結論
アナログ・デバイセズ(Analog Devices)は、センサーの信号を読み取るデジタル変換・増幅・電源・光通信用のアナログ半導体を、産業・車載・通信・消費の 10 万社超に長期で売る会社である。2025 年度(2025 年 10 月期)は売上 110 億ドル(産業 49・車載 33・消費 14・通信 14)、営業利益率 27%(買収の無形資産の償却後)。2026 年度 7-9 月期は売上 40.2 億ドル(前年比 +40%)、営業利益率 40%(償却を除く調整後で 50%)、直近 12 か月の FCF は 49 億ドル(売上の 36%)と、2023〜25 年の在庫調整の谷から急回復している。
売上は「市場(実質)× シェア × 製品の価格の水準(物価並みで 10 年 1.41 倍)」で産業・車載・通信・消費の 4 つに分けて積んだ。10 年後は売上 287 億ドル、純利益 112 億ドルとみる。通信(データセンターの電源・光)と産業(半導体テスター向けや防衛)が伸びを引っ張り、車載が数量を支える。
バリュー投資の観点では、事業の質は高く、利益率は 2022〜23 年の山を上回る。ただし資本コスト 8.0%(基本 8.0% + quality 0.0%)と、利益ベースの正当化 PER(のれん込みの帳簿の ROE 21%・RONIC 17%・堀は強い・g 4.5% で 20〜21 倍。その 8.5 割の 17〜18 倍を 10 年後の中立に置いた。純利益は償却後の GAAP)で割ると、確率で加重した本質価値は今の時価総額(2025 年度の利益に対して PER 87 倍・2026 年度の利益見込みでも約 43 倍)を 3 割強下回る(割高)。今の値段は、AI の電力需要が長く続き、高い粗利益率が保たれる未来を先に払っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。電子機器の実世界の信号を扱う限りアナログは要り、ADI の高性能・高信頼品と 10 万社超との関係は 10 年後も残る可能性が高い。データセンターと電動化という新しい需要が加わり、堀は「保たれる、少し広がる」。一方で、中国の国産化は成熟品の価格を削る。
次にオーナー利益。2026 年度の純利益は約 46 億ドル(私の推定)、FCF は直近 12 か月で 49 億ドル。償却(非現金・年約 16 億ドル)が利益を押し下げているため、FCF が純利益を上回る。株式報酬(年約 5 億ドル)を引いたオーナー利益は 45 億ドル前後と見て、今の時価総額 1,964 億ドルに対する利回りは約 2.3%、2027 年度の見込み(約 60 億ドル)でも 3% 前後で、10 年国債の 5% を下回る。
資本配分は堅い。設備投資は売上の 4〜6% と軽く、FCF を全額返すと明言し、買収も小粒(エンパワー)が中心。マキシムは高い値段で買ったが、電源・データセンターの厚みで価値を取り戻しつつある。ただし、いま売上が 4 割伸びる局面で買い戻しを増やしており、割高な値段での自社株買いにならないかが問われる。
安全域:事業は理解でき、質は高いが、資本コスト 8.0% で割ると、利益ベースの正当化 PER は 20〜21 倍(堀は強い・g 4.5%)で、中立にはその 8.5 割の 17〜18 倍を置いた。今の PER 87 倍(2025 年度の利益)も、2026 年度の利益見込みで約 43 倍も、その倍率の 2〜5 倍である。今の値段に見合うのは、やや楽観より上の筋書きだけである。
何で稼ぐ会社か
売上は、アナログ(現実世界の電圧・温度・光・動きなどを電気信号に変える、増幅する、デジタルに変換する、電源を作る)と、それに付く混合信号・RF・光通信の部品が中心で、数万品種を10 万社超に売る。1 個数ドルから数百ドルまで幅が広く、高性能・高信頼の製品が多いため単価が高く、顧客が機器に組み込むと 10〜20 年買い続ける。2021 年に買ったマキシム(Maxim Integrated)が電源・車載・データセンターの厚みを加えた。
顧客は 4 つの市場に分かれる。産業が売上の約 5 割(2026 年 7-9 月期 49%)で、半導体テスター(ATE)・計測・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケアが入る。車載が 25% で、電気自動車の電池管理(BMS)・A2B 車内音声・ADAS 用センサーが主力。通信が 16%(うちデータセンターが約 8 割)で、光モジュール用と 800V 給電の電源が急伸している。消費は 10% でスマートフォン・ウェアラブル。
製造は「ハイブリッド」で、米国・アイルランドなどの自社工場と TSMC などの外部ファウンドリを使い分け、約 6µm から 3nm まで幅広い工程に対応する。設備投資は売上の 4〜6% と TI より軽く、2023〜25 年の営業利益率の谷(2024 年度 22%)でも FCF を稼げた。2026 年度から値上げが効き始め、全面的な効果は 2027 年度 1-3 月期に出る。顧客は在庫を絞ったままで、補充の注文はまだ本格化していない。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。1 つ目は「高性能で代わりがきかない」ことである。信号を正確に測る・変換する部品は、誤差が機器の性能を決めるため、顧客は価格より性能と実績で選び、設計に入ると長く使われる。2 つ目は幅広い品種と応用の知識で、半導体テスターのメーカー、医療機器、防衛などの専門領域に深く入り込んでいる。3 つ目はハイブリッド製造と在庫の厚みで、自社と外部の両方を使えるため、需要の急増にも対応しやすく、供給の約束を守る力が評価される。
