結論
ローパー・テクノロジーズは、業種ごとの小さな専門ソフトと機器を買い集めて育てる会社で、2025 年(12 月期)の売上は 79.0 億ドル(+12%)、GAAP の営業利益は 22.4 億ドル(利益率 28.3%)、GAAP の純利益は 15.4 億ドル。売上は応用ソフト(44.8 億ドル)・ネットワークソフト(16.0)・技術製品(18.2)の 3 つで、2026 年 Q2 は有機 +5%・買収 +3 ポイントで +9%。見通しは売上 +8% 超・有機 約 6%。純利益は GAAP(株式報酬も買収の無形資産の償却も費用のまま)で測り、会社の調整後の利益は使わない。
本質価値は、3 セグメントを市場の実質規模 × シェア × 価格で 10 年先まで積み上げて測った。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)が基本。中立は、市場が実質で年 1% 前後伸び、有機のシェアが年 0.2〜0.4% 上がり、買収を年 30 億ドル(売上の 8 倍)続ける形で、10 年後の売上は 174 億ドル、純利益は 30.7 億ドル。買収に使う現金は還元から引き、買収ののれんと無形資産は ROE から除かないので、帳簿の ROE は今の 7.7% から 10 年後でも約 12.3% にしか上がらず、利益ベースの正当化 PER(RONIC 10.5%)は 13.0 倍で、その 8 割の 10.4 倍を中立の 10 年後に置いた。
生成 AI で業種別ソフトの座席と価格が削られる筋書き(やや悲観・悲観)には 10 年で 42% の確率を置いた。確率で加重した本質価値は今の時価総額の 59%(差 41%)で、評価は「割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず「10 年後もあるか」を問う。ローパーの専門ソフトは、顧客の中核業務の記録を握るため 10 年後も存在する可能性が高い。ただし「今より強いか」は、AI の影響で答えが割れる。座席が減るか、価格が成果課金へ移るかで、堀は今より狭くも広くもなる。水道メーターのような機器の事業は AI の影響が小さく、安定する。
オーナー利益は、GAAP の純利益 15.4 億ドルに、現金を伴わない償却 8.2 億ドルを足し、設備投資と開発費の資本化 1.0 億ドル前後を引いた約 22 億ドルが近い(調整後のフリーキャッシュフロー 24.7 億ドルには株式報酬 1.7 億ドルの戻しが入る)。ただしこの現金の多くは買収に回り、成長を買うために払った値段が帳簿の ROE 7.7% に出ている。成長に再投資する価値があるかは、買収の収益率が借金の金利 5.75% と株主の期待の収益率(k 8.75%)を上回るかで決まる。買収を EBITDA の 22 倍で重ねる限り、収益率の余裕は小さい。
安全域は見込めない。利益ベースの中立の倍率 10.4 倍は今の PER 約 25 倍より低く、AI の懸念が織り込まれていても同じである。中立の 10 年後の倍率は正当化 PER 13.0 倍の 8 割の 10.4 倍で、帳簿の ROE(約 12.3%)が低いため、成長を倍率に乗せられない。わからない部分は、AI が座席と価格に与える影響で、予測しにくい。事業の質への確信は中程度、10 年後の利益への確信は低め〜中程度。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つのセグメントに分かれ、会社が各社を分権で運営する。応用ソフト(2025 年 44.8 億ドル、利益率 26.8%)は、保険(ヴァータフォア)・法律事務所(アデラント)・プロジェクト型の会計(デルテック)・学校(フロントライン)・保育(プロケア)・療育(セントラルリーチ)・病院の財務(ストラータ)・電力の資産会計(パワープラン)など、業種の中核業務のソフトで、座席や契約ごとの年額課金が中心。ネットワークソフト(16.0 億ドル、利益率 43.5%)は、貨物の取引市場 DAT・建設の入札情報コンストラクトコネクト・映像制作のファウンドリー・食品流通の iTradeNetwork・保険配信の iPipeline・サブスプラッシュなど、利用者の網で成り立つ事業。技術製品(18.2 億ドル、利益率 34.5%)は、水道メーターのネプチューン、医療機器のベラソンと CIVCO、計測のノーザン・デジタル、無線のイノヴォニクス・rf IDEAS などの機器。
2025 年の調整後フリーキャッシュフローは 24.7 億ドルで、GAAP の純利益 15.4 億ドルの約 1.6 倍ある。差の多くは買収の無形資産の償却 8.2 億ドルで、現金を伴わない費用だが、その元の代金は過去の買収で払った現金である。2022 年に産業事業の過半を CD&R に売って Indicor とし、49% を持ち分として残した。2026 年 5 月に AMETEK が Indicor の計測事業を約 50 億ドルで買う合意をし、ローパーの税引き後の受取は約 12 億ドルの見込み(2026 年下半期。会社の説明の要約による)。2026 年上半期には Indicor の持ち分の評価益(税引き後 9.3 億ドル)が GAAP の純利益に入ったが、一回きりなので筋書きの純利益からは外した。
2025 年は買収に 32.9 億ドル(セントラルリーチ 純 16.5 億ドル、サブスプラッシュ 8.0 億ドルなど)、自社株買いに 5.0 億ドル、配当に 3.55 億ドルを使った。2026 年上半期は自社株買いに 27.3 億ドルを使い、買収は 5 千万ドル未満の 2 件にとどまった。収益の源は、業種ごとの小さなソフトの継続課金、毎年の値上げ、買収で足す会社の三つである。
優良さと弱いところ
