結論
北海道コカ・コーラボトリングは、北海道でコカ・コーラ系の飲料をつくって売る独立系のボトラーだ。ボトラーとは、ブランドの持ち主から製造販売権を預かる地域会社のことである。道内に約 4 万台の自販機を置き、札幌工場で缶とペットボトルをつくる。大日本印刷が約 57% を持つ親子上場の会社でもある。
筆者の結論は割高である。会社は悪くない。2025 年 12 月期まで 2 期連続で増収増益となり、純現金も厚い。だが稼ぎが小さい。純利益は 17 億円、自己資本は 434 億円で、資本に対する稼ぎ(ROE)は 4% に届かない。資本コストを下回る会社の帳簿は、額面どおりには評価できない。
10 年後も構図は変わらない。道内の人口は減り、飲料の数量は 1 割近く細る。物価並みの値上げで売上は伸びるが、人件費と設備の更新が利益を食う。2026 年は札幌工場のライン投資と自販機の更新で、会社自身が減益を見込む。
強みは自販機の網とコカ・コーラのブランドだ。道内で製造工場を持つ大手飲料メーカーは同社だけで、災害時の供給網にもなる。この地盤は簡単には崩れない。ただ、地盤が堅いことと、時価総額に見合う利益が出ることは別の話だ。
中立の見立てでは、10 年後の時価総額は今の半分にも届かない。楽観でも今の値段には戻らない。親会社による完全子会社化の可能性は残るが、その価格は事業の価値を映すとは限らず、筋書きには織り込まなかった。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ちたいかを問うと、答えは値段次第になる。
事業は分かりやすい。飲料を詰めて運び、自販機で売る。10 年後も存在し、道内のシェアは今と大きく変わらないだろう。堀は自販機の網と本家のブランドで、狭いが深い。
ただ、株主の手元に残る利益が小さい。減価償却は年 21 億円、営業利益は 26 億円。自販機と工場に毎年お金がかかり、利益の多くを維持の投資が食う。稼ぎが資本コストを下回る限り、ためた利益は額面未満の価値にしかならない。
資本の使い方は堅いが、効率は低い。純現金 96 億円は安心材料でも、持っているだけで稼ぎを生むわけではない。親会社が過半を握り、少数株主の声は届きにくい。
安全域は見当たらない。利益に対して払う値段が高く、事業が順調でも報われにくい。バリュー投資の観点では、事業は評価できるが、本質価値は今の時価総額よりかなり低いと見る。
何で稼ぐ会社か
事業の中身は、コカ・コーラ社から製造販売権を預かり、北海道で飲料をつくって売ることだ。ブランドと原液は本家のもので、同社は容器に詰め、運び、売る側にいる。
売り先は大きく 3 つある。一つは自販機で、道内に約 4 万台を置く。道内の自販機は約 8 万台といわれ、その半分が同社の機械だ。もう一つは、コンビニ、スーパー、飲食店、Web 販売などの店頭向けである。売上の内訳は開示がなく、筆者は自販機が飲料売上の半分強と推定している。
三つ目は飲料以外の事業だ。グループ 5 社で、給与計算などのバックオフィス代行、コインパーキング精算機や券売機の保守、タンクローリーなどの物流、厨房機器の点検、LED・空調の設置、コールセンター、清掃を請け負う。自販機を回る人と車を他の仕事にも使う発想で、売上は全体の 1 割に届かない。
数量は、道内の年間販売量が約 3,300 万ケースと同社のレポートにある。1 ケースを 24 本入りの標準換算(約 5.7 リットル)とみると 18〜19 万 kl で、道内の清涼飲料の総量を人口比で 90 万 kl 前後と置けば、シェアは 2 割ほどになる。この換算は推定だ。
工場は札幌市清田区の 1 か所だけ。旭川(1996 年)と帯広(2004 年)の工場は閉じ、生産を札幌に集めた。社員は単体で約 240 人、連結で約 1,170 人。会社は 1963 年に大日本印刷の社内で生まれ、1973 年に上場した。
優良さと弱いところ
堀は三つある。自販機の網、コカ・コーラのブランド、道内で唯一の大手の工場だ。
自販機の網は、場所を押さえた資産である。4 万台は一朝一夕には増やせない。設置場所の契約と、補充・修理の巡回網がそろって初めて稼ぐ。1 台あたりの売上は増えていると社長は語る。ただし自販機は国全体では縮む市場で、同社が伸びているのは稼働率を上げ、他社の場所を取っているからだ。
ブランドの力は本物だが、値段を決める力は限られる。原液の代金と商標の使用料は本家に払う側で、道内の値上げはサントリーなど大手の値付けに縛られる。コンビニやスーパーの自社ブランドにも押される。
弱いのは資本の稼ぎだ。過去 10 年の ROE は 1〜5% の間で、中央値は 3.5%。営業利益率も 1〜4% で、2025 年の 4.4% は 10 年で最高になる。工場のライン、自販機への投資が重く、利益の多くが設備に埋まる。2026 年は投資で減益を計画している。
経営は堅実だが、攻めてはいない。配当は年 4 億円ほどで、2026 年も同額の予定だ。2025 年は純利益の 25% ほどしか戻していない。親会社が約 57% を握るため、少数株主が資本政策を動かす力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の清涼飲料は、数量が減り、単価で市場を保つ局面にある。2025 年の市場は約 5.8 兆円で、富士経済は前年より 4% 近く増えたと見ている。値上げで買い控えが出る一方、1 本あたりの値段が上がり、金額だけがやや増えている。
