結論
スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は、エヌビディアの GPU を載せた AI サーバー(ラック型・液冷)と一般サーバー・ストレージを設計・組み立てて売る会社である。2026 年 6 月期の売上は 391 億ドル(前年比 +78%)、GAAP の営業利益は 27.7 億ドル、純利益は 22.3 億ドルで、売上の約 8 割が AI サーバーと見られる。ただし売上の大半は GPU などの仕入れ値で、GAAP の粗利益率は 10.8%、次の四半期の見通しも 10.4〜10.8% と薄い。直近四半期の 17.5% は顧客・製品の構成による一時的な良さである。
売上は AI サーバー(市場 × 台数シェア × 1 台あたり売上)と一般サーバー・ストレージに分けて組んだ。中立の筋書きは、2027 年 6 月期に見通し(650〜720 億ドル)の中心に着地し、その後は AI 設備投資が 1 兆ドル前後で横ばいの消化期に入る。10 年後の中立は売上 831 億ドル・純利益 41 億ドルである。資本コストは基本 8.0% に quality 1.5%(AI 投資の山谷・薄利・外から集めた資金・信用の傷)を足した 9.5%。利益ベースの倍率は、中立で正当化 PER の上限 10.8 倍(ROE 10.6%・堀は弱い・g 4.0%)の 9.7 割の 10.5 倍で、10 年後の時価総額は約 433 億ドル。
悲観の確率は 10 年で 2 割と厚く置いた。AI 設備投資の山の後の谷(市場が山から 55% 落ちる)に加え、2024 年の監査法人 EY の辞任、2026 年 3 月の共同創業者らの起訴(会社は起訴されていない)と、独立調査が現経営陣の関与を否定したものの残る信用の傷が、薄利で信用に頼る会社の割り当て・顧客・資金を壊しうるからである。今の時価総額は強制転換優先株を含めて 251 億ドル(GAAP の純利益の約 11 倍)で、確率で加重した本質価値は 今の時価総額(251 億ドル)を約 19% 下回る。台帳の株数 613 百万株だけの時価総額 194 億ドルで測ると +4% になるが、6 月の優先株と 7 月までの普通株の増加を含まない古い値なので採らない。「やや割高」で、悲観を厚くしても安全域はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、SMCI は「10 年後も存在し、今より強い」と確信しにくい会社である。事業そのもの(AI サーバーの設計・組み立て)は需要に支えられ、10 年後も存在する可能性が高い。しかし堀は、速さと液冷の設計に限られ、価格を決める力も切り替えの費用もなく、仕入れ値のほとんどを占める GPU はエヌビディアが握る。粗利益率 10% 前後の事業は、わずかな競争や在庫評価損で利益が消える。
オーナー利益(純利益から株式報酬と運転資金の増加を引いたもの)は、純利益の約半分にとどまる(FY26 は運転資金の増加で営業キャッシュフローが −68 億ドル)。経営の資本配分は、需要の山で株式と転換優先株を発行して運転資金を賄った点は合理的だが、割安に自社株買いをして価値を作った履歴は乏しい。何より、2024 年の監査法人の辞任と 2026 年の起訴は、経営者の誠実さと内部統制という、バリュー投資がもっとも重く見る点に傷を残した。独立調査が現経営陣の関与を否定しても、予測できない事業の確信度は下げる。確率で加重した価値は今の時価総額を約 2 割下回る。統制の傷と薄利の事業のため確信度は低く、安いと言える安全域はない。
何で稼ぐ会社か
SMCI は 1993 年創業、カリフォルニア州サンノゼの会社で、サーバー・ストレージ・ラックを「ビルディング・ブロック(部品の組み合わせ)」方式で設計し、顧客の仕様に合わせて組み立てて売る。強みは、エヌビディアの新しい GPU に対応した製品を早く出す速さ、直接液冷(DLC)のラック、そして最近売り出している DCBBS(計算・ストレージ・液冷・ネットワーク・管理ソフトをまとめた「データセンターの部品群」)である。売上は 2026 年 6 月期に 391 億ドル(前年比 +78%、2024 年 6 月期の 150 億ドルの 2.6 倍)。直近の 4〜6 月期は 111 億ドルで、企業・チャネル向けが 56 億ドル(半分、前年比 +172%)、OEM 向け・大型データセンター向けが 55 億ドル(半分、前期比 −26%)だった。海外売上は 29%(前年 41%)で、米国向けが増えた。
利益の出方が特徴的で、売上の大半は GPU・メモリなどの仕入れ値であり、GAAP の粗利益率は 2026 年 6 月期で 10.8%、営業利益率は 7.1%。4〜6 月期は粗利益率が 17.5% まで跳ねたが、改善の 4 分の 3 は顧客・製品の構成によるもので、次の四半期の見通しは 10.4〜10.8% である。売上が 2 倍になっても利益は 1.5 倍にとどまりやすい薄利の事業で、利益は台数よりも粗利益率の振れで決まる。
