結論
カンロは、飴で国内首位、グミで2位の菓子メーカーである。稼ぎの柱は「ピュレグミ」と、のど飴・ミルクキャンディだ。筆者の結論は、事業は優良だが今の値段には先の成長が織り込まれすぎている、というものである。
強みは二つある。飴では約2割のシェアを持ち、需要が人口とともに細っても指名買いが残る。グミでは新しい飲み方を作り、2025年に営業利益率を13.5%まで上げた。借金はなく、純現金を持つ。
一方、グミの市場は急成長から安定成長へ移った。2026年の上期は伸びが2.8%にとどまった。同じ時期にUHA味覚糖などが増産に動くので、2027年以降は供給が需要を上回りかねない。カンロ自身も130億円を投じて新しいグミのラインを建てている。需要の読みを外すと、固定費だけが重くなる。
売上のほぼ全部が、筆頭株主でもある三菱商事を通る点も無視できない。強い販売網だが、価格交渉の自由度は低い。
10年後の姿は、中立でも売上500億円台、営業利益率は11%台である。会社が掲げる13%以上は、新ラインの償却と広告費を考えると届きにくい。強気のケースでは今の値段を大きく上回るが、グミの勢いが止まる側にも同じくらいの重みがある。確率で重みをつけると、本質価値は今の値段をやや下回り、「やや割高」と筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見て、カンロは「良い商売をしているが、安全域が厚い会社ではない」と筆者は考える。
まず稼ぐ力である。飴の首位とグミの伸びで、営業利益率は13%台、ROEは17%台に乗り、借金もない。株主に残るお金は十分厚い。
次に堀の幅である。飴の棚は強いが、市場そのものは伸びない。グミの成功は、流行と生産能力の組み合わせで作られた面が大きい。流行の商品は、他社が作れるようになると堀が薄れる。UHA味覚糖や明治が同じ時期に増産するのは、まさにその動きだ。
三つめは資本の使い方である。130億円の新ラインは、自己資本の7割に近い。需要が想定どおりなら高い収益を生むが、外れると重い。安全域を重んじる目からは、この大きさは気になる。
最後に値段である。強気の筋書きは今の値段の2倍を超える価値を生むが、確率は低い。外れる側の筋書きは今の値段の半分にも届かない。両側に重みをつけた本質価値は、今の値段をやや下回る。確かな事業を持つ会社だが、割安とは言えないのが筆者の見立てである。
何で稼ぐ会社か
カンロは飴とグミを軸にした菓子メーカーで、売上は348億円(2025年12月期)である。工場は山口県光市、長野県松本市、同朝日村の3つ。自社で作り、売るのはほとんど三菱商事経由だ。
稼ぎの源は大きく三つに分かれる。第一に飴である。ミルクキャンディの「金のミルクキャンディ」、「健康のど飴」などが主力で、飴市場(約1,200億円)でシェアは約2割、首位を保つ。市場は横ばいから微減で、伸びない代わりに安定している。第二にグミである。「ピュレグミ」「カンデミーナグミ」「マロッシュ」が柱で、2025年のグミ市場(1,297億円)でシェアは14.9%の2位。2022年からは「ピュレグミ」がブランド別の首位に立った。第三が成長の芽で、直営店「ヒトツブカンロ」、2025年に始めた米国の販売、デジタルの通販である。会社は2030年までに、米国で50億円、ヒトツブカンロで25億円、デジタルで15億円を目標にする。
売り方に特徴がある。1973年から三菱商事が販売総代理店で、2025年12月期の製品販売は約319億円と売上のほぼ全部にあたる。三菱商事は議決権の約3割を持つ筆頭株主でもある。
設備は、グミが限界に近い。主力3ブランドは生産能力の上限で、2026年の上期には供給が追いつかない商品が出た。そこで朝日工場に新ラインを建てる。総額は約130億円、稼働は2027年7月で、グミの生産能力は約5割増える。
優良さと弱いところ
優良さの核は、飴の棚と「ピュレグミ」の指名買いだ。飴のシェアは約2割で、棚を押さえる営業力は三菱商事の網と一体で働く。ここまで棚を持つ飴の専業は他にない。
価格を決める力は中程度である。2022年の7.7%から、2024〜25年は13.5%まで営業利益率が上がった。価格改定の定着と、グミの付加価値化の両方が効いた。ただし、2026年9月の価格改定は中東情勢による原材料高への対応で、攻めの値上げではない。原材料の高止まりで、2026年の営業利益は期初の49億円から42億円へ下方修正された。
資本効率は高い。ROEは17〜19%、会社が示すROICも18%だ。ただし中身を割ると、成長の多くはグミ需要の急拡大という追い風から来た。飴だけでは、この水準にはならない。
弱い点が三つある。一つは品目の集中で、飴とグミの二つに事業の大半が寄る。二つめは、グミが流行に左右される商品であること。三つめは売上のほぼ全部を通す三菱商事への依存で、条件交渉の余地が狭い。