北海道は、国内の中でも人口の減りが早い地域だ。訪日客の上乗せはあるが、道民の日常の消費を支えるほどではない。数量は 10 年で 1 割近く細ると筆者は見る。
自販機は、飲料の販売量の 3〜4 割を担う業界の特徴だが、市場そのものは縮んでいる。コンビニの 24 時間営業、キャッシュレス決済の普及、人手不足による補充費の上昇が重なる。それでも北海道は店が遠く、冬は外に出にくい。自販機の価値は本州より落ちにくいと筆者は見る。
競争は、サントリーなど大手との間でいちばん激しい。同社の中期計画(2024〜2026 年)も、大手とのシェア競争への対応を重点に挙げる。自社ブランドが値上げを抑えるのは全国共通だ。
本家系の別の大手ボトラー、コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、2025 年 12 月期に自販機の減損で最終赤字 507 億円を出した。自販機の網は強みであると同時に、重い資産にもなる。ペットボトルのリサイクル規制や、原材料・包装・物流費の上昇も、業界共通のコストだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年 4 億円ほどで、2025 年は純利益の 25% ほどにあたる。2026 年も同額の予定で、自社株買いはしていない。自己資本比率は 8 割、純現金は 96 億円と、手元は厚い。
現金は余っているというより、設備に回っていく。札幌工場に大型のラインを入れ、自販機を更新する 2026 年は、純利益が 11 億円に落ちる計画だ。社長は 2030 年とその先の土台づくりだと語る。
M&A は目立たない。2022 年に、自販機の運営と運送の事業を子会社の北海道ベンディングへ分けた程度だ。買収で広げる会社ではなく、地元の事業を磨くタイプである。
最大の論点は親会社だ。大日本印刷が約 57%、栗林商会が約 9% を持つ。流通する株は少なく、親子上場への風当たりが強まる中で、完全子会社化は選択肢として残る。公表された方針は見当たらない。ただ、その価格は親会社が決める値段であり、本質価値とは別物と筆者は考える。
点検済み(2026-10-19):余った現金と設備投資の使い道、起点(来期予想は谷)、親会社 TOB を入れていないことを確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
株主優待は、100株以上で年2回、約4.5千円相当の自販機ドリンクチケットなど。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約3千人(飲料の原価約5割)から年1.5億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自販機は、北海道では本州より価値が落ちにくい。店が遠く、冬が長い土地で、24 時間動く機械は生活の道具になる。社長が語るとおり、台数も 1 台あたりの売上も伸びている。
設置が減る業界で、稼働率を上げて利益を取れる会社が最後に残る。大手が引いた場所は、同社の網に回ってくる。
課題解決型の事業は、自販機の巡回網と人員を他の仕事に使う。バックオフィス代行、精算機の保守、物流などは、飲料より利益率が高い。売上の 1 割に届かない今は種の段階だが、育てば利益の質を変える。
道内で製造工場を持つ大手は同社だけで、運送費でも有利に立つ。災害時には道内 179 市町村との協定が効き、自治体との関係も深い。2026 年のライン投資は増産と品質の底上げに使われ、償却が一巡すれば利益率は戻る。
純現金 96 億円で、借金の心配もない。親会社の大日本印刷は印刷・包装の大手で、安定株主として守りが固い。利益率が 6% に近づけば、純利益は今の倍になる。
慎重な見方
道内の人口は減り続け、飲料の数量は縮む。値上げで金額を保っても、買い控えが先に進む。自販機は国全体で下り坂の市場で、補充の人手不足と設置場所代の上昇が利益を削る。
営業利益率は 10 年で最高の 4.4% でも、売上の 4% 強にすぎない。ROE は 4% 未満で、資本コストの半分ほどだ。会社が投資に動くたびに減益になるのは、稼ぎが設備に埋まる体質のためである。
本家系のボトラーズジャパンが、2025 年に自販機の減損で 507 億円の赤字を出した。自販機網が重荷に変わる例だ。同社が同じ道をたどらない保証はない。
親会社が過半を持つため、少数株主は還元を求めにくい。配当は利益の 25% 前後と低い。完全子会社化があっても、価格は親会社の都合で決まる。
課題解決型の事業は売上の 1 割に届かず、利益の主役にはまだ遠い。本業の縮みを補える規模には育っていない。値上げで売上の金額が増えても、数量が減る事業の弱さは消えない。
どちらに重みを置いたか
