結論
オリオンビールは、沖縄で圧倒的な販売網を持つビールメーカーであり、観光ホテルと沖縄ブランドの県外・海外展開を併せ持つ会社だ。筆者の結論は「適正」だ。県内の堀は本物だが、現在の時価総額約445億円に対して10年後の利益と還元から求めた価値は約482億円で、安全域は約8%と薄い。上場時の熱気ではなく、これから株主に帰属する現金がどこまで増えるかで判断したい。
最大の強みは、沖縄の生活と旅行体験の中にオリオンが深く入り込んでいることだ。県内ビールの販売シェア83.8%はアサヒからの受託製造・仕入販売分を含む会社の流通シェアであり、オリオン銘柄単独の数字ではない。それでも約5,800店に設置したサーバー網と観光客の高い認知度は、新規参入者が短期で模倣しにくい。2025年4月の5~7%の価格改定と工場の生産効率改善も、ブランドが単なる地域の思い出以上の収益力を持つ証拠である。
ただし国内の飲酒量は長期的に減り、2026年10月には沖縄産酒類への酒税軽減措置が終了した。ホテルはインバウンドの成長を取れる反面、建て替え投資、従業員確保、台風や景気の影響を受ける。2026年3月期の報告純利益36億円には不動産譲渡の特別利益があり、会社の調整後利益30億円を持続的な稼ぎの起点とする方がよい。
10年後は県内の数量がやや細っても、県外の量販・飲食店、台湾・米国、現地醸造、ブランド許諾が支え、全社の営業利益は緩やかに増えると見る。予想に織り込みたいのは設備投資の回収と将来の新株予約権による希薄化であって、足元の株価を追い掛けることではない。ブランドの質には評価を与えるが、割安と断じるにはもう一段の余裕が欲しい。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主なら、この会社を単なるビール工場とは見ない。沖縄の飲食店に張り巡らされたサーバーと、旅行者が持ち帰る楽しい記憶が、何十年もかけて作られた販売上の資産である。これらは貸借対照表には十分に載らないが、競合が同じものを買って作るには時間がかかる。値上げ後に一時的な数量減があっても、人気銘柄として残り続ける限りは、原材料費と人件費の上昇を回収する力がある。
もっとも、会社全体の利益を地域の独占利益と同じように評価するのは危険だ。県外では小さなブランドであり、現地の棚を確保する販促費がかかる。海外ライセンスは資本をほとんど使わずに伸びる余地があるが、県内の名護工場や沖縄北部のホテルでは建物と機械を更新し続ける必要がある。既存設備の減価償却は古い取得価格のままなのに、更新工事は将来の高い工事単価で支払うため、帳簿利益の伸びをすべて配れるわけではない。
株主として重視するのは、営業利益から税金、利払い、設備の維持更新を払った後に残る資金だ。中期計画には配当・自社株買いの数値目標があり、余剰を惰性で抱え込まない姿勢は評価できる。一方で借金があること、ホテルが台風と観光循環を受けること、権利行使による数%の希薄化が残ることは割引を要する。筆者は地元の堀には価値を認めるが、今の時価総額と本質価値の差は小さく、厳しい十年を耐えられる厚い安全域があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業の収益源は酒類清涼飲料と観光・ホテルの二本柱である。2026年3月期は飲料の売上約239億円、営業利益約36億円に対し、ホテルなどは売上約58億円、営業利益約7億円だった。名護工場でオリオン・ザ・ドラフトや75BEERを造り、発泡酒、WATTAなどの缶チューハイ、ノンアルコール飲料も販売する。沖縄県内では飲食店の樽生と小売店の棚を押さえ、県外ではアサヒビールとの流通提携を通じて広域で売る。
飲料の収益構造は地域によって異なる。県内は地元客と旅行者の消費が土台で、アサヒブランドのライセンス製造・販売も担う。県外は沖縄体験の記憶を呼び起こす銘柄として量販店、飲食店、直販ECで拡販する。海外は台湾、韓国、豪州、米国などで売り、英国では現地パートナーによるライセンス醸造を育てている。県内の飲酒数量が減っても、沖縄ブランドの到達範囲を広げれば販路の数を増やせる仕組みである。
ロゴを使用した衣料品や雑貨のライセンスは、ビール工場を増設せずに得られる使用料収入だ。2026年3月末の契約先は64社に達した一方、売上は約4億円とまだ小さい。石川酒造場の泡盛関連と直営店物販もグループ売上に寄与するが、それぞれの販売点数や営業利益は非開示なので推計に限界がある。
観光・ホテル事業の中核は238室のオリオンホテルモトブリゾート&スパで、宿泊、料飲、スパ、アクティビティが売上を生む。2025年に売却した那覇のホテルからの収益は今後消えるため、直近期のホテル売上をそのまま延長してはいけない。県北部の観光施設との提携やホテル増室計画には成長余地があるが、不動産賃貸収入も含むこの事業は、同じ沖縄ブランドでも製造・ライセンス事業より多くの資本を必要とする。
優良さと弱いところ
最も強い堀は沖縄の樽生サーバー網と地域の心象に結び付いたブランドである。県内約7,400飲食店のうち約5,800店にサーバーを置き、観光経験者の96.9%が銘柄を認知していたとの会社委託調査もある。飲食店が銘柄を替えるには機材、供給契約、客の注文習慣を変える必要があり、競合が広告費だけで覆すのは難しい。2025年4月には5~7%の値上げを実施したが、その後の県内売上には駆け込み需要の反動があり、値上げが数量に無害だったとまで言うべきではない。
名護工場では高濃度醸造や省エネルギー化が進み、ビール類の製造原価率は2022年3月期から大きく改善した。独自のレシピだけでなく、多数の取引店にまとまった量を安定して供給できることが設備投資の採算を高める。県外と海外では逆に大手四社や現地の飲料メーカーが流通を握っており、オリオンのブランド力だけで全国の棚を支配できない。県内では強い堀、県外では伸びしろを持つ挑戦者という違いを分けて評価する。
