結論
第一屋製パンは東京の小平に本社を置く製パンの老舗だ。「大きなデニッシュ」や「ひとくちつつみ」、キャラクターのパン、ハンバーガーチェーン向けのバンズを作る。豊田通商が株の3分の1を持つ。筆者の結論はやや割高だ。純現金が厚く安く見えるが、パンの稼ぎは売上の1%ほどしかなく、配当も出していないからである。
いまの利益の柱は、パンではなく地代だ。閉じた横浜工場の跡地を31年の定期借地で貸し、2025年6月から年4億円台の賃料が入る。営業利益の大半をこの地代が生む。パンは山崎製パンが圧倒的な力を持つ市場で、原料と人件費と物流費の上昇に、値上げが追いつきにくい。2017年から6年続いた赤字が、それを物語る。
地代は固い。だが、それはパン屋の稼ぐ力ではない。株主に配当を払わない会社では、現金と地代の価値の半分ほどしか株主の取り分と見られない。帳簿より安い値段は、それだけでは安全域にならない。筆者は、地代の固さは認めるが、それを株主の安全域とは数えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地代は良い稼ぎだが、パン屋の価値とは分けて見たい。第一屋製パンの利益の大半は、閉じた工場の跡地を貸して得る地代だ。31年の契約で固く、物価とともに少しずつ上がる見込みもある。
一方、パンの事業のオーナー利益、つまり設備を保つ投資を済ませたあとに残る利益は、ならせばほとんどない。工場の機械と配送のトラックの更新に、利益のほとんどが消える。6年続いた赤字は、規模で劣る製パン会社の厳しさを示す。
資本の使い方も物足りない。配当を払わず、現金と地代を積むだけでは、株主の取り分は増えない。豊田通商が3分の1を持つ会社では、少数株主が現金の使い道を決めることはできない。
払う値段は帳簿の半分ほどだ。それでも、筆者は地代と現金の半分ほどしか株主のものと見ない。安く見える理由は、ちゃんとある。地代が配当として戻る日が来れば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
売上は290億円で、ほぼすべてがパンと菓子だ。食品の事業の売上の4分の3がパンで、残りを和洋菓子と、グループ会社の焼き菓子などが占める。
パンは三つの顔を持つ。一つ目はスーパーやコンビニの棚に並ぶ自社ブランドのパンで、「大きなデニッシュ」と「ひとくちつつみ」が主力だ。2026年は増量の企画で値ごろ感を打ち出した。二つ目はキャラクターのパンで、子ども向けに人気のキャラクターを包装に使い、新しい客を呼ぶ。三つ目は業務用で、ハンバーガーチェーンのバンズや、コンビニの店内で加工する食材を作る。業務用は足元で好調だが、取引先の販促に合わせて作る仕事なので、値段の主導権は買い手にある。
パンは毎日焼いて、毎日運ぶ商売だ。工場と配送のトラックを持ち、人手が要る。原料の小麦や油脂、包装の資材、人件費、燃料の上昇が、そのまま利益を削る。会社はDPSと呼ぶ生産のやり方で効率を上げ、採算の低い品を減らしてきた。
もう一つの事業が不動産だ。2022年に閉じた横浜工場の跡地、約1.4万平方メートルを事業用の定期借地で31年貸す。売上は年4億円台と小さいが、費用がほとんどかからず、営業利益の大半を生む。
優良さと弱いところ
パンの事業には、堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるものが乏しい。製パンは山崎製パンが群を抜く市場で、規模と配送網と棚の力で差がある。第一屋製パンの利益率は、良い年でも2%台だ。
値段を決める力も弱い。スーパーやコンビニはPBのパンを広げ、業務用の買い手は大手のチェーンだ。原料高の年は値上げが遅れ、2017年から2022年まで6年続けて営業赤字になった。2023年からの黒字は、横浜工場を閉じて生産を集め、採算の低い品を絞った成果だ。改善は本物だが、利益の厚みはまだ薄い。
地代は質の高い稼ぎだ。31年の契約で、借り手が決まっている。ただ、これは土地の値打ちで、パン屋の腕ではない。資本の使い方では、配当を出さず、現金を積んでいる。自己資本の稼ぎは過去10年の中央値でマイナスで、株主に報いた記録はほとんどない。地代を除けば、この会社の稼ぐ力はまだ証明の途中にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のパンの市場は、数量で見ればほぼ横ばいだ。人口は減るが、朝食や昼食をパンで手早く済ませる人は増え、米からパンへの置き換えも続いてきた。値段は小麦や油脂、人件費の上昇で毎年のように上がっている。
競争の形ははっきりしている。山崎製パンが国内の製パンで圧倒的な力を持ち、敷島製パンやフジパンなどが続く。スーパーとコンビニは自社のPBのパンを広げ、大手の製パン会社に作らせている。中堅の製パン会社は、棚の取り合いと値段の交渉の両方で苦しい立場にある。
追い風は業務用だ。ハンバーガーチェーンやコンビニの店内調理は伸びており、決まった品を大量に作る仕事は工場の稼働を上げる。ただ、買い手は数社の大手で、値段の交渉力は向こうにある。