堀は業種ごとに違うが、共通するのは「中核業務の記録と規則を握っている」ことである。保険会社の契約管理、法律事務所の請求、政府請負のプロジェクト会計、学校の人事は、入れ替えると業務が止まりやすく、切り替えの費用が高い。継続課金の比率が高く、景気にも強い。利益率も高く、営業利益率は 2025 年に 28.3%、EBITDA 利益率は約 40% で、過去の営業利益率はリーマン期の底でも 19% 台と保たれた。ネットワークソフトの DAT・ファウンドリーなどは取引や利用者の網が堀になる。水道メーターのネプチューンはザイレムのセンサス、バッジャー・メーターと北米のほとんどを分け合う寡占(バッジャー・メーターの 10-K の推定で 3 社合計 約 85%)。
弱点は 4 つある。第一に、堀が AI でどう動くかが読めない。座席課金は AI エージェントで座席が減ると削られ、価格が成果課金へ移ると単価が下がる。第二に、帳簿の ROE が 7.7% と低い。買収を売上の 7〜9 倍(EBITDA の 22 倍前後)で重ねてきた結果で、買収の収益率は借金の金利(借り換えで 5.75%)を大きくは上回らない。第三に、2025 年の有機成長は会社自身が期待を下回ったと認め、2026 年 Q2 はネットワークソフトの EBITDA 利益率が 3.7 ポイント、技術製品が 2.2 ポイント下がり、全体でも 0.7 ポイント低下した。第四に、純負債が EBITDA の 3.4 倍(3.1 倍から上昇)と、買収と自社株買いで厚い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ローパーが戦うのは、業界ノートの「アプリケーション・設計ソフト」のうち、業種別の業務ソフトにあたる。市場は約 8,000 億ドル(推定)のアプリケーション全体の一部で、業界ノートの中立は、座席は減るが消費量で補い、数量 年 +2%・価格 年 +2.5% で売上は名目 +4.5% 前後の伸びである。2026 年 2 月にはソフト株から 1 兆ドル超の時価が消えたとの報道があり、ローパーの株価も 2025 年 Q4 の決算後に一週間で 9% 近く下げ、高値から約 4 割安まで下げた(Stifel が中立に格下げ)。AI が座席課金を置き換え、成果課金へ移るとの見方が背景にある。
業種別ソフトの強みは、規則と独自のデータが業種ごとに深いことで、買い手は規制の深さと独自データに値段を払うという見方が出ている。一方で、AI ネイティブの新興が個別業務を丸ごと自動化する、システム・オブ・レコードが AI の作業の流れの下へ押される、という予測もある。ローパー自身は、デルテック・ヴァータフォア・ストラータ・アデラント・プロケア・セントラルリーチ・DAT・ソフトライターズ・iTradeNetwork・ファウンドリー・コンストラクトコネクトで AI の機能を出し、ヴァータフォアは 6 つのエージェント製品を出したが、AI 製品が 2026 年の売上に大きく寄与するわけではなく、収益化は 2027 年だと説明している。社内の AI 支出は 1 月から約 3 倍に増えた。
競合との位置では、同じ領域のタイラー・テクノロジーズ(自治体)やオートデスク(設計)のように、業種に特化して首位を持つソフトが比較対象になる。買収の入札ではプライベート・エクイティとの競りがあり、価格の高止まりが買収の収益率を下げている。ローパーは買収に慎重で、2026 年上半期の買収は 2 件・5 千万ドル未満にとどまり、M&A は 2026 年末から 2027 年に増えると見ている。
循環の面では、景気後退でも専門ソフトの売上は崩れにくく(ローパーの売上は 2009 年に 11% 減)、貨物市況に左右される DAT と、水道メーターの更新の先送りが主な振れの源になる。今は買収の休止と自社株買い・借金の返済の段階にいる。
資本政策と M&A
資本配分は、会社の説明では「1 株あたりキャッシュフローの複利を最大にする」枠組みで、これは 2026 年 Q2 の説明で不変とされた。買収は 2024 年に 36.1 億ドル、2025 年に 32.9 億ドルを使ったが、2026 年上半期は 5 千万ドル未満にとどまり、代わりに 27.3 億ドルの自社株買い(Q2 は 360 万株・12 億ドル)をした。自社株買いの計画のこれまでの累計は 900 万株・32 億ドル。ただし純負債が EBITDA の 3.4 倍に上がったため、当面は自社株買いより借金の返済を優先し、今後 12〜18 か月に 50 億ドル超の買収に前向きとしている。配当は 2025 年に 3.55 億ドル(GAAP の純利益の約 23%)。
買収の値段が収益率を決める。2025 年のセントラルリーチは純 16.5 億ドルで売上 約 1.75 億ドル・EBITDA 約 0.75 億ドル(EBITDA の約 22 倍)、サブスプラッシュは 8.0 億ドルで売上 約 1.15 億ドル・EBITDA 約 0.36 億ドル(約 22 倍)。EBITDA の利回りは約 4.5% で、借り換えの金利(約 5.75%)を下回り、成長と費用の削減で埋める計算になる。正味の還元は配当と自社株買いから株式報酬(年 1.7 億ドル)を引いた額で見て、買収に使う現金は還元から引く。筋書きでは純負債を EBITDA の 3.0 倍(悲観は 3.4 倍)に保つ。ローパー自身が買われる可能性は、時価総額約 380 億ドルの規模からほぼない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
