結論
アプライド・マテリアルズは、半導体のウエハー上に膜を積む「成膜」、不純物を打ち込む「イオン注入」、膜を削る「エッチング」、検査・計測、先端パッケージの装置まで、ウエハー製造装置(WFE)で最も広い品ぞろえを持つ会社である。2026 年 10 月期の売上は第 4 四半期の見通しを含め約 343 億ドル、営業利益は約 112 億ドル(利益率 約 32.5%)と見る。第 3 四半期(7 月期末)の売上は 91 億ドル(前年比 +25%)で過去最高、半導体システムは前年比 +27%、DRAM(HBM のパッケージを含む)は +52%、ファウンドリ・ロジックも記録を更新した。会社は 2026 暦年の半導体システムを +30% 超に引き上げ、2028 年までに生産能力を倍にする計画を示した。
売上は「WFE 市場(実質)× シェア × 装置の価格の水準」の半導体システムと、「稼働装置の規模 × 部品・保守の値段」の AGS(サービス)、ディスプレイ他の 3 つで積んだ。10 年後は、WFE が約 2.6 倍に育つ中でシェア 18%(会社は 2030 年までに +2 ポイントを狙うが、東京エレクトロン・ラムリサーチ・中国勢との競争を引くと横ばい)、売上 670 億ドル前後で落ち着くと見る。堀は、量産ラインに入った装置が長く使われ、その後の部品・改造・保守(AGS、全社の約 2 割)が積み上がることにある。弱みは、設備投資の循環に利益が振れること、中国の国産装置にシェアを削られることである。
バリュー投資の観点では、事業の質は第一級(ROE 3 割台・実質は純現金・還元は利益の 7〜8 割)である。資本コストは、基本の 8% に設備投資の循環の分 1% を足した 9% で割り引く。倍率は利益ベースの正当化 PER(ROE 29%・堀は普通・g 4.5%)の 8 割に抑え、10 年後の中立は PER 13.5 倍前後。今の PER 47 倍・PBR 16 倍は、山の利益が続く前提を織り込んでおり、確率で加重した本質価値は今の時価総額を 5 割ほど下回る(割高)。優れた会社だが、値段が先に行っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。半導体は微細化と積層が続く限り、膜を積む・不純物を打つ・削る・検査する工程が増えるため、10 年後も事業は存在し、GAA・3D DRAM・HBM の新構造で今より強くなる可能性が高い。工程を横断して提案できる広さは堀として育つ。ただし、顧客の設備投資という財布は循環し、10 年後に中国の国産勢が成熟工程を取り切った世界では、今ほどの価格を決める力は保てない。堀は広いが、設備投資の循環と国産化で削られる余地がある。
次にオーナー利益。軽い設備で営業利益の多くが現金になり、株式報酬の費用は小さい。直近の純利益 70 億ドル(2026 年 10 月期は約 96 億ドルと見る)を今の時価総額 3,300 億ドルで割ると 2〜3%。10 年国債が 5% の世界では、その差を成長で埋める部分があまりに大きく、しかも今の利益は山に近い。
資本配分は、利益の 7〜8 割を返す姿勢は評価できる。ただし大型買収(東京エレクトロンとの統合、国際電気)は規制で止まり、割高な水準での買い戻しは価値を壊す。安全域は、悲観の筋書き(需要が 4 割減)でも純現金と AGS の安定収入が底を支える点にあるが、それでも悲観の時価総額は 360 億ドル前後(今の 9 分の 1)までしか支えない。
結論として、事業の質は優れ、予測の確実性は中程度(顧客の設備投資の持続に依存)で、資本コストは基本の 8% に循環の分 1% を足した 9% に置く。値段が先に行きすぎている時は、買わずに待つのが正しい。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。第 1 が半導体システム事業(2025 年 10 月期で売上の約 73%、208 億ドル)で、成膜(物理・化学の蒸着、原子層、銅めっき、選択成膜)、イオン注入(不純物の打ち込み。同社が強い)、エッチング(東京エレクトロン・ラムリサーチと競る)、熱処理、電子ビームとプロセス管理、先端パッケージ(HBM の積層・ハイブリッド接合)を持つ。顧客は TSMC・インテル・サムスン・SK ハイニックス・マイクロン・キオクシアと、中国の SMIC・長江存儲(YMTC)・長鑫存儲(CXMT)などである。直近の四半期は DRAM が前年比 +52%、ファウンドリ・ロジックが過去最高で、NAND は小さな土台から強く伸びた。
第 2 が AGS(Applied Global Services、約 22%、64 億ドル)で、納入済み装置の部品・消耗品、保守契約、改造、中古装置の再生を売る。接続済みのチャンバー(処理室)は約 3.7 万で、2030 年に 9 万超へ増える計画。営業利益率は約 28〜30% と安定して高く、設備投資が止まる年でも下がりにくい。2026 暦年は +20% 超、長期は年 mid-teens(1 割台半ば)の成長を会社は見込む。
第 3 が「その他」で、ディスプレイ装置(約 11 億ドル、営業利益率 22%)と、研究開発の合弁・電子ビーム関連の収入が中心である。
システムの売上は「その年の WFE 市場の金額 × 同社のシェア」で決まる。直近の四半期は、中国が半導体システムと AGS の売上の 26%(2025 年は 3 割台)に下がり、先端ファウンドリ・DRAM・パッケージが残りを占める。装置は自社の工場で組み立てるが、ウエハーの加工工場は持たないため、設備投資は売上の 1 割台前半と軽く、営業利益の多くが現金になる。研究開発は売上の約 1 割。