経営は、配当性向40%の目安と成長投資の両立を掲げ、2026年には自社株買いと消却も実行した。資本の使い方は誠実と見る。
工場は自社保有で、新リース会計の影響は小さい。新ラインの建設中は設備投資が重く、フリーキャッシュフローは一時的に薄くなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の飴市場は約1,200億円、会社は2030年まで横ばいと見る。人口が減る一方で、のど飴の需要は底堅く、健康を意識した飴は伸びる。数量は微減、価格は物価並みの上昇、という中立の姿である。
グミは2024年に1,138億円、2025年に1,297億円(前年比14%増)と急成長した。ところが2026年の1〜6月は683億円で、伸びは2.8%に落ちた。社長は「急成長から安定成長へ移った」と説明している。会社は2030年に1,500億円を見込むが、物価を3%で見れば、これは実質でほぼ横ばいだ。
競争は厳しくなる。2024年の売上ではUHA味覚糖が約189億円で首位に立ち、福島工場の新棟(2027年稼働)で生産量を約6割増やす。明治の「果汁グミ」は長年の定番で、再購入以外の指標で首位に立つ。ハリボー、三幸製菓などの新規参入も続く。各社が同じ時期に増産するので、2027年前後に供給が需要を上回る年がありうる。棚の取り合いになれば、値引き販促が増えて利益率を削る。
原材料は砂糖・水あめ・ゼラチン・果汁で、中東情勢によるエネルギー高と包装資材高が重なる。値上げが毎年のこととなるほど、買い控えとプライベートブランドへの移行が進む危険がある。
米国は日本の約10倍の市場で、一人あたりの消費金額も約3倍ある。ただしカンロは2025年9月に西海岸で売り始めたばかりで、現地生産に入るまでに数年かかる。
飴の側では、のど飴の需要が数量を支える。一方で、飴からグミへの移行が続くので、飴は守る事業、グミは攻める事業という分担が定着している。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向40%を基本に、成長投資との両立である。1株の配当は2024年から2026年の予想まで、毎年少しずつ上げる形だ。配当性向は40%前後で変わらない。2026年には自社株買いも進み、3月までに約100万株、7月31日の立会外取引でさらに約110万株を取得し、300万株を消却した。取得額は合計でおよそ26億円と見られる(取引の通知から推定)。
株主優待は、保有株数に応じて、300株以上から3,000株以上(3年超の保有でさらに手厚くなる)まで段階的に贈る自社製品である。費用の開示は見つからず、株主2万人弱から年に1億円ほどと推定する。これは株主への実質の還元なので、10年の還元に足した。
資本の大きな動きは、新グミライン(約130億円)である。自己資本190億円に対して大きく、2027年の稼働までは純現金33億円が純負債に傾く。借入は成長投資に見合うが、グミ市場が失速すれば償却負担だけが残る。
買われる側の可能性は、三菱商事の存在が決める。三菱商事は議決権の約3割を持つ持分法適用会社で、販売の要でもある。第三者の買収提案は通りにくく、買い増しがあっても現状の関係が続く公算が大きい。
すでに実行した自社株買いの約26億円は、自己資本の起点と今の株数に反映しており、10年の還元には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カンロは飴で約2割のシェアを持つ首位であり、その上にグミという成長の柱を重ねた。グミは「ピュレグミ」がブランド別で首位に立ち、シェアは15%台を保つ。しかも主力3ブランドは生産能力の上限で、供給が足りない。新ラインが2027年に動けば、生産能力は約5割増える。止まっていた売上が、一気に伸びる。
価格にも余地がある。「ピュレグミ プレミアム」のように大人の女性向けに高い値段を付けられ、社長も付加価値で単価を上げる方針を明言している。飴では、のど飴や機能性の飴が底堅い。
米国は日本の約10倍の市場で、2025年9月に動き出したばかりである。三菱商事は米国のチャネル、生産拠点、M&Aで連携する立場にある。2030年に米国で50億円という目標が、後ろ盾込みで現実味を帯びる。
財務も強い。借金はなく、配当性向40%を守りつつ自社株買いまで始めた。営業利益率は13.5%で、会社目標の13%以上をすでに超えている。10年で売上は600億円を超え、利益率は13%台で保たれる。
人口減の逆風も、のど飴の底堅さとグミの付加価値化で十分に打ち返せる。2022年以降の営業利益率の改善は一過性ではなく、事業の構造が変わった結果だ。
慎重な見方
グミの成長は止まりつつある。2025年の14%増から、2026年上期は2.8%増まで落ちた。この数字には値上げも含むので、数量はすでに横ばいに近い。