専門ソフトの堀は、AI で広がる。ローパーの会社は保険の契約管理、法律事務所の請求、プロジェクト会計、学校の人事、療育の記録など、業務の記録と規則を握り、AI の部品はその記録の上でしか役に立たない。2026 年 Q2 の有機は応用ソフト +5%・ネットワーク +4%・技術製品 +7% で、会社は有機の見通しを 約 6% に上げた。ヴァータフォアの 6 つのエージェント製品のように AI の機能が各社で出ており、会社の説明では収益化は 2027 年で、座席が減っても消費量課金へ移れば総額は保てる。
キャッシュの力も強い。2025 年の調整後フリーキャッシュフローは 24.7 億ドルで、GAAP の純利益の約 1.6 倍ある。Indicor の計測事業を AMETEK に売る代金で税引き後の約 12 億ドルが入る見込みで、2026 年下半期に純負債が下がる。M&A は 2026 年末から 2027 年に戻るという見方で、AI の悲観で売り手の値段が下がれば、買い手に有利になる。
今の PER 約 25 倍は過去 20 期の中央値(約 28 倍)を下回り、PBR 1.9 倍は過去の最低を割った。営業利益率は 28% 台で 20 年間大きく崩れず、業種ごとの首位のソフトが同じ利益率を保てば、10 年後の応用ソフトの営業利益は今の 3 倍強(約 39 億ドル)に伸びうる。AI で損をする会社と得をする会社が分かれる中、ローパーは得をする側に残る。
慎重な見方
AI は座席課金の最前線にある。AI エージェントが業務を自動化すれば、保険・法務・学校などの座席が減り、価格も成果課金へ移って下がる。AI ネイティブの新興が業種を一つずつ丸ごと自動化する動きは、ローパーの中核業務の記録の堀を迂回する。2025 年の有機成長は会社自身が期待を下回ったと認め、2026 年 Q2 はネットワークソフトの EBITDA 利益率が 3.7 ポイント、技術製品が 2.2 ポイント下がり、全体でも 0.7 ポイント低下した。社内の AI 支出は 1 月から約 3 倍に増えており、利益率を下げる。
資本配分にも疑いがある。セントラルリーチは EBITDA の約 22 倍、サブスプラッシュも約 22 倍で買い、EBITDA の利回りは約 4.5% と、借り換えの金利(約 5.75%)を下回る。帳簿の ROE は 7.7% で、株主の期待(k 8.75%)を下回る。償却 8.2 億ドルは現金を伴わないが、元はローパーが払った現金で、買収を続けるほど帳簿の利益は伸びにくい。純負債は EBITDA の 3.4 倍で、2026 年上半期に自社株買いで 27.3 億ドルを使い、買収の余力を削った。
競合との比較でも不利である。オラクル・SAP などの大手が AI を自社製品に組み込み、AI ネイティブの新興が小さな業種の座席を取りに来る。うまくいけば応用ソフトの営業利益は約 39 億ドルだが、負ければ約 7 億ドルで、今の約 12 億ドルを大きく下回る。業種別ソフトの株価が 2026 年に高値から約 4 割下がったのは、この差の大きさを市場が見ているからである。
どちらに重みを置いたか
事業の質と現金を生む力は強気の見方が強い。一方、買収の値段(EBITDA の約 22 倍・利回り約 4.5% で借金の金利を下回る)と、AI による座席の削減と価格の下落は、慎重な見方が当たる可能性が高い。10 年は、楽観とやや楽観を合わせて 24%、やや悲観と悲観を合わせて 42% と、悲観側に寄せた。倍率は正当化 PER の 7.5〜9 割で、AI の構造変化は悲観側の確率と深さで表し、買収の値段は帳簿の ROE(7〜14%)を通じて倍率に効かせた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 263.48 ドル265 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 168.60 ドル169 億ドル)。 今の値に割り戻すと 224.72 ドル226 億ドル、今との差 −48.5%、 期待の年率 −0.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 482.67 ドル485 億ドル | 190.24 ドル191 億ドル | +54.3% | +4.4% | 40.37 ドル41 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 384.86 ドル386 億ドル | 181.27 ドル182 億ドル | +29.8% | +2.6% | 101.90 ドル102 億ドル |
| 中立 | 34% | 318.03 ドル319 億ドル | 183.27 ドル184 億ドル | +14.9% | +1.4% | 170.44 ドル171 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 174.90 ドル176 億ドル | 146.41 ドル147 億ドル | −26.3% | −3.0% | 86.75 ドル87 億ドル |
| 悲観 | 15% | 65.94 ドル66 億ドル | 151.39 ドル152 億ドル | −50.2% | −6.7% | 32.60 ドル33 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 263.48 ドル265 億ドル | 168.60 ドル169 億ドル | −1.0% | −0.1% | 432.07 ドル434 億ドル |
今の株価時価総額 436.23 ドル438 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:AI を組み込んだ専門ソフトの首位が続き、売上 年 10% 利益 39 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 482.67 ドル485 億ドル
