結論
アステラ・ラブスは、AIサーバーのGPU、CPU、メモリーを高速につなぐ半導体を設計する会社である。筆者の結論は「割高」だ。需要が急増することと、今の株主が十分な値段で買えることは別の話である。接続方式の世代交代を勝ち抜いても、今の値段には相当な成功が織り込まれている。
2025年の売上は8.5億ドルだったが、2026年4〜6月期だけで3.92億ドルに達した。7〜9月期は5.4〜5.6億ドルを見込み、新製品スコーピオのスイッチが最大の製品群になるという。これは長期的にも大きな変化だ。単に信号の劣化を防ぐ部品から、GPU同士の通信経路を束ねる中核部品へと商機が広がる。ただし第3四半期の実績発表は11月3日予定で、現時点ではガイダンスである。
堀、つまり他社が簡単に奪えない強みは、顧客の設計に早く入り、実機の互換性を検証する力にある。採用後の変更には手間がかかるが、次世代の設計で採用が続く保証はない。ブロードコム、クレド、マーベルに加え、顧客自身の専用チップや閉じた通信方式が相手になる。工場を持たず現金は厚い一方、株式報酬がオーナーの取り分を薄める。
中立では2035年の売上を約148億ドル、GAAP純利益を38.5億ドルと見込む。十分に成功した姿だが、成熟後の競争と再投資を差し引くと、確率加重した今の本質価値は台帳の時価総額を約37%下回る。10年先の成長を信じるだけでは安全域にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、AIが10年後にも要るかではなく、アステラの部品がその時も選ばれ、余分な資本を使わずに稼げるかを問う。データを速く確実に運ぶ必要は消えにくい。設計に入り込んだ部品を入れ替えるには、長い検証と不具合の責任を引き受ける覚悟がいる。この切り替え費用は本物だが、モデルチェンジのたびに試される堀でもある。
2025年の現金創出力は強かった。しかし株式報酬を費用と認めず、調整後利益や営業キャッシュフローだけで評価するのは避けたい。何より、稼いだ金をいつ株主へ返すかはまだ証明されていない。開発競争が続く間は利益を留保する意味があるが、光接続や買収に大量の資金を投じて収益が薄まれば、売上の成長だけが残る。
2035年にスコーピオが標準の一角となり、売上が現在の十数倍になっても、技術の寿命と競合を考えた資本コストを差し引く必要がある。負けたときは現金と売却できる資産が最後の防波堤になるが、事業に払われた高い期待までは守れない。筆者が長く保有したいのは優れた技術を持つ会社であって、どんな値段でも買う会社ではない。現時点の安全域は不足している。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、AIサーバーで流れる膨大なデータを、遅延や通信エラーを抑えて運ぶ半導体である。アリエスはPCIeやCXLの信号を立て直すリタイマーと能動ケーブルの部品を売る。タウラスはイーサネットの高速ケーブルや信号補正を担う。スコーピオはGPU間やサーバー内でデータの通り道を切り替えるスイッチで、レオは容量が不足するメモリーを共有・増設する制御チップである。
製品にはCOSMOSという診断・管理ソフトが組み込まれ、顧客の運用画面ではなく、半導体と一体になった性能の一部として売られる。販売先は大手クラウド企業と、その発注に従う機器・受託製造会社だ。2026年4〜6月期は売上の10%以上を占める直接顧客が4社あり、合計82%だった。発注を仲介する製造会社も含むので、その数字を最終顧客4社の比率と取り違えてはならない。
商売は新世代の設計に採用されて初めて始まる。PCIe 6から7への移行、スコーピオの320レーン化、光接続、CXLの普及が、接続点の数と1台当たり搭載金額を増やす。2026年10月には、GPUの銘柄を問わずラックを組めるオリオン構想も示した。しかし採用から量産までは長く、受注確約のない設計採用は売上と同義ではない。
会社は会計上ひとつの事業セグメントしか開示せず、製品別売上と販売個数は非開示である。後の4製品群は分析上の推定であり、公表された実績配分ではない。また売上の大半は物理的な半導体製品で、少額の設計支援収入は開示上重要性がない。人月課金、席課金、画面操作が価値の中心の商売ではなく、AIエージェント代替の指定型には該当しない。
優良さと弱いところ
最も価値があるのは、採用までに顧客と積み重ねる技術的な信用である。高速回路は、基板、ケーブル、GPU、ソフトの組み合わせで不具合が起きる。アステラは相互接続試験室を使って、実機の通信品質を確かめ、COSMOSで異常を追跡できるようにする。10-Kによれば設計採用から量産までは最長2年程度かかり、いったん採用されると後継機種でも同じ会社が有利になる。
ただし、独占的な堀ではない。リタイマーにはクレドやモンタージュ、スイッチにはブロードコムやマーベルがいる。低消費電力や接続方式が変われば、顧客は新しい設計で供給者を入れ替えられる。製品ごとの値上げ実績は開示されていない。2025年に平均販売単価が上がったのは、高価なスイッチやモジュールの比率が増したためで、既存品を一方的に値上げできた証拠ではない。
収益性は改善した。2025年のGAAP営業利益率は20.3%で、2026年4〜6月期は22.7%だった。工場を持たず研究開発へ資金を振り向けられるため、採用が続けば増分の投資効率は高い。他方、2025年の株式報酬は約1.6億ドルで、売上の2割近い。GAAPでは費用に入っているが、現金収支だけを見れば株主の負担を見落とす。
筆者は堀を「普通」と判定する。データセンター用の接続部品は10年後も必要だが、特定メーカーが同じ設計を握れる寿命はそれより短い。技術投資の収益率が資本コストを上回る局面は長くても、恒久的に独り勝ちするという保証はまだない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
