結論
キーコーヒーは、焙煎したコーヒー豆を喫茶店・外食・家庭・食品メーカーに売る中堅の老舗である。結論から言えば、筆者は今の値段を割高と見る。売上は930億円あるのに営業利益は11億円しかなく、利益率は1%強だ。
稼ぎが薄いのは、仕入れ値が相場で決まるのに、売値は後追いでしか上げられないからだ。2026年3月期は2回の値上げで営業利益が2倍強になった。ただ、これは豆の高騰に価格がやっと追いついた結果で、強さの証明ではない。来期は設備更新と大型販促で減益を会社自身が予想している。
10年後の中立は、売上が物価に届かない1.2倍前後、営業利益率は1.5%、ROEは3%台後半とみる。会社の目標は2030年度にROE5%だが、実績の中央値は1%に届かない。豆相場の波に利益を食われた年が近い過去に何度もある。
楽観の筋書きでも、利益は今の3倍に届くだけだ。それでも今の時価総額には届かない。優待と配当の受け取りを足しても同じ結論だった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言で言えば「老舗の良さはあるが、儲けのしくみが弱い会社」である。
持ち続けたい会社の条件は、10年後も今より強く、稼いだ利益を再投資して高い利回りを出せることだ。キーは、利益の大半を設備と在庫に再び吸われる。2026年3月期は営業利益11億円に対して、純負債が約120億円増えた。株主のものになる利益、つまりオーナー利益は、見かけの利益よりかなり少ない。
堀は、業務用の長い付き合いにある。ただ、喫茶店の数が減る中で、その堀は少しずつ小さくなる。家庭用は大手が強い。
資本の使い方は堅実で、無理な買収はしない。しかし資本を増やしても、稼ぐ力は上がっていない。
安全域の目で見ると、10年の中立で得られる時価総額は100億円台、楽観でも340億円ほどで、いずれも今の時価総額424億円を下回る。払う値段に見合う余裕がない。コーヒーの需要そのものは堅いが、株主が得る利益は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、仕入れた生豆を焙煎して売る手間賃にある。2026年3月期の売上930億円のうち、コーヒー関連が836億円を占める。
業務用(266億円)は、喫茶店・レストラン・ホテル・オフィスにコーヒーと食材を一緒に売る。「クレダルジャン」という食材ブランドで提案営業の幅を広げている。家庭用(236億円)は、スーパーなどで売るレギュラーコーヒーやドリップで、最近は「JET BREW」とイノダコーヒの商品に力を入れる。
原料用(約330億円と推定)は、飲料や菓子メーカー向けの豆と抽出原料の販売で、薄利。豆の値段がそのまま売上に出る。
そのほか、食材の取引、喫茶店、不動産の賃貸がある。2025年7月には京都の老舗喫茶イノダコーヒの94.2%を取得した。イノダの売上は21億円、営業利益は0.8億円と小さく、狙いは家庭用の高付加価値品と喫茶文化の継承にある。
仕入れの豆は輸入で、価格は国際相場と円ドルで決まる。2025年の相場高騰と円安で、原価の上昇は価格改定でようやく転嫁できた。
収益の構造を言い換えれば、売上の3分の1強が薄利の原料用で、利益は業務用と家庭用の手間賃から出る。業務用は取引先との長い付き合いが強みで、機器の貸与や研修まで含めて売る。家庭用は店頭の棚とブランドの認知で稼ぐ。事業の大半は国内で、為替は仕入れ原価にだけ効く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、薄い。国内の家庭用ではUCCが首位を続け、味の素AGFやネスレがその下に並ぶ。キーはその次の中堅で、価格を決める側ではなく、決められる側だ。
良い点は、喫茶店と外食に長く深く入っていることだ。提案営業で食材と機器まで売れば、取引が簡単には切り替わらない。ただ、業務用の主な顧客である喫茶店は閉店が続いている。
資本の効率は低い。ROEの過去10年の中央値は1%に届かず、2026年3月期でも3%台だ。純負債は126億円と1年で120億円近く膨らんだ。豆価の高騰で在庫と運転資金が増えたためで、借入は179億円に達した。営業利益で支払利息を7倍しかまかなえない。
自社株買いは2018年に16億円したきりで、配当性向は26%。経営は、相場に利益を振られても財務を守る堅実型である。悪い意味ではないが、株主の取り分を増やす力は弱い。
持分法益(銀座ルノアールなど)が約2億円あり、本業の薄さを補っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコーヒー市場は、量が静かに縮み、価格が膨らむ市場である。2025年の消費量は39.7万tで前年比99.3%、3年連続の減少となり、40万tを割るのは25年ぶりだった。売上が伸びて見えるのは、豆高騰による値上げのせいだ。
習慣的に飲む人は7割を超え、コーヒーそのものの人気は落ちていない。ただ、人口減に加えて喫茶店が減り、業務用の数量は細る。在宅で飲む量の増えが一部を補う。