AI は業務の流れの中心に残る専門ソフトに追い風になる。保険の配信・法務の請求・プロジェクト会計・学校の人事のような仕事の記録と規則を握るので、AI の部品を製品に組み込み、座席が減る分を消費量課金で埋められる。FY35(2035 年 12 月期)の売上は応用ソフト 119 億ドル(営業利益率 33.0%・シェア 2.2%→3.6%)、ネットワークソフト 47 億ドル(36.5%・シェア 3.2%→5.8%)、技術製品 41 億ドル(35.7%)。全社は売上 207 億ドル(年 10.1%)、営業利益 63.6 億ドル(30.7%)、純利益 39.4 億ドル。価格は物価を 0.2〜0.3 ポイント上回り(年 3.7〜3.8%)、市場の実質は年 1.5〜2.5% 伸び、有機のシェアが年 0.5〜0.8% 上がる。10 年の買収は 370 億ドル(売上の 8 倍で買い、年に売上 4.6 億ドル前後を足す)、正味の還元(配当と自社株買いから株式報酬を引いた額)は 191 億ドル、期末の純負債は 250 億ドル(EBITDA の 3.0 倍)。競合と比べると、業種ごとの首位を守れた時の応用ソフトの営業利益は 39 億ドル、AI ネイティブの新興に座席を奪われる悲観では 7 億ドルで、この差が筋書きの幅の中心である。
- 応用ソフト:数量 2,321(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 5.1%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 119 億ドル・営業利益 39 億ドル。首位のまま価格が物価を上回る
- ネットワークソフト:数量 580(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 8.1%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 47 億ドル・営業利益 17 億ドル。ネットワーク効果が AI でも続く
- 技術製品:数量 768(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 5.4%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 41 億ドル・営業利益 15 億ドル。スマートメーターの更新で伸びる
倍率:正当化 PER:事業の ROE 13.9%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 1/2 ×(ROE 13.9% − k 8.8%)= 11.3%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.6 倍。上限の 9 割の 12.3 倍に置いた:AI が専門ソフトに追い風になり座席の減少を消費量課金で埋める上振れでも、買収の収益率の低さが残るので上限の 9 割に置く。 時価総額 = 純利益 39.4 × 12.3 倍 = 485 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:縦型ソフトの堀が AI で広がり、座席の減少を消費課金が上回る必要がある。ローパーの買収の目利きが続くことも要る。成り立つ範囲だが AI の構造変化の不確実性が大きいので 6% にとどめた。
やや楽観 18% やや楽観:座席は減っても価格と消費課金で補い、買収が過去のペースに戻る 利益 35 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 384.86 ドル386 億ドル
専門ソフトは座席が少し減っても価格と消費量で補い、買収も年 35 億ドル前後と過去 2 年(2024 年 36 億ドル、2025 年 33 億ドル)に近いペースに戻る。FY35(2035 年 12 月期)の売上は応用ソフト 108 億ドル(営業利益率 31.7%・シェア 2.2%→3.4%)、ネットワークソフト 42 億ドル(36.3%・シェア 3.2%→5.4%)、技術製品 38 億ドル(35.0%)。全社は売上 188 億ドル(年 9.1%)、営業利益 55.9 億ドル(29.7%)、純利益 34.5 億ドル。価格は物価並み(年 3.6%)で、市場の実質は年 1.0〜2.2% 伸び、有機のシェアが年 0.3〜0.6% 上がる。10 年の買収は 323 億ドル(売上の 8 倍で買い、年に売上 4.0 億ドル前後を足す)、正味の還元(配当と自社株買いから株式報酬を引いた額)は 182 億ドル、期末の純負債は 223 億ドル(EBITDA の 3.0 倍)。業種ごとの首位を守れれば応用ソフトの営業利益は 34 億ドル。買収で買った会社が期待の 8 倍の売上の値段に見合って育つ前提で、買収の失敗が少ない形である。
- 応用ソフト:数量 2,253(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 4.8%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 108 億ドル・営業利益 34 億ドル。座席微減を価格と消費課金で補う
- ネットワークソフト:数量 552(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 7.6%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 42 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場の伸びに乗る
