業利益率 21%、フリーキャッシュフロー 147 億ドルで見るのが適切である。純有利子負債は 501 億ドル(ファイナンス部門の借入を含む)で、2026 年にはコンフルエント(約 110 億ドル)の現金払いでさらに増えた。配当は 30 年近く連続して増え、年約 64 億ドル、自社株買いは 2020 年以降ほぼ止まっている。
弱点は 4 つ。コンサルの利益率の低さと AI による人月の減少、取引処理ソフトの減少(2026 年 4〜6 月期に −9%)、メインフレームの周期の山の反動、2014〜2021 年に売上を約 4 割減らした過去の実績である。経営はアービンド・クリシュナ氏(CEO)が主導し、事業の入れ替え(2021 年にインフラ運用を分離してキンドリルとし、ソフト中心へ移行)を進めてきた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
IBM は 3 つの市場にまたがる。業界ノートでは、ソフトは約 8,000 億ドルの市場で中立の売上は年 +4.5%(座席は減るが AI の消費量が補う)、IT サービスは約 1.5 兆ドルの市場で人月が年 −2%・単価が年 +3% で売上は年 +1% である。IBM のソフトの伸びは平均を上回り(2025 年に約 +9%)、コンサルは市場並みかそれ以下で伸びている。
競争は、ソフトではマイクロソフト・オラクル・SAP・大手クラウド各社(アマゾン、グーグル)と、データ基盤のデータブリックス・スノーフレイクが相手になる。レッドハットは SUSE やクラウド各社の運用基盤と競合し、データ基盤は AI のデータ接続の層で争う。コンサルはアクセンチュア(売上約 700 億ドル)、キンドリル、インドの TCS・インフォシス・コグニザントと戦い、IBM は低価格のインド勢と、高い利益率のアクセンチュアに挟まれる。インフラはメインフレームは独占だが、分散サーバーはデル・HPE などと競う。
循環でいえば、メインフレームは z17 の山を越えつつあり、ソフトは AI 設備投資の波の中で買収(ハシコープ・コンフルエント)の上乗せを受ける段階にいる。2026 年 2 月にはソフト株から 1 兆ドル超の時価が消えたと報じられ、IT サービスは AI による値崩れ懸念で、正常利益の 4.5 倍以下まで売られた。分かれ目は、AI が人月を削る速さと、IBM のデータ基盤が AI の接続層として選ばれるかである。
【AIエージェント代替】コンサルは人月の置き換えを、ソフトは席・開発者向け課金の揺らぎを受ける。メインフレームは記録の正本で、AI の影響が小さい代わりに周期で振れる。10 年の中立は売上が今の1.04倍になると置いた。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、年約 64 億ドル(連続増配)。自社株買いは 2020 年以降ほとんどなく、株数は株式報酬で年約 1% 増えている。そのため正味の還元は、配当から株式報酬による株の増加分を引いた額で見る。フリーキャッシュフローは 2025 年に 147 億ドル、2026 年は +10 億ドル程度の目標が維持された。
M&A は積極的で、ハシコープ(約 64 億ドル、2025 年 2 月完了)、コンフルエント(約 110 億ドル、2026 年 3 月完了・現金払い・のれん約 72 億ドル)と、データ・自動化の基盤を買って AI 向けに束ねる戦略である。ただしコンフルエントの買収後もソフトの有機成長は横ばいで、買収が成長を作っているのか、有機の弱さを買収で隠しているのかは注意して見る必要がある。コンフルエントは製品の重なりの整理が課題で、初年に調整後 EBITDA、2 年目にフリーキャッシュフローへ貢献する見込みである。
今後の鍵は 2 つ。第一に、買収で増えた借金を返しながら、増配を維持できるか。第二に、買収で買ったソフトの伸びを有機で保てるか(買収のたびに伸びが戻らなければ、資本配分は失敗になる)。大型の買収は規制と財務の面で続けにくく、IBM が買われる側になる可能性はほぼない。
【還元の置き方】10 年の還元は純利益の累計の約 75% と置いた(配当が純利益の約7割。残りは買収に回す)。残らない分は、伸びが止まる中立の筋書きでは成長に回す元手が要らないため返す。株式報酬は GAAP の純利益ですでに費用として引いている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IBM は AI の波を、データと基盤の側から取りに行っている。ソフトは 2025 年に約 +9% と過去最高の伸びで、経常収益は 246 億ドル(+8%)。レッドハットは 2026 年 4〜6 月期に +11% に加速し、データは +18%、ハシコープとコンフルエントを加えて、AI エージェントがデータとサーバーの間を流れる接続層の標準を狙う。生成 AI の累計受注は 125 億ドルを超え、コンサルの受注の約半分、受注残の 3 割超が生成 AI 関連で、コンサルの受注も 2 四半期連続で増えている。