AIの計算設備は、GPUの性能だけでは速くならない。数十から数百の演算装置を協調させると、データの移動とメモリーの不足が新しい壁になる。このため高速信号補正、接続スイッチ、メモリー共有の役割は広がる。2026年には学習用の巨大設備だけでなく、推論を安く大量に処理するラックにも投資が向かっている。
会社は商用のスケールアップ用スイッチ半導体市場が2030年に200億ドルへ達するとの見通しを公表した。タウラスの対応市場も2030年に40億ドル超へ広がると説明する。ただし両者は会社側の予測であり、発注保証ではない。旧来のPCIe接続市場やCXL市場とは定義が重なる。2025年の製品別市場規模と世界シェアに統一された監査済み統計はなく、後の数字は市場ごとに明示した仮説である。
競争の相手は製品により違う。アリエスにはブロードコム、クレド、モンタージュ、マイクロチップ。タウラスには高速能動ケーブルで成長するクレド。スコーピオにはブロードコムやマーベルのスイッチ、さらにエヌビディアのNVLinkのような閉じた接続網が競う。レオではCXLの普及速度と顧客の独自設計が勝敗を分ける。競合各社も製品別の売上を分離していないため、個社の正確な取り分は確認できない。
業界の数量には強い追い風があるが、循環の谷も深い。市場全体のAI計算チップは10年で約2倍に育つという業界の中立見通しがある半面、大手クラウド会社の設備投資が一斉に縮めば接続部品も同時に余る。次の変化は銅線から光への移行と、PCIeやUALinkの標準化である。標準に乗れれば顧客が増え、標準化が進みすぎれば差別化が薄れて単価が下がる。
資本政策と M&A
上場したのは2024年で、10年分の資本配分実績はまだない。2025年まで普通配当はなく、継続的な自社株買いの数字の約束も確認できない。会社は利益を研究開発、設計人員、台湾の検証施設、製品の量産準備に使っている。2026年7〜9月期の売上ガイダンスは5.4〜5.6億ドル、GAAP粗利益率約72%である。一方、2030年や2035年の利益・配当について数字の約束はない。
2025年11月に光接続技術を持つアイエックススケールを約0.31億ドルで買収した。2026年2月にはデータセンター処理技術の会社の資産などを約0.74億ドルで取得し、5月にも小規模な買収を完了した。現金と株式を使う小型買収は戦略上の筋が通るが、買収額の大半がのれんになる案件は将来の償却・減損を慎重に見る必要がある。
2025年末には約2.44百万株の未行使ワラントがあり、アマゾン系投資会社への顧客向けワラントも含まれる。加えて株式報酬の残高が大きい。株式は原則1株1議決権で、多議決権株やVIEによる取り分の断絶は見当たらないが、取締役会には未発行の優先株を発行する権限がある。予想の正味還元では、買い戻し・配当から株式報酬と増資相当を引き、株数の希薄化を二重に掛けない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スコーピオの成功はまだ始まったばかりだ。2026年4〜6月期には量産が進み、次の四半期にはアリエスを抜いて最大の製品群となる見込みである。従来はGPU1個につき信号補正部品をいくつ搭載するかという小さな商機だった。320レーンのスイッチを使ってラック全体をつなぐようになれば、演算装置1個当たりの搭載金額は大きくなる。会社は次世代スコーピオだけで演算装置1個につき1,000ドル超の商機があると説明している。
さらにアリエス7、タウラスの200G/レーン対応、レオの共有メモリー、光接続の技術がそろい始めた。顧客が部品ごとに違う会社を試す手間を省ければ、COSMOSと相互接続試験の蓄積が競争力になる。オリオンの公開設計は特定GPUへの依存を弱める試みで、顧客の専用チップが増えても商機を失わない可能性を持つ。複数の大手クラウド会社が同じ仕組みを採れば、市場全体の伸びより速くシェアを広げられる。
製造設備を自社で抱えないため、売上が増えたときの追加投資は主に設計人員と運転資金である。2035年に売上が約379億ドル、GAAP営業利益率が4割を超える未来も、技術的には否定できない。製品数が広がれば顧客1社への依存も減り、研究開発の固定費を多数の設計に分散できる。買収で得た光の設計力が自社のスイッチと結びつけば、さらに単価を押し上げる。
慎重な見方
最も危険なのは、顧客が自社の接続網を握ることである。エヌビディアにはNVLinkがあり、ブロードコムは大手クラウド会社と専用半導体を設計する。標準的な接続方式が普及しても、その標準を誰のチップで実装するかは改めて競争になる。アステラの採用実績は長い検証を通った証拠だが、次のGPU世代で再設計されれば、今ある採用の一部は価値を失う。
売上が少数の大口発注へ偏っていることも重い。2026年4〜6月期の直接顧客4社で売上の82%を占めた。製造会社経由の数字で実際の最終顧客の数は別だとしても、供給網の集中は明らかである。スコーピオが最大製品に育つほど、一つの設計案件の成功と失敗が利益を動かす。2030年の200億ドル市場予測をそのまま株主の取り分とすることはできない。AIの利用料金が設備投資を支えられなければ、出荷先の投資計画は一斉に縮む。
市場が伸びても部品の単価は保証されない。クレドは高速ケーブルで規模を拡大し、台湾や中国の供給者は価格を下げる。光化や次世代標準が進むとアリエスの既存製品が必要なくなる場合もある。2025年に1.6億ドルだった株式報酬は、競争に勝つための人件費の一部だ。現金を貯めたまま還元しなければ、少数株主の価値は帳簿ほど高くならない。
どちらに重みを置いたか
需要の成長を疑う理由は小さいが、その需要を2035年まで高い利益率で独占できる証拠はまだ弱い。2026年の製品展開は強い材料で、楽観側にも29%を残した。一方、直接顧客への依存、独自規格との競争、株式報酬を考え、やや悲観と悲観を合わせて38%とした。これは同領域のエヌビディアより慎重で、マーベルと近い。中立でも売上が大幅に伸びるため、悲観の確率は単に成長の鈍さを重ねて数えたものではない。