- 技術製品:数量 746(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 5.2%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 38 億ドル・営業利益 13 億ドル。更新需要が続く
倍率:正当化 PER:事業の ROE 12.8%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 1/2 ×(ROE 12.8% − k 8.8%)= 10.8%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.2 倍。上限の 8.5 割の 11.2 倍に置いた:座席が少し減っても価格と消費量で補い、買収が過去 2 年のペースに戻る筋書き。上限の 8.5 割に置く。 時価総額 = 純利益 34.5 × 11.2 倍 = 386 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:ローパーの過去 10 年(売上 2015 年の 36 億ドルから 2025 年の 79 億ドルへ)のような買収と有機の組み合わせが、AI の影響を限定して続く筋書き。18% に置いた。
中立 34% 中立:専門ソフトの座席は減るが価格が物価並みで、売上 年 8% 利益 31 億ドル · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 318.03 ドル319 億ドル
専門ソフトの座席は少し減るが、価格が物価並みに上がり、消費量課金と AI の部品が埋める。水道メーターや医療機器の技術製品は更新需要で伸びる。FY35(2035 年 12 月期)の売上は応用ソフト 99 億ドル(営業利益率 30.5%・シェア 2.2%→3.2%)、ネットワークソフト 38 億ドル(36.0%・シェア 3.2%→5.0%)、技術製品 36 億ドル(34.3%)。全社は売上 174 億ドル(年 8.2%)、営業利益 50.1 億ドル(28.8%)、純利益 30.7 億ドル。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)、市場は実質で応用 年 1.0%・ネット 年 0.8%・技術製品 年 2.0%、有機のシェアは年 0.2〜0.4% 上がる。10 年の買収は 275 億ドル(売上の 8 倍で買い、年に売上 3.4 億ドル前後を足す)、正味の還元(配当と自社株買いから株式報酬を引いた額)は 184 億ドル、期末の純負債は 201 億ドル(EBITDA の 3.0 倍)。競合に勝てれば(強気)応用ソフトの営業利益は 39 億ドル、負ければ(悲観)7 億ドルで、中立はその間の 30 億ドル。同業のタイラー・テクノロジーズやオートデスクのように、業種に特化したソフトが首位を保つ前提。
- 応用ソフト:数量 2,209(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 4.5%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 99 億ドル・営業利益 30 億ドル。座席は少し減り、価格が物価並み
- ネットワークソフト:数量 542(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 7.1%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 38 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場は小さく伸びる
- 技術製品:数量 731(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 5.0%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 36 億ドル・営業利益 12 億ドル。更新と医療で安定
倍率:正当化 PER:事業の ROE 12.3%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.8% + 1/2 ×(ROE 12.3% − k 8.8%)= 10.5%(moat=普通)、g = 4.0% で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.0 倍。上限の 8 割の 10.4 倍に置いた:専門ソフトは首位を保つが、買収を売上の 8 倍で重ねるので増やした利益の収益率は低い。堀は普通と見て上限から一段下げて置く。 時価総額 = 純利益 30.7 × 10.4 倍 = 319 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(座席は減るが価格は物価並みで売上は名目 4.5% 前後)にローパーの有機のシェア獲得と買収を足した筋書き。強気と慎重な見方の落としどころとして最も厚い 34% に置いた。
やや悲観 27% やや悲観:座席の削減と値下げが広がり、成長が物価に届かない 利益 19 億ドル · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 174.90 ドル176 億ドル
