結論
旭松食品は長野県飯田市の高野豆腐の会社だ。売上 77 億円の 4 割強を凍り豆腐(高野豆腐)が占め、残りは即席みそ汁と、病院や介護の施設に向けた医療用の食材だ。高野豆腐では国内の首位を争う老舗で、販売の半分は三菱商事を窓口に流れる。
筆者の結論は「割高」だ。株価は帳簿の自己資本の半分に満たないが、ROE(自己資本で稼ぐ力)は過去 10 年の中央値で 2.9% しかない。本業の営業利益は 2026/03 期に 1 億円を割り、利益の多くを政策保有株の配当と資産の売却が支えている。
高野豆腐を買う人の多くは高齢の世帯で、数量は 10 年以上細り続けている。値上げで物価には追いつけても、それ以上の稼ぎは見込みにくい。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の半分に届かない。2026 年に 2 度の自社株買いをしたのは前向きだが、事業の稼ぐ力そのものを変えるものではない。資本の使い方の変化が数字の方針として示されるまでは、帳簿の安さを価値と取り違えないようにしたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、旭松食品は「強い看板を持つが、その看板の市場が縮む」会社だ。高野豆腐で首位を争う地位は本物で、10 年後も会社は残っているだろう。だが、事業が残ることと、株主が豊かになることは別の話だ。
オーナーとして見ると、本業の稼ぎはあまりに薄い。2026/03 期の営業利益は 1 億円に満たず、純利益の多くは政策保有株の配当と中国の合弁の売却益から来た。資本の 4 割は現金と他社の株として寝ており、それが何も稼がないまま ROE を押し下げている。
2026 年の 2 度の自社株買いと持ち合いの売却は、資本の使い方が変わる兆しかもしれない。そうなれば見方は変わる。だが今の値段は、その変化を十分に先取りしている。会社を丸ごと買うつもりで見ても、払う値段に見合う稼ぎは今の事業から出てこない。筆者は、帳簿の安さの裏にある稼ぐ力の弱さを重く見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は凍り豆腐だ。豆腐を凍らせて乾かした長野の伝統の乾物で、売上は 34 億円ある。家庭向けの袋の品のほか、給食や惣菜の工場向けの業務用、戻さずに使える品、粉にした品も作る。原料の大豆は米国や中国から輸入し、長野県南部の天竜・高森・飯田・伊那の工場で作る。
次が加工食品で、売上は 23 億円だ。フリーズドライの即席みそ汁やスープが中心で、スーパーやドラッグストアの棚に並ぶ。残りの 20 億円は、病院や介護の施設の食事に使う医療用の食材などだ。噛む力や飲み込む力の弱い人向けの食品で、高齢化とともに需要が育つ分野でもある。
販売の 52% は三菱商事、8% は三井物産を通る。両社は卸の窓口で、そこから全国の問屋と小売に届く。中国の青島には合弁の工場を持っていたが、2025 年 11 月に持分の一部を譲り、連結から外した。事業は単一のセグメントで、部門ごとの利益は開示していない。従業員は連結で 257 人だ。工場は長野の山あいに集まり、地元の大豆を使った品も少しずつ増やしている。会社の歴史と土地の結びつきは強いが、その分だけ生産の場所を動かす自由は小さい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、高野豆腐の分野に限れば太い。凍り豆腐を量産できる会社は国内にほとんど無く、旭松はみすずコーポレーションと並ぶ大手の一角だ。長野の寒さを生かした製法と 75 年の積み重ねは、新しい会社が追いつけるものではない。
だが、その堀が守る市場そのものが縮んでいる。高野豆腐は高齢の世帯が買う乾物で、若い世代の食卓には上りにくい。値段を決める力も強くない。大豆の値段は世界の相場で決まり、値上げは後追いになる。過去 12 年の営業利益率は −2.9〜3.5% と低く、平均は 2% 前後だ。
財務は堅すぎるほど堅い。自己資本比率は 81% で、純現金と政策保有株を合わせると時価総額の 4 割を超える。資本を寝かせたままでは、ROE は上がらない。2026 年の自社株買いは、その重さに経営が気づき始めた印とも読める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食べる量は人口の減少で年 0〜1% 細る。高野豆腐はその中でも縮みが速い品だ。買い手の中心は 60 代より上の世帯で、若い世代は乾物を戻して煮る手間を嫌う。旭松の凍豆腐の売上も、値上げをしながら前の期より 4% 減った。
一方で、追い風もある。高野豆腐はたんぱく質と鉄・カルシウムを多く含み、植物のたんぱく質を求める健康の流れに合う。粉にした品や戻さずに使える品は、若い世代やヴィーガンの市場への入口になる。病院と介護の施設の食事では、柔らかく栄養のある食材の需要が高齢化とともに増える。