資金面では、受注に先立って GPU を仕入れるため運転資金が重く、2026 年 6 月期の営業キャッシュフローは −68 億ドル。2026 年 6 月に普通株と 7% の強制転換優先株で費用差引後 約 56 億ドルを集め、転換社債 46.6 億ドル(2028〜2030 年満期)と合わせて資金を回す。2027 年 6 月期の売上見通しは 650〜720 億ドル、受注残は過去最高と説明している。
優良さと弱いところ
優良さを測ると、強みは速さと設計の柔軟さに限られ、価格を決める力と切り替えの費用はほとんど無い。①速さ:新しい GPU への対応と、ラック全体を工場で組んで出荷する能力(月産 6,000 ラック超、うち直接液冷 3,000 超。米国・台湾・マレーシア・オランダに拡張中)は、時期によっては他社に先行する。②粗利益率:非 GAAP で 2025 年 6 月期 11.2%、2026 年 6 月期 10.9%と薄い。仕入れの大半は GPU でエヌビディアが価格を決め、SMCI は転嫁するだけなので、営業利益率は 2023 年 6 月期の 10.7% から 2025 年 6 月期の 5.7% へ下がった。デルの AI サーバーも営業利益率は中位の 1 桁で、領域全体が薄利である。③資本効率:税引き後の営業利益率 4〜6% を、売上の約 25% の運転資金で回すので ROE は 15〜20%。堀の広い会社の 30% 超には届かない。
④経営と統制:2024 年に当時の監査法人 EY が意見を出さずに辞任し(現在は BDO)、2026 年 3 月には共同創業者らが、2024〜25 年に約 25 億ドル相当の AI サーバーを中国へ迂回させたとして起訴された(会社は起訴されていない。訴状は、監査対策に見せかけのサーバーを並べたと指摘)。取締役会の独立調査(2026 年 8 月 20 日に完了)は、現経営陣が知っていた証拠も、制限先への直接販売も、過去の財務諸表への影響も確認されなかったとしたが、関与した従業員は解雇され、輸出管理は全面的に改められた。経営者の誠実さはバリュー投資が最も重く見る点で、ここは大きく割り引いて見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
領域「ハードウェア・受託製造・電子部品・計測」のうち、SMCI が属するのは AI サーバー・ストレージの塊である。IDC によると 2026 年 1〜3 月のサーバー市場は 1,226 億ドル(前年比 +30.4%、年換算で約 4,900 億ドル)で、デルが 16.5%(203 億ドル)、SMCI が約 7.6%(93 億ドル、+128.9%)、HPE が 3.0%。鴻海・クアンタ・ウィウィンなど ODM 直販が 50.2% を占める(前年 64.1%)。TrendForce は 2026 年 9 月に、クラウド大手の受注拡大で鴻海・インベンテック・ウィウィンが伸びると見ている。
需要は供給を上回る。デルは 2026 年 5〜7 月に AI サーバーの受注を四半期で 609 億ドル積み、受注残は 950 億ドル、2027 年 1 月期の AI サーバー売上見通しは 740 億ドル(全社 1,920 億ドル)。制約はメモリ(DRAM・NAND)の不足である。SMCI も FY27 見通し 650〜720 億ドルで、AI 関連が 8 割超と説明する。業界ノートの中立(サーバー全体が 2026 年約 4,900 億ドル → 2029 年約 6,000 億ドル)は、年換算が 2026 年の 1〜3 月ですでに 4,900 億ドルに達した現実に追い抜かれており、AI の市場を 2027 年に急増させて 2029 年まで横ばいと置いた(ノートの方向は守り、水準だけ現実に合わせた)。
循環の位置は、2027 年の山へ向かう途中である。設備投資は 2026 年に 7,300〜8,050 億ドル、2027 年に 1 兆ドル前後の見方だが、投資効率が疑われると AI サーバー・メモリ・ネットワークが同時に崩れる。2009 年はサーバーが約 −20% だったが、今回の AI は集中が高く、悲観は市場の 55% 減と置いた。競争は、デルがブランドと企業向けで受注残を積み、ODM 直販がクラウド大手の自社設計を担い、SMCI は新興クラウド・企業向けの速さと液冷で挟まれた位置にいる。
資本政策と M&A
配当は無く、自社株買いも 2025 年 6 月期の 2 億ドルが最後で、2026 年 6 月期は無い。逆に 2026 年 6 月に、普通株 4,545 万株(約 12.5 億ドル)と 7% の強制転換優先株の預託証券 7,500 万口(約 37.5 億ドル、2029 年 6 月までに普通株へ自動転換。追加購入権あり)を発行し、費用差引後で 56 億ドルを集めた。転換社債 46.6 億ドル(2028〜2030 年満期)、銀行借入と合わせた有利子負債は 87 億ドル、現金は 75 億ドル。売上が見通しを大きく上回れば追加の資金が要りうると経営陣は述べている。