事業の地盤については強気の言い分に説得力があるが、稼ぎの小ささという数字では慎重な言い分が勝つ。中立の 10 年は、数量が 1 割近く細り、利益率が 4% 台にとどまる姿だ。楽観でも利益率が 6% に近づく程度で、ROE は資本コストに届かない。確率は中立に 4 割弱を置き、慎重な側に 35% を寄せた。自販機の網と純現金の厚さを評価して、悲観は 13% にとどめた。結果は、中立の時価総額が今の半分に届かず、割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,901 円259 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 715 円97 億円)。 今の値に割り戻すと 1,341 円183 億円、今との差 −67.2%、 期待の年率 −4.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,323 円452 億円 | 1,102 円150 億円 | +8.1% | +0.8% | 310 円42 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,646 円360 億円 | 882 円120 億円 | −13.9% | −1.5% | 706 円96 億円 |
| 中立 | 38% | 2,138 円291 億円 | 698 円95 億円 | −30.7% | −3.6% | 1,078 円147 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,070 円146 億円 | 597 円81 億円 | −59.3% | −8.6% | 367 円50 億円 |
| 悲観 | 13% | 705 円96 億円 | 496 円68 億円 | −70.7% | −11.5% | 156 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,901 円259 億円 | 715 円97 億円 | −36.1% | −4.4% | 2,616 円356 億円 |
今の株価時価総額 4,095 円557 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 自販機の網が厚みを増し、利益率が 5% 台まで戻る10年 利益 37 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,323 円452 億円
10 年後、道内の人口は減っているが、自販機の網の厚みが同社を強くしている。他社が引いた場所を引き受け、稼働率の高い機械に絞り込んで、自販機の数量は今より 4% ほど増える。24 時間動く機械と災害時の協定が、人手不足の道内で生活の道具として根づく。訪日客の増加も、自販機と店頭を押し上げる。
課題解決型の事業は、バックオフィス代行や精算機の保守が取引先を増やし、売上は 3 倍近い 86 億円になる。自販機を回る人手と車を他の仕事にも使うので、利益率は 10% に届く。札幌工場のライン投資は償却が一巡し、全社の営業利益率は 5.7% まで戻る。純利益は 37 億円と、今の 2 倍強になる。それでも ROE は 7% 弱で、資本コストには届かない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1.0=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 自販機(飲料):数量 9.8(推定の販売量(万 kl))× 価格 46(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 447 億円・営業利益 27 億円。稼働率の高い機械に絞り台数も増える
- 店頭向け(飲料):数量 9.5(推定の販売量(万 kl))× 価格 35(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 331 億円・営業利益 15 億円。他社撤退の場所を引き受ける
- 課題解決型(飲料以外):数量 3,200(取引先の数(社・施設、推定))× 価格 268(1 先あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 86 億円・営業利益 9 億円。取引先が 3 倍近くに増える
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 452 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自販機の網を伸ばし、課題解決型も 3 倍近くに育てる必要がある。道内の人口減の中で数量を増やす姿は、すべてがうまく噛み合った時だけなので 7% に置いた。
やや楽観 20% 人口減を稼働率の向上で受け止め、利益が 3 割伸びる10年 利益 30 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,646 円360 億円
道内の人口減は数量を削るが、自販機の稼働率の向上で、飲料の数量の減りは 3% 前後にとどまる。値上げは物価並みに通る。店頭向けは、コンビニと飲食店の伸びが減りを和らげる。
課題解決型は 70 億円まで伸び、全社の営業利益率は 4.9% になる。2026 年のライン投資と自販機更新の償却は重いが、稼働率の上昇で吸収される。純利益は 30 億円で、利益の 4 割ほどを配当に回す。ROE は 5% 台で、資本コストにはなお届かない。親会社との関係は今のまま続き、優良な地域ボトラーという評価が保たれる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1.0=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 自販機(飲料):数量 9.1(推定の販売量(万 kl))× 価格 46(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 415 億円・営業利益 22 億円。稼働率の向上で減りを 3% に抑える