逆風は人手と物流だ。パンは毎日焼いて毎日運ぶので、運転手と工場の働き手の不足が直接効く。物流の2024年問題以降、配送の回数を減らす動きが進み、小さな会社ほど費用の負担が重い。業界の再編は、大手が中堅を取り込む形で進む可能性がある。第一屋製パンは、規模で劣る中堅として、この再編の受け身の側に立つ。地代という別の稼ぎがあることが、他の中堅との違いだ。
資本政策と M&A
配当は出していない。2025年12月期も2026年12月期の予想も無配だ。6年続いた赤字で利益剰余金が細ったことが理由だが、黒字に戻った今も再開していない。株主優待で焼き菓子を贈る案内はあるが、額は小さい。
純現金は30億円ほどあり、銀行の借入はない。ただ、そのうち10億円近くは横浜の借地の借り手から預かった保証金とみる。2024年12月期には大きな特別利益で純利益が膨らんだが、それも現金のまま残る。
大株主は豊田通商で、株の33%を持つ。原料の小麦の調達などでつながる。親会社ではないが、経営への影響は大きい。豊田通商が完全に取り込むか、大手の製パン会社に譲るかで、少数株主の行方は変わる。ただ、それは筋書きの確率でなく、事業と資本の中身で見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段には、横浜の地代の価値がほとんど入っていない。31年の定期借地で、年4億円台の賃料が入る。費用はほぼかからず、税引き後でも年3億円を超える。この地代だけで、時価総額の大半を説明できる。しかも銀行の借入はなく、現金は30億円ある。
パンの事業も立ち直った。2017年から6年続いた赤字を、横浜工場の閉鎖と生産の集約、採算の低い品の整理で抜け出した。2026年上期は売上が7%近く伸び、営業利益は2.5倍になった。業務用のバンズとコンビニの店内加工の食材は好調で、工場の稼働を押し上げる。
豊田通商が33%を持つことも、強気の材料になる。小麦の調達で結びつき、いずれ完全に取り込むか、大手の製パン会社との再編を仕切る立場にある。配当を再開すれば、それだけで見直される。帳簿の半分という値段は、地代と現金だけでも割安だ。地代と現金で下値が固く、パンの改善が続けば上値は大きい。この形の会社は、市場に見過ごされやすい。
慎重な見方
パン屋としての第一屋製パンは、稼げない会社だ。2017年から6年続けて営業赤字で、黒字に戻った今も食品の利益率は1%に届かない年がある。会社自身が2026年12月期の営業利益を前期より2割少なく見込む。下期は原料と人件費、物流費の上昇が再び利益を削る。
山崎製パンの規模と配送網には勝てない。スーパーとコンビニはPBを広げ、業務用の買い手は大手のチェーンだ。値段の主導権はどこにもない。人手不足と物流の2024年問題は、小さな会社ほど重くのしかかる。
地代は確かに固いが、株主には届かない。配当はゼロで、現金は積まれるだけだ。豊田通商が3分の1を握る会社で、少数株主に現金の使い道を決める力はない。2024年の大きな特別利益も、配当にならずに消えた。地代の価値を時価総額に足すのは、その現金が株主に戻る時だけだ。パンの事業が再び赤字に沈めば、地代の稼ぎもその穴埋めに消える。安い値段には、それだけの理由がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。地代の固さと、パンの事業の立ち直りは本物で、上振れの筋書きに重みを残した。ただ、パンの稼ぎの薄さは業界での位置から来るもので、すぐには変わらない。無配が続く限り、地代と現金の価値は半分ほどしか株主に届かない。中心は地代が利益を支え、パンが薄く稼ぐ筋書きに置いた。配当が再開されれば、強気の側へ確率を移す。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,189 円82 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 23 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 554 円38 億円、今との差 −10.4%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,321 円161 億円 | 144 円10 億円 | +298.9% | +14.8% | 173 円12 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,743 円121 億円 | 72 円5 億円 | +193.7% | +11.4% | 327 円23 億円 |
| 中立 | 40% | 1,401 円97 億円 | 0 円0 億円 | +126.7% | +8.5% | 560 円39 億円 |