資本効率は営業利益率(償却を除く調整後)は谷の 2024 年度でも 4 割強、2026 年度 7-9 月期は 50% と TI に並ぶ。粗利益率は 2026 年度 7-9 月期の調整後で 72.5% と、値上げと稼働率でさらに上がった。ただし自己資本 338 億ドルはマキシム買収ののれんで膨らみ、帳簿上の ROE は 7〜9% と低く見える。これは事業の質の弱さではなく、買収の会計の結果である。
弱い所は 3 つ。第一に、通信(データセンター)が 1 年で売上の約 12% から 16% へ急増しており、AI 設備投資が止まれば最初に崩れる。第二に、中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した製品の価格を下げており、ADI の中国向けも産業・車載に一定ある。第三に、買収で膨らんだ償却の負担と、買収の統合(エンパワーなど)の価値が読みにくい。堀は「性能と実績で選ばれる」型で、TI の「原価で勝つ」型とは違い、価格を決める力は強いが、置き換え不能ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アナログ市場は約 790 億ドル(2025 年)で、WSTS は 2026 年にアナログ +10% を見込む。ADI の 2026 年度 7-9 月期は前年比 +40% と市場を大きく上回り、市場の伸びに、半導体テスターと防衛・航空宇宙、データセンター向けのシェア拡大と値上げが乗っている。2023〜25 年はアナログの出荷が山から 15〜20% 落ちたが、ADI は「顧客はまだ在庫を補充していない」と述べ、出荷は消費を下回ったままという。
構造の変化は 3 つ。第 1 に、AI データセンターの電力で、800V の直流給電・光回線切り替え(OCS)・高密度電源がアナログの需要を押し上げる。会社は「データセンターとエネルギーは 2030 年まで強い 2 桁成長」と述べ、2030 年の対象市場は 1 年前の 2 倍超としている。第 2 に、AI 半導体の試験の増加で、テスター向けの高性能アナログが伸びる。第 3 に、中国の国産化と米中の摩擦で、成熟したアナログ・パワーに価格の圧力がかかる。
競合は、テキサス・インスツルメンツ(TI。アナログ最大手で、自社の 300mm 工場の原価と価格で来る)、インフィニオン、STマイクロエレクトロニクス、NXP、オン・セミコンダクター、マイクロチップ、ルネサス、モノリシック・パワー(MPS。データセンター電源)、そして中国勢。ADI は高性能・高信頼の領域で価格を決められる位置にいるが、データセンターの電源では MPS・インフィニオン・TI と競り合う。循環のどこにいるかは「上り坂の前半」で、業界ノートの置き方(年 +7%)より ADI の実績は大きく上回るため、10 年の市場と ADI のシェアも少し上げて当てはめた。
資本政策と M&A
還元は配当(毎年増配で 2026 年度は約 21 億ドル)と自社株買い(2026 年度 7-9 月期は 11.6 億ドル)で、方針は長期の FCF の 100% を返すこと(配当 4〜6 割)。2025 年度は FCF 43 億ドルに対し配当 19 億・自社株買い 22 億。株式報酬で株が増える分を打ち消す買い戻しが多く、正味の還元は見かけより 1 割ほど小さい(payout_oku は正味で書いた)。
M&A は、2021 年のマキシム買収(約 210 億ドルの株式交換)で、電源・車載・データセンターの厚みと年 7 億ドル超のシナジーを得たが、のれんと無形資産が膨らみ、自己資本の 3〜4 割がのれんになった。2026 年 5 月にエンパワー(Empower Semiconductor)を約 15 億ドルの全額現金で買う発表をし、7 月に完了と報じられた。800V 給電向けの集積型電圧レギュレーターで、データセンターの電源の厚みになる。今後は電源・光・エネルギー分野で小粒の買収が続くとみる。独占禁止と中国の承認で大型は難しく、買われる側になる可能性はほぼ無い。
借金は 91 億ドル(現金等 23 億・ネット負債は EBITDA の 0.9 倍)で、借り換えで金利が約 5.75% に上がり、利払いは税引き後で 10 年後に年 1 億ドル程度増える(筋書きの営業外費用に含めた)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI の電力と光通信は始まったばかりで、利益は想定よりずっと大きくなる。2026 年度 7-9 月期の通信は前年比 +84%(光・電源は +100% 超)、データセンターは 2026 年に約 2 倍の勢いで、会社は 2030 年まで強い 2 桁成長と述べている。AI 向けの電力は主要な制約になり、100GW のデータセンター建設で 1GW あたり 10〜15 億ドルのアナログが要るとされる。800V 給電は ADI のエンパワー買収で厚みが増す。
産業は半導体テスターが AI 半導体の増産で伸び、防衛・航空宇宙も強い。顧客は在庫を絞ったまま出荷は消費を下回っており、補充が始まれば数量はさらに上がる。値上げの全面的な効果は 2027 年度 1-3 月期からで、粗利益率は 74% を超えて 2027 年度に定着する。設備投資は売上の 4〜6% で、FCF 率は 40% に届く。