筋書きは会社全体の時価総額で書き、新株・優先株の転換・転換社債の希薄化を株数で割り引かない。その代わり運転資金の増加(増えた売上の 25%)を純負債に積み、還元は株式報酬を引いた正味で置く。M&A は小粒で、大型の買収で価値を壊した履歴は無い。創業者の持ち分と関連会社(Ablecom・Compuware が設計・製造の調整を担う)との取引は、10-K が開示する関連当事者で、監視の対象である。再編・買収の対象になる可能性は、起訴の経緯と薄利のため低いと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI サーバーの需要は供給を上回り、SMCI はその最前線にいる。デルの受注残が 950 億ドル、四半期の受注が 609 億ドルに達し、SMCI も FY26 に 600 億ドル超の新規受注を得て、FY27 は 650〜720 億ドルを見込む。新設の工場(米国・台湾・マレーシア・オランダ)で月産 6,000 ラックを超え、直接液冷は 3,000 ラックを超える。電力と冷却がボトルネックになるほど、液冷のラックを工場で組んで出す SMCI の価値が上がる。
粗利益率は、仕入れ値の転嫁で薄いと見られがちだが、DCBBS(部品群)・液冷・ソフトの比率が上がれば上向く。4〜6 月期は 17.5% まで上がり、その 4 分の 3 は構成の改善だった。FY27 は 650〜720 億ドルで営業利益率 5.5% でも純利益は 30 億ドル台に乗り、今の時価総額の 11 倍に当たる値段は、ならして 1 兆ドルが続く AI 設備投資の下で明らかに安い。
統制の問題は、独立調査が現経営陣の関与も制限先への直接販売も確認せず、関与者を解雇し、輸出管理を全面的に改めて決着した。会社は起訴されていない。資金の面でも、56 億ドルの増資で FY27 の目標に足りると経営陣が言っている。この見方では、AI の山が長く続き、SMCI は 2029 年に売上 800 億ドル超、純利益 40 億ドル台に達しうる。
慎重な見方
粗利益率 10% 前後の仕入れ転嫁の事業に、AI の山の需要を載せて高い評価を付けるのは危うい。2026 年 6 月期は売上が 78% 増えたのに営業キャッシュフローは −68 億ドルで、運転資金が売上の増加の半分を食った。FY27 に売上が 685 億ドルへ 75% 増えれば、同じことが起きて増資か借り入れがまた要る。4〜6 月期の 17.5% は一時的で、次の四半期は 10.4〜10.8% に戻る。
AI 設備投資が 1 兆ドルで頭打ちになれば、需要の山の後に谷が来る。2009 年はサーバーが約 −20% だったが、今回は 55% 減もありうる。その時、SMCI は在庫の評価損と顧客の発注取り消しを真っ先に受ける。ODM 直販(鴻海・クアンタ・ウィウィン)は 50% を握り、クラウド大手の自社設計への移行で SMCI の席は狭まる。デルは企業向けのブランドで受注残を 950 億ドルまで積み、SMCI の主戦場に入ってくる。
そして統制。2024 年に監査法人 EY が意見なしで辞任し、2026 年 3 月には共同創業者らが約 25 億ドル相当の AI サーバーを中国へ迂回させたとして起訴された。訴状は、監査対策に見せかけのサーバーを並べたとまで指摘する。独立調査が現経営陣の関与を否定しても、罰金・輸出許可の停止・エヌビディアの割り当て縮小の可能性は残り、薄利の会社は 1 回の事故で利益を失う。
どちらに重みを置いたか
事業の成長の強さについては強気の見方が正しく、中立でも FY27 の見通しを素直に受け入れ、2029 年に売上 692 億ドルまで置いた。しかし薄利・運転資金の重さ・統制の傷という慎重な見方の指摘は事実で、悲観とやや悲観を合わせて 10 年で 45% と、同じ領域のデル(34%)・フレックス(32%)より厚く置いた。悲観は 2 割で、AI の谷と構造負けの両方に備える。この厚さにして、利益ベースで置いた倍率(中立 10.5 倍。ROE が資本コストに近く、上限は 1÷k の近く)は今の約 11 倍の値付けに近く、確率で加重した価値は今の時価総額を約 2 割下回る(総合で約 −19%、やや割高)。ただし薄利と統制の傷のため確信度は低い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 46.50 ドル369 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 10.64 ドル84 億ドル)。 今の値に割り戻すと 25.52 ドル202 億ドル、今との差 −24.3%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 104.44 ドル829 億ドル | 20.17 ドル160 億ドル | +269.5% | +14.0% | 8.72 ドル69 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 76.33 ドル606 億ドル | 17.65 ドル140 億ドル | +178.7% | +10.8% | 16.92 ドル134 億ドル |