本質価値は約280億ドルで、比較基準の約443億ドルに対して約37%低い。事業の力は認めても、いまの値段に安全域はないという判断が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 390.71 ドル673 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 1.95 ドル3 億ドル)。 今の値に割り戻すと 162.55 ドル280 億ドル、今との差 −37.2%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,280 ドル2,206 億ドル | 46.41 ドル80 億ドル | +412.6% | +18.3% | 132.62 ドル229 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 761.66 ドル1,313 億ドル | 14.50 ドル25 億ドル | +200.0% | +11.8% | 147.47 ドル254 億ドル |
| 中立 | 33% | 330.02 ドル569 億ドル | −8.70 ドル−15 億ドル | +24.2% | +2.2% | 106.04 ドル183 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 31.17 ドル54 億ドル | −8.70 ドル−15 億ドル | −91.3% | −19.9% | 5.39 ドル9 億ドル |
| 悲観 | 14% | 11.60 ドル20 億ドル | −3.48 ドル−6 億ドル | −96.9% | −27.2% | 1.14 ドル2 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 390.71 ドル673 億ドル | 1.95 ドル3 億ドル | +51.8% | +4.3% | 392.66 ドル677 億ドル |
今の株価時価総額 258.70 ドル446 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 開かれたAIラックの主要スイッチを握る 利益 122 億ドル · PER 18.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,280 ドル2,206 億ドル
2035年にはAIの学習と推論がともに成長し、スコーピオの商用スイッチ市場は2025年価格で480億ドルまで広がる。アステラがその32%を握り、付加機能と光接続で平均搭載金額も1.45倍になる。ブロードコムやマーベルの接続製品、エヌビディアの閉じた網が残っても、複数のクラウド会社が標準方式を選ぶため、量が伸びる。
アリエスではPCIe 7以後の設計採用が続き、対象市場170億ドルの18%を取る。タウラスは1.6Tや3.2Tの能動接続が普及し、市場160億ドルの25%へ伸ばす。レオと光・特注接続は市場200億ドルの20%を得る。これらの数字はいずれも会社の確定見通しではなく、技術勝利を条件にした最大級の筋書きである。
売上は約379億ドル、GAAP営業利益は約153億ドルとなる。設計の使い回しで開発費を分散でき、買収した光技術の統合にも成功する。期間純利益は568億ドル、配当と買い戻しから株式報酬を控除した正味還元は80億ドル。設備・運転資金・技術投資に約250億ドルを回しても余剰現金が残る。株主の堀は今より広がる。
- アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品:数量 30.6(2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。)× 価格 140(同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。)→ 売上 43 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場170億ドル×シェア18%。アリエスの物理的な需要増と設計採用を反映。
- タウラス:高速イーサネット信号補正:数量 40.0(2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 138(高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。)→ 売上 55 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場160億ドル×シェア25%。クレドも成長するが高速Ethernetでシェアを獲得。
- スコーピオ:AIファブリックスイッチ:数量 154(2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 145(スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。)→ 売上 223 億ドル・営業利益 109 億ドル。商用スイッチ市場480億ドル×シェア32%。ブロードコム・マーベル・内製網を含む競合が残る。
- レオ:CXLメモリー制御・特注接続:数量 40.0(2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 145(メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。)→ 売上 58 億ドル・営業利益 20 億ドル。CXL/光/特注市場200億ドル×シェア20%。顧客2社以上の量産が成功。