過去のROEが高く見えるのは、効率化だけでなく不動産譲渡と自己資本圧縮の影響も大きい。再投資で高い利回りを稼げるかは、既存工場の省力化、県外販路の積み上げ、ホテル増室の投下資本利益率に分けて見る必要がある。AIエージェント代替の指定対象である人月商売や席課金ソフト、広告代理店ではなく、酒の製造、ブランド許諾、対面宿泊が主業なので、この特別な数量縮小規則には該当しない。ただし予約・販促の自動化は競争全体を効率化し、ホテルの価格差を比較されやすくする。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のビール類は人口減少と健康志向で数量の縮小が続く。カナダ政府が整理したEuromonitorの2024年推計では、国内ビール市場は約46.8億リットルで、アサヒ33.3%、キリン28.3%、サントリー17.9%、サッポロ10.3%、オリオン0.8%である。これは全国のビール銘柄別推計であり、沖縄での83.8%という会社の販売流通シェアと分母が違う。地元で大きく、全国では小さいという二面性こそ、今後10年の数量成長の出発点になる。
全国数量は今後10年でさらに2~3割減るという業種共通の慎重な前提を採る。沖縄では県民の飲酒も減るが、2025年度の入域観光客は約1,093万人と高水準にあり、来訪者が外食や土産で消費するため、全国ほど大きな減少にはならないと見る。一方で、2026年10月の酒税一元化と沖縄特有の15%軽減措置終了は局地的な構造変化である。会社は初年度の利益押し下げを約4.4億円と公表しており、過去の利益率をそのまま続くものとしては扱えない。
県外の競争相手は大手四社の定番商品とクラフトビール、RTDではサントリーやキリンが強い。県外への出荷は相対的に小さく、量販店の採用増と居酒屋の取扱店数増がシェア上昇の現実的な道だ。海外は台湾と米国に加え、英国の現地醸造を通じて輸送費と関税負担を避ける方向へ移るが、現地ではハイネケン、ABインベブなどとの争奪戦となる。大手同業と違って海外売上が連結の半分になるとは見ていない。
ホテルは沖縄県全体で2024年末に約6.4万室が供給され、モトブの238室は全県客室の約0.4%にとどまる。北部の立地と広い客室には差別化があるものの、県内全体の宿泊供給を動かせる立場ではない。台風、海外航空路線、競合リゾートの増設が稼働と客室収益に響き、稼働率より利益に直結するRevPARと一室当たりの現金投資を重視したい。
資本政策と M&A
経営が掲げた2027年3月期から2030年3月期の中期経営計画は、酒税を除いた売上高の年平均成長率5.9%、EBITDA利益率25.1%、調整後ROE16.0%が目標である。酒類の県内成長率4.0%、県外8.6%、海外13.8%を別に示し、伸びの中心を地元の飲酒量ではなく販路拡張に求めている。これらは会社の目標であり、十年すべてを保証する約束ではない。
四年間の営業キャッシュフロー214億円を前提に、通常設備投資41億円、成長投資100億円、株主還元70億円へ配分する計画も具体的だ。成長投資のうち約70億円は名護工場の自動化やホテル増室などの設備、30億円はライセンス醸造への出資など戦略投資に充てる。株主還元は配当性向50%とDOE8%の高い方を配当の目安とし、機動的な自己株買いを組み合わせる。2027年3月期の総還元見通しは約20.2億円で、その中には5.5億円の自己株取得を含む。
2019年に投資ファンドの資本が入り、2025年の上場に至る間にはホテルなどの資産整理と生産性改善が進んだ。2025年の不動産売却は資金回収には有利でも反復可能な本業利益ではない。2026年の英国醸造パートナーへの約100万ポンドの出資は小口であり、大型買収の失敗よりも、ホテルへの再投資が資本コストを超えるかを重く見る。株主優待は対象1,000株以上に製品12缶等を贈る制度で、対象約3千人、会社原価約2千円という未開示部分の仮定から、中立の十年還元に約0.6億円を含めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
沖縄でビールを頼めばオリオンが出てくるという地位は、広告を増やした程度では崩れない。約5,800店のサーバー契約、地元の製造拠点、観光客の記憶が同時に効くため、地域の食品会社としては例外的な堀がある。値上げを実施しても業界から退出せず、名護工場では製造コスト率も改善した。2026年の酒税変更を乗り越えれば、税制上の不確実性が一段解消し、プレミアムビールとRTDの品ぞろえで単価をさらに引き上げられる。
県外・海外は母市場に比べて小さく、競合シェアのわずかな一部を獲得するだけでも数量の成長率は大きい。アサヒの販売網を使える県外と、台湾・米国での実績を持つ海外は、ゼロから設備を建てる新規事業より成功の確率が高い。英国の現地醸造は輸送費を減らし、資本をあまり使わずに遠くの市場へ広がる実験である。ブランド許諾も2030年に向けて契約社数が伸び、飲む以外の機会から利益を得る。
ホテルは近鉄系との連携とジャングリア沖縄による滞在型観光の拡大で、沖縄北部の需要を取り込める。アネックス棟が高単価で稼働すれば、既存の施設費用を共通利用して追加投資の利回りが高まる。経営は営業キャッシュフローを成長投資と株主還元に分ける目標を明示しており、配当と自社株買いが十年間の総収益を支える。
慎重な見方
沖縄県内での販売シェア83.8%を、そのままオリオンブランドの独占力と勘違いしてはいけない。数字にはアサヒから預かった商品も入っており、提携先のシステム障害や販売条件の変更に影響を受ける。2025年の価格改定後、県内には駆け込み反動による販売減が生じた。地元の人口が減り、若者が酒を飲まなくなれば、すでに高いシェアの県内では新規顧客で埋められない。
2026年10月の酒税軽減終了は恒久的な逆風で、製造原価の引下げで吸収できなければ利益率は低下する。県外は全国で約1%前後の小さな存在にすぎず、販促に費用をかけても大手の量販店棚を奪えない可能性がある。海外も現地のハイネケンやABインベブに対抗するには広告費が必要で、英国の現地醸造が成功する保証はない。ライセンス先が増えても小口化で一社当たり収入が下がれば、利益の伸びは限定される。
ホテルが最も大きな損失源になりうる。沖縄の観光需要は航空便、台風、海外景気に左右され、豪華な客室の改修や従業員寮には先に現金を使う必要がある。ホテル那覇のような資産売却益は繰り返せず、更新投資の価格は上がっていく。純有利子負債を抱えたまま観光不況と設備投資失敗が重なれば、地域ブランドが残っても十年後の株主価値は大きく毀損される。
どちらに重みを置いたか