優良さと弱いところ
堀は 4 層ある。第 1 は材料工学の幅で、成膜・イオン注入・エッチング・熱処理・検査を 1 社で持ち、膜の素材と工程の組み合わせを顧客と一緒に最適化できる。工程が複雑になるほど(GAA、裏面給電、3D DRAM、HBM の積層)、複数の工程をまとめて提案できる同社の価値が上がる。第 2 は量産ラインへの組み込みで、顧客が工程を一度認定すると入れ替えの費用と歩留まりのリスクが大きく、装置の台数が積み上がるほど AGS の部品・保守が長期の収入になる。第 3 は顧客との共同開発で、2026 年に開く EPIC センター(シリコンバレー・最大 50 億ドル)には TSMC・インテル・サムスン・SK ハイニックス・マイクロンが参加し、装置の開発期間を縮める狙いである。第 4 は規模で、売上 340 億ドル級の研究開発の原資が競合を上回る。
結果として、営業利益率は 2021〜22 年に 30〜31%、2025 年 10 月期は 29.2%(GAAP)、直近の第 3 四半期は 33.7% と高水準にある。ROE は 2022 年の 53% から直近で 34% に下がったが、これは自己資本が積み上がったためで、事業の稼ぐ力が落ちたわけではない。純有利子負債はほぼゼロで、自己資本比率は 56%。
弱点は 3 つ。第 1 に、利益が設備投資の循環に強く依存する点(2009 年は営業赤字、2019 年は売上が 1 割強減った)。第 2 に、中国の比率が高く、輸出規制と国産化(北方華創・中微公司)の影響を最も受けやすい点。第 3 に、同じ領域のラムリサーチ(営業利益率 約 39%)や検査のケーエルエー(KLA、営業利益率 4 割台)より全社の利益率が低く、広い事業のコストを背負う点である。堀は広いが、顧客の財布に縛られる堀である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
WFE 市場は、SEMI の見通しで 2026 年に前年比 +23% の約 1,440 億ドル、2027 年に +22%、2028 年に +14% で約 2,000 億ドルと、直前の予測を大きく上方修正した。主因は AI データセンター向けの先端ロジック・DRAM・先端パッケージで、同社は WFE の成長の約 75% がこの 3 領域から生まれると主張する(2025〜2030 年)。同社自身も、2026 暦年の半導体システムを +30% 超へ引き上げた。
構造の変化は 3 つ。第 1 に、GAA・裏面給電・High-NA EUV の後工程、DRAM の 6F2 から 4F2 への移行(対象市場が 4 割超増える)、HBM のパッケージが、成膜・イオン注入・エッチングの工程数と単価を同時に押し上げる。第 2 に、対中輸出規制と国産化で、中国向けは同社の売上の 3 割台から 26% まで下がった。ただし 28nm ロジックの投資で 2026 暦年は増える見通しもある。第 3 に、増設の原資である AI の設備投資(大手 5 社で 2026 年に約 7,300 億〜8,000 億ドル)が、減価償却の負担で 2028 年以降に鈍る可能性がある。
循環の位置は「山へ向かう途中」。WFE は 2028 年ごろまで伸び、2029 年に調整が入るのが中立の置き方で、過去はメモリ投資の急停止(2019 年・2023 年)と 2009 年の −46% が谷の前例になる。競合は、成膜・エッチングで東京エレクトロンとラムリサーチ、ASML は露光で補完関係、検査・計測の KLA は同社が新たに電子ビーム・光学検査で挑む相手である。中国の北方華創・中微公司は成熟工程から広がる。会社は 2025 暦年から 2030 年までに WFE シェアを 2 ポイント超伸ばすと言うが、これは貿易ルールが今のまま固定される前提である。
資本政策と M&A
還元は厚い。2025 年 10 月期は配当 14 億ドル、自社株買い 49 億ドルで合計 63 億ドル、株数は年 2〜3% ずつ減ってきた(10 年で約 3〜4 割)。方針はフリーキャッシュフローの 80〜100% を返すことだが、直近の第 3 四半期の還元は 8.6 億ドルで、フリーキャッシュフロー 23 億ドルの 4 割弱にとどまった。能力増強(四半期に 1,500 人超の採用、EPIC センター)に回しているためで、自社株買い枠の残りは 128 億ドルある。株式報酬は 7 億ドル前後と比較的小さく、正味の還元は表の額から大きくは減らない。
買収は小さい。過去の大型案件は、2013 年に発表した東京エレクトロンとの経営統合が 2015 年に独占禁止の審査を通らず白紙になった件と、2019 年に合意した国際電気(Kokusai Electric)の買収が中国当局の承認が下りず 2021 年に断念した件で、いずれも失敗に終わった。以後は小粒の補強とベンチャーへの出資にとどまる。時価総額が 3,300 億ドルを超えるため、買収や TOB の対象になる可能性はほぼ無い。
設備投資は軽く、増設の原資は自社の現金で足りる。割高な水準での自社株買いは、バリュー投資家には価値の効率が悪い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要の質が変わった。GAA・裏面給電・3D DRAM・HBM の積層と、新しい素子構造が同時に起き、成膜・イオン注入・エッチング・パッケージの工程と単価が増える。同社は、先端ファウンドリ・ロジック、DRAM、先端パッケージの 3 領域で工程装置の首位を主張し、WFE の成長の約 75% がこの 3 領域から生まれる。第 3 四半期の DRAM は前年比 +52%、ファウンドリ・ロジックは過去最高。第 4 四半期の見通し 102.5 億ドルは前年同期比で大幅な伸びを示し、2026 暦年の半導体システムの伸びは +30% 超に上方修正された。