原料の大豆は輸入に頼る。米国と中国の作柄、円安、輸送費の上昇で値段が大きく振れ、値上げが追いつくまで利益が削られる。即席みそ汁ではアマノフーズ(アサヒグループ)や永谷園のような大手と棚を争い、値段の主導権は持てない。乾物の市場で規模を武器に値段を決められる会社は、もはや見当たらない。
高野豆腐の作り手は長い年月をかけて減り、残ったのは旭松とみすずコーポレーションのような大手だけだ。競争が緩い代わりに、市場そのものが静かに細っていく。首位の会社の役目は、縮む市場の中で値段を守り、新しい使い道を広げることにある。
資本政策と M&A
還元は配当と、2026 年に始めた自社株買いだ。2026/03 期の配当は創業 75 周年の記念配当を含めて総額 0.8 億円だ。2026 年 5 月と 8 月には市場外の取引で計 2 億円ほどの自社株を買った。
政策保有株は 21 銘柄で 11.6 億円あり、最大は八十二長野銀行だ。2026 年 7 月には投資有価証券の売却益を見込むと開示し、持ち合いを解く動きも見え始めた。株主優待は自社製品の詰め合わせで、費用は年 1 億円に満たない。
中国の合弁を手放したのは、利益の出ない事業を畳む決断だ。親会社は無く、買収の話も表に出ていない。中計には売上や利益の数字の目標が無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
株価は帳簿の自己資本の半分に満たない。純現金 5 億円と政策保有株 12 億円だけで時価総額の 4 割を超え、高野豆腐の首位の事業はほとんどただで手に入る。
資本の使い方は変わり始めた。2026 年には 5 月と 8 月の 2 度、市場外の取引で自社株を買った。7 月には政策保有株の一部を売り、持ち合いを解く方向に動いた。中国の合弁を手放したのも、稼がない事業を畳む決断だ。この流れが続けば、ROE は上がっていく。
事業にも追い風がある。高野豆腐は植物のたんぱく質と鉄・カルシウムを多く含み、健康の食材として見直される余地がある。粉の高野豆腐や戻さずに使える品は若い世代の入口になる。病院と介護の施設に向けた医療用の食材は、高齢化とともに確実に伸びる分野だ。大豆の値段が落ち着けば、利益率は 2020 年前後の 3% 台に戻り、本業の稼ぎは今の 3 倍になる。親会社も支配株主もおらず、資本の使い方を変える自由は経営の手にある。
慎重な見方
本業はほとんど稼いでいない。2026/03 期の営業利益は 0.9 億円で、売上の 1% だ。純利益 2.3 億円のうち 1.6 億円は中国の合弁の売却益だった。2027/03 期の第 1 四半期も営業赤字で、利益を支えるのは政策保有株の配当と資産の売却だ。
高野豆腐の市場は縮み続けている。買い手の中心は高齢の世帯で、若い世代の食卓には上りにくい。値上げをしても数量の減少が上回り、売上は 10 年で 2 割近く減った。健康の食材として見直される話は昔からあるが、数量の反転は一度も起きていない。
値段を決める力も無い。大豆は輸入で、円安と相場で原価が振れる。販売の半分は三菱商事を通り、即席みそ汁は大手と棚を争う。純現金と政策保有株の厚さは、少数株主の手には届かない。自社株買いは 2 億円と、資本の厚さに比べれば小さい。持ち合いの売却も額が見えず、方針の数字は無い。資本が寝たままなら、ROE は 10 年後も資本コストの 3 分の 1 にとどまる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。資本の使い方が変わる兆しはあるが、本業の稼ぐ力は売上の 1〜3% で、10 年でそれを大きく変える材料は見えない。確率は中立に厚く置き、悲観の側を楽観の側よりやや重くした。強気の見方が言う資産の厚さは、悲観の側の床として価値に入れている。還元と持ち合いの売却が方針の数字になれば、楽観の側の確率を上げて見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,590 円28 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 483 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 1,045 円18 億円、今との差 −54.0%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,089 円55 億円 | 791 円14 億円 | +70.9% | +5.5% | 272 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,253 円40 億円 | 621 円11 億円 | +26.6% | +2.4% | 575 円10 億円 |