県内の販路とブランドには数値で確かめられる堀があり、数量が縮むとしても十年後に消える事業ではない。そのため上振れ二つの確率合計34%を、下振れ二つの30%より少し厚くした。ただし、県外と海外のシェア拡大はまだ小さい基盤からの挑戦であり、酒税減免の終了とホテル更新費用は経営努力だけでは消せない。純利益の一時的な不動産売却益を除き、株主還元と新株予約権を合わせて考えると、本質価値は市場評価を小幅に上回る程度となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,619 円683 億円(+ 還元の換算額還元の合計 515 円217 億円)。 今の値に割り戻すと 1,144 円482 億円、今との差 +12.2%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 3,104 円1,309 億円 | 756 円319 億円 | +278.5% | +16.6% | 425 円179 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,409 円1,016 億円 | 632 円267 億円 | +198.1% | +13.4% | 699 円295 億円 |
| 中立 | 36% | 1,699 円716 億円 | 508 円214 億円 | +116.4% | +9.3% | 795 円335 億円 |
| やや悲観 | 21% | 482 円203 億円 | 406 円171 億円 | −12.9% | −1.8% | 187 円79 億円 |
| 悲観 | 9% | 113 円48 億円 | 203 円86 億円 | −69.0% | −14.9% | 28 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,619 円683 億円 | 515 円217 億円 | +109.2% | +9.0% | 2,134 円900 億円 |
今の株価時価総額 1,020 円430 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 県外・アジア・欧米に沖縄ブランドが根付く 利益 81 億円 · PER 16.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,104 円1,309 億円
オリオンは沖縄の強いサーバー網を守りながら、県外の飲食店と量販店に「沖縄の定番」を持ち込む。全国のビール市場は縮んでも自社シェアが上がり、県外の販売液量は約2万9千kLに広がる。台湾と米国でジャパニーズ・プレミアムとしての位置を築き、英国Sunrise社への出資を足掛かりに現地製造を欧州へ横展開する。ライセンス先も200社を超え、ビールに触れない消費者にもブランドが届く。
沖縄ではビール中心の商品構成への移行が成功し、酒税軽減措置の終了は工場効率化と値上げで吸収する。ホテルモトブはアネックス増室が高い客室単価で回り、ジャングリアとの協業が連泊を増やす。大規模なブランド買収をせず、小さな現地パートナー出資に限定して資本効率を保ち、利益を新設備と還元へ振り分ける。沖縄ブランドの堀を守りつつ県外・海外で新しい堀が育った十年となる。
- 沖縄県内の酒類・飲料:数量 50,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 248 億円・営業利益 42 億円。県内数量は地元人口・観光客・ビール構成比に応じて変動。2026年10月の酒税軽減終了を利益率に反映。
- 沖縄県外・ECの酒類・飲料:数量 29,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(県外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 138 億円・営業利益 24 億円。全国のビール市場は縮小するが、オリオン自身の量販店・飲食店での扱い増加を数量に反映。
- 海外の酒類・飲料:数量 32,000(ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(海外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 108 億円・営業利益 19 億円。台湾・米国などへの輸出と英国などのライセンス醸造を販売液量換算。為替は150円固定。
- ブランド・商品のライセンス:数量 210(ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社))× 価格 0.08(契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社))→ 売上 17 億円・営業利益 12 億円。契約先数による拡大。FY2025だけ13か月計上のため平均単価は通常の物価上昇と同じにならない。
- 泡盛・自社物販など:数量 80.0(年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定))× 価格 0.22(1万点当たり売上(億円/万点))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。非開示の物販点数を商品換算の仮定で扱う。
- 観光・ホテルおよび賃貸:数量 109,500(モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日))× 価格 0.00(1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊))→ 売上 100 億円・営業利益 18 億円。室泊は販売可能室数×365日相当。単価はRevPARだけでなく食事・賃貸・那覇売却分の剥落を含む部門平均。
倍率:2036年の事業自己資本394.8億円(全体の自己資本から十年で積もった余剰現金10億円を除外)と事業純利益80.76億円から事業ROE20.46%。k7.5%、県内販路の強い堀の残存割合2/3を使い、新規投資のRONIC16.14%。2036年以降の名目g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.90倍を上限そのままに使う。時価総額は事業純利益×PER+将来余剰現金10億円(戻り方1.0)。余剰現金の税後金利は一律1.4%分を純利益から除き二重計上しない。
