結論
やまみは広島県三原市の豆腐メーカーだ。豆腐・厚揚げ・油揚げの専業で、売上は232億円。業界では最大手の相模屋食料に次ぐ2位とされる。扱う品は単純で、何をいくつ作り、いくらで売れるかがすべてを決める。
筆者の結論は「割高」である。会社は優秀だ。上場以来10年連続で増収し、2026年6月期の営業利益率は11.4%と過去最高になった。ただ、この改善は国産大豆への切り替えと工場のロス率の低下に支えられたもので、10年先まで伸ばし続けられる水準とは考えにくい。
成長の源は同業の廃業だ。豆腐の製造者は1960年度の5万軒強から4,000軒を割るまで減り、残った大手に量が集まる。関東の富士山麓工場では2027年2月に第2工場が動く。筆者はこの拡大を信じる。だが豆腐は店頭で「安い」ことが前提の品で、値段は量販店との毎年の交渉で決まる。
中立の姿は、販売数量が10年で1.55倍、価格は物価並み、営業利益率は11%だ。それでも10年後の時価総額は今の水準をわずかに超えるだけで、資本コストを考えると足りない。強気の姿が実れば大きく上回る。慎重な姿との開きが大きく、読みにくい会社でもある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「よくできた製造業」である。豆腐は数十年先も食卓にある。一方、消費者は味の差を意識せず、値段は量販店が決める。優れた作り手ではあるが、価格を決める立場にはない。
再投資の負担は軽くない。売上232億円に対して有形固定資産が120億円ある。売上を2倍にするには、設備も2倍近くが要る。稼いだ利益の多くは工場に戻り、配当に回る分は3割にとどまる。ただ、投下資本の稼ぎが資本コストを上回る間は、この再投資は価値を生む。やまみの投下資本の稼ぎは、今のところ明らかに上回っている。
見ておきたいのは、利益率の持続性だ。2026年6月期の11.4%は、過去12年で最高である。会社の予想する13.5%まで上がると考えるのは、実績のない領域に踏み込むことになる。
安全域は薄い。今の値段は、利益が数年で大きく増える前提を織り込んでいる。筆者は、その前提が実現した中立の姿でも、10年の価値は今の時価総額に届かないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、スーパーの棚に並ぶ豆腐・厚揚げ・油揚げの製造販売だ。単一の事業で、売上の大半が量販店向けとなる。最大の取引先は卸の日本アクセスである。
工場は3つある。広島の本社工場が売上の約45%、滋賀の関西工場が約35%、静岡の富士山麓工場が約18%を占める。富士山麓工場は2019年に新設し、関東市場を開く拠点だ。2026年6月期の売上は43億円と、前期比で1割強伸びた。黒字になったのは最近で、2027年2月には隣に第2工場が動き出す。
強みは製造の効率だ。1ラインで1時間に1万5千パックを作る能力があり、設備の自動化と改良を続けてきた。本社工場は厚揚げラインの設備を更新し、生産能力が上がった。
値決めには型がある。豆腐はあえて安い値段で量販店の棚に入れてもらい、定着してから少しずつ上げる。厚揚げは同業が作りにくく、豆腐より高い値でも棚が取れ、代わりの品がない取引先ほど価格改定を受け入れやすい。この二つを組み合わせ、棚に載る品数を増やしている。
原料は大豆だ。2025年2月までは高値の輸入大豆を使っていたが、国産大豆の付加価値商品へ切り替えが進み、材料費率は4ポイント近く下がった。一方で光熱費、人件費、運賃は上がり続けている。
優良さと弱いところ
筆者が一番に見るのは、作る力の差だ。豆腐は味の差が出にくく、量販店は価格と安定供給で仕入先を選ぶ。やまみは生産能力の大きさとロス率の低さで、同じ豆腐をより安く作る。町の豆腐店が減り、相模屋食料のような大手が少数で競う構図の中で、2位に立つ意味は大きい。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどではない。厚揚げ・油揚げは作りにくさが参入障壁になる。だが相模屋食料は買収で規模を伸ばし、納豆大手のタカノフーズなども豆腐を手がける。値決めは今も量販店の側にある。
資本の効率は高い。10年の自己資本利益率の中央値は12.9%で、足元は16%を超える。売上232億円に対し有形固定資産は120億円と、軽い事業ではないが、稼ぐ力は十分にある。成長のための設備投資を優先し、配当性向は30%前後と抑えめだ。経営は創業家の持株会社が3分の1強を握り、方向の変わりにくい体制である。
弱点は利益率の振れだ。2020年6月期には営業利益率が2.9%まで落ち、2023年6月期も6.4%だった。富士山麓工場の立ち上げと原価高が重なった年がある。拡大はいつも、こうした谷の危険と隣り合わせにある。足元の11.4%は、その谷を抜けた先の高い値として見るべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