| 中立 | 43% | 1,655 円29 億円 | 508 円9 億円 | −4.7% | −0.5% | 930 円16 億円 |
| やや悲観 | 20% | 757 円13 億円 | 339 円6 億円 | −51.7% | −7.0% | 219 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 604 円11 億円 | 169 円3 億円 | −65.9% | −10.2% | 77 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,590 円28 億円 | 483 円9 億円 | −8.7% | −0.9% | 2,073 円37 億円 |
今の株価時価総額 2,270 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 高野豆腐が健康の食材として見直される 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,089 円55 億円
高野豆腐は、たんぱく質と鉄・カルシウムを多く含む乾物として、健康を気にする若い世代や介護の食事に広がる。旭松は戻さずに使える品や粉の高野豆腐で使い道を広げ、海外のヴィーガンの市場にも売り込む。即席みそ汁と医療用の食材は、病院と介護の施設向けに数量を伸ばす。大豆の値上がりを値上げで取り戻し、凍豆腐の利益率は 10% に届く。営業利益は 5 億円ほどと、過去 30 年で最も高い水準になる。政策保有株の売却と自社株買いも続き、資本は少しずつ軽くなる。それでも ROE は 5% に届かず、資本コストとの差は残る。
- 凍豆腐(高野豆腐):数量 3.0(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 154(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。3,000 t × 154 万円/t、利益率 10%
- 加工食品・医療用食材:数量 119(出荷の食数(百万食・年、推定))× 価格 0.55(百万食あたり売上(億円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。1 億 1,880 万食 × 0.55 億円/百万食、利益率 5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 55 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:植物のたんぱく質を求める流れで高野豆腐の数量が下げ止まり、値上げも通る筋書き。凍豆腐の数量は 10 年以上減り続けてきたので低く置いた。
やや楽観 20% 値上げが通り、利益率が過去の水準に戻る 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,253 円40 億円
高野豆腐の数量はゆっくり減るが、値上げが物価並みに通り、単価の上昇で売上を保つ。即席みそ汁と医療用の食材は、介護の施設の食事の外注で少しずつ伸びる。大豆の値段は落ち着き、工場の省人化も進む。営業利益は 3.6 億円ほどと、2020/03 期の水準を少し上回る。配当は普通配当を少しずつ増やし、自社株買いも時々行う。ROE は 3〜4% に戻るが、資本コストの半分には届かない。首位の地位と堅い財務で会社は揺るがないが、株主の取り分の伸びは物価並みにとどまる。医療用の食材は介護の施設の食事の外注に乗って、全社の 3 割近くまで育つ。
- 凍豆腐(高野豆腐):数量 2.8(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 152(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。2,760 t × 152 万円/t、利益率 8.5%
- 加工食品・医療用食材:数量 110(出荷の食数(百万食・年、推定))× 価格 0.54(百万食あたり売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。1 億 1,020 万食 × 0.54 億円/百万食、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2019〜2021 年に営業利益率 3% 台を出した実績があり、大豆の値段が落ち着き値上げが定着すれば届く範囲。