この局面で、UHA味覚糖は福島工場の新棟で生産量を6割増やし、年に約100品を出す。明治、ハリボー、三幸製菓も加わる。各社が同時期に増産すれば、2027年以降は供給が需要を上回る。カンロは130億円の新ラインを建て、稼働のたびに償却費が膨らむ。需要が足りなければ、稼働率が落ちて利益率が一気に下がる。2026年の営業利益がすでに期初予想から14%下がったことは、その兆しだ。
シェアも下がっている。2025年は15.9%から14.9%へ落ちた。2026年上期の15.1%は持ち直しだが、供給制約が解けたあとで取り戻す力があるかは別の話だ。
売上のほぼ全部が三菱商事経由なので、価格交渉と販促の自由度は狭い。米国は市場こそ大きいが、現地生産が整うまで赤字が続く。
飴は市場が横ばいで、人口減とともに細る。ROEの高さは、グミの追い風が終われば保てない。
新ラインの完成後は償却が毎年9億円前後かかる。会社目標の13%以上は、この負担を考えると届きにくい。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分に分があるのは、飴の首位とグミの供給余力で、ここは確かだ。慎重な見方に分があるのは、2027年以降の供給過剰と、新ラインの償却負担である。両方とも筋が通るが、グミは流行の商品で、他社の増産が同時期に重なる点が重い。確率は中立を最も厚くしつつ、やや悲観に楽観より厚い重みを置いた。悲観の確率には、グミ需要の失速に新ラインの稼働率低下が重なる構造的な負けを乗せている。飴の首位と無借金の財務があるので、全部を失う形は見ない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,565 円643 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 425 円175 億円)。 今の値に割り戻すと 1,031 円423 億円、今との差 −1.0%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,202 円1,315 億円 | 650 円267 億円 | +270.0% | +14.0% | 270 円111 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,313 円950 億円 | 531 円218 億円 | +173.2% | +10.6% | 569 円234 億円 |
| 中立 | 35% | 1,922 円789 億円 | 475 円195 億円 | +130.2% | +8.7% | 839 円345 億円 |
| やや悲観 | 27% | 663 円272 億円 | 332 円137 億円 | −4.4% | −0.5% | 269 円110 億円 |
| 悲観 | 11% | 243 円100 億円 | 161 円66 億円 | −61.2% | −9.0% | 44 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,565 円643 億円 | 425 円175 億円 | +91.2% | +6.7% | 1,990 円818 億円 |
今の株価時価総額 1,041 円428 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% グミが供給と需要の両方で伸び、米国が立ち上がる10年 利益 68 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 3,202 円1,315 億円
朝日工場の新ラインが2027年に動き、供給の足りなかった「ピュレグミ」が棚に戻る。「ピュレグミ プレミアム」のような高付加価値品が根づき、グミの値段は物価を上回って上がる。市場は実質で3割近く伸び、カンロのシェアは18%台に上がって首位争いに加わる。
飴は「金のミルクキャンディ」とのど飴で首位を守り、数量は横ばいを保つ。米国は西海岸から全土へ広がり、現地生産とM&Aで10年のうちに100億円を超える。ヒトツブカンロとデジタルも育つ。
売上は677億円、営業利益率は13.9%と、会社の2030年目標(売上500億円以上、13%以上)を5年遅れで超える形になる。借金は少なく、増配と自社株買いを続ける。
三菱商事との連携も深まり、米国のチャネルと現地生産の確保で同社の後ろ盾が効く。飴とグミの二本柱に米国が加わり、品目集中の弱みも薄れる。
- 飴:数量 255(飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア)× 価格 1.38(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 239 億円・営業利益 42 億円。のど飴・機能性で値上げ定着