豆腐の市場は、金額で6千億円ほどと推定される(豆腐関連製品を含む)。2016年度をピークに、数量は人口減と食の多様化で減っている。筆者は今後10年の総量を、年1%前後の縮小、つまり0.9倍ほどと見る。
縮む市場で大手が伸びる理由は供給側にある。製造者は1960年度の5万軒強から4,000軒を割り込んだ。2024年1〜7月だけでも豆腐店の倒産・廃業は36件で、約半数が赤字だった。大豆、光熱費、運賃、人件費が上がる一方、店頭では豆腐が物価の優等生として値を上げにくい。薄利のまま続けられない店が閉じ、その量を大手が引き受ける。
最大手は相模屋食料で、年商は400億円超。M&Aで同業12社を再建した。2025年9月にはカルビーと組み、米国の豆腐メーカーHodoを買収した。納豆大手のタカノフーズ、東北の太子食品工業もいる。集約が進むほど、大手どうしの競争は厳しくなる。
中食や簡便性の高い品は伸びる余地がある。厚揚げやカット豆腐、少量パックが代表だ。価格は物価並みを基本にしながらも、値上げは量販店の理解が前提で、毎年通るとは限らない。国産大豆のような付加価値品への移行が、値上げの理由づけになっている。
資本政策と M&A
資本政策は堅実で、慎重だ。配当性向は2026年6月期で30%強、2027年6月期は配当を引き上げる予想だが、利益の伸びに沿った範囲にとどまる。自社株買いは見当たらず、株主優待もない。
投資は工場に向かう。富士山麓第2工場は総投資56.1億円で、補助金18.3億円を除く37.8億円を借入と自己資金で賄う。補助金は賃上げ(年平均6.8%)が条件だ。今の自己資本比率は6割台と厚く、純有利子負債は16億円で、財務の余力は十分にある。ただ、2026年6月期の半ばには売掛金が増え、運転資金の負担も目立った。
創業家の持株会社が3分の1強を握り、ほかに社長個人も1割強を持つ。経営の方向は安定している一方、市場に出回る株は少なく、買収の対象にはなりにくい面もある。M&Aは買う側でも買われる側でもなく、同業の廃業による需要の取り込みが成長の核になる。2026年8月には、2027年6月期からの3か年を対象とするローリング式の中期経営計画が示された。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
やまみの強みは、作る力と立地の組み合わせだ。1ラインで毎時1万5千パックを作る生産性は、同業の中でも突出している。関東の富士山麓工場は売上が前期比で2桁伸び、能力が逼迫したため第2工場に56億円を投じる。敷地にはまだ7,500坪の余地があり、3棟目、4棟目が建てられる。
業界の供給は急速に減っている。豆腐の製造者は4,000軒を割り、後継者のいない店は閉じる。大手量販店は、安定して大量の豆腐を納められるメーカーを探している。やまみは厚揚げと油揚げという作りにくい品で、棚の定番を押さえつつある。関東の売上上位の取引先では、新規の採用が相次いでいる。
利益の改善は、手応えのある実績だ。国産大豆へ切り替え、材料費率を4ポイント近く下げた。工場のロス率も下がっている。会社の計画は営業利益率で2027年6月期12%、その先は13%台。10年連続の増収という実績を考えれば、この計画は絵空事ではない。市場シェア10%の目標に近づけば、販売数量は今の2倍に迫る。財務も厚く、増設の資金に困らない。
慎重な見方
豆腐は、味の差が出にくく、量販店が値段を決める商品だ。やまみの値上げ力は限られている。会社自身が、豆腐は低価格のイメージがあるため、初めは安い値段で棚に入ると説明している。最も大きな取引先は卸の日本アクセスで、価格交渉はいつも相手の主導になりやすい。
足元の利益率は割り引いて見るべきだ。2026年6月期の営業利益率11.4%は、高い輸入大豆の在庫が抜け、国産大豆に切り替えた直後の一時的な押し上げを含む。2023年6月期は6.4%、2020年6月期は2.9%だった。大豆相場、円安、光熱費、人件費、運賃は同時に動き、原価の転嫁は遅れる。
競争は強まる。相模屋食料は年商400億円超で、M&Aにより規模を広げ、カルビーと組んで海外にも出る。量販店のPB(自社ブランド)が広がれば、やまみは受託製造に近づく。さらに、拡大のための借入と償却が重なり、需要が想定を下回れば利益が一気に減る。補助金の条件である年6.8%の賃上げも、固定費になって残る。
どちらに重みを置いたか