確率:県内の強い販路に加え県外・台湾・米国の市場シェア上昇と英国現地醸造が同時に成功し、ホテル増室も高稼働で回る複合条件。十年にわたる同時達成は容易でないため11%にとどめる。
やや楽観 23% 県外・海外に着実に販路を広げる 利益 63 億円 · PER 16.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,409 円1,016 億円
沖縄県内の販売量はほぼ現状を保ち、価格改定とプレミアム商品への移行が収益を押し上げる。観光客の増加が住民の飲酒離れを補い、サーバー網の競争優位は維持される。県外はアサヒの販路を活用しながら、コンビニや専門店での採用が増え、販売液量は2万5千kLへ伸びる。輸出も台湾、韓国、米国、豪州に分散し、欧州の現地醸造が加わる。
ライセンス先は増えるが、小口契約が多く一社当たり収入は急増しない。モトブの既存客室の改装と増室は無理のない採算で進み、沖縄北部の高価格帯ホテルという地位を強める。事業環境が良い年には自社株買いを実行し、悪い年もDOEを支えるだけの利益が残る。新規買収への大きな賭けは避け、株主が稼ぎの相応の部分を受け取れる。
- 沖縄県内の酒類・飲料:数量 47,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 220 億円・営業利益 35 億円。県内数量は地元人口・観光客・ビール構成比に応じて変動。2026年10月の酒税軽減終了を利益率に反映。
- 沖縄県外・ECの酒類・飲料:数量 25,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(県外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 112 億円・営業利益 17 億円。全国のビール市場は縮小するが、オリオン自身の量販店・飲食店での扱い増加を数量に反映。
- 海外の酒類・飲料:数量 26,000(ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(海外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 83 億円・営業利益 13 億円。台湾・米国などへの輸出と英国などのライセンス醸造を販売液量換算。為替は150円固定。
- ブランド・商品のライセンス:数量 170(ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社))× 価格 0.07(契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社))→ 売上 12 億円・営業利益 8 億円。契約先数による拡大。FY2025だけ13か月計上のため平均単価は通常の物価上昇と同じにならない。
- 泡盛・自社物販など:数量 70.0(年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定))× 価格 0.21(1万点当たり売上(億円/万点))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。非開示の物販点数を商品換算の仮定で扱う。
- 観光・ホテルおよび賃貸:数量 102,200(モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日))× 価格 0.00(1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊))→ 売上 91 億円・営業利益 15 億円。室泊は販売可能室数×365日相当。単価はRevPARだけでなく食事・賃貸・那覇売却分の剥落を含む部門平均。
倍率:2036年の事業自己資本335.8億円(全体の自己資本から十年で積もった余剰現金35億円を除外)と事業純利益62.06億円から事業ROE18.48%。k7.5%、県内販路の強い堀の残存割合2/3を使い、新規投資のRONIC14.82%。2036年以降の名目g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.63倍を上限そのままに使う。時価総額は事業純利益×PER+将来余剰現金35億円(戻り方1.0)。余剰現金の税後金利は一律1.4%分を純利益から除き二重計上しない。
確率:県外の既存販売網と会社が示した輸出成長計画は実行可能性があるが、県内の人口減少は続く。二つの成長地域が概ね成功し、ホテルの高付加価値化も進む筋書きに23%。
中立 36% 地元の数量減を県外・海外と値上げで補う 利益 44 億円 · PER 16.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,699 円716 億円
県内では人口の伸び悩みと飲酒頻度の低下で販売量が約4万3千500kLとなるが、観光客の購入とビールへの商品構成移行が数量減を和らげる。2026年の酒税軽減終了で一時的に採算を落とすものの、名護工場の更新効果と商品の名目値上げが積み重なる。全国の市場自体は縮むが、県外のオリオン取り扱い店が増えて販売量は約2万1千500kLへ伸びる。海外は台湾と米国で堅実に販路を広げ、英国の現地製造も小さく利益に貢献する。
ライセンス先は130社まで増える一方、契約の小口化で平均使用料は物価ほど上がらない。モトブホテルは一部の増室を実現し、既存施設の更新費用と人件費の増加を客室収入で賄う。新規ホテル取得を無理に重ねず、配当と機動的な自己株買いを続ける。地元の強い堀は残るが、県外の競争と資本負担でROEは過去の高水準から落ち着く。
- 沖縄県内の酒類・飲料:数量 43,500(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 193 億円・営業利益 27 億円。県内数量は地元人口・観光客・ビール構成比に応じて変動。2026年10月の酒税軽減終了を利益率に反映。
