結論
ブルドックソースは、中濃・ウスター・とんかつソースを家庭と外食に売る国内首位級の専業メーカーだ。売上の約 6 割が家庭用ソース、3 割弱が業務用ソースで、1 本あたりの利益は薄い。筆者の結論は割高である。今の値段は純資産に近いが、事業が稼ぐ力は資本コストに届いていない。
ブランドと全国の卸網は本物だ。中濃ソースは発売から 60 年を迎え、売れ筋は安定している。ただし国内の家庭用ソース市場は 360 億円ほどで、人口とともに量は細る。
営業利益率は過去 12 年で 1% から 6% の間を行き来し、最近の 5% 近い水準は工場を 3 つから 2 つに集約した効果だ。2026 年 3 月期の純利益 24 億円は旧工場跡地の売却益で、続かない。
利益の質にも注意が要る。営業利益より受取配当や有価証券の売却益のほうが大きい年が多く、本業だけだと 6 億円前後しか稼がない。政策保有株は 40 億円ほどあるが、それを足しても価値は今の値段の半分程度にとどまる。
買い手が現れれば話は変わる。2007 年にスティールの買収提案を防衛策で退けた会社で、10 年以内の TOB の確率は 24% と見積もられる。ただし買い手がつけるのは、ここで見た本質価値に近い水準だ。
バリュー投資の観点から
事業は分かりやすい。ソースは毎日の食卓で使われ、10 年後も無くならない。この一点で、予測のしやすさは合格だ。
ただし、バリュー投資の観点で次に聞くのは「オーナー利益はいくらか」だ。本業の稼ぎは営業利益で 6 億円前後、税引き後で 4 億円強。これに受取配当や利息が加わっても、純利益は 8〜9 億円にとどまる。250 億円の自己資本に対して 3〜4% の稼ぎは、国債の利回りと同じかそれ以下である。
経営の資本配分はまだ評価が定まらない。工場の集約と跡地の売却は理にかなう一方、40 億円ほどの持ち合い株を抱え続け、自己資本が使われないまま積み上がってきた。ここ 2 年は還元を厚くし、方向は良い。
安全域の面では、今の値段は純資産の 0.9 倍だが、純資産は稼ぎを生まない資産の山でできている。稼ぐ力で測ると本質価値は半分ほどで、払う値段に余裕が無い。買い手が名乗りを上げる確率は低くないが、その期待に値段を払うのは投資ではなく賭けだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は家庭用の「ブルドックソース」シリーズだ。ウスター・中濃・とんかつの 3 種類が主力で、お好み焼き・焼そばなど粉もの向けの商品やドレッシング・たれも手がける。売上は 2025 年 3 月期で家庭用ソースが 82 億円、業務用ソースが 40 億円、ドレッシング・たれなどが 17 億円、海外が 7 億円だった。
家庭用は卸を通じてスーパーに並ぶ。加藤産業・国分・三菱食品の上位 3 社で売上の約 4 割になり、取引先の集中度が高い。業務用は外食・惣菜・加工食品メーカーに売る。ここ 2 年は万博やインバウンドで伸び、前年比 8.6% 増えた。
海外は小さく、輸出と上海の現地法人が合計 7 億円ほど。上海法人はプライベートブランド(店のブランド)の受注を増やしている。長期ビジョンでは 2032 年度に海外を 63 億円へ引き上げる目標だが、今の 10 倍に当たる。
生産は館林の「TATEBAYASHI クリエイションセンター」に集約した。旧鳩ケ谷工場は 2025 年 5 月に譲渡し、2026 年 3 月期に 21.5 億円の売却益を出している。従業員は連結で 295 名と小さい。原料は野菜・果実・砂糖・食酢・香辛料などで、価格と為替の影響を受ける。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と見る。中濃ソースは発売から 60 年のブランドで、関東では売り場の棚を確保している。しかし味の差はカゴメ・オタフク・イカリ・コーミなどと大きくなく、PB やスーパーの特売で値下げ圧力を受ける。強い堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどではない。
価格を決める力は弱い。2024 年 3 月期の営業利益率は 1% まで落ち、原料高をすぐ価格に移せなかった。翌期以降の値上げは通ったが、売れる量が減る反動の様子も見える。
資本効率はもっと弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 3.5% で、資本コストの半分以下だ。自己資本の 250 億円には、使われていない資産が多く含まれる。上場株 38 億円、非上場株 11 億円、旧工場の土地、それに現金が積み上がっている。
利益の構造も見ておきたい。営業利益は年 2〜7 億円だが、経常利益は 10 億円前後あり、差の大半は受取配当と投資有価証券の売却益だ。つまり事業より持ち合い株が利益を支える。
経営は慎重で、財務は堅い。自己資本比率は 68%、純有利子負債はほぼゼロ。ただし中計は売上 160 億円・営業利益 8 億円の目標に届かなかった。次の計画で数字を達成できるかは未知数だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