- グミ:数量 305(グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア)× 価格 1.40(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 290 億円・営業利益 52 億円。新ライン稼働・高付加価値化
- その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用):数量 110(実質の売上規模(億円・今の値段のまま))× 価格 1.34(値段の指数(2025年=1.00))→ 売上 147 億円・営業利益 13 億円。米国が100億円超
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 19.01 倍、時価総額 1,289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:グミ市場の実質の伸び、新ラインの稼働、米国の立ち上がりが同時に続く必要がある。他社も同時に増産する中で全部がそろう確度は低く、7%にとどめる。
やや楽観 20% グミが安定成長に落ち着き、新ラインが埋まる10年 利益 50 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 2,313 円950 億円
グミ市場は実質で1割強伸び、新ラインの稼働でカンロのシェアは17%台に上がる。値上げは物価を少し上回る程度に通る。飴は微減だが首位を保つ。
米国は西海岸から隣の州へ広がり、実質で売上は30億円規模(今の値段)に育つが、現地生産には入らず、利益は薄い。ヒトツブカンロやデジタルも黒字を保ち、その他の売上は実質で80億円ほどになる。
売上は570億円、営業利益率は12.2%である。新ラインの償却と広告費を、規模の効果が吸収する形になる。増配と自社株買いが続き、ROEは14%台で推移する。
グミは「ピュレグミ」のブランド力が保たれ、他社の増産が棚の奪い合いにならないのが条件になる。値上げは毎年少しずつ通り、数量の減りを値段が補う。
- 飴:数量 245(飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア)× 価格 1.36(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 227 億円・営業利益 37 億円。首位維持・値上げ定着
- グミ:数量 254(グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア)× 価格 1.37(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 237 億円・営業利益 39 億円。新ラインでシェア17%台
- その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用):数量 80.0(実質の売上規模(億円・今の値段のまま))× 価格 1.34(値段の指数(2025年=1.00))→ 売上 107 億円・営業利益 6 億円。米国は立ち上げ段階
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.22 倍、時価総額 911 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場は安定成長に移ったが、カンロは供給制約が解ける2027年にシェアを少し取り戻せる。飴の首位は動かない。ここまでは基本の読みの上振れで、20%とした。
中立 35% グミは安定成長、飴は横ばいで、利益率は11%台に落ち着く10年 利益 42 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 1,922 円789 億円
10年後、飴は実質で5%ほど数量が細る。のど飴が下支えし、首位は保つ。グミ市場は実質で4%伸び、カンロのシェアは新ラインで16%台に上がる。価格は物価並みで、10年に1.34倍である。
米国は立ち上がるが、利益に効くのは終盤になる。ヒトツブカンロとデジタルは黒字で、実質で売上は今の1.5倍弱に育つ。
売上は511億円。営業利益率は11.4%で、2024〜25年の13.5%には戻らない。新ラインの償却が毎年9億円前後で利益を押し下げ、広告費も重い。それでも、売上500億円という会社の2030年の目標を、5年遅れて越える。ROEは12%台で、自己資本が厚みを増して落ち着く。
配当性向40%の目安は守られ、自社株買いは利益の1割ほどを機動的に行う。三菱商事の持株比率は今と大きく変わらない。