- 沖縄県外・ECの酒類・飲料:数量 21,500(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(県外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 91 億円・営業利益 12 億円。全国のビール市場は縮小するが、オリオン自身の量販店・飲食店での扱い増加を数量に反映。
- 海外の酒類・飲料:数量 19,000(ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(海外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 57 億円・営業利益 8 億円。台湾・米国などへの輸出と英国などのライセンス醸造を販売液量換算。為替は150円固定。
- ブランド・商品のライセンス:数量 130(ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社))× 価格 0.06(契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社))→ 売上 8 億円・営業利益 5 億円。契約先数による拡大。FY2025だけ13か月計上のため平均単価は通常の物価上昇と同じにならない。
- 泡盛・自社物販など:数量 60.0(年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定))× 価格 0.20(1万点当たり売上(億円/万点))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。非開示の物販点数を商品換算の仮定で扱う。
- 観光・ホテルおよび賃貸:数量 94,900(モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日))× 価格 0.00(1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊))→ 売上 78 億円・営業利益 11 億円。室泊は販売可能室数×365日相当。単価はRevPARだけでなく食事・賃貸・那覇売却分の剥落を含む部門平均。
倍率:2036年の事業自己資本278.8億円(全体の自己資本から十年で積もった余剰現金55億円を除外)と事業純利益43.30億円から事業ROE15.53%。k7.5%、県内販路の強い堀の残存割合2/3を使い、新規投資のRONIC12.85%。2036年以降の名目g2.5%で正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.11倍を上限そのままに使う。時価総額は事業純利益×PER+将来余剰現金55億円(戻り方1.0)。余剰現金の税後金利は一律1.4%分を純利益から除き二重計上しない。
確率:県内の物理的な販売網は強く、設備の原価改善も実績がある。しかし税優遇終了、県外の大手寡占、ホテルへの現金投資を考慮し、計画の成長速度が十年続かない中心筋書きに36%を割り当てる。
やや悲観 21% 酒税と観光競争で利益率が低下 利益 17 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 482 円203 億円
沖縄の若年層の飲酒離れが進み、地元での販売量が約3万8千kLまで減る。全国大手は酒税一元化を機に沖縄への販促投資を増やし、オリオンの流通地位はなお高いものの、値上げの幅が原材料費に追い付かない。県外の量販店ではアサヒやキリンの主力銘柄との競争が厳しく、販売量は横ばい程度にとどまる。海外の現地醸造は採算の良い地域に限って残り、ライセンス商品も成長が鈍る。
沖縄北部には宿泊施設が増えて価格競争となり、ホテル増室に期待した利益率は実現しない。ホテルの人件費や修繕費は客室の稼働が落ちても残るため、売上の減速以上に利益が減る。経営は大型の買収を避け、設備更新を優先して自己株買いを減らすが、初めの数年は配当性向とDOEに沿った還元を維持する。地域ブランドの存続と、株主にとって魅力的な投下資本利益率は別問題となる十年だ。
- 沖縄県内の酒類・飲料:数量 38,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 153 億円・営業利益 15 億円。県内数量は地元人口・観光客・ビール構成比に応じて変動。2026年10月の酒税軽減終了を利益率に反映。
- 沖縄県外・ECの酒類・飲料:数量 16,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(県外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。全国のビール市場は縮小するが、オリオン自身の量販店・飲食店での扱い増加を数量に反映。
- 海外の酒類・飲料:数量 13,500(ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(海外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。台湾・米国などへの輸出と英国などのライセンス醸造を販売液量換算。為替は150円固定。
- ブランド・商品のライセンス:数量 85.0(ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社))× 価格 0.06(契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。契約先数による拡大。FY2025だけ13か月計上のため平均単価は通常の物価上昇と同じにならない。
- 泡盛・自社物販など:数量 48.0(年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定))× 価格 0.18(1万点当たり売上(億円/万点))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。非開示の物販点数を商品換算の仮定で扱う。