家庭用ソース市場は 2025 年に 361 億円で、前年比 1.3% 増だった。業界紙の推計で、家計調査をもとに算出している。伸びの中心は値上げで、量は小容量化と人口減で細る。国内で食べる人の数は 10 年で 5% ほど減る見込みで、量の中立は 0.93 倍が妥当と見る。
競合は多い。オタフクソースはお好み焼き向けで関西・中国に強く、カゴメは「醸熟ソース」でトマトの知名度を生かす。イカリソースは西日本、コーミは東海圏の地場の大手だ。ブルドックの家庭用の首位級という位置は、関東と首都圏の棚の取り合いが中心になる。
業務用は別の力学で動く。外食の客数と、お好み焼き・焼そば・揚げ物の店や総菜が相手だ。万博とインバウンドで足元は好調だが、外食は人手不足で店の数が減る。業務用ソースの市場は推定で 400 億円ほど。ブルドックの取り分は 1 割程度と見る。
原料と物流のコスト上昇は共通の逆風だ。2026 年は 1〜4 月だけで 3,500 品目超が値上げされた。毎年物価並みの値上げは通りやすいが、頻度が増すと PB や安い業態に量が流れる。ソースは調理の主役ではなく、調味料のすき間にある商品で、強いブランドでも値上げのたびに数量が試される。
資本政策と M&A
還元の方針は総還元性向 60% 以上で、2026 年 3 月期は配当 5 億円に自社株買い 10 億円を加え、純利益(一過性を含む)の約 6 割を戻した。2027 年 3 月期は配当を引き上げ、自社株買いを上限 5 億円に置いて、総還元性向は 113% の予想だ。会社は資本コストを 4% 程度と見ているが、筆者はそれより高い 7.5% を使う。
政策保有株は上場で約 21 銘柄・38 億円。佐藤食品工業・養命酒・あいちフィナンシャルグループ・東洋水産・ミツウロコなどで、前中計は 10 億円の売却を掲げた。佐藤食品工業は株主にも名を連ねる持ち合いの相手だ。ここでは上場株 35 億円を「余った資産」とみなし、売って戻る確度を半分と見て足した。
M&A は少ない。買う側の実績はほとんど無く、戦略投資に 30 億円を置く計画があるだけだ。買われる側としては、2007 年にスティール・パートナーズの TOB を新株予約権の無償割当で退けた経緯がある。最高裁は防衛策を適法とした。今の大株主は興和(5.6%)・従業員持株会・佐藤食品工業・日本生命と分散している。
株主優待は年 1 回で、100 株以上に千円相当、800 株以上に 3 千円相当の自社製品を贈る。費用の開示は見つからず、個人株主が 46% を占める所有構造から年 0.9 億円と推定した(2 倍程度のずれはありうる)。10 年の還元に年額×10 年を足し、中立 1.0・やや悲観 0.75・悲観 0.5 の係数をかけた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ソースは日本の食卓に根づいた商品で、需要が急に消えることはない。中濃ソースは発売 60 年を迎え、首都圏の売り場で首位級の棚を持つ。原料高の中でも、値上げを重ねて営業利益率は 1% から 4% 台に戻った。2026 年 3 月期の営業利益は前期の 2.7 倍だ。
館林への集約で固定費は下がり、今後は売上が増えるほど利益が出やすい形になった。業務用は前年比で 8.6% 伸び、万博とインバウンドの追い風を受ける。海外は上海法人がプライベートブランドを獲得しており、売上が小さいぶん伸びしろが大きい。
資本政策はようやく動いた。2026 年 3 月期に自社株買い 10 億円を実行し、2027 年 3 月期は配当を引き上げ、還元性向は 100% を超える予想だ。政策保有株の売却も進み、今の自己資本 250 億円のうち、使われていない分は今後は株主に戻る。
さらに、会社は小さく、大株主が分散している。2007 年の経緯から買収への備えは強いが、本気の買い手が現れれば、純資産並みの 250 億円を超える値がつきうる。10 年以内の TOB の確率は 24% と見積もられ、悲観を割り引いても失うものは少ない。
慎重な見方
稼ぐ力が資本コストに届かない。過去 10 年の ROE の中央値は 3.5% で、売上は 10 年の年率で 1.3% 減った。営業利益率の 5% 近い水準は、工場集約と値上げの一回限りの効果にすぎない。
前の中計は売上 160 億円・営業利益 8 億円を掲げて、147 億円・6 億円にとどまった。その前の計画も同じ形で、目標を達成した実績が無い。会社は資本コストを 4% と置くが、これでは低すぎる。
利益の質も悪い。営業利益より受取配当や売却益が大きい年が多く、本業は 6 億円前後だ。2026 年 3 月期の純利益 24 億円は旧鳩ケ谷工場の跡地売却益 21.5 億円が主因で、翌期の予想は 9.5 億円に戻る。
競争は厳しい。PB は止まらず、卸 3 社が売上の 4 割を握るので価格交渉で弱い。家庭用は量が細り、値上げの余地が使い果たされると、売上が伸びなくなる。業務用の好調はインバウンドが一巡すれば薄れる。