- 店頭向け(飲料):数量 9.0(推定の販売量(万 kl))× 価格 35(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 314 億円・営業利益 12 億円。コンビニ・飲食店の伸びで減りを抑える
- 課題解決型(飲料以外):数量 2,600(取引先の数(社・施設、推定))× 価格 268(1 先あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 70 億円・営業利益 6 億円。取引先が 2 倍弱に増える
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働率の向上と物価並みの値上げが続けば届く水準。2025 年の利益率 4.4% が 10 年で最高だったことを踏まえ、これを超えて 4.9% に届く姿を 2 割に置いた。
中立 38% 数量は細り、値上げと設備の償却が打ち消し合って利益率は 4% 台にとどまる10年 利益 24 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,138 円291 億円
数量は道内の人口と同じ速さで細り、10 年で 6〜7% 減る。自販機の稼働率は上がるが、店頭向けはコンビニと量販店の自社ブランドに押される。物価並みの値上げは通り、売上は 760 億円まで伸びる。
利益率は 4% 台で横ばいだ。人件費と運送費は物価で上がり、値上げの効果を消す。ライン投資と自販機更新の償却は、毎年の負担として残る。課題解決型は 55 億円まで増えるが、全体を動かすほどではない。純利益は 24 億円、配当は 10 年で 80 億円ほどになる。自己資本は 550 億円に増え、ROE は 4% 台にとどまる。ためた利益が設備に埋まり続け、資本の稼ぎは上がらない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1.0=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 自販機(飲料):数量 8.8(推定の販売量(万 kl))× 価格 46(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 401 億円・営業利益 18 億円。人口と同じ速さで細る
- 店頭向け(飲料):数量 8.7(推定の販売量(万 kl))× 価格 35(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 303 億円・営業利益 10 億円。自社ブランドに押され数量が減る
- 課題解決型(飲料以外):数量 2,060(取引先の数(社・施設、推定))× 価格 268(1 先あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。取引先が 4 割増える
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が道内の人口並みに細り、利益率は過去の高い側 4% 台にとどまる姿。事業の地盤は堅い一方、資本の稼ぎは小さいままという落としどころで、最も重く 38% を置いた。
やや悲観 22% 値上げ疲れと自社ブランドの流出で、利益率が 3% に下がる10年 利益 15 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,070 円146 億円
人口減に値上げ疲れが重なり、数量は 15% ほど減る。店頭向けは自社ブランドへの流出が止まらず、値上げが通りにくい。自販機は、補充の人手不足と設置場所の撤去で採算の悪い機械が増え、利益率が 3.5% に下がる。
サントリーなど大手との値引き競争も続く。課題解決型は 46 億円にとどまる。全社の営業利益率は 3% 前後、純利益は 15 億円。配当は 10 年で 70 億円、利益の 4 割強を保つ。優良な地域ボトラーという評価は薄れる。それでも札幌工場と自販機の網は残り、事業は続く。ただし利益は設備の償却に押され、資本の稼ぎはさらに細る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×0.8=11.2億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 自販機(飲料):数量 8.1(推定の販売量(万 kl))× 価格 46(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 369 億円・営業利益 13 億円。不採算の機械が増え数量が減る
- 店頭向け(飲料):数量 7.8(推定の販売量(万 kl))× 価格 33(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 260 億円・営業利益 5 億円。自社ブランド流出で値上げが鈍る
- 課題解決型(飲料以外):数量 1,700(取引先の数(社・施設、推定))× 価格 268(1 先あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。伸びが止まる
