結論
モロゾフは、神戸で生まれた洋菓子メーカーだ。バレンタインのチョコレート、プリン、クッキーを百貨店と量販店で売る。2031年8月に創立100周年を迎える。ブランドは強いが、利益は薄く、原材料の相場に簡単に削られる。
筆者の結論は、今の値段は割高、というものだ。理由は、利益の谷と値段の高さが重なっているからだ。2026年1月期の営業利益率は3.5%まで落ち、2027年1月期は会社予想で1.4%まで下がる。にもかかわらず、時価総額は300億円近い。直近の純利益で割れば、45倍を超える水準だ。値段は、利益がもとの姿に戻ることを前提にしている。
その前提を、筆者はかなり好意的に置いても届かないと見る。中立は、10年後の営業利益率を6.0%、売上を510億円とした。2018年1月期の8.1%には届かないが、12年の中央値には並ぶ。それでも10年後の時価総額は、今の9割ほどだ。10年間、ほぼ配当だけで報われる計算になる。
会社の計画は強気だ。約83億円をかけて工場を建て替え、焼菓子を成長の柱に据えた。売上410億円、営業利益30億円、営業利益率7%という目標を、2032年1月期に掲げる。ただし直近の3年間は、原材料の高騰で計画を大きく下回った。
見るべきは三点だ。新工場の償却を、値上げと省人化で吸収できるか。百貨店の縮小を、焼菓子が補えるか。そして、約半分を占める百貨店の客足が戻るか。
バリュー投資の観点から
この会社を持ち続けたいかと問えば、答えは「今の値段では持たない」になる。
事業としては悪くない。ブランドは100年近い歴史を持ち、プリンやバレンタインで消費者の頭に残る。資本は軽く、自己資本比率は70%と厚い。ただし、利益の出方が不安定すぎる。営業利益率は、2018年1月期の8.1%から、2021年1月期の2.9%、2026年1月期の3.5%まで揺れた。
経営の資本配分は、今まさに試されている。約83億円の工場投資は、時価総額の3割近い。これが生む追加の利益が、資本コストを上回るかが勝負だ。会社の目標ROAは9%で、達成すれば報われる。しかし直近の3年間は、計画を大きく下回った。計画の信頼度は、割り引いて見る。
安全域は、今の値段にはない。利益の谷で値段が高いままなのは、市場が回復を織り込んでいるからだ。回復が本当に来ても、中立の筋書きの10年後の時価総額は、今の9割ほど。10年間、配当だけで資本コストを賄えるかが問われる。
結論として、堀は並みで、資本の使い方は未証明、値段に安全域がない。「待つ」が筆者の答えだ。利益率が6%台に定着し、新工場の償却が吸収された姿を確かめてからでも遅くない。
何で稼ぐ会社か
事業は洋菓子の製造販売で、区分は一つにまとまる。2026年1月期の売上は363億円、営業利益は13億円だった。
稼ぎ方は、百貨店を軸にしたブランド商売だ。売上の約半分が百貨店で、量販店が2割強、駅や空港が1割弱、通販が5%ほどを占める。直営は百貨店133店、駅ビル28店、モール17店。そのほかに、量販店などの取扱店が1,100店余りある。
商品は季節に偏る。バレンタインが売上の2割強、中元・歳暮のギフトが1割強を占める。残りは、クッキーなど焼菓子が2割弱、プリン・ゼリーが1割強、チョコレートの通年品が1割強だ。カスタードプリンは発売60周年を迎えた定番品でもある。
このため、利益は11月から1月の冬に集中する。バレンタイン商戦が外れると、年間の利益が飛ぶ。
会社は焼菓子を成長の中心に据えた。ガレットオブール、CUSTA、太陽のガレットといった新しいブランドが、百貨店の催事で行列をつくった。季節に左右されにくく、箱詰めの自動化もしやすい。
子会社には、鎌倉ニュージャーマンとビジュアル香港がある。売上に占める割合は、合わせて5%ほどだ。海外は東アジアで小さく試す段階にある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、ブランドと百貨店での居場所だ。
強みは、100年近く続くブランドと、手の届く価格のギフトだ。「高級すぎず、リーズナブル」な価格帯は、ゴディバやピエール・エルメのような高級ブランドとは違う場所にある。冬のバレンタインと夏の中元で、百貨店に指定席のような売り場を持つ。焼菓子の設備と開発力も、他社にまねしにくい。
弱みは、値決めの力が弱いことだ。2024年1月期からの3年間で、原材料の仕入れ価格は31億円高くなった。会社の対策は13.5億円分にとどまった。差額の17億円は、利益から消えた。値上げをしても、数量が減ることを恐れて、十分に転嫁できなかった。
資本効率は、2018年1月期の10.6%をピークに落ちた。ROEは2026年1月期に3.2%と、資本コストの半分以下だ。自己資本比率は70%と厚いが、その資本が稼ぎを生んでいない。
経営は、工場の建て替えと物流の再編に踏み切った。新船橋工場と西神第2工場の改修だ。投資額は約83億円で、時価総額の3割近い。成功すれば焼菓子の増産と省人化で利益率が上がる。失敗すれば、償却だけが重い固定費として残る。この賭けの重さが、筆者の最大の関心だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の洋菓子ギフトは、成熟した市場だ。人口は減り、贈り物の形も変わる。お中元・お歳暮は減り、日常の手土産や自分へのご褒美が増えている。百貨店は縮み、駅ナカ、空港、ECが育つ。会社自身が、この環境を「主要マーケット(百貨店・量販店)の縮小」と書いている。