TI は 300mm 工場の原価で攻めるが、ADI の高性能品は価格で選ばれず、データセンターの電源でもインフィニオンや MPS と並んで取る。10 年の市場の拡大(通信の対象市場は 2025 年比で 4 倍近く)と値上げで、売上は 400 億ドル近くに届く。
慎重な見方
売上の急増は、AI 設備投資の山と、在庫調整の戻りが重なった一度きりの面が大きい。通信は 1 年で売上の約 12% から 16% に上がったが、AI 設備投資が 1 兆ドルの水準から「投資効率が疑われる」局面に変われば、最初に崩れる。マイクロソフト・アルファベットなど大手 5 社の設備投資は 2027 年の 1 兆ドル近い見方が前提で、その山が低いほど ADI の通信の売上は減る。
産業も、テスターは AI 半導体の増産と同じ循環で動くので、山のあとの谷は深い。2024 年度の営業利益率の落ち込み(調整後 42%・GAAP 22%)は 2 年前だった。調整後の粗利益率 72.5% は過去最高で、値上げが顧客の抵抗にあえば維持できない。顧客が在庫を絞ったままというのは、需要の強さではなく、価格や景気への警戒の表れとも読める。
中国の国産アナログは成熟した産業・車載向けで価格を下げ、米中の摩擦が強まれば中国向けの売上が減る。のれんの帳簿残高も大きく、構造的に負ければ減損が出る。値段の面では、時価総額 1,964 億ドルで 2027 年度の純利益見込みの約 33 倍、FCF 利回りは約 2.5% と、10 年国債の 5% の半分で、成熟後の PER は 15〜19 倍(ADI の中立は 15〜16 倍)。利益が 2 倍になっても倍率の縮みで時価総額は今を下回る。
どちらに重みを置いたか
資本コスト 8.0% と利益ベースの正当化 PER(10 年後の中立で 20.8 倍の 8.5 割=17.7 倍)を当てはめると、10 年後に今の時価総額を上回るのは楽観・やや楽観だけで、中立は今とほぼ同じ 1,979 億ドル(還元を足せば上回る)にとどまる。確率で加重し 8.0% で割り引いた本質価値は今の 67%で、差は 3 割強の割高。事業の見通し(強気の見方の数量と価格)は変えておらず、結論は倍率で決まる。強い堀(認定の長さ)を認めて残る割合を 2/3 にしても、のれんで薄まる帳簿の ROE が上限を決める。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 380.82 ドル1,892 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 130.60 ドル649 億ドル)。 今の値に割り戻すと 265.28 ドル1,318 億ドル、今との差 −31.2%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 737.64 ドル3,664 億ドル | 201.33 ドル1,000 億ドル | +143.4% | +9.3% | 93.90 ドル466 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 538.14 ドル2,673 億ドル | 161.06 ドル800 億ドル | +81.3% | +6.1% | 153.82 ドル764 億ドル |
| 中立 | 35% | 398.40 ドル1,979 億ドル | 130.86 ドル650 億ドル | +37.2% | +3.2% | 185.24 ドル920 億ドル |
| やや悲観 | 21% | 201.00 ドル998 億ドル | 104.69 ドル520 億ドル | −20.8% | −2.3% | 64.20 ドル319 億ドル |
| 悲観 | 12% | 58.46 ドル290 億ドル | 60.40 ドル300 億ドル | −69.2% | −11.1% | 14.26 ドル71 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 380.82 ドル1,892 億ドル | 130.60 ドル649 億ドル | +32.6% | +2.9% | 511.42 ドル2,540 億ドル |
今の株価時価総額 385.76 ドル1,916 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% AI の電力が 10 年続き、アナログ最強の座を固める 利益 167 億ドル · PER 21.9 倍 · 株価時価総額 737.64 ドル3,664 億ドル
データセンターとエネルギーの対象市場は 2030 年に 2 倍超、その後も伸び、通信の対象市場は 2035 年に実質 650 億ドル(2025 年の約 4 倍)。ADI はシェア 12% で売上は通信 117 億ドル、産業は市場 実質 430 億ドル・シェア 24%・価格の水準 150 で 155 億ドル、車載は電動化で 91 億ドル。売上は約 386 億ドル、営業利益率 52%(償却後。調整後で 54%)、純利益 167 億ドル。値上げが続き、価格の水準は物価(141)を上回る。10 年間の還元は、FCF から株式報酬の分を引いて約 1,000 億ドル。TI が原価で攻めても、性能で選ばれる領域で勝ち、中国の国産品とは用途の差で分かれる。
