結論
仙波糖化工業は、カラメル色素と、粉末茶・粉末調味料などの乾燥素材を作る食品素材メーカーである。筆者の結論は「堅実だが、いまの値段は割高」だ。
稼ぎの柱は乾燥製品と冷凍製品で、売上の5割強を占める。カラメルは国内首位級だが、市場そのものは伸びない。営業利益率は5%前後で、過去の最良期でも5.5%にとどまる。
自己資本は厚く、実質無借金である。ただし自己資本利益率は4%台で、資本コストの7.5%に届かない。利益の7割を会社にためても、それが高い稼ぎを生んでいない。
先には栃木県真岡市の新工場用地の取得が控える。投資で能力を増やしても、利益率が上がる保証は薄い。東洋水産が直接・間接で約26%を持つが、有報は通常の取引先と同じ条件の取引と書く。親会社ではない。
筆者は、帳簿の厚みを割り引いて見る。時価総額は自己資本の6割台と安く見えるが、稼ぐ力から測ると割高の側にある。10年後の価値は今の時価総額の半分ほどにとどまり、買う理由は見つけにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業を、悪くない値段で」持つ対象にはなるが、「安く買う」対象ではない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、設備更新と新工場に食われる。減価償却が年8億円ある中で、新工場の建設が重なるからだ。表の純利益より、手元に残る現金は細い。
資本の使い方を見ると、利益の7割を会社に残しているが、その資本の稼ぎは4%台である。利益をためても、株主にとっての価値はためた額に満たない。これが最大の弱みだ。
強みは、潰れにくさと、実質無借金の安全性である。悲観の筋書きでも、事業が止まるほど傷まない。
安全域は、床としての資産の価値にある。ただ、床は時価総額の半分近くで、今の値段との差はさほど厚くない。筆者は、自己資本利益率が資本コストに届くまでは、帳簿の厚みを根拠に安いとは言わない。
何で稼ぐ会社か
事業は食品の製造販売の単一セグメントで、製品の種類で見るのが実態に近い。直近期の売上は194億円である。
最大は乾燥製品類で71億円。粉末茶、粉末味噌・醤油、粉末山芋、凍結乾燥品を、飲料・即席麺・調味料のメーカーに納める。冷凍製品が30億円で続く。
看板のカラメル製品は45億円。清涼飲料、たれ、菓子などの色と香りを決める素材で、国内シェアは首位級だ。組立製品類が35億円、その他が13億円ある。
主な工場は栃木県真岡市にあり、乾燥や抽出の設備が集まる。ベトナムには製造と販売の子会社を置き、カラメルなどを現地で作る。福建省の食品会社には28.6%を出資し、持分法で取り込む。
連結の従業員は491人で、臨時雇用も160人ほどいる。減価償却費は年7.8億円、直近の設備投資は4.3億円だった。買い手は大手食品メーカーで、顧客ごとの仕様に合わせた受託に近い仕事が多い。値段は原料の動きを見て改定する形である。ベトナムでは販売会社が現地の食品メーカーと日系の進出企業に売る。製品の種類が多く、1つの顧客に頼り切らない点は強みだが、1品ごとの規模は小さい。
優良さと弱いところ
筆者の評価は「技術の蓄積はあるが、堀は浅い」だ。カラメルは色の再現性と安全管理が問われ、大手顧客の仕様に入り込んでいる。粉末化・凍結乾燥は、味と香りを残す加工の腕が物を言う。
ただし、顧客は大手食品メーカーで、値段交渉は厳しい。原料高を転嫁するのに時間がかかり、2023年3月期は営業利益率が1.4%まで落ちた。値段を自分で決められる会社ではない。
営業利益率は過去12年で1.4〜5.5%の幅にある。実質無借金で、自己資本比率は6割に近い。財務は強いが、その強さが稼ぐ力に変わっていない。自己資本利益率の中央値は5%台で、資本コストを大きく下回る。
配当は利益の3割ほどで、年1.7億円だ。ためた利益は新工場や海外に回る。ベトナムの工場は稼働が上がるまで時間がかかり、投資の回収はこれからである。
経営は慎重で、無理な買収をしてこなかった点は評価できる。ただ、資本を効率よく使う意識は強くは見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品素材は、人口減で国内の総量が緩やかに細る市場である。カラメルは清涼飲料や調味料に使われるが、数量は横ばいから微減だ。
一方で、粉末茶や粉末調味料、凍結乾燥の具材は、簡便化・健康志向・即席麺の高付加価値化で需要が底堅い。外食・中食の人手不足で、加工済みの素材を使う動きも続く。筆者は、乾燥・冷凍の数量が10年で1割ほど伸びると見る。
原料と包装、エネルギーの値上がりが続き、加工食品の値上げが相次ぐ。ただ、素材メーカーは顧客を通した間接の値上げになり、転嫁が遅れやすい。
市場全体の規模は公的な統計が乏しく、同社のシェアも開示から推定するしかない。その分、数量の置き方は保守的にしてある。競合は、カラメルでは海外の大手色素メーカーと国内の中堅、乾燥では食品素材の専業と大手食品メーカーの内製である。顧客が内製化に動く恐れもある。
価格は物価並みの上昇を前提にしたい。ただ、実際には一部しか通せない年もある。数量の伸びが小さい市場で、利益率を守れるかが焦点だ。人手不足による人件費の上昇も、工場の多い同社には効く。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、配当総額は年1.7億円ほどである。利益の3割前後を配り、残りは内部に残す。自社株買いは目立たない。