- 飴:数量 236(飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア)× 価格 1.34(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 215 億円・営業利益 34 億円。首位維持・数量は微減
- グミ:数量 222(グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア)× 価格 1.34(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 202 億円・営業利益 32 億円。シェア16%台・償却負担
- その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用):数量 70.0(実質の売上規模(億円・今の値段のまま))× 価格 1.34(値段の指数(2025年=1.00))→ 売上 94 億円・営業利益 5 億円。米国は後半に利益
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.76 倍、時価総額 742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種の中心の見通し(国内数量は微減から横ばい、価格は物価並み)に、グミの安定成長と新ラインの稼働を重ねた中心の筋書き。グミの供給過剰の危険があるため、やや悲観側にも厚みを残す。
やや悲観 27% グミの供給過剰で値引きが常態化し、利益率が7%台に沈む10年 利益 22 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 663 円272 億円
2027年以降、各社の新ラインが一斉に動き、グミの棚は商品であふれる。値引き販促が当たり前になり、グミの値段は物価に追いつかない。カンロのシェアは14%を割り、実質の数量も今より減る。新ラインの稼働率は上がらず、償却が利益を削る。
飴は市場の縮小とともに数量が1割ほど減る。値上げは物価を少し下回る程度にしか通らない。米国は赤字を抜けきれず、規模も小さい。
売上は409億円、営業利益率は7.3%まで下がる。共通費は物価で増えるので、利益の薄さが目立つ。それでも借金は増えすぎず、配当性向40%の目安は崩さず、自社株買いは控える。
三菱商事の販売網は維持され、飴の首位が事業を支える。
- 飴:数量 215(飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア)× 価格 1.30(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 190 億円・営業利益 27 億円。市場縮小・値上げは物価未満
- グミ:数量 180(グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア)× 価格 1.20(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 147 億円・営業利益 15 億円。値引きと稼働率低下
- その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用):数量 55.0(実質の売上規模(億円・今の値段のまま))× 価格 1.30(値段の指数(2025年=1.00))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。米国は赤字を抜けきれない
倍率:ROE7.4%がk7.8%とほぼ同じなので、PERの上限は1÷k=13.3倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約8割(10.5倍)を採用。値引き販促が常態になる構造的な負けの筋書きで、上限の7割台後半から8割に置いた。
確率:UHA味覚糖など各社が2027年前後に増産し、グミが供給過剰に傾く可能性は相当ある。カンロは新ラインの償却も重く、値引き販促で利益率が下がる形は、中立の次に起きやすい。
悲観 11% グミの流行が去り、新ラインが重荷になって優良さを失う10年 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 243 円100 億円
グミは一時の流行で終わり、市場は実質で2割以上縮む。各社の増産が重なって値引きが続き、カンロのグミは数量が今の半分近くまで落ちる。130億円の新ラインは稼働率が上がらず、償却と固定費だけが残る。専用設備の売却価値も低い。
飴は縮む市場で首位を守るが、値上げは物価を大きく下回る。米国は撤退に近い規模に縮む。共通費は物価で増えるので、営業利益はほぼゼロになる。