倍率:事業のROE=(GAAP純利益122−余剰現金250×税後利息1.4%)÷(自己資本501.6−余剰現金250)=47.1%。堀は普通(残存割合1/2)なのでRONIC=k9.25%+(事業ROE−k)×1/2=28.2%。gは2035年以後の市場数量実質約3%、シェア年−0.5%、名目価格年+2%から4.5%とし、k−g4.75%。10年目の利益に対する正当化PER上限=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=18.49倍。顧客集中と次世代規格リスクから上限の95%で事業PER17.56倍。現金利息をGAAP純利益から除いた事業利益118.500億ドル×17.56+余剰純現金250億ドル×回収割合0.5=期末時価総額2206.08億ドル。multiple.valueの18.0826倍は純利益全体に対する表示用の実効PERであり、現金を利益倍率に二重計上していない。株式報酬はGAAP費用に含む。
確率:2030年商用スイッチ市場200億ドルという会社側の見通しを超え、2035年も実質市場が拡大してシェア32%を取るには、多くのクラウド会社が同社の開放型接続を選ぶ必要がある。技術力と2026年の量産立ち上がりから可能性はあるが、顧客内製と競争が厳しいため10%。
やや楽観 19% スコーピオが複数顧客へ広がる 利益 79 億ドル · PER 16.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 761.66 ドル1,313 億ドル
スコーピオは1社の大口案件だけで終わらず、GPUの供給元を選ばないスイッチとして数社に定着する。2035年の商用市場400億ドルの28%を取り、平均単価の指数は140まで上昇する。ブロードコムの顧客基盤は強いままだが、開かれた通信方式を好む顧客が増える。アリエスの市場は155億ドルへ広がり、その16.5%を取る。
タウラスはクレドが先行する高速ケーブルで存在感を増し、対象市場130億ドルの21%を獲得する。レオはCXLが遅れても着実に量産を積み、160億ドルの市場で16%を取る。光接続は2027年以降に出荷し、特注の設計も増える。単価の上昇は物価並みであり、現在の顧客が永遠に値上げを認めるという前提は置かない。
10年後の売上は約267億ドル、GAAP営業利益は約98億ドル。競争が残るため利益率は4割に届かない。現金の一部を買収と開発へ回しながら、期間純利益383億ドルのうち正味25億ドルを株主へ返す。事業の強さは残り、株主も成長の果実を得るが、大手顧客が取引条件を決める構造は続く。
- アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品:数量 25.6(2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。)× 価格 140(同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。)→ 売上 36 億ドル・営業利益 13 億ドル。実質市場155億ドル×シェア16.5%。2025年より供給拠点が広がる。
- タウラス:高速イーサネット信号補正:数量 27.3(2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 140(高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。)→ 売上 38 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場130億ドル×シェア21%。高速AECの複数顧客採用が必要。
- スコーピオ:AIファブリックスイッチ:数量 112(2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 140(スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。)→ 売上 157 億ドル・営業利益 71 億ドル。市場400億ドル×シェア28%。商用スイッチ市場の過半は他社が握る。
- レオ:CXLメモリー制御・特注接続:数量 25.6(2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 140(メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。)→ 売上 36 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場160億ドル×シェア16%。レオの標準品と光部品が寄与。
倍率:事業のROE=(GAAP純利益79−余剰現金160×税後利息1.4%)÷(自己資本371.6−余剰現金160)=36.3%。堀は普通(残存割合1/2)なのでRONIC=k9.25%+(事業ROE−k)×1/2=22.8%。gは2035年以後の市場数量実質約3%、シェア年−0.5%、名目価格年+2%から4.5%とし、k−g4.75%。10年目の利益に対する正当化PER上限=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=17.65倍。顧客集中と次世代規格リスクから上限の91%で事業PER16.06倍。現金利息をGAAP純利益から除いた事業利益76.760億ドル×16.06+余剰純現金160億ドル×回収割合0.5=期末時価総額1312.94億ドル。multiple.valueの16.6195倍は純利益全体に対する表示用の実効PERであり、現金を利益倍率に二重計上していない。株式報酬はGAAP費用に含む。
確率:大手2〜3社の量産だけでなく追加顧客もつかみ、2035年に商用スイッチ市場の28%を得る展開。2026年のデザインウィンと製品投入に根拠があるが、独自規格とのすみ分けは避けられないため19%。
中立 33% 接続市場は伸びるが競争で収益は平準化 利益 39 億ドル · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 330.02 ドル569 億ドル