作る力と同業の廃業という追い風は本物で、数量の伸びは強気の見方に説得力がある。一方で、値段を量販店が決める以上、利益率の持続には慎重な見方が重い。足元の11.4%は、大豆の切り替えという一度きりの効果を含むからだ。確率は中立に3割台半ばを置き、強気側にはやや厚く、慎重側には利益率が谷に戻る筋書きを2割台前半置いた。10年の価値は今の時価総額を大きく下回り、割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 7,935 円553 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,191 円83 億円)。 今の値に割り戻すと 4,486 円313 億円、今との差 −31.7%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,438 円1,006 億円 | 1,770 円123 億円 | +146.7% | +9.5% | 1,297 円90 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,431 円796 億円 | 1,540 円107 億円 | +97.4% | +7.0% | 2,854 円199 億円 |
| 中立 | 36% | 9,147 円637 億円 | 1,313 円92 億円 | +59.2% | +4.8% | 3,766 円262 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,820 円266 億円 | 827 円58 億円 | −29.3% | −3.4% | 1,069 円74 億円 |
| 悲観 | 11% | 854 円60 億円 | 436 円30 億円 | −80.4% | −15.0% | 142 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,935 円553 億円 | 1,191 円83 億円 | +38.9% | +3.3% | 9,127 円636 億円 |
今の株価時価総額 6,570 円458 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 関東で10%に迫り、規模の利益が出きる 利益 59 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 14,438 円1,006 億円
関東の取引先が増え続け、富士山麓の2棟が早い段階でフル稼働に入る。敷地に残る用地にも3棟目、4棟目が建つ。町の豆腐店の廃業は止まらず、量販店は大手の安定供給に寄る。やまみは厚揚げと油揚げで棚の定番を押さえ、豆腐の国内シェアは10%に迫る。販売パック数は今の1.9倍になる。売り場の値上げも受け入れられ、単価は物価を少し上回る。工場の稼働が上がり、国産大豆への切り替えも進むため、営業利益率は13%まで上がる。会社が掲げる拡大路線が、ほぼ描いたとおりに実る10年だ。純利益は59億円前後まで伸び、配当も増え続ける。
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ:数量 42,047(販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定))× 価格 149(1パックあたりの平均単価(円、名目))→ 売上 627 億円・営業利益 82 億円。営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.95 倍、時価総額 995 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:同業の廃業が続く中で、やまみが関東の棚を取り続ける必要があり、連続成功が前提。第2工場の稼働と増設がともに計画どおりに進む確率は低い。
やや楽観 22% 増設が続き、関東で定番の座を固める 利益 47 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 11,431 円796 億円
関東の拡販が順調に進み、第2工場に続く増設も実行される。販売パック数は今の1.7倍に増え、単価も物価並みか、厚揚げの比率が上がる分だけ少し上に出る。営業利益率は12%で、足元の最高水準を保ちつつ、さらに積み増す。大豆や光熱費の高騰は、おおむね価格に転嫁できる。ただ、量販店との値決めは毎年の交渉で、すべてを通せるわけではない。成長は続くが、同業の相模屋食料も攻勢を強めるため、シェアの伸びは強気の最高値には届かない。純利益は47億円前後で、財務の余力も十分に残る。会社が示す営業利益率の計画(13%台)には届かないが、足元の水準は保つ。配当は利益の3割強を出し続ける。
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ:数量 37,621(販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定))× 価格 145(1パックあたりの平均単価(円、名目))→ 売上 545 億円・営業利益 65 億円。営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.51 倍、時価総額 778 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近10年連続の増収と、会社が自ら示す拡大計画の実績を踏まえ、強気側は他社より厚めに置く。ただし増設の資金負担と量販店の値決めの壁がある。