豆相場は2025年にアラビカが歴史的な高値をつけ、その後は下がっている。ブラジルの増産で、2026年は6年ぶりに需給が緩むとの見立てだ。ただ、円安が続く限り店頭価格はすぐには下がらない。
競争は、UCC・味の素AGF・ネスレ・小川珈琲・ドトールなどが占める。コンビニのコーヒーとRTD(缶・ボトル)も、レギュラーの家庭用と業務用の両方に競り合う。
分かれ目は、相場が下がる局面で値を維持できるか、下げた方が数量を取るかである。
業界の構造として、焙煎会社は豆の仕入れ力と、売先の持つ販路の広さで勝負が決まる。UCCは自前の農園と世界の調達網を持ち、味の素AGFは食品大手の販路を使う。キーはインドネシアのトアルコ・トラジャなどこだわりの豆を持つが、規模で劣る分、品質とブランドの物語で戦う。
資本政策と M&A
還元は、配当性向26%(年間配当は据え置き)と、自社製品の優待が中心である。優待は100株以上で年2回、千円相当から始まる。会社の費用は開示がなく、筆者の推定では年約3億円(個人株主が持つ約15万単元に年2回の自社製品を贈る原価約1.8億円と、約2.8万人への発送・梱包費約1.4億円。対象の株主数は開示がなく推定)。これは株主への受け取りとして10年分を還元に足した。
自社株買いは2018年の16億円のみ。ROEの目標は2027年度に3%、2030年度に5%で、資本効率の改善は掲げるが、株主還元で大きく動く気配はない。
M&Aは小粒で、2025年にイノダコーヒを取得した(取得額は非公表)。純負債が膨らんだ今、大型の買収は難しい。
筆頭株主は博友興産(10.47%)で、続いて信託銀行(7.66%)、取引先持株会(2.92%)。個人株主が72.7%、株主数は59,110名と多い。10年以内にTOB(株式公開買付け)で買われる確率は、モデルの参考値で17.8%。足元の時価総額は424億円と利益に比べて大きく、買い手には割高に映る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
相場の下落は、キーに利益をもたらす。2025年に2回の値上げで売値を引き上げたが、原価が下がれば利幅がそのまま広がる。2026年3月期の営業利益は2倍強になり、第1四半期も営業利益は前年の2倍近くに伸びた。値上げが定着すれば、会社が掲げるROE5%(2030年度)の達成は現実的だ。
家庭用の高付加価値品は伸びる余地が大きい。「JET BREW」は手軽さと味を両立し、イノダコーヒのブランドは京都の老舗として贈答にも使える。業務用では「クレダルジャン」の食材と機器を組み合わせた提案が、閉店が続く喫茶店でも生き残る店に選ばれる理由になる。
設備投資で製造コストが下がれば、原料用の薄利も改善する。持分法益も毎年2億円近く出る。株主は59,110名と多く、優待が個人を引きつける。財務は純負債が増えたが、これは在庫で、相場が下がれば減る。営業利益率が過去の山に並ぶ2%台に乗れば、利益は今の2倍になる。
慎重な見方
2026年3月期の増益は値上げの追いつきにすぎない。過去12年の営業利益率は0.4〜2.2%で、中央値は1%に届かない。赤字の年が2012年と2021年にあり、2023年から2025年は2〜8億円の薄い利益だった。相場が下がれば、価格を戻す圧力が先に来る。
来期は設備更新と大型販促で営業利益が16%減る見込みで、会社自身が利益の薄さを認めている。純負債は126億円と1年で120億円近く増え、営業利益で利息をまかなえる倍率は7倍しかない。
業務用は主な顧客の喫茶店が減り続け、数量は細る。家庭用はUCCと味の素AGFがシェアを握り、PBも広がる。イノダコーヒの買収は営業利益0.8億円の小さな事業で、数字への貢献は薄い。
時価総額は424億円。純利益10億円に対して40倍を超える。ROEは3%台で、資本コストの8%を下回る。利益を溜めても株主のものになる価値は増えない。今の値段には、利益率が3%まで上がる未来が既に入っている。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、2026年3月期の利益の跳ね返りが本物で、値上げが定着するというものだ。慎重な言い分は、近い過去に利益率が1%以下の年が何度もあるというものだ。実績に近いのは後者である。
そこで確率は、中立に最も重みを置きつつ、悲観側に少し寄せた。最も悪い筋書きの確率は15%と、同じ領域の会社の12〜14%より厚い。理由は、利益が薄く、豆相場の波ひとつで赤字に近づくからだ。
結果は、楽観の筋書きでも今の時価総額に届かず、総合は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 800 円171 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 269 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 541 円116 億円、今との差 −72.9%、 期待の年率 −6.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,727 円370 億円 | 453 円97 億円 | +9.2% | +0.9% | 153 円33 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,215 円260 億円 | 364 円78 億円 | −20.9% | −2.3% | 284 円61 億円 |