- 産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア):数量 103(当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 150(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 155 億ドル・営業利益 87 億ドル。市場 実質 430 億ドル × シェア 24.0%・価格 150・営業利益率(償却前)56%
- 車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー):数量 63.0(当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 91 億ドル・営業利益 46 億ドル。市場 実質 360 億ドル × シェア 17.5%・価格 145・営業利益率(償却前)50%
- 通信(データセンターの電源・光、有線・無線):数量 78.0(当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 150(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 117 億ドル・営業利益 66 億ドル。市場 実質 650 億ドル × シェア 12.0%・価格 150・営業利益率(償却前)56%
- 消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ):数量 16.2(当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 23 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 実質 225 億ドル × シェア 7.2%・価格 141・営業利益率(償却前)45%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 30.8%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 30.8% − k 8.0%)= 23.2%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 23.0 倍。上限の 9.5 割の 21.9 倍に置いた:データセンター・防衛の伸びでもシェアと価格を保てる筋書きなので、強い堀の中で上側に置く。 時価総額 = 純利益 167.3 × 21.9 倍 = 3664 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの楽観(市場 10 年で約 2 倍)に当たり、AI の電力需要と電動化が長く続き、価格を決める力が保たれる場合。10% に留める。
やや楽観 22% 通信と産業が市場を上回って伸び、ADI はシェアを少し回復する 利益 135 億ドル · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 538.14 ドル2,673 億ドル
2035 年度の産業は市場 実質 415 億ドル・シェア 23%・価格の水準 145 で 138 億ドル、通信は市場 実質 540 億ドル・シェア 11.2% で 88 億ドル、車載は 83 億ドル、消費は 21 億ドル。売上は約 330 億ドル、営業利益率は償却後で 49%(調整後で 51%)、純利益は約 135 億ドル。10 年の還元は約 800 億ドル。中国の国産品は低価格帯を取るが、高性能・高信頼の領域は守り、TI・インフィニオンとの 3 強は崩れない。10 年後も堀は残り、広がりも狭まりもしない。
- 産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア):数量 95.5(当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 138 億ドル・営業利益 75 億ドル。市場 実質 415 億ドル × シェア 23.0%・価格 145・営業利益率(償却前)54%
- 車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー):数量 58.0(当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 143(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 83 億ドル・営業利益 40 億ドル。市場 実質 345 億ドル × シェア 16.8%・価格 143・営業利益率(償却前)48%
- 通信(データセンターの電源・光、有線・無線):数量 60.5(当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 145(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 88 億ドル・営業利益 46 億ドル。市場 実質 540 億ドル × シェア 11.2%・価格 145・営業利益率(償却前)52%