| やや悲観 | 23% | 530 円37 億円 | 0 円0 億円 | −14.2% | −1.5% | 122 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 253 円18 億円 | 0 円0 億円 | −59.1% | −8.6% | 30 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,189 円82 億円 | 23 円2 億円 | +96.1% | +7.0% | 1,212 円84 億円 |
今の株価時価総額 618 円43 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 業務用で工場が埋まり、利益率が過去の最良に並ぶ 利益 11 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,321 円161 億円
ハンバーガーチェーンとコンビニの業務用の仕事が増え、工場の稼働が上がる。自社ブランドの「大きなデニッシュ」とキャラクターのパンは値ごろ感で客をつかみ、数量は少し増える。値上げは物価を少し上回って通り、DPSの効率化で人手の不足も乗り切る。
食品の営業利益率は過去の最良の2%台に定着する。横浜の地代は契約の見直しで物価に近く上がる。会社は配当を再開し、自己資本の稼ぎは資本コストに並ぶ。豊田通商との取引も厚くなり、小麦の調達で他社より有利に立つ。中堅の製パン会社として、ようやく株主に報いる10年になる。地代も契約の見直しで物価に近く上がり、利益の土台を厚くする。
- 食品(パン・和洋菓子):数量 3.0(販売個数(億個・年、推定))× 価格 138(1 個あたりの平均出荷単価(円・名目))→ 売上 415 億円・営業利益 10 億円。個数 1.05 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 2.3%
- 不動産(横浜工場跡地の定期借地):数量 1.4(貸している土地の面積(万平方メートル))× 価格 40,188(1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。面積横ばい × 地代 1.25 倍、利益率 95%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 13.06 倍、時価総額 146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品の利益率が過去の最良の2%台に定着する筋書きで、6年続いた赤字の記録を考えて低い確率にとどめた。
やや楽観 18% パンが薄く稼ぎ続け、地代が利益を押し上げる 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,743 円121 億円
自社ブランドと業務用の両方で数量を保ち、値段は物価並みに上がる。原料と人件費の上昇は、DPSの効率化と採算の低い品の整理でほぼ吸収する。食品の利益率は1%台半ばと、2023〜24年の水準を保つ。
横浜の地代は契約の見直しで少しずつ上がり、営業利益の半分近くを支え続ける。配当は小さく再開するが、現金はなお積み上がる。自己資本の稼ぎは6%台で、資本コストには届かない。会社は安定するが、株主の取り分は利益の伸びほどには増えない。豊田通商との関係も、今の形のまま続く。パンの改善が地代の上に積み上がる形が、この筋書きの姿だ。工場の更新の投資も、自前の現金でまかなえる。
- 食品(パン・和洋菓子):数量 2.9(販売個数(億個・年、推定))× 価格 136(1 個あたりの平均出荷単価(円・名目))→ 売上 390 億円・営業利益 6 億円。個数横ばい × 単価 1.36 倍、利益率 1.6%
- 不動産(横浜工場跡地の定期借地):数量 1.4(貸している土地の面積(万平方メートル))× 価格 38,580(1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 5 億円。面積横ばい × 地代 1.2 倍、利益率 95%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 106 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023年からの黒字と2026年上期の増益は改善の証拠で、食品の利益率が1%台半ばを保つ道筋は十分ありうる。
中立 40% 地代が支え、パンは1%の利益率で横ばい 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,401 円97 億円
パンの数量は10年で5%ほど減る。人口の減少をパン食の広がりと業務用の伸びがほぼ埋めるが、山崎製パンとPBとの棚の取り合いは続く。値段は物価並みに上がるが、原料と人件費、物流費の上昇がそれを食い、食品の利益率は1%前後にとどまる。