| 中立 | 33% | 787 円169 億円 | 299 円64 億円 | −45.6% | −5.9% | 358 円77 億円 |
| やや悲観 | 27% | 496 円106 億円 | 205 円44 億円 | −64.8% | −9.9% | 190 円41 億円 |
| 悲観 | 15% | 443 円95 億円 | 117 円25 億円 | −71.9% | −11.9% | 84 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 800 円171 億円 | 269 円58 億円 | −46.5% | −6.1% | 1,069 円229 億円 |
今の株価時価総額 1,996 円428 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 高付加価値とイノダ効果で、薄利体質を抜け出す10年 利益 31 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,727 円370 億円
豆相場がピークから下がっても、2回の値上げで得た店頭価格の水準が崩れない。家庭用ではJET BREWとイノダコーヒの高価格帯が定着し、量販店の棚でPB(プライベートブランド)に押されずに単価を保つ。業務用はクレダルジャンの食材とコーヒーの組み合わせ提案が喫茶店・ホテル・外食に広がり、営業利益率が5%台に乗る。老朽設備の更新で製造原価も下がり、原料用も加工のうまみが増える。イノダのように伝統のある喫茶ブランドの買収が続いて家庭用の高付加価値品を厚くする。営業利益率は2.7%まで上がり、ROEは会社が掲げる2030年度の5%を超えて7%に近づく。それでもキーは中堅で、UCCや味の素AGFと同じ土俵では規模の差が残る。
- 業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス):数量 9.5(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 365(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 346 億円・営業利益 17 億円。提案営業と食材の組み合わせが定着
- 家庭用(スーパー・EC・量販店):数量 8.4(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 384(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 322 億円・営業利益 16 億円。高付加価値品の単価が保たれる
- 原料用(食品・飲料メーカー向け):数量 18.9(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 232(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 438 億円・営業利益 4 億円。加工のうまみが増す
- その他(食材卸・喫茶・不動産ほか):数量 12.6(推定取扱量(千t))× 価格 110(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 139 億円・営業利益 6 億円。喫茶・食材の拡大
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 370 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:豆相場が落ち着く中で値上げの実績を利益に残し、家庭用の高付加価値品と業務用の提案営業が両方とも当たる必要がある。営業利益率が過去12年の山(2.2%)を大きく超えるので、確率は低めに置いた。
やや楽観 18% 値上げが定着し、営業利益率が過去の山に近づく10年 利益 22 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,215 円260 億円
相場は下がるが、円安と人件費の上昇で原価は戻りきらず、家庭用は2025年に上げた価格が大きく崩れない。業務用では喫茶店の減少を、外食・ホテル向けの提案営業とイノダの喫茶運営が補う。販促費と設備更新で来期は利益が落ちるが、2年目以降は製造の効率化と高付加価値品の構成比の上昇が利益率を押し上げる。営業利益率は2.1%と、過去12年の山(2.2%)に並ぶ水準まで戻る。原料用は薄利のままだが、数量が少し伸びて利益を下支えする。ROEは5%台。会社の目標の2030年度5%は達成するが、その先を伸ばす理由はない。