- 消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ):数量 15.0(当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 21 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 実質 220 億ドル × シェア 6.8%・価格 141・営業利益率(償却前)43%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 25.3%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 25.3% − k 8.0%)= 19.5%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 22.0 倍。上限の 9 割の 19.8 倍に置いた:強気寄りだが、中国の成熟ノードの価格競争が残るので少し控える。 時価総額 = 純利益 135 × 19.8 倍 = 2673 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立〜楽観の間。データセンター・テスターが市場を押し上げ、ADI が性能の優位でシェアを少し戻す筋。
中立 35% 市場は伸びるが、価格競争で利益率は山の水準より下に落ち着く 利益 112 億ドル · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 398.40 ドル1,979 億ドル
2035 年度の産業は市場 実質 400 億ドル・シェア 21.5%・価格の水準 141 で 121 億ドル、車載は市場 実質 330 億ドル・シェア 16% で 74 億ドル、通信は市場 実質 480 億ドル・シェア 10.5% で 71 億ドル(データセンターの伸びは 2030 年以降に落ち着く)、消費は約 20 億ドル。売上は約 287 億ドル(2025 年度から年 10%、2026 年度の見込みからは年 7%)。営業利益率は償却後で 46%(調整後で 49%。2026 年度の山より下)。純利益は約 112 億ドル。10 年の還元は約 650 億ドル。「性能で選ばれる会社」の性格は保たれるが、成熟品では価格を落とす。
- 産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア):数量 86.0(当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 121 億ドル・営業利益 63 億ドル。市場 実質 400 億ドル × シェア 21.5%・価格 141・営業利益率(償却前)52%
- 車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー):数量 52.8(当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 74 億ドル・営業利益 34 億ドル。市場 実質 330 億ドル × シェア 16.0%・価格 141・営業利益率(償却前)46%
- 通信(データセンターの電源・光、有線・無線):数量 50.4(当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 71 億ドル・営業利益 36 億ドル。市場 実質 480 億ドル × シェア 10.5%・価格 141・営業利益率(償却前)50%
- 消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ):数量 14.0(当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 141(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 20 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 実質 215 億ドル × シェア 6.5%・価格 141・営業利益率(償却前)42%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 20.9%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 20.9% − k 8.0%)= 16.6%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 20.8 倍。上限の 8.5 割の 17.7 倍に置いた:産業・車載の回復と価格を保つ前提だが、山の利益率を含み、10 年の価格競争も見て控えめに置く。 時価総額 = 純利益 111.8 × 17.7 倍 = 1979 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(市場 1.6 倍・車載が数量を支え、中国の国産品が価格を削る)と、データセンター・テスターの上積みを合わせた最も確からしい筋として、最大の確率にした。
やや悲観 21% 中国の国産化と AI の一服で、価格とシェアが下がる 利益 64 億ドル · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 201.00 ドル998 億ドル
中国の国産アナログ(士蘭微・杰華特など)が成熟した産業・車載の製品を押し下げ、データセンターの電源・光は MPS・インフィニオン・TI・中国勢が増えて ADI のシェアが低下する。2035 年度の産業はシェア 19.5%・価格の水準 130(物価に負ける)、通信はシェア 8% に下がる。売上は約 214 億ドル、営業利益率は償却後で 39%。純利益は約 64 億ドル(純負債の利払い後)。10 年の還元は約 520 億ドル。「価格を決める会社」としての評価は弱まる。TI との競争では、性能の差が縮み、価格競争に引き込まれる。