倍率:ROE 2.9% が k 8.25% 以下なので、PER の上限は 1÷k=12.1 倍。稼ぐ力(純利益 15 億円÷k=約 180 億円)の約 7 割(9.0 倍)に置いた。構造的な負けの筋書きで、上限へ引き上げない。
確率:値上げ疲れと自社ブランドの流出が構造化する姿。大手の価格競争と自販機の補充費の上昇は現実に起きており、慎重な言い分の強さを映して 22% に厚くした。
悲観 13% 自販機が重荷に変わり、利益がほぼ消える10年 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 705 円96 億円
道内の人口減が想定より早く、数量が 3 割縮む。自販機は電子決済と店舗の 24 時間化に押され、不採算の機械の撤去が続く。本家系の大手ボトラーが自販機で大きな減損を出したのと同じ道に入り、同社も減損を計上する。値上げは通らず、店頭向けは自社ブランドと値引きに埋もれる。
営業利益は 5 億円とほぼ消え、純利益は 4 億円に落ちる。課題解決型も取引先を失い、29 億円で横ばいになる。配当は純現金を取り崩して年 6 億円ほどを守る。親会社は完全子会社化に動くかもしれないが、評価は縮んだ内需型の飲料会社にとどまる。残る価値は、純現金の約 96 億円が支える。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×0.5=7.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 自販機(飲料):数量 6.6(推定の販売量(万 kl))× 価格 41(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 269 億円・営業利益 4 億円。撤去が続き数量が 3 割減る
- 店頭向け(飲料):数量 6.8(推定の販売量(万 kl))× 価格 31(1kl あたりの名目の売上(万円))→ 売上 212 億円・営業利益 1 億円。値上げが通らず数量も減る
- 課題解決型(飲料以外):数量 1,200(取引先の数(社・施設、推定))× 価格 240(1 先あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。取引先を失い横ばい
倍率:純利益は 4 億円まで落ち、利益から値を付けられない。稼ぐ力(4 億円÷k=約 50 億円)より純現金 96 億円の方が大きいので、床は純現金。今の自己資本 434 億円に 0.221 倍を掛けた額が純現金に等しい。
確率:人口減の加速と自販機の減損が重なる複合の筋書き。本家系の大手ボトラーが自販機の減損で赤字になった例があり、同じ構造が道内で起きる可能性は低くない。ただし自販機の網と純現金の厚さが下を支えるので 13% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自販機(飲料)
道内に約 4 万台を置く自社の自販機網。コカ・コーラ系の缶・ペットボトルを売る。稼働率と 1 台あたりの売上が伸びている。
| 数量推定の販売量(万 kl) | 価格1kl あたりの名目の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.4 | 34 | 320 | 16 |
| 10 年後 中立 | 8.8 | 46 | 401 | 18 |
取り方:道内の年間販売量約 3,300 万ケース(同社サステナビリティレポート)を標準換算 約 5.7 リットルで 18.7 万 kl とし、自販機を 9.4 万 kl(約半分)と推定した。自販機は小売価格で売るので 1kl あたり 34 万円(小売価格ベース)に置き、売上 320 億円(全社の 54%)、営業利益率 5% で 16 億円とした。売上の内訳は未開示で、全社の営業利益 26 億円に合うよう配分した推定。数量は道内の人口並みに 10 年で 0.94 倍、価格は物価並みの 1.34 倍が中立。市場の大きさ:道内の清涼飲料は人口比で 90 万 kl 前後、同社シェアは 2 割ほど。
店頭向け(飲料)
コンビニ・量販店・飲食店・Web 販売など、自販機以外に卸す飲料。コンビニ・飲食店・Web が伸びている。
| 数量推定の販売量(万 kl) | 価格1kl あたりの名目の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.3 | 26 | 242 | 9 |
| 10 年後 中立 | 8.7 | 35 | 303 | 10 |
取り方:販売量 18.7 万 kl のうち自販機以外を 9.3 万 kl とし、卸値ベースで 1kl あたり 26 万円(卸値ベース)に置いて売上 242 億円とした。営業利益率は卸の薄利で 3.5% の 8.5 億円(自販機と合わせ全社の利益に合わせた推定)。数量は人口並みの減りに自社ブランドの流出を重ねて 10 年で 0.94 倍、価格は物価並みの 1.34 倍が中立。
課題解決型(飲料以外)
バックオフィス代行、精算機・券売機の保守、物流、厨房機器の点検、LED・空調の設置、コールセンター、清掃。グループ 5 社が担う。