中立 36% 廃業の空白を埋めて、堅実に伸びる 利益 38 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 9,147 円637 億円
豆腐の国内市場は小さく縮み、廃業する同業は後を絶たない。その空白を、やまみが関東と関西で埋めていく。販売パック数は10年で今の1.55倍。年4%台半ばの伸びで、直近の7〜8%よりは落ち着く。単価は物価並みの1.34倍。人件費と運賃も同じ率で増えるため、営業利益率は11%と、足元の11.4%を少し下回る水準で落ち着く。第2工場の稼働後も設備投資は続くが、財務は健全なまま。売上は480億円台、純利益は38億円前後になる。優良ではあるが、特別に高い評価を受ける会社ではない姿だ。配当性向は3割強で、自己資本は厚みを増す。
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ:数量 34,302(販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定))× 価格 141(1パックあたりの平均単価(円、名目))→ 売上 483 億円・営業利益 53 億円。営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.01 倍、時価総額 612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の伸びを年4%台半ば、価格を物価並みとする中心の姿。強気の実績と慎重な価格の見方の落としどころ。
やや悲観 23% 値上げが通らず、利益率が8%へ戻る 利益 19 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,820 円266 億円
相模屋食料の攻勢と量販店のPB(自社ブランド)の広がりで、やまみの値上げは通りにくくなる。国産大豆の割合が増えるぶん、材料費は高止まりする。販売パック数は今の1.15倍にとどまり、単価も物価に届かない1.25倍。人件費と運賃は物価どおりに増えるので、営業利益率は8%に戻る。2024年6月期の10.9%や直近の11.4%は、国産大豆への切り替えと工場の稼働改善でようやく得た水準で、崩れやすい。利益は今とほぼ同じ19億円前後で10年が過ぎる。増設の償却が重く、成長は止まる。第2工場の稼働率が上がりきらず、関東の拡大も予定より遅れる。配当は据え置きに近くなる。
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ:数量 25,449(販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定))× 価格 131(1パックあたりの平均単価(円、名目))→ 売上 334 億円・営業利益 27 億円。営業利益率8.0%
倍率:ROE7.6%がk8%以下なので、PERの上限は1÷k=12.1倍。稼ぐ力(純利益÷k)の約87%(12.16倍)。構造的な値上げ難で、堀による上乗せを見込まない。
確率:豆腐は店頭で「安い」ことが前提の商品で、量販店との価格交渉が毎年続く。直近の利益率の大幅な改善は、輸入大豆の高値在庫が抜けた効果が大きく、持続を割り引く。
悲観 11% 量販店の値下げ要求で、規模の利益を失う 利益 5 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 854 円60 億円
量販店の寡占がさらに進み、値下げ要求とPB化で豆腐が特売の目玉に戻る。大豆相場と円安が重なり、原価を転嫁できない。関東への拡販で増やした設備は稼働率が上がらず、減価償却だけが残る。販売パック数は今の0.95倍、単価は1.10倍と物価に大きく遅れる。営業利益率は2020年6月期に実際に落ちた3%まで下がり、純利益は5億円前後。設備の一部は減損し、自己資本は今の水準まで減る。配当は利益に合わせて落とす。豆腐が再び「物価の優等生」に戻り、規模の利益を失う姿だ。同業の淘汰で生き残っても、利益は増えない。
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ:数量 21,024(販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定))× 価格 116(1パックあたりの平均単価(円、名目))→ 売上 243 億円・営業利益 7 億円。営業利益率3.0%