AGS は納入済みの装置が増えるほど伸び、景気の谷でも下がりにくい。2030 年に 120 億ドル超(年 mid-teens)の目標があり、営業利益率は会社全体の目標 40%(2030 年)に向けて 1 年 1 ポイントずつ上がる。生産能力を 2028 年までに倍にする計画は、顧客が先に数年分を発注済みであることを示す。10 年後は WFE が 3,000 億ドル超に育ち、シェアが 2 ポイント上がって 20% になれば、売上は 830 億ドル、純利益は 240 億ドルに達し、年 2〜3% の自社株買いと合わせて株主の取り分が大きく積み上がる。
慎重な見方
今の利益は循環の山に近い。WFE は 2026 年に +23%、2027 年に +22% と 2 年続けて急増しており、2009 年・2019 年・2023 年のように、メモリの投資が急に止まれば、装置売上は山から 3〜4 割落ちる。2009 年は営業赤字、2019 年は売上が 1 割強減った。今の PER 47 倍は、山の利益が続くと見ている。
中国の国産化と規制も重い。中国は直近で売上の 26% まで下がったが、北方華創・中微公司が成熟工程を埋め、先端でもシェアを伸ばす可能性がある。規制がさらに強まれば、中国向けは一段と縮む。東京エレクトロンとラムリサーチも、成膜・エッチングで同じ増設を取りにくる。検査・計測では KLA が 5 割超のシェアで利益率 4 割台の相手であり、同社の新規参入は先行投資に見合う成果が出ない恐れがある。さらに AI の設備投資が減価償却の負担で 2028 年以降に鈍れば、メモリ各社の増設が止まる。資本コスト 9% と、成熟後の倍率(利益ベースで PER 13.5 倍前後)を掛けると、利益が今の 2.5 倍になっても時価総額は今の 7 割ほどにとどまる計算になる。
どちらに重みを置いたか
強気の言う「新構造で工程と単価が増える」は 2028 年ごろまでは正しいと見て、楽観・やや楽観・中立に 68% を厚くした。倍率は利益ベースの正当化 PER(k 9%・g 4.5%・ROE 29%・堀は普通)の 8 割、13.5 倍前後に置いた。そのため中立の時価総額は今の 7 割強にとどまる。慎重な見方の勝ち所は、倍率の縮みと中国の国産化、利益率が競合より低い点である。やや悲観と悲観に 32% を置き、中立は還元を足して今の時価総額と同じ水準だが、10 年分を 9% で割り引くと届かない。確率は事業の見通しではなく、成熟後の倍率に効く。同じ領域のラムリサーチと確率の置き方を揃えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 307.42 ドル2,484 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 114.85 ドル928 億ドル)。 今の値に割り戻すと 204.50 ドル1,652 億ドル、今との差 −45.6%、 期待の年率 +1.2%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 620.71 ドル5,015 億ドル | 160.89 ドル1,300 億ドル | +108.1% | +7.6% | 93.79 ドル758 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 435.98 ドル3,523 億ドル | 142.33 ドル1,150 億ドル | +54.0% | +4.4% | 133.01 ドル1,075 億ドル |
| 中立 | 33% | 290.12 ドル2,344 億ドル | 117.57 ドル950 億ドル | +8.6% | +0.8% | 134.54 ドル1,087 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 157.75 ドル1,275 億ドル | 86.63 ドル700 億ドル | −34.9% | −4.2% | 48.88 ドル395 億ドル |
| 悲観 | 12% | 44.74 ドル362 億ドル | 55.69 ドル450 億ドル | −73.3% | −12.4% | 12.05 ドル97 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 307.42 ドル2,484 億ドル | 114.85 ドル928 億ドル | +12.4% | +1.2% | 422.27 ドル3,412 億ドル |
今の株価時価総額 375.58 ドル3,035 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 新構造が 10 年続き、WFE は 3,400 億ドル。会社の 2030 年目標も達成 利益 306 億ドル · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 620.71 ドル5,015 億ドル