それでも飴の首位と、売上債権・工場の資産が残る。配当は利益に合わせて減り、自社株買いは止まる。10年の還元は、利益の4割と優待を縮めた分を合わせた66億円ほどにとどまる。
三菱商事は販売を続けるが、成長の期待は失われ、会社は縮小均衡の中で配当を守ることを優先する。
- 飴:数量 190(飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア)× 価格 1.20(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 155 億円・営業利益 14 億円。市場縮小・値上げは通らない
- グミ:数量 110(グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア)× 価格 1.05(値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率)→ 売上 79 億円・営業利益 0 億円。流行終了・固定費だけ残る
- その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用):数量 35.0(実質の売上規模(億円・今の値段のまま))× 価格 1.20(値段の指数(2025年=1.00))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。米国は縮小
倍率:純利益は0.4億円とほぼ消え、利益から値を付けられない。稼ぐ力(純利益÷k)は5億円にすぎず、床は売れる資産に置く。今の自己資本190億円に0.53倍を掛けた形で、新グミライン約130億円の専用設備の大きな減損を折り込む。
確率:グミが流行品として需要を落とし、供給過剰と新ラインの固定費、三菱商事との条件の悪化が重なる複合の筋書き。固定費の高い事業で起きると利益が消えるため、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
飴
金のミルクキャンディ、健康のど飴などの飴。国内の飴市場でシェア約2割の首位。
| 数量飴の実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=飴市場 × シェア | 価格値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 248 | 1.00 | 169 | 30 |
| 10 年後 中立 | 236 | 1.34 | 215 | 34 |
取り方:カンロは単一セグメントで、飴・グミの売上は非開示。飴の市場約1,270億円×シェア19.5%=約248億円(小売金額)を数量とし、小売から出荷への掛け率0.68(卸・販売総代理店の取り分を引く推定)で売上に直した。営業利益の配分も推定(全社47億円のうち共通費約10億円を引き、残りを売上と利益率の見立てで配分)。価格は名目で物価並みに上がり、10年で1.34倍が中立。数量は実質で、人口減を、のど飴と機能性の飴が相殺して10年0.95倍。
グミ
ピュレグミ、カンデミーナグミ、マロッシュ、カンロ ザ・ストロング。国内のグミ市場でシェア約15%の2位。
| 数量グミの実質の小売販売額(億円・今の値段のまま)=グミ市場 × シェア | 価格値段の指数(2025年=1.00)。売上=数量×指数×卸の掛け率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 193 | 1.00 | 131 | 25 |
| 10 年後 中立 | 222 | 1.34 | 202 | 32 |
取り方:グミ市場1,297億円(2025年、インテージSRI+)×シェア14.9%=約193億円(小売金額)を数量とし、掛け率0.68で売上に直した。営業利益は推定(飴より利益率がやや高い)。価格は名目で、物価並みの1.34倍を中立に置く。数量は実質で、会社の2030年1,500億円の市場は物価を3%で見ると実質でほぼ横ばい。中立では市場が10年で実質1.04倍、カンロのシェアが14.9%から16.4%に上がり、数量は1.15倍。
その他(ヒトツブカンロ・米国・デジタル・業務用)
直営店ヒトツブカンロ、2025年に始めた米国の販売(Kanro America)、デジタルの通販、業務用など。
| 数量実質の売上規模(億円・今の値段のまま) | 価格値段の指数(2025年=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 47.9 | 1.00 | 48 | 2 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 1.34 | 94 | 5 |