横浜の地代は契約の見直しで物価より緩やかに上がり、営業利益の6割ほどを生む。純利益は名目で6億円ほどになる。配当は出さず、現金は積み上がる。自己資本の稼ぎは5%前後で、資本コストに届かない。地代は固いが、株主の取り分はそれほど増えない。地代の契約は数年ごとの見直しで、物価よりゆるやかにしか上がらない。パン屋としての評価は変わらず、地代を持つ会社として値が付く。
- 食品(パン・和洋菓子):数量 2.7(販売個数(億個・年、推定))× 価格 134(1 個あたりの平均出荷単価(円・名目))→ 売上 365 億円・営業利益 4 億円。個数 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 1%
- 不動産(横浜工場跡地の定期借地):数量 1.4(貸している土地の面積(万平方メートル))× 価格 36,973(1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 5 億円。面積横ばい × 地代 1.15 倍(定期借地の見直しは物価より緩やか)、利益率 95%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:パンの数量は人口とともに少し細り、利益率は1%前後、地代が利益の半分以上を支えるのが最もありそうな道筋とみた。
やや悲観 23% パンが赤字に戻り、地代だけが残る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 530 円37 億円
小麦と油脂の値上がりが続き、人手不足で人件費と配送の費用が膨らむ。スーパーとコンビニはPBを広げ、業務用の買い手は値下げを迫る。パンの数量は1割以上減り、値上げは物価に追いつかない。食品の事業は2017年以前のような赤字に戻る。
利益を支えるのは横浜の地代だけになる。純利益はわずかに黒字を保つが、パンの赤字が地代の稼ぎの半分を食う。配当は出せず、工場の更新も先送りされる。価値は地代と手元の現金で測るしかなく、豊田通商が3分の1を持つ会社では、その半分ほどしか株主に届かない。地代は契約の見直しでもほとんど上がらない。会社は残るが、パン屋としての存在感は薄れていく。
- 食品(パン・和洋菓子):数量 2.4(販売個数(億個・年、推定))× 価格 128(1 個あたりの平均出荷単価(円・名目))→ 売上 312 億円・営業利益 −2 億円。個数 0.85 倍 × 単価 1.28 倍、赤字
- 不動産(横浜工場跡地の定期借地):数量 1.4(貸している土地の面積(万平方メートル))× 価格 35,365(1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 5 億円。面積横ばい × 地代 1.1 倍、利益率 93%
倍率:パンが赤字で稼ぐ力は地代だけなので、今の自己資本 85.6 億円に PBR 0.292 を掛け、床の資産(地代の価値と余った現金の戻り方 0.5 の分)の 25 億円に合わせた。
確率:2017〜22年に6年続けて赤字だった記録があり、会社も2026年の減益を見込む。原料と物流の費用が重なれば赤字に戻りうるので厚めに置いた。
悲観 12% パンで大手に負け、地代を赤字の穴埋めに使う 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 253 円18 億円
大手の製パン会社が業務用とPBの仕事を値段で取り、第一屋製パンの工場は稼働が落ちる。自社ブランドの棚も削られ、パンの数量は4分の1減る。値上げは原料高に追いつかず、食品の事業は大きな赤字が続く。
地代は入り続けるが、パンの赤字がそれを上回り、全社でも赤字になる。手元の現金は赤字の穴埋めと工場の更新に食われる。最後に残るのは横浜の地代の価値だけで、それも豊田通商と大手の再編の条件次第になる。少数株主は資産の使い道を決められず、清算の値段より低い所で値が付き続ける。地代の契約は残っても、借り手が見直しを求めれば上がらない。パン屋の看板は、大手の傘下で残るだけになる。
- 食品(パン・和洋菓子):数量 2.1(販売個数(億個・年、推定))× 価格 120(1 個あたりの平均出荷単価(円・名目))→ 売上 258 億円・営業利益 −5 億円。個数 0.75 倍 × 単価 1.2 倍、赤字
- 不動産(横浜工場跡地の定期借地):数量 1.4(貸している土地の面積(万平方メートル))× 価格 33,758(1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。面積横ばい × 地代 1.05 倍、利益率 93%
倍率:赤字なので PER は当てない。今の自己資本 85.6 億円に PBR 0.205 を掛け、床の資産(地代の価値の戻り方 0.5 の分)の 17.5 億円に合わせた。