2036 年 10 月期の WFE は名目 3,400 億ドル(実質 2,411 億ドル)。先端ファウンドリ・ロジックの GAA の次の世代と裏面給電、3D DRAM、先端パッケージ(HBM・ハイブリッド接合)、電子ビームと光学検査まで広がり、同社のシェアは 21.5% へ上がる(東京エレクトロンとラムの成膜・エッチングから取り、KLA の検査も一部を取る)。システム売上は 751 億ドル、AGS は稼働装置が実質 2.25 倍で 230 億ドル、合計 1,005 億ドル。営業利益率は 35%(システム 40%。会社が 2030 年に掲げる全社 40% は、ここまで届けば達成に近い)。ラム(約 39%)・KLA(約 43%)と並ぶ利益率を、広い事業のまま出せる筋書き。10 年間の正味の還元は約 1,300 億ドル。
- 半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ):数量 518(当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 751 億ドル・営業利益 300 億ドル。WFE 実質 2,411 億ドル(名目 3,400)× シェア 21.5%・価格 145・営業利益率 40%
- AGS(部品・保守・サービス契約):数量 225(稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 1.02(指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる))→ 売上 230 億ドル・営業利益 76 億ドル。稼働装置の規模 225(実質)× 値段 1.45 倍・営業利益率 33%
- ディスプレイ・その他:数量 130(出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.18(指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立))→ 売上 24 億ドル・営業利益 5 億ドル。ディスプレイ他の規模 130(実質)× 値段 1.45 倍・営業利益率 22%
倍率:正当化 PER は 18.2 倍(g 4.5%、RONIC 24.9%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 40.8% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 16.4 倍(9 割)に置いた。成膜から先端パッケージまで装置が広い堀があり、WFE が 2.4 倍に育つ最良の筋書きでも、設備投資の循環と中国の国産化は残る。上限の 9 割に置く。 g の内訳:半導体製造装置の市場は 10 年後以降も数量が実質で年 3% ほど伸びる(微細化・3D 構造・パッケージで工程が増える)× シェアの増減 ほぼ 0 × 価格は物価並みの +3.5% の差し引きで、名目の長期 g は 4.5%(structural。k 9.0% − 4.5% ≧ 3.5%)。 純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの楽観(2036 年に WFE 3,500 億ドル)に相当し、シェアが 21.5% に上がる筋書き。12% に留める。
やや楽観 23% WFE は 3,000 億ドル、シェアは 20% 利益 235 億ドル · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 435.98 ドル3,523 億ドル
2036 年 10 月期の WFE は名目 3,000 億ドル(実質 2,128 億ドル)。先端ロジックと DRAM に加え、先端パッケージで首位を保ち、同社のシェアは 20%(会社の目標どおり 2025 年から +2 ポイント強)。システム売上は 609 億ドル、AGS は 202 億ドル(会社の 2030 年目標 120 億ドル超を超えた後も、年 7〜8% で伸びる)。合計 831 億ドル、営業利益率は 33%(システム 37%)。中国は国産化で半減するが、先端メモリで補う。ラムとの差は、同社のほうが成膜・イオン注入・パッケージを含めて広く、検査の新規参入が KLA に勝つかで利益率が決まる。10 年間の正味の還元は約 1,150 億ドル。
- 半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ):数量 426(当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 609 億ドル・営業利益 225 億ドル。WFE 実質 2,128 億ドル(名目 3,000)× シェア 20.0%・価格 143・営業利益率 37%
- AGS(部品・保守・サービス契約):数量 200(稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 1.01(指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる))→ 売上 202 億ドル・営業利益 65 億ドル。稼働装置の規模 200(実質)× 値段 1.43 倍・営業利益率 32%
- ディスプレイ・その他:数量 115(出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.18(指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立))→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。ディスプレイ他の規模 115(実質)× 値段 1.43 倍・営業利益率 21%