取り方:全社売上347.7億円から飴・グミの推定を引いた残り。うちヒトツブカンロは約17億円(2030年目標25億円からの逆算)。米国は2025年9月に販売を始めたばかりで、ほぼ立ち上げ費用の段階。数量は実質、価格は物価並み。開示が無く、米国・直営店・デジタルが混ざるため、数量は実質の売上規模で置く。会社の2030年目標(米国50億円・ヒトツブ25億円・デジタル15億円)をそのまま使わず、中立では実質で1.46倍にとどめる。
リスクと懸念
グミの供給過剰と値引き
UHA味覚糖が福島工場の新棟(2027年稼働)で生産量を約6割増やすなど、各社が同じ時期に増産する。グミ市場は2026年上期に伸びが2.8%へ落ちた。需要が追いつかなければ、値引き販促が増え、新ラインの稼働率も上がらない。
新グミライン(約130億円)の投資負担
自己資本190億円に対して大きい投資で、2027年7月の稼働後は償却が毎年9億円前後かかる。需要の読みを外すと、償却と固定費が利益率を押し下げる。純現金33億円は工事の間に純負債へ傾く。
売上のほぼ全部が三菱商事経由
1973年から三菱商事が販売総代理店で、2025年12月期の製品販売は約319億円と売上のほぼ全部にあたる。同社は議決権の約3割を持つ筆頭株主でもある。条件交渉の余地が狭く、同社の戦略が変わると影響が大きい。
原材料・エネルギー高の長期化
砂糖・水あめ・ゼラチン・包装資材は中東情勢の影響を受ける。2026年12月期の営業利益は期初49億円から42億円へ下方修正された。2026年9月の価格改定が通らなければ、さらに削られる。
品目の集中とブームの終わり
飴とグミで事業の大半を占める。飴の市場は横ばいから微減で、グミは流行に左右される。シェアは2025年に15.9%から14.9%に下がった。一つが崩れても、もう一つで穴を埋めるのが難しい。
米国事業の立ち上がり
米国は日本の約10倍の市場だが、2025年9月に西海岸で売り始めたばかりだ。現地生産は売上が2桁億円に達してから検討する段階で、立ち上げ費用が先行する。2030年の売上50億円の目標が遅れる可能性がある。
株主優待の縮小・廃止
300株以上で自社製品を贈る優待は、費用の開示がなく年約1億円と推定する。業績が悪化すれば縮小される可能性がある。株主還元の一部としては小さいが、個人株主の裾野を支えてきた。
今後の分かれ目
- 2027年の新ライン稼働後もグミ市場の伸びが2〜3%にとどまり、他社の増産が続いたら
- やや悲観・悲観の確率を引き上げ、グミの値段の前提を下げる。
- グミのシェアが2027年に17%台へ戻り、値上げが物価を上回って通り続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げ、利益率の前提を上げる。
- 2026年9月の価格改定が数量を落とさず通ったら
- 利益率の下振れ懸念を和らげ、中立の営業利益率を見直す。
- 米国の売上が2桁億円に届き、現地生産を決めたら
- その他セグメントの数量と利益率の前提を上げる。
- 三菱商事が保有を増やす、または販売契約の条件が変わったら
- 資本政策・TOBの確率と、価格決定力の前提を見直す。
- 配当性向40%の方針や優待が縮小されたら
- 還元の前提と、株主の受け取りの価値を下げる。
見ておくもの
- グミ市場の月次の伸び率と、カンロのシェア(四半期)
- 新グミライン(2027年7月稼働)の稼働率と償却費の立ち上がり
- 2026年9月の価格改定後の数量・営業利益率(2026年10〜12月期)
- UHA味覚糖・明治・ハリボーの増産計画と、グミの店頭値引きの頻度
- 米国(Kanro America)の売上規模と現地生産の判断
- 三菱商事の持株比率と販売契約の条件
倍率と資本コストの決め方
飴・グミ・その他の三つを、市場 × シェア(実質)と値段の指数、小売から出荷への掛け率で積み上げ、10年の利益を出してから倍率を決めた。倍率は式の上限(ROEと資本コスト7.8%から出した正当化PER)の約8割で、今の株価(PER約13倍、PBR約2.4倍)とは比べていない。結果は、中立のPER13.7倍が今の水準に近いが、利益が10年で1.4倍に伸びる分を割り引いて現在価値に直すと、今の値段をやや下回る。飴・グミの内訳と掛け率は、会社が開示していない推定である。グミ市場の急成長を前提にせず、会社の2030年目標も中立に使わなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.7→19.01 倍・やや楽観 PER 14.9→18.22 倍・中立 PER 13.7→17.76 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%にqualityを足して決める。事業が傾いているわけではないので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.80%。