TOB への期待も割り引くべきだ。買い手はソース事業の稼ぎでなく、純資産や持ち合い株に値をつける。本質価値より高い値段で買う人は少ない。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さは両方の見方が一致する。争点は、稼ぐ力が資本コストに届くか、そして買い手が現れるかだ。工場集約で利益率が 5% 近くまで戻ったことは認める。ただし中計の未達と ROE の低さは動かず、慎重な見方を強く取った。
確率は中立に 38%、やや悲観に 22% を置いた。強気の筋書きは TOB や大幅な還元の実現に左右されるため、楽観 10%、やや楽観 20% にとどめた。悲観は取引先の集中を考えて 10%。計算の結果は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,128 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 652 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 984 円118 億円、今との差 −46.8%、 期待の年率 −0.4%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,723 円207 億円 | 992 円119 億円 | +46.8% | +3.9% | 272 円33 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,465 円176 億円 | 784 円94 億円 | +21.5% | +2.0% | 450 円54 億円 |
| 中立 | 38% | 1,250 円150 億円 | 659 円79 億円 | +3.2% | +0.3% | 725 円87 億円 |
| やや悲観 | 22% | 720 円86 億円 | 515 円62 億円 | −33.2% | −4.0% | 272 円33 億円 |
| 悲観 | 10% | 292 円35 億円 | 329 円40 億円 | −66.4% | −10.3% | 62 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,128 円135 億円 | 652 円78 億円 | −3.8% | −0.4% | 1,780 円214 億円 |
今の株価時価総額 1,850 円222 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 家庭用の値上げが定着し、業務用と海外が伸びる 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,723 円207 億円
家庭用ソースは小容量・焼そば向けの商品を伸ばして首位を固め、市場が 3% 縮んでもシェアを 35% まで上げる。業務用は外食とインバウンドの追い風に加え、店向けの味づくりで新規の取引先を増やし、売上は今の 2 倍近くに育つ。海外は上海法人と輸出が広がり、売上 28 億円規模になる。
館林の 2 工場体制が軌道に乗り、利益率は 6% 台に上がる。全社の売上は 240 億円台で、2032 年度 245 億円という会社の長期ビジョンにほぼ届く。
資本政策も動く。政策保有株の売却を進め、自社株買いと配当を合わせた還元は 10 年で 110 億円を超える。自己資本はふくらまず、ROE は 5% 台まで上がる。買い手が現れれば、この水準が TOB の価格を決める目安にもなる。それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は PER の上限 13.3 倍を超えない。還元には株主優待の受け取り(年 0.9 億円×10 年)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用ソース:数量 243(家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質))× 価格 46.9%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0))→ 売上 114 億円・営業利益 10 億円。営業利益率9.0%
- 業務用ソース:数量 465(業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 16.1%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0))→ 売上 75 億円・営業利益 6 億円。営業利益率8.0%
- 家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連):数量 2,850(周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定))× 価格 0.9%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