倍率:正当化 PER は 17.6 倍(g 4.5%、RONIC 21.8%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 34.6% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.0 倍(8.5 割)に置いた。工程の複雑化で単価と台数が増える筋書き。ただし東京エレクトロン・ラムリサーチとの競争が利益率を抑える。上限の 8.5 割に置く。 g の内訳:半導体製造装置の市場は 10 年後以降も数量が実質で年 3% ほど伸びる(微細化・3D 構造・パッケージで工程が増える)× シェアの増減 ほぼ 0 × 価格は物価並みの +3.5% の差し引きで、名目の長期 g は 4.5%(structural。k 9.0% − 4.5% ≧ 3.5%)。 純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立と楽観の間(2036 年に約 3,000 億ドル)。会社の目標(シェア +2 ポイント・営業利益率 40%)が概ね達成される筋書き。
中立 33% 市場は 1.8 倍に育つが、シェアは 18% で横ばい、利益率は 30% に収れん 利益 173 億ドル · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 290.12 ドル2,344 億ドル
2036 年 10 月期の WFE は名目 2,640 億ドル(実質 1,872 億ドル、2026 年から実質で年 3% 強の伸び)。同社のシェアは、中国の国産化で一部を失いつつ、先端ロジック・DRAM・パッケージの新構造で取り戻して 18% と置く。システム売上は 475 億ドル(値段は物価並みの 141)、AGS は稼働装置が実質 1.76 倍になり 175 億ドル、ディスプレイ他 18 億ドルで合計 668 億ドル。営業利益率は 30%(システム 34%、AGS 30%)に収れんする。ラムの 34% 前後、KLA の 40% 超より低いのは、成膜・エッチングで東京エレクトロン・ラムと競り合い、イオン注入・パッケージ・検査(新規)に先行投資が要るためで、会社の 2030 年目標 40% は届かない。10 年間の正味の還元は約 950 億ドル。
- 半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ):数量 337(当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 475 億ドル・営業利益 162 億ドル。WFE 実質 1,872 億ドル(名目 2,640)× シェア 18.0%・価格 141・営業利益率 34%
- AGS(部品・保守・サービス契約):数量 176(稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.99(指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる))→ 売上 175 億ドル・営業利益 52 億ドル。稼働装置の規模 176(実質)× 値段 1.41 倍・営業利益率 30%
- ディスプレイ・その他:数量 100(出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.18(指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立))→ 売上 18 億ドル・営業利益 4 億ドル。ディスプレイ他の規模 100(実質)× 値段 1.41 倍・営業利益率 20%
倍率:正当化 PER は 16.9 倍(g 4.5%、RONIC 18.9%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 28.8% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.6 倍(8 割)に置いた。量産ラインへの組み込みと AGS の収入で堀はあるが、WFE の山と谷の振れと中国の国産化が残る。中立は上限の 8 割に置く。 g の内訳:半導体製造装置の市場は 10 年後以降も数量が実質で年 3% ほど伸びる(微細化・3D 構造・パッケージで工程が増える)× シェアの増減 ほぼ 0 × 価格は物価並みの +3.5% の差し引きで、名目の長期 g は 4.5%(structural。k 9.0% − 4.5% ≧ 3.5%)。 純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノート中立(2036 年に WFE 約 2,650 億ドル)に、シェア 18% を掛けた落としどころ。会社の目標は希望で、競合と中国勢との競争を織り込んだ。最も確率を厚くした。
やや悲観 20% 中国の国産化と投資の頭打ちで、WFE は 2,200 億ドル、シェアは 15.5% 利益 101 億ドル · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 157.75 ドル1,275 億ドル