AI用の通信路は不可欠になり、スコーピオの市場は2035年に2025年価格で290億ドルへ広がる。しかしシェアは23%にとどまる。ブロードコムの商用スイッチと、エヌビディアやクラウド大手の閉じた接続方式が併存するからだ。単価は132となり、10年間の物価上昇141には届かない。次世代の帯域が大きく増えても、同じ性能当たりでは値下げが進む。
アリエスは市場125億ドルの14%を獲得する。タウラスはクレドとの競争のなかで市場95億ドルの18%へ広がる。レオ・光・特注接続は市場90億ドルの13%で、一部のCXL案件は延期される。2026年のスコーピオ量産は成功するが、2027年以降の全ての設計採用が量産になるわけではない。大手顧客ごとの発注量は年によって揺れる。
売上は約148億ドル、GAAP営業利益率は31%強まで高まる。マーベルの成熟時を少し上回るが、ブロードコムの事業全体ほどの価格支配力はない。期間純利益約206億ドルに対し、買い戻しより株式報酬が15億ドル多く、正味還元はマイナスとなる。成長投資後に余剰現金90億ドルをためるが、株主への還元実績が弱く、その全額を本質価値にはできない。
- アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品:数量 17.5(2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。)× 価格 130(同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。)→ 売上 23 億ドル・営業利益 8 億ドル。PCIe関連市場125億ドル×シェア14%。市場拡大が主因、単価は物価未満。
- タウラス:高速イーサネット信号補正:数量 17.1(2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 128(高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。)→ 売上 22 億ドル・営業利益 7 億ドル。Ethernet補正市場95億ドル×シェア18%。クレドとの競争継続。
- スコーピオ:AIファブリックスイッチ:数量 66.7(2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 132(スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。)→ 売上 88 億ドル・営業利益 34 億ドル。商用スイッチ市場290億ドル×シェア23%。ブロードコム等との複占にはならない。
- レオ:CXLメモリー制御・特注接続:数量 11.7(2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 128(メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。)→ 売上 15 億ドル・営業利益 4 億ドル。CXL/光/特注市場90億ドル×シェア13%。開発案件の全部は量産に至らない。
倍率:事業のROE=(GAAP純利益38.5−余剰現金90×税後利息1.4%)÷(自己資本234.1−余剰現金90)=25.8%。堀は普通(残存割合1/2)なのでRONIC=k9.25%+(事業ROE−k)×1/2=17.5%。gは2035年以後の市場数量実質約3%、シェア年−0.5%、名目価格年+2%から4.5%とし、k−g4.75%。10年目の利益に対する正当化PER上限=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=16.36倍。顧客集中と次世代規格リスクから上限の86%で事業PER14.07倍。現金利息をGAAP純利益から除いた事業利益37.240億ドル×14.07+余剰純現金90億ドル×回収割合0.5=期末時価総額568.88億ドル。multiple.valueの14.7762倍は純利益全体に対する表示用の実効PERであり、現金を利益倍率に二重計上していない。株式報酬はGAAP費用に含む。
確率:2026年のガイダンスと2030年スイッチ市場の成長を認める一方、10年後には顧客の内製と競合が進むと考える。数量の長期成長と製品シェアの微増を合わせ、5筋書きで最も確率の高い33%。
やや悲観 24% スイッチは競争に埋もれ、利益率が細る 利益 6 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 31.17 ドル54 億ドル
AI設備への投資は続くが、接続部分は独占的な利益を生まない。ブロードコムの供給力とクラウド大手の独自設計が強まり、スコーピオの2035年市場160億ドルに対する取り分は12%へ落ちる。機器メーカーは標準化された部品を競わせ、単価の指数は110にとどまる。アリエスも次世代の採用が鈍り、対象市場85億ドルの9%しか取れない。
タウラスはクレドの規模と価格に押され、市場55億ドルの10%にとどまる。CXLの標準化は進むものの、レオ・特注接続の市場55億ドルでの取り分は7%となる。売上は約40億ドルで、2026年の勢いからみれば大きな失速だ。開発人員とオフィス賃料はすぐには削れず、GAAP営業利益は約6億ドルに縮む。
2026〜29年に新製品で稼いだあと、2030年以降は採用失敗と低い利益率が重なるため、期間純利益は50.6億ドルにとどまる。株式報酬と追加的な株式発行が買い戻しを15億ドル上回る。運転資金・量産設備・小型買収に累計約54億ドルを投じ、2035年末の余剰現金は23億ドルとなる。倒産はしないが、以前ほど優良な会社ではない。
- アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品:数量 7.7(2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。)× 価格 112(同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。対象市場85億ドル×シェア9%。PCIe7以後の採用を取り逃がす。