| 中立 | 30% | 54.63 ドル433 億ドル | 13.87 ドル110 億ドル | +103.1% | +7.3% | 20.55 ドル163 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 28.11 ドル223 億ドル | 7.56 ドル60 億ドル | +5.8% | +0.6% | 8.92 ドル71 億ドル |
| 悲観 | 20% | 10.15 ドル81 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −69.9% | −11.3% | 2.03 ドル16 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 46.50 ドル369 億ドル | 10.64 ドル84 億ドル | +69.4% | +5.4% | 57.14 ドル453 億ドル |
今の株価時価総額 33.72 ドル268 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:AI が基盤になり、液冷の優位でシェア 12% を保つ 利益 74 億ドル · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 104.44 ドル829 億ドル
AI は 10 年を通じて企業の基盤になり、AI サーバー市場は 2036 年 6 月期に 8,300 億ドル(今期の約 2.9 倍)。SMCI は液冷・ラック統合の優位でシェア 12% を保ち、AI 売上は 1,045 億ドル、全社 1,218 億ドル。ソフト・サービス・液冷の比率が上がり営業利益率は 7.4%、純利益は 74 億ドル。運転資金は先払いで軽くなり、貯まった現金で自社株買いを進める(株式報酬を引いた正味で 160 億ドル)。ガバナンスの問題も落ち着く。成熟後の倍率は、帳簿の ROE 14.8%・堀は弱いので、正当化 PER の上限 11.7 倍の 9.5 割(11.1 倍)を純利益に掛けて、時価総額 828 億ドル(今の約 3.3 倍)になる。
- AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷):数量 198(AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 53(1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む))→ 売上 1,045 億ドル・営業利益 73 億ドル。台数シェア 12.0%・営業利益率 7.0%
- 一般サーバー・ストレージ・部品:数量 48.0(出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 36(1 台あたり売上(千ドル))→ 売上 173 億ドル・営業利益 16 億ドル。営業利益率 9.5%
倍率:AI サーバーの勝ち組で居続ける筋書きでも、薄利で顧客が離れやすい。上限に近く置いた。 正当化 PER の上限は 11.7 倍(g 4.0%、RONIC 11.3%。RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(事業の ROE 14.8% − k)。堀は弱い)。その 9.5 割の 11.1 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 74.4 × 11.1 = 828 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年かけて AI が基盤になり、SMCI が液冷で優位を保つ最良の筋書き。ただし競合とハイパースケーラーの自社設計が軽く済む必要があり 7%。
やや楽観 18% やや楽観:市場は伸び、シェアは 11% で保つ 利益 56 億ドル · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 76.33 ドル606 億ドル