- 海外(輸出・上海法人):数量 2,640(海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定))× 価格 1.1%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 207 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年で全部がうまくいく筋書きは、確度が高くない。国内の家庭用が人口減で細る中、シェアを 2 ポイント上げ、業務用と海外で会社の長期ビジョンに近い成長を実現する必要がある。2 回の中計で未達が続いた実績を考えて 1 割にとどめた。
やや楽観 20% 値上げと業務用の伸びで利益率が過去の山に戻る 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,465 円176 億円
家庭用は市場が 5% ほど縮むものの、シェア 34% を守って売上は 108 億円まで増える。値上げを毎年通せることが前提だ。業務用はお好み焼き・焼そば店や惣菜向けの需要を取り、売上 65 億円に届く。海外は 20 億円台に乗る。
工場集約の効果で利益率は 5.6% まで改善する。過去 12 年の山(5.7%)に並ぶ水準で、会社の言う「B-Challenge」の目標がやっと届く形だ。
還元は積極的で、自社株買いを毎年入れて 10 年で 85 億円を戻す。利益の 7 割台だ。一方で ROE は 4% 台にとどまり、中立の延長にある。還元には株主優待の受け取り(年 0.9 億円×10 年)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用ソース:数量 238(家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質))× 価格 45.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0))→ 売上 108 億円・営業利益 9 億円。営業利益率8.3%
- 業務用ソース:数量 444(業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 14.7%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。営業利益率7.5%
- 家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連):数量 2,760(周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定))× 価格 0.8%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。営業利益率2.2%
- 海外(輸出・上海法人):数量 2,508(海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定))× 価格 0.9%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 176 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経営の施策(工場集約・値上げ・業務用の新規開拓)が計画の七〜八割は実を結ぶ筋書き。最近の営業利益率の持ち直しを見ると現実的に起こりうるが、計画未達の歴史があるため中立より低く置いた。
中立 38% 国内は緩やかに縮み、値上げと業務用で名目の売上は伸びる 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,250 円150 億円
家庭用ソースは人口減と小容量化で実質の市場が 7% ほど縮む。ブルドックは首位級のシェア(推定 33%)を守り、物価並みの値上げで売上は 100 億円を少し超える。業務用は外食の底堅さで実質 5% 増え、売上は 57 億円になる。海外は 16 億円まで伸びるが、全体に占める割合は 1 割にとどまる。
営業利益率は 4.8%。会社の 2028 年 3 月期予想(4.8%)と同じ水準で、過去 12 年の山を超えない。工場集約でできた利益は、原料・人件費・物流費の上昇で相殺される。本社費も物価で増える前提だ。
純利益は 9.5 億円ほど。うち 4 割ほどが受取配当と利息で、本業の稼ぎだけなら 6 億円台にとどまる。還元は利益の 8 割、10 年で 70 億円。自己資本は 270 億円ほどで、ROE は 3.5%。ブルドックは「ソースの老舗」から抜け出さないが、事業は続く。還元には株主優待の受け取り(年 0.9 億円×10 年)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用ソース:数量 233(家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質))× 価格 44.3%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0))→ 売上 103 億円・営業利益 8 億円。営業利益率7.6%