メインフレームは z17 の発売後 5 四半期の売上が前世代の約 130% と強く、分散インフラの受注残は過去最高である。メインフレームは事実上独占で、銀行・保険の基幹系は AI が増えるほど処理の信頼性が重くなる。量子コンピューターでも先行し、10 年のうちに新しい成長源になる余地がある。営業利益率は 2025 年に 21% と過去最高水準で、2026 年も +1 ポイントの改善を見込み、フリーキャッシュフローは 147 億ドルで配当 64 億ドルを十分に賄う。今の PER 21 倍は、過去の 12〜13 倍からは高いが、ソフト中心に事業が入れ替わった会社としては妥当である。
慎重な見方
成長の中身が弱い。2026 年 4〜6 月期のソフトは +5% でも買収を除くと横ばいで、取引処理は −9%、インフラは −7%、全社のガイドは 5% 超から 4〜5% へ下がった。コンフルエントの約 110 億ドルとハシコープの約 64 億ドルを足してなお有機が伸びないのは、買収で成長を買っている形である。
コンサルは売上が 2025 年にほぼ横ばいで、利益率はアクセンチュアに及ばず、AI が保守・開発・テストの人月を直接削る最前線にある。2026 年の IT サービス株は、正常利益の 4.5 倍以下まで売られた。IBM のコンサルは受注が +6% でも売上は +1% と、受注が売上に変わる速度が遅い。メインフレームは約 4 年周期の山を越えており、2026 年 4〜6 月期の IBM Z は想定を下回った。
過去の実績も重い。2014〜2021 年に売上は 928 億ドルから 574 億ドルへ約 4 割減り、純利益も 168 億ドルから 57 億ドルへ減った。純利益 106 億ドルの 2025 年は好調の年で、2022 年は 16 億ドル、2024 年は 60 億ドルである。自己資本が小さく ROE が高く見えるだけで、PBR 6.8 倍は帳簿で見ると高い。今の PER 21 倍は、過去 20 期の 75% 点(21 倍)に並ぶ高さである。 コンサルが AI エージェントに置き換わり、取引処理ソフトも減る中で、買収で積んだソフトの有機成長が戻らなければ、IBM が 2014〜2021 年に売上を縮めた先例を繰り返す。
どちらに重みを置いたか
強気はメインフレームの堀とソフトの経常収益を言い、慎重はコンサルの置き換えと買収頼みの成長を言う。コンサルを人月型、ソフトを基盤と席の混合、メインフレームを記録の正本として分け、堀の部分にだけ g を認めた。やや悲観と悲観を合わせて35%とし、AI 代替は数量・価格に主に入れて k・g では重ねていない。結論は割高。強気が正しければメインフレームの周期が全体を支え、慎重が正しければ買収の積み上げが重荷になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 101.09 ドル959 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 68.88 ドル653 億ドル)。 今の値に割り戻すと 85.99 ドル816 億ドル、今との差 −65.9%、 期待の年率 −3.9%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 135.89 ドル1,289 億ドル | 82.96 ドル787 億ドル | −13.2% | −1.4% | 15.32 ドル145 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 121.70 ドル1,155 億ドル | 78.11 ドル741 億ドル | −20.7% | −2.3% | 39.96 ドル379 億ドル |
| 中立 | 38% | 110.86 ドル1,052 億ドル | 74.42 ドル706 億ドル | −26.5% | −3.0% | 70.41 ドル668 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 88.03 ドル835 億ドル | 65.88 ドル625 億ドル | −39.0% | −4.8% | 35.40 ドル336 億ドル |
| 悲観 | 12% | 40.51 ドル384 億ドル | 33.52 ドル318 億ドル | −70.6% | −11.5% | 8.88 ドル84 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 101.09 ドル959 億ドル | 68.88 ドル653 億ドル | −32.6% | −3.9% | 169.97 ドル1,612 億ドル |
今の株価時価総額 252.11 ドル2,392 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% ソフトとメインフレームが踏みとどまり、コンサルの減りも緩やか 利益 118 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 135.89 ドル1,289 億ドル