AI 市場は 7,550 億ドルまで伸び、SMCI は台数シェア 11%、AI 売上 863 億ドル、全社 1,018 億ドル。営業利益率は 6.6%、純利益は 56 億ドル。液冷・部品内製の優位が一部残り、エヌビディア以外の GPU(AMD など)にも対応して供給が分散する。鴻海・デルに押されても、新興クラウドと企業向けで速さの優位が続き、粗利益率は 10% 台前半を保つ。M&A は小粒にとどまり、正味の還元は 140 億ドル。成熟後の倍率は、ROE 12.9%・堀は弱いので、正当化 PER の上限 11.3 倍の 9.5 割(10.8 倍)を純利益に掛けて時価総額 606 億ドル。
- AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷):数量 171(AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 51(1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む))→ 売上 863 億ドル・営業利益 54 億ドル。台数シェア 11.0%・営業利益率 6.2%
- 一般サーバー・ストレージ・部品:数量 45.0(出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 35(1 台あたり売上(千ドル))→ 売上 155 億ドル・営業利益 14 億ドル。営業利益率 9.0%
倍率:強気寄りでも利益率は薄く、堀は弱い。上限に近く置いた。 正当化 PER の上限は 11.3 倍(g 4.0%、RONIC 10.6%。RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(事業の ROE 12.9% − k)。堀は弱い)。その 9.5 割の 10.8 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 56.2 × 10.8 = 606 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:市場の伸びは続くが、競争で利益率は 6% 台にとどまる。18%。
中立 30% 中立:市場は名目で伸び、シェアは 10%、利益率は薄いまま 利益 41 億ドル · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 54.63 ドル433 億ドル
AI 市場は 6,700 億ドル(2029 年から年 4〜5% 名目で伸びる)、SMCI は台数シェア 10%(今期 10%、FY27 は 12% 超だが、鴻海・デル・ODM 直販に徐々に押される)で AI 売上は 694 億ドル、一般サーバーは物価並みで 137 億ドル、全社 831 億ドル(FY26 の 2.1 倍、年 +7.8%)。営業利益率は 5.9%(AI 5.5%・一般 8%)、純利益は 41 億ドル。運転資金の負担が軽くなる 2030 年代は余った現金の一部を自社株買いに回す(株式報酬を引いた正味で 110 億ドル)。成熟後は帳簿の ROE 10.6% で資本コストに近く、正当化 PER の上限 10.8 倍の 9.7 割(10.5 倍)を純利益に掛けて時価総額 433 億ドル。
- AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷):数量 140(AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 50(1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む))→ 売上 694 億ドル・営業利益 38 億ドル。台数シェア 10.0%・営業利益率 5.5%
- 一般サーバー・ストレージ・部品:数量 42.0(出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 33(1 台あたり売上(千ドル))→ 売上 137 億ドル・営業利益 11 億ドル。営業利益率 8.0%
倍率:成熟後は普通の組み立てメーカーで、利益率は薄く価格を決める力も乏しい。堀が壊れる側なので最も低く置いた。 正当化 PER の上限は 10.8 倍(g 4.0%、RONIC 9.9%。RONIC = k 9.5% + 1/3 ×(事業の ROE 10.6% − k)。堀は弱い)。その 9.7 割の 10.5 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 41.3 × 10.5 = 433 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(サーバー市場 2036 年 8,800 億ドル、うち一般を除いた AI は 6,700 億ドル前後)に沿った中心の筋書き。30%。