- 業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス):数量 9.2(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 353(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 326 億円・営業利益 14 億円。外食・ホテル向けの提案営業が補う
- 家庭用(スーパー・EC・量販店):数量 8.1(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 372(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 300 億円・営業利益 12 億円。高価格帯の構成比が上がる
- 原料用(食品・飲料メーカー向け):数量 18.4(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 219(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 401 億円・営業利益 4 億円。数量が少し伸びる
- その他(食材卸・喫茶・不動産ほか):数量 12.0(推定取扱量(千t))× 価格 108(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 130 億円・営業利益 5 億円。イノダの喫茶運営
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 260 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期に営業利益が2倍強になった実績(価格改定の効果)と、2030年度ROE5%の会社目標が、この筋書きの下地になる。ただし来期は先行投資で減益を自ら予想しており、実現には設備と販促が利益に変わる必要がある。
中立 33% 豆相場は落ち着くが、薄利は変わらず、小さな優良とは言えない10年 利益 14 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 787 円169 億円
国内のコーヒー消費は人口減で緩やかに減る。2025年の消費量は39.7万tと、25年ぶりに40万tを割った。家庭用は減る分を高価格帯で補い、業務用は喫茶店の閉店が続く中で外食とホテルの提案営業で数量の減りを小さくする。豆相場は下がるが円安が続き、店頭価格はすぐには下がらない。売上は物価に届かない1.2倍前後で伸びるが、本社費と人件費は物価並みに増える。営業利益率は1.5%と、2026年3月期の1.2%より少し上に落ち着く。原料用は薄利のまま。ROEは3%台後半で、会社が掲げる5%には届かない。キーは堅実だが、他社と比べて利益の厚みが足りない会社として続く。
価格は物価並みの1.34倍には届かない。豆相場がピークから下がり、売値の上積みが一部戻るためで、原料用は相場連動でさらに低い。
- 業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス):数量 8.8(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 342(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 302 億円・営業利益 11 億円。相場下落で物価を下回る価格、喫茶店減を外食が補う
- 家庭用(スーパー・EC・量販店):数量 7.8(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 360(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 279 億円・営業利益 9 億円。相場下落で物価を下回る価格、高価格帯で補う
- 原料用(食品・飲料メーカー向け):数量 18.0(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 208(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 374 億円・営業利益 3 億円。相場連動で価格は物価未満
- その他(食材卸・喫茶・不動産ほか):数量 11.4(推定取扱量(千t))× 価格 106(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 4 億円。喫茶店の減少で数量が減る