メインフレームの新機種の周期が続き、ソフトの有機成長が戻る最良の筋書き。ただし AI を自社の売り物にして売上が出た金額の裏付けは確かめられないので、ソフトの数量は今の1.00倍が上限、コンサルは0.75倍。売上は820億ドル、純利益は118億ドル。 内訳はソフトウェア=数量1.00倍・価格1.34倍・利益率31.8%、コンサルティング=数量0.75倍・価格1.34倍・利益率10.6%、インフラストラクチャー=数量1.00倍・価格1.26倍・利益率21.5%。 この筋書きの確率は7%。結果は、売上が今の1.21倍の820億ドル、営業利益181億ドル、純利益118億ドル、自己資本589億ドル、10年の正味の還元787億ドル、時価総額1,289億ドル(PER10.9倍)。 10年の純利益の累計は1,049億ドル(起点の純利益から最終年へ、毎年ほぼ一定の率または幅で動く道筋で積んだ)で、自己資本は今に累計を足して還元を引いた。
- ソフトウェア:数量 8,000(対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 5.0%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 399 億ドル・営業利益 127 億ドル。数量1.00倍・価格1.34倍・営業利益率31.8%(人月と記録の正本の混合)
- コンサルティング:数量 12.0(コンサルタント・技術者数(万人))× 価格 18(1 人あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 211 億ドル・営業利益 22 億ドル。数量0.75倍・価格1.34倍・営業利益率10.6%(人月型)
- インフラストラクチャー:数量 3,000(IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 7.0%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 211 億ドル・営業利益 45 億ドル。数量1.00倍・価格1.26倍・営業利益率21.5%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg=0.30%(記録の正本の部分だけ物価並みの値上げが続く。利益の加重)の正当化PER:事業のROE20.0%、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=14.6%、(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.9倍。純利益はGAAP(株式報酬は費用)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:AI の売上の金額開示を確かめられないため、楽観でも数量は今以下。7%。
やや楽観 20% メインフレームの周期が戻り、コンサルは緩やかに縮む 利益 106 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 121.70 ドル1,155 億ドル
ソフトは0.96倍、メインフレームは周期の山と谷をならして0.97倍、コンサルは0.70倍。売上は756億ドル、純利益は106億ドル。 内訳はソフトウェア=数量0.96倍・価格1.29倍・利益率30.9%、コンサルティング=数量0.70倍・価格1.29倍・利益率10.3%、インフラストラクチャー=数量0.97倍・価格1.22倍・利益率20.9%。 この筋書きの確率は20%。結果は、売上が今の1.12倍の756億ドル、営業利益162億ドル、純利益106億ドル、自己資本574億ドル、10年の正味の還元741億ドル、時価総額1,154億ドル(PER10.9倍)。 10年の純利益の累計は988億ドル(起点の純利益から最終年へ、毎年ほぼ一定の率または幅で動く道筋で積んだ)で、自己資本は今に累計を足して還元を引いた。
- ソフトウェア:数量 7,680(対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 4.8%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 368 億ドル・営業利益 114 億ドル。数量0.96倍・価格1.29倍・営業利益率30.9%(人月と記録の正本の混合)
- コンサルティング:数量 11.2(コンサルタント・技術者数(万人))× 価格 17(1 人あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 190 億ドル・営業利益 20 億ドル。数量0.70倍・価格1.29倍・営業利益率10.3%(人月型)