2036 年 10 月期の WFE は名目 2,200 億ドル(実質 1,560 億ドル)で、AI 向けの増設が鈍り、メモリが再び過剰になる。中国の国産装置(北方華創・中微公司)が成熟工程から先端の一部へ広がり、同社のシェアは 15.5% まで下がり、東京エレクトロンの価格攻勢で装置の値段も 130 と物価に負ける。システム売上は 315 億ドル、利益率は 28%。AGS は稼働装置の積み上がりで 143 億ドルと下支えするが、中国の顧客が国産装置の保守へ移る。合計 472 億ドル、営業利益率は 25%。競合のラム・KLA が 30〜40% を守る中で、同社は広い事業のコストを負う。自己資本は今 204 + 利益の累計 約 855 − 還元 700 で約 360 億ドル。10 年間の正味の還元は約 700 億ドル。
- 半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ):数量 242(当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 315 億ドル・営業利益 88 億ドル。WFE 実質 1,560 億ドル(名目 2,200)× シェア 15.5%・価格 130・営業利益率 28%
- AGS(部品・保守・サービス契約):数量 150(稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.95(指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる))→ 売上 143 億ドル・営業利益 39 億ドル。稼働装置の規模 150(実質)× 値段 1.35 倍・営業利益率 27%
- ディスプレイ・その他:数量 85.0(出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.17(指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。ディスプレイ他の規模 85(実質)× 値段 1.35 倍・営業利益率 12%
倍率:正当化 PER は 16.8 倍(g 4.5%、RONIC 18.5%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 28.1% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 12.6 倍(7.5 割)に置いた。中国の国産化とメモリの投資の振れで利益率が落ち、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる筋書き。上限の 7.5 割に置く。 g の内訳:半導体製造装置の市場は 10 年後以降も数量が実質で年 3% ほど伸びる(微細化・3D 構造・パッケージで工程が増える)× シェアの増減 ほぼ 0 × 価格は物価並みの +3.5% の差し引きで、名目の長期 g は 4.5%(structural。k 9.0% − 4.5% ≧ 3.5%)。 純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノート中立より市場が小さく、シェアが 15.5% まで落ちる筋書き。中国の国産化と AI 投資の減速が重なる。
悲観 12% 構造的な敗北。国産化と微細化の停滞で、もう優良ではない 利益 37 億ドル · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 44.74 ドル362 億ドル
2036 年 10 月期の WFE は名目 1,700 億ドル(実質 1,206 億ドル)と、微細化が止まって装置の需要が伸びない。中国の国産装置が成膜・エッチング・イオン注入の中国市場を取り、世界でも価格競争が起き、同社のシェアは 12.5%、装置の値段は 115 と物価に大きく負ける。システム売上は 174 億ドル、利益率は 15%。AGS は稼働装置の置き換えが進まず 110 億ドル、合計 295 億ドル、営業利益率は 15%。もう「価格を決める優良企業」ではない。それでも純現金と AGS の収入が床になる。自己資本は 290 億ドル(今 204 + 利益の累計 約 535 − 還元 450)に減り、ROE は 13% と k をわずかに上回るだけなので、PER は式の 7.5 割の 9.8 倍で測る。10 年間の還元は約 450 億ドルに縮む。
- 半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ):数量 151(当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 174 億ドル・営業利益 26 億ドル。WFE 実質 1,206 億ドル(名目 1,700)× シェア 12.5%・価格 115・営業利益率 15%
- AGS(部品・保守・サービス契約):数量 125(稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.88(指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる))→ 売上 110 億ドル・営業利益 24 億ドル。稼働装置の規模 125(実質)× 値段 1.25 倍・営業利益率 22%