菓子全体の市場は、値上げで拡大して見える。2025年の小売ベースの菓子市場は4兆円を超え、前年から5%伸びた。ただしその多くは価格の上昇で、数量は増えていない。
原材料は、カカオ、乳製品、小麦、油脂のすべてが高い。加えて、2026年は中東情勢によるナフサ不足で包装資材も上がった。モロゾフの2027年1月期の予想が、増益から大きな減益へ転じた理由だ。
競争は三層にある。高級チョコレートは、ゴディバやピエール・エルメなど海外勢が強い。量販店の棚では、不二家や、チョコレート・スナックの大手と競る。百貨店の贈答では、地域ごとの老舗洋菓子と争う。
焼菓子は、季節を問わず売れるため成長が見込まれる。だが、参入する競合も多い。差が出るのは、ブランドの新鮮さと、設備の効率だ。
資本政策と M&A
資本政策は、成長投資を優先する局面にある。
会社は、2024年1月期から2032年1月期までの9年間で、設備投資に130〜140億円を使う計画を示す。その資金は営業キャッシュフロー約180億円と、借入金40〜50億円で賄う。株主還元は約60億円で、配当性向40%程度、総還元性向50%程度を目安にする。
2027年1月期の予想が悪化したため、配当は前期より減らす。業績に応じた配分を基本方針とするため、利益が戻るまで高い還元は期待できない。
純有利子負債は、2026年1月期末に4億円と、純現金から借金へ転じた。設備投資が続くため、借金はこれから増える。自己資本比率が70%と厚いので、財務の不安は小さい。ただし金利が上がる世界では、利払いが利益を少しずつ削る。
株式は、2025年2月に1株を3株に分割した。個人投資家を呼び込む狙いだ。株主優待は、自社製品か優待券で、3年以上の保有者に手厚くなる。費用の開示は確かめられなかった。1万人に原価5千円ほどを渡すと仮定すると、年0.5億円で、10年でも価値の1%に届かない。このため還元には足していない。
kabufuの試算では、10年以内の買収やTOBの確率は20%弱ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
焼菓子は、成長の柱になる。ガレットオブール、CUSTA、太陽のガレットといった新ブランドは、百貨店の催事で行列をつくった。新しい工場で作れる量が増えるため、売上は物価を超えて伸びる。季節に左右されにくいので、冬に偏る利益の構造が変わる。
利益率は大きく戻る。2018年1月期に8.1%、2023年1月期に7.4%を達成した実績がある。新船橋工場と西神第2工場は、箱詰めの自動化も進める。人件費の上昇を、省人化で吸収できる。会社は2032年1月期に営業利益率7%以上を目標にしており、10年後に8%近くまで届くのは自然な姿だ。
販路は広がる。百貨店だけでなく、駅ナカ、空港、EC、テーマパークなど、土産市場の開拓が進む。海外の東アジアは小さいが、成長の余地がある。ブランドの力は、立地が変わっても落ちない。
値上げも通りやすくなる。焼菓子は、季節のギフトよりも日常の手土産に近く、価格に敏感な層が少ない。原材料の高騰を、価格改定と設計変更で吸収できる。
そして、利益が戻れば、約83億円の投資は報われる。ROAは9%に届き、ROEは8%台を回復する。配当と自社株買いも厚くなる。
慎重な見方
百貨店は、構造的に縮む。会社自身が、主要市場の縮小を認めている。売上の約半分を占める百貨店の客足が減れば、バレンタインと中元・歳暮という柱は細る。焼菓子が増えても、その分を埋められるとは限らない。
原材料の高騰に、会社は追いつけなかった。直近3年で31億円のコスト増に対し、対策は13.5億円だった。このパターンは、今後も繰り返される可能性が高い。カカオ相場が落ち着く保証はなく、ナフサ不足による包装資材の上昇も加わった。
約83億円の工場投資は、償却の重荷になる。焼菓子の販売が計画どおりに伸びなければ、新しい工場は稼働率の低い固定費となる。2027年1月期の営業利益が5億円まで落ちる予想は、この重荷の最初の兆しでもある。
会社が掲げる売上410億円、営業利益30億円という目標は、過去3年で一度も達成されていない。2024年1月期に計画を立てたとき、2026年1月期の営業利益は23億円と見ていた。実績は13億円だった。計画の信頼度は低い。
最後に、今の値段が問題だ。利益が谷のまま、時価総額は300億円近い。回復が期待どおりにならなければ、値段は利益に合わせて下がるしかない。
どちらに重みを置いたか
争点は、利益率が6%台に定着するか、そして焼菓子が百貨店の縮小を埋めるか、の二点に絞られる。
焼菓子の成長は、新工場という実態がある。この点は強気の見方を取り入れ、中立でも数量を5割増やした。一方、百貨店が縮み、バレンタインと中元・歳暮が細る点は、慎重な見方を取り入れ、季節ギフトの数量を15%減らした。利益率は、12年の中央値並みの6.0%に置いた。それでも10年後の時価総額は今の9割ほどにとどまる。