倍率:稼ぐ力は純利益5億円÷k=60億円強にとどまる。設備の減損後の自己資本は今の水準で、売却できる資産の税後(床)も約60億円。今の自己資本118億円に0.5を掛けた。
確率:豆腐は同業の半数が赤字になる薄利の商品で、2020年6月期の利益率2.9%という実例がある。増設の償却が重く残る形が、もっとも傷みやすい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
豆腐・厚揚げ・油揚げ
広島・滋賀・静岡の3工場で豆腐、厚揚げ、油揚げ、おから製品を作り、スーパー・ドラッグストアなどへ卸経由と直接で納める。
| 数量販売パック数(万パック。豆腐・厚揚げ・油揚げを1パックに換算した推定) | 価格1パックあたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 22,130 | 105 | 232 | 27 |
| 10 年後 中立 | 34,302 | 141 | 483 | 53 |
取り方:売上232.4億円を、1パック平均105円(豆腐98〜118円・厚揚げ138〜158円・油揚げ等の混合の推定)で割り、年2.2億パックと置いた。数量は市場が年1%前後で縮む中、同業の廃業の受け皿と関東への拡販で中立は10年1.55倍(市場全体は0.9倍、国内の豆腐市場約6千億円に対するシェアは今の約3.9%から約6.8%)。価格は物価並みで10年1.34倍。競合は相模屋食料(年商400億円超)、タカノフーズ、太子食品工業。
リスクと懸念
量販店の値決めの主導権
豆腐は店頭で「安い」ことが前提の品で、価格は量販店との毎年の交渉で決まる。原価の上昇を転嫁できない年は、利益率が一気に下がる。2020年6月期の営業利益率は2.9%まで落ちた。
原料大豆と光熱費の変動
2025年2月まで高値の輸入大豆を使い、利益を押し下げた。大豆相場、為替、エネルギー価格が重なると、販売価格の改定が追いつかない。国産大豆への切り替えは材料費を上げる面もある。
増設の償却と稼働率
富士山麓第2工場は56.1億円を投じ、2027年2月に稼働する。需要が計画を下回れば、償却費だけが残る。富士山麓工場は2025年6月期の営業利益が0.1億円と、収益化に時間がかかった前例がある。
大手同業の攻勢
相模屋食料は年商400億円超で、M&Aと海外展開を続ける。カルビーとの連携で販路も広がる。量販店のPB(自社ブランド)が増えれば、やまみは自社ブランドの値決め力を失う。
取引先の集中
最大の取引先は卸の日本アクセス。関東の売上上位の取引先も入れ替わりが大きく、1社の採用・不採用で売上が大きく動く。
人手と賃上げの負担
補助金の条件として、年平均6.8%の賃上げを約束している。人件費の上昇を生産性で吸収できなければ、利益率の押し下げ要因になる。
今後の分かれ目
- 2027年2月に稼働する第2工場が、1年以内にフル稼働に近づいたら
- 関東の需要が確かということ。数量の見方を強気側に寄せてよい。
- 営業利益率が12%を超えて2期続いたら
- 国産大豆への切り替えの効果が定着した証拠。中立の利益率の見方を上げる。
- 大豆相場の高騰で、2期連続で営業利益率が8%を割ったら
- 価格転嫁が効いていない。やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 相模屋食料や量販店のPBが関東で攻勢を強め、富士山麓の売上が前年を割ったら
- 関東の拡大が頭打ち。数量の伸びを大きく割り引く。
- 創業家の持株会社が持株の売却や再編に動いたら
- 資本政策が変わる合図。買収の可能性も含め見直す。
見ておくもの
- 富士山麓工場の売上と営業利益(四半期ごと)
- 営業利益率と材料費率
- 第2工場の稼働時期と稼働率
- 豆腐業界の倒産・廃業件数
- 配当性向と借入の水準
倍率と資本コストの決め方
単位は販売パック数×単価。今の平均単価・年2.2億パックは推定で、数量は国内市場0.9倍に同業の廃業の受け皿とシェア拡大を足した1.55倍、価格は物価並みの1.34倍とした。中立の営業利益率は過去の最高11.4%を超えない11%。k8%、g4%、残る割合0.5でRONICから式の上限を出し、その9割を中立に置いた。今の時価総額(PER約25倍)と同業の倍率は見ずに置いた。リース(新会計基準)は工場を自社保有で影響が小さく、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→16.95 倍・やや楽観 PER 13.6→16.51 倍・中立 PER 12.9→16.01 倍・やや悲観 PER 10.5→12.16 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した。事業が傾いてはいないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。