中立 43% 縮む乾物の市場で、首位の座を守る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,655 円29 億円
高野豆腐を買う人の多くは高齢の世帯で、数量は 10 年で 15% ほど減る。旭松は国内の首位の座を守り、値段は物価並みに上げる。即席みそ汁と医療用の食材は横ばいだ。大豆と電気代の上昇は値上げで追いつくが、それ以上の利益は出ない。営業利益は 2.4 億円ほどで、政策保有株の配当と合わせて純利益も同じくらいになる。会社は長く続くが、資本の稼ぐ力は資本コストの 3 分の 1 にとどまる。純現金と政策保有株は大きくは動かず、資本の厚さが ROE を押し下げる形も変わらない。配当は普通配当を細く保ち、自社株買いは時々にとどまる。
- 凍豆腐(高野豆腐):数量 2.6(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 150(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。2,550 t × 150 万円/t(物価の 1.34 倍)、利益率 7.5%
- 加工食品・医療用食材:数量 103(出荷の食数(百万食・年、推定))× 価格 0.54(百万食あたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。1 億 260 万食 × 0.54 億円/百万食、利益率 4%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 29 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の食べる量が年 0〜1% 減る業種の前提より速く、高齢の買い手に偏る高野豆腐の数量が 10 年で 15% 減る中心の筋書き。利益率は過去 10 年の中央値に近い。
やや悲観 20% 大豆高と数量減で本業が赤字に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 757 円13 億円
高野豆腐の買い手が細り、数量は 10 年で 4 分の 1 減る。大豆は輸入に頼り、円安と世界の需給で値段が上がるたびに利益が消える。安い豆腐の加工品や中国産の乾物に棚を奪われ、値上げは物価に届かない。営業損益はほぼゼロで、政策保有株の配当で黒字を保つ形になる。株の値打ちは稼ぐ力ではなく、手元の現金と政策保有株の額で支えられる。会社は赤字の工場を抱えたまま、資産を少しずつ取り崩して配当を払う。医療用の食材だけが細く伸びるが、全社を支えるほどではない。資本の厚さは残るが、使い道は決まらない。ROE はほぼゼロに沈む。
- 凍豆腐(高野豆腐):数量 2.3(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 143(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。2,250 t × 143 万円/t、利益率 4%
- 加工食品・医療用食材:数量 95.0(出荷の食数(百万食・年、推定))× 価格 0.52(百万食あたり売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。9,500 万食 × 0.52 億円/百万食、利益率 1.5%
倍率:稼ぐ力がほぼゼロなので PBR で今の自己資本 84 億円に掛ける。価値は床の資産(純現金と政策保有株の税後)の 13 億円ほど。自社株買いの実績があるので現金の戻り方は 1.0。
確率:2023/03 期のように営業赤字の年が繰り返す筋書き。過去 12 年で営業赤字は 2 回、2027/03 期の第 1 四半期も赤字。
悲観 10% 乾物の市場が消え、工場の減損が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 604 円11 億円
高野豆腐を食べる世代が減り、数量は 10 年で 4 割減る。若い世代は乾物を戻して煮る手間を嫌い、即席みそ汁も大手の商品に押される。大豆の値上がりを値段に乗せられず、営業損益は赤字に落ちる。長野の四つの工場のうち一つを閉じ、減損で自己資本が 8 億円ほど削られる。配当は減り、手元の現金は赤字の穴埋めに回る。株主に戻る現金は細り、株の値打ちは売れる資産の一部まで落ちる。首位の看板は残っても、その看板を欲しがる買い手は現れない。少数株主は、細る配当と資産の取り崩しを見守るしかない。工場の土地も山あいで、売っても高くはならない。
- 凍豆腐(高野豆腐):数量 1.8(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 134(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。1,800 t × 134 万円/t(物価に追いつかない)、利益率 0%