- タウラス:高速イーサネット信号補正:数量 5.5(2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 108(高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。対象市場55億ドル×シェア10%。クレド優位、単価は物価を下回る。
- スコーピオ:AIファブリックスイッチ:数量 19.2(2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 110(スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。)→ 売上 21 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場160億ドル×シェア12%。顧客の専用方式と他社製品に敗れる。
- レオ:CXLメモリー制御・特注接続:数量 3.9(2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 110(メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場55億ドル×シェア7%。CXL量産の遅れ、光接続の転換費。
倍率:競争敗北で事業ROEは9.4%と資本コスト9.25%近辺に落ちる。構造的な採用喪失のため、長期g4.5%・普通の堀から出る正当化PER11.38倍より低い事業PER8.0倍で評価する。GAAP純利益5.6から余剰現金23×税後受取利息1.4%を除くと事業純利益5.278億ドル。それに8.0倍を掛け、現金23×回収割合0.5を足して53.724億ドル。multiple.value9.5936倍は現金込みの表示用PER。利益÷k+返戻可能現金=72.0億ドル、税後の売却可能資産29億ドルのいずれも超えない。
確率:商用規格は伸びても顧客がブロードコムと自社設計を優先し、スコーピオのシェアが12%へ低下する展開。現行製品の採用基盤があるので全面的な敗北より起こりやすく、24%。
悲観 14% 接続方式の転換で主力設計を失う 利益 1 億ドル · PBR 1.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11.60 ドル20 億ドル
2030年前後に接続方式が大きく変わり、アステラは主要な次世代設計を取り逃がす。エヌビディアの閉じた網とクラウド大手の自社設計が普及し、ブロードコムが開放型市場の大半を奪う。スコーピオの商用市場は2025年価格で90億ドルに縮み、シェアは3%しか残らない。アリエスとタウラスも光への移行を取り込めず、それぞれ4%程度の取り分になる。
全社売上は約6.9億ドルまで下がり、研究開発費の固定負担で営業利益は0.37億ドルにとどまる。レオの新製品開発は赤字で、純利益の0.9億ドルも主に残った現金の受取利息が支える。買収した技術の一部は減損される。いったん高まった顧客の信用は、次の接続規格を逃すと元へ戻すのが難しい。
利益の道筋は、2026〜29年の拡大期に累計約22億ドルを稼ぐが、2030〜33年の主力製品の採用喪失による営業赤字と買収資産・在庫の減損で累計約29億ドルを失い、2034〜35年に約1億ドル回復するため、10年間のGAAP純利益累計は−6億ドルとなる。正味還元は株式報酬によって−6億ドルであり、自己資本は2025年末の13.6億ドルから増えず、2035年末も13.6億ドルにとどまる。2035年の純現金は17億ドルほど残る。時価総額20億ドルは、純現金17億ドルと処分できる売掛・在庫等の正味3億ドルの税後売却価値を床とし、将来の帳簿自己資本を機械的に高倍率で評価していない。
- アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品:数量 2.6(2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。)× 価格 92(同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場65億ドル×シェア4%。光化・自社設計で残存需要だけを供給。
- タウラス:高速イーサネット信号補正:数量 1.4(2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 90(高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場35億ドル×シェア4%。クレド等への敗北、価格指数90。
- スコーピオ:AIファブリックスイッチ:数量 2.7(2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 90(スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場90億ドル×シェア3%。主要クラウドの大口設計を失う。
- レオ:CXLメモリー制御・特注接続:数量 0.9(2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。)× 価格 92(メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場30億ドル×シェア3%。新規開発の費用を回収できない。