- 業務用ソース:数量 424(業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 13.4%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0))→ 売上 57 億円・営業利益 4 億円。営業利益率7.0%
- 家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連):数量 2,700(周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定))× 価格 0.8%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。営業利益率1.5%
- 海外(輸出・上海法人):数量 2,376(海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定))× 価格 0.7%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最近 3 年の動きは、値上げが通る年と、原料高が利益を食う年が交互に来ている。工場集約で利益率は戻りつつあるが、計画は未達が続いた。中立に最も厚く置いた。
やや悲観 22% PB・安売りに押され、利益率が3%台に落ちる 利益 6 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 720 円86 億円
家庭用の値上げが原料高に追いつかず、物価の伸びを 3 ポイント下回る。小売りの PB(店のブランド)とコーミ・オタフクなど地域の競合に押され、シェアが 32% に下がる。業務用は人手不足で外食の営業が細り、売上は 47 億円にとどまる。
営業利益率は 3.0%。2024 年 3 月期に 1.1% まで落ちた時と同じ形で、固定費は下がらない。
還元は利益の減少に合わせて 10 年 55 億円まで落とす。それでも利益より多く出すので自己資本が増えず、ROE は 2% 台に落ちる。政策保有株の売却で穴埋めする余地はあるが、買収や設備投資に使えば戻らない。還元には株主優待の受け取り(年 0.9 億円×10 年×0.75)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用ソース:数量 223(家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質))× 価格 41.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0))→ 売上 93 億円・営業利益 6 億円。営業利益率6.0%
- 業務用ソース:数量 384(業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 12.4%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.5%
- 家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連):数量 2,550(周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定))× 価格 0.7%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 海外(輸出・上海法人):数量 1,980(海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定))× 価格 0.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:ROE 2.6% は k 以下。稼ぐ力(事業の純利益÷k)は約 80 億円で、PER 上限 13.3 倍の約 8 割(10.5 倍)。余った資産は 0.75 倍の 26 億円に、戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:ソースは必需品だが、差がつきにくく、価格競争に弱い。原料高が続く中で、量販店向けの値上げが通らない年が続く筋書きは自然で、中立の次に厚く置いた。
悲観 10% 主力のソースが構造的に押し負け、本業が赤字になる 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 292 円35 億円
家庭用ソースの市場が 2 割縮み、PB 化と大手の安売りでシェアは 28% に下がる。値上げは物価の 6 割程度しか通らず、売上は 67 億円まで落ちる。業務用は主要卸の絞り込みで取引を失い、売上 33 億円。海外は伸びない。
営業利益率はほぼゼロ。工場集約で固定費を下げても、売上が細る速さに追いつかない。純利益は受取配当にほぼ頼る。