- インフラストラクチャー:数量 2,925(IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 6.8%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 198 億ドル・営業利益 41 億ドル。数量0.97倍・価格1.22倍・営業利益率20.9%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg=0.30%(記録の正本の部分だけ物価並みの値上げが続く。利益の加重)の正当化PER:事業のROE18.4%、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=13.8%、(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.9倍。純利益はGAAP(株式報酬は費用)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:メインフレームの周期が戻る筋書き。20%。
中立 38% コンサルが縮み、ソフトの伸びも物価に届かない 利益 96 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 110.86 ドル1,052 億ドル
コンサルの人月は AI エージェントに置き換わって数量0.65倍、利益率10.1%。ソフトは買収の効果が出ても有機成長が横ばいで数量0.92倍、価格1.25倍。メインフレームは数量0.95倍。売上は701億ドル、営業利益は148億ドル、純利益は96.3億ドル。 内訳はソフトウェア=数量0.92倍・価格1.25倍・利益率30.3%、コンサルティング=数量0.65倍・価格1.25倍・利益率10.1%、インフラストラクチャー=数量0.95倍・価格1.18倍・利益率20.5%。 この筋書きの確率は38%。結果は、売上が今の1.04倍の701億ドル、営業利益148億ドル、純利益96.3億ドル、自己資本562億ドル、10年の正味の還元706億ドル、時価総額1,052億ドル(PER10.9倍)。 10年の純利益の累計は942億ドル(起点の純利益から最終年へ、毎年ほぼ一定の率または幅で動く道筋で積んだ)で、自己資本は今に累計を足して還元を引いた。
- ソフトウェア:数量 7,360(対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 4.7%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 343 億ドル・営業利益 104 億ドル。数量0.92倍・価格1.25倍・営業利益率30.3%(人月と記録の正本の混合)
- コンサルティング:数量 10.4(コンサルタント・技術者数(万人))× 価格 16(1 人あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 171 億ドル・営業利益 17 億ドル。数量0.65倍・価格1.25倍・営業利益率10.1%(人月型)
- インフラストラクチャー:数量 2,850(IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 6.6%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 187 億ドル・営業利益 38 億ドル。数量0.95倍・価格1.18倍・営業利益率20.5%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg=0.30%(記録の正本の部分だけ物価並みの値上げが続く。利益の加重)の正当化PER:事業のROE17.1%、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=13.2%、(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.9倍。純利益はGAAP(株式報酬は費用)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:コンサルが縮み、ソフトが横ばいに近い中心の筋書き。38%。
やや悲観 23% 買収で積んだソフトの有機成長が止まり、コンサルが細る 利益 77 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 88.03 ドル835 億ドル
ソフトの有機成長が止まり、コンサルは顧客の内製化とインド勢の値下げで細る。数量はソフト0.85倍、コンサル0.60倍、価格は1.21倍・1.21倍。売上は626億ドル、純利益は76.7億ドル。 内訳はソフトウェア=数量0.85倍・価格1.21倍・利益率27.2%、コンサルティング=数量0.60倍・価格1.21倍・利益率9.1%、インフラストラクチャー=数量0.87倍・価格1.14倍・利益率18.4%。 この筋書きの確率は23%。結果は、売上が今の0.93倍の626億ドル、営業利益118億ドル、純利益76.7億ドル、自己資本535億ドル、10年の正味の還元625億ドル、時価総額835億ドル(PER10.9倍)。 10年の純利益の累計は834億ドル(起点の純利益から最終年へ、毎年ほぼ一定の率または幅で動く道筋で積んだ)で、自己資本は今に累計を足して還元を引いた。