確率は中立に最も厚く置き、悲観側は合計38%とした。直近3年で計画を大きく外した実績と、工場投資の重さを考えたためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,164 円234 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 266 円53 億円)。 今の値に割り戻すと 735 円148 億円、今との差 −49.3%、 期待の年率 −0.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,540 円510 億円 | 408 円82 億円 | +103.5% | +7.4% | 236 円47 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,744 円350 億円 | 344 円69 億円 | +44.1% | +3.7% | 418 円84 億円 |
| 中立 | 34% | 1,307 円263 億円 | 304 円61 億円 | +11.2% | +1.1% | 548 円110 億円 |
| やや悲観 | 26% | 483 円97 億円 | 179 円36 億円 | −54.3% | −7.5% | 172 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 349 円70 億円 | 125 円25 億円 | −67.3% | −10.6% | 57 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,164 円234 億円 | 266 円53 億円 | −1.3% | −0.1% | 1,430 円287 億円 |
今の株価時価総額 1,449 円291 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 焼菓子が当たり、営業利益率が8%に乗る 利益 33 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,540 円510 億円
10年後、焼菓子は百貨店の外へ広がり、売上は600億円を超える。ガレットオブールやCUSTAは駅ナカや空港、ECに広がり、数量は倍になる。新船橋工場と西神第2工場は満稼働に近づく。
営業利益率は8%近い。箱詰めの自動化や省人化で、人件費の上昇を吸収した。季節ギフトも、日常の手土産に軸を移し、数量は5%の減にとどまる。営業利益は48億円、純利益は33億円。
還元は10年で80億円。配当性向と総還元性向の目安は守られる。ROEは11%台に戻り、会社の目標の8%を超える。
成長の資金は、借入に頼らず営業キャッシュフローの範囲で賄える。新ブランドは百貨店の催事で試して常設化する今のやり方が続き、失敗は小さく済む。
- 焼菓子(クッキー・マドレーヌ等):数量 1,940(出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 234 億円・営業利益 26 億円。営業利益率11%。数量2.0倍
- 季節ギフト・チョコレート・ケーキ:数量 879(出荷個数(万個、箱の単位。推定))× 価格 2,680(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 236 億円・営業利益 15 億円。営業利益率6.2%。数量0.95倍
- プリン・ゼリー・レトルト・その他:数量 1,109(出荷個数(万個、推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 134 億円・営業利益 8 億円。営業利益率6%。数量1.1倍
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.64 倍、時価総額 510 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:焼菓子が百貨店の外にも広がり、新工場が稼働して省人化も進む筋書き。2018年1月期に8.1%を達成した実績はあるが、直近は計画を大きく外した。確率は低く置いた。
やや楽観 20% 焼菓子が育ち、利益率が7%近くに戻る 利益 25 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,744 円350 億円
10年後、焼菓子は新ブランドで定着し、数量は75%増える。売上は555億円になる。新工場は稼働率を上げ、省人化の効果も出る。
営業利益率は6.8%。会社の2032年1月期の目標7%に近い水準だ。季節ギフトは1割減るが、焼菓子の伸びが補う。営業利益は38億円、純利益は25億円。
M&Aは行わず、設備投資と配当に徹する。還元は10年で70億円。ROEは9%台。
この筋書きでは、2027年1月期の谷が一時的な原材料高だったと確認される。ナフサ不足は収まり、包装資材の価格も落ち着く。バレンタイン商戦は外れず、冬の利益が戻る。会社の目標には届かないが、中立よりは明らかに強い姿だ。
- 焼菓子(クッキー・マドレーヌ等):数量 1,698(出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 205 億円・営業利益 20 億円。営業利益率9.5%。数量1.75倍