やや悲観 25% やや悲観:自社設計・ODM 直買いに押され、シェア 7.5% 利益 22 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 28.11 ドル223 億ドル
AI 市場は 5,750 億ドルで伸びが鈍り、SMCI はハイパースケーラーの自社設計・ODM 直買いの拡大とデルの攻勢でシェア 7.5%、AI 売上 440 億ドル、全社 554 億ドル(FY26 の 1.4 倍)。AI の営業利益率は 4%、全社で 4.6%、純利益は 22 億ドル。粗利益率は 9% 台のまま価値が積み上がらず、運転資金も軽くならない。AI の需要は残るが、利益の取り分はエヌビディアと ODM に流れる。ROE は帳簿で 6.9% に落ち、資本コスト以下なので、上限は 1÷k の 10.5 倍で、その 9.5 割(10.0 倍)を置いて時価総額 223 億ドル。正味の還元は 60 億ドルにとどまる。
- AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷):数量 93.8(AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 47(1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む))→ 売上 440 億ドル・営業利益 18 億ドル。台数シェア 7.5%・営業利益率 4.0%
- 一般サーバー・ストレージ・部品:数量 38.0(出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 30(1 台あたり売上(千ドル))→ 売上 114 億ドル・営業利益 8 億ドル。営業利益率 7.0%
倍率:利益の質が落ちる筋書き。上限に近く置いた。 事業の ROE 6.9% が k 9.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 10.5 倍。その 9.5 割の 10.0 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 22.3 × 10.0 = 223 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:シェアを奪われ利益が積み上がらない、実現しやすい筋書き。25%。
悲観 20% 悲観:構造的に負け、優良ではなくなる 利益 9 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 10.15 ドル81 億ドル
構造的に負ける。ハイパースケーラーが自社設計と ODM 直買いに寄り、エヌビディアの割り当てが大手に偏り、輸出規制違反や会計の再問題で信用が戻らない。AI 市場は 4,000 億ドルにとどまり、SMCI は台数シェア 5% で AI 売上 200 億ドル、全社 281 億ドル(FY26 より小さい)。営業利益率は 3.2%、純利益は 8.5 億ドル。罰金・訴訟・在庫損で約 30 億ドルの滞留・損失を見込む。もう AI の勝ち組ではなく、普通の組み立てメーカーとして、ROE 3% で資本コスト以下。稼ぐ力は 1÷k の上限 10.5 倍の 9 割(9.5 倍)を純利益 8.5 億ドルに掛けた時価総額 80 億ドルにとどまる(自己資本に対する PBR は 0.3 倍弱)。還元はしない。
- AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷):数量 47.5(AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 42(1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む))→ 売上 200 億ドル・営業利益 5 億ドル。台数シェア 5.0%・営業利益率 2.5%
- 一般サーバー・ストレージ・部品:数量 30.0(出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア)× 価格 27(1 台あたり売上(千ドル))→ 売上 81 億ドル・営業利益 4 億ドル。営業利益率 5.0%