配当は減らして 10 年の還元は 35 億円。その代わり政策保有株の売却を進める。経営は買収防衛をめぐって揺れ、株主は買い手に頼るしかなくなる。還元には株主優待の受け取り(年 0.9 億円×10 年×0.5)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 家庭用ソース:数量 200(家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質))× 価格 33.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.5%
- 業務用ソース:数量 343(業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 9.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
- 家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連):数量 2,250(周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定))× 価格 0.6%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
- 海外(輸出・上海法人):数量 1,584(海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定))× 価格 0.4%(ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-3.0%
倍率:営業利益が出ない構造的な負けで、純利益 2 億円は受取配当だけ。稼ぐ力(2÷k)は約 27 億円にとどまる。PER は上限 13.3 倍の 7.5 割(10 倍)。余った資産は 0.5 倍の 17.5 億円に戻り方 0.5 を掛けた。床の資産は別に立てない(純現金 4 億円と持ち合い株の戻り分で 22 億円ほど、稼ぐ力と余った資産の合計 35 億円を下回る。工場・本社は事業用で売れても戻る保証がない)。PBR が 0.1 倍まで下がるのは、本業が赤字で利益が受取配当だけになる構造のため。
確率:上場の食品会社が 10 年で営業赤字に落ちる確率は小さいが、売上が小さく固定費の重い会社で、主要取引先の三菱食品・国分・加藤産業 3 社が 4 割を占める。一社の取引条件の変更で採算が崩れうるため、1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家庭用ソース
ウスター・中濃・とんかつなどの家庭用ソース。売上の約 6 割で、首都圏に強い。
| 数量家庭用ソース市場(出荷ベース、億円、2026 年の値段で測った実質) | 価格ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.3308 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 33.1% | 83 | 6 |
| 10 年後 中立 | 233 | 44.3% | 103 | 8 |
取り方:家庭用ソースの売上 82.7 億円を、実質の市場 250 億円(推定)× シェアと物価の指数 0.3308 に分けた。小売りで 361 億円(2025 年、業界紙推計)の約 7 割が出荷ベースと置いた。シェア約 33% は筆者の推定。数量(実質の市場)は人口減と小容量化で中立 10 年 0.93 倍、価格はシェア × 物価で 1.34 倍。セグメント利益は非開示で、全社の営業利益 6.1 億円に合うよう推定した。市場の大きさ:オタフク・カゴメ・イカリ・コーミなどの競合と並ぶ。
業務用ソース
外食・総菜・加工食品メーカー向けのソース。お好み焼き・焼そば・揚げ物の店が主な顧客。
| 数量業務用ソース市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定) | 価格ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.10 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 404 | 10.0% | 40 | 3 |
| 10 年後 中立 | 424 | 13.4% | 57 | 4 |
取り方:業務用ソースの売上 40.4 億円(2025 年 3 月期の 40.2 億円を全体の伸びで補正)を、実質の市場 404 億円(推定。開示なし)× シェア 10% に分けた。数量は外食の底堅さとインバウンドで中立 10 年 1.05 倍、価格は物価並み 1.34 倍。市場の大きさ:外食店向けでは卸 3 社が主な経路。
家庭用その他(ドレッシング・たれ・お好み焼き関連)
ドレッシング・たれ・お好み焼き関連商品など、ソース以外の家庭用商品。
| 数量周辺の家庭用調味料市場(億円、実質、推定) | 価格ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.0057 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.6% | 17 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 0.8% | 21 | 0 |