- ディスプレイ・その他:数量 70.0(出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100))× 価格 0.16(指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立))→ 売上 11 億ドル・営業利益 0 億ドル。ディスプレイ他の規模 70(実質)× 値段 1.25 倍・営業利益率 0%
倍率:正当化 PER は 13.0 倍(g 4.5%、RONIC 10.9%。RONIC は k 9.00% に、事業の ROE 12.8% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 9.8 倍(7.5 割)に置いた。需要が 4 割減り、構造的に負けた筋書き。ROE は 13% まで下がり、新しく投じる資本はほとんど稼がない。上限の 7.5 割に置く。純現金は自己資本の中にあり、この PER に含まれる。 g の内訳:半導体製造装置の市場は 10 年後以降も数量が実質で年 3% ほど伸びる(微細化・3D 構造・パッケージで工程が増える)× シェアの増減 ほぼ 0 × 価格は物価並みの +3.5% の差し引きで、名目の長期 g は 4.5%(structural。k 9.0% − 4.5% ≧ 3.5%)。 純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの悲観(中国の国産化で中国売上が半減以上、微細化が止まり単価が上がらない)。同社はシェアも単価も失う。12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
半導体システム事業(成膜・イオン注入・エッチング・検査・パッケージ)
ウエハー製造装置の新規販売。先端ファウンドリ・ロジック、DRAM、先端パッケージが主な需要。
| 数量当社の半導体システム出荷(実質の億ドル)= WFE 市場(2026 年 10 月期の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格装置の価格の水準(2026 年 10 月期=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 259 | 100 | 259 | 98 |
| 10 年後 中立 | 337 | 141 | 475 | 162 |
取り方:2026 年 10 月期の売上は、第 1〜第 3 四半期の実績と第 4 四半期の会社見通しで約 343 億ドル。半導体システムは、第 3 四半期 約 70 億ドル(前期比 +18%)と第 2 四半期 約 59 億ドルの実績から逆算し、第 1 四半期 約 50・第 4 四半期 約 80 を足して約 259 億ドルとした(第 1・第 2 四半期の事業別は未確認の推定)。WFE は SEMI で 2025 年が約 1,200 億ドル、2026 年が 1,439 億ドルなので、10 月期に合わせて約 1,400 億ドル。シェアは 259 ÷ 1,400 で約 18.5%(ASML 約 2 割・ラムリサーチ 約 12〜13%・東京エレクトロン 約 1 割強・KLA 約 1 割弱)。数量は「WFE 市場(実質の億ドル)× シェア」、価格は装置の価格の水準(rev_factor 0.01)。中立は物価並み(10 年 141)で、谷は値引きで下げる。営業利益は第 3 四半期の約 27 億ドル(利益率 38.6%)と 2025 年 10 月期の 35.7% から、利益率 37.5% と置いた。
AGS(部品・保守・サービス契約)
納入済み装置への部品・消耗品・保守契約・改造・中古装置の再生。
| 数量稼働中の装置の規模の指数(2026 年 10 月期=100) | 価格指数 1 あたりの売上(億ドル。部品・保守の値段で、中立は物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 100 | 0.71 | 71 | 21 |
| 10 年後 中立 | 176 | 0.99 | 175 | 52 |
取り方:2026 年 10 月期 約 70.5 億ドル(2025 年 10 月期 63.9 億ドルに 2026 暦年の +20% 超を当て、第 3 四半期の 18 億ドル(+22%)を踏まえた推定)。数量は稼働装置の規模の指数(2026 年=100)、1 あたり 0.705 億ドル。部品・保守の値段は物価並みに上がるのが中立(10 年 1.41 倍)。営業利益率は第 3 四半期の 30.1% から約 30% と置いた。
ディスプレイ・その他
ディスプレイ(有機 EL・液晶)用の装置と、その他の収入。
| 数量出荷規模の指数(2026 年 10 月期=100) | 価格指数 1 あたりの売上(億ドル。値段は物価並みが中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 100 | 0.13 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.18 | 18 | 4 |
取り方:ディスプレイの売上は 2025 年 10 月期で約 10.6 億ドル(営業利益 2.35 億ドル)。第 4 四半期の見通しで「その他」は四半期 約 4 億ドルと聞くので、2026 年 10 月期は 約 12.5 億ドルと置いた。営業利益率は約 20%。事業が小さく、利益全体への影響は 2% 程度。
リスクと懸念
メモリ・ファウンドリの設備投資の急停止