- ソフトウェア:数量 6,771(対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 4.5%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 306 億ドル・営業利益 83 億ドル。数量0.85倍・価格1.21倍・営業利益率27.2%(人月と記録の正本の混合)
- コンサルティング:数量 9.6(コンサルタント・技術者数(万人))× 価格 16(1 人あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 153 億ドル・営業利益 14 億ドル。数量0.60倍・価格1.21倍・営業利益率9.1%(人月型)
- インフラストラクチャー:数量 2,622(IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 6.4%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 167 億ドル・営業利益 31 億ドル。数量0.87倍・価格1.14倍・営業利益率18.4%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg=0.30%(記録の正本の部分だけ物価並みの値上げが続く。利益の加重)の正当化PER:事業のROE14.3%、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=11.8%、(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.9倍。純利益はGAAP(株式報酬は費用)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:有機成長が止まる筋書き。23%。
悲観 12% コンサルが半分近くに縮み、ソフトも値下げ圧力を受ける 利益 36 億ドル · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 40.51 ドル384 億ドル
コンサルは AI エージェントに置き換わり数量0.47倍、ソフトも内製と値下げで0.66倍まで縮む。メインフレームの周期も谷に入り、利益率が崩れる。売上は454億ドル、純利益は35.6億ドル。 内訳はソフトウェア=数量0.66倍・価格1.12倍・利益率18.2%、コンサルティング=数量0.47倍・価格1.12倍・利益率6.1%、インフラストラクチャー=数量0.68倍・価格1.06倍・利益率12.3%。 この筋書きの確率は12%。結果は、売上が今の0.67倍の454億ドル、営業利益54.7億ドル、純利益35.6億ドル、自己資本574億ドル、10年の正味の還元318億ドル、時価総額384億ドル(PER10.8倍)。 10年の純利益の累計は566億ドル(起点の純利益から最終年へ、毎年ほぼ一定の率または幅で動く道筋で積んだ)で、自己資本は今に累計を足して還元を引いた。
- ソフトウェア:数量 5,299(対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 4.2%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ))→ 売上 222 億ドル・営業利益 40 億ドル。数量0.66倍・価格1.12倍・営業利益率18.2%(人月と記録の正本の混合)
- コンサルティング:数量 7.5(コンサルタント・技術者数(万人))× 価格 15(1 人あたりの年間売上(万ドル))→ 売上 111 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量0.47倍・価格1.12倍・営業利益率6.1%(人月型)
- インフラストラクチャー:数量 2,052(IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格))× 価格 5.9%(1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率)→ 売上 121 億ドル・営業利益 15 億ドル。数量0.68倍・価格1.06倍・営業利益率12.3%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg=0.00%(人月・席の型は0%以下。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(9.2%+-0.00%)=10.8倍(事業のROE6.2%)。純利益はGAAP(株式報酬は費用)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:コンサルとソフトの両方が置き換わる筋書き。12%で、やや悲観と合わせて35%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ソフトウェア
レッドハット・オートメーション・データ・取引処理(メインフレーム向け)などの経常型ソフト。ハシコープ・コンフルエントを含む。