AI エージェントが座席を減らし、買い手も成果課金と値下げを迫る。応用ソフトは座席が実質で年 0.5% 減り、価格も物価に届かず(年 3.0%)、シェアも年 0.3% 失う。ネットワークソフトの貨物・建設・映像の市場も伸びが止まる。FY35(2035 年 12 月期)の売上は応用ソフト 71 億ドル(営業利益率 25.6%・シェア 2.2%→2.7%)、ネットワークソフト 29 億ドル(32.9%・シェア 3.2%→4.2%)、技術製品 29 億ドル(31.8%)。全社は売上 130 億ドル(年 5.1%)、営業利益 32.4 億ドル(24.9%)、純利益 19.3 億ドル。10 年の買収は 183 億ドル(売上の 8 倍で買い、年に売上 2.3 億ドル前後を足す)、正味の還元(配当と自社株買いから株式報酬を引いた額)は 147 億ドル、期末の純負債は 140 億ドル(EBITDA の 3.0 倍)。買収は年 20 億ドルに絞り、買収した会社の伸びも鈍る。AI ネイティブの新興がいくつかの業種で標準の座を取る一方、ローパーは残りの業種で首位を保つ形で、営業利益率は 24.9% まで下がる。
- 応用ソフト:数量 1,902(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 3.7%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 71 億ドル・営業利益 18 億ドル。座席が減り価格が物価に届かない
- ネットワークソフト:数量 500(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 5.9%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場が横ばい・シェアが下がる
- 技術製品:数量 663(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 4.4%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 9 億ドル。伸びが鈍る
倍率:事業の ROE 8.3% が k 8.8% 以下なので正当化 PER は 1÷k = 11.4 倍が上限(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満)。上限の 8 割の 9.1 倍に置いた:AI エージェントが座席を減らし、買い手が成果課金と値下げを迫る筋書き。ROE が k を下回るので上限は 1/k で、その 8 割に置く。 時価総額 = 純利益 19.3 × 9.1 倍 = 176 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:AI による座席の削減が業種別ソフトにも広がり、座席課金から成果課金へ移る途中で単価が下がる。2026 年の株価の下げ(高値から約 4 割)はこの方向を市場が重く見ていることを示す。慎重な見方を重く見て 27% に置いた。
悲観 15% 悲観:縦型ソフトの堀が狭まり、売上が 10 年間ほぼ横ばいになる 利益 8 億ドル · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 65.94 ドル66 億ドル
構造的に縦型ソフトの堀が狭まる。AI エージェントと AI ネイティブの新興が業務の流れそのものを置き換え、市場の実質が年 2.5% 縮み(応用ソフトで 10 年に約 2 割)、価格も物価を下回る(年 2.0%)。ローパーはもう「優良な専門ソフトの集まり」ではなくなる。FY35(2035 年 12 月期)の売上は応用ソフト 41 億ドル(営業利益率 16.8%・シェア 2.2%→1.9%)、ネットワークソフト 16 億ドル(27.8%・シェア 3.2%→2.8%)、技術製品 21 億ドル(29.3%)。全社は売上 79 億ドル(年 -0.1%)、営業利益 14.7 億ドル(18.7%)、純利益 7.7 億ドル。10 年の買収は 36 億ドル(売上の 8 倍で買い、年に売上 0.5 億ドル前後を足す)、正味の還元(配当と自社株買いから株式報酬を引いた額)は 152 億ドル、期末の純負債は 85 億ドル(EBITDA の 3.4 倍)。買い集めた会社の収益が落ち、買収は年 4 億ドルに絞る。還元は純利益に償却(現金を伴わない)と Indicor の売却代金を足した現金から払うので、純利益の合計を上回る。応用ソフトの営業利益は今の 12 億ドルから 7 億ドルへ 42% 下がり、強気の 39 億ドルの 5.6 分の 1 になる。
- 応用ソフト:数量 1,553(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 2.7%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 41 億ドル・営業利益 7 億ドル。座席が 3 割近く減り値崩れ
- ネットワークソフト:数量 409(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 4.0%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 16 億ドル・営業利益 5 億ドル。新興が市場を食う
- 技術製品:数量 571(対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格))× 価格 3.7%(1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率)→ 売上 21 億ドル・営業利益 6 億ドル。メーターの競争で価格が下がる