資本の使い道は、国内の設備更新とベトナムである。栃木県真岡市に新工場用地(約66,000平方メートル、約17億円)を買い、2027年3月に引き渡される予定だ。建屋と設備の額は開示で確かめられていない。償却は今の設備の分が取得原価のまま続き、新工場の分が上乗せされる。
資金は手元と借入で賄う形で、実質無借金の財務は薄くなる。借入が増えれば利払いは新しい金利になる。
東洋水産が直接・間接で約26%の株主で、有報は「その他の関係会社」とし、他の顧客と同じ条件で販売すると書く。持ち合い色は薄く、筆者は支配関係のある親子上場とは見ない。TOBの可能性はゼロではないが、前提にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自己資本は128億円あり、時価総額の1.5倍ある。実質無借金で、潰れる心配はない。いまの値段は帳簿の6割台で、資産を見れば安い。
乾燥製品は伸びている。粉末茶や粉末味噌・醤油、冷凍製品は直近期に好調で、自社商材の売上は前期比4.7%増えた。前の期の事業整理損が一巡し、純利益は7割以上増えた。会社予想の営業利益率は4.7%で、さらに上向く。
ベトナムの工場が稼働を上げれば、カラメルの海外売上が積み上がる。栃木の新工場は能力と省人化を同時に進め、利益率を5%台に乗せる余地がある。
物価が3%で続くなら、土地と設備の含み益も膨らむ。東洋水産という大手の取引先が株主にいる安心感もあり、TOBの思惑が出れば割安が一気に解消される。
配当は増やす余地が大きい。利益の3割しか配っておらず、自己資本の厚さを考えれば、増配や自社株買いで資本効率を直せる。経営が方針を変えれば、いまの低い自己資本利益率は短い期間で改善しうる。
慎重な見方
帳簿は厚いが、稼ぎが追いついていない。自己資本利益率は4%台で、資本コスト7.5%を3ポイント下回る。この水準なら、ためた利益の価値は、ためた額に届かない。
営業利益率は過去12年で5.5%が天井だ。大手顧客に挟まれ、原料高の転嫁は遅く、2023年3月期は1.4%まで落ちた。値上げを通せなければ利益は簡単に削られる。
新工場への投資は、償却が重くのしかかる。能力を増やしても、国内の数量は横ばいから微減で、稼働が埋まる保証はない。ベトナムも回収に時間がかかる。
顧客の食品メーカーが内製化や調達先の切り替えに動けば、数量は落ちる。人件費の上昇も、製造に人手を要する同社には重い。乾燥・冷凍の伸びも、他社と競合するため価格の天井は低い。
土地や設備の含み益は、売る予定がなければ株主に届かない。東洋水産のTOBを期待する材料も、確かな根拠がない。配当を厚くする約束も無く、現状のままなら資本は寝たままだ。
どちらに重みを置いたか
帳簿の厚さに根拠のある強気の言い分と、稼ぐ力の低さに根拠のある慎重な言い分は、どちらも事実だ。ただ、資本を効率よく使えていない会社の帳簿は、額面どおりには数えられない。筆者は、稼ぐ力の側を重く見た。
確率は中立に4割強を置き、悲観に厚い側を2割台に乗せた。楽観は、利益率が過去の山を超える筋書きになるため、1割に満たない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 725 円82 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 159 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 444 円51 億円、今との差 −39.2%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,142 円130 億円 | 211 円24 億円 | +85.3% | +6.4% | 95 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 977 円111 億円 | 184 円21 億円 | +59.1% | +4.8% | 232 円26 億円 |
| 中立 | 42% | 813 円93 億円 | 167 円19 億円 | +34.2% | +3.0% | 411 円47 億円 |
| やや悲観 | 23% | 368 円42 億円 | 132 円15 億円 | −31.5% | −3.7% | 115 円13 億円 |
| 悲観 | 8% | 290 円33 億円 | 88 円10 億円 | −48.3% | −6.4% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 725 円82 億円 | 159 円18 億円 | +21.0% | +1.9% | 884 円101 億円 |
今の株価時価総額 730 円83 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:乾燥・冷凍が伸び、利益率が過去の山を超える 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,142 円130 億円