| 数量対象市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率(物価・値上げ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 3.7% | 298 | 93 |
| 10 年後 中立 | 7,360 | 4.7% | 343 | 104 |
取り方:2025 年の売上 675 億ドルのうちソフトを約 298 億ドルと推定(ソフトは通年で約 +9%)。業界ノートの業務・基盤ソフト市場(約 8,000 億ドル、実質で年 +2%)に対するシェアは 3.7% 前後。数量=市場の実質規模(8,000 億ドル)、価格=シェア(3.7%)× 単価の倍率として置く(シェアの伸びは買収で上がり、単価は中立で物価だけ 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)。営業利益は部門の利益率を 31% 前後と推定。競合はマイクロソフト・オラクル・SAP・スプランク(シスコ傘下)・データブリックスなど。 【AIエージェント代替の見直し】ソフトは基盤(レッドハット)と席・開発者向けの自動化・取引処理・データ管理の混合。基盤は席の型ではないので席の表は直接使わず、数量0.92倍(有機成長が横ばいで取引処理が減る分)、価格は物価に届かない1.25倍。
コンサルティング
IT 改革・業務変革・アプリ開発と運用の人月ビジネス。生成 AI 関連が受注の約半分。
| 数量コンサルタント・技術者数(万人) | 価格1 人あたりの年間売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.0 | 13 | 211 | 23 |
| 10 年後 中立 | 10.4 | 16 | 171 | 17 |
取り方:2025 年の売上を約 211 億ドル、要員を約 16 万人(推定)として 1 人あたり約 13.2 万ドル。世界の IT サービス市場は約 1.5 兆ドルで、IBM のシェアは 1.4% 前後。数量は人月(要員数)、価格は人月の単価。業界ノートは中立で人月が年 −2%・単価が年 +3%。競合はアクセンチュア(売上約 700 億ドル・営業利益率 15% 前後)、キンドリル、インドの TCS・インフォシス・コグニザント。営業利益率は 11% 前後と推定(アクセンチュアより低い)。 【AIエージェント代替の見直し】コンサルは人月型(AI エージェント代替)。IBM のコンサルはアクセンチュアより利益率が低く、置き換えの打撃が大きい。数量は中立で0.65倍、価格1.25倍、利益率は今の 11% から10.1%へ。
インフラストラクチャー
メインフレーム(IBM Z)・パワー・ストレージ・分散サーバーと、ファイナンス部門(顧客向け融資)。
| 数量IBM が関わる企業向けインフラ市場の実質規模(億ドル・2025 年価格) | 価格1 億ドルの市場あたりの IBM 売上(億ドル)= シェア × 単価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 5.6% | 167 | 36 |
| 10 年後 中立 | 2,850 | 6.6% | 187 | 38 |
取り方:2025 年のインフラは約 +12%(z17 の発売の山)で約 160 億ドル、ファイナンス約 7 億ドルを合わせ 167 億ドルと推定。メインフレームは事実上 IBM の独占(銀行・保険・政府の基幹系)で、周期は約 4 年。2026 年 4〜6 月期は -7% と山を越えつつある。分散サーバー・ストレージはデル・HPE・ピュアストレージなどと競合する。営業利益率は 21% 前後と推定。市場は IBM が関わる企業向けのサーバー・ストレージ・メインフレーム市場を約 3,000 億ドル(推定)とし、シェアは 5.6%。 【AIエージェント代替の見直し】インフラはメインフレームが中心。銀行・保険・政府の基幹系に入り、乗り換えに年単位の移行と規制対応が要る記録の正本。独占に近い構造と、基幹系の業界共同利用の 2 つの証拠があり、g を +1.0%(全社では利益比)とした。数量0.95倍、価格1.18倍。AI の影響は小さいが周期で振れる。
リスクと懸念
AI エージェント代替(コンサルの人月とソフトの席)
IBM の売上の 3 割はコンサルの人月で、AI エージェントが設計・テスト・運用を肩代わりすれば数量も単価も下がる。ソフトも自動化・取引処理・データ管理の領域で AI エージェントが画面操作を飛ばせば、席や開発者向けの課金が崩れうる。中立の売上は今の1.04倍、悲観では0.67倍と置いた。メインフレームは記録の正本として堀を認めた。
取引処理ソフトの減少と有機成長の弱さ
2026 年 4〜6 月期に取引処理は −9%、ソフト全体は買収を除くと横ばい。顧客が契約更新の予算をサーバー・ストレージの購入に回す動きもある。買収(ハシコープ・コンフルエント)の上乗せを除くと成長が見えにくく、買収が止まれば成長率が下がる。
メインフレームの周期の反動