確率:中堅の製パン会社は大手との競争と人手不足で事業を縮める例がある。過去の長い赤字の記録から1割強に置いた。地代が床を支えるので重くはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品(パン・和洋菓子)
自社ブランドのパン、キャラクターのパン、業務用のバンズ、和洋菓子、グループの焼き菓子。
| 数量販売個数(億個・年、推定) | 価格1 個あたりの平均出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.9 | 100 | 287 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 134 | 365 | 4 |
取り方:2025 年 12 月期の売上 289.6 億円から不動産の約 3.0 億円を引いた 286.5 億円。個数は非開示なので、菓子パンと食パン、業務用をならした出荷単価を 1 個 100 と置き、年 2.9 億個と推定。利益は全社の営業利益 4.66 億円から不動産の約 2.8 億円を引き、本社費を戻した推定。
不動産(横浜工場跡地の定期借地)
横浜市戸塚区の工場跡地 約 1.4 万平方メートルを事業用定期借地で 31 年貸す。
| 数量貸している土地の面積(万平方メートル) | 価格1 平方メートルあたりの年間の地代(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.4 | 32,150 | 5 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 36,973 | 5 | 5 |
取り方:面積 14,181 平方メートル(2022 年の開示)。賃料は守秘義務で非開示だが、全額を計上した 2026 年上期の不動産の売上 2.28 億円を年に直した 4.56 億円から、1 平方メートルあたり年 32,150 と出した。2025 年 12 月期の実績は 6 月からの計上で約 3.0 億円なので、今の行は 1 年分に直した値。利益率は上期の 96% を基にした。
リスクと懸念
原料と人件費、物流費
小麦や油脂、包装の資材は国際相場と為替で動く。パンは毎日焼いて運ぶので、人手不足の人件費と配送の費用も直接効く。値上げが遅れる年は、食品の薄い利益がすぐに消える。
大手とPBとの競争
製パンは山崎製パンが圧倒的な力を持ち、スーパーとコンビニはPBのパンを広げる。中堅の第一屋製パンは棚の取り合いと値段の交渉の両方で不利な立場にある。
業務用の買い手の力
ハンバーガーチェーンやコンビニ向けの業務用は伸びているが、買い手は数社の大手だ。取引の条件が変わったり、仕事を他社に移されたりすれば、工場の稼働が一気に落ちる。
地代への依存
営業利益の大半を横浜工場跡地の地代が生む。31年の契約で固いが、借り手の事情や契約の見直しで賃料が変わる恐れはゼロではない。地代を除いたパンの稼ぎの薄さが、本当の課題だ。
無配と現金の使い道
配当は出していない。純現金は30億円ほどあるが、株主に戻る道筋は見えない。豊田通商が3分の1を持つので、少数株主が現金の使い道を決めることはできない。
今後の分かれ目
- 配当を再開し、利益の一定の割合を返す方針を示したら
- 現金と地代の戻り方を引き上げ、価値を見直す。
- 食品の営業利益率が2%台に乗り、2年続いたら
- パンの事業の立ち直りが定着したとみて、上振れの筋書きの確率を上げる。
- 食品の事業が再び赤字になったら
- 地代だけが残る筋書きに寄せる。
- 豊田通商が持株を買い増すか、大手の製パン会社との再編の話が出たら
- 資本の行方が変わる場面になりうる。ただし筋書きの確率は事業と資本の中身で決める。
- 業務用の大口の取引先を失ったら
- 工場の稼働が落ちるとみて、悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 食品の事業のセグメント利益率
- 小麦・油脂の価格と人件費
- 配当の再開の有無
- 豊田通商の持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8.25%と10年後の事業の稼ぎだけで決めた。事業のROEは中立で5%前後とkに届かないので、PERの上限は1÷kで、中立はその7割に置いた。地代は会社全体の利益に入れ、別に資産として足していない(二重に数えない)。悲観側だけ、地代の価値と現金に戻り方0.5を掛けた床で測った。今のPBRが0.5倍であることは計算の後に比べただけで、割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.06 倍・やや楽観 PER 9.4→12.12 倍・中立 PER 8.75→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。