乾燥・冷凍の数量が10年で3割伸びる。粉末茶、即席麺の具材、凍結乾燥品で大手顧客の採用が広がり、値上げも物価を少し上回って通る。
カラメルはベトナムの稼働が上がり、国内の細りを補う。新工場は能力と省人化の両方を実現し、全社の営業利益率は5.6%まで上がる。
配当は利益の3割を保ち、金額が増える。自己資本利益率は5%台半ばで、資本コストにはまだ届かない。
この筋書きの条件は、顧客の内製化を抑え、価格交渉で押し返せることだ。仕様に入り込んだ受託に近い関係を、新製品で広げる必要がある。これは過去12年で一度も起きていない水準で、実現の道のりは長い。
- カラメル製品:数量 15.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 42(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。営業利益率6.0%
- 乾燥・冷凍製品:数量 9.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 203(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 185 億円・営業利益 11 億円。営業利益率6.0%
- 組立製品・その他:数量 12.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 54(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 64 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.4%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:乾燥・冷凍の数量が3割増え、値上げも物価を上回って通る筋書き。過去12年で5.5%が天井の事業で、これを超える確率は低く見て1割未満。
やや楽観 20% やや楽観:会社予想の改善が定着し、利益率は5%台半ば 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 977 円111 億円
乾燥・冷凍の数量が2割増え、カラメルは微減にとどまる。会社予想の営業利益率4.7%から、新工場の効果で5%台半ばまで上がる。
値上げは物価並みに通る。原料高の転嫁は半年以内に進み、利益の振れは小さくなる。
配当は利益の3割で、増配が続く。自己資本利益率は4.8%で、資本コストには届かない。新工場の償却は増えるが、増えた数量と値上げの利益がそれを上回る。
ベトナムは黒字化するが、全体の利益を押し上げるほどではない。大手顧客との関係は安定して続く。粉末茶など高単価の品の比率が少しずつ上がり、平均の単価を押し上げる。
- カラメル製品:数量 14.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 41(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 59 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.7%
- 乾燥・冷凍製品:数量 8.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 197(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 166 億円・営業利益 9 億円。営業利益率5.6%
- 組立製品・その他:数量 11.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 53(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.2%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想(営業利益率4.7%)から改善が続き、物価並みの値上げが通る筋書き。直近の増益を踏まえ2割。
中立 42% 中立:国内は横ばい、乾燥・冷凍が下支え 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 813 円93 億円
カラメルの数量は10年で5%減り、乾燥・冷凍は1割増える。価格は物価並みの1.34倍で、売上は268億円に近づく。
全社の営業利益率は4.6%前後で今と変わらない。原料と人件費の上昇は値上げでほぼ吸収する形だ。償却は今の設備の分が取得原価のまま、新工場の分が上乗せされる。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は借入で賄い、利払いが増える。
配当は利益の3割で、10年で19億円ほど。自己資本は172億円まで増えるが、自己資本利益率は4%台にとどまる。
堅実に稼ぐが、資本を増やしても稼ぎが増えない。筆者はこれが最も現実的と見る。
- カラメル製品:数量 14.3(出荷量(千トン、推定))× 価格 40(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.3%