- 産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア):数量 75.1(当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 98 億ドル・営業利益 45 億ドル。市場 実質 385 億ドル × シェア 19.5%・価格 130・営業利益率(償却前)46%
- 車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー):数量 44.9(当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 58 億ドル・営業利益 23 億ドル。市場 実質 310 億ドル × シェア 14.5%・価格 130・営業利益率(償却前)40%
- 通信(データセンターの電源・光、有線・無線):数量 33.6(当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 44 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場 実質 420 億ドル × シェア 8.0%・価格 130・営業利益率(償却前)42%
- 消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ):数量 11.0(当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 130(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 14 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 200 億ドル × シェア 5.5%・価格 130・営業利益率(償却前)35%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 17.3%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 17.3% − k 8.0%)= 14.2%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 19.5 倍。上限の 8 割の 15.6 倍に置いた:中国勢の値下げと稼働率の低下で利益の質が落ち、利益率も戻りきらない。 時価総額 = 純利益 64 × 15.6 倍 = 998 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:中国の国産化が成熟品を押し下げ、データセンターの競争が激しくなる筋。慎重な見方の中心で 21% を置く。
悲観 12% 構造的な敗北:AI の山が崩れ、価格の優位が失われる 利益 26 億ドル · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 58.46 ドル290 億ドル
AI の電力需要が想定を下回り、中国の国産品が産業・車載の価格を崩す。2035 年度の産業はシェア 16%・価格の水準 115(物価に大きく負ける)で 66 億ドル、車載 42 億ドル、通信 19 億ドル。売上は約 136 億ドル、営業利益率 25%(償却後)。純利益は約 26 億ドル(純負債の利払い後)。マキシムののれんの一部を減損する恐れがあるが、帳簿だけで現金は減らない。倍率は ROE が k に近いので正当化 PER の下限寄りに置き(上限の 84%)、純負債の分は実効の倍率に含む。もう「価格を決める優良企業」ではなく、配当は守るが自社株買いは止める。
- 産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア):数量 57.6(当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 66 億ドル・営業利益 24 億ドル。市場 実質 360 億ドル × シェア 16.0%・価格 115・営業利益率(償却前)36%
- 車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー):数量 36.2(当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 42 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 実質 290 億ドル × シェア 12.5%・価格 115・営業利益率(償却前)28%
- 通信(データセンターの電源・光、有線・無線):数量 16.5(当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 19 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 実質 300 億ドル × シェア 5.5%・価格 115・営業利益率(償却前)28%