- 季節ギフト・チョコレート・ケーキ:数量 832(出荷個数(万個、箱の単位。推定))× 価格 2,680(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 223 億円・営業利益 12 億円。営業利益率5.2%。数量0.9倍
- プリン・ゼリー・レトルト・その他:数量 1,058(出荷個数(万個、推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 128 億円・営業利益 6 億円。営業利益率5%。数量1.05倍
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.12 倍、時価総額 350 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定と焼菓子の増産がかみ合い、利益率が7%近くに戻る筋書き。会社の2032年1月期の目標7%に近い。達成実績が乏しいので、中立より薄く置いた。
中立 34% 利益率が6%に戻り、焼菓子が百貨店の縮小を補う 利益 20 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,307 円263 億円
10年後、売上は510億円。焼菓子は数量が5割増え、季節ギフトは15%減る。百貨店の縮小を、焼菓子とEC・駅ナカが補う姿だ。
営業利益率は6.0%。12年の中央値に並ぶ水準で、山の8.1%には届かない。新工場の償却を、値上げと省人化で吸収する。営業利益は31億円、純利益は20億円。
設備投資の借入は返済が進み、財務は安定する。還元は総還元性向50%の目安に沿って、10年で60億円ほど。ROEは7〜8%で資本コストと並ぶ。
会社の目標の7%には届かない。直近の未達の実績を踏まえ、筆者は慎重に置いた。
- 焼菓子(クッキー・マドレーヌ等):数量 1,455(出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 176 億円・営業利益 15 億円。営業利益率8.5%。数量1.5倍、価格は物価並みの1.34倍
- 季節ギフト・チョコレート・ケーキ:数量 786(出荷個数(万個、箱の単位。推定))× 価格 2,680(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 211 億円・営業利益 10 億円。営業利益率4.8%。数量0.85倍
- プリン・ゼリー・レトルト・その他:数量 1,008(出荷個数(万個、推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 122 億円・営業利益 6 億円。営業利益率4.8%。数量横ばい
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.93 倍、時価総額 262 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が12年の中央値の6%に戻り、焼菓子の成長が百貨店の縮小を補う筋書き。2025年1月期は5.7%、2024年1月期は7.1%だった。工場の償却と原料高を差し引いた。
やや悲観 26% 百貨店の縮小と原料高で利益率が3%台に 利益 9 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 483 円97 億円
10年後、百貨店の縮小が進み、季節ギフトの数量は25%減る。焼菓子は2割増にとどまり、競合の参入で値上げの余地も小さい。売上は435億円。
営業利益率は3.4%。原材料高に値上げが半年遅れで追う構図が続き、新工場の償却が重くのしかかる。2021年1月期の2.9%、2026年1月期の3.5%に近い水準だ。営業利益は15億円、純利益は9億円。
還元は配当を維持できず、10年で36億円。ROEは4%を割り、自己資本が資本効率を押し下げる。
会社は、焼菓子の販売が伸びなくても新工場の償却を負担し続ける。省人化の効果は出るが、人件費の上昇がそれを食う。バレンタインが外れる年が数年おきに起き、利益のぶれは今より大きくなる。借入の返済に回るため、自社株買いは見送られる。
- 焼菓子(クッキー・マドレーヌ等):数量 1,164(出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 140 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5%。数量1.2倍
- 季節ギフト・チョコレート・ケーキ:数量 694(出荷個数(万個、箱の単位。推定))× 価格 2,680(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 186 億円・営業利益 5 億円。営業利益率2.8%。数量0.75倍
- プリン・ゼリー・レトルト・その他:数量 907(出荷個数(万個、推定))× 価格 1,206(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 109 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.5%。数量0.9倍