- 観光・ホテルおよび賃貸:数量 86,870(モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日))× 価格 0.00(1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊))→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。室泊は販売可能室数×365日相当。単価はRevPARだけでなく食事・賃貸・那覇売却分の剥落を含む部門平均。
倍率:収益性の低下で事業ROE7.8%は資本コスト7.5%をわずかに超えるだけで、新規投資の超過収益はほぼ消える。長期の実質数量減を含めた弱い稼ぐ力として、正当化上限より低い事業PER11.0倍を採用。全社純利益から手元に残る余剰現金30億円の税後利息1.4%を除き、事業利益×11.0倍+現金30億円。現金は売上を維持するための運転資本必要額を超えるが、配当で還元するまでは市場価値を帳簿の範囲にとどめる。
確率:沖縄のビール数量減が想定より深く、酒税軽減廃止分を十分に吸収できず、ホテル料金も競争で伸ばせない場合。飲料は生き残りつつ資本効率が落ちる確率を21%とする。
悲観 9% 地元の堀が削られ、ホテル投資も失敗 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 113 円48 億円
県内の販売量が約3万kLに落ち、大手銘柄と低価格商品に店頭の一部を奪われる。オリオンの地元認知度は残るが、飲酒を控える若者が増え、観光客にも沖縄でしか飲めない特別感が薄れる。税優遇終了と原料高が重なり、製造コスト削減だけでは利益を守れない。県外と海外では販促を縮小し、現地醸造への出資も十分に回収できない。
ホテルでは台風被害や航空便減便、競合の増室が重なり、客室単価と稼働率がともに落ちる。一部の客室を休館し、年間販売可能室泊も約7万3千まで縮む。投資したアネックスや施設更新の採算悪化で、ホテル関連と投資先の合計約85億円の減損を十年の間に被り、固定の人件費と維持費も利益を圧迫する。経営は自社株買いを停止し、最初の数年に実施した配当以外の還元も縮小する。地域ブランドは消えないが、普通株主が享受できる事業利益はほぼ尽き、借金を返済した後に残る土地・ホテル等の処分可能価値が評価の中心となる。
- 沖縄県内の酒類・飲料:数量 30,000(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 111 億円・営業利益 6 億円。県内数量は地元人口・観光客・ビール構成比に応じて変動。2026年10月の酒税軽減終了を利益率に反映。
- 沖縄県外・ECの酒類・飲料:数量 10,500(酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(県外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。全国のビール市場は縮小するが、オリオン自身の量販店・飲食店での扱い増加を数量に反映。
- 海外の酒類・飲料:数量 9,000(ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想))× 価格 0.00(海外計上売上高/販売kL(億円/kL))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。台湾・米国などへの輸出と英国などのライセンス醸造を販売液量換算。為替は150円固定。
- ブランド・商品のライセンス:数量 50.0(ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社))× 価格 0.05(契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。契約先数による拡大。FY2025だけ13か月計上のため平均単価は通常の物価上昇と同じにならない。
- 泡盛・自社物販など:数量 40.0(年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定))× 価格 0.17(1万点当たり売上(億円/万点))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。非開示の物販点数を商品換算の仮定で扱う。
- 観光・ホテルおよび賃貸:数量 73,000(モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日))× 価格 0.00(1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊))→ 売上 46 億円・営業利益 −6 億円。室泊は販売可能室数×365日相当。単価はRevPARだけでなく食事・賃貸・那覇売却分の剥落を含む部門平均。
倍率:2036年の営業利益は借換金利をほぼ賄う程度で純利益は赤字となるため、赤字へのPERを使わない。今の自己資本184.8億円を分母とする処分可能資産50億円相当のPBR0.271倍を用い、十年で約85億円の減損を想定して154.8億円に縮んだ自己資本には掛けない。過去の谷の市場PBRではなく、会社の実物資産の回収額から作った床である。
確率:地元のブランドとサーバー網まで大手四社に侵食されるには複数の失敗が必要であり確率は低いが、税優遇廃止・観光不況・過大投資が重なる可能性を9%残す。残存資産価値を下限として計上する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
沖縄県内の酒類・飲料
沖縄の県民・観光客向けのビール、発泡酒、RTD、ノンアルコールおよびアサヒ提携商品の製造・販売。
| 数量酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想) | 価格酒税を含む連結計上売上高/販売kL(億円/kL) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46,291 | 0.00 | 153 | 24 |
| 10 年後 中立 | 43,500 | 0.00 | 193 | 27 |