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は0.4〜2.2%、中央値は約0.9%。直近の価格改定と構造の改善で少し上に置くが、豆相場と円安に利益が振られる体質は変わらない。慎重に見える意見の方が実績に近いので、中立に最も重みを置きつつ、全体を悲観側へやや寄せた。
やや悲観 27% 大手とPBに挟まれ、豆相場の波で利益が消える10年 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 496 円106 億円
大手のUCC・味の素AGFが家庭用の棚と価格を押さえ、量販店のPBも広がって、キーの値上げが続かなくなる。豆相場は下がるのに価格を戻す圧力が強まり、先に値を下げた方が数量を取る。業務用では喫茶店の減少が速く、数量は中立より1割余り少ない。設備更新と販促の先行投資は回収が遅れる。営業利益率は0.6%と、2025年3月期並みに戻る。持分法益が純利益を支えるが、配当と優待を出すと自己資本はほとんど増えない。ROEは1%台で、事業の体力が試される10年になる。
業務用の閉店は、喫茶店の主に高齢の店主が引退する形で進み、機器と食材を一緒に売る提案営業でも歯止めがかからない。家庭用の高価格帯は、大手の特売で割高に映る。
- 業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス):数量 8.1(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 331(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 267 億円・営業利益 7 億円。喫茶店の減少が速い
- 家庭用(スーパー・EC・量販店):数量 7.4(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 348(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 256 億円・営業利益 6 億円。大手とPBに価格で押される
- 原料用(食品・飲料メーカー向け):数量 17.1(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 200(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 342 億円・営業利益 1 億円。薄利で相場に振られる
- その他(食材卸・喫茶・不動産ほか):数量 10.6(推定取扱量(千t))× 価格 106(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 112 億円・営業利益 2 億円。喫茶店・不動産が足を引く
倍率:稼ぐ力(純利益5億円÷k)は約60億円で、床の売れる資産(約97億円)の方が大きい。利益が薄く事業の価値より資産の価値が高い筋書きなので、床の97億円に置いた。今の自己資本318億円に対し約0.31倍。EV でも見ると約38倍と高く、借金を含めても割安とは言えない。
確率:赤字の年が2012年3月期と2021年3月期にあり、2023〜2025年3月期の営業利益は2〜8億円だった。値上げで一度は利益が出たが、豆相場が戻れば同じ構図に戻る。利益が薄い会社が相場に振られた実例が近い過去に3度あるので、確率を厚めにした。
悲観 15% 業務用の縮小と価格競争で、構造的に赤字体質になる10年 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 443 円95 億円
業務用は喫茶店と外食の閉店が止まらず、数量は3割近く減る。家庭用は大手の特売とPBに押されて値上げできず、豆相場が再び跳ねると価格転嫁が遅れる。2021年3月期のコロナ禍のような赤字の年が複数回起きる。イノダなど買収した資産の評価を落とし、設備更新も縮小する。本社費は縮めるが、営業利益は黒字の薄さに近づく。配当と優待は半分に縮め、借入は在庫の圧縮で返す。時価総額は稼ぐ力ではなく、売れる資産(土地・投資有価証券・運転資本)の税引き後に近づく。事業は残るが、もう優良ではない。
業務用は閉店したお店の機器の回収費用もかさみ、販売網の縮小が固定費の重しになる。原料用は大手飲料メーカーが調達を自社化し、取引が減る。
- 業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス):数量 6.8(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 309(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 211 億円・営業利益 3 億円。喫茶店・外食の閉店が止まらない