取り方:ドレッシング・たれなど 17.2 億円(2025 年 3 月期 17.1 億円を補正)を、市場 3,000 億円(推定)× シェア 0.57% に分けた。2025 年は前年比でドレッシングが 12.9% 減。数量は中立 10 年 0.9 倍、価格は物価並み。
海外(輸出・上海法人)
輸出と上海法人の売上。上海はプライベートブランドの受注が増えている。
| 数量海外の日本式ソース需要(億円、実質、推定) | 価格ブルドックのシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.005 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,320 | 0.5% | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,376 | 0.7% | 16 | 0 |
取り方:輸出 5.4 億円と上海 1.2 億円(2025 年 3 月期の 6.6 億円)を、実質の市場 1,320 億円(推定。開示は売上のみ)× シェア 0.5% に分けた。数量は海外のお好み焼き・焼そば需要と現地化で中立 10 年 1.8 倍。長期ビジョン(2032 年度 63 億円)は強気の筋書きでも届かないと見る。
リスクと懸念
価格競争と PB の押し上げ
ソースは差がつきにくく、小売りの PB や特売の対象になりやすい。値上げが物価並みに通らない年が続くと、利益率が 2024 年 3 月期のように 1% 台へ戻る。
主要卸への取引先の集中
加藤産業・国分・三菱食品の 3 社で売上の約 4 割を占める。卸の再編や取引条件の変更が、そのまま売上と利益率に響く。
原料・包装・物流費の上昇
野菜・果実・砂糖・食酢・香辛料と容器の価格は、天候・為替・原油で振れる。値上げは数量の減少を伴うため、コストを全部は移せない。
中計の未達と資本効率の低さ
前の中計は売上 160 億円・営業利益 8 億円の目標に届かなかった。ROE が資本コストを下回る状態が続くと、経営への信頼が下がり、買収や株主提案の標的になりうる。
政策保有株の価格変動
上場株 38 億円・非上場株 11 億円の持ち合いがあり、受取配当と売却益が利益の 3〜4 割を占める。保有先の株価が下がれば自己資本と利益の両方が減る。
小さな会社の固定費と人手
従業員は連結 295 名。工場は館林に集約したため、事故や災害で生産が止まると代替が難しい。人件費の上昇も固定費を押し上げる。
今後の分かれ目
- 家庭用ソースの値上げが 2 年続けて数量減を上回って通ったら
- 営業利益率が 5% 台に乗る可能性が高まる。楽観寄りの筋書きに重みを移してよい。
- 中計の営業利益目標を、新しい計画で 2 期連続で達成したら
- 工場集約の効果が実ったと判断できる。中立の利益率の根拠が確かになる。
- 政策保有株を大きく売却して、その代金を自社株買いに回したら
- ROE が上がり、倍率の上限に近づく。余った資産の戻り方を 0.5 から引き上げて見直す。
- 大株主や買い手から TOB・提携の提案が出たら
- 買い値は純資産近辺が目安になる。ただし事業の稼ぐ力以上の値は付きにくい。
- 主要卸 3 社のいずれかと取引条件を巡る摩擦が表に出たら
- 悲観側の確率を引き上げる。売上の 4 割がかかる論点だ。
- 業務用ソースの伸びが前年比で 1 桁に落ちたら
- インバウンドの一巡と見て、業務用の数量を中立から外食の縮小側に寄せる。
見ておくもの
- 家庭用ソースの出荷額と、小容量・高付加価値品の売上構成
- 営業利益率の四半期推移(5% 台に乗るか)
- 政策保有株の売却額と、自社株買い・配当の実行額
- 主要卸 3 社との取引条件、大株主の動き(興和・佐藤食品工業・日本生命)
- 新しい中期経営計画の営業利益・ROE の目標と、その達成度
倍率と資本コストの決め方
家庭用・業務用・その他・海外の 4 つを、市場規模(実質)× シェアと物価の指数で積み上げ、価格は物価並みの 1.34 倍(PB に押される筋書きはそれより低く)とした。数量は国内が人口減で 0.9〜0.95 倍。営業利益率は中立で 4.8%(会社の 28 年 3 月期予想と同じ。過去 12 年の山 5.7% 未満)。ROE は 3.5% で k 以下なので PER の上限は 13.3 倍で、その約 8.6 割を置いた。今の株価や PBR からは倍率を置いていない。純資産に近い今の値段と比べるのは最後で、割高と出た。純現金は時価総額の 2% で分けず、政策保有株 35 億円だけを余った資産とした(受取配当は利益に残るため利息控除の 1.4% で二重の大半を避けたが、小さなずれは残る)。新リース会計基準は小さな影響のため数字の形は今のまま。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→12.9 倍・やや楽観 PER 12→12.9 倍・中立 PER 11.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。