倍率:上限から少し下げて置いた。 事業の ROE 3.0% が k 9.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 10.5 倍。その 9 割の 9.5 倍に置いた。時価総額 = 事業の純利益 8.5 × 9.5 = 80 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の悲観は景気でなく構造負け。ハイパースケーラーの自社設計・ODM 直買い、割り当ての喪失、統制の問題の再発。薄利で信用が命の会社なので 20% と厚くした(デル・フレックスは 12・13%)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
AI サーバー(GPU を載せたラック・液冷)
エヌビディアなどの GPU を載せた AI サーバー・ラックと、直接液冷(DLC)を組み合わせた売り物。売上の大半と、利益の中心。
| 数量AI サーバーの出荷(千台、筐体換算)= 世界の AI サーバー市場 × 台数シェア | 価格1 台あたり売上(万ドル、GPU の仕入れ値を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 90.0 | 33 | 300 | 20 |
| 10 年後 中立 | 140 | 50 | 694 | 38 |
取り方:2026 年 6 月期の売上 391 億ドルのうち AI サーバーを約 300 億ドル(77%、推定。内訳は非開示で、経営陣は今後 8 割超が AI 関連になると説明)。世界の AI サーバー市場(GPU を載せたサーバーの筐体換算)を、2026 年 6 月期で約 90 万台・約 2,900 億ドルと置いた(IDC の 2026 年 1〜3 月のサーバー市場 1,226 億ドル、デルの 2026 年 1 月期の AI サーバー売上 約 250 億ドル、ODM 直販が全体の 50.2% を占めることからの逆算で推定)。SMCI は台数シェア 10%(9 万台)、1 台 33.3 万ドル(市場の平均 32.2 万ドルより高いのは液冷ラックの比率が高いため)。営業利益率は GAAP で 6.5% と置いた(全社の 7.1% から一般サーバーの 9% を差し引いて逆算。4〜6 月期の高い利益率は構成の一時的な良さで、次の四半期の粗利益率見通し 10.4〜10.8% からは 5〜6% が平常)。中立は、市場が FY27 に急増して FY29 まで横ばい、価格は物価並みに製品構成の上昇(ラック化・液冷)が乗ると置く。
一般サーバー・ストレージ・部品
GPU を載せない一般サーバー、ストレージ、サブシステム(ボード・筐体)・付属品、サービス。
| 数量出荷(万台、筐体換算)= 一般サーバー市場 × 台数シェア | 価格1 台あたり売上(千ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 40.0 | 23 | 91 | 8 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 33 | 137 | 11 |
取り方:一般サーバー・ストレージ・サブシステムなどで 91 億ドル(391 億ドルから AI の推定 300 億ドルを引いた値)。一般サーバー市場を約 2,000 億ドルと置き(IDC の年換算 約 4,900 億ドルから AI の約 2,900 億ドルを引いた値)、SMCI のシェアは約 4.5%。40 万台 × 平均 2.3 万ドル(サブシステムとストレージを含む)。営業利益率は 9%。中立は台数が年 +1%、価格はメモリ高騰の転嫁を含めて物価並み以上。
リスクと懸念
AI 設備投資の谷
クラウド大手の設備投資は 2026 年に 7,300〜8,050 億ドル、2027 年に 1 兆ドル前後の見方だが、投資効率が疑われれば AI サーバーの市場は同時に崩れる。SMCI は粗利益率が薄く、在庫の評価損と顧客の発注取り消しを真っ先に受ける。悲観では市場が山から 55% 落ちると置いた。
薄利と GPU の仕入れ・割り当て
売上の大半は GPU などの仕入れ値で、GAAP の粗利益率は 10% 前後。エヌビディアが価格と割り当てを握り、SMCI は転嫁するだけで、量の保証は公開資料では確認できない。4〜6 月期の 17.5% は構成の一時的な良さで、次の四半期の見通しは 10.4〜10.8%。営業利益率 5.5% の会社では 1 ポイントの低下が営業利益の約 2 割に当たる。
輸出規制・起訴・罰金
2026 年 3 月に共同創業者ら 3 人が、約 25 億ドル相当の AI サーバーを中国へ迂回させたとして起訴された(会社は起訴されていない)。独立調査は現経営陣の関与を否定したが、商務省による罰金・輸出許可の停止・エヌビディアの割り当て縮小の可能性は残り、上院議員は輸出許可の見直しを求める書簡を出した。
内部統制と監査
2024 年に当時の監査法人 EY が意見を出さずに辞任した。2026 年の訴状は、監査対策に見せかけのサーバーを並べたと指摘する。独立調査は過去の財務諸表への影響を確認しなかったが、再び会計の問題が出れば上場維持と資金調達に響く。財務諸表は速報値で、取締役会の見直しの結果で変わりうると会社が注意している。