- 消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ):数量 8.1(当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア)× 価格 115(製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 実質 180 億ドル × シェア 4.5%・価格 115・営業利益率(償却前)20%
倍率:正当化 PER:事業の ROE 8.8%(帳簿の自己資本に対する純利益)、RONIC = k 8.0% + 2/3 ×(ROE 8.8% − k 8.0%)= 8.5%(moat=強い)、g = 4.5%(structural)で (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.5 倍。上限の 8.4 割の 11.3 倍に置いた:もう優良ではなく、ROE が k に近いので正当化 PER は下限寄り。上限の 84% に抑え、純利益 ÷ k(321 億ドル)を超えない。 時価総額 = 純利益 25.7 × 11.3 倍 = 290 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの悲観(10 年・構造:中国の国産アナログが価格を 30% 押し下げ、中国売上を失う)。通信の急伸が反転する場合の落ち込みも加わる。12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
産業(計測・半導体テスター・オートメーション・航空宇宙と防衛・ヘルスケア)
高精度の信号変換・増幅・電源を、半導体テスターや工場・防衛・医療機器に売る。ADI の最大の市場。
| 数量当社の産業向け出荷(実質の億ドル)= 産業向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 49.3 | 100 | 49 | 23 |
| 10 年後 中立 | 86.0 | 141 | 121 | 63 |
取り方:2025 年度の産業売上は 49.3 億ドル(前年比 +15%)。産業向けの対象市場(アナログ・混合信号・テスター向けなど)を約 300 億ドルと推定し、当社シェアは約 16.4%。2025 年度は顧客が在庫を絞り、シェアは出荷ベースで低く出ていた。2026 年度 7-9 月期は前年比 +53% で、年換算で 80 億ドル近い。価格は製品の水準(2025 年度=100)で、中立は物価並み(10 年 141)。営業利益は開示が無いため、償却を除く利益率 46% と推定した。
車載(電池管理・車内音声・ADAS 用センサー)
電気自動車の電池管理(BMS)、A2B の車内音声、運転支援のレーダー・センサー向け部品。
| 数量当社の車載向け出荷(実質の億ドル)= 車載向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.8 | 100 | 33 | 13 |
| 10 年後 中立 | 52.8 | 141 | 74 | 34 |
取り方:2025 年度の車載売上は 32.8 億ドル(前年比 +16%)。車載向けの対象市場を約 215 億ドルと推定し、当社シェアは約 15.3%(TI・インフィニオン・NXP・オン・セミが競合)。電動化・ADAS で 1 台あたりの量が増える。2026 年度 7-9 月期は前年比 +16%。価格は物価並みが基本。営業利益は償却を除く利益率 41% と推定した。
通信(データセンターの電源・光、有線・無線)
AI データセンターの光モジュール・光回線切り替え・800V 給電の電源と、有線・無線通信の部品。急伸中。
| 数量当社の通信向け出荷(実質の億ドル)= 通信・データセンター向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.8 | 100 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 50.4 | 141 | 71 | 36 |
取り方:2025 年度の通信売上は 13.8 億ドル(前年比 +26%)。通信・データセンター向けの対象市場を約 165 億ドルと推定し、当社シェアは約 8.4%。2026 年度 7-9 月期は前年比 +84%(うちデータセンターが約 8 割)で、年換算で 26 億ドル。会社は 2030 年のデータセンターとエネルギーの対象市場が 1 年前の 2 倍超に増えたと述べており、10 年は市場の拡大を大きく置いた。価格は物価並みが基本。営業利益は償却を除く利益率 38% と推定した。
消費(スマートフォン・ウェアラブル・高級オーディオ)
高級スマートフォンのカメラ・音声・電源、ウェアラブル向けの部品。
| 数量当社の消費向け出荷(実質の億ドル)= 消費向けの対象市場(2025 年度の値段で測った実質の億ドル)× 当社シェア | 価格製品の価格の水準(2025 年度=100。中立は物価並みで 10 年 141) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 14.3 | 100 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 141 | 20 | 8 |
取り方:2025 年度の消費売上は 14.3 億ドル(前年比 +19%)。消費向けの対象市場を約 200 億ドルと推定し、当社シェアは約 7.2%(クアルコム・スカイワークス・TI などが競合)。2026 年のスマートフォン出荷は IDC が −13%(メモリ高騰)で、市場は伸びない。2026 年度 7-9 月期は前年比 +6%。価格は物価並み。営業利益は償却を除く利益率 38% と推定した。