- 加工食品・医療用食材:数量 81.0(出荷の食数(百万食・年、推定))× 価格 0.49(百万食あたり売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 −1 億円。8,100 万食 × 0.49 億円/百万食、赤字
倍率:赤字なので PBR で今の自己資本 84 億円に掛ける。価値は床の資産まで。赤字の間は現金が株主に戻りにくいので、純現金に戻り方 0.5 を掛けた。
確率:高野豆腐の需要が高齢の世代とともに細り、長野の工場が過剰になる構造的な負けの筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
凍豆腐(高野豆腐)
家庭用・業務用の凍り豆腐、戻さず使える品、粉の高野豆腐。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 112 | 34 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 150 | 38 | 3 |
取り方:出荷量の開示は無い。国内の凍り豆腐の生産のうち大手 2 社の一角として年約 3,000 トンと見て、売上 33.5 億円から 1 トンあたり約 112 万円と推定(推定)。単一セグメントで品目別の利益は無いので、首位の主力品として利益率 6% と推定。
加工食品・医療用食材
フリーズドライの即席みそ汁・スープ、病院・介護施設向けの医療用の食材。
| 数量出荷の食数(百万食・年、推定) | 価格百万食あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 108 | 0.40 | 43 | 1 |
| 10 年後 中立 | 103 | 0.54 | 55 | 2 |
取り方:加工食品 23.4 億円とその他 20.0 億円の合計。1 食あたりの平均の売上を即席みそ汁と医療用の食材を均して見て、年約 1 億 800 万食と推定(推定)。利益率は 2.3% と推定。本社費は adjust に置いた。
リスクと懸念
高野豆腐の数量の減少
買い手の中心は高齢の世帯で、数量は 10 年以上細り続けている。若い世代に広がらなければ、首位の地位を守っても売上は減り続ける。
大豆の値段と円安
原料の大豆は米国と中国から輸入している。作柄や円安で値段が跳ねると、値上げが追いつくまで薄い利益が消える。
商社への依存
販売の 52% が三菱商事を通る。窓口が変わる・取引の条件が厳しくなると、販路そのものが揺らぐ。
長野の工場の集中
工場は長野県南部に集まっている。地震や大雨で工場が止まれば、首位の品の供給が途切れる。
資本の寝かせ
純現金と政策保有株が時価総額の 4 割を超える。使い道が決まらないまま寝かせれば、ROE はいつまでも上がらない。
今後の分かれ目
- 自社株買いと政策保有株の売却が続き、方針の数字が出る
- 資本の使い方が変わったと見て、売る分を価値に足して見直す。
- 凍豆腐の売上が 3 年続けて前の年を上回る
- 数量の下げ止まりと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2 年続けて 3% を超える
- 値上げの定着と見て、中立の利益率を見直す。
- 営業赤字が 2 期続く
- 本業の構造的な弱さと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 医療用の食材が売上の 3 割を超える
- 高齢化の追い風を取り込む形が見え、数量の見通しを上げる。
見ておくもの
- 凍豆腐の売上と数量
- 営業利益率(本業の稼ぎ)
- 大豆の輸入価格と円相場
- 自社株買いと政策保有株の売却
- 医療用の食材の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価と PBR 0.48 倍を見ずに決めた。どの筋書きでも ROE は k 8.25% を下回るので、PER は 1÷k=12.5 倍を上限に ROE÷k に沿って 7.5〜9 割に置いた。政策保有株は配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の側の床(純現金と政策保有株の税後)にだけ入れた。帳簿の安さを倍率に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10.2→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.25%。