- 家庭用(スーパー・EC・量販店):数量 6.6(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 325(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 213 億円・営業利益 2 億円。大手とPBに押される
- 原料用(食品・飲料メーカー向け):数量 15.3(推定出荷量(千t・生豆換算))× 価格 185(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 284 億円・営業利益 1 億円。相場転嫁が遅れる
- その他(食材卸・喫茶・不動産ほか):数量 9.0(推定取扱量(千t))× 価格 99(1 t あたりの名目の単価(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 1 億円。喫茶店の閉鎖
倍率:純利益は0.3億円とほぼ消え、稼ぐ力(0.3億円÷k)は数億円。床は売れる資産の税引き後で約97億円(貸借対照表の運転資本・投資有価証券・土地)。事業が傷む分を引いて約95億円に置いた。今の自己資本に対し約0.30倍。営業利益がほぼゼロなので EV でも見られず、床の資産で測った。
確率:喫茶店の閉店が続く業務用は構造的に縮み、家庭用も大手に押されて価格競争になる。全社が営業赤字に近づく。キーは過去20年で2度赤字を出し、純負債が1年で120億円増えた。豆相場が急騰して値上げが遅れると資金繰りの余力が小さい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務用(喫茶店・外食・ホテル・オフィス)
喫茶店・レストラン・ホテル・オフィス向けのコーヒー豆、抽出機器、食材。「クレダルジャン」の食材ブランドと営業の提案力で売る。
| 数量推定出荷量(千t・生豆換算) | 価格1 t あたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 280 | 266 | 8 |
| 10 年後 中立 | 8.8 | 342 | 302 | 11 |
取り方:売上は 2026/03 期のコーヒー関連の業務用市場 266.45 億円(開示)。数量は国内消費 39.7 万 t(全日本コーヒー協会)のうち業務用向けを推定し、キーの業務用の取り分を約 9.5 千t と置いて単価を逆算した(食材を含むため単価は高め)。営業利益はコーヒー関連 15.74 億円(開示)を業務用 3.0%・家庭用 2.4%・原料用 0.6% に配分した推定。価格は豆相場がピークから下がるため 10 年で物価並み(1.34 倍)に届かず 1.2 倍前後、数量は喫茶店の減少を外食・ホテルの需要が一部補い中立 0.93 倍。
家庭用(スーパー・EC・量販店)
レギュラーコーヒー、ドリップ、「KEY DOORS+ JET BREW」、イノダコーヒ商品など。UCC が首位の市場で、キーは中堅。
| 数量推定出荷量(千t・生豆換算) | 価格1 t あたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 295 | 236 | 6 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 360 | 279 | 9 |
取り方:売上は家庭用市場 236.05 億円(開示)。数量は家庭用レギュラー・ドリップの国内消費のうちキーの取り分を約 8.0 千t と置いて単価を逆算した(推定)。営業利益率 2.4% は上の配分の推定。価格は 2025 年の豆高騰と 2 回の値上げで今が高い水準にあり、相場の下落で 10 年 1.22 倍。数量は人口減で中立 0.97 倍(在宅の抽出機・ポーション需要が下支え)。
原料用(食品・飲料メーカー向け)
缶・ボトル飲料や菓子、他社ブランド向けの豆・抽出原料の販売。薄利で、豆相場の値動きがそのまま売上に出る。
| 数量推定出荷量(千t・生豆換算) | 価格1 t あたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 185 | 334 | 2 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 208 | 374 | 3 |
取り方:売上はコーヒー関連 836.02 億円から業務用と家庭用を引いた約 333.5 億円(開示から差し引き)。数量 18.0 千t は推定(生豆・抽出液の取引量)。営業利益率 0.6% は推定(手数料に近い薄利)。価格は豆相場に連動するので 10 年で 1.1 倍前後と物価を下回る。数量は飲料向けが横ばいで中立 1.0 倍。
その他(食材卸・喫茶・不動産ほか)
業務用食材の取引、イノダコーヒの喫茶店運営、不動産の賃貸など。
| 数量推定取扱量(千t) | 価格1 t あたりの名目の単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 79 | 95 | 2 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 106 | 121 | 4 |