倍率:ROE 3.9% が k 7.75% 以下なので上限は 1÷k = 12.9 倍(ためた利益は額面未満の価値)。稼ぐ力(純利益 9 億円)に対して、上限の約 8 割の 10.3 倍を採用した。
確率:百貨店とギフトが細り、原料高に値上げが追いつかない筋書き。2021年1月期は2.9%、2026年1月期は3.5%だった。計画の未達が続いている点を重く見て、厚めに置いた。
悲観 12% 百貨店が崩れ、新工場が重荷になる 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 349 円70 億円
10年後、百貨店が崩れ、季節ギフトは4割減る。焼菓子も飽和し、数量は1割減る。値上げは通らず、価格は物価の1.34倍に届かず、1.28倍にとどまる。売上は330億円。
営業利益は、ほぼゼロ。新船橋工場と西神第2工場の償却が重い固定費として残り、稼働率が低い。金利の上昇で利払いもかさみ、純損益は赤字になる。
還元は10年で25億円に縮む。ただし自己資本の厚さと、工場・土地などの資産が、これ以上の下落を止める。
会社は、計画の未達が続いたことで信用を失う。取引先の百貨店は売り場を絞り、量販店でも棚の位置を失う。新ブランドは常設店が増えず、ブランド価値が薄まる。経営は構造改革に追われ、工場の一部を閉じる判断も迫られる。
- 焼菓子(クッキー・マドレーヌ等):数量 873(出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定))× 価格 1,152(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 101 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.5%。数量0.9倍、価格は1.28倍
- 季節ギフト・チョコレート・ケーキ:数量 555(出荷個数(万個、箱の単位。推定))× 価格 2,560(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 142 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率−1%。数量0.6倍
- プリン・ゼリー・レトルト・その他:数量 756(出荷個数(万個、推定))× 価格 1,152(1 個あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 87 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%。数量0.75倍
倍率:ROE がほぼゼロ以下で稼ぐ力が小さいため、PER は使わず PBR で置く。今の自己資本 199 億円の 0.35 倍。工場・土地は売れても、稼働率の低い新工場とブランドの縮小で簿価を大きく下回るとみた。
確率:百貨店が崩れ、新工場が重い固定費として残る筋書き。会社は直近3年間、計画を大きく下回った。12%は工場投資の重さと百貨店の縮小を考えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
焼菓子(クッキー・マドレーヌ等)
ガレットオブール、CUSTA、太陽のガレットなどの焼菓子と、定番のクッキー・マドレーヌ。成長の柱。
| 数量出荷個数(万個、箱・袋の単位。推定) | 価格1 個あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 970 | 900 | 87 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,455 | 1,206 | 176 | 15 |
取り方:売上構成のクッキー 16.9% とマドレーヌ等 7.2%(合計 24.1%、87 億円)を、1 個(箱・袋)あたり平均九百円前後の品が年 970 万個出荷されると置いて分けた(推定)。会社は個数も区分別の利益も開示しておらず、利益は全社の営業利益率 3.5% を基に、焼菓子をやや高く 5% と置いた。数量は新工場(西神第2・新船橋)の増産と新ブランドで、中立では 10 年 1.5 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。市場の大きさ:焼菓子市場は季節を問わず手土産需要で広がっているが、参入する競合も多い(会社資料)。
季節ギフト・チョコレート・ケーキ
バレンタイン、中元・歳暮のギフト、通年のチョコレートとケーキ。百貨店の売り場が主戦場。
| 数量出荷個数(万個、箱の単位。推定) | 価格1 個あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 925 | 2,000 | 185 | 6 |
| 10 年後 中立 | 786 | 2,680 | 211 | 10 |