倍率:事業の ROE 4.8% が k 8.8% 以下なので正当化 PER は 1÷k = 11.4 倍が上限(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満)。上限の 7.5 割の 8.6 倍に置いた:AI ネイティブの新興が業務の流れを置き換え、市場が実質で縮む構造的な悲観。上限は 1/k で、その 7.5 割に置く。 時価総額 = 純利益 7.7 × 8.6 倍 = 66 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの 10 年の悲観(座席課金のソフトが AI エージェントに置き換えられ価格が 3〜5 割下がる)が、縦型ソフトにも及ぶ。買収で積んだのれんと無形資産が重く、成果課金への移行で単価が大きく下がる形も入る。15% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
応用ソフト
保険(ヴァータフォア)・法律事務所(アデラント)・プロジェクト型の会計(デルテック)・学校(フロントライン)・保育(プロケア)・療育(セントラルリーチ)など、業種ごとの中核業務のソフト。座席・契約ごとの年額課金が中心。
| 数量対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,000 | 2.2% | 45 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2,209 | 4.5% | 99 | 30 |
取り方:FY2025 の応用ソフトの売上 44.83 億ドル・セグメント営業利益 12.03 億ドル(26.8%)。対象市場はローパーが戦う業種別の業務ソフトで約 2,000 億ドルと推定(業界ノートのアプリケーション市場 約 8,000 億ドルの約 1/4)、シェア約 2.2%。数量 = 市場の実質規模、価格 = シェア × 価格の倍率(価格は物価並みで 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍が基本)。営業利益は GAAP(買収の償却を含む)。FY2025 の EBITDA 利益率は約 43%(Q2 2026 は 42.8%)、償却・減価償却が約 7.2 億ドル(Q2 の EBITDA 利益率と営業利益率の差から推定)。競合は業種ごとの専門ベンダーとオラクル・SAP などの汎用の大手、AI ネイティブの新興。
ネットワークソフト
貨物の取引市場 DAT・建設の入札情報コンストラクトコネクト・映像制作のファウンドリー・食品流通の iTradeNetwork・保険配信の iPipeline・教会・非営利向けのアプリと寄付のサブスプラッシュなど、取引や利用者の網で成り立つソフト。
| 数量対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 3.2% | 16 | 7 |
| 10 年後 中立 | 542 | 7.1% | 38 | 14 |
取り方:FY2025 のネットワークソフトの売上 16.01 億ドル・営業利益 6.96 億ドル(43.5%)。対象市場は貨物マッチング・建設情報・映像制作ソフト・食品流通・保険配信などで約 500 億ドルと推定、シェア約 3.2%。価格は物価並み。EBITDA 利益率は約 54%(Q2 2026 は 50.9%で前年より 3.7 ポイント下がった)、償却・減価償却は約 1.7 億ドル。貨物市況に DAT が左右される。競合は市場ごとの専門の取引市場と、映像制作などでは汎用の制作ソフト。
技術製品
水道メーターのネプチューン、医療機器のベラソンと CIVCO、計測のノーザン・デジタル、無線・RFID のイノヴォニクス・rf IDEAS など、ソフトと組み合わせた機器。
| 数量対象市場の実質規模(億ドル・FY25 価格) | 価格1 億ドルの市場あたりのローパー売上(億ドル)= シェア × 価格の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 3.0% | 18 | 6 |
| 10 年後 中立 | 731 | 5.0% | 36 | 12 |
取り方:FY2025 の技術製品の売上 18.19 億ドル・営業利益 6.27 億ドル(34.5%)。対象市場は水道のスマートメーター・医療機器・RFID・光学計測などのニッチの合計で約 600 億ドルと推定、シェア約 3.0%。価格は物価並み。EBITDA 利益率は約 36%(Q2 2026 の有機は +7% だが利益率は前年より 2.2 ポイント低下)。水道メーターは北米でネプチューン・ザイレムのセンサス・バッジャー・メーターの 3 社が約 85% を売る(バッジャー・メーターの 10-K の推定)。
リスクと懸念
AI による座席の削減と価格の下落
AI エージェントが保険・法務・学校・会計などの業務を自動化し、座席が減り、価格が成果課金へ移って下がる。応用ソフトの売上は 2025 年に 44.8 億ドル(全社の 57%)で、座席課金の割合が大きい。会社は AI 製品の収益化を 2027 年と説明しており、それまでに座席の減少が先に来れば有機の伸びが落ちる。
AI ネイティブの新興とプライベート・エクイティ
業種ごとに AI ネイティブの新興が生まれ、中核業務の記録を迂回する。買収の入札ではプライベート・エクイティと競り合い、値段が下がらなければ買収の収益率は低いまま。ローパーの強みの買収の目利きが続かなければ、有機の伸びだけでは足りない。
買収の値段と資本配分
セントラルリーチ・サブスプラッシュの買収は EBITDA の約 22 倍で、利回り約 4.5% は借り換えの金利(約 5.75%)を下回る。帳簿の ROE は 7.7% と株主の期待の収益率(8.75%)を下回る。のれんと無形資産は 2025 年末の総資産 346 億ドルの大きな部分を占め、買収が期待に届かなければ減損が出て、自己資本と利益を削る。
借金と金利