倍率:営業利益はわずかでGAAP純利益0.9億ドルの多くが受取利息なので、継続事業を高いPERで測らない。2035年の見積純現金17億ドルと、回収可能な売掛金・処分可能在庫などを税・清算費用控除後で純額3億ドルとした売却可能資産20億ドルを事業の床に採る。利益の資本コスト還元価値9.73億ドル+現金回収価値8.5億ドルより売却可能資産の方が大きい。10年間のGAAP純利益累計−6億ドルと正味還元−6億ドルから、2035年末自己資本は13.6億ドルとなり、今の自己資本13.6億ドルを超えない。床の時価総額20億ドルを自己資本13.6億ドルで割った表示用PBRは1.4705882353倍であり、13.6×1.4705882353=20億ドルとなる。このPBRは過去の市場倍率ではなく、純現金と売却可能資産の税後合計であるfloor_assets_okuから求めた資産価値を自己資本に対する倍率で表したものである。
確率:AI自体の消失ではなく、接続の標準・光化・顧客内製に対応できず、4事業とも大口設計を失う構造的敗北。製品の採用経験と純現金を考えて倒産は中心に置かないが、会社固有の失敗として14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
アリエス:PCIe/CXL信号補正・ケーブル部品
PCIe 5/6/7対応のリタイマー、ギアボックス、能動ケーブル用モジュール。高性能サーバーの長い通信経路で信号を復元する。
| 数量2025年価格のPCIe接続関連市場(億ドル)×当社の仮定シェア。実物の半導体数量は非開示。 | 価格同じ容量・搭載構成1単位当たりの売価指数(2025年=100)。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.1 | 100 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 17.5 | 130 | 23 | 8 |
取り方:【開示と仮説を区別】会社の2025年製品別販売数・売上は非開示。2024年S-1のABI Research予測はPCIe関連市場2023年41億ドル、2027年66億ドル。2025年を約51億ドルと補間し、その広い市場における当社取り分を仮に10%として5.1億ドル相当とする。アリエスの実際のリタイマー狭義シェア10%という意味ではない。製品群の推定売上5.1億ドルに製品単価指数100を当てたもので、営業利益1.22億ドルは公開されない共通研究開発費の仮配賦後。PCIeの世代更新で台数と製品構成は変わり、単品の価格や数量は検証不能。出典:SEC S-1/A(2024年3月)・2025年10-K・2026年8月決算。
タウラス:高速イーサネット信号補正
能動銅ケーブルのスマートモジュール、1.6T・3.2T向けリタイマーとリドライバー。競合はクレドなど。
| 数量2025年価格の高速Ethernet-AEC・信号補正市場(億ドル)×当社の仮定シェア。 | 価格高速接続ポート当たり搭載金額の指数(2025年=100)。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.4 | 100 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.1 | 128 | 22 | 7 |
取り方:【非開示・筆者試算】会社はタウラスを2024年後半から量産し、2025年末に400G製品が拡大したと説明。競合クレドの2025年度売上約4.4億ドル(ケーブル以外も含む)と製品の立ち上がりを踏まえ、2025年のAEC・スマートイーサネット補正の広い市場を14億ドル、当社取り分を10%と仮定する。クレドの全社売上をそのまま競合シェアに換算しない。2026年会社説明の2030年対応市場40億ドル超は別の将来予測。製品売上と利益の配分も外部検証不可。
スコーピオ:AIファブリックスイッチ
PCIeスイッチのP系列とGPU集団をつなぐX系列。320レーン、ソフトによる通信制御を軸に顧客固有のラックを支える。
| 数量2025年価格の商用スケールアップ/PCIe接続スイッチ市場(億ドル)×当社の仮定シェア。 | 価格スイッチ機能と搭載レーンを揃えた1単位当たり売価指数(2025年=100)。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.5 | 100 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 66.7 | 132 | 88 | 34 |
取り方:【非開示・筆者試算】会社の2025年スイッチ売上と出荷数は非開示。2026年1月に会社は商用スケールアップ・スイッチ市場2030年200億ドルと発表し、X系列は2026年に初期量産。2025年の立ち上がり期の市場を20億ドル、取り分7.5%として1.5億ドルを暫定推計した。ブロードコムやマーベルのこの狭い市場での世界シェアは非開示で、残余92.5%の帰属は算定しない。今後の売上は市場の演算装置数とラック当たり接続量、採用顧客数から増える。
レオ:CXLメモリー制御・特注接続
メモリーの拡張・共有用コントローラーとカスタム接続。2026年以降、光接続などの新事業もこちらにまとめる。
| 数量2025年価格のCXLメモリー制御・特注接続の対象市場(億ドル)×当社の仮定シェア。 | 価格メモリー制御1構成・特注接続の平均搭載単価指数(2025年=100)。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 100 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 128 | 15 | 4 |
取り方:【非開示・筆者試算】CXLの量産普及はまだ初期で、2026年第2四半期の会社説明も2027年から2社向け量産を見込む段階。2025年の実売市場を10億ドル、当社取り分を5%と仮定し、0.5億ドルを出発点とする。旧IPO時点の2027年44億ドルというCXL市場予測は採用の遅れから確定値として使わない。レオとカスタム品の営業費用は先行するため、現時点の利益はわずかな赤字と仮置きした。
リスクと懸念
AI設備投資の山が崩れる