リスクと懸念
AI 設備投資の山と通信の急増
通信は 1 年で売上の約 12% から 16% に上がり、前年比 +84%。大手 5 社の設備投資が 2027 年の 1 兆ドル近い見方に届かない、あるいは投資効率が疑われると、最初に崩れる。利益率の高い光・電源が減ると、全社の営業利益率が数ポイント下がる。
粗利益率が過去最高で、値上げの持続力に不安
調整後の粗利益率は 72.5% と過去最高で、10-12 月期は 74% の見通し。値上げと稼働率の改善で上がったが、会社自身が「稼働率だけでの上積みはもう小さい」と述べている。顧客が値上げに抵抗し、在庫を絞り続ければ、利益率は戻る。
産業・半導体テスター需要の山
産業は 2026 年度 7-9 月期に +53% と急伸し、AI 半導体の試験の増加(テスター向け)が大きい。テスターは AI 半導体の増産と同じ循環で動き、山のあとの谷は深い。顧客の在庫補充が起きないまま、受注だけが山になっている可能性もある。
中国の国産アナログとの価格競争
士蘭微・杰華特などが成熟した産業・車載向けの価格を下げており、米中の摩擦が強まれば中国向けの売上が直接減る。値上げは顧客を国産品へ向かわせる動機にもなる。ADI は高性能領域が中心で TI より影響は小さいが、無風ではない。
のれんと償却の重さ、買収の統合
マキシム買収ののれん・無形資産が自己資本の 3〜4 割を占め、構造的に負ければ減損が出る。エンパワー(約 15 億ドル)などの買収が価値を生むかは、データセンターの 800V 電源の採用の速さで決まる。
高い倍率が先に織り込まれている
今の時価総額は 2025 年度の利益に対して PER 87 倍、2026 年度の利益見込みで約 43 倍、2027 年度で約 33 倍。資本コスト 8.0% を当てはめると、利益ベースの正当化 PER は 20〜21 倍(中立は 17〜18 倍)で、利益が計画どおり伸びても、倍率の縮みで時価総額は今を下回る可能性が高い。
今後の分かれ目
- データセンター向けの売上が 2 倍の勢いを保ち、2027 年度も +50% 超が続く
- 楽観へ確率を寄せ、通信の市場とシェアの置き方を上げる。ただし AI 設備投資の山の高さを同時に確認する。
- 調整後の粗利益率が 74% を超えて定着し、顧客の在庫補充が始まる
- 営業利益率の置き方を上げ、楽観寄りへ確率を寄せる。数量と価格の両方が効いている証拠になる。
- 大手のクラウド企業が設備投資の計画を引き下げる
- 通信と産業(テスター)の置き方を下げ、10 年の悲観寄りに確率を寄せる。倍率の縮みと利益の減少が重なる。
- ブックトゥビルが 1 を割り、チャネルの在庫が 7 週を超える
- 産業・車載の補充の終わりと見て、10 年の慎重な筋書きの確率を引き上げる。
- 中国向けの売上比率が上がる、または国産品が産業・車載の高性能品に入る
- 10 年の慎重・悲観の確率を引き上げる。価格を決める力が失われる兆し。
- エンパワーの電源が主要なクラウド・AI 半導体メーカーに採用される
- 通信のシェアの置き方を上げる。800V 給電が数量を押し上げ、成長が景気の循環から構造へ移る。
見ておくもの
- 通信(データセンター)・産業の売上の伸びと、ブックトゥビル(四半期の決算ごと)
- 調整後の粗利益率と営業利益率(値上げの効果と稼働率)
- 顧客の在庫とチャネルの在庫の週数
- 大手のクラウド企業の設備投資の計画
- 中国向けの売上比率と国産アナログの価格
- エンパワーなど電源の採用の進み具合
倍率と資本コストの決め方
売上は産業・車載・通信・消費の 4 事業を「市場(実質)× シェア × 製品の価格の水準」で積み、TI・インフィニオン・MPS・NXP・中国勢とのシェアを筋書きごとに置いた。倍率は今の株価ではなく利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)、RONIC = k + 残る割合 ×(事業の ROE − k)で出した。k = 8.0%(基本 8.0% + quality 0.0%)、ROE は検査と同じ帳簿の自己資本に対する純利益(のれん込み。10 年中立で 21%)、残る割合は強い堀の 2/3(moat_why:製品 7.5 万品目の設計採用と車載・産業の認定)、g は半導体の数量が 10 年より先も実質で伸びるとして 4.5%(growth_long=structural、k − g = 3.5%)。10 年中立の正当化 PER は 20.8 倍で、その 8.5 割の 17.7 倍に置いた(山の利益率を含む)。10 年の悲観は ROE が k に近いので上限の 84% に抑えた。純負債は実効の PER に含めた。今の PER 87 倍には寄せていない。3 年の値付けは使わず、10 年だけで測った。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.17 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0.0% = 8.0%(β は使わない)。循環の大きい半導体(+0.5)と、10〜15 年買われ続ける高性能部品の寿命(−0.5)が打ち消し合う。純負債は時価総額の 3% で存続の不安は無く、上乗せは 0。AI の山と中国の価格競争は、k でなく確率と悲観の深さで反映した。