約 4 年ごとの新機種の山を過ぎると、インフラの売上が減る。2026 年 4〜6 月期は −7%、IBM Z は想定を下回った。z17 の 5 四半期の売上は前世代の約 130% と強かった分、2027〜2028 年の反動は大きくなりうる。分散インフラが補えない場合、利益の落ち込みが大きい。
買収の実行と財務
ハシコープ(約 64 億ドル)とコンフルエント(約 110 億ドル、のれん約 72 億ドル)で借金が増え、純有利子負債は 501 億ドルを超える。製品の重なりの整理に失敗すれば、減損と利益率の悪化を招く。増配を続けながら借金を返す余裕は、フリーキャッシュフロー 147 億ドルに左右される。
大手クラウド・データ基盤の競争
マイクロソフト・アマゾン・グーグルが基盤ソフトとデータ接続を標準機能として提供し、データブリックス・スノーフレイクが範囲を広げる。レッドハットの価格競争や、メインフレームのクラウド移行(AI による COBOL の書き換え)が進むと、堀が薄くなる。
過去の実績と年金・為替
2014〜2021 年に売上は約 4 割減り、事業の入れ替えに 7 年を要した。年金の積立・為替(ドル高で海外売上が減る)・訴訟など、本業以外の利益の振れも大きい。2025 年の純利益 106 億ドルは 2024 年(60 億ドル)より好調で、持続するかを慎重に見る必要がある。
今後の分かれ目
- ソフトの有機成長(買収を除く)が 3% を超えて 2 年続いたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。買収が価値を生んでいる証拠で、ソフトの利益率の置き方を 1〜2 ポイント上げてよい。
- コンサルの売上が受注の伸びに追いつき、2 年連続で +3% 以上になったら
- AI が人月を減らす速さより、AI 案件の増加が上回る合図。コンサルの人月を横ばいに置いた中立の置き方を維持するか、やや楽観に寄せる。
- コンサルの受注が減り、1 人あたりの売上が 3 年続けて物価を下回ったら
- 10 年のやや悲観・悲観の確率を上げ、コンサルの利益率を 8% 以下に置き直す。
- IBM Z の次の新機種(z18 相当)が前世代より売上で弱かったら
- メインフレームの周期が縮んでいる合図。インフラの数量を 1 割減らして見直す。
- コンフルエントの統合が進まず、のれんの減損が出たら
- 買収の資本配分に疑いが出る。10 年の悲観・やや悲観の確率を上げ、倍率を 1〜2 倍下げて見る。
- 自社株買いを再開し、株式報酬による株の増加を打ち消したら
- 正味の還元が増える。還元の置き方を引き上げて見る。ただし割高なうちの買い戻しは株主価値を壊す。
- AI 関連の受注が金額つきで開示され、売上として立ち、全社の 1 割を超えたら
- 人月に頼らない収益源の合図。楽観の数量を今の 1.0 倍より上で見直す。
- コンサルの受注が 2 年続けて前年を割り、ソフトの有機成長が 0 を下回ったら
- 置き換えが人月と席の両方に及んだ合図。数量を中立の{con_base_vm:.2f}倍・{sw_base_vm:.2f}倍より下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- ソフトの有機成長(買収を除く)と取引処理・レッドハット・データの内訳
- コンサルの受注と売上の差、1 人あたり売上、要員数
- IBM Z の売上と受注、分散インフラの受注残
- 営業利益率とフリーキャッシュフロー(株式報酬・年金を考慮)
- コンフルエント・ハシコープの統合状況とのれんの減損
- 純有利子負債と配当の余裕
- AI 関連の受注・売上の金額と、コンサルの受注・ソフトの有機成長
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 2,202億ドル や今の PER 約 21 倍は見ずに、3 部門を型で分けて数量(0.65〜0.95 倍)と価格(物価に届かない 1.18〜1.25 倍)を置いた。倍率は正当化 PER で、k は基本 8.0% + 景気 0.25 + 借金 0.25 + 寿命 0.75 = 9.25%、g はメインフレーム(2 つの証拠)の利益比で0.3%。AI 代替は数量・価格に主に入れ、k・確率(悲観側35%)・g に重ねていない。起点の純利益は一回限りの税の効果を除いて約 92 億ドルと置いた。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β 0.87 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.25% = 9.25%(β は使わない)。メインフレームの周期とコンサルの受注で業績が振れる(cycle +0.25)。値決めは、ソフトとメインフレームの強さとコンサルの競争で 0。純負債は時価総額の 2 割強(多くは金融事業の借入)で EBITDA の 2〜3 倍(debt +0.25)。寿命は、コンサルの人月型(+1.0〜1.5)とメインフレームの記録の正本(+0.5)の加重で +0.75%。個別のリスクは k に足さず筋書きと確率で表した。