売上はクラウド大手の設備更新に強く依存する。計算チップの出荷が伸びても、GPUを有効に使う方法が改善して新設ラックの数が減れば、接続チップの数量も減る。会社は長期発注最低量を広く確保しておらず、顧客の設備投資削減が複数年続くと、研究開発費だけが先に残って営業利益率が急落する。
設計採用の集中と顧客の交渉力
2026年第2四半期の直接顧客4社は合計82%を占めた。契約製造会社も含む数字だが、同じ最終プラットフォームに発注が集中するリスクは消えない。特定のスコーピオ案件が次世代のGPU設計から外れれば、採用から量産まで最長2年かかるため、短期に穴を埋められない。顧客による内製や有利な仕入れ価格の要求も強まる。
ブロードコム・クレドとの競争
ブロードコムとマーベルは大規模なスイッチと接続技術を持ち、クレドは高速能動ケーブルで先行している。製品の価格や市場シェアは詳細に開示されず、アステラの価格支配力を断定できない。PCIeやUALinkが共通規格になり、部品の取り替えが容易になるほど、運用の診断機能だけでは値下げを止められなくなる。
光化・規格転換・技術の寿命
銅線用リタイマーの稼ぎが増えるほど、光接続へ急速に移る場合の既存品の陳腐化が大きくなる。アイエックススケールの技術が量産に間に合えば商機を守れるが、光モジュールやスイッチを半導体の内部に取り込む設計になれば別の技術が必要だ。CXLの普及が会社の想定より遅れる可能性も残る。
TSMCと台湾の供給網
すべての集積回路の製造をTSMCに委ね、先端の封止やテストも限られた外部企業に頼る。台湾の地震や地政学上の緊張で出荷が途絶えると、顧客が急ぎの新サーバー設計を競合へ切り替えるおそれがある。TSMCの生産費用や歩留まりが悪化すれば、アステラは値上げで全部を回収できず、利益率を削られる。
株式報酬・ワラントと現金の滞留
2025年の株式報酬費用は約1.6億ドルに達し、2026年第2四半期だけでも0.64億ドルだった。顧客向けワラントが行使されれば、株主の取り分にも影響する。会社全体の時価総額と個々の株主の持ち分を混同せず、正味還元から希薄化相当を引く必要がある。多額の現金を積んで配当も買い戻しもしなければ、保有価値を額面どおりには数えにくい。
小型買収の積み重なり
2025年末の光接続技術買収に続き、2026年にはデータセンター処理技術の資産などを取得した。金額は今のところ小さいが、購入価格の多くがのれんに計上された案件もある。量産が遅れれば技術や人員を高く買ったことになり、GAAP利益の減損で価値が削られる。成長のための再投資が資本コストを下回り始めることが長期株主の警戒点だ。
今後の分かれ目
- 2026年7〜9月期のスコーピオが最大製品群となり、2027年も複数社で量産が拡大する
- 設計採用から出荷への転換が確認でき、中立からやや楽観へ確率を移す。市場シェア23%の中立仮説を上方点検する。
- 商用AIスケールアップ・スイッチ市場が2030年に200億ドルに届かない
- スコーピオの実質市場規模を引き下げる。設備投資の不足か閉じた接続網への流出かを切り分け、下振れ確率を上げる。
- アリエス7とタウラスの200G/レーン製品が主要プラットフォームへ量産採用される
- 信号補正の旧製品を光化や値下げで失う速度が遅くなり、既存市場でのシェアと単価指数の前提を上方修正する。
- レオのCXLメモリー制御が2027年に予定する大手2社で量産へ進まない
- メモリー市場の採用シェアを弱め、買収と研究開発の回収期間を長くする。やや悲観側の利益率に近づく。
- 上位4直接顧客の売上比率が80%前後から下がり、最終顧客も分散する
- 顧客交渉力と案件集中の危険が小さくなる。堀を強いとみなすには値決め実績と複数世代での継続採用も追加で確認する。
- 株式報酬比率が高止まりする一方で配当・買い戻し枠の公表がない
- 正味還元のマイナスと余剰現金の回収割合0.5を維持する。会計上の利益が増えても株主への価値移転を限定的にみる。
- 粗利益率が2四半期続けて65%を下回り、同時に研究開発費率が増える
- 製品構成の変化ではなく競争による値崩れを疑う。中立の2035年営業利益率31%強を下げ、悲観側の厚みを増す。
見ておくもの
- 2026年11月3日公表予定の第3四半期GAAP実績とスコーピオ売上首位の達成
- スコーピオXシリーズの320レーン量産顧客数と、2027年の追加顧客出荷
- アリエス7(PCIe7)の試作から量産への移行と信号補正の採用割合
- タウラスの800G・1.6T・3.2T製品の顧客別出荷動向とクレドの競合状況
- レオの2027年大手2社向け量産と、CXL共有メモリーの設計採用
- GAAP粗利益率・営業利益率、株式報酬費用率、発行済み株数
- 直接顧客集中比率と、最終顧客との採用関係の変化
- 現金・有価証券、買収に伴うのれん、一般株主への配当・買い戻し方針
- 大手クラウドのAI設備投資と、商用スイッチ市場の実績推移
倍率と資本コストの決め方
2025年財務と2026年第2四半期の開示を起点に、アリエス・タウラス・スコーピオ・レオの実質市場規模×取り分×単価指数を別々に組み立てた。会社の製品別売上は非開示なので仮説の数字を実績と誤認しない。倍率は現在の株価や同業株の市場PERから取らず、k9.25%、事業ROE、堀の残存割合2分の1、長期g4.5%から正当化PERを求め、成長の不確かさに応じて中立は上限の86%とした。余剰純現金は利息を事業利益から控除したうえで回収割合0.5で加え、株式報酬をGAAP利益に戻さない。2026年10月23日の台帳443.3億ドルと外部445.2億ドルは0.5%弱の差で、株数集計時点の違いで説明できる。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国基本8.0%+循環0.75%−値決め0.25%+借金0%+寿命0.75%=9.25%。存続危機はなくdistress上乗せはゼロ。マーベルの9.5%より小幅に低いのは無借金と組み込み済み設計の強みであり、エヌビディアの8.5%より高いのは標準支配力と顧客分散が弱いため。