| 数量取引先の数(社・施設、推定) | 価格1 先あたりの年間売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,475 | 200 | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,060 | 268 | 55 | 4 |
取り方:飲料以外の新しい事業の売上は全体の 1 割に届かないと報じられている。全社の売上 591 億円から飲料の推定 561 億円を引いた約 30 億円を、取引先の数 × 1 先あたりの売上に分けた推定(開示なし)。営業利益率は 7% で 2 億円。取引先は人手不足の追い風で 10 年で 1.4 倍、価格は物価並みの 1.34 倍が中立。
リスクと懸念
道内の人口減と数量の縮み
北海道は国内でも人口の減りが早い。物価並みの値上げで売上を保っても、数量は 10 年で 1 割近く細る。自販機の稼働率を上げて補うにも限りがあり、数量の縮みは人件費と運送費の上昇とぶつかって利益率を押し下げる。
自販機網が重荷に変わる
自販機は国全体で縮む市場だ。補充の人手不足、設置場所代、電気代、更新投資が重なると、不採算の機械が増える。本家系のボトラーズジャパンが 2025 年に自販機の減損で 507 億円の最終赤字を出したのは、この構造が表に出た例である。
資本の稼ぎが低いまま続く
ROE は過去 10 年の中央値が 3.5% で、資本コストを大きく下回る。工場のライン投資と自販機更新に利益が吸われ、2026 年は会社自身が減益を計画する。投資が実を結ばなければ、自己資本だけが積み上がって稼ぎの薄い会社になる。
親会社が過半を握る親子上場
大日本印刷が約 57%、栗林商会が約 9% を持つ。流通する株が少なく、少数株主が資本政策を動かす力は弱い。完全子会社化が起きても、価格は親会社の都合で決まり、本質価値を反映するとは限らない。
大手との価格競争と自社ブランド
サントリーなど大手との値引き競争が続き、コンビニ・量販店の自社ブランドも値上げを抑える。本家のブランドは強いが、道内の値付けまで自由には決められない。値上げが通らなければ、人件費の上昇を吸収できない。
単一工場への集中
生産は札幌の 1 工場に集めてある。コストは下がったが、災害や設備の故障で供給が止まると代わりの拠点がない。2026 年の大型ライン投資の立ち上がりが遅れれば、減益が長引く。
ボトラーとしての契約と原液代
同社は本家から製造販売権を預かる立場にある。原液の代金や商標の使用料、販売地域の条件は本家との契約で決まる。条件が変われば利益率が動くが、その交渉力は同社の側にはない。
今後の分かれ目
- 大日本印刷が完全子会社化(TOB)を発表したら
- 本質価値は変わらない。提示価格を、10 年先の価値と今の純現金、自己資本に照らして評価する。プレミアムが付いても、事業の価値を映した値段とは限らない。
- 自販機 1 台あたりの売上と稼働率が、道内で数量が減る中でも伸び続けたら
- 自販機の筋書きを上寄りに見直し、やや楽観・楽観の確率を厚くする。
- 札幌工場のライン投資のあとも営業利益率が 4% を超えず、減益が 2027 年以降も続いたら
- 投資が稼ぎに変わらない証拠として、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 自販機の撤去・減損を発表したら
- 本家系ボトラーズジャパンと同じ構造が道内にも及んだ兆候と見て、悲観側の確率を厚くする。
- 課題解決型の売上が飲料の 1 割を超え、利益率が飲料を明らかに上回ったら
- 利益の質が変わる材料として、取引先と利益率の前提を上方に修正する。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが始まったら
- 資本効率への姿勢が変わったと評価し、倍率の上限に近い側を取る。
見ておくもの
- 自販機の設置台数と 1 台あたりの売上(社長インタビュー・決算説明)
- 営業利益率(2025 年は 4.4%、2026 年の会社予想は 3.5%)
- 札幌工場のライン投資の進み具合と減価償却費
- 課題解決型事業の売上の割合と利益率
- 大日本印刷の持株比率の変化と、親子上場の見直しに関する発表
- 道内の人口の減り方と、競合・自社ブランドの動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト 8.25% を下回る会社の上限である 1÷k=12.1 倍を基準に、利益の質(償却と設備更新の重さ)から 7〜9 割台に置いた。今の PER や過去の倍率、同業の倍率は根拠にしていない。数量は道内の人口並みの減り、価格は物価並みの 1.34 倍で積み、最後に今の時価総額と比べた。結果は大きな割高になったが、今の株価に寄せて筋書きを動かすことはしていない。自販機・店頭・課題解決型の内訳は開示がなく推定で、全社の営業利益に合わせた配分だ。同じ領域のコカ・コーラ ボトラーズジャパンと quality の4項目をそろえた(単一地域・単一工場で人口減が早い点は寿命に入れた)。リースは営業費用に入れた今の形でそろえて置いた(新リース会計基準は 2028 年 12 月期から適用される)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.12 倍・やや楽観 PER 10.8→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。同じ領域のコカ・コーラ ボトラーズジャパンと quality の4項目をそろえた。