取り方:県内売上152.89億円は2026年5月14日の会社決算資料27頁の実績であり、液量46,291kLは2025年9月25日の上場時会社開示にある2026年3月期通期予想。実際の通期液量は未公表なので近似として用い、単価は両者の割算。市場シェア83.8%は2024年3月期の県内ビール市場に対する会社の販売数量比で、アサヒの受託製造と仕入販売を含み、RTD等の市場占有率ではない。2025年4月の値上げ率5~7%、2026年10月の酒税軽減終了、沖縄の観光客数を数量・単価に反映。飲料小区分の営業利益は会社が非開示のため当期飲料部門営業利益36.34億円から推計配賦。
沖縄県外・ECの酒類・飲料
本土の量販店と飲食店、公式通販・定期便でオリオンの酒類とRTDを販売する。
| 数量酒類・飲料の販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想) | 価格県外計上売上高/販売kL(億円/kL) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,667 | 0.00 | 50 | 6 |
| 10 年後 中立 | 21,500 | 0.00 | 91 | 12 |
取り方:県外売上49.59億円は2026年5月決算説明資料27頁の実績、販売数量15,667kLは2025年9月25日上場時開示の2026年3月期予想。会社は実際の県外全品目の通期数量を開示しておらず単価は暫定的。大手アサヒの量販店流通と当社直販を合わせた売上で、店頭小売価格ではない。国全体のビール類需要は減少するが、2024年Euromonitor推計ではオリオンの全国ビール数量シェア0.8%と小さいため、シェア上昇を数量増の原動力とする。営業利益は部門内推計。
海外の酒類・飲料
台湾・米国・韓国・豪州を中心に輸出し、英国では現地パートナーによる醸造も試す。
| 数量ビール類輸出販売液量(kL/年、開示は2026年3月期予想) | 価格海外計上売上高/販売kL(億円/kL) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,261 | 0.00 | 25 | 3 |
| 10 年後 中立 | 19,000 | 0.00 | 57 | 8 |
取り方:海外売上25.03億円は2026年5月決算資料27頁の実績。液量11,261kLは2025年9月上場時の2026年3月期輸出予想である。実績数量の更新がないため名目実績収入÷予想kLの推定平均単価とする。国際ビール市場は現地でABインベブ、ハイネケン、台湾・米国地場ブランドが競う。英国の現地醸造は将来輸送量に含まれない場合があるので、数量は販売リットル換算で統一する。ドル円150円固定、営業利益は部門内推計。
ブランド・商品のライセンス
衣料・雑貨などの商標使用権を企業へ供与し、売上に応じた使用料を得る資本負担の軽い仕事。
| 数量ブランドライセンス契約先(社、FY2025実績64社) | 価格契約先1社当たり年間計上ロイヤルティ(億円/社) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 64.0 | 0.06 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.06 | 8 | 5 |
取り方:2026年5月の会社説明資料20頁にFY2025末のライセンシー64社、同年度ライセンス売上377百万円を公表。契約数×平均年間認識売上の概算で、ライセンス先の小売商品流通総額ではない。会社資料はFY2025に会計理由で13か月分を計上(12か月換算は348百万円)と注記。FY2029の契約社数目標110社、売上500百万円では1社当たりの売上が足元より低くなるので、2036年中立では契約数拡大を価格の物価上昇とは独立に考え、平均ロイヤルティの単価は慎重に扱う。
泡盛・自社物販など
子会社石川酒造場の泡盛、工場併設ショップやその他物販。
| 数量年間の出荷・販売点数(万点換算、非開示の推定) | 価格1万点当たり売上(億円/万点) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.0 | 0.15 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.20 | 12 | 1 |
取り方:会社の販売地域別「その他」3.20億円と、飲料セグメント合計239.21億円から親会社地域別合計234.48億円を差し引いた石川酒造場等の4.73億円の残差を合算。商品点数は非開示で、酒類・食品・物販を平均計上単価約1,500円/点として53万点相当とした低精度の参考換算であり、実販売数量と主張しない。その他の市場は沖縄県の酒類・土産・物販で、単独シェアの開示はない。2026年の部門内営業利益配賦も推計。
観光・ホテルおよび賃貸
モトブの宿泊238室、飲食・体験、那覇ホテル売却までの収入、保有物件の賃貸収入。
| 数量モトブの販売可能客室泊数(室泊/年、238室×365日) | 価格1室泊当たりホテル・付帯・賃貸合計収入(億円/室泊) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 86,870 | 0.00 | 58 | 7 |
| 10 年後 中立 | 94,900 | 0.00 | 78 | 11 |
取り方:2026年3月期の観光・ホテル事業売上57.91億円と営業利益6.90億円は会社決算資料3頁の実績。主力のオリオンホテルモトブは238室なので年間販売可能客室泊8万6,870室泊で割り、部門平均約6.67万円/室泊の便宜的な総合単価を得る。これは実際のADRでもRevPARでもなく、飲食・スパ・賃貸・2025年途中で譲渡した那覇ホテルの期中売上6.16億円を含む。参考として会社はモトブのRevPAR31,936円を開示。2036年の数量は増室後の販売可能室泊で、価格は稼働率・客単価・付帯収入・那覇売却分の剥落を総合した額にする。
リスクと懸念
沖縄の酒税軽減終了と定価改定の限界
沖縄県産ビールに認められていた15%の酒税軽減措置が2026年10月に終了し、会社は初年度だけで約4.4億円の利益減少を見込む。名護工場の効率化と値上げで埋める計画だが、アサヒ等の大手が値上げを抑えれば店頭の数量を失う。制度変更による恒久的な税負担は販売数量と利益率の両方に影響するため、工場原価率と県内液量を追う必要がある。