競争:デル・ODM 直販・クラウド大手の自社設計
デルは AI 受注残 950 億ドル、2027 年 1 月期の AI サーバー売上見通し 740 億ドルで、SMCI の AI 売上(FY27 で 550 億ドル前後)を上回る。ODM 直販は全体の 50.2% を握り、クラウド大手の自社設計への移行が進めば SMCI の席は狭まる。鴻海・インベンテック・ウィウィンは 2026 年も伸びる見通し。
運転資金と希薄化
FY26 は売上 +171 億ドルに対し営業キャッシュフローが −68 億ドルで、運転資金が重い。6 月の増資 約 56 億ドルでも、売上が見通しを大きく上回れば追加の資金が要りうる。転換社債 46.6 億ドルと強制転換優先株(2029 年 6 月までに普通株へ)の希薄化は、株数に入れず会社全体の時価総額で書いたので、新株の発行は筋書きの還元の減額(株式報酬・増資を差し引いた正味)で表した。
顧客・メモリの供給制約
売上の半分は OEM 向け・大型データセンター向けで、前期比 −26% と振れが大きい。電力・冷却・ネットワークの整備遅れで出荷が後ろへずれる事例も経営陣が認めている。メモリ(DRAM・NAND)の不足は、デルも制約と述べるほど深く、出荷の上限と部品費の上昇の両方を通じて利益に響く。
今後の分かれ目
- FY27 の売上が 720 億ドルを超え、粗利益率が 11% 台を保ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし倍率は利益ベースの上限(1÷k の 10.5 倍の近く)で決まるので、10 年の中立は動かない。
- クラウド大手が設備投資の計画を引き下げ、デル・SMCI の AI 受注残の伸びが止まったら
- 悲観・やや悲観の確率を 5 割へ上げる。
- 商務省・司法省が SMCI に罰金・輸出許可の停止・エヌビディアの割り当て縮小を決めたら
- 悲観の確率を厚くし、AI の台数シェアを 5% 前後へ下げる。薄利の会社なので一度の処分で利益が消える。
- 取締役会の見直しの結果が財務諸表に影響し、再び監査法人が辞任したら
- 上場維持と資金調達が揺らぎ、悲観に近づく。10 年の悲観(構造負け)の確率を上げる。
- デル・ODM 直販が AI の台数シェアを広げ、SMCI の台数シェアが 8% 以下に落ちたら
- やや悲観に近づく(10 年のやや悲観はシェア 7.5%・営業利益率 4.6%)。
- DCBBS・液冷の比率が上がり、粗利益率が 13% 以上で安定したら
- 営業利益率 7% 前後の楽観に近づく。10 年の楽観の確率を上げる材料。
見ておくもの
- 売上と粗利益率(FY27 の見通し 650〜720 億ドル・Q1 の 10.4〜10.8% との差)
- 営業キャッシュフローと運転資金(現金転換期間、顧客の先払い)
- 受注残と新規受注(FY26 の 600 億ドル超)
- クラウド大手の設備投資の計画とデルの AI 受注残
- 商務省・司法省の処分、エヌビディアの割り当て、取締役会の輸出管理の改善
- 監査法人の意見と財務諸表の訂正の有無
- 転換社債・強制転換優先株の転換と追加の増資
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。10 年後の倍率は、利益ベースの正当化 PER = (1−g/RONIC)/(k−g)(k 9.50%、g 4.0%、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)、堀は弱い)の上限に対し、楽観 9.5 割・やや楽観 9.5 割・中立 9.7 割・やや悲観 9.5 割・悲観 9 割 で置いた。中立は上限 10.8 倍の 9.7 割で、事業の純利益に 10.5 倍。総合は今の時価総額に対し -19.3% で、やや割高。結論は計算の結果で、先に決めたものではない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β 1.77 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%。β は使わない。AI 投資の山谷(+0.5)、薄利で値段を決められないこと(+0.5)、転換社債と優先株で外から集めた資金(+0.25)、信用の傷による寿命の不安(+0.25)を quality で見た。事業は傾いていないので extra は置かない。統制の問題と AI の谷は、筋書きと悲観側の確率(10 年のやや悲観・悲観 45%)で表し、k には二重に足していない。
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