同社の売上は WFE の循環に連動し、2009 年(WFE −46%)は営業赤字、2019 年・2023 年(メモリ投資 −40%)も売上が落ちた。今は WFE が 2 年連続で +20% 超の山に向かっており、メモリ価格の下落や AI 設備投資の巻き戻しで増設が止まれば、システム売上は山から 3〜4 割減る。
中国の規制強化と国産化
中国は半導体システムと AGS の売上の 26%(2025 年は 3 割台)まで下がったが、規制の追加(関連会社への適用拡大など)や、北方華創・中微公司の量産認定の広がりで一段と縮む可能性がある。逆に 28nm ロジックの増設で増える見通しもあるが、国産化の方向は変わりにくい。
東京エレクトロン・ラムリサーチとの競争
成膜・エッチング・洗浄で同じ DRAM・ロジックの増設を取りにくる。新構造(原子層成膜・選択成膜・極低温エッチング)の量産認定で後れを取ると、シェアが 18% から下がる。ラムの営業利益率(約 39%)との差が示すように、同社の全社利益率は競合より低い。
検査・計測と先端パッケージへの先行投資
同社は電子ビームと光学検査で KLA の領域(光学の市場 約 70 億ドル)に挑み、先端パッケージ(HBM の積層・ハイブリッド接合)の能力も増やす。EPIC センター(最大 50 億ドル)と生産能力の倍増の費用が、利益率の上昇(会社目標 40%)を遅らせる、あるいは稼働率の低下で下げる恐れがある。
今の倍率が高すぎる
今の PER 47 倍・PBR 16 倍は、山の利益が続く前提を織り込む。同社の利益が 1.8 倍になっても、成熟後の倍率(13.5 倍前後)が当たれば時価総額は今の 7 割ほどに下がる。事業が好調でも、値段の側で損をするリスクが大きい。
顧客の集中
売上の上位は TSMC・サムスン・SK ハイニックス・マイクロン・インテル・SMIC など数社で、各社の投資計画の変更が売上に直結する。顧客は装置の価格や AGS の契約条件で値下げを求める交渉力も持ち、数社の投資計画が同時に延期されると、売上と利益率が一度に落ちる。
資本配分
自社株買いは PER 40 倍台の割高な水準でも続く可能性があり、その分は価値を押し下げる。過去の大型買収(東京エレクトロンとの統合、国際電気)は規制で頓挫しており、再び大型案件が出ても規制リスクが残る。株式報酬の希薄化も自社株買いの一部に消える。
今後の分かれ目
- SEMI・顧客が WFE の見通しを 2 回続けて下げる(2027 年の +22% が一桁に鈍る)
- 悲観・やや悲観の確率を上げる。山が 2027 年で終わる合図。
- 同社のシェアが WFE の 20% を超え、会社目標(2030 年までに +2 ポイント)の達成が見えてくる
- 10 年の楽観・やや楽観へ確率を寄せる。DRAM・先端ロジック・パッケージで新構造の追加市場を取れている証拠。
- 中国向けの売上比率が 2 割を割る、または規制が関連会社に広がる
- シェアと売上の両方に効くため、10 年のやや悲観の確率を上げる。
- 電子ビーム・光学検査が顧客の量産ラインに採用され、KLA のシェアを取り始める
- 検査・計測が新たな利益源になる合図で、10 年の営業利益率の上振れ(楽観・やや楽観)へ寄せる。
- メモリ価格(DRAM・NAND の契約価格)が 2 四半期続けて下がる
- メモリ各社の設備投資が止まる先行指標。悲観・やや悲観を厚くする。
- AGS が 2 四半期続けて前年比で減る
- 稼働装置の利用率が落ちている合図で、谷の下支えが弱くなる。悲観の床を下げる。
見ておくもの
- SEMI の WFE 見通し(四半期ごと)と、TSMC・サムスン・SK ハイニックス・マイクロンの設備投資
- 同社の受注残・半導体システム売上と AGS の前年比(会社見通し 2026 暦年 +20% 超)
- DRAM・NAND の契約価格(設備投資の先行指標)
- 中国の売上比率(26% からどこまで下がるか)と国産装置の量産認定、輸出規制の変更
- 営業利益率(第 4 四半期の粗利益率見通し 50.4% を維持し、40% 目標へ上がるか)
- 電子ビーム・光学検査の採用と、EPIC センターの稼働
倍率と資本コストの決め方
売上と利益は、半導体システム(WFE の実質 × シェア × 装置の価格)、AGS(稼働装置の規模 × 物価並みの値段)、ディスプレイ他の数量と価格で積み、ラムリサーチ・東京エレクトロン・KLA・中国勢と照らした。倍率は今の株価ではなく、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) の 7〜10 割に置いた。k = 9%(基本 8% + 循環 1%)、g は 4.5%(structural:装置の数量が 10 年先も実質で伸びる)、堀は普通。10 年の中立は ROE 29% で正当化 PER 16.9 倍、その 8 割の 13.5 倍。会社の目標(2030 年に営業利益率 40%・シェア +2 ポイント)は希望として扱い、中立に入れず楽観の側に置いた。今の PER 47 倍・PBR 16 倍には寄せていない。割高の結論は、山の利益に左右される点を差し引いても変わらなかった。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β 1.42 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.00% = 9.00%。設備投資の循環は筋書きの数量と確率で表す一方、k には循環の上乗せ 1.0% だけを入れた。個別のリスク(中国の国産化・規制・競合の参入)は k に足さず、確率と悲観の深さで表した。純現金で存続は危うくないので上乗せ 0。