地元で高シェアでも飲酒人口は減る
県内販売シェア83.8%はオリオンのビールだけでなく、アサヒの受託製造や取扱商品を含めた値である。地元でこれ以上のシェア拡大は容易ではなく、若い世代の飲酒離れと人口減少が需要総量を押し下げる。販売数量の減少を値上げで補おうとすると、低価格商品の競争圧力も受ける。サーバー取扱店数と沖縄県内の液量は、ブランドの本当の堀の検証に欠かせない。
アサヒとの提携と全国大手四社との競争
県外の販路拡大はアサヒとの販売提携に支えられる一方、そのネットワークに依存する。提携条件の見直し、物流システムの障害、量販店の棚の優先順位変更が成長を止める可能性がある。全国ビール市場におけるオリオンのシェアは2024年推計で0.8%にすぎず、県外で長く高い価格決定力を維持するには小売での定番化を確かめる必要がある。
ホテル・観光需要と更新設備への現金支出
オリオンホテルモトブは台風、航空便の減少、沖縄北部ホテルの客室供給増にさらされる。稼働率と客室単価が下がっても従業員の確保費や施設維持費は固定的に残る。旧設備の減価償却は低い取得価格のまま計上されるが、建て替えには上昇した建築費が必要となる。会計上の純利益が増えても、更新投資と利払い後のオーナー利益が伸びないおそれがある。
海外・ライセンス事業の規模と採算の不確実性
英国の現地醸造、台湾や米国の販売店への浸透、ライセンス契約先の増加は期待できるが、現在の母数は小さい。市場を握るハイネケンやABインベブ、地場飲料企業に対抗して販促を増やせば、売上成長が利益成長に転じない。ライセンス売上は直近期に13か月分を計上しており、前年対比の表面上の成長率には会計上のずれもある。
借入負担・新株予約権と資本配分
2026年3月期の純有利子負債は約68.6億円で、無借金のブランド企業とは異なる。今後の借換金利上昇に加え、新株予約権の残り約213万株が行使されると既存株主の取り分は約4.8%薄まる試算となる。ホテルへの過大投資や割高な企業買収が重なれば、配当を維持できても株主価値を損なう。自社株買いによる株数の減少と権利行使による増加は必ず別々に確認したい。
今後の分かれ目
- 2026年10月以降の酒税軽減終了分を、翌年度の名護工場原価改善と値上げで吸収できたら
- 県内の営業利益率と値決め力の持続に信頼が増す。中立の県内利益率14%を再評価し、上側シナリオの確率を高める。ただし販売液量が落ちていないことを条件とする。
- 県外の販売液量が2万5千kLを超え、取扱店数と粗利益率も同時に上昇したら
- アサヒの販路利用が単なる一時的販促でなく持続的なシェア獲得につながった証拠となる。県外の数量成長と粗利率を上方修正し、やや楽観の実現可能性を引き上げる。
- 海外の年間売上が会社の2030年目標を超える勢いで伸び、英国現地醸造も黒字化したら
- 県内需要減を海外収益で補う仕組みが形になったと評価する。輸送量ではなく現地製造の実販売液量を含めた数量データを確認し、現地投下資本の利回りが7.5%を超える場合に限り価値を増やす。
- 県内サーバー設置店が約5,800店から5,000店以下へ減り、県内販売シェアも低下したら
- 地域の堀が物理的に崩れ始めた兆候となる。県内の数量と販売価格の前提を引き下げ、強い堀という判定自体を再検討して下振れ二つの確率を増やす。
- ホテルのRevPARが改修・増室後も既存基準の3万1,936円を継続して下回ったら
- 更新投資が需要をつくれていない可能性が高まる。新ホテル資産の減損と維持投資の増加を織り込み、観光部門の利益率と将来の株主還元余地を下方修正する。
- 中期経営計画の営業キャッシュフロー214億円と株主還元70億円を実現し、ホテル投資後も財務負担が増えなかったら
- 資本配分への信頼を一段高める。予定配当と自社株買いを十年シナリオの還元に反映し、営業利益成長を伴う場合だけ長期事業利益の評価も改める。
- 未行使の新株予約権約213万株が行使されるか、新たなオプション付与が公表されたら
- 増資払込が会社の現金と自己資本に入る一方、既存株主の持分が薄まる。会社全体の利益と時価総額を先に計算し、株主の取り分は持分係数で一度だけ調整する。
見ておくもの
- 沖縄県内・県外・海外別の実出荷液量(kL)と平均計上単価(円/L)
- 県内の樽生サーバー設置約5,800店の増減とアサヒ受託製造を含む県内流通シェア
- 2026年10月の県産酒税軽減終了後のEBITDA減益額と名護工場の製造原価率
- 2025年4月の価格改定後に県内販売液量が回復するか
- 2027〜2030年度の酒税抜き売上高年率5.9%、EBITDA率25.1%、調整後ROE16%の達成度
- モトブ238室のRevPAR・稼働率・増室後の営業現金流と更新工事費
- 県外・海外の小売取扱店数、ブランド認知率、現地ライセンス醸造の収益
- 中計の営業キャッシュフロー214億円、成長投資100億円、株主還元70億円の実績
- 配当性向50%またはDOE8%の高い方という方針、自社株買い、新株予約権の未行使数
- 貸借対照表の有利子負債、現預金、長期預金・有価証券、賃貸不動産・政策保有株の注記
倍率と資本コストの決め方
県内・県外・海外は2026年3月期の会社公表販売数量予想と確定売上から液量当たり計上価格を算出した。数量は予想であると明記した。数量は実質で、価格に十年の物価上昇約34%を反映するが、ライセンス料は会計上の13か月計上と契約の小口化、ホテルは那覇売却分を別扱いにする。2026年3月期の減価償却約15.6億円に対して、2036年は古い設備の償却約8億円、新規更新・増設分約14億円、合計約22億円を営業利益率の前提に含める。更新工事の現金支出と償却を混同しない。事業PERは現在の株価や同業の市場PERを参照せず、k7.5%、g2.5%、2036年ROEと競争力から正当化した。借金、希薄化、還元を考慮し、悲観の床は資産換金後の約50億円とする。2028年3月期以後の新リース会計による表示変更は、全シナリオで賃料を営業費用とする同一条件にそろえた。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。