- 乾燥・冷凍製品:数量 7.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 194(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 150 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.0%
- 組立製品・その他:数量 11.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 54(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(国内数量は横ばいから微減、価格は物価並み)と、会社予想の営業利益率4.7%に近い中心の筋書き。過去12年の山には届かない。
やや悲観 23% やや悲観:転嫁が遅れ、利益率が3%台に落ちる 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 368 円42 億円
原料高の転嫁が遅れ、顧客の値下げ圧力も強まる。値上げは物価の7〜9割しか通らず、営業利益率は3.5%前後まで下がる。
カラメルの数量は1割減り、乾燥・冷凍は横ばいにとどまる。新工場は稼働が埋まらず、償却が利益を削る。
配当は金額を維持するが、利益に占める割合は上がる。自己資本は163億円で、利益が小さいため自己資本利益率は3%に届かない。
実質無借金の財務のおかげで倒れはしない。配当を守るため、利益の大半が配当と設備の維持に消える。ただ、投じた資本の稼ぎが伸びず、株主価値は伸びない。原料高が長引いた年に、利益が半分近くまで落ちる姿が目に浮かぶ。
- カラメル製品:数量 13.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 39(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。営業利益率4.3%
- 乾燥・冷凍製品:数量 7.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 188(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。営業利益率3.8%
- 組立製品・その他:数量 10.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 51(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
倍率:自己資本利益率は約2.8%で資本コストに届かない。g3%で正当化PERは9.1倍、構造的に細る事業なのでその88%の8.0倍に置いた。
確率:2023年3月期に営業利益率が1.4%まで落ちた実績があり、原料高と顧客の値下げ圧力が重なる筋書きは現実味がある。2割台前半。
悲観 8% 悲観:顧客の内製化と価格競争で本業が傷む 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 290 円33 億円
大手顧客の内製化や調達先の切り替えが進み、数量が2割減る。値上げは物価の半分しか通らず、営業利益率は1%台に落ちる。
新工場とベトナムの投資が裏目に出て、稼働の低い設備が減損の対象になる。自己資本は120億円まで減る。
配当は維持できず、半分に減る。それでも実質無借金で、倒産の恐れはない。ベトナムの設備は売却も難しく、現地の損失が連結に響く。
時価総額は稼ぐ力でなく、売れる資産で測る。事業の再建が止まり、現金を使う先がない状態で、少数株主は資本を戻してもらえない。取引先の大手が調達を絞れば、再建の足がかりも失われる。
- カラメル製品:数量 12.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 36(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
- 乾燥・冷凍製品:数量 6.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 174(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 104 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
- 組立製品・その他:数量 9.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 46(平均単価(万円/トン、名目・推定))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:純利益2億円では稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本128億円に対するPBR0.26倍(時価総額33億円)に置いた。