純負債は 2025 年末の 92 億ドルから 2026 年 6 月に約 110 億ドルへ増え、EBITDA の 3.4 倍(3.1 倍から上昇)。借金は借り換えのたびに約 5.75% の新しい金利になり、純利益を圧迫する。買収と自社株買いの両方を続けると、純負債の比率がさらに上がる。
利益率の低下
2026 年 Q2 はネットワークソフトの EBITDA 利益率が前年より 3.7 ポイント、技術製品が 2.2 ポイント、全体で 0.7 ポイント下がった。社内の AI 支出は 1 月から約 3 倍に増え、AI の人材の報酬(株式報酬は 2025 年に 1.7 億ドル)も増えやすい。利益率が下がれば、倍率に使う ROE も下がる。
貨物市況・水道メーター・Indicor
DAT は貨物の取引市場で、貨物市況の悪化に弱い。水道メーターは北米でネプチューン・センサス・バッジャー・メーターの 3 社が約 85% を分ける寡占だが、自治体の予算で更新が先送りされうる。Indicor の持ち分の評価益は一回きりで、2026 年の GAAP の純利益には含まれるが、筋書きからは外した。
今後の分かれ目
- 応用ソフトの有機の伸びが 2 年続けて 4% を下回り、解約や座席の減少が開示されたら
- AI が座席を削り始めた合図。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げ、応用ソフトの市場の実質を縮む側へ置き直す。
- AI 製品(ヴァータフォアのエージェントなど)の売上が 2027 年に別枠で開示され、有機を 1 ポイント以上押し上げたら
- 座席の減少を消費課金が埋めている合図。10 年の楽観・やや楽観の確率を上げ、応用ソフトの価格を物価以上で置く。
- M&A が 2027 年に年 30 億ドル以上に戻り、買収の EBITDA の倍率が 15 倍台に下がったら
- 買収の収益率が上がる合図。買収の売上の倍率(8 倍)を下げ、帳簿の ROE の伸びを上げて見直す。
- 純負債の EBITDA の倍率が 3.5 倍を超え、自社株買いが止まったら
- 還元の余地が減る合図。正味の還元を減らし、やや悲観の確率を上げる。
- ネットワークソフトと技術製品の EBITDA 利益率が 2027 年も前年を下回ったら
- 利益率の低下が一時でなく構造的な合図。中立の利益率を 1〜2 ポイント下げる。
- 景気が後退し、貨物市況と自治体の予算が同時に悪化したら
- 10 年の悲観の筋書きに近づく。悲観の確率を上げ、ならした利益で見直す。
見ておくもの
- 応用ソフト・ネットワークソフト・技術製品の有機の伸び(買収を除く)と EBITDA 利益率
- AI 製品の売上の開示、座席数・解約率・純収益維持率
- 買収の件数・金額・EBITDA の倍率、のれんの減損
- 純負債の EBITDA の倍率(3.4 倍)と Indicor 売却代金の受取
- 自社株買いの額と株数、株式報酬の額
- DAT の貨物市況と、ネプチューンの水道メーターの更新需要
- ファウンドリー・コンストラクトコネクトなど AI で置き換えやすい事業の売上
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 384 億ドルや PER 約 25 倍を見る前に、3 セグメントごとに市場の実質規模・シェア・価格(物価 10 年 1.41 倍)と EBITDA 利益率・償却を置いて利益を積み上げた。倍率は利益ベースの正当化 PER (1−g/RONIC)/(k−g)(k 8.75%=基本 8.0% + quality +0.75%、RONIC = k + 1/2 ×(帳簿の自己資本 ROE − k)、g 4.0%)の 7.5〜9 割に置き、ROE が k を下回る悲観側は 1/k が上限。10 年中立は上限 13.0 倍の 8 割の 10.4 倍。総合の差は -41%(割高)で、今の株価に寄せず式から出した値である。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 0.81 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(β は使わない)。継続課金の比率が高く景気にも強いので cycle は 0。専門ソフトの値決めは物価並みで通る一方、AI で座席課金が成果課金に移る恐れは life で見るので pricing は 0。純負債は EBITDA の 3.4 倍(92 億ドル、時価総額の 24%)で、買収と自社株買いで厚い(debt +0.5)。AI で業種別ソフトの堀が狭まる恐れ(life +0.25)。AI による座席と価格の削減・買収の収益率の低さ・貨物市況は k に重ねず、筋書き(市場・シェア・価格・利益率)と確率(やや悲観・悲観を 10 年で 42%)で表した。
同じ業種(情報技術)の AI 分析
読んだ資料
- ローパー 2025 年通期決算(SEC 8-K・2026-01-27)
- ローパー 2026 年 Q2 決算(SEC 8-K・2026-07-23)
- ローパー 2025 年 10-K(セグメントの内訳)
- ローパー 2026 年 Q2 説明会の要約(vectorshift)
- ローパー 2026 年 Q2 説明会(Nasdaq)
- ローパー 2025 年 Q4 説明会(AOL)
- セントラルリーチの買収(Behavioral Health Business)
- AMETEK による Indicor 計測事業の買収(Financier Worldwide)
- バッジャー・メーター 10-K(水道メーターの競合)
- ローパーの株価と時価総額(StockAnalysis)
- ローパーの時価総額(Macrotrends)
- ローパーの株価下落と Stifel の格下げ(Nasdaq)