取り方:売上は連結 930.67 億円からコーヒー関連 836.02 億円を引いた約 94.7 億円(開示から差し引き)。喫茶店と不動産が混ざるため数量は食材・店舗売上の取扱量換算の推定 12 千t。営業利益はこの区分 2.4 億円、全社費用ほかの調整を −7.4 億円とした(連結営業利益 10.77 億円に合わせる推定)。価格は物価並み 1.34 倍、数量は喫茶店の減少で中立 0.95 倍。
リスクと懸念
豆相場の急騰と、値上げの遅れ
仕入れ値は国際相場と円ドルで決まるのに、売値は半年ほど遅れて上がる。2025年の高騰では原価が先に膨らみ、増益に転じたのは2回の値上げ後だった。再び跳ねれば、薄い利益が消え、在庫の運転資金で借入が増える。
国内のコーヒー数量の細り
国内消費は3年連続で減り、2025年は39.7万tと25年ぶりに40万tを割った。喫茶店の閉店が業務用の数量を直撃する。値上げで売上は膨らんで見えるが、量の減りを覆い隠しているだけの面がある。
大手とPBの価格競争
家庭用ではUCC・味の素AGF・ネスレが棚を押さえる。コンビニ・量販店のPBも広がる。相場が下がる局面では、先に値を下げた方が数量を取る。キーは規模で劣り、価格を守りきれない可能性がある。
純負債の増加と先行投資
純負債は126億円と1年で約120億円増え、利息の倍率は7倍まで下がった。来期は設備更新と大型販促で営業利益は16%減る見込み。投資が利益に結びつかないと、財務の余力が削られる。
小粒な買収の効果
2025年に取得したイノダコーヒは売上21億円、営業利益0.8億円。買収額は非公表で、のれんの償却が負担になる可能性がある。家庭用の高付加価値の柱になれなければ、数字への貢献は小さい。
優待と株主構成
優待は年約3億円と推定され、純利益に対して無視できない。個人株主が72.7%、株主数は59,110名で、優待の見直しは株主離れを招きやすく、見直しにくい。
原料用の薄利と持分法益への依存
原料用は営業利益率が0.6%と推定され、規模があっても稼ぎにならない。持分法益は毎年2億円近くあるが、銀座ルノアールなどの業績に左右される。本業の利益が薄いぶん、この依存が目立つ。
今後の分かれ目
- アラビカ相場が急落しても、会社が店頭価格を維持できたら
- 利幅が広がる局面で、営業利益率が2%台に乗る可能性がある。中立から楽観側へ確率を寄せる。
- 相場が下がる中で、大手が値下げを始めたら
- キーも追随せざるを得ず、利益率は2026年3月期の水準を下回る。やや悲観に重みを移す。
- 喫茶店・外食の閉店がさらに加速し、業務用の売上が減少に転じたら
- 業務用の数量前提を引き下げ、悲観側の確率を上げる。
- 純負債が減らず、来期末も120億円以上のままなら
- 相場が戻れば資金繰りの余力が小さい。財務の前提を厳しく見直す。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、資本効率を上げる還元の強化が出たら
- ROEの前提をやや上げる。ただし利益の元が変わらなければ価値は大きく動かない。
- 大手が買収に動く、またはTOBの発表があったら
- 提示価格を本質価値と比べる。現在の時価総額は利益に比べて大きく、プレミアムが乗るとさらに割高になる。
見ておくもの
- アラビカ相場と円ドルの動き、および会社の価格改定の時期
- 業務用と家庭用の売上と営業利益率(半期ごと)
- 純有利子負債と在庫の推移
- 優待・配当の方針変更の有無
- イノダコーヒの営業利益と取得後ののれん
倍率と資本コストの決め方
4区分(業務用・家庭用・原料用・その他)に分け、推定出荷量(千t・実質)に名目の単価を掛けて売上を積み、区分ごとの営業利益と全社費用で10年後の利益を出した。単価は豆相場が下がるぶん物価並み(1.34倍)を下回る1.1〜1.3倍に置き、理由は各区分に書いた。倍率はROEと資本コスト8.3%から式で決め、今の株価や同業のPERには寄せていない。結果は総合で大きな割高と出たが、楽観の筋書きでも今の時価総額に届かないことは、利益が薄いという事実から来る。なお、指示書の領域は清涼飲料・水だが、実際はコーヒー焙煎・卸なのでコーヒー固有の前提で書いた。悲観側の床は貸借対照表から運転資本・投資有価証券・土地の税後で約97億円と積んだ。リースは小さく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.05 倍・やや楽観 PER 10.5→12.05 倍・中立 PER 9→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.9%を足して8.4%。事業が傾いているわけではないので上乗せは置かない。個別の不確実性は確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.40% → 8.30%。