取り方:売上構成のバレンタイン 21.7%・中元歳暮ギフト 13.1%・チョコレート 11.2%・ケーキ 4.9%(合計 50.9%、185 億円)を、1 箱あたり平均二千円前後の品が年 925 万箱出荷されると置いて分けた(推定)。利益は区分別に開示がなく、全社の営業利益率 3.5% に合わせて 3% と置いた。数量は百貨店の縮小と贈答の減少で、中立では 10 年 0.85 倍。価格は物価並みの 1.34 倍。市場の大きさ:中元・歳暮の贈答は減り、手土産や自分へのご褒美が増えている(会社資料)。
プリン・ゼリー・レトルト・その他
カスタードプリン、ゼリー、レトルト食品、喫茶、子会社(鎌倉ニュージャーマン・ビジュアル香港)。
| 数量出荷個数(万個、推定) | 価格1 個あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 1,008 | 900 | 91 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,008 | 1,206 | 122 | 6 |
取り方:売上構成のプリン・ゼリー 12.0%・レトルト 4.8%・その他 8.2%(合計 25.0%、91 億円)を、1 個あたり平均九百円前後の品が年 1,008 万個出荷されると置いて分けた(推定)。喫茶と子会社を含む。利益は全社の営業利益率 3.5% に合わせて 3% と置いた。中立では数量は横ばい。価格は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
原材料と包装資材の高騰
カカオ、乳製品、小麦、油脂が高く、2026年は中東情勢によるナフサ不足で包装資材も上がった。直近3年の仕入れ価格の上昇は31億円で、対策は13.5億円だった。値上げが数量を減らす恐れがあり、価格転嫁は遅れやすい。
百貨店の縮小
売上の約半分は百貨店だ。主要市場の縮小は会社も認めている。お中元・お歳暮は減り、バレンタインも前倒しで需要が分散した。ここが細れば、焼菓子の増産でも補いきれない恐れがある。
新工場の償却と稼働率
新船橋工場と西神第2工場の約83億円の投資は、2026年3月以降に順次稼働する。償却費は先に重くのしかかる。焼菓子の販売が計画に届かなければ、稼働率が低く、利益率の回復が遅れる。
冬への利益の集中
利益は11月から1月に集中する。バレンタイン商戦が外れると、年間の利益が飛ぶ。2026年1月期の3四半期累計の営業損益は2億円の赤字で、最後の四半期ですべてを取り返す構造だ。
計画の信頼度
2024年1月期に立てた2026年1月期の営業利益計画は23億円だったが、実績は13億円だった。2032年1月期の営業利益30億円という目標も、同じ要因で未達になりうる。目標を割り引いて見る必要がある。
新リース会計と人件費
新リース会計基準が2028年3月期から適用されると、借りた店舗が貸借対照表に載り、自己資本比率が下がる。人材確保の難しさと定年社員の増加で、人件費の上昇圧力も強い。額は小さいが、利益率の回復を鈍らせる。
今後の分かれ目
- 2028年1月期に営業利益14億円という会社予想が達成される
- 工場投資の償却を価格改定と省人化で吸収できているという証拠になる。やや楽観側に寄せてよい。
- 営業利益率が2期続けて2%を割る
- 原材料高の転嫁が失敗し、新工場の償却が重荷になっている合図。悲観側の確率を上げる。
- 焼菓子の新ブランドが常設店で定着し、売上比率が3割を超える
- 成長エンジンが働いている。焼菓子の数量を上方に修正する。
- 百貨店の売上が2桁で減る
- 主力チャネルの縮小が加速している。季節ギフトの数量の見通しを下げる。
- 配当性向や自社株買いが目安を超えて追加される
- 財務に余裕が出て、資本効率の改善に動いている。還元の見通しを上げる。
- TOB(株式公開買い付け)が発表される
- 時価総額が小さく自己資本が厚いため、評価されうる。事業の稼ぐ力と比べて価格が見合うかを確かめる。
見ておくもの
- 営業利益率(通期。特に11〜1月の第4四半期)
- 焼菓子の売上比率と新ブランドの常設化
- 百貨店チャネルの売上
- 新工場(新船橋・西神第2)の稼働と償却
- 原材料(カカオ・乳製品)と包装資材の相場
- 純有利子負債と配当方針
倍率と資本コストの決め方
3 つの区分を、出荷個数(推定)× 1 個あたりの単価で積み、価格は物価並みの 1.34 倍に置いた。営業利益率は、12 年の山(8.1%)より低い 6.0% を中立とした。これは 12 年の中央値に並ぶ水準で、会社の 2032 年 1 月期目標 7% は置いていない。倍率は、自己資本を「今+純利益−還元」で流して出した ROE(7.8%)と k 7.75% から式で決め、ROE が k とほぼ同じなので 1÷k = 12.9 倍の近くに置いた。今の PER や PBR は倍率の根拠にしていない。今の株価と比べたのは最後。新リース会計(2028 年 1 月期以降)で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.1→15.64 倍・やや楽観 PER 13.4→14.12 倍・中立 PER 13→12.93 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した。事業は傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。