確率:本業が構造的に負ける筋書きだが、実質無借金で売れる資産もあり、1割未満にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
カラメル製品
清涼飲料・たれ・菓子などの色と香りをつけるカラメル。国内首位級。売上の約23%。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 30 | 45 | 2 |
| 10 年後 中立 | 14.3 | 40 | 57 | 3 |
取り方:有報の製品別売上44.9億円(カラメル製品)をそのまま使い、数量は売上÷単価の推定(単価は非開示、トン30万円前後と置いた)。数量は国内の成熟需要で10年0.95倍(ベトナム工場の分は微増)、価格は物価並み1.34倍。利益は単一セグメントなので製品別は開示がなく、全社の営業利益9.0億円を売上で按分して推定。
乾燥・冷凍製品
粉末茶・粉末味噌・醤油、凍結乾燥品、冷凍製品。自社商材の中心。売上の約52%。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.0 | 145 | 101 | 5 |
| 10 年後 中立 | 7.7 | 194 | 150 | 7 |
取り方:乾燥製品類71.4億円と冷凍製品29.9億円の合計101.3億円。数量は売上÷単価の推定(粉末茶・凍結乾燥品は高単価で、トン140万円台と置いた)。数量は粉末茶・即席麺の具材・調味料素材の伸びで10年1.10倍、価格は物価並み1.34倍。営業利益は全社9.0億円の按分で推定。
組立製品・その他
調味料などの組み合わせ(組立)製品と商品販売。売上の約25%。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 40 | 48 | 1 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 54 | 61 | 2 |
取り方:組立製品類35.2億円とその他12.7億円の合計47.9億円。数量は売上÷単価の推定。数量は顧客の内製化・国内需要の細りで10年0.95倍、価格は物価並み1.34倍だが原料転嫁の遅れがあり利益率は低い。営業利益は按分で推定。
リスクと懸念
原料高の転嫁の遅れ
砂糖・茶葉・包装資材・エネルギーが上がっても、大手顧客への値上げは数か月から1年遅れる。2023年3月期は営業利益率が1.4%まで落ちた。物価が続く局面では、この遅れが利益を繰り返し削る。
新工場投資の回収
真岡市の新工場用地は約17億円で、建屋・設備はこれから。償却は取得原価で上乗せされ、国内の数量が伸びなければ稼働が埋まらない。実質無借金の財務が、借入と利払いで薄くなる。
顧客の内製化と切り替え
売上は大手食品メーカーに偏る。粉末化や色素を内製する、あるいは安い調達先へ切り替える動きが出れば、数量と値段の両方が圧力を受ける。
海外事業の立ち上がり
ベトナムの工場と販売会社は、稼働が上がるまで利益が出にくい。為替や現地の規制、持分法の福建龍和食品の業績にも左右される。
食品安全と法規制
食品添加物のカラメル色素は規格・表示の規制の対象で、品質事故が起きれば取引停止につながる。回収の費用と信用の毀損は、小さな会社には重い。
資本効率が上がらない
利益の7割を会社に残し、稼ぎは4%台。ためるほど自己資本利益率は下がる。還元の方針が変わらなければ、株主の価値は帳簿ほど増えない。
今後の分かれ目
- 原料高を値上げで半年以内に転嫁できる局面が続く
- 営業利益率は5%台に乗り、やや楽観の筋書きに近づく。ただ過去の山を超えるには、数量の伸びも要る。
- 真岡の新工場が稼働し、省人化で利益率が上がる
- 償却の増加を吸収し、乾燥・冷凍の数量が伸びる。資本の稼ぎが改善し、倍率の見方も上がる。
- 配当性向を5割に引き上げる、または自社株買いを始める
- ためた利益の価値が株主に届き、資本効率の評価が改善する。
- 大手顧客が内製化や調達先の切り替えに動く
- 数量が落ち、利益率は2%台へ。筋書きはやや悲観から悲観へ寄る。
- 東洋水産が持株比率を引き上げる、または再編を提案する
- 少数株主に上乗せ価格が付く可能性がある。ただ現時点で材料はなく、織り込まない。
見ておくもの
- 真岡新工場の投資額と稼働時期
- 乾燥・冷凍製品の売上の伸びと営業利益率
- 配当方針と自社株買い
- 東洋水産の持株比率
- ベトナム子会社の黒字化
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は4%台で資本コストに届かず、正当化PERの8〜9割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。純現金は時価総額の2%で、余った現金は分けていない。新リース会計基準の影響は小さいとみて、10年後の数字は今と同じ形で置いた。償却は取得原価のまま、新工場の分だけ上乗せした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.4→12.5 倍・やや楽観 PER 9.3→12.5 倍・中立 PER 8.3→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。